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設備投資に頼った成長戦略は、最悪の選択 増税による景気悪化に備え、設備投資減税をしても効果なし(東洋経済) 
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/736.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 8 月 14 日 10:53:00: igsppGRN/E9PQ
 

「設備投資による成長戦略」は、成熟国家・日本では無理筋だ(撮影:梅谷 秀司)


設備投資に頼った成長戦略は、最悪の選択 増税による景気悪化に備え、設備投資減税をしても効果なし
http://toyokeizai.net/articles/-/17572
2013年08月14日 小幡 績 :慶應義塾大学准教授


成長戦略では成長できない、という話については、いろんなところで述べてきたし、拙著「成長戦略のまやかし」でも詳しく述べた。今回のコラムでは、成長戦略の一番のわな、設備投資促進政策について議論したいと思う。

■設備投資促進は、最悪の対応

8月12日に、内閣府から2013年4〜6月期のGDP速報値が発表された。平均的な予想を下回ったものの、来年度からの消費税引き上げには問題ないレベルと判断された模様だ。そして、消費税増税による、景気の悪化に備えて、設備投資減税を本格的に検討開始したという報道があった。

これは最悪の対応だ。

安倍政権の成長戦略の目玉の一つが、設備投資を促す数々の政策だが、これは、安倍政権に限ったことではなく、日本のエコノミストが大好きな政策が、設備投資促進だ。

しかし、日本企業の設備投資は過大である。あらゆる財務データがこれを示している。対売上比率も高いし、日本企業のROAが極めて低いのも、過剰な設備投資で、資産が肥大化しているからである。この結果、1990年代の失われた10年はリストラの10年で、過剰債務と過剰雇用の整理が目立ったが、同時に過剰設備の整理も行われたのだ。

不思議なことに、バブル期の過大な負債、過剰な株式(転換社債)発行へは強い反省が見られ、異常なまでに負債を縮小したり、転換社債のトラウマは残ったりしている。さらに、人的整理のリストラは、切られる側だけでなく、経営者側にとっても最大の頭痛の種だったし、そのトラウマで、2000年からの10年は、新規雇用に及び腰となり、雇用が失われた10年となった。

しかし、なぜか、設備投資に対する反省は全くなく、設備投資が失われたことが日本経済の停滞理由のように勘違いしているエコノミスト、政治家が多い。経営者も同じだ。

シャープもパナソニックも、経営危機に陥っているのは、テレビの生産ラインに設備投資しすぎただけのことだ。テレビが売れなくなったのが悪いのではなく、いつかは売れなくなるに決まっているテレビに過剰投資したのが問題なのだ。しかも、研究開発ではなく、生産設備に投資し、その能力差で勝負しようとしてきた。それこそが間違いだ。設備投資さえしなければ、最初から鴻海(ホンハイ)精密工業など、ファウンダリーと呼ばれる製造請負を使い、研究開発にだけ集中していれば、投資額は限定的だったはずだし、テレビが不振になっても、企業の存続まで脅かされるリスクとはならなかったはずだ。

■「設備投資神話」の終焉

なぜか、みなが依然として設備投資神話を信じているのだが、しかし、設備投資では現在の日本経済は成長できない。設備投資偏重をすぐに改めることこそ、日本の成長戦略だ。

もはや設備投資は、需要として望ましい需要ではない。設備投資をありがたがるのは、設備投資が需要となり、その需要が他の企業の設備投資を誘発し、これも需要となると幻想を抱いているからである。しかし、現在ではこれは成り立たない。

昭和30年代の日本経済は、投資が投資を呼ぶと言われた。異常に好循環の高度成長経済だった。一つの企業が投資をすれば、それは有効需要となり、他の企業がこの需要増加に対応して投資を増やす。これがまた別の企業の投資を増やし、と循環していく。この中で、資本蓄積が進み、設備が増えていくから、労働生産性は向上する。

そうなると、賃金も上がり、これが消費を増加させ、需要はさらに増大し、その需要に応じて、さらに投資が進む。最高の好循環で、日本経済は面白いように成長し、そして生産される製品の質も一気に向上し、質、量、価格、すべての面で国際競争力が急速に上昇していったのである。

しかし、今の日本ではこれは起きない。それは高度成長構造ではないからだ。需要が右上がりでない。人口は増えない。地方から都市への人口流入もない。核家族化もこれ以上進まない。したがって、消費の規模の拡大は起きない。一方、正規雇用などへの希望は強いから、労働生産性が上昇しても賃金は簡単には上がらない。所得は増えない。消費拡大も起きない。

ここで最も重要なのは、今、なぜ、まともな企業は設備投資をしないのか、ということである。設備投資をしない理由が、高度成長期に設備投資不足だった理由とは決定的に違うのだ。高度成長期には、カネが足りなかった。金利が高かった。それが投資できない理由だった。製品に対する需要はあるが、資金制約などにより投資できなかったのである。しかし、今は違う。カネはある。銀行も設備投資ならいくらでも貸してくれるし、市場で直接調達も出来るし、そもそも利益を企業内に溜め込んでいると言われるぐらい資金豊富である。でも、投資しない。

それは、需要がないからだ。需要がないから投資しない。もし、世界のどこかに需要があって、設備投資しさえすれば、その需要をつかむことができ、しかも利益が上がるということがあれば、政府に減税してもらわなくても自ら設備投資をしている。円安になってすら、自動車が絶好調になってすら、ホンダもスズキも国内に必要以上に設備投資をする気はない。需要が今後増える市場が米国なら米国で、中国なら中国で設備投資と生産をするからだ。

■顧客を見なくなった、不振企業たち

したがって、政府が減税しても、それは実質、補助金にしかならない。これまですでに設備投資している部分に対する減税額が実質的に増えるだけのことだ。したがって、設備投資が仮に増えたとしても、節税効果というのがメインだから、売り上げが大幅に増えるわけでもないし、利益率が大幅に上昇するわけでもない。だから、波及効果も小さい。投資は投資を呼ばないのである。

もし、こうした中で強引に設備投資減税をし、かつ設備投資を実際に行うこととなったらどうなるか。あるいは、経営者の側にも設備投資信仰があった場合にはどうなるか。ここ数年の、家電メーカーのようになってしまう。シャープやパナソニックの失敗は、設備投資信仰から来ている。とにかく設備投資で勝負。これはそもそも間違っている。そこへ、政府が地上デジタル、エコポイントなどという餌を撒いたものだから、彼らはその残飯に群がった。そして、それらの餌がなくなり、経営は危機に陥ったのである。

彼らの誤りは、個々の顧客をみなくなったことである。

企業は生き物である。そして、日々、闘っている。消費者、顧客のニーズを捉えるために闘っている。そのときに、需要をうまく捉えられる見込みがあれば、設備投資をしてまでも、その需要に効率的に、より魅力的にアプローチしようとする。より高品質で、顧客のニーズにあったものを作るために、設備投資をする。顧客も喜ぶから、高い価格を支払ってくれる。付加価値が増大している。だから、企業も利益が増える。だから、設備投資に踏み切る。給料も多く支払えるようになる。労働者も新しい、より付加価値の高い製品を生み出す労働力として、付加価値の高い労働力となる。人的資本を蓄積する。こうなってくれば、設備投資は、極めてよい循環をもたらすのである。

しかし、今の設備投資は自己都合だ。自社のことしか考えていない。顧客を見ていない。ライバル企業しか見ていない。ライバルに勝つために、ライバルよりも生産効率を上げるために、生産設備を最新鋭の最大規模のものにする。テレビのスペックを上げ、夢の3D技術を実現する。高精度の4Kテレビを導入する。これらは、自分たちのやりたいことをやっているだけだ。世界最高のテレビを作るのはいい。しかし、顧客の多くはそれを求めていない。生産者の自己満足だ。

だから、設備投資は失敗するのである。設備投資減税で行う設備投資も顧客を見ていないという点では同じだ。税金対策の投資である。コストだけを考えた投資である。新しい顧客を見ない投資は意味がない。グローバル市場というだけで、個々の顧客を見ていない。日本以外の市場ではコストが勝負と思い込んでいる。韓国にコストで勝てばいいと思っている。違うのだ。グローバル市場とは、日本を含め、個々のローカル市場の積み重ねに過ぎない。

グローバルのローカルな個々の顧客をみないで設備投資する。政府によって無理やり生み出された設備投資をする。こうした投資を行っていては、将来にわたって、真の顧客から継続的に需要を勝ち取るノウハウの蓄積につながらない。さらに、過度な設備投資をしていれば、真の持続的な需要をつかめなかったとき、即座に財務的な危機となる。

したがって、政府が無理やり設備投資減税を行い、それにより設備投資を行い、短期的に需要を生み出すことによる「短期成長戦略」は、企業を破綻に追い込む、最も危険な“成長戦略”なのである。


 

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コメント
 
01. 1932年生 2013年8月14日 12:10:53 : Td2R98tAMLSgI : 22Vw6CflxQ
国民の金融資産があるうちに、円高を利用して(円高にして)、お金に海外の旅をさせ、金利配当資産拡大 還元で食いつなぐことが必要。多国籍企業化 TPP そして平和主義 平和が大切。

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