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減速する中国経済が抱える3つの爆弾 当局は報道規制、アベノミクスの懸念材料に…(Business Journal) 
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/305.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 7 月 24 日 07:16:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130724-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 7月24日(水)6時23分配信


 7月8日の中国・上海株式市場は、代表的な株価指数である総合指数が大幅に下落し、終値は前週末比2.44%安の1958.27となった。船舶や資源・機械などの銘柄が売られ、ほぼ全面安。心理的な節目である2000の大台を割り込んだことから、アジア株安から東京の株安へと波及した。

 上海総合株価指数は6月24日に急落したのに続き、27日に1950.01と今年の最安値を記録した。消費者物価指数(CPI)などの主要統計の発表を前に積極的な取引を手控える投資家が多い中、株価だけが下がるという悪い展開を見せた。6月のCPIは前年同月比2.7%上昇。全体の3割を占める食品の上昇幅は4.9%で、5月より1.7ポイント拡大。生鮮野菜は9.7%上昇した。

 中国の金融システムの危機は小康状態にあるが、システムの不全が中国の経済・景気に与える影響はボディーブローのように効いてきている。日米市場では“中国関連銘柄”を敬遠する動きも強まってきた。

 中国の7月危機説、バブル崩壊説の元凶は、影の銀行(シャドーバンキング)である。

 影の銀行の問題とは何か? 簡単に解説しておこう。

 上海総合株価指数は6月24日、前週末の終値に比べて5.30%安い1963.23で引けた。2000を割り込んだのは2012年12月4日以来、7カ月ぶり。27日も続落して今年の最安値となった。「理財商品」と呼ばれる高利回りの財テク商品の償還が6月末にもできなくなり、資金ショートで中小の銀行が連鎖破綻するという恐怖のシナリオが流布した。6月末の資金ショートは中国人民銀行(中央銀行)が資金供給の方針を明らかにしたことから、ひとまず回避され、金融危機説は後退した。

 6月24日の上海総合株価指数の下げ幅(5.3%安)は09年8月31日(6.74%安)以来、4年ぶりのものだ。短期金融市場で、ここ数週間金利が上昇していた。一方、中国人民銀行は資金供給のパイプを緩めなかった。流動性の悪化懸念で株式市場に警戒感、失望感が急に台頭して、25日には5.8%安の1849まで急落した。

 6月末に、総額1兆5000億元(約24兆円)の財テク商品が償還期限を迎えるとみられていた。問題の財テク商品は年率10%以上の高金利をうたっているが、元本はまったく保証されていない。個人投資家から集めた、こうしたリスクマネー(まさにイージーマネーの典型だ)を、金融機関や大企業が簿外で運用していた。これをシャドーバンキングという。このシャドーバンキングの破綻が現実味を帯びてきたことから、中小金融機関はデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が、一気に強まった。

 中国の金融不安から6月24日のアジア株は全面安、欧米株式市場も軒並み下落した。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均の下げ幅は前週末比で一時、240ドルを超えた(終値は139.84ドル安)。東京市場も、もちろん安い(167円安)。世界の株式市場で“中国リスク”の懸念が広がっていった。

 中国→新興経済の落ち込み→資金を貸し出している欧米の金融機関に波及という負のスパイラルに陥る最悪のシナリオまで取り沙汰された。アベノミクスは「世界経済が失速しない」との前提に立っているから、これが大きく揺らいできた。

 中国の短期金利の上昇の背景には「影の金融(シャドーバンク)への資金の流れを阻止する」という中央銀行の基本方針がある。中国には数万社規模の中小のノンバンク系の機関が存在し、こうしたノンバンク系の業容は拡大の一途をたどってきた。

 中国共産党の機関紙である人民日報は6月24日、次のような解説記事を掲載した。

「人民銀行が(金利上昇を)傍観するのは、一部銀行への懲罰だ」

 上海銀行間金利(SHIBOR)は6月19日の7.660%から6月20日に13.444%に急上昇した。21日は8.492%、24日は6.489%、25日5.736%となった。信じられないような変動率である。上海銀行間金利の上昇は氷山の一角にすぎない。瞬間風速では25%にまで上昇したといわれている。

 上海銀行間金利の上昇は、内臓が悪い人の吹き出物のようなものだ。吹き出物を治療しても(金利の上場を抑え込んだとしても)、内臓が良くなるわけではない。

 中国の広義のシャドーバンキング融資残高は、推定で36兆元(約580兆円)。中国の国内総生産の7割に相当する。影の銀行が破裂すると、その破壊力はすさまじい。

 中国は今、不動産・地方財政・影の銀行の3点セットの爆弾を抱えていることになる。

 なぜこのようなことが起こるかというと、中国の金融機関は政府系企業を重視して、中小企業向けの金融システムが未発達だからだ。この隙間を埋める形でシャドーバンクが発達した。高金利の「理財商品」を通じて急拡大するにつれて、大きな不安要因になってきた。一部の小規模銀行は既にローン債務の不履行に陥ったとの未確認情報もある。

 6月28日、中国人民銀行の周小川総裁が「資金供給で市場の安定を図る」方針を示したことから、上海株式市場は8営業日ぶりに反発した。それでも上海総合株価指数は4年半ぶりの安値圏で推移している。上海市場では、銀行・証券・保険などの株が急落し、日米欧の株式市場への影響が顕著になってきた。

 帳簿外金融の多くは不良債権化している。中国の昨年の財政赤字はGDP比で1.5%だ(公表数字はこうなっている)が、国際通貨基金の調査では10%。政府による銀行の(赤字)補填が財政を蝕んでいる。金融危機を防いだとしても、融資の縮小で中国経済は大きく減速を余儀なくされるだろう。

●日米で中国銘柄を選別する動き

 ここ最近、東京市場ではコマツ、日立建機や新日鐵住金、JFE、さらには総合商社などの銘柄が株価を下げている。機関投資家は「当面、中国関連株は手掛けにくい」と言っている。

 米国ではスポーツ用品の世界大手、ナイキのマーク・パーカー最高経営責任者(CEO)が中国事業の売上高の減少の可能性に言及した。ナイキの中国事業の売上高は全体の1割にすぎないが、株価は中国市場の動向に敏感だ。

「中国で、高額品の販売で稼いできた米欧企業は要注意」なのである。ナイキだけではない。小売りの世界最大手のウォルマート・ストアーズの中国市場の売り上げは横ばい。5月に、中国部門の副社長2人が辞任したことも明らかになった。

 底堅い米国景気。下降線をたどる中国。「西高東低」の現実がどこまで続くのか。米国でも、金利上昇から景気の腰折れ懸念を指摘する声が大きくなってきた。

 影の銀行は、不動産市況が悪化した途端に、一気にはじける。中国という爆弾を抱えながら、アベノミクスは爆走を続ける。

●中国、金融報道を規制

 中国共産党中央宣伝部が国内メディアに対して、金融市場に出回っている資金が足りないことなどに関する報道を規制する通達を出していることがわかった。

 経済の先行きに対する懸念が、社会不安や当局批判につながることを警戒しての措置だ。

 通達は6月25日付で、(1)市場での資金不足や株安を大きく取り上げない(2)中国人民銀行の政策を「肯定的かつ正確」に解説・報道する--となっている。

 習近平総書記が就任して以来、言論統制が強化されているが、影の銀行問題の深刻さを裏付けるような事実だ。だが、ここまでやると、中国は影の銀行問題で墓穴を掘ることになるかもしれない。

編集部


 

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コメント
 
01. 2013年7月24日 16:46:03 : e9xeV93vFQ
誰も書かない中国進出企業の非情なる現実(祥伝社新書327) [新書]
青木 直人 (著)

内容紹介
「井戸を掘った人」――ANA,パナソニックが受けている仕打ち 突然の中止通告、その後も説明がない王子製紙の巨大プロジェクト 森ビルが上海に建てた「世界一」ビル、笑うしかない13年の末 「中国最強商社」を誇る伊藤忠がやってきた人脈ビジネスの実態 反日暴動、労働争議の標的とされる日系自動車企業 現地の人件費を日本の本社が負担する経理のカラクリ 退職後、中国進出企業に天下る歴代中国大使 伊藤忠・現役社長から飛び出した発言、「利益を回収して、すぐ撤退せよ」
出版社からのコメント
中国進出日本企業の実態とは、どのようなものであろうか。実際に利益を上げているところはほとんどない。一部、利益を上げているとされる会社の中には、現地社員の人件費を本社もちなどという例もあり、実態はきわめて不透明である。また何をするにしても官僚への賄賂が不可欠であり、寄付の強要も日常茶飯である。契約書はあってもないに等しい。しかも日本に対しては何をしても許されるという官民共通の了解があるから、手におえない。大使館もまったく役に立たないばかりか、中国の立場を代弁する場合すらある。こうした実態は、当該企業の口からはもちろん、マスコミも絶対に書かない。近年の中国経済の成長ストップに伴って、欧米企業が中国投資をどんどん減らしている中で、日本一国だけが増やしているというおかしな事態は、どうして起こるのだろうか。それは、日本の企業担当者は、こうした中国ビジネスの実態をまったく知らないからだ。ごく一部の例外を除いて、ほとんどの企業の中国ビジネスがすでに破綻しており、さらには撤退しようにもそれすら許されないという蟻地獄に陥っている。本書はその実態を白日の下にさらし、今後中国進出を検討している企業への警鐘を鳴らす。同時にそうした事実を全国民が掌握することで、今後の日中関係を考える一材料となることを期待している。


 

最も参考になったカスタマーレビュー
45 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 流れは、変わった 2013/7/4
By Edgeworth-Kuiper Belt 殿堂入りレビュアー トップ50レビュアー
成長する中国に進出した日系企業が直面してきた問題を主に扱った本。後半では、歴代の中国駐在大使について中国ビジネスとの関係から説明している。中国の体制の変遷を絡めて企業名や個人名が多く実名で登場し、具体的である。著者は、ネット紙「ニューズレター・チャイナ」の編集長。

法治国家として十分成熟していない発展途上国は多かれ少なかれそのような面を持つが、特に中国では有力者とのコネが重要で、一定の成功をおさめた日本企業は裏側で時の権力者及びその親族との利権関係を苦労して築いて維持してきた。それだけで、許認可の申請の通りやビジネスを展開する場合の円滑さが違う。しかし、だからといって成功が約束されたわけではなく、次々横やりが入ったり圧力をかけられて引くに引けなくなって投資額が膨らみ、しかしそれを回収できない事態になることもある。何しろ、当局のきまぐれで突然ルールが変わり、ワイロや寄付も頻繁に要求される国だ。そして、今や中国の経済成長は鈍化しはじめた。賃金は急上昇し、労働者の利権保護も進み、労働争議も絶えない。地価も高騰した。また、地方主義が妨げになって全国規模のビジネス展開や正しい情報が入手しづらく、トレンドが変わったことがわかりにくい。かつての外資企業への優遇措置も変わり、排外的な動きが目立つようになってきた。日本企業の場合には、反日感情がそこに加わり、さまざまな標的にされやすい。いまや、中国に進出した企業を取り巻く環境は厳しさを増している。

ドライな対応を行う欧米企業とは異なって、日本人にありがちな情緒的な判断が絡むことが裏目に出ることもあるという。特に、こちらが誠意を見せれば相手も誠意を返してくるという考え方が傷口を大きく場合があり、例えば、日本企業側は、2000億円も投資したのだから優遇してくれるだろうと思いがちだが、中国側では2000億円も出資したからこの日本企業はもう逃げられないだろうと考える。また、かつて「井戸を掘った」ことを感謝されたことがあるという日本企業側の自負に対して、「われわれは近代化を実現し、水道水を飲んでおります」と返されたというエピソードも紹介されている。

「つまり尖閣事件以後、中国の目には、日本の最大の弱点が個別の企業の利益を追求するだけの財界にあり、彼らの中国におけるビジネス権益に影響を与えることで、財界はいともたやすく中国側の言い分を擁護するものと、映ってしまったのです。さらには、日本国民の強硬な反中ナショナリズムをも、財界が非難して牽制してくれるものと思わせてしまった。それはかつての反日デモの時がそうだったからです」。

2012年12月に辞任した丹羽元中国大使の国民感覚からずれた発言がどこからくるのか、新聞等で読んで不思議に思ったことがあるが、中国に進出して成功した一昔前の古い企業人感覚を引きづっていたことがひとつの原因のようだ。また、歴代の中国大使の中国への迎合の姿勢は、自らの利権確保と密接に関係があったことを指摘している。中国当局とうまくいかなかった大使は、天下り先として迎えてくれる企業がなくなってしまうのだという。また、ODAが無くならないのも、それが中国側だけでなく日本側関係者の利権と関係していることがひとつの理由のようだ。新日中友好21世紀委員会などの、いわゆる「チャイナスクール」についても言及している。

中国で日本企業がビジネスを行うことの難しさと同時に、流れは変わった、ということを経済活動の面から考えさせられた。
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5つ星のうち 5.0 マスメディアが報道しない「事実の羅列」 2013/7/15
By スケ
Amazon.co.jpで購入済み
幾つか前のレビューにあるとおり、青木氏の新刊は「事実の羅列」である。しかし、この「事実」を取材も報道もせず、徹底的にサボってきたのが大手マスメディアなのだ。青木氏の今回の新刊は、この「誰も書かない現実」を、これまでの取材記録に冷静沈着な情勢分析を交え、見事に白日の下に晒している。

昨年、宝島社から発売された青木氏の「中国ビジネスの崩壊」のレビューでも、「一人でも多くのビジネスマンが一日でも早く本書を読み、中国ビジネスのリスク、延いては国境を越えるビジネスに潜むリスクを再認識して頂くことを切に願う」と書いた。この思いは変わらないどころか、昨今、中国経済の低迷を示す統計が次々に明らかにつれ、さらに強くなっている。

「誰も書かない中国進出企業の非情なる現実」を、一人でも多くの日本人に認識して頂きたい。
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5つ星のうち 5.0 ずっと、こんな書籍を待っていた! 2013/7/15
By hanawa トップ1000レビュアー
Amazon.co.jpで購入済み
長い間中国経済を追っている青木氏の面目躍如。
本書は氏ならでは。流石だ。

日経やスポンサーに依存するTVほかの主要メディアが報じられない話が日中ビジネスには数多くあるはずだ・・・政治経済音痴の私ではあるが、マスメディアの報じる中国とその本当の姿には乖離があるのでは?と関連書や宮崎正弘メルマガを読むようになったのが2008年春のチベット暴動から。
本書は私の知りたかったことに明解に応えてくれた。

第五章「伊藤忠―人脈ビジネスの破綻」が個人的に抜群に面白かった。中長国境の吉延については「やはり」と思うこと頻り。
続く『伊藤忠の代理人、丹羽「中国大使」の退場』はオマケみたいなもので、自分の戦争責任を英霊賛美で誤魔化し続けた瀬島隆三という先例もある。国益を犠牲にしてまでも私益を優先・・・理解できないメンタリティーだ。普通は、公益が阻害されたは商売どころではない、となるはずだが?
(瀬島に関しては『沈黙のファイル』ほか保坂正康や軍人会の方の著作を文庫で読んだが、それだけでなく、終章『中国をつけあがらせた歴代大使の「大罪」』のような記述まであったから驚きだ。昭和史ファンとしては、これを膨らませて戦前の公使をも総括してもらいたいところ。昭和史のキーマンである吉田茂や重光葵らも中国に赴任していたのだから)

蛇足。

本書に直接関係ないが、先日ようやく死去した瀬島に関しては、この一言に尽きる。
昭和天皇「先の大戦において私の命令だというので、戦線の第一線に立って戦った将兵たちを咎めるわけにはいかない。しかし許しがたいのは、この戦争を計画し、開戦を促し、全部に渡ってそれを行い、なおかつ敗戦の後も引き続き日本の国家権力の有力な立場にあって、指導的役割を果たし戦争責任の回避を行っている者である。瀬島のような者がそれだ」

私の拙いレビューより目次の方がずっと雄弁なので、記載しておく。

序章 本当は恐ろしい中国ビジネス
第一章 全日空―「井戸を掘った人」が受けた仕打ち
第二章 王子製紙―ストップした工事の行方
第三章 森ビル―上海に建てた「世界一」の高層ビル
第四章 労働争議に立ち向かう自動車メーカー
第五章 伊藤忠―人脈ビジネスの破綻
第六章 伊藤忠の代理人、丹羽「中国大使」の退場
終章 中国をつけあがらせた歴代大使の「大罪」

(全203P)

追記。
酒飲みながら思いついた、ソフトバンクが「わかりやすい売国」なら、伊藤忠は「見えざる売国」である、と書き添えるのを忘れた。


02. 2013年7月25日 10:12:06 : niiL5nr8dQ
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
中国の銀行改革、金利自由化へ向けた小さな一歩
2013年07月25日(Thu) Financial Times
(2013年7月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

中国で今年4度目の追加利上げ、インフレ抑制へ
中国人民銀行は銀行貸出金利の下限を撤廃した〔AFPBB News〕

 詰まるところ、これは改革ではない改革だった。中国人民銀行(中央銀行)は先週末、銀行が顧客に適用できる貸出金利の下限を撤廃した。中央で管理してきた金利を市場に委ねる方針に沿った一歩という位置づけだ。

 しかし、これは非常に小さな一歩であり、市場で現在起こっていることとの関係も非常に薄いため、何の影響も及ぼさないと予想される。この改革について言えるのはせいぜい、改革という考えが保たれたということぐらいだ。

最も重要なのは預金金利の自由化だが・・・

 中国人民銀行はもっと大胆な施策を打ち出し、銀行が預金者に支払う預金金利の上限を撤廃するだろうと期待されていた。これが実行されれば最も重要な変化となるだろうが、預金金利の自由化は最も難しく、最も破壊的な変化にもなるだろう。

 中国の問題は、高い利回りを得たいという預金者の願望と預金の獲得競争ゆえに、大半の銀行が既に預金金利の上限を預金者に支払っていることだ。また同時に、銀行貸出には制限が加えられていることから、貸出金利の下限には競争圧力が全く加わっていない。銀行の金利は、預金と貸出の両方で上昇しようとしているのだ。

 これは中国の改革の加速を妨げている大きな経済問題だ。預金金利の上限は銀行の資金調達コストを低く抑えており、銀行は本来あるべき水準よりも低い金利で資金を貸し出せるようになっている。これは大規模な国有銀行とその顧客である大規模な国有企業に適した仕組みであり、預金金利上限を撤廃する計画をことごとく潰してきたのもこれらの大手国有銀行だった。

 しかし、影響を受けそうなのは大手国有銀行だけではない。預金関連の改革があまりにも速いスピードで実行されれば、中小銀行の利益や預金の安全性、さらには影の金融セクターの安定までもが脅かされることになる。

 中国の銀行は、中国人民銀行が設定する預金基準金利の1.1倍を超える金利を預金につけてはいけないことになっている。現在の預金基準金利は1年物で3%とされており、銀行は3.3%を超える預金金利を支払うことができない。

 このため銀行は預金金利で競争をすることができず、預金の魅力は、最大で6%の利回りを提供している資産運用商品(理財商品)に比べて薄れている。

 一方の貸出については、銀行は今週まで、貸出基準金利よりも高い金利なら自由に課すことができたが、基準金利の0.7倍より低い金利を課すことはできなかった。現在の貸出基準金利は1年物で6%であるため、銀行が課すことができる最も低い金利は4.2%となり、ここでも価格競争が制限されていた。

 7月20日の改革により、銀行は貸出金利を好きなだけ引き下げることができるようになった。だが、これにはほとんど意味がない。複数のアナリストによれば、5.4%を下回る金利で貸出を行っている銀行は1つもないからだ。また中国人民銀行によれば、貸出の90%は貸出基準金利かそれ以上の金利で実行されているという。

 金利に上限と下限があるために、すべての銀行が資金利益――貸出で得る金利収入と預金で支払う利息との差額――による安定した業績を享受している。もし預金金利で競争が始まれば、この仕組みは脅かされ、新たなリスクがもたらされる。

預金金利の競争がもたらすリスク

 大手の国有銀行は比較的安全だと見なされ、預金を今よりも集めやすくなるだろう。すると、中小の銀行はこれに対抗するために大手よりもかなり高い預金金利を提示しなければならなくなり、その結果、現在よりもリスクの高い貸出を行ってこのコスト増に対処せざるを得なくなる。

 だが、中国には、銀行が破綻した時に預金者を保護する預金保険制度がない。同制度の創設は預金金利を自由化する前提条件と見なされているが、アナリストらの見るところ、創設は早くても来年になる。

 預金金利が引き上げられれば、過去2年間の理財商品その他のノンバンクの金融商品の魅力も脅かされる。こうした商品を運用しているのは主に銀行だし、理財商品などの人気が落ちれば融資と資金調達の見直しが起きるだけだから、これは問題にならないと見る向きもある。

 しかし、この点に絡む問題は、融資と調達の見直しは個々の銀行内ではなく、銀行産業全体で起きるということだ。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、中小規模の銀行は理財商品などに対するエクスポージャーが極端に大きいという。そのため中小銀行は、理財商品による高リスク融資の資金を賄うのが難しくなる恐れがある。

 従って、大手4行以外の銀行が不安定になる事態を防ぐために、預金金利はゆっくり、かつ慎重に自由化しなければならない。だが、このようなゆっくりしたペースは、中国が金融面で諸外国とどう関与するかという点で重要な変化を妨げることにもなる。

 金利改革が行われなければ、国内で銀行間の競争は存在しない。国内で競争がなければ、中国の銀行が外国銀行を相手に張り合う見込みはない。そして、外国銀行と競えるようになるまでは、中国は自国の金融エコシステム(生態系)を封じ込め、保護する資本規制を廃止できないのだ。

By Paul J Davies, the FT’s Asia Financial Correspondent
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38305


 

 


 


 


 


 
中国の不良債権処理は中央政府の財力で

2013年7月25日(木)  津上 俊哉

前回は「世界経済を救った4兆元投資のツケ」はこちら

不良債権増大は不可避

 今回の銀行間金融市場の混乱を発端に、海外では不動産バブルが崩壊したり、不良債権が激増したりして、中国経済が混乱に陥るのではないかという懸念が高まっている。これから何が起こるのだろうか。

 今回の騒ぎで、金融界は「野放図な貸し出しは許さない」とする国務院の強い警告を受け取った。「追加的な金融緩和は行わない」とする当局の意思も明確だ。となれば、資金市場は今後さらに逼迫し、実効金利も上昇基調を辿るだろう。その結果、デフォルト(債務不履行)に陥る借り手が増大することは避けられないと思われる。そもそも今、少なからぬ融資が、「利払いは継続中だが、事業が生むキャッシュでは元本が償還できない」状況に陥っている。この現状は、既に軽度の不良債権状態だと言える。

 私営企業向け貸し出しが多い華東など一部地域の銀行では、最近、不良債権比率が5%を超えつつあるという。資金の逼迫が続いて、地方政府絡みのデフォルトが加わってくれば、銀行不良債権比率のさらなる上昇は必至である。銀行が組成に関わった理財産品の中にも、借り手のデフォルトに直面するものが出てくるだろう。

 こう言うと、やはり中国経済の混乱は必至だと聞こえるかもしれない。だが、筆者は「それでも、不動産や金融のバブルが大崩壊することはない」という見方である。

中央財政は「尻拭い」の余力が十分

 理由は、幸か不幸か、中国経済は今も、共産党とその下にある政府が圧倒的な支配力を有していることだ。「国進民退」の言葉が示すとおり、この10年間は公有制中心の経済体制への「本卦還り」が顕著だ。

 例えば、株式制をとっている銀行でも、支配株主はほとんど国有企業で、民間株主中心の銀行はわずか2行、そこでも経営陣の任免には共産党の力が強く働いている。野放図な投資に狂奔した地方政府も、指導者を選任したのは共産党だ。政策の失当も監督不行き届きも共産党に責任がある。

 その「共産党」が、実は「一党独裁」の看板とはうらはらに、様々な利益集団の共棲体で、内部の統率がさっぱり利かないことが問題なのであるが、施政の責任はひっきょう共産党に、最終的には中央政府と共産党中央に集中する。

 この体制下で、「貸し手の自己責任」を盾に債権者である銀行の救済を拒絶したり、地方政府を破綻させて住民が困窮するのを放置したりするわけにはいくまい。つまり、大方の損失は、最終的に中央財政が尻拭いをする定めなのである。

 その中央財政の余力が十分なことが中国の強みだ。国債発行残高はGDPの17%。昨今急増した地方政府関連の債務を加算しても、GDPの7割以下だろう。他の主要国に比べてはるかに健全で、大量の不良債権を処理しても、中央財政は持ちこたえられるだけの力がある。だから、足元の混乱を見て、また、そこにかつての日本のバブル崩壊の記憶を投影して、「中国経済崩壊」を言うのは時期尚早である。

究極の疑問:中央財政はいつまでもつか

 こう考えてくると、中国経済の行方についての究極の「イフ?」は「中央財政がいつまでもつか?」になる。

 昨年、改革派の中国経済学者グループが年金長期債務などの国家債務を長期推計する研究をした。年金潜在債務の大きさを初めて警告した意義ある研究だ。しかし、幾つかの難点もあった。

 1つは4兆元投資絡みの不良債権の見積もりである。「地方政府の借入10.2兆元と鉄道部の借入2.25兆元の3割が焦げつく」と仮定して、3.75兆元分を中央財政が負担すると仮定している。つまり、今年以後、不良債権の新規発生はないという仮定だ。しかし、投資のブレーキを踏んだところで、地方政府関連企業の負債額はなお増えるであろうことを考えれば、楽観的に過ぎるのではないか。

 最大の問題は将来の成長率見通しが甘すぎることだ。2030年でも5%、2050年でも3%の実質成長と仮定している。筆者は近著「中国台頭の終焉」にも記したとおり、中国経済の成長率は今後大幅に低下せざるを得ないと考えている。

 「中国が低成長に移行したら国家債務はどうなるか」。筆者が簡易に推計して、原推計と対比したのが下のグラフだ。成長率については、2015年に名目7%(実質5%、以下同じ)、2020年5%(3%)、2025年4%(2%)、2030年以降は一律に3%(1%)と仮定した。

 原推計だと、GDPに対する国家債務の比率は「2050年に100%を超える」程度だ。これが筆者の低成長ケースでは優に300%を超える結果となる。筆者の推計でも、地方政府絡みの不良債権額は原推計の仮定を踏襲しているので、これでも甘いかもしれない。


 「300%を越える国家債務比率」は破滅的だと言えるか? 中国にすれば「日本には言われたくない」だろう。日本の政府債務残高/GDP比は、今でも224%、700兆円以上と言われる将来の年金支払い分を債務と認識すれば、優に350%を上回るからだ。

 ただし、中国人は日本人ほどホームカントリーに執着しないかもしれない。彼らは王朝の滅亡に伴う流浪には慣れている。グローバル時代の現代、中国有産階級は財産と一緒に世界を流浪する途を選ぶかもしれない(現にその予兆とも言える富裕層の海外資産買いあさりが起きているではないか)。

 そうなれば、破綻はずっと早く訪れることになるだろう。中国が「安定」を重視するのであれば、いかなる国家運営策を取るべきか、このグラフが物語っている。政策の重点は空母艦隊の建設などではないはずだ。

不良債権処理の加速と為替レートの慎重管理を

 筆者は中国経済について、近未来に破局的な大災害が来る可能性は低いと考える。だが、次の3点については、国務院にとって「想定外」な小混乱が起こる恐れがあると案じている。

 第1は今後の金融調節についてである。李克強総理率いる国務院はシャドウ・バンキングの急拡大を不安視して、資金需給を絞る方針だと言われる(「デレバレッジング」政策)。

 しかし、金融調節には慎重を期すべきである。前回に述べたとおり、今は借り換えで償還される融資が多い結果、本来なら次の貸付先に投じられるべき元本が金融セクターに十分戻っていない。つまり、ストックとしてのマネー量は多くても、実際に使えるキャッシュは意外に少ないのである。そこで、性急に資金需給を絞ると、資金フローがさらに細り、想定外のクレジット・クランチが襲う心配がある。

 第2は不良債権の増大についてである。資金需給を絞れば、乏しい資金を巡って、資金繰りが苦しい企業の生き残り競争が起きる。そこでも有利なのは、銀行とのコネが強い国有企業だから、資金調達力で劣後する民営企業が無用な犠牲になる恐れがある。

 それを防ぐためには、地方政府の不良債権処理に関する中央の政策・計画をハッキリさせて、地方政府の「申告」と処理を促す必要がある。投資に頼らない経済運営へと舵を切る覚悟を固めたのであれば、地方政府関連の不良債権をいかに処理、救済するのか、対策を早急に打ち出すべきだと思われる。

 第3は人民元の為替レートについてだ。不動産価格の上昇にせよ実質的なインフレにせよ、最近の人民元は減価ぶりが著しいが、不思議とこれが海外に波及していない。「中国の高成長が持続する」との思い込みが根強いせいだ。今年前半は、先進国の量的緩和策の揃い踏みでホットマネー流入が強まり、元高圧力が働いてきた。だが、今後不況が長期化して、幻想が剥げ落ちると、いつ元安方向に振れてもおかしくない。

 「短期的にマイルドな元安」程度なら、疲弊する中国製造業にとってむしろ朗報かもしれない。怖いのは、市場が「当局は元安を放置する姿勢だ」と受け取って、元安に歯止めがかからなくなるケースだ。そこで当局が慌てて為替介入すると「中国が米国債を売り始めた」というニュースに繋がる。世界経済に少なからぬ衝撃が及ぶだろう。

 つまり、不動産や金融のバブルが崩壊しなくても、中国の混乱が世界経済の混乱に繋がる恐れがあるということだ。「対岸の火事」、はては「いい気味だ」などと思っていると、足をすくわれかねない。「用心」が肝心である。

 それにもまして必要なのは、よそ見していないで、我々は日本自身の経済成長のために奮闘努力することだ。波浪はこれまで以上に高そうである。様々な議論「封印」してきた参院選も終わった今、本腰を入れて構造改革に邁進しないと、今年前半を飾ったアベノミクスの御利益は、あっという間に消え失せてしまうだろう。

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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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