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今春の大卒、非正規雇用が3万9000人・ニート3万人 文科省調べ [日本経済新聞]
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/605.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 8 月 07 日 23:50:15: 6p4GTwa7i4pjA
 

大学を今春卒業した約56万人のうち5.5%にあたる約3万人が就職や進学をせず、その準備もしていないことが7日、文部科学省の調査で分かった。

大半が「ニート」(若年無業者)とみられる。前年の6.0%(約3万3千人)から0.5ポイント減少したが、依然として高い水準。契約・派遣社員やアルバイトなどの非正規労働者も約3万9千人に上り、若者の就労支援の強化が急務となっている。


 文科省の学校基本調査速報によると、今春の大卒者は55万8853人で、卒業後に就職も進学もしていない人は全体の13.6%(前年比1.9ポイント減)の7万5928人に上った。

 このうち内定を得られないまま卒業し、就職活動を続けている人や進学の準備をしている人は4万5158人にとどまり、残る3万770人はどちらの活動もしていなかった。家事手伝いやボランティア従事者も含まれるが、大半がニートとみられる。内訳は男性が1万6882人、女性が1万3888人だった。

 ニートは通学も仕事もしておらず、職業訓練も受けていない15〜34歳の若者のことで、総務省の労働力調査によると、2012年のニートは約63万人。ニートが増えると日本社会全体の労働力が下がる恐れがあり、将来的な生活保護受給者の増加や税収減につながる可能性もある。

 一方、大卒者のうち37万5959人が就職した。就職率は67.3%で前年比3.4ポイント増え、3年連続で上昇した。このうち雇用期間の定めのない正社員などとして就職した人は35万3173人(63.2%)。前年より1万8078人増え、景気回復を裏付けた。

 非正規雇用で就職した人や就職も進学もしていない進路未決定者など、安定的な職についていない人は全体の20.7%(前年比2.2ポイント減)を占める11万5564人。このうち週30時間以上働く契約社員や派遣社員などになった人は2万2786人。アルバイトなどの一時的な仕事と合わせると、非正規で働く人は大卒者の7.1%の3万9636人に達する。

 文科省は「就職率は回復基調にあるが、リーマン・ショック前の水準には戻っていない。安定的な職に就けない大卒者が5人に1人いる状況は改善すべき課題だ」としている。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG07056_X00C13A8CC1000/?dg=1  

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コメント
 
01. 2013年8月09日 10:33:55 : e9xeV93vFQ
【第6回】 2013年8月9日 柴崎洋平
日本企業は終身雇用で和を重んじ、
今後もマラソンランナーを求め続けるのか?
出井伸之×柴崎洋平 対談【前編】
日本企業が世界と伍して戦っていくには、優秀な人材を世界から集める必要がある―――!これは、本連載『エリート人材獲得競争の最前線』を執筆する柴崎洋平さん(フォースバレー・コンシェルジュ代表取締役)の持論です。その思いには、起業前に務めていたソニーで、多くの優秀な先輩に囲まれて鍛えられた経験が色濃く反映されています。今回は、そのソニーの元CEOで現在は柴崎さんを応援する出井伸之さん(クオンタムリープ代表取締役ファウンダー&CEO)を迎えて、日本企業の採用や育成の問題点について議論します。

20年前の人口ピークアウトを機に
日本の成功体験はどんどん陳腐化!?


出井伸之・クオンタムリープ株式会社代表取締役 ファウンダー&CEO。2005年6月にソニー会長兼グループCEOを退任後、2006年9月にクオンタムリープ株式会社を設立。産業の活性化や新産業・新ビジネス創出を実現するための活動をグローバルに展開している。2012年6月にNPO法人アジア・イノベーターズ・イニシアティブを設立、理事長に就任。他にアクセンチュア、百度公司(Baidu)、レノボ・グループ(Lenovo)、フリービットの社外取締役、美しい森林づくり全国推進会議の代表などを務める。上海交通大学、海外教育学院教授。著書は『日本大転換』(幻冬舎新書)、『日本進化論】(幻冬舎新書)、『迷いと決断』(新潮新書)、『非連続の時代』(新潮社)、『ONとOFF』(新潮社)ほか多数。       【撮影:住友一俊】
柴崎 日本の18歳人口は、1992年の220万人に対して現在は120万人にすぎず、20年間で4割以上も減少しています。にもかかわらず、企業は今までと同規模の採用を続けているので、どうしても全体的には人材の質の低下が避けられなくなっているのが実情ではないでしょうか。

出井 大学生の数自体はどのように変化していますか?やはり、少子化に伴って減少傾向を示しているのでは?

柴崎 実はその点がミソでして(笑)。1992年当時よりも目立って進学率が上昇しているため、大学生者の数は微増となっています。言い換えれば、昔と比べて大学に入りやすくなっているわけですが、企業側はあまりその点を意識しないまま、従来どおりの採用を続けています。

 そして、海外からも新卒学生を採用しようと視野を広げる企業も出始めてはいますが、せっかく世界中から極めて優秀な人材を集めても、残念ながらすぐに辞めてしまうケースが後を絶ちません。多くの場合、大きな障壁となっているのが日本的な人事システムのようです。どうして日本企業は、過去の仕組みを変えられないのでしょうか?

出井 日本企業の多くは、20世紀後半の高度成長期、いわば日本における産業革命の後期に設立されています。企業は田舎から働きに出てくる人材を歓迎し、業績を大きく伸ばして、日本経済もさらなる成長を遂げるという構図が成り立っていたわけですが、こうした流れは柴崎さんが指摘した人口のピークアウトを機に止まってしまった。

 にもかかわらず、国自体が戦後の成功パターンから抜け出せなくなっているんです。企業においても、多くは今ごろになって必死にグローバリゼーションに注力し始めましたが、もはや競争力の劣後や新興国の台頭は明らかで、かつてのような日本VS欧米といった単純な競合関係は成り立たないし、簡単にも勝てない。そして、新卒学生たちの親も、まだ日本が成長している途上に大人になっていった世代だから、価値観が今とは一時代分ずれていて、どうしても子どもはそれに感化されるでしょう。つまり、国も企業も個人も、あらゆる方面でマインドセットが時代遅れになってしまっているんです。だから、簡単には変えられないのだろうね。

柴崎 日本企業がみずからを変革できずにいる傍らでは、サムソンがインド工科大学の苦学生に米国シリコンバレーのトップ企業よりも好条件を提示するなど、グローバル企業は世界中のエリート獲得に力を入れていますね。

出井 サムソンが今後どうなっていくのか、非常に注目しています。日本企業を追い越して、今は完全に目標を見失っていると睨んでいるんです。その意味でも、インドをはじめブラジルなど新たな市場の拡大・開拓に乗り出すでしょう。

 私が社外取締役を務める中国企業も日本のグローバル企業以上にグローバリゼーションが浸透しているから、新卒を毎年定数で採用する仕組みもなく、人材は必要に応じて獲得していくものだと合理的に考えている。また、中国清華大学のアドバイザリーボードも務めているが、同校の職員たちは「この講義なら世界トップの講師は誰で、いくらの給料を支払えば招聘できるのか?」といったディスカッションをしているわけです。みな視線は世界に向いている。こんな話、日本の大学では聞いたことがないよね。

実はやりがいを感じにくい仕事?
外部の評価を受けにくい人事部


柴崎 これだけ製造業を中心にグローバルな競争で苦境に立たされて、壊滅的な状態まで追いつめられていながら、それでも日本企業がなかなか人材採用や人事制度のグローバル化に乗り出せないのはなぜでしょうか?

出井 残念なことに、どこの企業も本社の人事部は外部と接していませんよね。

 営業部は顧客から直接文句を言われるし、開発部も競合品よりも製品の性能が劣っていたら批判される。財務部にしても、IR(投資家向け広報活動)の席で投資家から問い質されます。そうやって外部と接することで様々なことに気づくわけだけど、人事部の場合は交流をもったとしても、せいぜい同業の人事部か労働組合にとどまってしまう。怒られることもない代わりに褒められることもないから、ひょっとしたら人事の仕事って、グローバル化以前にやりがいが感じにくいのかもしれません。

柴崎 ただ、いまだに多くの日本企業では、人事部への配属がエリートコースの典型パターンのような受け止め方をされていますよね。

出井 人事部がエリートコースだ、という受け止め方がおかしいよね。ただでさえ、日本企業の場合は、出世が年功序列のスロートラックなのだから。
 先日、某大企業から弊社に転職したいという人物に、その動機を尋ねたら、彼はこう答えました。「今の職場では、10年後に自分がどのポジションに座っているかがすでにわかっているから」。

柴崎 どうにかして日本の人事制度を変えられないものか。そう思いながら様々な企業と接していて、しみじみ感じるのですが、年功序列であること以前に、日本ならではの終身雇用制度こそ、実力主義がなかなか成り立ちにくい主因ではないでしょうか。3〜5年で転職するのが前提ならともかく、30〜40年と雇い続けていく場合は、実力があるからといって早々と昇格させるのは難しいですよね。しかしながら、今の時代も終身雇用を貫くことに、何らかのメリットはあるのでしょうか?


出井 日本の企業経営者の部屋で、「和」の一文字が書かれた色紙がよく見られますよね。要するに、彼らは調和を重んじる。そして、日本企業では3年程度のスパンで配置転換が行われるのが通例です。つまり、日本企業の人事に対するポリシーは「専門家は要らない」ということであって、終身雇用の下で「じっくり、みんなでやっていきましょう」というスタンスなわけです。

 入社直後は血気盛んだったのに、3年も経つとすっかり疲弊している社員を何人も見てきましたが、終身雇用の企業が求めているのはマラソンランナーであって、スプリンターは要らないということなのでしょう。

柴崎 仰るようにマラソンであれば、社員たちはコースから足を踏み外してしまうリスクを恐れますよね。すると、どうしてもイエスマンが増えてしまい、結果的に社内改革がいっこうに進まないのではないでしょうか。

出井 それに関しては、雇われている側のサラリーマンにも責任があると思いますね。僕は若い頃、最初から3年ごとに異動するつもりで働いていましたよ。その職場にずっと籍を置き続けて課長になることなど狙っていなかったから、思ったこともハッキリと言えた。そして、「アイツはうるさいから」と上司に睨まれて、自分の思惑どおりにあちこちの職場に異動していったわけだけど(笑)。
 振り返ってみてつくづく思うのは、1ヵ所にずっととどまっていた人より、社内でもいろいろな職場を経験してきたという人のほうが絶対に伸びるってことですね。

※後編に続く。次回は8/16公開です。


02. 2013年8月09日 10:41:30 : e9xeV93vFQ
【第4回】 2013年8月9日 ダイヤモンド・オンライン編集部
景気が回復しても日本の給料が増えない4つの理由
雇用・賃金の改善を阻む古い経済構造の本質的課題
――杉浦哲郎・みずほ総研副理事長に聞く
景気が回復して給料が上がる――。第二次安倍政権の発足後、人々はアベノミクスに対してそんな期待を抱いてきた。先頃参院選で自民党が大勝し、何のしがらみもなく政策を行える状況になった今こそ、アベノミクスの真価が問われている。日本の賃金は本当に増えるのか。だとしたら、いつ頃からその兆候は見え始めるのか。雇用事情に詳しい杉浦哲郎・みずほ総合研究所副理事長は、賃金の本格的な回復には日本経済の構造変化が不可欠と説く。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、林 恭子)

15年間で増えたのは非正社員ばかり
雇用の安定が失われ賃金は低下を続ける

――アベノミクスで、景気回復への期待が高まりつつあります。そんななか、企業で働く社員の最大の関心事と言えば、「自分の給料は上がるのか」、また「上がるとしたらいつ頃から上がり始めるのか」ということです。近い将来、実際に給料が上がる見通しはあるのでしょうか。


すぎうら・てつろう
みずほ総合研究所副理事長。1954年生まれ。早稲田大学卒。77年富士銀行(現みずほファイナンシャルグループ)入行。同行調査部、富士総合研究所研究開発部主任研究員、ニューヨーク事務所長、経済調査部長、みずほ総合研究所執行役員、チーフ・エコノミストを経て現職。 『アメリカ経済の光と影』『病名:【日本病】』『日本経済の進路2003年版』など著書多数。
 これまでの経緯を見ると、すぐには難しいかもしれません。過去の雇用と賃金の推移を考えましょう。金融危機が起きた1997年から2012年までの時間軸で見ると、この15年間に実質GDPは9.4%成長しています。

 この期間、雇用者数も増えています。ただしその内訳を見ると、正社員が472万人も減った一方で、非正社員は逆に661万人も増え、雇用者全体の3分の1超に及んでいます。

 こうして、雇用者全体の中で賃金の低い非正社員が占める割合が増えた結果、ピークだった1997年からの15年間で、名目賃金は12.8%減少。実質賃金も9.2%減りました。

 つまり、経済は成長したけれど増えた雇用は全て非正社員だった。その結果雇用の安定性は失われ、生活水準も大きく下がったというわけです。

 2000年代中盤の小泉政権時は、戦後最長の景気回復期でしたが、雇用機会が減ったので、賃金の押し上げにはつながらなかった。さらに2008年のリーマンショックを機に、労働者の賃金はますます低下。安倍首相が政権に返り咲く直前まで、このような状況が続きました。

 こうして見ると、雇用機会の減少や賃金の低下は、構造的な問題と言えます。これまでなぜ賃金が下がり続けたのかをよく分析しないと、「アベノミクスで給料が増える」という見通しは、一概に立てられません。

景気が良くなれば給料が増える
という考えはもう当てはまらない

――足もとの状況は変わりつつあるのでしょうか。景気回復期待もあり、今年の春闘では、定期昇給、ベースアップ、一時金の引き上げなどに動く企業が増えた印象があります。

 安倍首相が大企業に対して賃上げの要請をしたため、電機、自動車、造船、機械、小売りなどの一部の企業が春闘で定期昇給、ベースアップ、一時金の引き上げに応じましたが、今後もこうした企業が継続的に増えるかどうかは不明です。

 それに、春闘で一時的に賃金が上がっても、労働者の実際の賃金が増えるとは限りません。実は、1980年以降の春闘の賃上げ率と、法人統計ベースの1人あたり人件費の推移を比べて見ると、この15年間、累積の春闘賃上げ率は30%前後増えたのに対して、企業の1人あたりの人件費は15%前後も減少しているのです。

 景気がよくなると「春闘で賃上げ率を上げよう」という動きが出ますが、企業は非正社員を増やすなどして他の部分でコストカットをしているので、全体として賃金は上昇していないということです。

 つまり景気と賃金の連動性は、一時金などを除けばすでにかなり緩くなってきている。だから、労働分配率(企業が新たに生産した付加価値全体のうち、そのための労働の提供者に分配された比率)が下がっているのです。「景気が良くなれば給料が増える」という考えは、今や当てはまらなくなっています。

――そもそも、賃金がなかなか増えない構造的な問題とは何ですか。

 理由は色々ありますが、経済構造や市場要因などのマクロの問題と、企業が抱えるミクロの問題に関して、大きく4つの問題があると見ています。

 マクロの問題から見ると、第一にグローバリゼーション、技術革新、新興国との競争、デジタル革命などによる経済構造の変化があります。こうした流れの中で、先進国では中間層の雇用が機械に置き換わり、低賃金の雇用しか生まれなくなっている。最近では中国でも同じ状況が起きており、世界的に見て賃金が上がりづらい状況です。

 経済は分厚い中間層が生まれないと、なかなか安定的に成長しない。野田前内閣や米国のオバマ政権は、「分厚い中間層をつくる」と唱え続けて来ました。これは正しい認識だと思いますが、安倍政権になってからこの言葉が出て来ません。

 第二に、市場要因。よく「日本企業はお金を溜め込み過ぎ」「内部留保を投資や雇用に回せば、企業も経済も成長する」と言われますが、それはロジックが逆です。不確実性が高まるなか、お金を手元に置いておかなければいけない状況だからこそ、企業は投資も雇用も絞って、内部留保を厚くしてきたわけですから。

 とりわけリーマンショック以降、日米欧の企業は「金融危機のトラウマ」を抱え、とにかくお金を使わないようにしてきた。金融危機下では、企業が市場や金融機関から資金を調達できず、資金が回らなければ、黒字企業だって経営破綻しかねない。だから、十分な手元流動性を積み上げるために、雇用や投資を抑制するしかなかったのです。

社員の給料が増えない原因は
制度要因と古い労働力観にある

――では、企業が抱えるミクロの問題とは何ですか。

 まずは制度要因。これまで中堅・大企業では、中高年正社員の雇用を守るのが大前提になっていた。これは正社員の既得権益であり、なかなかなくなりません。その中で労働コストを下げるために、若者の採用を抑制する、非正社員を増やす、という選択肢が出てくる。そうなると、いつまでも非正社員が増え続け、全体の賃金は減り続けます。一方で正社員も、厳しい人事評価や能力給が導入され、賃金が下がっていく。賃金の下押し圧力はこうして続きます。

 米国のように、自分のスキルを生かして自由に転職できる環境があればいいですが、日本は転職市場を支えるインフラが不十分。その人の経験や能力などのスキルを客観評価する仕組み、企業が必要とするスキルを身につけるための職業訓練や職業紹介の仕組みが十分とは言えない。また、欧州のように同一労働・同一賃金が確立されておらず、正社員と非正社員の賃金格差はすごく大きい。企業にとっては、安い労働力をフレキシブルに使えるわけだから、非正社員が減る兆しはありません。

 2つ目は古い労働力観です。日本企業の多くは、いまだに労働力を「抑制すべきコスト」と捉えています。以前は賃金を含むコストに適正利潤を乗せて、モノやサービスの価格を決めていました。ところがグローバル競争が激しくなってからは、最初にグローバル市場で競争できる価格を実現することが求められるようになった。

 そこから適正利潤を引いて、その結果コストをいかに減らすかという発想になりました。そのため最大の労働コスト、すなわち賃金がどんどん削られるようになったのです。

 今窮地に陥っている家電業界の例を見てもわかる通り、その背景には、潜在能力を生かすビジネスモデルをきちんと構築して来られなかったことがあります。競争の激化でモノづくりから生まれる付加価値がどんどん低下しているにもかかわらず、「モノづくり」に過度に依存したビジネスを続けたため、世界でナンバーワンの製品をつくり続けても低収益に甘んじています。

 たとえば、大手から製品を外注し、ロボットを使って製造の効率化を目指す台湾のホンハイ(鴻海精密工業)などは利益率が下がっていますが、彼らにiPadやiPhoneの製造を外注し、自分では開発に集中し、実際のモノづくりをしないアップルの利益率は上がっています。

付加価値を生めないモノづくりが
雇用や賃金が増えない最大の要因

 つまり、モノづくり自体よりも「モノづくり+α」「モノの価値を高めるα」から生まれる付加価値が、製造業の儲けの中心になってきた。その結果、旧来のモノづくりの現場で働く人たちの賃金は安くならざるを得なくなりました。

 賃金の低下圧力は、厳しい世界競争に勝ち残るために、グローバルサプライチェーン(系列化)が発達したことで、さらに加速しました。系列内の企業は、「業績が厳しいからコストを下げてくれ」と親会社に言われれば、自分たちも引き下げざるを得ないからです。

 そんななか、これから付加価値を生み出すのは、働く人の「頑張り」「知恵」といった人材の力。そこに高い報酬を払うべきです。「付加価値を生む源泉はヒト」という認識を失った日本企業の労働力観こそ、実は賃金低下の最大の要因だと思います。

 これまで述べた4つの要因がない混ぜになって、雇用や賃金が増えない状況が続いています。だから、こうした構造的な問題が解消されないまま、アベノミクスで給料が増えると考えるのは、難しいと思うのです。

雇用の二極化は世界的な問題だが
日本は労働市場の柔軟性が低い

――賃金の低下は世界的な問題ということですが、海外企業も似たような問題を抱えているのでしょうか。

 日本だけではなく、米国でも「雇用の二極化」(ジョブ・ポーラライゼーション)という同様の現象が起きています。ある研究機関の分析によれば、米国では、リーマンショックが起きた2008年からの3年間(2008年1月〜2010年2月)で雇用喪失が874万人に上りましたが、雇用が減った主な業種は中程度の賃金(中賃金)を得ていた中間層でした。ここで言う中間層とは機械のオペレーターなどで、前述のような「競争の中での雇用喪失」のケースです。

 その後の景気回復期には、3年間(2010年2月〜2013年2月)で573万人の雇用が増えましたが、実はそのほとんどが低賃金の仕事。つまり、中間的な仕事が失われて、低賃金の雇用に置き換わっただけです。日本と同じですね。

 欧州ではドイツも似ていて、2000年代初頭にシュレーダー政権が行ったハルツ改革で労働市場の柔軟化が図られ、短時間・低賃金の雇用が急増しました。時給が平均の3分の2以下という低賃金労働者が10年で2割も増え、労働者全体の23%を占めるまでに至っています。それによって企業の競争力は高まりましたが、モノづくりのスキルが失われ、所得格差が拡大し、逆にグローバルでの競争力が落ちていくのではないかという懸念が、ドイツ人の間に広まっています。

 雇用の二極化は、今や世界的な問題。こうしたなかで、日本だけが中長期的に賃金を増やしていくのは容易ではないと考えられます。

――それでは、政府は雇用や賃金を増やすために、どんな取り組みを進めたらいいでしょうか。

 安倍政権が規制改革や成長戦略の中で唱えている転職市場の充実は、よいことだと思います。日本では、一時期より転職が盛んになりましたが、中高年の転職は相変わらず難しい。実は、自由に転職できるイメージがある米国でも、最近では次の職をすぐに見つけられる人が減り、半年以上失業している人が4割に上っています。

 とはいえ、やはり米国では「大学で取得した学位」「前職での経験」「前職の上司や同僚のレコメンド(推薦)の内容」といった客観的な基準で個人の能力を判断するので、転職し易い。それに比べ日本では、社内で蓄積されたスキルがどのようなものか、外部からはわかりにくい。また米国では、個人が自ら事業を起こすことも容易です。日本と比べれば、やはり労働市場の柔軟性は大きい。

 日本も同じように労働市場の柔軟性を高めていけば、雇用や賃金の構造も変わって行くでしょうが、ホワイトカラーエクゼンプションや解雇規制緩和の話が出ると、労働組合などの反発が高まるなどして、なかなか改革が進まない。

 また実際にも、労働市場の改革は様々な制度や慣行も同時に変え、転職市場の整備なども進めていかないと、かえって歪みが生じてしまう恐れもあります。「終身雇用」「退職金」といった概念や、それを支える制度や仕組みもあわせて変えない限り、難しいでしょう。

政府の提言は産業政策的な発想
成長産業を誰がどう見極めるかが重要

――アベノミクスの「3本の矢」は、雇用回復や賃金上昇の実現にどのように関わってくるのでしょうか。リフレ派の学者たちは、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率を上げると一時的に実質賃金は下がり、そのため雇用が増える。こうした過程を経て、緩やかな物価上昇のなかで実質所得の増加が本格的に始まる、と説明しています。財政出動も、そうした景気回復の効果を最大限に引き出すために表裏一体で行うものと位置付けられます。しかし一方で、企業の競争力を上げるために最も重要となる成長戦略については、いまいち新鮮味がないと指摘されています。これがうまく行かないと労働者の給料も増えません。アベノミクスは、本当に理想の雇用・賃金環境を実現することができるでしょうか。

 成長戦略については、政府の提言は産業政策的な発想が強すぎるのではないかと思います。そのため、「これから医療や農業が伸びるから、そこに重点的に力を入れよう」といった議論になりがちです。医療や農業が成長産業になり得ることは間違いないとしても、成長産業に肩入れすれば経済全体が伸びるという考え方は、いささか単純すぎる気がします。

 そもそも、「5年先、10年先にこの産業が伸びる」と、政府が今から決めつけること自体がおかしいし、そんなものがわかるはずもない。「どんな産業が伸びるか」を一番知っているのは、むしろ産業界や個別の企業。彼らが必死に考え、試行錯誤する中から成長産業や技術が市場で自発的に生まれてくるし、それが生まれ易い仕組みや環境をつくることこそ、政府の仕事なのです。

 わかり易い成功例は、クリントン政権時のゴア副大統領が進めた米国の「情報スーパーハイウェイ構想」でしょう。政府はお金をあまり出さずに、情報ネットワークが経済を牽引するというアイデアだけを提示して、それまで国防省が独占していたインターネットというインフラを民間に開放しました。

 その結果、異業種の人材や多彩な専門分野の人が集まり、「これは面白い」と様々な分野に応用し始め、ネットをベースとする市場や技術が急速に普及した。政府がやったのは、技術やインフラを民間に開放する、規制をしないということだけでした。2000年代に入ってITバブルは崩壊しましたが、新しい産業をつくることには成功したわけです。成長産業は、そのようにして生まれるべきものです。

皆がリスクをとって投資をしないと
自律的な景気回復や賃金上昇は起きない

 翻って日本の状況を見ると、やはりまだ役所が主導で「この産業を伸ばそう」とやっている。過去に出て来た案はいずれも同じようなものばかりで、日本経済全体を浮揚させるものにはつながりませんでした。日本が国を挙げて肩入れし、うまく伸ばせた産業は、30年前の半導体くらいでしょう。

 実は多くの企業も、政府に対して「重点投資する産業を決めてほしい」「そこに投資すれば儲けられる」という心理を強く持っている。考えてみればそれはあべこべ。どの分野が伸びるかわからないから、その可能性にかけてリスクをとって投資や技術開発行い、成功しようとするのが企業なのだから。

 経済を底上げするには、やはり規制緩和、技術革新、新しい時代に合った職業訓練などが必要なので、その意味では、規制改革会議などで行われている議論はいいと思います。ただ、やはり最大の壁は成長分野を誰がどう見つけるかでしょうね。

――自民党が政権に返り咲き、「景気がよくなれば給料が上がる」と国民は期待を抱いて来ました。先頃参院選で大勝した自民党は、何のしがらみもなく政策を行える状況になりました。逆に言えば、今後は彼らの政策の真価が問われることになります。アベノミクスの効果は、いつ頃からどんな形で本格的に出てくると思いますか。

 私は、アベノミクスの金融政策の効果については懐疑的です。実際、この6〜7月には急激な円高と金利上昇が起きるという副作用が出ました。中長期的なバブルの可能性も含めて、これから1〜2年今の政策を続けると、悪影響のほうが強く出て来そうな気がする。

 財政政策についても、これ以上大規模な政府支出には限界があるし、一方で消費税増税をするかしないかによって、日本の財政に不安が募ることも考えられます。IMFは、日本の厳しい財政状況が世界経済にとって大きなリスクだと言っています。

 前述のように、皆がリスクをとって投資をし、技術開発を行ない、そこで新しい市場が生まれ、雇用が回復し、賃金が上がるという自律的なメカニズムが働くまでには、まだ時間がかかると見ています。それまでの間に、国民から「結局何も変わらないじゃないか」という不満が出る可能性もありますね。

――賃金は景気の遅行指標と言われます。足もとで、アベノミクスはおおむね想定された効果を出しているという認識が持たれ、それに伴い世の中の景気回復期待も強まっています。近いうちに景気が本格回復し、給料もすぐに上がるのではないかと期待している人も多いでしょう。しかし、過度な期待は持たないほうがいいということでしょうか。

 そう思います。もはや賃金は、景気の指標として機能していません。もちろん、判断するには時期尚早ですが、少なからぬ企業が一時的な賃上げやベアに動いても、今年の春闘賃上げは昨年とほぼ同じというのが現実。やはりまだ、賃上げムードは広がっていない。今の雇用・賃金の状況を形成している経済構造そのものを変えないと、効果は薄いでしょう。

アベノミクスが一定の成果を出しても
輸出がトーンダウンすると賃金は増えない

――極論すれば、近い将来アベノミクスが一定の効果を出し、景気が回復基調に乗ったとしても、今のままでは必ずしも期待通りに賃金が上がるわけではない、ということも言えそうですね。

 残念ながら、そうかもしれません。日本の経済メカニズムが今と同じだったら、景気回復に伴って賃上げを実現するためには、世界経済の回復という外部要因に依存するしかありません。

 たとえば、2000年代前半の小泉内閣時は、戦後最大の景気拡大期でしたが、目に見えて伸びたのは輸出だけ。輸出企業は潤いましたが、内需は伸びず、雇用・賃金の回復も全体に波及していません。だから、賃上げが日本全体に及ぶためには、世界経済が成長を続けて、輸出もどんどん増え続けなければいけない。そうなれば、少しはその成果が滲み出して行くかもしれない。

 しかし、直近の世界経済を見ると、欧州や中国をはじめとするBRICs諸国に不安が残り、少し景気がよいのは米国と日本だけという状況。日本は円安効果もあって、輸出は若干増えるでしょうが、今後世界経済が失速したらアウトです。企業業績が悪化して、雇用も賃金も伸びません。今は資産効果や期待で回復している個人消費も、しぼんでしまうでしょう。

 また、円安によって輸入製品やエネルギー価格が上がる中で、輸入産業や中小企業の収益は悪化しています。彼らは、雇用や賃金を増やすことができないでしょう。今のままでは、雇用、とりわけ正社員が増え賃金が上がるという期待を持つことは難しいと思います。

雇用・賃金問題は経済の根幹に関わる
政府が音頭をとるだけでは効果は薄い

――こうした持論を唱えられている理由は何でしょうか。

 ひとことで言えば、日本企業に対して一種の無責任さのようなものを感じているからです。日本が経済成長できなくなった理由を円高、不十分な金融政策、公共投資の抑制などのせいにする経営者は少なくないですが、国に責任転嫁をしているだけで、努力をしていない企業も多いと思います。

 日本には、海外と比べて強い分野の企業がたくさんありますが、不況を国の責任にしている限り、本当に強い企業は出て来ないのではないか。繰り返しになりますが、経済を引っ張るのは、市場で厳しい競争をして、リスクを取って新しい可能性に賭ける企業です。その気概が日本から失われたこと、それを埋め合わせるために雇用や賃金にしわ寄せをしたことが、最大の問題でしょう。

 それを考えると、日本の若者が保守化するのも当たり前です。これまでの不況のツケを回され、賃金が下がり続け、正社員になることさえ難しい。これでは絶望するしかありませんよね。今の若者は根性がないという人もいますが、若者に辛い思いをさせているのは実は我々の世代であることをしっかり認識すべきです。

 雇用・賃金の話1つをとってみても、実は日本経済の根幹に関わる根深い問題が横たわっていると言えませんか。政府が音頭を取れば賃金が増えるなんて、そんな単純なものじゃないと思います。


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