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マーケットに見透かされたアベクロ・シナリオの危うさ (日刊ゲンダイ) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/458.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 14 日 21:33:02: igsppGRN/E9PQ
 

http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-9056.html
2013/6/14 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ


選挙直前、7月11日の株価反転を狙っているようだが…

アベクロは7月11日まで本格的に動かない――。そんな臆測がマーケットを駆け巡っている。日経平均はきのう(13日)、今年2番目の下げ幅となる843円も暴落。きょう(14日)も乱高下は続き、午前終値は1万2788円42銭と、1万3000円を割り込んだままだ。それなのに日銀の黒田総裁は、「市場は次第に落ち着く」と、いたってノンキ。市場関係者は、その裏にアベクロの魂胆があると囁く。

◆ハゲタカの仕掛け次第では…

「すべての道は参院選につながっている。7月21日の投票日に照準を合わせた“株価操作”を企んでいると思いますね」(金融関係者)

株式アナリストの櫻井英明氏はこう言う。

「今の相場はほぼ2週間サイクルで上げ下げのトレンドを形成しています。見方を変えると、投票日の2週間前に株価を上昇させる政策を打ち出せば、上昇トレンドの中で投票日を迎えることができるのです」

アベクロの狙いが、そこにあるとすれば、2人の緊迫感のなさも納得できる。きょう(14日)閣議決定の成長戦略にしても小手先感が漂う。黒田総裁の動きもスピード感に欠けている。

「日銀は株価の下落局面でETF(上場投資信託)を購入しています。ただ、その額に本気度が感じられません。異次元緩和を発表した4月4日は、331億円購入しましたが、5月は188億円ずつ4回、6月は13日までに188億円が1回、198億円を4回です。購入額が均一なだけに、おざなりな感じがします」(ちばぎん証券顧問の安藤富士男氏)

黒田日銀は6月10〜11日の金融政策決定会合で、日本経済が1ドル=95円台の円高に襲われ、株価暴落が続いているにもかかわらず追加策を決めなかった。

百戦錬磨の投資マネーが蠢くマーケット参加者は、こうした流れの先を読む。それが7月10日前後の“株価操作”だ。

「次の決定会合が開かれる7月10日、11日がポイントです。異次元緩和から3カ月後なので、『逐次投入はしない』と言い切った黒田総裁のメンツも潰れない。11日にサプライズ的な追加策が出てくる可能性は高いでしょう」(市場関係者)

日経平均の水準も無視できない要素だ。投資顧問会社エフピーネット代表の松島修氏が言う。

「テクニカル分析では1万2000円近辺が反転ポイントになります。つまり、その水準のときに追加策を発表すると、相場力学的にも効果を発揮しやすいということになります」

アベクロは7月11日の日経平均を1万2000円前後と想定している可能性が高い。乱高下する市場を横目で見ながら、落としどころを定めているのだ。

「ただしハゲタカは何を仕掛けてくるか分かりません。7月10日前後に円買い(円高)を加速させるとか、長期金利を動かそうとするかもしれません。そうなると、安倍さんたちが描くシナリオ通りにはなりません」(櫻井英明氏)

市場に見透かされたアベクロの思惑はあっさり崩れ、参院選の圧勝も危うくなる。


 

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コメント
 
01. 2013年6月15日 10:01:48 : NNmx5sQKaY
結局何が言いたいのか全く分からない記事。
分かるのは日刊ゲンダイが「小沢さんマンセー」と言うことだな。
櫻井氏の言葉をばらばらにして都合のいいようにつなぎ合わせたのかな?意味不明の文章だ、もしくはゲンダイが依頼したか、櫻井氏がゲンダイに合わせて発言したのか、その辺だろう。
桜井氏ってのは基本思いっきり強き派、ブルな人、こんな著作の人ですわ。


「待ってたぜ!この瞬間」やっぱり株は儲かる! (アスカビジネス) 櫻井 英明 (著)

内容紹介
上昇気流にある日本株市場を見て、二の足を踏んでいた個人投資家も帰ってくる!
日経平均1万5000円をめざし高騰を続ける日本株市場。

日本株の底力を訴え続けてきた、幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評がある著者がこれからの市場を見据え、銘柄選択のポイント、リスクとともに気になる銘柄も提案。

内容(「BOOK」データベースより)
日経平均株価が1万だ、1万3000円だなどと言っている数ヶ月の間に、個別銘柄は2倍3倍に化ける銘柄が続出。5倍10倍20倍という銘柄も散見されてきました。大型主力銘柄でも多くが2倍以上に値上がりして推移しています。平成株式劇場の幕は開いた。


02. 2013年6月15日 10:08:01 : 7uhtIH2Ztw
>アベクロ・シナリオの危うさ
っていう方向に日本国内の雰囲気を持っていくために
海外資本が動いてるわけだが

まんまとその尖兵に成り果てた日本のマスコミは
海外資本家の手先となってその術中にはまっている自分を省みるべき


03. 2013年6月17日 12:40:55 : e9xeV93vFQ
日銀の異次元緩和は「一世一代の賭け」です
円安が企業にもたらす真の影響(第4回)
2013年6月17日(月)  岩村 充

 企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を毎月1つテーマとして取り上げ、国内有数のビジネススクールの看板教授たちが読み解き、新たなビジネス潮流を導き出していく。
 今月のテーマは、安倍晋三政権が推進する経済政策「アベノミクス」によって急激に進んだ円安。企業の輸出が回復し、業績の回復や雇用の拡大につながるといった理由から、円安を歓迎する声も多いが、果たして本当にそうなのか。円安が国内企業にもたらす真の影響について、国内ビジネススクールの教壇に立つ4人の論客たちに持論を披露してもらう。
 今回は前回に引き続き、日本銀行のOBである早稲田大学大学院商学研究科(早稲田大学ビジネススクール)の岩村充教授が、為替が大きく振れた原因を財政、金利などの状況から解説する。
(構成は小林 佳代=ライター/エディター)
 前回に、為替レートには時系列の中で連続的に変化していく「傾向」と、水準がポンと変わる「ジャンプ」とがあり、今回の円安はジャンプに当たると指摘しました。このように、水準が不連続に変動するジャンプは時々起きることがあります。今回はこのジャンプがどのような背景から起きたのかを考えてみましょう。
 1ドル=360円という固定相場制の時代から今に至るまでの円とドルの動きを長期的な為替レートで見てみます。円は傾向的に値を上げ、対照的にドルは値を下げ続けてきたことが分かります。為替レート変化率はだいたい3%前後です。
円ドル相場の推移

 実は、この3%という数字は、日米の金利差とほぼ一致しています。これは単なる偶然ではありません。逆に、一致しないとおかしいのです。例えば、円の為替レートがドルに対して傾向的に2%強くなるような時、米国の金利が日本の金利よりも基調的に2%ほどは高くないと、円を持っている方が一方的に有利になってしまうからです。
為替レートの変化率と日米金利差は一致する
 人々の為替レートについての変化率予想は金利差と一致しているはずです。金利が低い国の為替は徐々に切り上がっていく傾向があり、金利が高い国の為替は徐々に切り下がっていく傾向があります。結局のところ、金利は高くても安くても、それによる損得は為替レートに吸収されてしまうのです。
 現在、各国の政策金利はほぼゼロに近づき、ほとんど金利差がない状態です。そういう中では、傾向的なドル安、円安というのは生じにくく、ジャンプだけが起きやすくなります。
主要国政策金利の推移

 長期的に貨幣価値を決めているのは、技術や人口、国民性、文化、歴史的背景を含む国のファンダメンタルズ(基礎的条件)であり、それを背景にした政府の財政力です。ファンダメンタルズについての期待は戦争や大災害のような場合を除けばほぼ安定しているはずですが、財政に対する期待はそうではありません。財政に対する期待が揺れた場合には、為替相場が大きく影響を受けます。政策の大転換や政権交代などがあれば、為替相場に大きなジャンプが起きるのは不思議でないわけです。
 そうした為替相場のジャンプが行き過ぎの状態になった時に、それを修正するのは金融政策の役割でした。これまでの世界では、自国の通貨が不連続な期待によって、急に強くなりそうになった時には金利を下げ、あるいはインフレ基調が出てきそうな時には金利を上げるのが、標準的な金融政策だったわけです。ところが、今は各国ともゼロ金利で横並びになってしまったので、不連続な期待の揺れが生じた時、とりわけ為替相場に自国通貨高方向への圧力が生じた時、それを金融政策で吸収することができなくなっています。要するに、ジャンプのリスクが大きくなっているわけです。
 今回、大きく円安に振れたのは、去年暮れから今年3月までに起こった財政についての人々の見方の変化が主な原因と考えられます。
 野田佳彦前政権は「消費税10%への引き上げ」という政策を掲げていました。この政策スタンスにより、円高基調が維持されていたのです。円が相対的に「安全な通貨」と見られていたからです。ところが、政権交代によって誕生した安倍晋三政権の政策は、財政バランスの悪化を予想させる要素ばかりが目立っています。
 財政出動は拡大していますし、政権を支えている政治勢力の一部は、「消費税引き上げを延期すべき」と主張しています。財政バランスの好転を予想させる要素は何1つ見つけることができません。これが、1ドル=80円だった円ドルの為替レートを短期間に1ドル=100円台へジャンプさせる原因となったのでしょう。黒田東彦日本銀行総裁の「異次元緩和」による為替レートへの影響というのは、ゼロ金利と言われる現状を考えると、一般に思われているより小さいと思います。
長期金利の上昇傾向が続くと「ジャンプ」の再来も
 安倍政権が掲げる「アベノミクス」は出だしこそ好調に見えました。が、ここにきて、長期国債金利の上昇という懸念材料が出てきています。
 今、日本の公的債務残高は1000兆円に上ります。仮に金利が1%上がると、利払いが毎年10兆円増える計算です。消費税を5%から10%に引き上げたとしても、長期金利が少し上昇すれば増税による増収分が吹き飛んでしまいます。金利上昇は日本の財政バランスに非常に重い要素です。こうした中、長期金利上昇傾向が続くと市場が判断した際には、再び為替相場のジャンプが起きる可能性があります。
 また、今後、米国が金利を上げる方向に舵を切れば、その瞬間には円安方向への「ジャンプ」が生じるかもしれませんが、そうしたジャンプの影響が一巡した後には、今度は金利差とバランスした「傾向」としての円高が再現する可能性もあると考えられます。
日本企業の収益率の低さは“体質”の問題ではない
 少し話はそれますが、金融政策と企業経営の関係で1つの視点を紹介したいと思います。「ROA(総資産利益率)」や「ROE(株主資本利益率)」などの指標を根拠に、「欧米企業に比べて、日本企業の収益率は低い」という批判がよく出ます。この批判は果たして的を射たものなのでしょうか。
 企業が事業活動を行う際には、金融資本市場から取り入れた資本を活用します。そして、その事業活動から出た利益を株主への配当や金融機関への利子として返していきます。そう考えると、資本を高く調達する場合には、利益率の高い事業を手がけなくてはなりません。逆に資本を安く調達できる場合は、利益率の低い事業でも割が合うことになります。
 国際分業的に考えるなら、資本コストが低い国ではROAやROEが低い事業を行い、資本コストの高い国でROAやROEが高い事業を行うのが合理的です。つまり、長期的に金利が低い日本には、ローリスク・ローリターンの産業が育ちやすいということです。
 過去の数字を見ると、米国企業に比べて日本企業のROAが低いという現象が定着したのは、あのバブルの時代からであることが分かります。つまり、バブル崩壊後の低金利の中で起きたのです。どちらもゼロ金利になっている昨今では、日米の差は小さくなっています。ただ、米国が本当に金融緩和の「出口」を探っているとすれば、差が再び拡大する可能性は高いでしょう。
 こうして見ると、「日本企業は収益率が低い」という事実を「日本型経営」の体質的な帰結であるかのように言うのは誤解のもとのように感じます。ハイリスク・ハイリターン型の事業を手がける企業の方が、ローリスク・ローリターン型の事業を手がける企業よりも優れているとは必ずしも言えません。
 仮にハイリスク・ハイリターン型の企業を育てたいのならば、金利を高止まりさせるような金融政策を採用すべきだということになりますが、多くの日本企業はそれに耐えられないでしょう。金利を低めに維持するという日本の金融政策のスタイルと、日本企業のローリスク・ローリターン経営とは、互いにニワトリと卵のような関係なのだと思います。そうした関係を前提にして金融政策のあり方を論じるセンスが必要なのです。
 最後に、安倍政権が掲げる「2%の物価上昇率」という目標についても注意してほしいことがあります。それは、この目標が本当に実現した時には、かなり大きな物価上昇だと受け止められるのではないかと思えるからです。
 2%という物価上昇率がどのくらいの大きさかというと、スーパーマーケットに並ぶ100個の商品のうち、10個の商品が2割値上げになったり、20個の商品が1割値上げになったりということです。ぎりぎりの家計簿で暮らしている人たちの肌身感覚としては、軽く見過ごせるインパクトではないと思います。しかも、それが永遠に続くとなれば、消費者の財布のひもが固くなるのは間違いありません。あのバブル期でも、物価上昇率が前年比で2%を上回ったのは、終盤の1989年と90年の2年だけだったのです。
先進国ではインフレは既に過去のもの
 「日本はインフレがなくなった、だから良くない」とする論調がありますが、私は先進国ではどこもインフレは過去のものとなっていると思います。世界的な大競争時代に入り、末端での販売価格を少しでも下げようとする川下から川上への力が強くなったからです。1980年を過ぎる頃から、金融政策の巧拙にほとんど関係なく、物価は沈静しています。あのイタリアだって、ユーロに参加する前から物価は安定していました。
 19世紀末から20世紀にかけての世界的な景気変動パターンを見ると、それが大技術革新と、人口爆発の時代であったことを背景に、長い景気拡大と短い調整とが順番に来ていました。これから先は技術の停滞と人口縮小の時代に突入するとすれば、長いデフレと短いインフレが順番に来ると見るのが正しいだろうと私は考えています。成長戦略を語るのなら、そうした大きな環境変化をも踏まえた慎重さも必要だと思うのです。
 そもそも、バブル崩壊後の日本は、その間に1本の決定打も出せなかったにもかかわらず、実は何とかなりかけていたのではないかという気がします。バブル崩壊後の日本では20年にわたってデフレが続き、日経平均株価が4万円近くから7000円近くまで下落しました。けれども、バブル後の日本は増え続ける人口を何が何でも養わなければならないという状況ではありませんでした。ですから、そうした大きな経済の失速があっても、あの1930年代の世界恐慌の時のようなことにはならなかった。農村で身売りが相次ぎ、街中に失業者があふれて、政治家がテロに倒れるというような事態にならなかったという面があるわけです。
  改めて振り返ってみると、日本の景気は昨年の夏頃から明らかに回復基調に入っていたと思います。ただ、その回復の勢いを、第二次世界大戦後の技術革新と人口爆発の時代のままの物差しで測って、これではあまりに遅い、あまりに弱いと考え、そこで「一世一代の賭け」に出てしまったのが、金融の異次元緩和なのではないでしょうか。
 ちょっと悲観的すぎるかもしれませんが、最近の金融政策運営を見ていると、「金の卵を産むニワトリを飼っていた男が、この頃の卵は金の殻が薄過ぎる、この際、卵の元になっているはずの金塊を得よう、そう考えてニワトリの腹を切り裂いてみたけれど、中には金のひとかけらもなかった」という始末にならないかと心配しています。そうしたリスクの時代の企業経営者としては、政策のリスクを自ら見極めて大きな時代の流れを見定める視野の広さが求められているのではないでしょうか。
(次回は、6月21日金曜日に一橋大学大学院国際企業戦略研究科の名和高司教授の論考を掲載します)



MBA看板教授が読むビジネス潮流
 企業のビジネスを巡って日々流れるニュースの中には、今後の企業経営を一変させる大きな潮流が潜んでいる。その可能性を秘めた時事的な話題を国内有数のビジネススクールの看板教授たちが読み解き、新たなビジネス潮流を導き出していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130611/249511/?ST=print

革新的理論の礎となった「貧困の経済学」
アセモグル教授、デュフロ教授に連なる貧困研究の歴史
2013年6月17日(月)  澤田 康幸

好評発売中の日経ビジネス別冊「新しい経済の教科書2013〜2014年版」では、「制度と貧困の経済学」を特集して、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授とエスター・デュフロ教授の特別インタビューを掲載した。オンラインの本稿ではさらに、澤田康幸・東京大学教授が、貧困研究の歴史とその展開について詳細に解説する。
 「貧乏」というと、自分には縁遠い話と感じる読者がいるかもしれない。たとえば、1984年のバブル初期に発売され、ベストセラーとなった渡辺和博の「金魂巻」を覚えている読者も多いであろう。「マルキン」・「マルビ」というラベルで医者のような職業でもビンボーがいる「驚き」を描き、一世を風靡した。
 だが、日本における「格差社会」「生活保護受給者の増大」は、まさに貧困問題の現れである。特に貧困高齢者の健康状態は劣悪だ。他方、日本の子供の貧困率も経済協力開発機構(OECD)諸国の中ではより深刻なグループに属している。そして、貧困が世代を超えて再生産されている可能性も大いにある。こうした日本の「貧乏」の問題が、失われた20年に特有の問題かといえば、そうでもなさそうだ。貧困の問題は、長らく日本の経済学の中心的な課題だった。
大正時代に日本で紹介された経済学の貧困研究
 例えば代表的なマルクス経済学者だった京都帝国大学(現・京都大学)の河上肇教授は1916年(大正5年)の9月から約3か月間、大阪朝日新聞の一般読者向けに「貧乏物語」を連載している。これは恐らく、日本で初めて本格的に経済学的な貧困研究を紹介した作品だろう。
 この「貧乏物語」の、特に上編と中編を読んで感心することが4つある。第1に、全体として実証主義を貫いている点だ。主に当時のイギリスにおける貧困研究が、データと共に手際よく紹介されている。貧困問題の実証研究がイギリスから始まっていることが分かると同時に、こうしたエビデンスに基づく議論は、「マル経」を感じさせない。
 第2に、貧乏線(現代では「貧困線」と呼ぶのが普通である)やローレンツ曲線(原文では「ロレンズ氏の曲線」と呼んでいる)といった、現代社会で貧困・所得不平等を計測するうえでの基本概念が、諸外国のデータと共に解説されていることである。とはいえ、「日本のことはよるべき正確な調査が無いからしばらくおくも」とも書いており、当時は貧困に関する議論を展開できる十分な世帯調査・マイクロデータが、日本になかったことも分かる。
 第3に、イギリス・ブラッドフォード市で実施された、貧しい児童を対象とした学校給食支給実験による、児童の体重の変化を研究した結果が紹介されていることだ。小規模の実験結果を受けて大規模な政策介入をするという、貧困対策の政策プログラム評価手続きともいうべき議論を、大正時代に既に紹介しているのである。
 最後に特筆すべき点は、ある時点における貧乏線以下の人口比率という「静学的」な議論だけでなく、時間軸を考慮した貧困研究も紹介していることだ。特に、「おもたるかせぎ人は毎日規則正しく働いていながらただその賃銭が少ないため」という形で、貧乏人比率が半分以上にのぼっていたイギリス・ヨーク市の研究結果を紹介し、「はたらけどなおわが生活楽にならざり」というのが貧困の特徴であることを議論している。これは、現代風にいえば貧困動態(poverty dynamics)研究における「慢性的貧困(chronic poverty)」の問題である。
 こうした貧困の研究は、過去に流行の波が何度か訪れた。貧困(貧乏)研究の第1人者である米ジョージタウン大学のマーティン・ラバリオン教授は、Google Booksの膨大なデータを基にした研究で、「貧困」言説には、18世紀後半と20世紀後半以降に2つの流行の波があったことを発見している。(*1)このうち「第2の波」については、1970年代における「人間の基本的ニーズ(BHN)論」に源流を遡ることができる。さらに90年代後半以降、「貧困」削減重視の潮流が、とりわけ発展途上国の国際開発協力の分野で顕著となってきた。
 過去20年の動きとして特筆すべき点は、国際連合や世界銀行などの国際機関やG7(G8)を主体として、実務レベルで貧困削減に向けた様々な具体的な目標を設定し、取り組むようになったことだろう。(*2)こうした「貧困削減」の潮流が、最終的には2000年9月の国連ミレニアムサミットで国連加盟国の支持を得て採択された「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」として、数値目標へと結実した。
*1 Ravallion, Martin (2011), “The Two Poverty Enlightenments,” Policy Research Working Paper 5549, World Bank*2 具体的な試みとしては、例えば、OECDの開発援助委員会(DAC)が1996年に採択した「新開発戦略」や、1999年6月の 世界銀行・IMF 総会で採択された貧困削減戦略書(PRSP)が重要である。
 MDGsは、2000年の国連ミレニアム総会で採択された決議である「ミレニアム宣言(55/2)」を具体化したもので、8つの目標からなる。2015年までにそれぞれの分野において達成すべき具体的な数値目標が明記されている。MDGsには、第1目標として「極度の貧困と飢餓の撲滅」が含まれ、「1人1日1ドル以下の人口の割合を1990年から2015年にかけて半減すること」を数値目標の「ターゲット1」としている。MDGsの最終年が近づいたことで、近年、貧困をめぐる「ポスト2015年開発目標」に向けた学術・政策面での議論が活発になっている。
 貧困線以下の人口比率、つまり貧困人口比率で貧乏の程度を把握するという考え方の背後にも、ノーベル賞経済学者、アマルティア・セン教授の「公理アプローチ」に基づいた「望ましい貧困指標」の導出や、アンソニー・アトキンソン教授が生み出した、「確率優位 (stochastic dominance)」の概念による特定の貧困線によらない貧困の把握手法など、注目すべき理論的な発展が礎にある。しかし、貧困言説の「第2の波」が訪れたのは、おそらく貧困の実態把握が目覚ましく進歩したことが大きいだろう。質の高いマイクロデータが、先進国だけでなく多くの途上国でも得られるようになり、貧困問題に関するエビデンス(科学的証拠)の蓄積が進んだのだ。
金字塔となった国際半乾燥熱帯作物研究所の調査

ICRISAT-VLSの調査対象となっている村の風景
 研究史から見て最も重要だった調査の1つが「国際半乾燥熱帯作物研究所 (International Crops Research Institute for the Semi-arid Tropics; ICRISAT)」(*3)による村落調査(Village Level Studies, VLS)データである。ICRISAT-VLSデータは、10年にわたる長期の家計パネルデータで、リスク・貧困・消費や労働・農業生産・投資などミクロレベルの動学・計量経済分析を可能にした、開発経済学における「黄金のパネルデータ」ともいうべきものである。
 ICRISATは1972年にインド・ハイデラバード郊外に設立された農業研究の国際機関で、75年から村落調査(VLS)を開始している。VLSでは、インドの半乾燥地域から6村落を抽出し、各村落から40家計を無作為抽出し、住み込み調査員(resident investigator)が訪れて、3-4週間ごとに継続的な調査をした。特に、3つの村の104世帯については10年間調査が続けられ、世帯パネルデータが構築された。(*4)長期のパネルデータが強みとなり、時間の経過を通じた貧困動態の分析や、リスクと貧困の関係に関する研究が深まっていく原動力の1つになった。VLSデータを用いた学位論文は世界中で100件以上に上り、数多くの一流の経済学者たちがVSLデータを解析した論文が「Econometrica」、「American Economic Review」、「Journal of Political Economy」など経済学のトップジャーナルに掲載されてきた。
*3 「イクリサット」と呼んでいる。
*4 Walker, Thomas S. and James G Ryan (1990), Village and Household Economies in India's Semi-arido Topics, Johns Hopkins Uniersity Press. 近年、再調査が行われている。詳しくは、オックスフォード大学、Stefan Dercon教授のウェブサイトを参照されたい。
 例えばロバート・タウンゼンド教授による、1994年「Econometica」論文が代表例だ。この論文では、村落共同体における分け合い・助け合いの仕組みが消費の保険として有効に作用しているかどうかが厳密に検証された。(*5)また、貧困状態をみると、慢性的な貧困に置かれている世帯より、一時的な貧困状態に陥るリスクに直面している世帯のほうが数が多いことや、農村では大型の家畜が貯蓄の手段になっているものの、貧困化するリスクに直面して貯蓄としての家畜を(売却などで)「取り崩そう」とすると大きなコストを伴うこと、貧困層にとっては結婚がリスク分散の重要な手段であることなど、新たなエビデンスが次々と明らかになってきた。
 ICRISATにやや遅れ、世界銀行は1980年に「家計生活水準計測調査(Living Standards Measurement Study;LSMS)」プロジェクトを開始した。LSMSの目的は、世界各国の政策立案者・政策担当者が貧困問題、雇用・医療や教育の問題にしっかり取り組むことができるよう、質の高い世帯調査を実施することである。
世界全体の貧困人口把握に役立った世銀プロジェクト
 LSMSでは、発展途上国における世帯調査の設計、実施、データの分析を一貫して実施する。調査活動の改善及び統計担当機関の能力向上にまで踏み込むため、生活水準を把握するために必要な調査の「質の向上」を目指すプロジェクトであるといえる。長期のパネルデータであるICRISAT‐VLSと異なり、LSMSは主に複数時点でのクロスセクションの調査である。調査設計については米プリンストン大学のアンガス・ディートン教授などが中心的な役割を果たし、この調査データもまた世界中で数多くの学術論文や博士論文・修士論文に用いられてきた。(*6)
 そしてLSMSの最も重要な貢献は、LSMSにより統一された調査の枠組みが、貧困実態を国際比較するうえで極めて重要な役割を果たしたことである。ある国の1人1日1ドル以下の貧困人口比率が世界全体でどの程度に位置するのかは、LSMSなくしては把握できなかったといっても過言ではないだろう。
 LSMSをはじめ、世界中の家計調査を活用した先のラバリオン教授らによる研究に基づいて、(*7)現在、貧困な生活水準の境界である「貧困線」の金額は一人一日1.25ドルということになっている(次ページの図参照)。この図から明らかなように、中国の貧困が劇的に削減された結果、東アジア太平洋地域(東アジア・東南アジア)全体の貧困人口比率が、1980年の約80%から、30年間で20%以下へと大幅に低下した。より注目すべきは、世界の最貧困地域とされてきた南アジアでも、近年貧困人口比率の低下が加速しつつあることだ。
*5 Townsend, Robert M. (1994), ‘Risk and Insurance in Village India,' Econometrica 62, 539-591*6 Deaton, Angus (1997), The Analysis of Household Surveys: A Microeconometric Approach to Development Policy, Oxford University Press*7 Chen, Shaohua, and Martin Ravallion (2008), “The Developing World is Poorer than we Thought, but no Less Successful in the Fight Against Poverty,”Quarterly Journal of Economics, 125(4), 1577-1625図 世界各地域における、1人1日1.25ドル以下の生活を営む貧困人口の比率

(データ出所) Regional aggregation using 2005 PPP and $1.25/day poverty line, Data last updated: April 18, 2013, Povcal Net, World Bankパランプール村と速水村の実績
 駆け足で貧困に関する調査手法の流れを紹介してきたが、ここでさらに、ICRISAT‐VLSと同時期に開始された先駆的な家計パネル調査を2つ紹介したい。1つは、イギリスの研究チームによる、インドのウッタル・プラデシュ州のパランプール(Palanpur)という村を対象とした調査である。(*8)

台風被害を受けた速水村の一コマ
 これは、デリー大学の研究者による村落調査を引き継ぐ形で、1974-75年、英オックスフォード大学のクリストファー・ブリス名誉教授とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のニコラス・スターン教授が詳細に調査したものだ。そして1983-84年・93年にスターン教授と現世界銀行のピーター・ランジョウ博士が再調査をした。その結果、20年にわたるインドの農村の個別世帯・個人の生活の変化が明らかになった。さらに2009年にも再調査され、デリー大学による当初調査からみれば約半世紀にわたり、インドの農村家計の生活動態を調査し続けているのである。これら一連の研究では、カーストの低位に属する世帯や農業労働者の世帯はさらに貧困するリスクを抱えており、そうした状況から抜け出せない「罠」に陥っていることが明らかにされている。
 もう1つは、故速水佑次郎教授らを中心として精力的に進められたフィリピン・ロスバニョス近郊にある、1つの稲作農村「東ラグナ村」を対象とした40年にもわたる家計調査である。(*9)1966年の梅原弘光教授による全数調査以降、1974年から2013年までの間に、国際稲研究所(International Rice Research Institute; IRRI)との連携による18回もの家計調査が実施された。㊟IRRIは、フォード財団、ロックフェラー財団の多大な資金援助によって設立された国際機関であり、米の高収量品種開発を通じて60年代のアジアにおける「緑の革命」の中心となった。現在はICRISATなどともに国際農業研究協議グループ(CGIAR)の一角をなしている。1970年代から90年代の調査は速水教授・菊池眞夫教授が中心となり、2000年以降の5回の調査は加治佐敬教授、不破信彦教授、ジョナ・エステュディリョ教授と筆者らが中心になって実施した。
*8 例えば、[http://www2.lse.ac.uk/asiaResearchCentre/countries/india/research/palanpur.aspx]を参照のこと。
*9 例えば、[http://www.ier.hit-u.ac.jp/primced/documents/DB_Sawada-etal_Philippines_121126_revised.pdf]を参照のこと。
 速水教授らの研究の結果、「緑の革命」による収量の増加と米価の低下により農家の所得が上昇し、貧困世帯の食糧事情が改善したことや、所得上昇に伴って教育投資が増え、世帯のみならず村全体が農業主体の経済活動から非農業主体の活動へと構造変化を遂げていった様子が鮮やかに示されている。本研究もまた、数多くの国際的な学術論文や英文書籍としてまとめられており、「速水村(Hayami’s village)」の調査として知られている。(*10)
アセモグル、デュフロの革新性とその礎
 本シリーズのインタビューにも登場している米マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授らによるマクロレベルの政治経済発展の議論は、いわば山脈全体の生態系を把握し、貧困の背後にあるメカニズムに迫ろうとする壮大な試みだ。他方、同エスター・デュフロ教授らの研究は、最先端の技術を用いて木の生育メカニズムや木々の構成を科学的に明らかにしようとする画期的な試みである。(*11)いうまでもなく、実態の把握には森も木も見る必要があり、これらの研究は相互に補完的だ。一方で今回紹介したICRISAT-VLSなど長期の村落調査は、いわば身の回りの里山をじっと虚心坦懐に観察し、見守り続けることに似ている。ミクロ計量経済学の分析手法の進化、大量のデータ解析を可能とする計算機の機能改善、アセモグル教授やデュフロ教授らが推し進めてきたような新しい研究手法が深化してきたことも、貧困言説の「第2の波」の背景にあるのは間違いない。とはいえ、長期にわたる地道な調査から得られた知見が、こうした新しい波の原動力のひとつでもあったことは、忘れてはならない。
 映画監督サタジット・レイ(Satyajit Ray)の「オプの物語」という、おそらくインド史上最高の3部作映画がある。この作品の時間の流れは、小津安二郎映画のように一見ゆったりとしているが、貧乏の背後にある、人生や家族、宗教や社会の因習・政治に関する極めて強力なメッセージが込められている。
 サタジット・レイと同じく、詩聖ラビンドラナート・タゴール(ノーベル文学賞を受賞した作家)ゆかりのシャンティニケタンで学んだインド人のアマルティア・セン教授は、地域全体で1人当たり食物生産が改善していたにもかかわらず300万人以上もの人々が亡くなったベンガル飢饉の原因をさぐり、その貢献もあって1998年にノーベル経済学賞を受賞した。
*10 これ以外にも、米ランド研究所がマレーシアやインドネシアで実施してきた家計パネル調査である、家庭の生活実態調査(Family Life Survey)、国際食糧政策研究所(International Food Policy Research Institute, IFPRI)がパキスタンなど世界各国で実施してきた膨大なパネル調査など注目に値する数々の調査がある。
*11 両教授の研究概要については、「2013−14年版 新しい経済の教科書」日経ビジネスを参照されたい。
 冒頭でも触れたが、「飢饉」「貧困」や「貧乏」と呼ぶと何か我々日本人とはかけ離れたもののように感じるかもしれない。しかし、「貧困は別世界で起こるのではない、国や文化の違いを越えて我々の生活とは連続したものなのだ」という現実感を、サタジット・レイの映画は教えてくれる。セン教授も、「文化や社会の特殊性を越えて、我々の生活と同じように個人レベルに還元される現実の多様性を鮮やかに描いている」とレイ映画を評している。(*12)貧困の研究とは、「1人1日1ドル以下の貧困」を、レイ映画のように鮮やかに描き、その作業を通じて人々の貧乏と苦悩とを軽減する「鍵」を探す作業でもあるのだと考える。
*12 Amartya Sen (1996) “Satyajit Ray and the art of Universalism: Our Culture, Their Culture” The New Republic, April 1, 1996, p.32

新しい経済の教科書2013
今年で4年目になる別冊「新しい経済の教科書」。アベノミクスで人々の期待が上向く中、期待を現実に変えるために必要な施策とは何か。
インタビューに登場した2人の経済学者の「知恵」から、「アベノミクスの先」を読みます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130612/249583/?ST=print


 

 

【第820回】 2013年6月17日 週刊ダイヤモンド編集部
日銀発金融ショックを招いた
海外勢の都合のよすぎる注文

黒田総裁は「長期金利動向には十分注意していくし、変動率が高まることは好ましくない」と述べた
Photo by Ryosuke Shimizu
 6月10〜11日の金融政策決定会合で、日本銀行は期待されていた“金利安定化策”を導入しなかった。「固定金利オペ」の期間延長である。

 国債や社債などを担保に0.1%の固定金利で銀行に資金供給する日銀の金融調節手段の一つであり、平常は1カ月物や3カ月物の短期資金供給に使われ、期間は1年以内に限られている。

 これを2年以上に延長し、乱高下する長期金利を抑えるはずだ、と前のめりの観測が海外投資家を中心に高まっていたのだ。欧州中央銀行(ECB)が2011年末に実施した3年物LTRO(長期資金供給)にちなみ、「日本版LTRO」とも呼ばれつつあった。

 背景には、4月4日の質的・量的緩和以降、銀行の取引量が多い短期ゾーン(5年以下)で長期国債の大量売却が発生し、金利が急上昇したことがある。そこで日銀は4月11日、初めて1年物の固定金利オペを実施。以降、5月までに計7回もの1年物オペを打った。

 1年物オペで資金調達した銀行は、この先1年間の調達金利が確定し、金利変動リスクを軽減できるため、短期ゾーンの国債を買いやすくなる。オペの期間を延長すれば買いやすさは増し、金利も低下するというわけだ。

導入しづらい三つの事情

 しかし、黒田東彦総裁は「現時点では必要ない」と日本版LTROの導入を一蹴。期待を裏切られた市場は失望し、株売り・債券売り・円高の動きへと連鎖、金融ショックは世界を駆け巡った。

 確かに日銀の判断には一理ある。最近の長期金利は徐々に安定しつつあり、1年物オペを打つ余地も残っている。さらに言えば、実は固定金利オペの期間延長は、導入しづらい事情が他にもある。日銀が物価目標の達成を目指す上で、多くの矛盾をはらむのだ。

 第一に、ポートフォリオリバランス効果との矛盾だ。質的・量的緩和の狙いの一つは、国債頼みの運用を続けてきた銀行に、リスク資産運用や融資を増やす「ポートフォリオリバランス」を促すことにある。仮に、金利安定化のために固定金利オペで銀行に国債購入を促せば、この狙いに相反する。

 第二に、供給期間が2年を超えるオペを打つとなると、「2年でインフレ率2%」の目標とも矛盾する。日銀自らが達成に2年以上かかると認めるようなものだからだ。

 第三に、ECBのケースとはまるで事情が違う。ECBのLTROは、資金繰り破綻リスクに直面する銀行に流動性を供給することが目的だった。日本の場合、銀行の資金は十分にあり、それが国債購入をためらわせている理由ではない。

 金利乱高下の原因は、日銀が一気に大規模な国債購入を打ち出したことで国債市場から参加者が逃げ出し、流動性が低下してしまったことにある。株高・円安の演出で海外投資家を喜ばせた大規模緩和そのものが、金利不安定化を同時に招いていたのだ。さらなる緩和はしてほしい、しかし金利安定化策は今すぐ打つべき、というのがそもそも、海外勢の都合のよすぎる注文だった。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)


04. 2013年6月18日 06:56:05 : e9xeV93vFQ
【第282回】 2013年6月18日 真壁昭夫 [信州大学教授]
あっという間に異次元金融緩和の効果が台無しに
“大荒れドル円相場”がこれほどの悪循環に陥った真相
相場展開に頭を抱える者が続出
いつになく値動きが激しいドル円相場

 足もとの株式や為替などの金融市場が不安定な展開になっている。特に、為替市場のドル円レートは、大きな材料がないときでも値動きが激しくなっている。しかも、値動きの要因がわかりにくく、従来の理屈が通用しない展開になっている。為替市場関係者の中でも、難しい相場展開に頭を抱える者もあるほどだ。

 昨年から今までのドル・円相場の展開を振り返ると、昨年9月まで1ドル=70円台後半で推移していたドル・円レートは、その後、米国経済の回復期待が盛り上がったこともあり、徐々に円安方向に進み、4月上旬には1ドル94円程度になっていた。

 そこに4月4日、日銀の“異次元の金融緩和策”が発表された。それは、ドル・円の為替レートに決定的な要素として作用した。日銀がそれまでの常識を覆す大規模な資金供給を行うことによって、円安が加速されるとの思惑が台頭したからだ。

 ヘッジファンドや為替ディーラーなどは、発表直後から多額の円売り・ドル買い注文を市場に出し、ドル高・円安の傾向が一挙に進むことになった。その勢いは5月22日まで続き、ドル・円レートは103円台まで進んだ。

 ところが5月23日、前日の米国におけるバーナンキFRB議長の金融緩和策の出口に関する発言もあり、ヘッジファンドなどは積み上げてきたドル買い・円売りの利益を確定する巻き戻しのオペレーションを出した。

 その結果、株価やドル・円レートは大きく反転した。それ以降、株式も為替も値動きが荒く、明確な方向感の見えない不安定な推移が続いている。足もとの金融市場の動向を解き明かす鍵は、ヘッジファンドなど投機筋の動きにあるだろう。

 昨年の春先以降、ヘッジファンドの一部やディーラーなどは、わが国の貿易収支の赤字拡大や米国経済の回復期待を材料にして、ドル買い・円売りの持ち高を積み上げ始めていた。そうしたオペレーションは水面下で続き、秋口以降、為替市場では徐々にドル高・円安傾向が定着し始めた。

 そして今年4月4日、投機筋にとってまたとない収益チャンスが到来した。日銀の“異次元の金融緩和策”が発表されたからだ。金融緩和策の主な内容は、日銀がベースマネーの量を向こう2年間で約2倍まで増加させ、消費者物価指数を2%まで引き上げるというものだった。それらが本当に実現されると、どう考えても円安になると考えられる。

 それに加えて、米国経済の回復期待も少しずつ実現可能性が高まった。それらの要素を考え合わせると、短期的にはドル高・円安の方向性は疑いの余地はないように見えた。それに目をつけたのは、それまであまりドル・円の為替に手を出していなかったヘッジファンドだったと言われている。

ドル買い・円売りと日本株の先物買い
円安傾向を演出したヘッジファンド

 彼らは迷うことなく、大挙してドル買い・円売りに走った。結果的に、5月23日までのドル高・円安傾向を演出したのは主に彼らだった。彼らは、通常では考えられないようなペースでドル買い・円売りと日本株の先物買いのオペレーションを行った。

 その結果、ドル・円相場は、それまでの94円台から一時103円台まで変動した。同時期、日経平均株価は約30%の上昇率を記録することになった。いわば“短期バブル”の様相だった。

 しかし、バブルはいつまでも続かない。5月23日、FRBのバーナンキ議長の議会証言や中国の経済指標が不芳だったことをきっかけに、多くの投機筋は利益確定のポジション手仕舞いに出た。

 彼らは買ったものは売り、売ったものを買い戻して利益を確定するため、日本株先物売り、ドル売り・円買い戻しのオペレーションをすることになる。その結果、一挙に日本株が下落し、円高・ドル安に相場が転換することになった。

利益確定の手仕舞い売りが殺到
5月23日以降の円急上昇の要因

 5月23日を境に、金融市場はそれまでの相場展開を大きく変えることになったのだが、金融市場を取り巻く世界経済の状況に大きな変化は見られない。強いて言えば、米国FRBの金融緩和策の出口に関する発言が増えた程度で、相場動向を大きく変えるような要件とは考えにくいだろう。

 むしろ、世界的な金融市場の動向を変えるきっかけになったのは、ヘッジファンドなど投機筋の持ち高=ポジションのリバランスだったと考えるとわかり易い。彼らは、時に常識では考えにくいほど多額のポジション調整を行うことがある。そのため、どうしても彼らの動きが、短期的に市場を大きく動かしてしまうことがある。

 今回のケースでは、4月4日から5月22日までの約1ヵ月半の間に、思い切り積み上げた多額のポジションの巻き戻しを行ったため、そのインパクトが過大になってしまったと考えられる。ポジション調整は、基本的に経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズなどに関係なく、各投資家が抱えるポジションという個別の事情によって行われるため、経済状況の変化などとは必ずしも符合しないことになる。

 たとえば、米国の金融緩和策が縮小されるのであれば、米国の金利水準が上昇して、日米の金利差が拡大することが予想される。日米の金利差が拡大すると、ドルが強含み、円が売られやすくなるはずだ。

 しかし実際には、5月23日以降、円高・ドル安方向に動いている。その背景には、投機筋のポジション巻き戻しに加えて、米国の金融緩和策縮小懸念から世界的に株価が下落したことで、投機筋が抱えるポジションのリスク量が上昇したことがある。

 ポジションのリスク量が増加すると、リスク量を減らす=リスクオフのため、持ち高を絞ることになる。その結果、保有しているドル買い・円売りのポジションを手仕舞うことが必要になる。

一時1ドル=94円の円高に逆戻り
今後の金融市場はどう動くのか?

 もう1つ無視できない要因の1つに、新興国の株安・通貨安がある。もともとヘッジファンドなどの一部の投機筋は、インドネシアやフィリピン、タイなどの株価上昇を見込んでいた。彼らの一部は、金利が低くしかも上昇する可能性の低い円を、ファンディング通貨として使っていたフシがある。

 金利の安い円で資金を調達し、それを為替市場で新興国通貨に変えて、当該国の株式に投資を行っていたのである。それによって、円安による為替差益と、新興国株式の値上がり益の両方を手にすることができるとの目論見だった。

 ところが、米国の金融緩和策の出口論が盛り上がり、世界的に投資資金の量が減ることが予想されると、新興国の金融市場から多額の資金が流出することになる。流出した資金の一部は、ファンディング通貨である円に回帰するはずだ。結果として、新興国通貨が下落する一方、円が買われて強含みになるのである。

 最近の為替市場での円の動きを見ていると、つい最近までは円安が進むと日本株が買われる傾向があったのだが、最近では、むしろ世界的に株価が下落すると円が買われる傾向が見て取れる。その背景には、新興国の株価が下落によって、投資資金が円に戻る可能性が高まることが考えられる。

 足もとの金融市場は変動幅が大きく、不安定な展開になっていることもあり、一般の投資家が手を出しにくい状況になっている。一般投資家の参加が減っていることが、投機筋などによる値動きの荒い相場展開を加速している。悪循環に入り込んでしまったということができる。

 しかし、そうした相場展開が永久に続くことはあり得ない。日銀の“異次元の緩和策”以降のミニバブルの調整は早晩終了するはずだ。相場展開が落ち着きを取り戻せば、それなりに安定した推移に戻るはずだ。

 そのときを冷静に待てばよい。むしろ、金融市場がオーバーシュート(売られ過ぎ)になれば、絶好の収益チャンスになることも考えられる。
http://diamond.jp/articles/print/37529

 

 

【第63回】 2013年6月17日

藤井 英敏


6月7日の底入れ説は本当か?
来るバーナンキ・ショックに備える投資法とは?
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 ボラタイルな相場が続いています。今週は18〜19日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)と、FOMC後のバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見が世界の金融市場を大きく動かすことになる見通しです。バーナンキ議長が量的緩和縮小に言及した5月22日以降、世界の金融市場は不安定さを増しています。

 今回議長は市場を落ち着かせようとするとみられているようですが、それで、米金融政策の先行き不透明感が後退すれば、株式市場で買い安心感が広がることでしょう。

 その一方、それでも動揺が収まらなければ、さらに投資家の不安が強まる可能性も否定できません。このため、FOMC後の議長発言を受けた市場の反応を確認できるまでは、多くの投資家は様子見スタンスを崩せそうにありません。

日経平均は6月のSQ値1万2668.04円に注目しておく

 実際、東証一部の売買代金は9516億円と、1兆円大台を割り込み、薄商いでした。このため、今週の東京株式市場は引き続きボラタイルな動きと、円相場に対して神経質な動きを継続することでしょう。日経平均の想定レンジは下値は26週移動平均線(14日現在1万2333.33円)〜25日移動平均線(同1万4050.68円)です。ボラティリティーが高止まりしているため、想定レンジも非常にワイドせざるを得ませんね。


日経平均の日足チャート(6カ月)。緑が5日、赤が25日、青が75日の移動平均線(出所:株マップ)
 今週以降については、6月のSQ値1万2668.04円を上回れば25日移動平均線を目指し、逆に下回れば26週移動平均線を目指すと考えています。

 SQ値は足元で最も商いをこなした価格であり、これより上なら好需給で相場は上がり易く、下なら需給が悪化し相場は下がり易いとみています。なお、短期的には、日足ベースの「一目均衡表の雲」は抵抗帯として強く意識されそうです。また、バーナンキ・ショックが発生したら、26週移動平均線はあっさり割れることでしょう。

 確かに、5月23日以降、乱高下を繰り返した6月物の先物・オプションが、14日のSQで清算されました。この結果、先物・オプション市場での手仕舞い売りの懸念は大幅に低下したことは事実です。これを機に、先物市場の需給の混乱が収まる可能性が高まりました。これは需給面のポジティブ材料です。

 なお、真偽の程は不明ながら、一部で株価上昇の切り札に郵貯マネーを活用するのではとの観測が報じられています。

次のページ>> 日本株の調整はすでに十分なレベルに

ゆうちょ銀行は190兆円の資産のうち、9割を日本国債で運用し、株式はゼロ。そこで安倍政権が主導し、ゆうちょのポートフォリオを見直すとの見立てです。かんぽ生命の90兆円近くがプラスとなれば総額は280兆円に上り、その10%でも株式に回せば、30兆円近くの資金が市場に流れ込むことになると指摘しています。これが実現するようなら、日本株の急激な底入れがあるでしょうが、それの実現確度が高まるまでは相場が織り込むには無理がありますね。

調整は値幅、率ともに十分なレベルに来た

 それはさておき、日経平均は5月23日の1万5942.60円から6月13日の1万2415.85円まで、16営業日で3526.75円(22.12%)下落しました。調整としては、幅・率共に十分です。

 また、14日の終値は1万2686.52円と、25日移動平均線(14日現在1万4050.68円)との乖離率はマイナス9.71%です。そして、14日の東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)が69.60%に低下しました。騰落レシオの70%割れは2012年6月6日以来およそ1年ぶりのことです。これらの売られ過ぎを示唆するテクニカル指標からも、現在の相場は十分に底値圏といえます。

 このため、今週以降、余程の悪材料が出ない限り、相場は底堅さを発揮する見通しです。しかしながら、底堅いからといって、それが即、自律反発入り、すなわち、上がるわけではないとみておく必要があります。底練り、底値圏での横ばいという相場が継続するという状況も十分ありえます。底入れ後、明確に相場が上昇に転じるためには、それなりの理由、きっかけが必要でしょうね。

 ただし、ここにきて気掛かりなことがあります。

次のページ>> バーナンキ・ショックに備える投資戦略

皆の相場観が一致する時は危ない

 というのは、日経平均が13日安値が1万2415.85円と、7日安値1万2548.20円を割り込んだものの、TOPIXの13日安値は1040.31ポイントと、7日安値1033.02ポイントを死守しました。これを根拠に、私の周りの多くの友人が7日底入れ説で一致していることです。このように皆の相場観が概ね一致するときは、えてして逆の目が出るものです。


日経平均の日足チャート(3カ月)。緑が5日、赤が25日、青が75日の移動平均線(出所:株マップ)
 このため、確率は低いかもしれませんが、TOPIXの1033.02ポイント割れを意識しておく必要がありそうです。万が一、1033.02ポイント割れになるようなら、狼狽売りが加速し、セリング・クライマックスが訪れることでしょう。

 現時点では確率的には7日で底入れした可能性が高いとはみてはいます。

 しかし、確率が低い相場想定でも、十分起こり得ると考えるべき局面では、成り上がりたいあなたは、発生確率の低い事象でも発生したケースでの相場展開を予めイメージしておく必要があります。そのようなイメージをしておくことが、万が一の相場が実現した場合、他の投資家よりも的確、かつ、迅速な対応が可能になるからです。

バーナンキ・ショックに備える投資法とは?

 このような相場想定でお勧めするポジションは、ストラングルの買いです。

 ストラングルの買いとは、オプションへの投資戦略の一つで、同一限月、異なる権利行使価格のプットオプションとコールオプションを同数買う戦略のことです。具体的には、例えば、7月限の権利行使価格1万3750円のコールと、同1万2250円のプットを同枚数買うことです。

 ただし、バーナンキ・ショックが発生しなかったら、コールはホールドし、プットだけはすぐに損切りする必要があるでしょう。逆に、バーナンキ・ショックが発生したら、プットをひきつけて利食い、その後の反発局面でコールを手仕舞えばよいでしょう。なお、このポジションは発生確率が低い、バーナンキ・ショックが起こった場合でも収益を獲得することができる戦略です。

 多くの投資家は発生確率の高い事象が起きた時に儲かるポジションを組みがちです。しかし、成り上がりたいあなたは、発生確率の高い事象が起きた時はもちろん、発生確率の低い事象が起きた時でも、儲かる可能性が高い戦略を常に追求するべきだと思います。
http://diamond.jp/articles/-/37571?page=3
 


 


【第88回】 2013年6月18日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役社長]
政府の成長戦略に頼るのはもう止めよう
 政府は6月14日、日本再興戦略(JAPAN is BACK)を策定した。それによると、「民間の力を最大限引き出す」、「全員参加・世界で勝てる人材を育てる」、「新たなフロンティアを作り出す」ことにより、10年間の平均で名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の実現を目指し、10年後には1人当たり名目国民総所得の150万円以上の拡大が期待される、としている。

具体的な数値目標が
多いことは評価できる

 政府は上記の成長実現に向けた具体的な取組みとして、下図の3つのアクションプランを掲げた。


(出所:首相官邸HP)
 今回のアクションプランの特徴は具体的な数値目標が数多く設定されていることである。少し、煩雑になるが、それらを書き出してみよう。

(1)日本産業再興プラン
◆3年間で設備投資を10%増加させ、リーマンショック前の民間投資の水準(約70兆円/年(昨年度63兆円))に回復
◆5年間で失業期間6ヵ月以上の者の数を2割減少させ、転職入職率を9%(2011年7.4%)に
◆2020年に女性の就業率(25歳〜44歳)を73%(2012年68%)に
◆今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学10校以上に
◆イノベーション(技術力)世界ランキングを今後5年以内に世界第1位に
◆2015年度中に、世界最高水準の公共データ公開内容(データセット1万以上)を実現
◆2020年までに、世界銀行のビジネス環境ランキングで日本を先進国3位以内(現在15位)に
◆世界の都市総合力ランキングで東京を3位以内(現在4位)に
◆開業率・廃業率10%台(現状約8%)を目指す
◆2020年までに黒字中小企業・小規模事業者を70万社から140万社に増やす
◆今後5年間で新たに1万社の海外展開を実現する

(2)戦略市場創造プラン
◆国民の「健康寿命」の延伸
<目標>


(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成)
◆クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
<目標>


(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成)
◆安全・便利で経済的な次世代インフラの構築
<目標>


(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成)
◆世界を惹き付ける地域資源で稼ぐ地域社会の実現
<目標>


(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成)
(3)国際展開戦略
◆2018年までに、貿易のFTA比率70%(現状19%)を目指す
◆2020年に約30兆円(現状約10兆円)のインフラシステムを受注
◆2020年までに「潜在力」・「意欲」ある中堅・中小企業等の輸出額を2010年比で2倍に
◆2018年までに放送コンテンツ関連海外売上高を現在(63億円)の3倍に増加
◆2020年に対内直接投資残高を35兆円(2012年末時点17.8兆円)に倍増

 仮に政府の目論見通りに事が運べば、雇用だけでも2030年までに約550万人の増加が見込まれる。また、数値目標の中には、「大学ランキングトップ100に10校」「ビジネス環境ランキング3位以内」「FTA比率70%」等、かなり野心的な目標も含まれている。正直なところ、例えば、これらの数値目標の半分が達成されるだけでも、わが国経済はかなり好転するのではないか。このように、具体的な数値目標を数多く設定したことは、それなりに評価されていいと考える。それにもかかわらず、日本再興戦略が不人気に見える(≒市場が反応しない)のは一体どうしたわけだろう。

人口を増やす等の
大きな柱が抜けている

 企業の売上高に端的に表れているように、経済とは、つまるところ、件数×単価である。これをGDPに近似的に引き直せば、人口×消費額、もしくは人口×生産性と表すことができる。いずれにせよ、前にも当コラムで指摘したように、少子高齢化に直面しているわが国では、「人口を増やす政策を総動員すること」こそが最大の成長戦略であり、焦眉の急なのだ。

 ところが、今回の政府の日本再興戦略には、肝心要の人口を増やす政策がスッポリと抜け落ちている。どのように出生率を嵩上げするのか、移民問題をどう展望するのか、等の処方箋が、どこにも見当たらないのだ。わずかに観光客の増加(訪日外国人)が取り上げられているに過ぎない(因みに、人口の増加は必ずしも定住人口にこだわる必要はない。留学生や観光客の増加は、立派な人口政策である)。

 次に、消費額を増やすためには、老後の安心が欠かせないのではないか。消費が低迷している大きな要因は、将来が不安で思い切ってお金を使えないからだ。「国民の健康寿命の延伸」も大切だが、むしろ健康でなくなった後の老後をどのように過ごすのかが、より切実な問題となっているのではないか。その意味で、税と社会保障の一体改革を断行し、国の社会保障をサステイナブルなものに改革、再構築することが、実は骨太の成長戦略に他ならないのだ。この至極真っ当な視点も、日本再興戦略には欠如している。

 さらに、生産性を上げるためには、労働の流動化が欠かせない。この問題については、前回のコラムでも取り上げたので再述は避けるが、日本再興戦略が今一つ盛り上がりに欠けるのは、こうした大きな柱が何本か抜けているからではないか。例えてみれば、市場には、心柱を欠いた五重塔のように映っているのではないか。

成長戦略に頼るのは
もう止めよう

 ところで、今回に限らず、わが国では、政府に成長戦略の策定を迫る経済人が後を絶たない。摩訶不思議な現象ではないか。わが国には、そもそも成長戦略に対する大きな誤解があるように思えてならない。

 わが国の官僚は世界でも優秀の部類に属すると考えるが、アメリカのように投資銀行のトップが財務長官になるような国ならいざ知らず、わが国の官僚は、大学卒業後ずっと1〜2の官庁で働いてきた人ばかりであって、自ら商いや投資をやった経験のある人はほとんどいない。そんな人に成長戦略が本当に描けるだろうか。キャッチアップの時代であれば、先進国の政策を翻訳すればそれで良かったので、成長戦略を描くことは可能だったかも知れないが、海図なき現在ではそうはいくまい。

 実際、今回の日本再興戦略の策定プロセスでも、民間の経営者等が多くの助言を行っていた。もちろん、他国の例をよく研究して、競争環境を整えること等、政府にしかできない仕事も数多く存在するが、およそ具体的な成長市場や成長産業を政府が主導することは、できっこないと考えるべきである。それを行えば資源配分を歪めてしまうだけである。

 加えて、商いや投資経験のない人に書いてもらった成長戦略にそのまま従って、本気で儲かると思っている経済人が本当にいるのだろうか。そもそも、政府に成長戦略の策定をお願いするような経済人が取り仕切っているような社会が、果たして成長するのだろうか。

 政府にできることは、規制緩和と、ビジネスを行い易くする土俵(人口政策や税と社会保障の一体改革等)を整えることがほとんど全てだと考える。成長戦略は、民間企業が、そして市民が、自発的に行動することによってしか本来描けないものだと考え直そうではないか。成長市場や成長産業は、所詮は試行錯誤の中から生まれてくるものでしかないのだ。政府の成長戦略に頼るのはもう止めよう。日本再興戦略が、そのように市民の自覚を促す契機となれば幸いだ、と考えるがどうか。

(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)
http://diamond.jp/articles/print/37534


 


ドルが対円で上昇、FOMC控え緩和堅持の期待で=NY市場
2013年 06月 18日 06:21 JST
[ニューヨーク 17日 ロイター] 17日終盤のニューヨーク外為市場では、米連邦準備理事会(FRB)が19日に発表する連邦公開市場委員会(FOMC)声明が金融緩和の堅持を投資家にあらためて確信させる内容になるとの期待から株価が上昇する中、ドルが対円で5営業日ぶりに上昇した。

ドル/円は日経平均や欧米の株価上昇に支えられ一時、この日の高値となる95.21円まで上がり、その後0.5%高の94.96円となった。海外市場では先に94.08円まで下げていたが、昨年9月から今年5月までの上昇分を38.2%戻した93.57円近辺が下値支持線とみられている。

円は他の主要通貨に対しても売られ、ユーロ/円は0.6%高の126.30円。豪ドルは対円で0.6%上昇、カナダドルも対円で0.8%上がった。

ユーロ/ドルはニューヨーク市場の終盤にプラスに転じ、一時は1.3379ドルまで上昇、その後は0.2%高の1.3373ドルで取引されている。


 

世界経済見通しなお弱い、日本は中期財政計画策定を=G8首脳
2013年 06月 18日 04:01 JST
[エニスキレン(北アイルランド) 17日 ロイター] - 8カ国(G8)首脳は17日、米国や日本、ユーロ圏が取った政策対応が一助となり下方リスクは後退したものの、世界経済の見通しは依然ぜい弱との見解を示した。

首脳会議での世界経済に関する協議後、声明を発表した。

日本に関しては、信頼ある中期財政計画の策定という課題に取り組む必要があると指摘した。

声明は「ユーロ圏の下方リスクは過去1年で後退したが、依然リセッション(景気後退)から脱却していない」と指摘。

米経済については、回復は継続しており財政赤字も急速に縮小しているが、より均衡の取れた中期財政の持続可能性、および成長強化への照準を絞った投資に向け一段の前進が必要とした。

また財政政策は目先、経済状況に対応するための柔軟性が認められるべきとし、「財政再建ペースは、各国のそれぞれ異なる経済状況に対応する必要がある」としている。


05. 2013年6月18日 06:56:53 : e9xeV93vFQ
不発に終わったアベノミクス第3の矢
2013年06月18日(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年6月15日号)

力強さに欠ける安倍晋三首相の構造改革案に、多くの人が失望している。


最も熱望されていた第3の矢は、大きな失望を招いた〔AFPBB News〕

 6月5日に発表されたアベノミクスの「第3の矢」には、国内外から大きな期待が寄せられていた。アベノミクスは日本を長期にわたる停滞から抜け出させるため、安倍晋三首相が掲げた構想だ。

 1本目の矢は4月4日、日銀による金融革命という形で放たれた。就任したばかりの黒田東彦総裁が、日本経済に大量の現金を注入し、デフレを終息させると宣言した。2本目の矢は1本目に劣らず劇的な10兆3000億円規模の財政出動だった。

 しかし、3本の矢の中で最も重要性が高く、熱望されていたのは、長期的な経済成長を目標とする今回の成長戦略だ。ところが、いざ発表されると、力強さを欠くその内容に多くの人が失望した。株価の下落が続いた後ということもあり、アベノミクスが早くも勢いを失ったと思わせる発表だった。

大胆な改革案が出ていたのに・・・

 安倍首相は、成長戦略の策定に際し、いくつかの改革諮問会議を招集した。その代表が、自民党内に設置された日本経済再生本部と、産業競争力会議だ。会議には、民間の企業経営者や経済学者、改革推進派も名を連ねた。メンバーの1人である竹中平蔵氏は、郵政民営化への激しい反発と戦った小泉純一郎元首相(2001〜06年)の右腕だった人物だ。

 改革派がこれらの会議に期待していた分野の1つが労働市場だ。日本企業は、倒産寸前に追い込まれない限り、従業員の解雇を禁じられている。それが困った結果を生んだ。

 厚生労働省は1月、「追い出し部屋」という悲惨な現象の調査に乗り出した。報道によれば、複数の有名企業で、数百人の従業員を特別な部屋に送り込み、一日中ほとんど、あるいは全く仕事がない状況を強いているという。

 表向きには、従業員を再教育し、新たな業務に就かせるための部屋だが、真の目的は自主退職に追い込むことだと、多くの人が証言している。ほとんどの企業が余剰人員を抱え続け、その経費がかさんでいるため、若手の雇用や昇給に消極的になっている。そして、それが給与水準の停滞やデフレの長期化につながっている。

 改革派は、労働市場やほかの経済分野に関して大胆な提案をしている。企業は退職手当を支払えば従業員を解雇できるようにすべきだという提案もあった。7月には自由貿易協定である環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が始まるため、農業の改革は急務だ。農家の大部分は小規模な兼業農家で、競争力に欠ける。

 産業競争力会議の民間のメンバーからは、企業が農地を購入できるようにすべきだという意見が出た。現在、企業は農地を借りることしかできず、厳しい規制に縛られている。

 自民党の日本経済再生本部では、赤字企業を排除し、利益を生む新たな企業の出現を促すため、貧弱なことで知られる日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の徹底的な見直しを求める声が出た。社外取締役の起用を企業に義務づける法の整備などだ。

骨抜きになった成長戦略

 ところが、政府の発表はそこまで行かなかった。会議が提示した抜本的な案の大部分は、6月5日に発表された成長戦略に盛り込まれなかった。戦略はむしろ、昔ながらの長期経済計画を、髣髴させる内容だった。

 野心的な目標は数多く含まれている。10年間で1人当たり国民総所得を40%上昇させるといったものだ。医薬品のオンライン販売を解禁するなど、有益な方策もいくつかある。戦略の目玉は、新設の省庁が管轄する、規制が緩く税金が軽い特区を全国に設置することだ。甘利明経済再生担当相は、これらの特区が経済の原動力になると述べている。

 過去の政権もこうした区域を創設し、いくらか成功を収めている。例えば、ロボット業界は新しいロボットのテストを特区で行うことで恩恵を得ていた。しかし、2009〜12年の民主党政権下では、一連の国際特区は目立った成果を上げられなかった。

 産業競争力会議のあるメンバーは、労働市場や医療、農業、企業関連の広範な規制緩和といった主要項目は、成長戦略にほとんど盛り込まれていないと指摘する。解雇に関するルールはそのままで、代わりに労働契約の第3のカテゴリーが作られることになった。複合企業オリックスの会長、宮内義彦氏は非常に残念だと話す。

 農地を引き受け、企業に貸し出す公共団体が新設されることを除けば、農業政策にほとんど変化はない。自民党の委員会が提案した社外取締役の義務化も実現しなかった。自民党の強力な支持基盤である大企業のロビー団体、経団連(日本経済団体連合会)は、改革を全面的には支持していない。労働市場の自由化は支持しているが、社外からの監視の強化には反対の立場を取る。

 甘利経済再生担当相は、政府は成長戦略の策定において戦いを強いられたが、複数の分野で主張を通したと話す。例えば、医薬品のオンライン販売について日本医師会の会長から直々に抗議を受けたが、それでも実現にこぎ着けたという。

 また、医師会は猛反対しているというが、成長戦略には、自由診療で先進医療を受けても、残りの治療は保険診療で受けられるようにする混合診療の範囲の拡大も盛り込まれた。

 複数の関係者によれば、7月に極めて重要な参議院選挙が控えているため、あまり過激な発表はしないよう、自民党内から安倍首相に強い要請があったという。自民党は長年、農家や医師、企業などによる業界利益団体に依存してきた。

 安倍首相の悲惨な第1期を支えた田村耕太郎氏は、選挙戦を戦う対立政党が力を失っている今、自民党はもっと鋭い3本目の矢を放つこともできたはずだと述べる。しかし結局自民党は、いつ気分を変えるか分からない国民を当てにせず、選挙前にリスクを冒さないことに決めた。

 5月半ばまでの6カ月足らずで、アベノミクスへの熱狂、特に構造改革への期待から、株価は2倍近くまで上昇した。ところがそれ以降、20%も下落し、安倍首相が成長戦略を発表している最中にもさらに下落した。政権の顧問たちは、これに警戒感を抱き、すぐさま法人税の引き下げに向けて動くことを約束した。

 成長戦略の策定に関わった人たちは、7月の選挙で予想通りに参議院での主導権が手に入れば、安倍政権はさらに一歩踏み込むはずだと口をそろえる。例えば、産業競争力会議のあるメンバーは、農業分野ではさらに抜本的な方策が取られると断言する。

内閣改造が転機になるか

 9月には内閣改造が予想され、これが重要な転機になるはずだ。2012年の自民党総裁選挙で安倍氏が勝利したのは予想外の結果だった。現政権の閣僚の中には、総裁選で安倍氏を支持した見返りに任命されたような者もいる。改造内閣には、恐らくもっと熱心な改革派が入閣するだろう。

 改革派は、力のある菅義偉官房長官が改革を強力に支持していることも心強く感じている。菅官房長官は、誰より熱心に変化を求める竹中氏と近い関係にある。

 それでも、田村氏の懸念は消えない。参議院選挙に出馬する自民党候補の一部は、既得権者に支えられているためだ。安倍首相はもっと鋭い第3の矢を放ち、小泉元首相が郵政改革の際に行ったように、それを候補者の公認条件に利用することもできたと、田村氏は話す。

 また、安倍首相には戦後憲法を改正するという別のプロジェクトもある。これが構造改革の推進から注意を逸らす原因になる可能性もある。3本目の矢は、まだ的まで遠い。


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