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ワタミだけじゃない! あの有名経営者「ブラック発言」の数々 (日刊ゲンダイ) 
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/123.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 8 月 25 日 13:13:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://gendai.net/articles/view/syakai/144202
2013年8月24日 日刊ゲンダイ


<人権無視、法律無視のオンパレード>

「365日24時間死ぬまで働け」「いますぐ、ここから飛び降りろ!」――。いずれも今年の「ブラック企業大賞」に輝いたワタミの創業者・渡辺美樹参議院議員の発言だが、ほかにも企業トップのヤバい発言がいくつもある。24日発売の「ブラック語録大全」(合同出版)には、法律無視を得意満面に語る経営者の数々の語録がまとめられている。

〈過労死を含めて、これは自己管理だと思います〉〈祝日もいっさいなくすべきです。労働基準監督署も不要です〉〈格差論は甘えです〉――。こんな持論を主張したのは、人材派遣会社「ザ・アール」の奥谷禮子社長。奥谷社長は内閣府規制改革会議委員など政府の諮問委員を歴任した人物だ。

 ケ小平の格言になぞらえて、〈白い猫でも黒い猫でも利益を稼ぐのはいい猫だ〉と言い放ったのは、御手洗冨士夫・キヤノン会長兼社長。まるで労働者を犬猫扱いではないか。

“富士通の怪物”と呼ばれ、現在も相談役として同社に影響力を持つ秋草直之相談役は、「週刊東洋経済」(01年10月13日号)の取材で業績不振について聞かれ、〈くだらない質問だ。従業員が働かないからいけない〉と社員に責任転嫁した。

 精密小型モーターの開発製造で世界一の日本電産の永守重信社長は08年4月の決算発表の場でこんな発言をした。

〈休みたいならやめればいい。社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる〉

 スズキの鈴木修会長も〈土曜休んで日曜も休む奴は要らない〉と言っている。ま、永守社長も鈴木会長も自分が休日返上で働くタイプ。それで会社が成長したのだから、言ってることはわからないではないが、法律には週40時間労働と書かれている。

 他にも〈結果的にはブラック企業が社会を豊かにする〉(ITベンチャー・ジーワンシステムの生島勘富社長)、〈業界ナンバーワンになるには違法行為が許される〉(クリスタル創業者の林純一氏)、〈労働基準法なんておかしい。今は24時間働かないといけない時代なのに〉(NOVAの猿橋望元社長)といった仰天語録のオンパレードだ。ちなみに、猿橋元社長はこの発言後の08年6月に業務上横領で逮捕され、クリスタルはとっくに消滅した。

「ブラック語録大全」の法律監修を担当した佐々木亮弁護士(ブラック企業被害対策弁護団代表)がこう言う。

「本に載せたブラック語録は経済誌や大手新聞などの出版物、ウェブサイトで経営者が臆面もなく語った表の情報です。彼らはそれが経営哲学だと信じ、熱く語っているのでしょうが、いずれも、法律無視の不当労働やパワハラを正当化するような発言ばかり。恥ずべき言動です。そんな経営者をきちんと検証せず、カリスマ経営者みたいに持ち上げたメディアにも責任があると思います」

 若者を使い潰すブラック企業が社会を豊かにすることは絶対にない。法を顧みない悪質な企業はいずれ駆逐される運命にある。


 

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コメント
 
01. 2013年8月25日 14:45:36 : pbGtlhns2o
別の投稿でスズキの軽自動車を褒めたので、今度は経営者鈴木修氏の批判になりそうな内容ですが、ここは工場の人使いが厳しいと何度も聞いたことがある。何しろコストにうるさい。工場のレイアウトなど、細かいことにも口を出す鈴木会長。彼は1930年生まれの83歳である。

鈴木修 (実業家)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E4%BF%AE_(%E5%AE%9F%E6%A5%AD%E5%AE%B6)

一時期、スズキの社長から会長になり、後進に譲ったと報じられたが、後継者が次々と体調不良で降板したため、会長と社長を兼務しなくてはならなくなった。尤も、後継者がコストの削減に甘いので降ろしたとか変な噂もある。

現在の頭痛の種はドイツのフォルクスワーゲンとの資本提携問題。かつてアメリカのGMと提携したが、「GMと提携した自動車メーカーは乗っ取られる。」ジンクスを跳ね返して自信がついたのか、GM衰退に伴うスズキ株式売却でフォルクスワーゲンに資本提携の話を持っていった。ところがアメリカのGMと違い、ドイツのフォルクスワーゲンは甘くはなかった。彼らは次々とスズキの経営に介入し出したのである。

スズキがハンガリーで自動車現地生産しているが、ここがイタリアのフィアットのディーゼルエンジンを使おうとしたところ、提携先のフォルクスワーゲンに潰されてしまった。これに怒った鈴木会長はフォルクスワーゲンとの提携を解消しようとしたが、フォルクスワーゲン側は所有するスズキ株式(発行済み株式の19.9%を所有)を絶対売却しないと通告した。つまり人質に取られているのだ。

フォルクスワーゲンとしては、高齢(83歳)の鈴木修会長兼社長の健康問題を直視しており、遠くない将来に経営できなくなることを見据えて、株式を買い増して経営権を握るものと見られる。


02. 2013年8月25日 19:20:29 : Hwsr7OMfPw

成功する経営者は大体、自分がブラック環境で働いてきたから、本音は365日24時間労働が当たり前

03. 2013年8月27日 01:34:50 : niiL5nr8dQ
【第8回】 2013年8月27日 吉田典史 [ジャーナリスト]
パワハラと長時間労働の魔窟で死を選んだ社員たち
遺族に寄り添う弁護士が説く「心を壊す職場」の罠
 職場で悶える会社員らの話は、連載第2回、第3回、第5回で取り上げた。今回は、そのような社員たちから相談を受ける弁護士を紹介したい。自死遺族支援弁護団の和泉貴士(八王子合同法律事務所)さんである。

 和泉さんは、自らの母親を自死(自殺)で亡くしたこともあり、自死を始め過労死、パワハラ、いじめなどの解決に向けて積極的に取り組んでいる。

 これまでも指摘したように、ブラック企業の職場には社員を精神的に悶えさせる構造がある。社員が過大な業務や成果を要求され、競争が激化している職場環境を、「グローバル化の時代だから仕方ない」などという理屈で覆い隠すことには無理がある。その構造的な問題の真相に迫りたい。

 取材の模様をより正確に伝えるため、今回も筆者と和泉弁護士とのインタビュー形式でお伝えする。

会社員はなぜ自ら死を選ぶのか――。
自死遺族に寄り添う人権派弁護士の証言


弁護士の和泉貴士さん。八王子合同法律事務所にて
筆者 日本の職場では、上司などとの距離の取り方が上手く、要領のいい社員が浮かばれ、コミュニケーションなどが不器用な社員は潰れていく傾向があるように思います。中には精神疾患になり、死を選ぶ会社員もいると聞きます。

和泉 「正直者がバカを見る」という構図は、確かにあるように思う。私がここ数年の間に受けた相談について言えば、月の残業時間が160〜200時間になっていた社員(正社員)が数人いた。

 彼らの多くは、メーカーやIT系企業で働いていた。20代もいれば、50代もいた。いずれも遺族からの相談だった。本人たちは超長時間労働などの影響で精神疾患になり、死を選んでいた。


取材は、八王子市の中心部にある事務所で行われた
 特に、超長時間労働とパワハラなどが重なる(@)ケースでは、労働者の側はどうすることもできない。何かの歯止めをかけないと、事態は深刻になる。

筆者 彼らはなぜ、死を選ぶのでしょうか……。

和泉 遺族から死の直前の言動などを聞くと、精神疾患の症状が現れていた可能性が高い。精神医学の世界においても、自殺者の死亡直前の精神状態の解明が進みつつある。自殺者の9割以上が、何らかの精神疾患に罹患し、正常な判断能力が欠けた状態で自殺行動に出るという理解が有力になりつつある。

 相談を受けた人たちについても、死を選ぶときには精神に支障をきたし、心理的視野狭窄になり、広い視野で冷静に考えることができなくなっていた可能性が高い。

 いずれの人もまじめな性格で、仕事に対して責任感が強かった。たとえば20代の人のケースでは、本人は仕事が好きで仕方がなかった。優秀だから、上司などから担当外の仕事もあてがわれ、労働時間は増え続けた。

仕事ができる人ほど狙い撃ちされる!
貴重な戦力を潰す「柔軟な職務構造」

筆者 「柔軟な職務構造」(連載第1回で紹介)のもとでは、仕事ができる人はなぜか次々と仕事が増えていく傾向があります。そこに明確なルールもなければ、歯止めもない。上司らには、他の社員との分量を公平にするという意識も乏しいように思えます。

和泉 彼は仕事の量が多くとも、それをこなした。しかし、上司との関係がもつれ、ギアが噛み合わなくなると、それまでの負荷が一気に疲れとなって現れる。(A)責任感が強いから、それを抜け出そうとするが、なかなかできない。それで一層、精神に滅入ってしまったのかもしれない。

筆者 「柔軟な職務構造」のもとでは、抜け出そうとするほどに、それができなくなりますね。私の観察では、プロ意識を持ち仕事にのめり込むタイプは、「柔軟な職務構造」ではいいように使われ、磨滅していくことが多いように見えます。その一方、中途半端なプロ意識で職場の空気を察知し、うまく立ち回る人が得をする。

和泉 相談を受けている限りでは、そのような傾向があると思う。特に最近は、正社員の数が減っている。これが「柔軟であること」に拍車をかける。(B)あらゆることに対応せざるを得ない。

 たとえば、前述の事例の中には、メーカーに勤務する50代の男性管理職がいた。役員らの指示で、ある大きなプロジェクトを任された。社員の数が少ない上に、男性は部下のことを思い、残業を減らそうとして、自らが大量に仕事を抱え込んだ。(C)責任感が強い人だった。疲れが蓄積し、精神疾患となり、死を選んでしまった。しかも、労働時間を会社には過小報告していた。

 まじめで誠実に仕事に取り組む人が、心身に支障をきたし、死に至ることを知ると、ある意味でものすごく損をしているように見えるときがある。本人にとっても会社にとっても、社会にとっても……。それが、「1人の死」ということだけで片づけられることは、好ましくない。

責任感が強いと「待ってました」と
ばかりに超長時間労働が課せられる

筆者 精神疾患になる人を観察していると、職場の実情をよく見抜いています。責任感が強いから、何とか貢献をしようとする。だけど、それが裏目に出ることがある。上司などから、「待ってました!」といわんばかりに利用される。ずるがしこく身を守ることができない。

和泉 会社は規模が大きくなると、コミュニケーション不全になりやすい。こういう死を選んでしまった人たちが、その不全の部分を懸命にカバーしていたのではないかと思える。本来は、誰がやりたがらない仕事に献身的に取り組み、職場にとって貴重な人たちであるはずだが、そういう人達がむしろ使い捨てられているように見えるときもある。

筆者 遺族から相談を受けるときに、感じることは?

和泉 私自身が遺族だから、自死で家族を失った人の思いは、ある程度はわかるつもりだ。遺族の心理や家庭の状況は察しがつく。私は母の死をきっかけに知り合った人たちとのつながりの中で、「苦しんでいるのは自分だけではない」と感じた。今も遺族から相談を受けると、同じように思う。

 遺族の方に、私の経験を話すことがある。すると、悩んで切るのは自分一人ではないと知りし、また、悩んでいる自分自身を客観的に見ることができるようになることで、多少元気を取り戻すように見える。

 最近は、自死は年間約3万人で推移している。その遺族の数は、小さな都市の人口に匹敵していると思う。決して少ないわけではないのだから、自分1人を責めないでほしいと願っている。

何かに引き込まれたように死んでしまう
いまだに母が自殺した理由がわからない

 ここで、和泉弁護士が“遺族”になった経緯を補足したい。2006年の秋、母親が死にたいと漏らしていたという。それよりも少し前に、母の実の母(和泉さんの祖母)が亡くなった。その頃から母は、「おばあさん(祖母)の霊が見える」などと言い始めた。

 祖母は長い間、病に苦しんでいた。母親は、その介護に疲れ切っていた。この頃から、部屋で赤いひもを見かけるようになった。祖母が生前、和服を着る際に腰に巻いていたものだった。ある日の朝9時頃、母親は赤いひもをかけて首をつっていた。

 和泉さんはショックのあまり、しばらくの間、悲しいといった気分にすらなれなかったという。今も赤いひもを見ると、当時を思い起こすことがあるという。

 このような経験もあり、過労死・過労自死などで他界した人の遺族、さらに職場で長時間労働やパワハラ、いじめなどを受けて苦しむ人たちの相談を受けるようになった。これらのケースは裁判などに発展することもある。講演では自らの過去を語り、自死遺族の理解を求める。

 遺族団体、支援者団体、労働組合や地方自治体の自殺対策担当部署などと連携しながら、この国のあるべき自殺対策とはどのようなものか、日々模索を続けている。和泉さんを3年前にも取材したが、そのときに聞いた言葉で強く印象に残っているものがある。

「(弁護士として)自死の相談を受けると、母親のことを思い起こす。母がなぜ、死んだのか、その理由がわからない。遺書は見つからなかった。本当に、自分の意思で死を選んでいったのだろうか。ふっと何かに引き込まれるように、衝動的に死に向けて進んでいったようにも思える。

 自死の多くは、何かに追い詰められた上での行為なのではないか。身体の痛みも心の痛みも、痛みを抱える当人にとっては同じようなもの。その痛みからなんとか逃れたい。その1つの手段が死だっただけのこと。だから、誰の身にも起こり得る。それを個人の問題、つまり自己責任として捉えるのではなく、社会の問題として見据える。このことを伝えたくて、こういう活動をしている」

 あえて私がこれに補足をすると、「社会の問題として見据える」のと同じく、「その会社の問題として捉え、炙り出していく」ことも大切だと思う。死に追いやった構造が、会社にはある。

非正社員と同じく1年ごとの契約制?
正社員とは名ばかりのブラック企業も

和泉 かつて、過労自死などになる人は40〜50代の管理職が多かったが、最近は20代にも見受けられる。最近受けた相談の中には、死には至らなかったが、精神疾患になってしまった20代の女性がいた。

 そこは社員が数十人の創業間もないIT系企業。社員にあてがわれるノルマなどが壁に貼り付けてあり、成果を厳しく求められていた。女性はそれに応えようと懸命に働いたが、精神的に疲れてしまい、具合を悪くした。社内には労働組合もないし、手を差し伸べる人もいなかった。

筆者 そのような会社は、労働環境が整っていない。経営者らは、あえて整えようとしない傾向があります。人事規定などを整えると、会社の成長の勢いを失うことがあるかもしれない(D)からです。だから、意図的にルーズにしていると思える場合もありますね。

和泉 女性の労働契約書を拝見すると、正社員の扱いではあったが「1年の契約」を繰り返していた。不思議に思い確認すると、女性は「正社員は1年ごとの契約更新ではないのですか?」と聞き返した。

 これは他の相談のケースだが、正社員として入社したものの、扱いが非正規社員と同じだったり、試用期間が1年に及ぶものもある。最近は、こういうケースが増えつつある。

筆者 「正社員」とは言い難いように思えますが……。

和泉 もし、これで正社員として求人していたのであれば問題がある。労働形態が急速に多様化しているが、それに労働者の知識や意識が追いついていかないことも原因だ。小学校から大学までの間に、労働教育がないことも一因ではないだろうか。

 前述の女性が勤務した会社は離職率も高く、人の出入りが激しかった。賃金は低く、アルバイトの時給とさほど変わらない。これでは、社員間の横のつながりはなかなかできないと思う。すると、他の社員の労働条件などについて知る機会が少なくなる。自ずと、自分が置かれている状況にも気がつきにくい。

社員がまとまらないようにあえて分断
パワハラと長時間労働のブラックボックス

筆者 ブラック企業の経営側にとって、社員が1つにまとまらないように分断するのは常套手段。こうした企業は、労働条件や査定評価などを個人ごとにして扱い、周囲から見えないようにします。「ブラックボックス」にして、都合のいいようにコントロールしようとしている。(E)こうした部分を論じることなく、世間では「グローバル競争が激しいから、低賃金、重労働でも仕方ない」といった話が語られる。それでは混乱が生じます。

和泉 社外にいる私のような者や労働組合ユニオンなどに相談する以前に、部下のオーバーワークや体調不良をチェックするのは、本来上司の職務として行うべきこと。また、社内にも何らかの形で相談をすることができる体制がないといけない。ところが、そのような会社は必ずしも多くはない。(F)

 過労自死や過労死の問題は、社員間の横のつながりが弱い職場で生じる傾向がある。相談を受けるケースの中では、社員が過労自死をしたときに、「あの人の労働時間は長すぎる」と指摘する声が、周囲にはほとんどなかったように思える。

 過労自死や過労死する人は、社員間のつながりが希薄であったり、社内の体制が不備であったりする中で、誠実に仕事をしようとする。まじめに考え、懸命に取り組む。誰かがカバーしなければいけないところを、自分でカバーしようとする。そこに不公平があるはずなのだが、多くの人は見て見ぬふり。その狭間で苦しみ、あがき、精神などを患うことがある。(G)

死を選ぶのはあまりにもったいない
「1人の死」で片付けてはいけない

筆者 そこまでしてなぜ会社に勤めるのか……。

和泉 私が相談を受けた人の大半は、死ぬ直前に「もう、会社を辞めたい」と家族などに漏らしている。しかし、辞めない。疾患の症状が進んでいることもあるのかもしれない。そして責任感が強いから、仕事や会社、さらに家族などに対し、思うことがあるのではないだろうか。

 会社が組織である以上、個人の力ではどうすることもできない場合はあると思う。1人でその責任を背負い込むことは、避けたほうがいい。精神的に苦しく、働くことができないならば、会社を辞めてもいいと思う。

 辞めてから初めて気がつくこともある。多くの人は、そのことを知らないのかもしれない。死を選ぶのはあまりにももったいない。私は、それを言いたくて活動している。

踏みにじられた人々の
崩壊と再生

 2人のやりとりの中から、筆者がマークした個所について補足したい。和泉弁護士のように、専門知識を持って悶える社員をサポートする人たちの提言からは、社員を使い捨てにしようとするブラック企業の手の内が見えてくる。

 それを心得ておくと、会社員は今後リストラやパワハラなどの場面にぶつかった際に、落ち着いて対処することができるのではないだろうか。それがゆくゆく「心の再生」につながることを願いたい。

@超長時間労働とパワハラなどが重なる

 過労自死に至った人には、長時間労働とパワハラの双方に苦しめられたケースが目立つ。そうした人の職場は、「柔軟な職務構造」のなかで、上司の権限が極端に強く、やりたい放題になっている場合が多い。そのことに、周囲は何も言わない。企業内労組があったとしても、抗議をしない。

 超長時間労働やパワハラなどの犠牲になる人は、1人で問題を抱え込む傾向がある。皆の前で大きな声を出して、異議を申し立てたりすることもしない。上司はおとなしく、使いやすい部下を求める。だから、このようなタイプを狙い続ける。

 あなたがもしターゲットになった場合は、タイミングを見計らいつつ、時には上司に抗議をしたい。他部署への異動願いなども、繰り返し出したい。上司に対して意見をはっきり言う社員が一定のペースで昇格することは難しいが、パワハラなどに遭う可能性は低くなる。

 さらに、1人になることはできるだけ避けて、同じ部署の他の社員と行動を一緒にしたい。上司は、単独行動をする部下を狙う傾向があるからだ。

Aそれまでの負荷が
 一気に疲れとなって現れる

 これは、警戒すべきこと。長時間労働を乗り越えようとする人は、仕事にのめり込む傾向がある。上司と摩擦が生じたりしてリズムが狂うと、そのスランプから抜け出せなくなることがある。

 私の経験から言えば、超長時間労働とパワハラがセットになった状況に陥ったとき、上司に合わせようとすると一段と事態は悪化する。上司は自分に媚びようとする部下の姿を見ると、一層いいように使うことがあり得る。

 そのようして、自分の権威を確かめ、他の社員に自らの力を見せつけようとする。彼らの餌食になってはいけない。上司とのギアをあえて変え、一切のことをマイペースで進めることも考えたい。人事評価は下がるだろうが、身を守ることができるかもしれない。

Bこれが、柔軟であることに
 拍車をかける

 正社員の数が少なく、それぞれの社員の役割分担や権限、責任が曖昧だから、声が大きい人やパフォーマンスに長けた人などが「おいしい仕事」を掴み、評価を上げていく。主張することなく寡黙に黙々と働く人は、「評価されない仕事」を大量に抱え込み、疲れ切っていく。

C男性は部下のことを思い、残業を減らそうとして、
 自らが大量に仕事を抱え込んだ

 管理職として「美しい姿勢」ではあるが、長時間労働が文化として根付き、上司らのパワハラが横行する職場では、避けるべき行為。このような職場では、たとえ部下であろうとも人を助けようとすると、自分が破綻する仕組みになっている。だからこそ、大多数の人は見て見ぬふりを貫く。ここまでひどい状況になると、社内ではなく社外からの圧力がないと、解決できない。

D人事規定などを整えると、
 会社の成長の勢いを失うことがあるかもしれない

 社員数が100人以下、創業5年以内くらいの小さな会社の経営者や、そうした会社に入り込んで知恵を貸すコンサルタントなどが口にする言葉。確かに業績を一気に向上させなければいけない状況下では、人事規定などのルールが状況いかんで阻害要因になることはある。

 これは一面では事実であったとしても、いつまでもルールを設けないと、労使間の不毛な争いや精神疾患などになる社員が増えることも事実である。前述のような小さな会社では、こうしたトラブルのときに自浄作用があまり働かない。

E「ブラックボックス」にして、
 都合のいいようにコントロールしようとしている

 社員(正規・非正規問わず)も労働組合も、戦後長く「安定雇用」(実は見せかけだが)を得る代わりに、配置転換などの人事異動、評価、育成、労働時間などについては、経営側と厳しく条件を詰めることをしてこなかった。

 こうした流れの中で、経営側は次第にそれぞれの社員を「個人単位」でコントロールすることを覚えた。その扱いの中身は、他の者からはなかなか見えない。これで経営側の求心力は一層高まり、やりたい放題が可能になる。欧米企業にはなかなか見られない傾向である。

 企業の経営者層は、このことを隠したまま「グローバル化」を進めているが、海外進出が本格化するほど現地従業員との緊張や摩擦が増えていく事例は、すでに多く報告されている。明確なルールなき、やりたい放題の労使関係が、海外でスムーズに受け入られるとは思えない。

Fところが、そのような
 会社は必ずしも多くはない

 1960年代から現在に至るまでの労働組合機関紙などに目を通すと、いつの時代も多くの経営者は「社員間の競争が大切」と説いている。だがその一方で、公平な競争をする環境をつくろうとは決してしてこなかった。あくまで自分たちにとって都合のいい「公平な環境」しか認めない。「公平な環境」をつくると、経営側が不利になるからだ。

 社員間の競争を煽る制度は積極的に受け入れるが、役員会に人事規定を設けるなど、自分たちにとって不利なことは黙殺する。これが、競争原理浸透の本音である。

Gその狭間で苦しみ、あがき、
 精神などを患うことがある

 精神疾患に陥った社員を取材すると、そのような状況に陥る「狭間」があることに気がつく。ストレス耐性などの問題もあるかもしれないが、組織の構造的な問題が関係していることのほうが多い。

 企業の経営者やそこから報酬を得るコンサルタントらは、この構造的な問題を不問にする傾向がある。そして、盛んに競争原理の浸透などを唱える。実は、その実態を押さえようとしない考え方こそ、競争原理の浸透が進まない大きな理由であることに、彼らは気がついていない。

 前回の記事では、上司のマネジメントもその構造的な問題の1つとして取り上げた。ご覧いただきたい。
http://diamond.jp/articles/print/40749


04. 2013年8月28日 10:31:09 : niiL5nr8dQ

JBpress>海外>欧州 [欧州]

ドイツで「奴隷労働」と批判された米アマゾン
海外の出稼ぎ労働者を“強制収容所”に収容

2013年08月28日(Wed) 川口マーン 惠美
 十数年前、東京で、日本を訪れていたドイツ人作家のインタビューの通訳をした時、アマゾンが取材に来ることになった。

 初めて聞いた名前だったので、「アマゾンって何ですか?」と担当の編集者に訊いたら、「アメリカの会社で、インターネットで本を販売している。これから日本でも伸びると思う」という答えだった。確かにその通りで、今やアマゾンの勢いは凄い。

アマゾンが外国人派遣労働者の扱いで激しく非難される

ワシントン・ポスト、アマゾンのベゾス氏に売却
米紙ワシントン・ポストの買収で話題になったアマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスCEO〔AFPBB News〕

 そのアマゾン・ドット・コムが、ドイツで激しい非難に晒されたのが、今年の2月。ドイツの公共テレビARD(ドイツ公共放送連盟)傘下のヘッセン放送が、アマゾンの外国人の派遣労働者の実態をルポしたのだ。

 そのビデオが、その後インターネットで十何万回も再生され、波紋はどんどん広がり、ついに「奴隷労働」などという声まで上がった。アマゾンもインターネットのおかげで伸びたが、こうしてみると、今や、インターネット自体が世論に及ぼす影響力は絶大なものだ。

 ルポは30分番組で、若い男女のジャーナリストが作った。映像がずれたり、揺れたりしているところも多く、こっそり忍び込んで撮っている様子が想像できる。

 アマゾンは昨年、クリスマス需要のために、主にスペインとポーランドから、多数の短期労働者を雇い入れた。彼らは国を発つ直前、「アマゾンが直接契約を交わすことはできなくなった。中間の派遣業者を介しての契約となる。契約条件はほとんど変わらない」という通知を受けたという。

 ただ、ドイツへ来てみたら、労働条件はほとんど同じどころか、かなり悪くなっていた。とはいえ、すべてはドイツ語だし、どうしようもないのは分かりきっているので、全員、そのまま契約のサインをしたという。

 宿舎として提供されたのは、冬なので使っていないリゾート施設。リゾートというと聞こえはよいが、さびれた合宿所のような感じだ。周りには何もなく、葉っぱの落ちた森に雪が積もり、寒々しい。そこに、1部屋当たり5人ぐらいで詰め込まれた。

 仕事は、商品の仕分けや梱包など単純作業で、1日8時間。職場まではバスで45分かかるが、そのバスが普通の路線バスで、時間通りに来ない。

 深夜の交代は夜中の12時で、バスは夜勤の人で大混雑。なお、バスの遅れで遅刻した場合は、賃金から差し引かれるという。職場に通う交通手段がほかにないのに、ずいぶん理不尽なことだ。

 ルポの中では、スペインから来た中年の女性に焦点が当てられていた。夫と子供のために少しでもお金を稼ぐために来たという。スペインは財政破綻しており、2012年は失業率が25%を超えた。特に若者(18歳から24歳)の失業率は50%という。

米アマゾンの独流通施設で労働者いじめか、警備会社との契約を解除
アマゾン・ドットコムは今年2月、ドイツにある同社の流通施設で警備員が外国人期間従業員にいやがらせやいじめなどを行っていると指摘されたことを受け、警備会社との契約を解除したと発表〔AFPBB News〕

 ただ、このルポの圧巻は、外国人派遣労働者の労働条件の劣悪さよりも、彼らの宿舎を見張っていたセキュリティー会社の実態だった。

 かいつまんで言うと、黒ずくめの、スキンヘッドの筋肉隆々の男たちが、我が物顔に宿舎を歩き回り、あるいは、ドアの外でたばこを吸いながら、鋭い目つきで労働者を威圧している。誰でもこの状況に置かれれば、怯える。

 案の定、テレビでこのシーンを見た多くのドイツ人が唖然とした。彼らは、ドイツは福祉大国であり、外国人に対しても十分過ぎるほどの社会福祉を行っていると信じているので、現在進行形の外国人“搾取”とも言える光景に、深いショックを受けたのだ。

 しかも、この監視の男たちは、怖すぎる。強制収容所を想像してしまう。ルポの中の、このシーンの画像は特に乱れていた。よく撮ったものだと思う。

ダイムラー・ベンツや大手スーパーも派遣労働者を“搾取”

 このアマゾンの“奴隷問題”のほとぼりがいまだ冷めやらぬ6月、派遣労働が再びドイツで話題になった。

 アマゾンだけでなく、スーパーマーケットの巨大チェーン「カウフラント」や、自動車の世界的企業「ダイムラー・ベンツ」に、派遣労働者の扱いが不当であるとして、検察が捜査に入ったのだ。

 ちなみにカウフラントでは、派遣労働者を長年の間、倉庫で極端に安い賃金で働かせていたとされ、それによって、膨大な額の社会保障費を回避した疑いがかかっている。

 ベンツでは、派遣労働者は正規労働者の3分の1しか賃金を貰っていなかったという。ただ、派遣労働者の場合、労働者と雇用者が契約を結んでいるわけではなく、その間に派遣会社が入っているので、その雇用契約は複雑だ。言い換えれば、抜け道はたくさんあると言える。

 ドイツのたいていの派遣労働者の賃金は、同じ仕事をしている正規雇用の労働者と比べて、平均して20%から25%安いという。SPD(社民党)は、以前より「同じ仕事に同じ賃金」を主張し、派遣労働者の権利拡張に力を注いできた。

 一方、緑の党と左翼党は、派遣という制度自体を廃止すべきだという意見。それに対し与党は、労働条件を改善して、派遣労働者の権利を守りつつ、派遣労働システム自体は継続という姿勢だ。

 2012年の11月からは、旧東独地域では時給7.5ユーロ、旧西独地域では時給8.19ユーロが、最低賃金として法律で定められた。つまり、派遣労働者も、これ以下の賃金で雇うことは適わなくなった。

 また、業種によっては、労組と雇用者の間で、派遣労働者の権利を守るための仕組みを独自に整備し、固有の最低賃金を定めたり、雇用期間が長くなると、昇給する仕組みを作ったりしているところもある。

 しかし、それらはまだごくまれなケースで、一般的には、7.5ユーロ、および8.19ユーロという比較的低い時給さえ、守られていないケースも多いという。

ドイツでも日本でも急増する派遣労働者

 短期間だけ雇われる派遣労働者はどんどん増えている。ドイツの連邦統計局の資料によると、2001年には30万3000人だったが、10年後の2011年には87万2000人。2012年6月には90万9545人となっている。急速な伸びだ。

 雇用者にとっては、派遣労働者は、これから賃金が多少上がったとしても、正規雇用に比べれば安い。とりわけ、素早く解雇できるのが魅力だ。素早く解雇できるということは、雇用者側から見れば、需要に合わせてこまめに求人できるため、雇用が活発化するというメリットはある。

 ただ、デメリットは、派遣労働者の安い賃金が、全体の賃金を押し下げる可能性があることだろう。

 というわけで、目下のところ、派遣労働はさまざまな形で取り沙汰され、また、待遇改善の試みがなされているものの、しかし、冒頭のルポに話を戻すと、現状はかなり違うようだ。

 派遣の外国人労働者にとっては、労働者の権利などというものは絵に描いた餅であり、実際は、常にペナルティーや解雇の不安に苛まれながら暮らしている。下手をして、賃金を貰えないまま解雇されたらたらどうしようというのが、彼らの最大の懸念だ。

 ドイツの建設関係や、日本で3K(きつい、きたない、きけん)と言われている職場には、外国からの派遣労働者が多い。比較的よい賃金で釣っておいて、実際は、宿舎代や食事代などを賃金から引いていく手口も、結構横行していると聞いた。

 いずれにしても、外国人の労働者の場合、慣れない土地で、言葉の分からないところにいるのだから、その不安は想像に余りある。権利の主張など逆立ちをしてもできないだろう。

 派遣労働者の問題は、もちろん日本でも起こっている。派遣社員という言葉が頻繁に出たきっかけは、リーマン・ショックによる不況だった。当時、大勢の派遣社員が職を失い、社会問題として取り上げられたからだ。

 当時の派遣社員の数は100万人に達していなかったが、今年の1月から3月までの平均では、124万人。急激に増えている点が、ドイツと似ている。そんなこともあってか、昨年の10月には、労働者派遣法が改正され、派遣社員や派遣労働者の待遇改善が試みられている。

 ただ、派遣会社がすべて悪徳で、派遣社員、および派遣労働者は皆、悪条件で働いているというのは正しくない。

 高度な専門職の技術者の斡旋を専門としている優良な派遣会社もあるし、秘書や通訳などに特化した派遣会社は、昔から重宝されていた。また、職を探す方も、売り手市場でない昨今、面倒な職探しをしなくてすむのは有難いことかもしれない。

 リーマン・ショックの時に問題になった派遣社員の解雇だが、景気が悪くなった時、雇用者が派遣社員から切っていくのは、いわば当然のことではないか。

 もちろん、解雇の仕方にアンフェアなものもあったのだろうが、すべてを「可哀そう」という情緒的な感情だけで見るのは、ちょっと行き過ぎだ。そもそも、雇用を安定させ、失業者を減らすのは、企業の仕事ではなく、政府の仕事だ。

 要は、派遣労働者の弱みに付け込む悪徳な派遣業者や企業を見分けるための、監視制度の整備だろう。それさえできれば、私は、派遣という制度が、多様な労働市場における一形態として存在すること自体は悪くないと思っている。

 一方、真の問題は、一生懸命働きながら豊かに暮らせない人がいるということだ。派遣とはいえ、フルタイムで働いているのに、収入が低くて結婚もできないというのは、やはりおかしい。

 ただ、私には、フェアな雇用が崩れ、次第に賃金が下がり、貧富の差が開いていくのは、派遣労働というより、グローバル化のせいに思えて仕方がない。グローバル化と派遣労働の増大には関係があるはずだ。

 世界はどんどんいびつな方向に進んでいるのではないだろうか。そして、それを誰も止められないかもしれないと思うと、若い人たちが気の毒で、とても憂鬱な感覚に襲われる。


05. 2013年8月28日 10:39:51 : niiL5nr8dQ
【第125回】 2013年8月28日 週刊ダイヤモンド編集部
派遣が正社員の仕事を奪う?
労働者派遣法大改正の衝撃
労働者派遣法の見直しが始まった。派遣の雇用実態と乖離していたり、法解釈が難解だったりするためだ。派遣労働者、正社員を巻き込む大幅改正になりそうだ。
 派遣労働者も正社員も──。雇用形態の区別にかかわらず、能力とコストで選別される時代がやって来るかもしれない。正社員のあなたも、派遣改革の行方と無縁ではいられない。
 8月20日、厚生労働省の有識者会議「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が、労働者派遣法の見直しに関する最終報告を行った。派遣労働者の定義を根底から覆すような“大幅な見直し”を示唆する報告だったにもかかわらず、議事は淡々と進行し、30分程度で閉会した。
 本番はこれからだ。この報告書がたたき台となって、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で議論されることになっている。賛否両論が予想されるとはいえ、「あらを探すことはできるが、派遣労働者の雇用安定化が大前提に据えられているので、総論では反対しにくい、巧みな制度設計になっている」(派遣法改正反対派の弁護士)と舌を巻く。
報告書をたたき台に、派遣元よりも派遣先に有利な法改正となる見通し(写真中央は、緑化壁面が特徴的なパソナ本社ビル)
Photo:PANA
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 早ければ来年3月にも労働者派遣法が改正される見通しだ。実は、現行法は民主党政権下にあった昨年10月に施行されたばかり。1年半にも満たないタイミングでの改正議論は異例のことだ。
 1985年に制定された労働者派遣法は、度重なる規制緩和を経て派遣労働者数は200万人に迫った。だが、リーマンショック後の雇用情勢の悪化、実態にそぐわない法律を厳格化した「専門26業務派遣適正化プラン」が響き、近年の派遣労働者数は減少している(下グラフ参照)。
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 ここで、改正が予想されるポイントを順に見ていこう。派遣労働者は、「常用型か登録型か」、あるいは、「業務内容」によって、九つのタイプに分類される(下表参照)。
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 現行法では、専門性が高いとされてきた「専門26業務」では、派遣期間の上限はないが、製造業やそれら以外の業務では、派遣期間は最長3年。専門26業務には、事務用機器操作やファイリングなど単純作業も含まれており、実態にそぐわなくなっていた。
 改正ポイントは六つある(下表参照)。規制が強化された点と、緩和された点とが混在しているが、いずれも、派遣労働者、派遣会社(派遣元)、派遣先企業(派遣先)の三者にとって、明解な制度設計になっている。
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 特定労働者派遣の条件を意味があいまいな「常時雇用」から「無期雇用」とした。また、派遣期間制限のない専門26業務を廃止し、業務の差異による期間格差をなくした。その上で、派遣期間の上限は、「業務」単位ではなく、「人」単位で定めることにした。例えば、現行では派遣労働者を変更しても3年を超えると派遣業務は打ち切られていたが、今後は、派遣先の労使が合意すれば別の労働者を受け入れられる。
派遣先にとって
使い勝手のよい
改正ポイント
 見直しポイントを、派遣労働者、派遣元、派遣先のそれぞれの立場から評価すると、極めて派遣先にとって有利な点が目立つ。
 まず、民主党政権下では禁止候補の代表格だった登録型派遣、製造業務派遣は温存された。労使双方のニーズが大きく、禁止すると労働者が路頭に迷うという理由だ。
「現在も、これからも、製造業務派遣を使うことは考えていない」(トヨタ自動車幹部)、「偽装請負問題が発覚した直後に、派遣労働者は直接雇用と請負労働者へ切り替えた。今どうこうするということはない」(キヤノン幹部)と、大手メーカーは静観の姿勢を崩していないが、「地域によっては生産現場の労働情勢が逼迫しており、製造業務派遣の拡大はチャンス」(人材派遣会社幹部)という。製造業務派遣を使いたい中小の派遣先は多いだろう。
 ただ一つ、例外があるとすれば、専門26業務に依存している派遣先だ。例えば、テレビ業界は、放送番組等の演出、大道具・小道具、アナウンサーと、「業界人員の8〜9割は派遣」(同)といわれており、強烈な反発が予想されている。
 今回の改正で課されるであろう“負担”を派遣元と比べても、派遣先が優遇されているように見える。例えば、同表6の有期派遣労働者の雇用安定措置として、派遣元が(1)派遣先に直接雇用の申し入れ、(2)新たな派遣就業先の提供、(3)派遣元での無期雇用のいずれかを講じることになっている。つまるところ、安定雇用の面倒を見るのは、派遣元なのだ。
 これらの措置は、「改正法で義務づけられるほどの拘束力を持たせるつもりだが、まだ決まったわけではない」(厚労省幹部)。
 仮に義務づけられれば、経営体力の乏しい派遣元は脱落するほかなく、派遣業界の新陳代謝が進むことになるだろう。一方で、この措置が注意勧告くらいの甘いものならば、有期派遣労働者を保護することができない。
 そもそも、派遣労働者を保護することが最大の改正目的であるにもかかわらず、派遣先に有利な制度に見えるのは、派遣法制定以降の経緯と密接に関係している。
 あまりに拙速に規制緩和が進んだ結果、すでに派遣先に有利な“立てつけ”になった法律の規制強化を急げば、派遣先は「派遣」を利用することをやめてしまう。派遣労働者数の減少に歯止めがかからなくなる。そうなると、困るのは派遣元だ。大きな負荷がかかる法改正にも、派遣元から反発の声は聞こえてこない。
派遣法制定以来の
大幅改正の影響は
正社員にも波及
 この見直し案に沿って、大幅改正がなされるならば、その影響は、派遣労働者137万人だけにとどまらず、正社員へも及ぶことになるだろう。派遣労働者が無期雇用、あるいは有期雇用でもより安定的な雇用となるような制度設計、つまり、正社員へのレールが構築されつつあるからだ。
 とりわけ、無期雇用の派遣労働は、常用代替防止(派遣労働者が派遣先の正社員と置き換わってはいけない)の対象外となった。従来、すべての派遣労働者の常用雇用代替は認められなかったのだから、「派遣」の定義がガラリと変わったといえる。
 より安定した派遣労働者の身分は、一歩、正社員に近づく。見直し案には、雇用形態の区別なく、同じ仕事には均衡した待遇をする「均衡待遇」も盛り込まれている。もちろん、「派遣労働者に、資格や能力認定を取得した“専門職派遣”を目指す」(山田久・日本総合研究所調査部長)など能力開発の工夫は必要になるだろう。そうなれば、企業は「正社員」よりもコストが低く使い勝手のいい「派遣」を使うようになる。派遣の自由度を高めることは、正社員の仕事を奪うことにもなりかねない。
 くしくも、政府の産業競争力会議では「限定型社員」を導入する議論が浮上している。限定型社員とは、仕事の中身や勤務地、労働時間等を限定した正社員のことをいう。単純業務の派遣よりも、一歩正社員に近づいた「専門職派遣」、一般の正社員よりも限定的な働きをする「限定型社員」──。
 新たな雇用形態の誕生は、非正規社員と正社員との間にある壁をぶち壊すかもしれない。「派遣」の定義の転換は、正社員を含む労働市場を揺さぶることになりそうだ。
 (「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
http://diamond.jp/articles/print/40725


 


 


【第3回】 2013年8月28日 高野秀敏 [株式会社キープレイヤーズ代表取締役]
駐在員でなくても海外で働きたい日本人が増加中!?
月給20万→8万円になった現地採用社員の現実

 海外で働きたい――。そうした転職の相談は、以前よりも確実に増えています。

 しかしその一方で、海外駐在員の募集案件はそう多くはありません。ですから、グローバル展開をしている企業に転職して海外駐在できるかというと、確かに実例はあるものの、数が限られるのが現状です。

 では、それでもなお海外で働きたいという場合には、どのような可能性が残されているのでしょうか。今回は、最近最も相談が多い「アジア」にフォーカスし、駐在ではない形で海外で働く方たちの事例をご紹介していきましょう。

「自分の学歴・経歴では駐在はムリ」
月給半分以下でもタイで働く20代男性

【事例@】
Aさん(20代前半、男性)
働いている国:タイ

 日本では新卒で通信関連の営業会社に入ったものの、あまり続かず、1年で退社したAさん。転職活動をしようと思いましたが、あまりモチベーションが上がりません。そんななかで見つけたのが、「タイでの住居付き事務作業、コールセンター」の仕事でした。

 学生時代に一度タイに行ったことがあったAさんは、この求人を見た瞬間、タイの気候や食事が気に入ったことを思い出し、すぐに応募を決意。一部の海外勤務希望者などが言うような「日本の将来性に疑問を感じて…」などとかっこつけるつもりはありませんが、Aさん自身が一流大学の出身でもなく、突出した才能もないため、「このまま日本にいても自分の先は見えているな」とずっと感じていたことが背中を押しました。

 実は中国、シンガポール、インドネシアなどの国にも訪れたことがありましたが、そのなかでもタイ人とは気が合いそうだと感じていたというAさん。タイは日本人も多くいるので比較的安心というのもあります。そして何より大きな動機づけになったのは、タイの女性は綺麗な人が多いと感じていたことでした。

 選考を通過し、日本で面接を受けたAさん。その後、直接現地に行き、拠点長と面接。すぐに話がまとまりました。

 実際にタイで働き始めたAさんですが、新卒で入社したのが日本で“ブラック企業”とも言われている会社であったせいか、転職して仕事が大変だと思うことはないといいます。仕事の内容は、主に事務系の仕事とコールセンター業務で、月給は前職での20万円少々から、8万円へと減少しました。しかし、家賃や一部食事は会社負担であるため、確かに条件は下がってしまいましたが、あまり気にならないそうです。

 将来の具体的なキャリアプランなどは、まだ考えられていません。日本にいたときのように朝から深夜まで働くということはないので気は楽ですが、将来を考えると、マネジメント側にまわらなければいけないのだろうなと漠然と思っています。正直、駐在員の方は給料も高く、良い場所に住んでいるため、うらやましく思うこともあるそうです。

 そうは言いながらも、自分が日本で働きながら海外駐在のキャリアを歩むことは、学歴、経歴的には難しいということも充分認識しています。ですから、今はどこまでできるかわかりませんが、言葉も覚えてタイでのビジネス経験を積み、トップキャリアにはならなくても、それに次ぐようなポジションに就きたいと思い、頑張っているようです。

キムタク!?のようなタイ人と結婚
「日本には帰ろうと思わない」30歳女性

【事例A】
Bさん(30歳、女性)
働いている国:タイ

 日本でエステシャンとして働いていたBさん。マッサージの技術を学びたいと思い、タイへ行くことを決めました。当初はチェンマイで働きながら、学びました。タイのマッサージの技術力はとても高く、実際に非常に勉強になったといいます。

 給料は日本の10分の1ほどになりましたが、結局この地に残ることを決めます。それはなぜか。ずばり、キムタクばりにかっこいいタイ人と交際できたから、です。その彼は今、Bさんの旦那様になっています。こちらでは、多くのタイ人が浮気をするとも言われているようですが、Bさんの旦那様はとても誠実な方。こんな素敵な方と出会えたことがこの国で働いている本当の理由だとBさんは語ります。最近は日本人女性が、タイ人男性と恋愛、結婚することも少なくないようで、Bさんのまわりにも同じような方がいるといいます。

 とはいえ、チェンマイでは給料がさすがに低過ぎたため、現在はバンコクで働いており、以前の2倍ほど稼げるようになりました。同じタイといっても地域によって給料の格差はとても大きい模様。今は、日系のマッサージ店のマネジャーとして仕事をしています。

 職場では、どういうわけか困ったことに、自分の給料がいくらかなどを他のタイ人が知ってしまい、特有の嫉妬を受けることもあるよう。そうは言っても、うまくやっているつもりで、気候も良く、人も良いタイを気に入って働いているようです。

 そして、旦那様もきちんと真面目にお仕事してくれていることもあり、現在は日本に帰ろうとは思わないといいます。

「日本も良いですが、あまり海外に出たことがない方は、まずいろいろな国に行ってみるだけでも良いかもしれません。価値観が変わることもあると思いますよ」(Bさん)

 Bさんの友人のなかにも月給10万円くらいにもかかわらずタイで働き、ときおり海外旅行をするという暮らしをしている女性の方がいます。こちらでは普段真面目に働いていれば、1週間ほど休みをとることができる会社もままあるようです。

海外出張での挫折からフィリピンへ
「別の自分」になった30歳男性

【事例B】
Cさん(30歳、男性)
働いている国:フィリピン

 新卒でIT関連の会社に入り、ディレクターとして頑張ってきたCさん。仕事の内容にも会社にも満足していたといいます。しかし、一度海外出張を命じられ、そこであまりにも英語が話せずにいたことで、「このままではいけない!」と人生観が変化しました。そこから突然会社を辞めて、フィリピン留学をし、英語を徹底的に勉強。せっかく身につけた英語を使いたいと思い、1社目のIT企業での経験も活かして、仕事ができないものかとフィリピン内で探したところ、日系企業での仕事のチャンスを得ました。

 給料は半分くらいになりましたが、生活コストが低くなったうえ、家賃は会社負担。フィリピンに来たら物欲がなくなってきたのか、結果として日本にいるよりも貯金ができるようになったそう。日本にいた自分とは別の自分、考え方になったようです。英語を使って仕事をしていますが、文法など学べるものは日本でも十分学べるので、できればもっと日本にいるときから勉強していれば良かったと思うこともあります。

「日本が嫌だから海外、ということではなく、海外に出て活躍するという強い気持ちが必要です。文化の違いからくるトラブルや軋轢もあるので、そういったことを乗り越えてやっていきたいと考えられるかどうか、が重要でしょう」(Cさん)

 海外に出て一番良かったことのひとつは、日本人の良さ、素晴らしさを外国人の方から褒められること。これは、日本を出てはじめてわかったことで、日本人であることを誇らしく感じて、フィリピンで働いている毎日です。

家族を日本に残しミャンマーへ
家賃高騰中のヤンゴンで働く30代男性

【事例C】
Dさん(30代前半、男性)
働く国:ミャンマー

 人材関連の会社でマネジャーとして働いていたDさん。順調なキャリアを積んでいましたが、アジアでもチャレンジしてみたいと思い、日系企業のミャンマー支社立ち上げに参画することに。給料は以前の半分以下になりましたが、それでも現地の方も10倍程度の給料を得て働いています。

 ミャンマーにきて良かったことは、視野が広がったこと。お国柄もありますが、政治に対する関心が高まったといいます。

「ニーズがあるからやろうというだけでは駄目で、この国のルールではできるのかどうかも考えなければなりません。日本にいるときは常識的に考えればわかることが、こちらでは通じないということは多々あります。ですから、日々勉強です」(Dさん)

 また、こちらでは事業の立ち上げをしているので、営業から、企画、管理系業務等をすべてひとりで行い、さらにローカルスタッフを採用して、マネジメントをしています。日本では自分ですべてやった経験はなかったので、かなり貴重な体験ができていると感じているようです。

「日本の感覚で、ローカルスタッフに仕事を求めると、なかなかそれに適応はしていただけないこともあります。この苦労は、どの国でもあると思うのですが、スタッフ教育は大事な仕事のひとつです」(Dさん)

 やや想定外だったことは、英語が思ったよりも通じないということ。できる人ももちろんいるのですが、やはり英語だけではなく、この国の言語をきちんと覚えていきたいと今は考えています。ビザ更新のタイミングで、他アジアエリアへ営業に行ったりすることもなり、比較的自由に仕事ができており、やり甲斐は言葉で表現できないくらいにあるといいます。

 ただ、旧首都でもある大都市ヤンゴンでは、この1年で家賃が4倍に上がったと言われています。マーサー社の行った「2012年世界生計費調査-都市ランキング」によれば、ヤンゴンの外国人駐在員の生計費の高さは、世界214都市中35位とのこと。アジアに出れば生活費が安くなるわけでは必ずしもないと言えます。

 インフラもまだまだ脆弱で、水回り、電気、通信など日本と比較してしまえば大変なことばかりです。Dさんは、家族を日本に残してきているので、正直寂しい気持ちは多々あるようですが、だからこそ、いち早く成功をしたいと思っています。

海外で幸せに働く人は
細かく計算や計画を立てない

 このように、アジアでお仕事をされている方と直接お話をさせていただきますと、大変刺激になります。そして皆さんがそれぞれの人生を大変ながらも謳歌されているようで、とても嬉しい気持ちになります。何となく海外で働くというのはこういうことか?と空想していることやネットで調べてみたこととも微妙に違うこともありますし、変化もあります。やはり直接聞いてみるのは大事ですね。

 現地採用社員の方で、幸せに頑張っている方の共通項としては、ズバリ「日本の常識にとらわれていないこと」だと思います。また皆さん、細かく計算やプランニングして現在があるというよりは行動して、今の地位を掴んだたくましさを感じます。考えることも大切ですが、やはり人生、まずは調べてみる、そして行動してみることが大切です。

 いずれの方からも充実感が伝わってきて、同じ日本人として嬉しく思います。固定概念、常識にこだわりすぎることなく、新しいチャレンジをする方がもう少し増えることを願ってやみません。


06. 2013年8月28日 12:13:49 : niiL5nr8dQ
【第2回】 2013年8月28日 梅田カズヒコ [編集・ライター/プレスラボ代表取締役]
結婚は「認められる人」だけができる時代!?
独身者が陥る“承認不安スパイラル”の正体

「強迫観念にとらわれたかのようにメールの返信を急ぐ人」、「Twitterで他人のツイートをパクる人」、「ランチを一緒に食べる友達がいないと思われるのがイヤで、トイレでご飯を食べる人」、「せっかく一流企業に入ったのに辞めて、所得を減らしてでも自分らしい職場を探す人」……。

オジサンには一見不可解な現代の若者に特徴的なこれらの行動。こうした行動を駆り立てる原因を探っていくと、彼らの「認められたい」という思いに行きつくことが少なくない。現代において若者を悩ませる最大の問題は、経済的不安ではない。「認められない」という不安なのだ。

一方で、若者でない世代も含めて、日本に蔓延する閉塞感の正体を探る意味でも「承認」、さらに「承認格差」は、大きなキーワードだと考える。この連載では、経済的な格差に苦しむよりも深刻かもしれない、「“認められない”という名の格差」を考えていこうと思う。

 さて、Twitterで記事をつぶやいていただいたり、筆者の個人アカウントに意見をいただくなど、大変大きな反響をいただいた前回から早1ヵ月。前回はお盆に重なったためお休みとなり、とてもお待たせしてしまいましたが、ようやく第2回の更新です。今後は2週間に1度更新していきますので、ぜひ更新のたびにご一読ください。

結婚していないと不幸になる?
独身者が抱える「2つの承認不安」

 経済的な格差よりも深刻かもしれない、「承認格差」、「認めてもらえない不幸」とは何か。

 前回、「承認」には3つの種類があることを紹介した。それは、承認を得たい・得られる他者(相手)との関係性によって、以下のように分けることができる。

親和的承認(主に家族や恋人など、親和的な関係から得られる承認)
集団的承認(職場や学級など共通の目的を持つ集団のなかから得られる承認)
一般的承認(広く社会一般から得られる承認)(※1)

 この3つの概念は、今後ちょくちょく登場することになるので、ご理解いただきたい。

 今回は3つのなかでも「親和的承認」について考えていこう。取り上げるテーマは、家族が現代社会でどのような位置に置かれているか、だ。

(※1)参考図書:「認められたい」の正体/山竹伸二

 言うまでもなく、「家族」とは、社会における最小の集団であり、最も濃密な関係を得られる他者である。他のどんな人間関係をもってしても、家族を越える親密さは得づらい。ゆえに、家族による承認を考えることは、「承認」を考える最初の一歩となるだろう。

 現代社会では、家族というフォーマットが、社会全般に機能しなくなっていることが問題として挙げられる。例えば、生涯未婚率(50歳時点で未婚の人の割合)の増加である。2013年の「少子化社会対策白書」のなかで、男性の生涯未婚率は20.14%、女性のそれは10.61%と発表されている。つまり男性の5人に1人、女性の10人に1人が、50歳まで未婚で過ごしているというのだ。そして、この数字は年々上がっている。これは、あなたの周囲の結婚事情を考えても、実感が持てる数字ではないか。

 この状況は、承認というキーワードに照らすと、二重の問題をはらんでいることがわかる。1つ目は、単純に家族からの親和的承認が得られないという問題だ。そして、2つ目は、独身であることによって、周囲や社会一般から、「あの人は結婚できない可哀想な人だ」と風評を立てられることである。つまり、世間からの一般的承認も得られない。

 こうして文章に起こしてみて、自分でもこんなことをあえて書くのはばからしいと思う。そして時代錯誤だとも思う。他人からの風評なんて放っておけば良い。価値観が多様化し、女性の社会進出が職種によってはある程度進んだ世の中では、男女ともに必ずしも結婚しない幸せがあってしかるべきだ。それにもかかわらず、「親に言われるので」「周囲が結婚しているので」焦っている人が多いというのも、また事実だろう。これを“世間体”と位置づけずになんというのだ。

 生涯独身を貫く場合は、煩わしい家庭内でのやりとりがない代わりに、伴侶からの「承認」が欠如し、なおかつ世間一般からもなんとなく「負け組」というレッテルを貼られて生きることになる。本人が望む・望まざるに限らず、だ。したがって、本人の内側と外側で二重の承認不足を抱えることになる。

 こう述べると、「そんなこと、今に始まったことではないではないか。いや、世間体の圧力は昔より弱まっているではないか」という反論がかえってきそうだ。では、それに対する反論をこれからしていこう。

 僕の結論としては、確かに世間体の壁は打ち壊されつつあり、かつてほどの息苦しさはなくなっているが、その代わりに、社会で“別の問題”が生じてきているということだ。この世の中は、ある問題が解決されると、その一方で“別の問題”が生み出されるようにできている。なぜなら、完璧な社会はいまだ地球上のどの場所にも存在しないからだ。

結婚は激しい市場競争を
勝ち抜いた人だけができるもの

 結婚と年収の間に相関関係があるのは、有名な話である。内閣府が発表した「結婚・家族形成に関する調査」(平成23年3月)によると、30代の男性の場合、年収が600万円以上の場合の既婚率は37.6%、500万円台が35.3%、400万円台が29.4%、300万円台が26.5%、300万円以下の人は9.3%と、明らかに年収が高い方が既婚者が多いことになる。これは20代の男性も同様である。

 一方、30代の女性の場合は年収300万円以下の人が最も既婚率が高く(35.7%)、世代平均(30.0%)を大きく上回っている。これは、出産後に専業主婦になったり、仕事をセーブしたりする人が多いゆえに、結果的に300万円以下の層に既婚者が固まることが多いためと予測できる。300万円以上に目をやると、300万円台が17.1%、400万円台が20.0%、500万円台が23.0%と、男性ほどはっきりとした差ではないが、やはり相関関係があると言える。ただし、600万円以上になると、16.3%と再び既婚率が下がる。女性の場合、ほどほどの収入がある人が、最も結婚しやすいということなのだろうか。

 このデータが意味するところは何か。結婚とは、広い地球上で赤の他人同士が出会い、お互いの意思を尊重した結果、一生のパートナーになってほしいと思った人に伴侶としての社会的承認が与えられる素晴らしい制度である。その一方、結婚できないかもしれない人々の側から見ると、結婚とは明らかに生存のための競争であり、厳しい市場メカニズムが働く現象という、身も蓋もない結論に他ならない。

 結婚相手に求めるもの。年収、容姿、社会的なステータス…。その他様々な条件が絡み合うが、詰まるところ男女ともに、異性に対し相応の価値を求めているという点で一致している。これを市場競争と呼んで何が間違いなのだろう。

 かつて結婚相手に求めるものについて「3高」(高身長・高収入・高学歴)という言葉が流行したのは1980年代末のバブル期。このあたりから明らかに結婚は市場競争のなかに組み込まれていった。

「3高」とは、女性から相手の男性を指して評価した言葉だ。これが、女性から男性への評価だったことには、時代が感じられる。なぜなら1980年代末の時点では、多くが専業主婦になる女性の人生の幸福度は、結婚した男性に大きく依存していたからだ。一方で男性にとっては結婚相手の価値よりも自分の社会での評価を上げることが優先された。したがって、女性を評する「3高」に当たる言葉は生まれなかった。

 しかし、共働きが当たり前となった現代においては、男性にとっても、女性のパートナー選びは重要な事項になった。慎重な男性ならなおさらそう思うだろう。そうした時代背景を経て、男女ともに結婚市場競争に巻き込まれる時代になったのだ。そりゃ婚活が流行して当然だ。

結婚できない「負け組」は
“認められないスパイラル”へ

 ただ、誤解しないでほしい。僕は時計の針を過去に戻すべきだと言っているのではない。お見合い結婚が主流だった時代には、家の都合が本人達の希望より優先されたこともあったかもしれないが、それと比べれば現在は幸福な時代である。共働きする夫婦が分担して家計を担う。素晴らしいことではないか。現状の結婚のルールは、過去のものよりかなりマシなものだ。

 だが、このような性差や家柄といった旧来的な考えが後退したがゆえに、上記のような理由により、結婚したくてもできない人は結婚市場競争に負けた人ということになり、「負け組」というレッテルが貼られやすい状況になってしまうというのも事実だろう。

 認められる人はさらに認められ、認められない人はさらに認められなくなる。これが、「認められない私と認められない社会」の正体だ。

 富める人、立場の強い人、能力の高い人、コミュニケーション能力の高い人、異性にモテる人はますます認められ、貧しい人、立場が強い人、能力が低い人、コミュニケーション能力が低い人、異性にモテない人は、ますます認められなくなる。そして、「承認されない」のスパイラルを生み出してしまうことになる。これは、まさに経済的な格差社会と、格差の固定化のメカニズムとよく似ている。

 では、この問題を解決する方法はあるか。正直なところ即解決する方法はないが、もし結婚に対してプレッシャーを感じる人がいた場合、自分がどのような状況に置かれているかを客観的に把握することが、不安を和らげる一助となるのではないか。病気を患った場合、何の病気が分からないことが最も不安であるが、病名が分かった途端に半分は解決したようなものだ。あれと同じで、まずは現状のもやっとした不安の正体を分析することから始めるのが良いかもしれない。

 まとめとしては少々乱暴かもしれないが、結婚の話題をし始めて、SNS好きの僕が最初に考えたのは、Facebookにおける「既婚」ステータスの存在である。Facebookには、既婚者と独身者を分けるステータスが登場し、任意ではあるもののその人が結婚しているかどうかが丸わかりである。

 このような、あっけらかんとした空気は、日本のSNS文化では存在しなかった。ある人に既婚か独身かを問うのは繊細な注意が必要となるが、しかしFacebookは“がさつ”に聞いてくる。「お前は結婚しているのか?」と。このようなある意味での“がさつさ”を、日本人はもっと体得しても良いのではないだろうか。

 日本の戦後はアメリカによって大きく社会変革を迎えたが、今回もまた、アメリカ人が作ったツールによって、日本文化は大きく変わるのかもしれない。

<今回のまとめ>
・何らかの事情によって結婚できない人は、家族からの親和的承認と、世間からの一般的承認、双方が得られない状況になりかねない。
・現代の結婚には市場競争のメカニズムが働いており、勝ち組と負け組がより鮮明化した。
・ゆえに、持てる人(モテる人)はますます恵まれ、持たざる人はますます不安になる。

新連載「認められたい私、認めてくれない社会」について、ご意見、ご感想がある方は、筆者のTwitter(@umeda_kazuhiko)までお願いいたします。次回以降の執筆の参考にさせていただきます。


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