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まさかの復活。日の丸液晶の大勝負 社運を懸けたスマホ液晶の増産投資は吉と出るか (週刊東洋経済) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/473.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 16 日 07:20:00: igsppGRN/E9PQ
 

まさかの復活。日の丸液晶の大勝負 社運を懸けたスマホ液晶の増産投資は吉と出るか
http://toyokeizai.net/articles/-/14296
2013年06月16日 前田 佳子 :東洋経済 記者  


日の丸電機は今度こそ飛躍できるのか。

日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶子会社を統合し、昨年4月に発足したジャパンディスプレイ。官民ファンドの産業革新機構が2000億円を出資して株式70%を保有する文字どおり、日の丸液晶会社である。6月3日、1500億円弱を投じた茂原工場(千葉)の新ラインが動き出した。

「日本メーカーは技術で勝って、ビジネスで負ける状態にあった」(ジャパンディスプレイの大塚周一社長)。統合前、それぞれの親会社は業績変動が激しい中小型液晶事業と距離を置いていたため、3社は積極的な投資を行えずにいた。

しかし、専業メーカーとして生まれ変わり、親会社とのしがらみを断ったことで、一気に攻勢へ転じた。調達資金の残り500億円強もすべて増産投資に投じ、数年内には生産能力を倍増させる。旺盛なスマホ向け需要に加え、新ラインの立ち上げ後は「タブレットが伸びてくる」(大塚社長)と期待を込める。

経営のスピード感もアップしている。今回の新ラインは347日という短時間で立ち上げた。「期待以上の仕事に感謝している」と産業革新機構の谷山浩一郎・執行役員は満足そうに語る。4月には旧3社の労働条件の統一にもこぎ着けた。研究開発は茂原に集約し、製品開発も加速している。

「統合後に各社の技術を見比べて、こんなことができるのかと技術者同士で驚きの声が上がることもあった」(同社幹部)。低消費電力の液晶パネルを開発し、有機ELの技術開発にメドをつけるなど成果は上々だ。

茂原工場がたどってきた道のりは平坦でなかった。新ラインは、パナソニックから買い取ったテレビ用液晶パネル工場を改造した。そもそもは東芝と日立、松下電器産業(当時)が共同出資した工場を2010年にパナソニックが完全子会社化したものだ。一時はキヤノンが子会社化する予定だったが、それも頓挫。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業への売却交渉が浮上したこともある。稼働率が低迷する中、最終的にジャパンディスプレイが買い取った経緯がある。

まさかの復活ぶり

そんな紆余曲折を吹き飛ばすかのように、茂原工場は息を吹き返しつつある。スマホ用パネルは需給が逼迫しており、足元はフル稼働。製造部門では約400人の採用を見込む。技術はあるがカネはなく、親会社に翻弄されてきた過去を振り返ると、まさかの復活ぶりである。

問題は持続力だ。昨年6月には能見工場(石川)で新ラインが稼働した。が、昨年末ごろは主要顧客である米アップルからの受注減少に悩まされ、新規顧客で穴埋めして何とか切り抜けた。現在は大手スマホメーカーをはじめ、中国などの中堅メーカーの取り込みにも成功している。

同社が得意とする高精細な中小型液晶は量産が難しく、台湾や中国のメーカーは追随できていない。一方でスマホやタブレットのメーカーは、軒並みアイフォーンやアイパッド並みの高価な液晶パネルを求めているという。「低価格スマホ向けのビジネスはしない」(同社幹部)と高級路線にこだわる戦略は、今のところ奏功している。

しかし、恐ろしいスピードで変化するのが、モバイルデバイスの世界。激安スマホが世界を席巻すれば、たちまちそっぽを向かれて稼働率が低下するおそれがある。台湾や中国のパネルメーカーが技術力をつけて量産攻勢を仕掛けてくれば、熾烈な価格競争が待っている。

希望と不安を抱え、走り出した日の丸液晶会社。税金が入っている以上、もう負けは許されない。

(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2013年6月15日)


 

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コメント
 
01. 2013年6月17日 00:29:55 : 7OpGsifAXA
どこにそんな需要があるんだ?
韓国経済変調の真の理由とは、需要の減退だ。

02. 2013年6月18日 07:32:21 : e9xeV93vFQ
【第341回】 2013年6月18日 
パナソニック中村改革の懐刀が落日の製造業に警鐘
“スーパーゲンバ”を構築しグローバル競争で生き残れ
――フランシス・マキナニー氏に聞く
かつてパナソニック(旧松下電器産業)で中村邦夫元社長の懐刀として「聖域なき構造改革」の絵図を描いた男、フランシス・マキナニー。36年間にわたり、数々の日本の大企業で指南役を務めてきた氏は、コンサルや執筆活動を通じて、グローバルで負け続ける日本の製造業を叱咤激励する。その持論は、「全ては現場の改革から始まる」。グローバルで勝てる「スーパーゲンバ」を構築するために、経営者が持つべき視点とは何か。氏の提言に耳を傾けよう。(聞き手/ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、ダイヤモンド・オンライン編集部、まとめ/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

競争力の低下が続く日本の製造業
グローバルで勝ち残る術はあるのか?

――これまでどんな企業のコンサルに関わってきましたか。また、どんなポリシーを持って日本企業に助言し続けているのでしょうか。


Francis McInerney
ノースリバー・ベンチャーズ マネージング・ディレクター(取締役)。英国生まれ、カナダ育ち。トロント大学で経済学を学び、経営コンサルタントに。自身が副社長を務 めたノーザン・ビジネス・インフォメーション社のマグロウヒル売却で注目を集め、ノースリバー・ベンチャーズを起業。パナソニックを筆頭に、36年間にわ たって日本企業のコンサルタントを務める。『日本の弱点――アメリカはそれを見逃さない』『松下ウェイ―内側から見た改革の真実』『パナソニックの 選択――「環境で稼ぐ」業態転換の未来』『スピードの経営革命――なぜ、この企業はIT時代に大勝利をおさめているのか』(共著)『賢明な企業―環境サバ イバルで発展した10社』(共著)など著書多数。
 私は、日本の大企業のコンサルタントを始めて36年になります。これまで日本企業では、パナソニック、NEC、日立製作所、富士通、NTTドコモ、日東電工など、海外企業ではシーメンス、フィリップスなどで経営の助言をしてきました。

 これらの企業は、相互に密接に関連し合う課題を抱えていました。それを解決するシステムをつくり、グローバルな競争力を開発してほしいという考えから、執筆活動にも力を入れてきました。

 日本の製造業の多くは、この四半世紀にわたって海外での競争力が低下し、業績が芳しくない状況が続いている。グローバル市場において、中国、韓国などの競争力が高まるなか、日本企業がポジションを回復するための方程式を提示できたらと思います。

――新たに執筆中の著書『スーパー現場―日本企業が世界で競争力を獲得するための10のステップ』(仮題)などを通じて、今後は競争力を失っている日本の製造業の現場が抱える課題を、詳しく指摘していくつもりだと聞きます。なぜ日本企業の現場は競争力を失っているのでしょうか。

 企業の機能として最も重要なポイントは、顧客情報を競合他社よりも速くキャッシュに転換すること。あらゆる企業活動は、オペレーションにどれだけの顧客情報を組み込めるか、その情報をどれだけ速やかに現金に転換できるかにかかっていると言ってもいいと思います。

 成功している企業は、顧客情報を吸収するための理想的な顧客インターフェースを持っている。そのインターフェースこそが「ゲンバ」(現場)なのです。しかるに、日本の製造業には「ゲンバ」を効率化して強くする理念が大きく欠けている。だから、競争に勝てないのです。

顧客情報を速やかにキャッシュ化する
理念が、多くの日本企業には欠けている

――日本の製造業の「ゲンバ」が非効率な原因は何ですか。

 第一に「顧客情報の欠落」があります。多くの企業は「ものづくり」に焦点を当て、「どれか成功するだろう」といわんばかりに、次々に色々な商品をつくっては色々な市場に売り込んでいる。顧客よりも競合の動きに目を向け、コストや労力をムダにしているのです。

 第二に「ITの活用不足」。海外展開も代理店や支店を通じる場合が多く、クラウドを活用して顧客に直接販売するなど、キャッシュ化速度を最大にしようという発想がない。

 第三に「内部優先」。多くの日本企業は内部調整を優先し、非生産的な活動や意思決定に時間を費やしています。ビジネスであるからには、内部調整を優先するのではなく、顧客ベースで仕事の優先順位をつけなければいけません。

 第四に「M&Aの失敗」。現在、市場で勝ち残るために多くの日本企業がM&Aを行っていますが、M&A相手のキャッシュ化速度を無視していることが多い。どちらかのキャッシュ化速度が遅ければ、せっかくのM&Aも失敗に終わってしまいます。

 そして第五に「人的資源の最適化ができていない」こと。事業活動の中で「ゲンバ」が拡大すれば、年功序列の従業員だけでは対応できません。とりわけ日本企業では、消費者に近い目線を持った女性従業員の活用が不十分なので、男女双方の従業員をもっと活用し、適材適所の人員配置を心がけるべきでしょう。

 他にも、日々変化するビジネスの世界でそれを表現するために必要な新しい用語の創出に、日本語(特に漢字)がそぐわないという「日本語の問題」があるし、グローバルなオペレーションを通して多くの顧客を教育するという発想に乏しい「グローバル・マネジメンの欠落」といった特徴も挙げられます。

10のステップを意識すれば
「スーパーゲンバ」をつくれる

――日本企業の経営者がこうした課題に対処するためには、具体的にどんなポイントを意識すればいいのでしょうか。

「スーパーゲンバ」を実現するためには、先に述べた共通課題の改善を促すための「10のステップ」があります。私は(1)「キャッシュ化速度をアップする」、(2)「ビジネスモデルにクラウドを確立する」、(3)「世界的展開を管理する」、(4)「イノベーションを管理する」、(5)「製造を管理する」、(6)「ブランドを確立する」、(7)「人的リソースを管理する」、(8)「組織をデザインする」、(9)「情報技術を管理する」、(10)「M&Aを管理する」というポイントを挙げています。

 こうしたステップを実践すれば、日本企業の長所である「現場」「ものづくり」「絆」の強化で「スーパーゲンバ」をつくることができ、海外進出してグローバル市場でトップに立てる可能性もあります。しかるに、今の日本企業がこれらをどれだけ実践できているかと言えば、正直言ってゼロ。何もできていません。それが問題なのです。

――マキナニーさんの指摘する「ゲンバ」とは、主に企業活動におけるどの現場を指しているのでしょうか。また、「強いゲンバ」のイメージとは?

 私が重視する「ゲンバ」とは、主に販売の発生する場所、アクションプレイスのことです。従来の日本企業を正三角形に例えると、企業と顧客が出会う三角形の頂点の場所に「ゲンバ」があり、その下の大きなベースの部分は人材、リソースなどのバックヤードに当たる。つまり、日本企業は企業と顧客が出会う部分が非常に少ないのです。


 それに対して、近代的で成功している企業は、これが逆三角形になっています。つまり、企業と顧客が出会う部分が非常に多く、逆にバックヤードの部分が一番少ない。「スーパーゲンバ」とは、こうした経営イメージを持つ企業の現場のことです。

「スーパーゲンバ」を持つ企業は、社内のベストな人材が顧客に対して最も多くの時間を費やし、製品やサービスを売っていける構造になっています。もちろん、販売部門のみならず、製造部門も製品管理部門も「ゲンバ」で顧客に接している形が理想です。

 先にも述べたように、「ゲンバ」がこうした形になっていれば、顧客情報をより多く吸収し、その情報を速やかにキャッシュに転換することができる。「ゲンバ」が小さい企業は敗退し、「スーパーゲンバ」を持っている企業は勝ち抜くわけです。

日本で唯一「スーパーゲンバ」を構築
日東電工はいかにして現場を効率化したか

――今の日本に「スーパーゲンバ」を持つ企業はありますか。

 私が経営コンサルに携わった日東電工が、日本で唯一「スーパーゲンバ」を持つ企業だと思います。日東電工では5年間コンサルをやってきましたが、同社はエレクトロニクス産業などに向けた光学マテリアル系事業の「ゲンバ」が非常に大きくなり、そこで超一流の利益を上げられる体制になりました。

 ゲンバでは、研究開発、製造、販売といった組織全体の仕組みづくりから、人材登用に至るまで、多くの課題が取り上げられて議論され、改革が行われました。私はこの会社で、日本企業の「ゲンバ」を大きくするための貴重な教訓を多く学びました。

 ただ、もっと重要なのは、「成功したからそこで終わり」ではないということ。「スーパーゲンバ」は常に拡大していくものなので、大きくなった「ゲンバ」をキープしていくことも必要です。日東電工は、成功事例を他の事業にも広げようと挑戦を続けています。

――初めて日東電工の「ゲンバ」に赴いたときに感じた課題は?

 日東電工に初めて行ったとき、見たこともないような非常に複雑な事業構造になっていました。創業から何十年も経ち、日本や北米をはじめ世界の何百もの会社と取引きをしていたため、本社の中に多くの事業部門があり、一方でたくさんの子会社や関連会社がありました。

 それぞれよく組織されてはいましたが、色々あり過ぎてとにかくわかりづらい。それらのセクションが抱えていた大きな課題が、顧客に接する「ゲンバ」が非常に小さく、顧客情報が入ってこなくなり、スピーディな現金化ができないということでした。「ゲンバ」を再構築しないといけないと感じました。

重要なのは事業工程をつくり直すこと
在庫日数を減らし早い現金化を実現

――その「ゲンバ」をどうやって建て直したのですか。

 まずは、企業の一番基本的なところ、ファンダメンタルズをしっかり確認しました。「スーパーゲンバ」に求められる基本的な要件とは何か、そこから入ったのです。

 幸いだったのは、光学マテリアル系の事業には優秀なマネジャーが多くいたので、彼らがどこに問題があるのかをすぐに理解することができたこと。そして、これまでのルールを無視して、自らの頭で考える発想に変えていきました。その結果、効率的に対策を練ることができ、顧客と深い部分でつながる体制ができたのです。

 重要なポイントは、顧客に対してより訴求力のあるテクノロジー開発や製品製造を行ったのではなく、事業のプロセス(工程)をつくり直すことに成功したということ。彼らは、シンプルな問いを自分自身に投げかけた。「もしも日東電工の工場とお客様の工場を統合することができたら、我々もお客様ももっと早く現金化が可能になるのではないか」というアイデアまで出ました。

 そうした議論が尽くされて「ゲンバ」が再構築されたところ、自社と顧客の在庫日数を大きく減らすことができ、支払い回転数も早くなった。まさに現金化のスピードを上げることに成功したわけです。

 前線の営業部隊を他の部門が背後からサポートする体制だったのを、全機能が前線に出てきて、顧客に向いて仕事をする体制に変わった。大きなコストをかけずに、全てプロセス(工程)を建て直すことによって実現できた。これこそがまさに「ゲンバの拡大」なのです。

――そもそも、なぜ日東電工とのつき合いが始まったのですか。

 実は、とても日本的な事情がありました。私は1990年代半ばからパナソニック(当時は松下電器産業)のコンサルをしてきましたが、2000年代前半にカーク・ナカムラ社長(中村邦夫元社長)とパナソニックの社内改革に取り組んだときの経緯を紹介した著書『松下ウェイ―内側から見た改革の真実』を、当時の日東電工の山本英樹会長が読んで、興味を持ってくれたのです。

 そもそも日東電工とパナソニックは同じ年に創業された企業であり、山本会長と中村社長は同じ大学の先輩・後輩という間柄。そこで山本会長から中村社長に「私を紹介してほしい」と連絡が来て、私はパナソニックの人たちと一緒に日東電工へ赴くことになりました。

パナソニック“中村改革”のブレーンに
「ゲンバ」を建て直しV字回復に貢献

――日東電工での成功には、パナソニックでのコンサル経験も大きく影響していたことと思います。自社に危機感を抱いていた中村邦夫氏が、日本の製造業の危機を書いたマキナニーさんの著書『日本の弱点―アメリカはそれを見逃さない』などを米国支社長時代に読み、帰国後本社社長に就任する際、マキナニーさんをブレーンに起用したと聞きます。社長就任後の中村氏は、聖域なき構造改革に取り組み、2002年3月期に戦後初めての大赤字に陥った同社をV字回復に導きました。当時マキナニーさんは中村社長の懐刀として、大リストラの絵図を一緒に描いたそうですね。そのとき、パナソニックはどんな課題を抱えていましたか。初めて同社を訪れたときに、どんな印象を持ちましたか。

 主に営業現場の問題でしたね。私が感じたのは、これだけ近代的な製品を抱えながら、なぜこの会社は大きな利益を上げる販売ができないのかということです。何か組織全体に大きな問題があるのではないかと感じましたが、事実そうでした。

 当時、パナソニックの内部は非常に混乱していました。機能が重複した事業部ばかりで、ブランドもたくさんあった。後に携わった日東電工ほど複雑ではなかったけれども、そんな状況が戦前からずっと続いていたのです。

 その結果、同じラインナップに属する製品を違う部署がそれぞれ別の売り方をしていたり、本来最も訴求しなければならないポイントが抜け落ちていたりと、効率の悪さが目立っていました。

 そこで私の助言のもと、カーク・ナカムラ氏が目標に掲げたのが、「1つの大きな組織につくり直すこと」「現金化の速度を上げること」「それによって得られた利益でさらに組織を効率的に改善していくこと」の3つでした。

 たとえば、現金化の速度を上げようとすれば、在庫日数の削減が必要です。そうすることで、サプライチェーンの奥に隠れていた諸問題が浮き彫りになってくる。そして、その事業に関わる全てをエコシステムに変えていく。こうした理念で改革を進めたわけですが、ナカムラ氏ご自身は3つ目のタイミングに入る前の2006年に社長を退きました。

1980年代前半以来、初の成果
研究開発費を回収できる利益を実現

――構造改革に携わって、印象に残っている成果を教えてください。

 現金化のスピードを速めた結果、研究開発費を回収できるだけの利益を上げることができたこと。つまり、研究開発費に対する利益の割合を限りなく「1」に近づくところまで改善できたわけです。1970年代はこの数字が3以上でしたが、「1」に近づけたのは1980年代前半以来のこと。いかに研究開発費が重かったか、おわかりでしょう。「1」にするだけでも大変なことですが、その後もさらに改善を続けなくてはならなかった。

なぜ電機各社は苦境に陥っているか?
「ゲンバ」と顧客が断絶したシャープ

――中村氏が経営の一線から退いた後、パナソニックのみならずソニーやシャープといった日本の家電各社は、経営環境の悪化で体力をどんどん落としていきました。足もとでは、経営危機と言ってもよい状況に陥っている企業もあります。パナソニックのケースは、過去から続いたプラズマ事業への過剰投資などが原因でしたが、マキナニーさんは現在の電機各社が抱える経営課題や改善点を、どう見ていますか。


 これまで述べてきたとおり、答えは非常にシンプルです。各社ともそれぞれ違う経営課題を抱えてはいますが、共通して言えるのは、やはり「ゲンバ」が小さ過ぎるため、十分な顧客情報を得ることができず、スピーディな現金化をすることができないこと。

 たとえばシャープは2009年、液晶パネルや太陽電池向けで世界最大規模となる堺工場を稼働させましたが、シャープは在庫日数が長く、非常に事業効率が悪い状況にありました。本来は、より小規模な工場を得意先の顧客に近いところにつくるべきだった。財務に明るい経営者だったら、あんな工場は絶対につくらなかったはずです。

 堺ほどの大規模な液晶工場では、液晶パネルの製造から出荷まで6〜8週間かかる計算になります。しかし、本来液晶自体は1日〜1日半でつくれるので、それを速やかに顧客へ出荷する仕組みがあれば、48時間くらいのサイクルで回していけるはず。そうなれば、在庫日数もせいぜい2〜3日に短縮できます。

 それなのに、巨額の投資をして大規模な工場をつくり、最大8週間分の在庫が積み増されていく仕組みにしてしまった。これでは、「ゲンバ」と顧客が断絶してしまいます。

 経営者とは、時としてロジカルなデータを無視して辻褄の合わない意思決定をしてしまうもの。たとえ意思決定前にそれが明らかに間違いだとわかるデータが「ゲンバ」から上がってきても、無視することさえある。日本の家電メーカーは、そういう大きな計算間違いを度々犯してきたのではないかと思われます。それゆえ、現在のような苦境に陥ってしまったのでしょう。

――日本の家電メーカーの凋落の原因として、米アップルや韓サムスンなどの強敵にグローバル競争で負けたという言い方がよくされます。しかし、根本的な原因はもっとシンプルなところ、つまり自社の「ゲンバ」にあるということですね。

 その通り。非常にシンプルなロジックなのです。

製造業は従来の「ものづくり」から
クラウド活用の「ハイパーものづくり」へ

――では、そうした仕組みになってしまっている日本の「ゲンバ」の効率を、日東電工や一時期のパナソニックのように向上させるには、どうすればいいのでしょうか。

 先に述べた「スーパーゲンバの10のステップ」の理論に沿って言うと、1つはビジネスにクラウドを導入するのが理想的だと思います。規模の小さい効率的な工場を顧客の傍にいくつかつくり、タイトなサプライチェーンを構築し、その全体をクラウドで管理する。

 近年は情報コストがどんどん下がっており、それによって企業はITインフラを導入し、大きな規模の「ゲンバ」でも顧客と密に仕事をすることが容易になっています。世界中のサーバとつながっているクラウド環境では、顧客が今どこにいるか、何をしているか、そして何を求めているのかが一目瞭然。情報コストが下がれば下がるほど、「ゲンバ」はより拡大していくとも言えます。

 今や製造業の世界は、従来の単なる「ものづくり」から、ものづくり+クラウドの「ハイパーものづくり」へと変わりつつあります。本来そこで勝負しないといけませんが、日本の製造業は「ものづくり」にこだわるあまり、台頭してきた中国などの新興国企業と従来型の「ものづくり」でバッティングし、体力を消耗しているのが現状です。

 大規模な工場をつくることは、言わば「生産の時代」の古い価値観。もうそんなことをやっている時代ではありません。たとえば、シャープもこうしたことを認識していれば、勝ち続けることができたかもしれませんね。

――今後の活動の予定は?

 機会があれば、今後もより多くの企業に助言をしていきたいと思っています。1社でも多くの日本企業の「ゲンバ」を「スーパーゲンバ」へと生まれ変わらせていきたいですね。


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