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ノマド時代に「普通の人」が生き残る道[J-CAST会社ウォッチ]
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/573.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 8 月 06 日 22:46:46: 6p4GTwa7i4pjA
 

前回は「ノマド」の基本的な概念を紹介しましたが、これに現代的な意味を付加した人がいます。ジャック・アタリという経済学者・思想家は「21世紀の歴史」(原著の初版2006年。2008年邦訳刊、作品社)という本のなかで、未来の世界を予想しています。

テクノロジーの進歩によってグローバル化がどんどんと進んでいくと、世界の人々は3つの階層に分かれるだろうと予想しています。それが「超(ハイパー)ノマド」「ヴァーチャルノマド」、そして「下層ノマド」という分け方です。

世界で活躍する錯覚の中に生きる「ヴァーチャルノマド」

ドバイにはハイパーノマドと下層ノマドの格差が象徴的に表れている
ドバイにはハイパーノマドと下層ノマドの格差が象徴的に表れている

「超ノマド」率いるグローバル企業やクリエイティブな個人は、21世紀には新しい支配階級となる。そして国(近代国家)の力はだんだんと衰えていき、世界規模での階層化が進む超格差社会になる――。アタリはこう予測しています。

アタリの3つの階級について詳しく紹介しましょう。「超ノマド」はテクノロジーとグローバル化、資本主義の恩恵を最大限に受ける人。それらを武器に、世界中のどこにでも出かけて行って富を作り出します。

定住地を持たず、世界中を動きまわって都合のよい場所に会社や住居を構えます。具体的な職業としては、アタリは次のようなものを挙げています。

資本家、起業家、グローバル企業の経営者、保険や娯楽産業の経営者、銀行家、ソフトウェアの設計者、発明者、法律家、金融業者、作家、デザイナー、アーティスト

「ヴァーチャルノマド」は、国境の中に定住する中産階級。超ノマドが創るグローバル企業のサービスを消費する側で、次のような職業がこれに当たります。

ホワイトカラー、商人、医者、看護師、弁護士、裁判官、警察官、行政担当者、教師、デベロッパー、研究所勤務の研究者、技術者、技術労働者、サービス業に勤務する者

TwitterやFacebook、Google、AppleやMicrosoft。マクドナルドにスターバックス、ユニクロ、ハリウッド映画――。彼らはこれらグローバル企業のサービスに、生活のすべてを依存してしまうようになります。

定住しながら一日中これらのサービスを消費し、仮想空間の中で「自分が世界で活躍しているような錯覚」を得て、自己アイデンティティを作り上げます。

「超ノマド」はムリでも「下層ノマド」への転落は避けるべき

「下層ノマド」は、仕事を求めてさまよい続ける貧民層。簡単にいうと、グローバル版「出稼ぎ労働者」です。過去の労働者は田舎の農村部から、職や住居を求めて都市部へ移動しきました。これと同じようなことが、国境をまたいで起こる可能性があります。

現実にUAEの首都ドバイの建設現場で、24時間体制でビルを作っているのはインドやパキスタンから来た出稼ぎ労働者です。彼らは半年や1年限定のビザを持って、建設現場で働きます。仕事がなくなれば国外追放され、そしてまた別の国の建設現場で働くのです。

このような未来予測を受けて、私たちはどうすればよいのでしょうか。「そんな未来は受け入れがたい」と直視を避けていると、知らないうちに悪い方に巻き込まれるリスクがあります。現実を認め、それに備えておく方が賢明です。

超ノマドを目指せる人は、それに向かって厳しい国際競争に挑んでいけばいいと思いますが、問題はそうでない普通の人々です。

もちろん日本政府の政策などに問題がないわけではありませんが、政府は変わるかもしれないし、そうでないかもしれない。それを変えろと叫び続けると同時に、個人でできるところは個人でサバイバルしていく意識が大事です。

例えば、単価が下がるフリーランスの人は、生活費の安い田舎や、または思い切って生活費が3分の1くらいになるアジアの国に移住し、リモートで東京の仕事を受注することもできます。

単価はそれでも下がっていくでしょうが、生活費をもっと下げれば相対的には余裕ができます。そして、その余裕の間に技能を上げる自己投資をする。

超ノマドを目指さない普通の人が、どうやって生き残っていったらいいのか。前回紹介した「固定的なものからの脱却」もその一つですが、今後もこの連載で引き継ぎヒントを紹介していきたいと思います。
http://www.j-cast.com/kaisha/2013/08/01180642.html?p=all  

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01. 2013年8月07日 08:58:09 : niiL5nr8dQ
【第7回】 2013年8月7日 草間雅子 [美的収納プランナー]
返信は早いのに仕事の効率が悪い
「メール処理依存症」になる人のダメな習慣
 皆様、こんにちは。美的収納プランナーの草間雅子です。

 これまでデスクや財布・カバンといったハード面での整理術をご紹介してきた当連載。今回は少し趣向を変え、PCの中身――なかでもビジネスパーソンの皆さんにとって欠かせない「仕事の生産性がアップするメールの整理術」をご紹介してまいります。

 そこでまず、頼もしいパートナーをご紹介しましょう。企業の生産性向上のプロでいらっしゃる株式会社プロスタンダード代表取締役社長 若林雅樹さんです。

 若林さんは、企業で働くビジネスパーソンに対して、経営工学に基づいたスキルを提供することによって、月10時間(30分/日×20営業日)以上の生産性向上を目指すという研修を行っていらっしゃる方です。また、実際の業務現場でそれらのスキルが生かされているかチェックを行うなど、フォローも実施されています。

 そんな若林さんに、仕事で差がつく「メール処理術&整理術」を伺ってきました。

「美的収納」との共通点
時間の密度を高める!

 今回、若林さんに「生産性向上」についてお話を伺うなかで、僭越ながら感じたのは、若林さんのお考えと私の家庭やオフィスにおける「収納」についての考え方との間に、多くの共通点があるということでした。

 まず、その基本となるのが「有限である時間をいかに生産的に使うか」という点です。ここで、若林さんに見せていただいたこちらの表が非常に分かりやすかったのでご紹介します。


※プロスタンダード様 提供資料
拡大画像表示
 この「稼働時間」「準稼働時間」「非稼働時間」という言葉自体は、私にとって目新しいものでしたが、その考え方のベースは、私が「なぜ整理・収納をするのか?」という目的を考える上で、一番意識していた事と同じであり、それをこのように分かりやすく言語化・視覚化された表で見せていただいた事で、私自身の考えもスッキリしました。さすがは生産性向上のプロです!

 若林さんが作られたこの表はオフィスを前提にしていますが、家に置き換えてみるとどうでしょうか。収納を使いやすく、効率化することで、まずは非稼働時間の中の無駄(=特に探し物の時間など)をなくすことができます。そして、日々のルーチン部分(=必要な家事)は準稼働時間に該当すると考えられますが、動線などを見直し、時間の短縮、密度を高めることで、人生の付加価値を生み出す“本当にやりたい事、夢”に費やす時間、すなわち稼働時間を増やすことが可能になります。そして、これこそがまさに、私が一番お伝えしたい「収納」の目的なのです。

 ついつい有限ということを忘れてしまいがちな時間ですが、この表を見て「公私にわたり時間をどう使っているのか?今後どう使いたいのか?」を改めて見つめ直す事が必要だと感じました。

 皆さんの時間の使い方はいかがでしょう?

1日のうち2時間15分も
メール処理の時間に使っている!?

 今日のテーマはメールの処理術&整理術ですが、これは、

・仕事上、付加価値を生み出す“稼働時間”をどう増やしていくのか?
・つまり、準稼働・非稼働時間をどう短縮してゆくのか?

 という課題をクリアする上で、欠かせないスキルだと若林さんはおっしゃいます。

 今やPCが主なアウトプットの道具である以上、そのスキルを上げる事で成果の質量が上がります。

「プロは道具を使いこなすべし!」

 なるほどです。


プロスタンダード代表取締役社長 若林雅樹さん(左)と筆者(右)
 若林さんによると、メール処理に要する時間は1日のうち、平均 約2時間15分(マッキンゼー調査)も占めているとの事。しかも、そのメール処理時間のうち、約9割の時間はおおむね準稼働・非稼働時間に該当するのだそうです。つまりは、結果に直結しない作業であるという事になります。この時間を極力短縮する事で付加価値を生み出す稼働時間を増やし、その密度を高める=質を向上させることが生産性を上げる事に繋がるのは、皆さん納得ですよね?

 若林さんの言葉で私自身、ドッキリしたのが「メール処理依存症」という言葉!!そして、「1日中メール処理すれば、仕事は“片付く”が“やるべき仕事”は終わらない」という言葉にはさらにドッキリ!!

 確かに、メールを沢山打っていると、ものすごく仕事をしている気になったりするものですが、メールはあくまでも、一連の仕事の“プロセス”として必要なだけで、目的そのものではない。おっしゃる通りですよね。

 そう語る若林さんご本人も、仕事がうまくいっていなかった時期はメール処理が主体になっていたそうです。常時ちらちらと受信トレイをチェックし、都度返信することで作業が中断され集中力が落ちるといったことは皆さんも経験があるのではないでしょうか?

 これは、まさに収納も同じです。片付けそのものが目的になってしまい、どうして片付けるべきか?の先にある、本来の目的“本当にやりたい事”が二の次になっている事が多々あるのです。

メールソフトは開きっぱなしにするな!
処理時間を短縮する4つの方法

 では、どうすればメール処理の時間を縮めることができるのでしょうか?

 まず、1日のメール処理時間を以下の通り細分化しましょう(本文の内容を考える時間を除く)。

@読む
A書く・送る
B探す
C振り分ける

 それぞれを効率化させるためのキーワードは以下になります。

@読む → 時間・回数制限
A書く・送る → タイピングスピード、辞書登録、ショートカットキーの活用
B探す → フォルダ分けのスキル・検索力
C振り分ける → フォルダ分けのスキル
                   (※Pro Standard様 提供資料)

 以下、それぞれのポイントを若林さんに伺ってまいりました。

@読む → 時間・回数制限を設ける(2〜3回/日)

 メールチェックは1日2〜3回までに回数制限(ソフト自体閉じる)。9割以上の人がメールソフトを1日中開きっぱなしにしていると言いますが、これでは仕事の集中力が途切れてしまいます。先ほどから申し上げているようにメール処理自体は仕事の目的ではないので、思い切って回数制限を設け、それ以外の時間はソフトごと閉じてしまう。これで業務効率が上がったという実例があります。

 ここで疑問に感じたのが、「即、返信しなくても大丈夫?」という点です。若林さん曰く、「返信が遅れてとやかく言われるのは、そもそもの信頼関係に問題があるのでは?早く返信する事よりも、仕事やサービスの本質的価値を上げることに注力すべき」とのこと。おっしゃる通りですよね。ただし、業種によってはスピード返信が必須の場合もあり、一概には言えませんので、ご自身の状況に応じてご判断くださいね。

タイピング速度が3倍アップすれば
年間90時間もの差がつく!

A書く・送る 
 → タイピングスピードの向上、辞書登録、ショートカットキーの活用

 処理を速くするスキルのうち、“メール送信”に関する部分ですが、タイピングのスピードは業務のほとんどがPCなしでは回らない今となっては、生産性に与える影響は非常に大きいものがあります。若林さん曰く、1年で見ると150文字/分 の人と450文字/分打てる人では、年間で90時間(11営業日)差がつくというデータがあるのだそう。数字で見ると歴然、これは大きな差ですよね(※250文字×20通/日を打つと仮定した場合)。

 短時間でメール本文を打てるように、よく使う単語や文例を辞書登録しておくことが有効です。

「いつ」→いつもお世話になっております。
「おて」→お手数をお掛けしますが、何卒よろしくお願いいたします。

 など。ただし、デメリットもあります。それが辞書登録によるタイピングミスです。これには細心の注意を払うべきでしょう。若林さんもかつての上司の方から「お詫びのメールだけは、辞書登録は使わず手打ちするように」と言われたのだとか。お詫びのメールで、いかにも辞書登録によるタイピングミスのものが届いたら、怒りが倍増しそうですものね。気をつけたいものです。

 ご存じない方のために、念のため。辞書登録の方法は、Windowsでは「ツールボックス」→「単語の登録」で行うことができます(参考:http://office.microsoft.com/ja-jp/word-help/HA010230132.aspx)。

 次にショートカットキーの活用ですが、Outlookを使用の場合、例えばメールの作成・送信には、以下のショートカットキーで画面を開き、送信までを済ませることが可能です。

 新規作成:Ctrl+N
 返信:Ctrl+R

 →本文を打って

 送受信:F9ボタン
(その他ショートカットキー参考:http://office.microsoft.com/ja-jp/outlook-help/HP001230396.aspx

 ショートカットキーは左手だけで操作できるので、キーボードからいちいち右手をマウスに移し、カーソルを移動して各ボタン(新規作成・送受信)をクリックするより格段に動きの無駄がなくなります。

 ひとつひとつで短縮できる時間はわずかだとしても、日々のことですから塵も積もれば、ですよね!目の前でサクサクとショートカットキーを操る若林さんがとてもスマートで、思わず歓声を上げてしまいました。

メールフォルダの並べ方・名前の付け方は?
マウス動線を縮めろ!

 次にB「探す」とC「振り分ける」にうつりましょう。

B探す → フォルダ分けのスキル、検索力
C振り分ける → フォルダ分けのスキルアップ

 これは、フォルダの階層の作り方によって格段に効率の上がるところ。これこそ、皆さんにとって最も悩ましい作業のはず!私も悩ましい!

 伺ったポイントは以下の2点です。

1、フォルダの並べ方…使用頻度順に上から
2、フォルダの名前の付け方…頭に番号を振る

 まず、1「フォルダの並べ方」について見ていきましょう。これについては、使用頻度順に上から並べることによってPC上のカーソルの動線の無駄が減ります。収納で言うと、どこにどう収めるべきか?よく使うモノ(使用頻度の高いもの)を取りやすい上の段の引き出し、または引き出しの手前、にしまう事と同じです。

 日常生活もPCの中身も、慣れるとつい不便に鈍感になってしまうもの。しっかりと意識づけていきたいところです。

 フォルダも作り過ぎると、どこに振り分けるのか選択肢が増えて時間がかかる上に、振り分けるまでの動線が長くなります。ましてや、画面スクロールが必要なぐらいフォルダが多いのは相当な時間のロス!若林さん曰く、「既に画面スクロールが発生している方はフォルダ階層の抜本的構造改革をオススメしたい」とのこと。引き出しも受信箱もわかりやすく、サッと仕舞えることが大事で、フォルダの階層が深いというのは、引き出しの中に箱があって、更にその中に箱があって…という状態に等しいと言えるでしょう。

 次に2「フォルダの名前の付け方」についてです。これは、「10」「20」「30」とフォルダ名の頭に使用頻度順に番号を振る事で、よく使う引き出しを一番上に持ってくる事ができます。ここで、「10」の次を「11、12」と詰めてしまうと、間にフォルダが追加できず、追加すべきフォルダが発生する度に、番号の振り直しが発生してしまいます。皆さん“あるある”ではないですか? なので「10」の次は「20」としておくことで、11〜19にフォルダが挿入できます。

 これを収納に例えるなら、しまう場所にパンパンに詰め込まず、ゆとりを持たせるということでしょうか。ややスペースを開けておくことで、モノが増えても対応できるのです。ちょっと足すといっぱいになって、引出しそのものの場所を変えなくてはいけないシステムは、非効率だという事です。

 以上、家やオフィスの収納の効率化には様々なアイデアがあった私も、メール処理の効率となると…考えもつかない事ばかりで、若林さんのお話には、始終ブンブン首を振ってうなずきっ放しでありました。

 次回(8月21日公開予定)も引き続き、仕事の生産性アップ強化企画第2弾としてプロスタンダードの若林雅樹さんに、「スケジューリング&タスク整理術」ついてお話をお伺いします!どうぞお楽しみに!

(文/構成=勝俣絹枝)


02. 2013年8月07日 09:31:59 : niiL5nr8dQ
 
知らなきゃマズい!法律知識の新常識
【第2回】 2013年8月7日 中里妃沙子[弁護士]
うつ病で長期休職中の社員をどう処遇すべきか……
悩める社長におくる円満退職のための法律知識
うつ病は今やがん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病の4大疾病に並ぶ病気として認識されている。職場にうつ病に苦しむ同僚がいるということも、決して珍しいことではない。完治するには専門的な治療と、往々にして休職期間が必要で、一定の時間が必要だということが社会では広く知られるようになった。しかし、この状況を会社の経営者側から見れば、違った景色となる。欠員が出るために他の社員への配慮をしなければならず、さらに業績へのインパクトを最小限にしなければならない。場合によっては冷徹にその社員の処遇を判断しなければならない事がある。今回は、悩みに悩んだ末に決断を下したある社長の事例から、労働関連法を見ていきたい。(弁護士・中里妃沙子 協力・弁護士ドットコム)

社員を思えばこそ……
悩み抜いた社長の決断

「先生、言いにくいのですが……、社員を一人、辞めさせたいと思っています……」

 事務所に法律相談にやってきた中小企業の社長を務めるA氏は、まるで悪いことをしてしまったかのような様子だった。

「実はうちの会社の社員が、ひどいうつ病にかかっていて、長期の休職中なんです。もうすぐ休職期間が満了するのですが、いっこうに病気がよくなりません。私としては、彼には会社を辞めてほしいと思っています……」

 長期間休職している社員がいるために、他の社員の仕事の負担が増えているようで、職場に不満がたまっているという。社内の雰囲気が悪くなっていることに、社長は危機感を感じているようだった。

「それに正直言って、会社はうつ病の社員の社会保険料まで立て替えていて、彼は働いていないのに……。その負担もばかになりません」

 A社長によると、うつ病の社員の会社負担分の社会保険料だけでなく、本人負担分の社会保険料も立て替えてきたという。A社長は社員に対してできる限りのサポートをしてきた。しかし、それも限界で、つい本音が出てしまった。

 社員の年収にもよるが、平均的な年収の社員の会社負担分と本人負担分の両方を年間通して負担すれば、100万円は下らない。コストを切り詰めてなんとか収益を確保してきた中小企業にとっては、大きな額である。

 うつ病の社員に早く良くなって仕事に打ち込んでほしい、他の社員にも気持ちよく働いてほしい、でも業績は上げなければならず、これ以上のコスト負担は厳しい――。

 病気の社員を一人辞めさせるという後ろめたさもあり、社長は悩んだ末に来所したのだった。

 そこで社長のA氏は、さっそく就業規則を確認した。ところが、休職の規定はあるものの、休職期間満了の際に復職できそうもない場合に、その社員の処遇をどうするかの明文の規定がないことがわかった。

「私としては、その社員に辞めてもらいたいのですが、明文の規定がない状況で解雇するとなると、問題が発生しそうですし、彼も生活があるので、やすやすと退職に応じてくれそうにありません。なんとか、円満に解決する方法はないでしょうか」

いまや患者は300万人超
「5大疾病」の一角を占めるうつ病

 最近、企業の経営者や人事担当者の方々から、うつ病と診断され、休職となる社員が増えているという声をよく耳にする。

 実際、厚生労働省の2009年のデータによると、がん患者数はおよそ152万人、糖尿病患者数はおよそ237万人に対し、精神疾患患者数は既に323万人を超えている。2006年の医療法改正で、がん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病を「4大疾病」と定めたばかりだったが、昨年7月、急増する精神疾患を加えて「5大疾病」として重点対策を進めるための方針を発表している。この数字が物語るように、うつ病などの精神疾患の社員も急増する傾向にある。

 うつ病やその他の精神疾患と診断された社員の多くは、それまでと同様の働き方をすることが困難となり、休職となることが多い。休職期間が長期化することも多く、いったん復職したとしても、再度の休職となることも少なくないという。

 当然、先のA社長の会社の社員のように、長期の休職期間を経ても病状が改善せずに復帰の見込みのない場合も起こりえる。その場合、現実には、使用者としては、その社員に退職してもらいたいと考えることがある。

 これは特に中小企業に多い傾向があるようだ。というのは、大企業の場合、欠員が生じても他の社員によって労働力の補充をすることが可能となる場合があるからだ。しかし中小企業では、A社長の会社のように1人の欠員が出ただけでも、他の社員に大きなしわ寄せが行ってしまい、他の社員に不満が募るケースは少なくない。

 それだけでなく、うつ病の社員に辞めてもらい、社会保険料などの出費を抑えたいと考えることも、使用者が退職させたいと考える大きな理由となる。

 これは中小企業経営の現実から考えて、ある意味自然なことなのかもしれない。

 もし使用者が社員に辞めてもらおうと考えた場合、まずは自社の就業規則の内容を確認する必要がある。そこで就業規則に休職から退職につながるような明文の規定がないなら、どんなに休職期間が長く続き、辞めてもらいたいと考えたとしても、簡単に辞めてもらうことはできない。

 強引に退職に追い込んだり解雇したりすれば、「解雇権の乱用だ!」と訴訟に持ちこまれる可能性もあり、事が大きくなれば使用者は頭を抱えることになる。就業規則によっては、長期間休職する社員にいつまでも辞めてもらうことができない、という事態になってしまう。 

「解雇」は不必要な摩擦を生む
円満な「退職」のために必要なこと

 使用者は、円満に解決するためにはどうすればいいのか。

 まず考えられる方法は、自社の就業規則を見直すことだ。その際のポイントは、休職期間満了までに、休職の原因となった事由が消滅しない場合には、「当然に退職とする」という規定を設けることだ。

 法律の世界では、本来の労働契約に沿った労務の提供ができない場合は、債務不履行となると考えられており、また休職制度は、解雇猶予措置と考えられている。そのため、休職期間が満了したにもかかわらず、労働者が本来の労働契約に沿った労務の提供ができない場合に、債務不履行として労働関係の解消が論議されることは普通のことだ。

 かつては、「休職期間満了までに休職の原因となった事由が消滅しない場合には解雇となる」という規定を盛り込んだ就業規則もあった。

 しかし、労働者を「解雇」するには、当該企業の規模や業種、雇用形態等を考慮した上で、その解雇が社会的に相当であることが必要とされる(労働契約法16条)ほか、30日前の予告手続きが必要となる。あるいは予告がない場合には、予告手当が必要となり(労働基準法20条)、さらには「解雇」という言葉のニュアンスが、労使間に不必要な摩擦を生じさせる可能性もある。

 そこで、最近では、休職期間満了までに、休職の原因となった事由が消滅しない場合には、就業規則に、「当然に退職する」という規定を盛り込む方が妥当だと考えられるようになってきている。

 仮にA社長の会社の就業規則にこの規定が盛り込まれていたなら、A社長は「当然に退職する」と規定した就業規則にしたがって、社員に退職するよう促すことになる。

退職の規定がない場合は
双方の合意へ話し合いが不可欠

 では、A社長の会社のように、就業規則に退職の規定がない場合はどうするか。この場合は労働者と粘り強く交渉しつつ、退職の合意を取り付けるしか方法はない。

 使用者にとって従業員を「解雇」するという選択肢もあり得るが、労働者を解雇するには、前述のようにその解雇が社会的に相当であることが必要とされる。

 ただ、使用者側からの一方的な解雇は無用な労使間のトラブルが発生する可能性が高い。したがって、使用者は労働者に対し、実質的には「解雇」の要件が備わっていることを粘り強く説明しつつ、労使双方の合意によって「退職する」とすることが望ましい。

 万が一、就業規則自体が存在していなかったり、就業規則があっても休職規定が存在していなかった場合は、同規模・同種の企業の一般的な就業規則に規定されている休職期間を参考にする方法がある。その上で、同程度の期間欠勤することを承認し、うつ病などの精神疾患の社員が復帰できない場合には解雇の要件が備わっていることを説明し、「退職」を促すことになる。

 冒頭のA社長は、うつ病の社員に休職期間中に回復に努めるよう指示し、復帰を待つことにした。

 しかし、うつ病の社員は容易に復帰することができず、結局1年以上が経過。困り果てたA氏は、代理人弁護士を依頼し交渉を依頼した。ほどなくして社員側も代理人弁護士を依頼し、以後代理人弁護士同士の交渉となった。

 A氏としては、この時点ですでに退職してもらうことを考えていたが、退職後に問題が生じないよう、円満に退職してほしいと考えていた。依頼を受けたA氏側弁護士は、会社復帰が無理であると予想しつつ、あえてうつ病の社員の代理人弁護士に対し、会社復帰時期を明らかにしてほしいと打診。いずれ社員側から、会社復帰ができないと認めた上で退職を申し出てくるだろうと予想していたからだ。その場合には退職後に問題が生じるおそれはないと考えたのである。

 うつ病の社員の代理人弁護士は、当初は、今しばらく様子を見てほしいと主張していたが、予想通り3ヵ月ほどして復帰は無理であるから退職したいと連絡してきた。

 結局、A氏側は、立て替えていた本人負担分の社会保険料を社員には請求しないこととし、退職が決まった。

 A氏のような経営者だけでなく、人事関連部署の社員や現場の管理職、社員自身も、まずは就業規則のなかで、休職から退職につながる項目をチェックをすることが大事だ。

 比較的新しい会社は、休業期間中に復帰できない場合には、退職となる規定が用意されていることが多い。ところが問題は、何年も前に就業規則をつくったような会社で、これまで比較的問題が起こってこなかったような会社だ。

 このような会社は、問題が起こっていなかったという点では優良企業だが、それゆえ何年も前に作成された就業規則が問題の種となりかねない。

「うちの会社は大丈夫」と安心する前に、一度、弁護士や社会保険労務士に相談することをおすすめしたい。

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<執筆者プロフィール>


中里妃沙子/なかざと・ひさこ

東北大学法学部卒業。1995年4月弁護士登録、2009年7月丸の内ソレイユ法律事務所開設、所長に就任。債務整理、離婚、交通事故、会社法務、相続、労務管理など、幅広い分野へ対応している。著書、論文多数。

・丸の内ソレイユ法律事務所のホームページ

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