円安が売り上げを押し上げる見込みだが、一部製品の販売計画を引き下げるなど、エレクトロニクス事業の市場環境を厳しく見積もった。

同社は大株主の米ファンド、サード・ポイントから、映画・音楽のエンターテインメント事業の一部を上場するよう提案されている。ソニーが提案を拒否できるかどうかを見る上で、今決算での業績回復度合いが注目されていた。

会見した加藤優最高財務責任者は、「娯楽事業が他社と比べて見劣りするか外部の見方を含めて精査している」と説明。十分議論した上で回答すると述べ、提案に対する結論がまだ出ていないことを明らかにした。

ソニーがこの日発表した１４年３月期の新たな連結売上高の見通しは、前年比１６．２％増の７兆９０００億円。従来予想の７兆５０００億円から４０００億円引き上げた。７月以降の為替レートを見直し、ドル／円を従来の９０円から１００円に、ユーロ／円を１２０円から１３０円にそれぞれ円安方向へ変更したことが寄与する。

一方、連結営業利益見通しの２３００億円をはじめ、利益はすべて従来予想を据え置いた。デジタルカメラや液晶テレビなどの販売計画を下方修正したことや、新興国通貨が対ドルで下落していることが、利益にマイナスに働くという。

連結営業利益の予想は、トムソン・ロイター・エスティメーツによるアナリスト２１人の予測平均値２７９８億円を１７．８％下回った。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「サード・ポイントの主張を跳ね返せるほどの業績回復には至っていないようだ」と指摘。「円安効果を除くとエレクトロニクス部門は依然厳しい」とした。

主要製品の１４年３月期の販売計画のうち、レンズ交換式とコンパクトを併せたデジタルカメラを１２５０万台（従来１３５０万台）に、パソコンを６２０万台（同７５０万台）にそれぞれ下方修正した。液晶テレビも１５００万台（同１６００万台）に引き下げた。

スマートフォン（多機能携帯電話）は４２００万台の従来計画を維持。ゲーム機も、据え置き型のプレイステーション３（ＰＳ３）を１０００万台、ＰＳＰとＶＩＴＡを併せた携帯型を５００万台のまま変更しなかった。ただ、ゲーム事業の損益見通しは円安の影響を受けて下方修正。赤字になる見込みだという。

同時に発表した１３年４─６月期の連結営業利益は、前年同期比５．８倍の３６３億円だった。通期予想に対する進ちょく率は１５．８％。前年同期の通期実績に対する割合は２．７％だった。テレビ事業は１２四半期ぶりに黒字化した。連結の純損益も３４億円の黒字となり、前年同期の２４６億円の赤字から回復した。

(白木　真紀　編集；田巻　一彦)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD310HK_R30C13A7TJ0000/
ソニー、米ファンドの事業分離上場提案を拒否へ
2013/8/1 2:00日本経済新聞　電子版　　　ソニーの取締役会は31日、同社の大株主である米有力ヘッジファンドが提案した映画などエンターテインメント事業の分離上場案について審議した。「エレクトロニクス事業とエンタメ事業は一体運営すべきだ」との意見が多く、ファンド提案を拒否する見通しとなった。近く正式にまとめ、ヘッジファンドに通告することになる。同時に指摘されていた情報開示の不足などについては対応策を引き続き検討する。

ローブ氏：ソニー映画部門の経営陣を批判−説明責任が欠如　

　　７月29日（ブルームバーグ）：ソニー の主要株主である米ヘッジファンド運営会社サード・ポイントを率いるダニエル・ローブ氏は、ソニーの映画・テレビ部門の経営陣に批判の矛先を向け、同社がエンターテインメント子会社を分離して株式を公開させるべきだとあらためて主張した。
サード・ポイントは29日、四半期に一度送付する投資家宛ての書簡で、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントはマイケル・リントン最高経営責任者（ＣＥＯ）とエイミー・パスカル共同会長の下で「説明責任が全く欠如しており、財務管理がお粗末だ」と指摘した。
ソニーは今週、決算を発表する。平井一夫社長の下、不振のエレクトロニクス部門には改善が見られるが、映画「アフター・アース」と「ホワイトハウス・ダウン」の興行成績が振るわないなど娯楽部門の問題に対する株主の不満への対応は不十分だ。
ローブ氏はソニーがエンターテインメント事業を不当に軽視しているとした上で、同事業の「業績不振がずっと続いていることを考えると、ソニーがそれについて率直に議論したがらないのは恐らくきまりが悪いからだろう」と述べた。
ソニーのニューヨーク在勤広報担当ジム・ケネディ氏に電子メールでコメントを求めたが返答はなかった。
ローブ氏は「漸進的なものではなく抜本的な行動が必要だ」と指摘。エンターテインメント子会社の一部を上場させることでソニーの利益は増え、エレクトロニクス部門に投資する資金を確保できると述べた。
原題：Sony Investor Loeb Criticizes Management of Film Division(1)（抜粋）
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更新日時: 2013/07/30 09:56 JST