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100件覆面調査!恐怖の老人ホームに入ってみた パンフレットはウソばかり入居してからでは手遅れです (週刊現代) 
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/326.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 9 月 06 日 16:20:00: igsppGRN/E9PQ
 

100件覆面調査!恐怖の老人ホームに入ってみた パンフレットはウソばかり入居してからでは手遅れです
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36826
2013年09月03日(火)週刊現代 :現代ビジネス


 公の特別養護老人ホームは42万人の入居待ち。私立の有料老人ホームは入居金が高すぎる。そんななか注目を集める新型老人ホーム。その内実は恐怖に満ちていた。調査結果を独占公開する。

■死ぬかと思った

〈もしもし、どうしました?〉

「あ、あの……さっきから胸が苦しくて、こんなことは初めてなんですが、足腰も立たない状態で……」

〈わ、わかりました、提携医院の先生にも連絡してみますね。ちょっと待っててください!〉

 ああ、助かった。発作が起きて5分。必死にすがりついた電話は、1階にある管理人事務室にすぐつながった。夜間に何かあってもすぐに医者が来てくれるという安心感。妻を亡くして5年。78歳の今年になって、息子が探してくれたこの高齢者向け住宅に入ってよかった―。しかし……。

【5分経過】おかしい。3階のこの部屋までは走れば2~3分で着くはずだ。なぜ、まだ誰も来ないのか。

【15分経過】……まだ胸に重苦しさはあるが、痛みはだいぶおさまってきた。だが、まだ誰も来ない。

【30分経過】〈ピンポーン〉

「失礼しまーす」

 看護師ではなく、夜勤のヘルパーさんだった……。

「……ずいぶん時間、かかりましたね……」

「あらあら、まあ、大丈夫ですか。どうしましょう」

 大丈夫じゃないから呼んだんだろうが……!

「あの……提携の病院には行けるんでしょうか」

「それが、先生がつかまらなくって。夜は診療時間外ですしね。まだ苦しかったら、救急車呼びましょうか」

「はあ、お願いします……」

 とてもプロとは思えない狼狽ぶりの女性は、のろのろと119番に電話をする。

「あー、○○ホームですが入居者の方が胸が痛いといって倒れまして。30分くらい前です。はい、私ヘルパーです。えっ? なんですか? すみません、ヘルパーの資格もこないだ取ったばかりなんで、難しいことはわからなくて……。はい、ええ、住所ですか―」

 なんだこの人、ただの素人なんじゃないか……。

                  *

 以上は今回、介護や福祉に関する情報提供を行っているNPO法人・二十四の瞳が行った「新型老人ホーム」100件に対する覆面実態調査と、本誌の取材に基づいて再現した、新型老人ホームでの一幕だ。

 命の危険がある場面でも入居者が放置され、ようやく来た職員も素人同然―。そんな恐るべき事態が、当たり前のように起きている。

 ここでいう新型老人ホームとは、現在、国がもっとも力を入れて新設を推進している、高齢者向け住宅の一種。正式には「サービス付き高齢者向け住宅」と呼ばれるものだ。

 従来の老人ホームとの違いについて、介護現場でのトラブル相談などを行っている介護と福祉のリスクコンサルタント・山田滋氏はこう解説する。

「従来の老人ホームは介護を行うために高齢者を集めた『施設』ですが、新型老人ホームは施設ではなく、高齢者用の『住宅』だという点が根本的に違います。

 イメージとしては、基本的にマンションのような一般の賃貸住宅と同じだと考えてください。そこに医療や福祉の資格を持つ専門の職員を置き、『生活支援サービス』を行うことが認可の条件になっています。

 入居者は月々の家賃に加えて、サービス料1万~5万円を支払い、場合によってはさらにサービスごとに設定されている追加料金を支払うことになります」

 ポイントは、この新型老人ホームでは、一般のマンションのように入居者がそれぞれ個室に住まうということ。そのため、「少し手伝ってもらえれば、まだまだ自分で生活できる」「従来型の老人ホームで、プライバシーのない集団生活を送るのはいやだ」と考える人々の注目を集めているのだ。

 ではその実態はどうなのか。前出のNPO法人・二十四の瞳では、離れて暮らす母親を入居させる子供が相談する設定で、覆面調査員がサービスについてさまざまな質問を投げかけ、返答内容や職員の態度などを集計。本誌は同NPO法人の協力により、その恐るべき実態を独占初公開する。

 ある都内の新型老人ホームでは、覆面調査員は次のように疑問をぶつけた。

調査員「私たち家族はいま、大阪で、母と離れて住んでいまして。母は80歳で、一人暮らしなんです。認知症はないんですけど、最近もの忘れがひどくて。本人はまだまだ自分で生活できるというんだけど……」

職員「はあ、そうですか」

調査員「そこでうかがいたいんですが、おたくに入居したら、毎日の母の様子の確認は、どういうふうにしてくださるんでしょう?」

 は、と介護職員は怪訝な声を出す。

職員「あの、毎日みなさん食堂に集まりますから、そのときに確認しますよ」

調査員「でも食事のサービスを頼まなかったら、自分の部屋で料理して、食事をとってもいいんですよね」

職員「あー、まーねぇ……。でも、みなさんで、まとめて食事をとられたほうが簡単ですよ。それこそ安否確認もできますしね」

 思わずこぼれた「簡単」という言葉。業務の簡便さのために、入居者に集団で食事をさせているのだ。プライバシーを求める入居者のニーズとは正反対だ。

 福祉問題に詳しいジャーナリストの浅川澄一氏は、新型老人ホームはあくまで高齢者向けの住宅に過ぎないが、入居者が抱くイメージと現実に大きな食い違いがあると指摘する。

「法律によって新型老人ホームに義務づけられているサービスは、基本的に二つしかない。一つは入居者の『安否確認』。もう一つは『生活相談』。郵便局はどこにあるかなど、相談された事柄に答えるというものです。

 デイサービスや訪問介護の事務所を付設したり、ケアマネージャーを常駐させているところが多いですが、そうしたサービスを付けるかどうかは制度上は事業者の自由裁量です」

■誰も助けてくれない

 だが、そんな基本中の基本である安否確認すら業者は面倒くさがり、入居者の自由を犠牲にして、効率優先で行おうとする。

 次ページの表は、今回の100件調査のデータをもとに本誌が抽出した新型老人ホームのひどすぎる実態だ。「入居すれば安心して人生の最終盤を過ごせる」と誘う宣伝物が、いかに嘘八百のいい加減なものであるかがわかるだろう。

 今回、調査を行ったNPO法人・二十四の瞳代表の山崎宏氏はこう指摘する。

「一部の経営者は、人件費を抑えるために、低賃金の職員に通信教育でホームヘルパー2級の資格を取らせ、『介護の専門家』と称して生活支援サービスに当たらせているのです。今回の調査でも、十分な知識も経験もない職員が数多くいることを確認しています」

 本来、新型老人ホームでは、日中は「医療か福祉の専門資格保有者」を常駐させると定められているが、コストカットが至上命題になり、質の悪い職員が専門スタッフとして配置される。

 そうとは知らない利用者には、新型老人ホームの「安さ」も好評だ。従来型の有料老人ホームのように入居時に高額の一時金を払う必要がなく、通常の賃貸物件のように入居できる手軽さが人気を集めているという。

 だが、考えてみてほしい。ただでさえ引っ越しは気力・体力を要する作業だ。まして70歳、80歳にもなって、入居した物件が気に入らないからと、そう簡単に住み替えはできない。入ったが最後、脱出は困難なのだ。

 しかも、業者は質の悪いサービスしか提供しなくても、生活支援費の名目できっちり儲けることができる。

 こんな状況ではトラブルの急増もうなずけるだろう。山崎氏はこう語る。

「100件覆面調査の結果は、想像以上に惨憺たるものでした。宣伝で謳っているような、入居者の自由で安心安全な生活を保障する生活支援サービスは、実際にはほとんど機能していなかったり、非常に質が悪いものだったりした。入居者の生活など実質ほったらかしと言っても過言ではない例も複数見受けられました。

 こうした高齢者向け住宅の建設には、国から建築費の10%の補助金と、向こう5年間の税制優遇措置があります。これを狙って、一部の不動産会社、建設会社など、介護に対する意識の低い業者が群がっている。そうした物件では、入居者は十分な生活支援も受けられないのに、月々のサービス料をぼったくられることになってしまう」

 実は、今回の調査で対象としたのは、いかにも怪しげな新型老人ホームではない。介護大手が展開する物件だ。教育や飲食など異業種で名を馳せた有名企業や、地域密着型の不動産開発業者、医療法人などが運営している、一見、真っ当そうな高齢者用の物件ばかりだ。

 だが、これらの業者でもパンフレットで謳っている内容と実際のサービスの間に大きな乖離がある。

 東京郊外の新型老人ホームで、ホームページでは「入居前のかかりつけ医を引き続き利用できます」としている物件では、こんなやりとりがあったという。

調査員「あの、母は慢性的に高血圧で、近所に以前からお世話になっているお医者さんがいるんですが」

職員「あー。でもね、うちにも提携している先生がいるんですよ。診療所もご近所ですからね。こちらの先生にかえていただくほうがいいと思うんですよ」

調査員「でも長いこと診ていただいているので……」

 渋ってみせると、職員の語気は、急に強くなった。

職員「でも、ご家族も遠くに住んでるんでしょう。休日や夜間に緊急事態が起こったら、どうなりますかね」

調査員「どうって、提携の診療所で診ていただくわけにはいかないんですか」

職員「だって頼まないとおっしゃるんですから、どうなるかわかりませんよ」

調査員「はあ、そうですか……。それならせめて、前の病院から母のカルテは取り寄せてもらえますよね」

職員「は? カルテですか。うちはそこまではやってないなあ。不安なら、入居時にご自分でもらってこられたらどうですか」

 前出の表にもあるように、「カルテの取り寄せを行わない」とした物件は、なんと全体で92件にのぼった。

 取り寄せに対応すると回答した8件は、ほとんどが医療法人が母体となって運営する物件。家族とのコミュニケーションにも積極的で、職員の応対も比較的丁寧な物件が多かった。

■病気になったらアウト

 一方、カルテを取り寄せられないと答えた都内の新型老人ホームに入居している70代の男性は、本誌の取材にこう証言した。

「私も高血圧の持病があり、かかりつけ医がいたんですが、半ば脅されるように提携の診療所にかえさせられましたよ。『先生は循環器がご専門ですから安心ですよ』なんて言われてね。

 ところが、入居に際しては提携の診療所に前の病院から私のカルテを取り寄せてもらうサービスもない。そんなことで私の病歴や治療の経過なんてわかるわけがないでしょう。検査もまたいちからやり直しですよ。

 ふたつ隣の部屋の80代のご夫婦で、奥さんが狭心症の発作を起こしたときなどは、旦那さんがあわてて管理人に連絡したら、『いまは提携診療所が時間外だから』と救急車を呼ばれた。何が循環器の専門ですか。救急車を呼ぶだけなら小学生でもできますよ」

 さらに今回の調査では、新型老人ホームに入る人々が求めている、「歳をとって、ちょっと不安になった日常生活のあれこれをサポートしてほしい」という、ごく自然な要望さえ満たされない実態も浮き彫りになった。

調査員「ホームページに買い物代行もOKとありましたけど、気づいたらトイレットペーパーが切れそうだったりした場合も随時、買い物をお願いできますか」

職員「あー、そういう特別なことはやってないんですよ。介護認定を受けている人で、ケアプランに家事援助が盛り込まれている人だけが対象です」

 では介護認定を受けていない元気な高齢者が思わぬ怪我をしたときなどは、トイレットペーパーなしで過ごせというのか。これでは尊厳も何もない。

 栃木県の新型老人ホームに入居する80代の女性も本誌の取材にこう語った。

「私は腰が悪いのですが、入居して初めての梅雨のころ、体調がすぐれなくて、介護スタッフに買い物に付き合ってと頼んだんです。そしたら、『今から行ったらケアプランに定められた時間を超過するので行けません』とあっさり断られた。

 買い物代行サービスでも、『今日、明日は忙しいので明後日行きます』『あなた一人の買い物だけをしているんじゃない』と行ってくれないこともある。ここでは、食事の配達を頼んでいない人は、ちょっと調子が悪くなったら食べ物も手に入らないってことですよ」

 元気なうちには想像もつかないような、日常のなんでもない行為が、歳を取ると難しくなり、適切な手助けがなければ、健康的で清潔な当たり前の生活さえ奪われてしまう。

■死んだら知らんぷり

 前出の表に示したように、今回の100件調査では、この例のように緊急時の時間外買い物代行など、臨機応変な対応をしてくれない物件が66件。全体の約3分の2にのぼった。

 こんなはずではなかったと後悔しないために、前出の山崎氏は、入居前には必ず契約書を精査し、事前見学の際に具体的な質問をしてチェックを重ねてほしいと話す。また前出のリスクコンサルタント・山田氏は、とくに急な病気への対応力を確認するべきだと話す。

「まだ比較的元気なうちに物件探しをすると見落としがちなのが、自分も年ごとに医療依存度が高くなっていくことです。例えば、糖尿病の持病がある場合、将来人工透析が必要になる可能性がある。ならば入居する物件は人工透析のできるクリニックと提携しているか、あるいは近所に透析できるお医者さんがいるか。

 本当にしっかりしたところでは、総合病院の地域連携室と組んで住宅の敷地内に診療所や訪問看護ステーションを設置し、21名の看護師が常勤しているようなところもあります」

 だが現状では、医師や看護師が常駐するような物件は「まだまだ非常に少ない」(前出・浅川氏)という。ほとんどの物件では、持病の悪化など万一の事態になっても、物件内では助けを得られない可能性が高い。

 最後にもうひとつ、覆面調査で明らかになった重要な実態をご紹介しよう。それは、入居者の「死」にまつわるサービスだ。近年、介護施設での「看取り」というキーワードがブームとなり、老人ホーム業界でも「うちの施設は看取りも行います」「最期のときまで安心です」などと謳う業者が増えている。だが、次の会話を見てほしい。

調査員「あの、万が一、母がそちらで亡くなった場合なんですが……」

職員「(怪訝そうに)は?」

調査員「いえ、うちは遠いので、万が一、そちらで亡くなったり病院で亡くなったら、葬儀社の手配はしてくださるんでしょうか」

職員「はあ。まあ、ご近所に葬儀社さんはありますけどね。そこまではちょっと、わかりませんね」

 なんと、死後の段取りをサポートしてくれるという物件は、今回の調査では皆無。

 兵庫県の新型老人ホームに80代の母親が入居していた、東京都在住の60代の男性は、こんな悲惨な経験を本誌に語った。

「母はあの住宅に入るとき、『ここでは〈看取り〉言うて、ぜーんぶ手配してくれるんやで。あんたには何も迷惑かけんで逝けるから安心やわ』と笑っていました。

 入居から1年半後、母は急な発作を起こして搬送先の病院で亡くなりました。平日の深夜のことで翌日は仕事の予定もあり、私はすぐに行けないと介護職員に相談したのですが、『いつ引き取りに来てもらえます? 亡くなった後のことはサービスの範囲外ですから』とけんもほろろ。

 結局、私が翌日昼の飛行機で駆けつけるまで、母は病院に放置された。人生の最期をそんな心ない住処で過ごさせたと思うと、後悔してもし切れません……」

 介護予算を圧縮したい国は、入居者の自立性が高いこの新型老人ホームを庶民の「終の住処」にしようと、補助金で事業者をたきつけて新設を進めている。

 だが、その多くはこれほど悲惨な実態なのだ。まだ老後を考えるには早いと思っている人も、自分の最期について、すぐにも真剣に考えはじめるべきだろう。

 体調を崩し、必要に迫られて入居してからでは、すべては遅すぎるのだ。

「週刊現代」2013年8月31日号より


 

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コメント
 
01. 2013年9月07日 21:15:52 : niiL5nr8dQ
【P7-13】
総論
これからの団塊世代の社会参加
株式会社博報堂新しい大人文化研究所 所長
本誌編集委員
阪本節郎
 団塊世代は現在60代前半となっている。この「団塊の世代の社会参加」を考えるときに、団塊世代がリタイアを始めた2007(平成19)年から語られてきた団塊世代への期待と失望、さらに団塊世代が起こしたこれまでの社会変化を振り返ってみたい。
 団塊世代の就業ビジネスで成功しているのは、小規模事業体のための経営アドバイザーだともいわれる。「高齢者の社会参加」が彼らからまた変わる可能性がある。なぜそういえるのか、それを探るところからはじめたい。
1 団塊の世代のインパクト
 「団塊消費は起こらなかった」。これが、しばしばマスコミや有識者あるいは企業関係者の間で、団塊の世代について語られることである。それは、団塊の世代が定年退職をはじめた2007年の直前に喧伝(けんでん)された団塊消費が、実際には起こらなかったことによる。
 端的にその答をいえば、「“送り手が思うようには”消費してくれなかった」のである。団塊の世代論はたくさんの人が語っているが、その多くは「自分たちが想い描く団塊の世代像」があって、実情がそうではないということに悲観し、この世代は駄目だと結論づけたりする。もっと冷静に見ていかなければ、この世代は見えてこない。
 団塊の世代とは、1947(昭和22)年から1949年の3年間に生まれた人たちでこれを真正団塊世代といい、約700万人である。さらに1951年生まれまでの5年間を広義の団塊世代といい、約1000万人となる。現在61〜66歳である。ちなみに、2012年の出生数(年間)が103万3000人(厚生労働省「人口動態統計」)なので、単純計算で現在の新生児の倍以上となる。
 この数の大きさがこれまで社会にインパクトを与えてきた。1960年代後半、彼らが若者のときにロックやポップスなどの若者音楽が中心になり、ジーンズとミニスカート、男子の長髪が社会風俗の全体的な基調となった。それまでまったくといってよいほどなかったものが一気に当たり前の風景となり、それが今日まで続いている。これを「団塊ファーストウェーブ」と呼ぶ。
 次は1980年前後、家族を持ってニューファミリーと呼ばれた頃、ワゴン車が乗用車として初めて本格的に登場した。これもいまや当たり前となっている。これが「団塊セカンドウェーブ」である。
 そして、現在リタイアが始まって5年経ち、彼らは60代の前半となった。2回の波に共通しているのは「私生活」で社会を変革したということである。彼らは公的な生活というよりも「私生活」において、また組織よりも「“個人”とその集まりとしての集団」で変えてきた。リタイアということは基本的に「私生活」と「個人」中心の生活に入るわけで、それがこれからの「団塊世代の社会参加」を考える際にもきわめて重要なカギになる。
2 動き始めた団塊世代
 社会参加に入る前に、企業活動においても売上収益の源泉となる“消費”が既に動き始めているので、振り返ってみたい。
 たしかに団塊の世代の消費は2007年に送り手が期待したようには爆発しなかった。それはなぜかというと、まずは彼らの内的要因が考えられる。彼らは定年退職したのであって、退職金は得たものの基本的に給与は入らなくなる。雇用延長されたとしても、少なくともそれまで通りには入らない。従って、まずは貯蓄して、定年後の生活の様子をみるということになる。当然のことである。最初から爆発はあり得なかった。これが2007年である。そして、翌2008年にリーマンショックが起こった。これがトドメを刺した。団塊男性は、リタイアしたら株でひと儲けして、奥さんを連れてビジネスクラスでヨーロッパに旅行に行こうと思っていたら、とてもそういう状況ではなくなったのである。
 定年後の生活がようやく見えてきた2010年頃から徐々に消費が顕在化してきた。どこにそれがあらわれたかといえば、まず「国内旅行」、続いて「海外旅行」である(図表1)。それは日々の新聞を見ればよくわかる。夕刊紙と土日の新聞の広告欄は、国内旅行・海外旅行の広告が満載されている。しかもこれらは直接購入申込みを受ける広告であり、日々それを見て申込みをする人たちが溢れるようにいるので、成立している。
 退職金の使い道の3位は「リフォーム・建て替え」であり、4位は「普段の料理・食事」、そして6位は「ドライブ・クルマ」であり、生活全般にわたって消費がなされている。
 実際、われわれが2007年に実施した調査でも、定年直後は半分を貯金に回すが、定年後の生活全体では、投資運用と消費をふやすと答えていた(図表2)。
 いままでの高齢者というと「貯蓄」がすべてだった。そこに「投資運用」が加わるのが団塊世代の特徴だ。これが大きな動きになっているのが現在のアベノミクスなのである。アベノミクスは個人投資家の動きがドライブをかけたといわれるが、数の少ない富裕層だけではそうはならない。実際、2013年の各企業の株主総会は、分散開催されたことで団塊世代の個人投資家が多く出席できたと、マスコミでも報道されている。「投資で稼いで消費」するのが団塊世代である。
 実は、こうした傾向は、現在の40代バブル世代で頂点に達する。バブル世代は「貯蓄よりも消費」というところにまで行き着く。その意味で「投資で稼いで消費」という傾向は団塊世代だけのものではなく、今後の定年世代は基本的にそうなる可能性が高い。いずれにせよ、団塊世代がその先駆けなのである。
3 団塊世代から起こる転換
 これまで「高齢者=貯蓄=塩漬け=非消費」が一般的な見方であり、実際、これが日本の個人資産1400兆円を形成してきた。団塊世代の「投資で稼いで消費」は、これを大きく転換する。2014年1月にスタート予定のNISA(小額投資非課税制度)がここに拍車をかける可能性がある。
 同様のことが“社会参加”をはじめ多くの面でも起こる。最大の変化は、「弱者・受益者としての高齢者」からの転換である。団塊世代を含むいまの60代は、「ジーンズの似合う50代以上でありたい」と思い、「50歳を過ぎたら年をとらない」自分であり、「何歳になっても若々しい気持ちを持ち続けたい」と思っている。さらに、いまの60代の7割は「何歳になっても若々しい見た目でありたい」と思う、かつてない60代なのである(図表3)。つまり、「生活現役意識」がきわめて高く、「会社はリタイアしても社会はリタイアしない“生涯現役生活者”」である。「弱者・受益者としての高齢者」から「生涯現役生活者」への転換だ。それが「高齢者の社会参加」にも変化を起こす。端的にいえば「支えられる側」から「支える側」への転換だ。
4 団塊世代の社会参加
 こうした転換が「社会参加」にどう現れるのか。とりわけ2013年は、2007年のリタイア組が65歳に達し始め、雇用延長をしたとしてもその期間が終了し本格的なリタイアに入るといわれる。彼らがどうしていくのかは今後の社会全体にも大きく関わってくる。
 まずは、日常生活レベルの「社会参加」から考え、次に彼らの仕事へとみていきたい。
(1)自分にできる社会参加
 団塊世代の最大多数が思うのは「自分なりにできる社会参加」だと思われる。「環境や福祉などの『社会的なテーマに有効な商品やサービスを日常生活の中に取り入れることが満足に繋がる』時代に」という質問に共感する割合が、60代で64%に達する(図表4)。
 その結果、環境問題への貢献を考えて、クルマであれば「ハイブリッド車」にしたいと思い、リフォームをするのであれば、住まいをユニバーサルデザイン仕様にしつつ同時に「太陽光パネル」を設置しようかとなる。
 日常生活においても、自分にできることで何らかのかたちで社会に参加し貢献したい。これはいままでの弱者・受益者としての高齢者の転換だ。
(2)仕事・社会貢献活動・趣味
@これまでの仕事を活かした活動
 「社会参加」で団塊世代もまたその次の世代も最も意向が高いのは「これまでの仕事を活かした活動」である。雇用延長も一区切りになるときに、何をしていくのか。
 まずは、そのなかでもさらに雇用延長をして同じ会社で仕事を続ける人たちがいる。その人たちは70歳定年、さらには100歳の現役サラリーマンになっていく。これは大企業よりもすでに中小企業で進んでいる。むしろ、中小企業が先駆けになる可能性が高い。
 では、雇用延長が終わり、完全リタイアした人たちはどうか。例えば、NPO活動に団塊男性が入ってよくいわれるのが、会社での役職を披露して嫌われるという話である。そうではなく、自分が身に付けたものをどう活かすのか。例えば、NPOでは経理の専門家がいないことも多く、そこに会社の経理の経験が活きるという話を聞く。実際、あるNPOが経理も含む仕事のキャリアをNPO活動に活かすための研修セミナーを開いたら、団塊世代を中心に募集人数を大きく上回る応募があったという。
 また、国内のみならず海外での活動もあり、JICA(国際協力機構)の「シニア海外ボランティア」も具体的な技術・職種に対する募集を行い、団塊世代はじめ多くの人たちが参加している。地方自治体でも、既にこうしたキャリアを活かした地域活動の推進役などの公募がなされている。東京都港区などで、地域の生涯学習センターのまとめ役になっている例がある(26頁参照)。
 企業がリタイア人材を活用・採用する際にはどうしたらよいか。技術系では国家資格が有用だといわれるが、営業系・総務系の場合は専任部長などの処遇をしつつ、パートタイム報酬でその経験と知恵を比較的ローコストで得る方法もあろう。名刺のなくなった団塊世代への名刺付与はひとつのインセンティブだ。
 また、団塊世代からの特徴として、個人会社を設立したり、職種によってはフリーになったりする人も登場している。さらには、そういう人たちが名刺を持って仕事をするための場としての会社をつくるという動きもある。一般にこうした仕事は、現役時に比べ低報酬にならざるを得ないが、年金が給付されるからこそ新たな模索もできる。ここから会社と個人の新しい関係、新しい仕事の仕方が生まれることが期待される。それが地域の社会課題を解決するソーシャルビジネスであればさらにその意義は大きい。団塊世代も定年後は報酬額の多寡より生き甲斐という面もある。
A世話役・先生役・相談役
 団塊世代がさらに期待されるのは、人生の経験を活かした活動だ。ややもすると定年後の団塊の世代に自助努力で頑張る方法を提供してあげたり、できる仕事を提供してあげたりというような発想になりがちだが、その発想そのものが、社会的な活躍の場を取り上げている面はないだろうか。
 例えば、団塊定年時に自治体で、「オトパ」といわれる「お父さん地域へお帰りなさいパーティ」をやったが、団塊世代がなかなか集まらなかったという話がある。忙しくて地域に縁を持てなかったのは事実だが、だからといって、残念な人に場を与えましょうというような発想では、当事者の意欲は湧きがたい。
 もっと積極的にその経験や知恵や意欲を活かす試みが必要と思われる。大きくは、「世話役」・「先生役」・「相談役」である。
 「世話役」に関しては、地域のボランティアの世話役であったり、子どものキャンプの世話役のようなアウトドアライフの世話役であったり、さらには地元の観光案内人だ。既に観光客の多い京都や、より観光客を呼び込もうという南アルプス市など、全国各地で団塊世代が活躍をはじめている。四国には、市役所を定年退職目前にして一念発起し、子どもたちに夢を与えるべく、サッカーのクラブチームを立ち上げJFL(日本フットボールリーグ)に昇格させた団塊世代もいる。こうなると、世話役を超えた起業だが、いい意味の熱さとバイタリティも団塊ならではだ。
 「先生役」については、PCインストラクターが挙げられる。富士通のSITAは、エルダー世代のためのPCインストラクター制度だ。同世代のインストラクターは「どこがわからないかよくわかる」といわれる。また、趣味も上達してくると先生の域に達する。さらに、文化芸術のガイド役や地域スポーツのトレーナーやインストラクターもある。
 「相談役」に関しては、直接仕事に従事するわけではないが、経験を活かすということだ。例えば、同じ経理でも自分が直接担当するのではなく、相談に乗る、アドバイスをする。実際、団塊世代への求人ビジネスで比較的好調なのは経営アドバイザーである。経験を活かし、あるいは人脈を活かして販売・管理業務・技術などで中小企業の経営者のアドバイザーになる。金融機関で、若い支店長にリタイアしたベテランが同行して信用を得たという話もある。経営者や若い管理職、若手の支え役として期待されるのである。
B趣味を活かした活動
 そして何といっても会社を卒業したら、趣味である。大人バンド、バイク、ゴルフ、歴史、美術など挙げればきりがない。団塊世代からはこれを社会的に活かすという気持ちがある。例えば、大人バンドで地域活性化の盛り上げのイベントをやったり、ゴルフ場をクリーンにするためのボランティアをしたりというようなことである。
 その趣味と仕事の経験との掛け合わせもあ
る。音楽の趣味と長年の営業経験とを掛け合わせて、定年後、小規模音響メーカーの営業担当として再就職し活躍している人もいる。団塊世代には営業で先頭に立ってきた人も多い。企業にとっても、リタイア団塊人材の経験と趣味の掛け合わせは意外に有効かもしれない。
 いったんリタイアしたということは、肩の力が抜けている。それがいい方に作用すると、経験が活きてくるし、若い人との協調もできる。
(3)介護予防と共助
 介護において重い問題として語られてきたのが、妻による義父義母の介護だ。ところが最近の調査でこの割合が減ったとされる。これは団塊世代の妻が、それを所与のものとせずに夫と相談し、その結果、介護付き有料老人ホームの活用などが進んでいるからだとみられる。
 このように介護についても団塊世代から変化が現れる。介護予防もそのひとつだろう。団塊世代からは、60代のうちから程度の差はあれ意識的に介護予防に取り組む。そのため、懸念されているような、団塊世代の人口比で単純に要介護人口が増大するようなことには、ならない可能性がある。
 さらに、地域の介護NPOは団塊女性によって担われてきたことが多い。つまり、団塊の世代は介護に関しては、元々支える側であった。今後、団塊世代からは「共助」が進む可能性がある。来年から、地域で介護サービスと高齢者を結ぶ「介護コーディネーター」の募集が、各自治体ごとに開始される予定だ。厚生労働省は団塊世代をその担い手として期待している。まさに介護に関して、団塊世代から「支える側」への転換が始まろうとしている。
(4)若い世代とのクロスジェネレーション
 博報堂の調査では、「大人世代と若者世代が交流・協力する時代に」への共感が68%、「大人世代が応援することで若者世代からも新しい文化が生まれる時代に」への共感が62%あった(図表5)。
 雇用延長でも教育担当として若者への技術継
承がなされているが、それのみならず、フリー
ター・ニートの就業相談役、若者の起業支援、
団塊女性による若い母親の子育て支援などが想
定される。すでにこうした試みは始まっている。
 そのときに重要なことは、「カウンセリング」のスキルだ。単に一方的に教えたり、指導しようとするのではなく、若い世代の意欲を育て、悩みを解決することである。これまで述べてきたことすべてに共通することだが、いままでの技術や蓄積を多少違った領域で活かすためには、それなりのスキルや準備も必要になる。
 いずれにせよ、若い世代のサポートは重要だ。雇用延長でつねに問題とされる「高年齢層が若者の雇用を奪う」という図式を変えることになるからである。自社内の技術継承だけでなく、業種が同じか近ければ、リタイアした団塊営業マンを若い営業のサポートとして、新たに人材活用することも考えられよう。
5 日本は世界をリードする
 P.F.ドラッカー教授は天寿を全うされる前に、「日本はもう一度世界をリードできる」といわれ、「それは日本に定年制があるからだ」と意外なことを指摘された。その理由は、日本が世界に先駆けて高齢化が進展していくからであり、定年してそれまでの蓄積も活かしながら社会的なことに従事する人たちがたくさん出てきたら、間違いなく世界をリードできるといわれた。まさにそのことが、いま団塊の世代によって全国でさまざまな形で現れようとしている。
 いま日本では、高齢社会が進展し年金賦課方式で少ない若者に負担がのしかかるのは問題だという、問題論議ばかりがなされているようにみえる。しかし、ドラッカー教授は同じことを別の角度からみて、日本には大きな機会があると述べられたのである。
 まさに団塊世代はこのドラッカー教授のいわれたことを担う世代であり、その可能性を大きく秘めている。それはアベノミクスで湧く日本の次の大きな機会だといえるのである。
執筆者プロフィール
阪本節郎(さかもとせつお)。早稲田大学商学部卒業後、(株)博報堂に入社。プロモーション企画実務を経て、プロモーション数量管理モデル・対流通プログラムなどの研究開発に従事。2000年、同社でエルダービジネス推進室の開設を主導し、2011年には、同推進室を発展させた「新しい大人文化研究所」を設立して所長に就任。現在、本誌編集委員。著書に『巨大市場「エルダー」の誕生』(プレジデント社、共著)。『団塊サードウェーブ』(弘文堂)、『団塊の楽園』(同、共著)などがある。
図表1 退職金をどのように消費したか(団塊世代)
(%)
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
国内旅行
海外旅行
リフォーム・建て替え
普段の料理・食事
株・投資信託など金融商品の購入
ドライブ・クルマ
外食・グルメ
病院・医療
出典:博報堂 新しい大人文化研究所調査(2011年9月)
図表2 退職金の使い方
◎支給直後の退職金の使い方
貯蓄
投資運用
消費
ローンの返済
0%
20%
40%
60%
80%
100
58〜60歳計(N=314)
団塊世代計
52.6
16.5
15.4
15.5
男性58〜60 歳計(N=179)
男性団塊世代計
47.6
19.3
15.8
17.2
女性58〜60 歳計(N=135)
女性団塊世代計
59.3
12.7
14.9
13.2
( )人
◎定年後生活全体での退職金の使い方
貯蓄
投資運用
消費
ローンの返済
0%
20%
40%
60%
80%
100
58〜60歳計(N=314)
団塊世代計
39.8
19.2
33.3
7.7
男性58〜60歳計(N=179)
男性団塊世代計
37.2
21.4
32.9
8.5
女性58〜60歳計(N=135)
女性団塊世代計
43.2
16.3
33.8
6.7
( )人
出典:博報堂 新しい大人文化研究所調査(2007年3月)
図表3
40〜60代
60代
50代になってもジーンズが似合うカッコイイ大人でいたい(大人になりたい)
64.1%
55.3%
50代を過ぎたら、もう年をとらない、という自分でありたい(になりたい)
61.4%
53.6%
何歳になっても若々しく、前向きな意識を保ち続けたい
82.7%
83.1%
何歳になっても若々しい見た目でありたい
72.6%
70.6%
出典:博報堂 新しい大人文化研究所調査(2011年9月)
図表4 環境や福祉などの「社会的なテーマに有効な商品やサービスを日常生活の中に取り入れることが満足に繋がる」時代に
共感する
やや共感する
どちらともいえない
あまり共感しない
共感しない
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
40〜60代全体(N=3708)
12.7
47.4
34.5
4.4
0.9
40〜60代男性(N=1854)
11.3
45.1
36.6
5.7
1.3
40〜60代女性(N=1854)
14.1
49.7
32.4
3.2
0.5
40代(N=1236)
11.2
45.3
36.7
5.1
1.6
50代(N=1236)
14.1
45.6
34.8
4.9
0.6
60代(N=1236)
12.9
51.3
32.0
3.4
0.5
出典:博報堂 新しい大人文化研究所調査(2011年9月)
図表5 40−60代が共感する時代のとらえ方
大人世代と若者世代がお互いのよさを認め合いながら、交流・協力し、新しい文化や潮流を創る時代に
68.4%
大人世代が若者世代を応援することで、若者世代からも新しく社会的にも意義のある文化や潮流が生まれる時代に
61.7%
出典:博報堂 新しい大人文化研究所調査(2011年9月)

02. 2013年9月07日 21:16:06 : niiL5nr8dQ
【P44-45】
どうなっている?
海外の高齢者雇用事情
第5回定年制と引退年齢(2)−仕事からの「引退」−
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 人材育成研究部門 副主任研究員 藤本 真
1 何歳まで働いているのか
 前回は、一定の年齢に到達した労働者に引退を促す「定年」という制度が、世界各地でどのように運用されているのかを見てきた。ただ、定年はあくまでも企業などの組織がめいめいで設定するものであり、ある組織の定年に到達したことが、ただちにそこで働く労働者の引退につながるとはもちろんいえない。では、世界各地の労働者は大体どのくらいの年齢まで働いているのだろうか。
 OECD(経済協力開発機構)では、毎年加盟各国における「平均実効引退年齢(the average effective retirement age)」を算出している。「平均実効引退年齢」とは、各国の40歳以上80歳未満の就業者のうち、対象期間の間に引退した人々の年齢を、年齢別の人口構成により加重平均したものである。つまりこの平均実効引退年齢が高いと、より高齢で引退する人の比重が相対的に大きく、逆に低いと、より若く引退する人の比重が大きいこととなる。表には、男女それぞれについて、平均実効引退年齢の高い国から順に上から下へと並べて示している。男女ともにトップレベルであるのは、メキシコ(男性71・5歳、女性70・1歳、以下男女の順で平均実効引退年齢を記載)、韓国(71・4歳、69・9歳)、日本(69・3歳、66・7歳)といった国々である。
 前回定年が禁じられている国々として紹介した各国の状況をみると、米国は男性が65・2歳、女性が64・8歳と、OECD加盟諸国平均(63・9歳、62・8歳)と比べてやや高い。ニュージーランド(65・9歳、65・7歳)は男女とも米国とほぼ同水準、オーストラリア(65・2歳、62・9歳)も男性の平均実効引退年齢はこれら2国と変わらないものの、女性の方は2〜3歳低い。他方、カナダ(63・8歳、62・5歳)や英国(63・6歳、62・3歳)は、米国、オーストラリア、ニュージーランドに比べて、男性の平均実効引退年齢がやや低く、スペイン(62・3歳、63・4歳)はさらに低くなっている。このように定年制が禁じられている国々の間でも引退の時期には差があり、また定年制が普及している国々と比べて、必ずしも引退年齢が高くなる傾向にあるわけではない。
 ヨーロッパ諸国の中では、スウェーデン(66・3歳、64・4歳)、ポルトガル(66・2歳、65・1歳)、スイス(65・5歳、64・1歳)、ノルウェー(64・2歳、64・3歳)といった国々の平均実効引退年齢が相対的に高い。対してドイツ(61・9歳、61・4歳)、イタリア(60・8歳、59・2歳)、オーストリア(60・4歳、58・4歳)、ベルギー(59・6歳、59・0歳)、フランス(59・1歳、59・5歳)などでは、平均実効引退年齢が60歳前後と低く、OECD加盟諸国平均と比べても差が目立つ。これらの国々ではより早期での引退が広がっており、それゆえにActive Ageing(活力ある高齢化)の実現が、より重要な社会的課題として意識されていることがうかがえる。
2 年金受給年齢との関係
 表には平均実効引退年齢と併せて、各国の「公式引退年齢(the official retirement age)」を挙げている。「公式引退年齢」とは、それぞれの国において公的老齢年金を満額受給することができる最低年齢を意味する。
 平均実効引退年齢と見比べてみると、定年が禁止されている国々の平均実効引退年齢は、公式引退年齢とほぼ同じか、あまり差がない。例えば、米国、オーストラリア、ニュージーランドの男性の公式引退年齢は65または66歳であり、平均実効引退年齢は上述したようにいずれの国も65歳台である。定年が認められていない国々においては、年金受給の状況が、引退を決定するにあたっての重要な要因となっていることがわかる。
 一方、年金の満額受給年齢に定年を設定する慣行が広がっているヨーロッパの国々では、先に見てきた平均実効引退年齢が公式引退年齢を下回ることが多く、しかもかなりの開きが見られる国もある。男性の平均実効引退年齢は、ドイツで3・1歳、イタリアで4・2歳、オーストリアで4・6歳、ベルギーで5・4歳、それぞれ公式引退年齢より低くなっている。ヨーロッパ諸国における引退は現状、年金の満額受給やそれに合わせる形で設定されていることが多い定年制を、あまり意識せずに行われているといえよう(もっともベルギーやフランスでは、60 歳に達した際に、40年の保険料納付期間を完了していれば年金を満額受給できるために、他国よりも平均実効引退年齢が低くなっていると推測される)。
 多くのヨーロッパ諸国とは逆の状況にあるのが、日本、韓国、メキシコといった平均実効引退年齢がトップレベルの国々である。これらの国々に共通しているのは、平均実効引退年齢が公式引退年齢をかなり上回っているという点である。男性で見ると、日本で5・3歳、メキシコで6・5歳、韓国では11・4歳も平均実効引退年齢の方が高い。こうした状況の背景には、よくいわれるような高齢者の高い就労意欲や、あるいは年金収入だけでは経済生活を維持しきれないといった事態があるとみられる。
表 OECD諸国の平均実効引退年齢と公式引退年齢
男性
女性
平均実効引退年齢(2006〜2011年)
公式引退年齢(2010年)
平均実効引退年齢(2006〜2011年)
公式引退年齢(2010年)
メキシコ
71.5
65
メキシコ
70.1
65
韓国
71.4
60
韓国
69.9
60
日本
69.3
64
日本
66.7
62
スウェーデン
66.3
65
ニュージーランド
65.7
65
ポルトガル
66.2
65
ポルトガル
65.1
65
ニュージーランド
65.9
65
米国
64.8
66
スイス
65.5
65
スウェーデン
64.4
65
米国
65.2
66
ノルウェー
64.3
67
オーストラリア
65.2
65
スイス
64.1
64
ノルウェー
64.2
67
アイルランド
63.5
66
カナダ
63.8
65
スペイン
63.4
65
英国
63.6
65
オーストラリア
62.9
64
オランダ
63.6
65
カナダ
62.5
65
デンマーク
63.5
65
英国
62.3
60.666
アイルランド
63.3
66
オランダ
62.0
65
スペイン
62.3
65
フィンランド
62.0
65
ドイツ
61.9
65
ドイツ
61.4
65
フィンランド
61.8
65
デンマーク
61.4
65
イタリア
60.8
65
フランス
59.5
60
オーストリア
60.4
65
イタリア
59.2
60
ハンガリー
60.4
63
ベルギー
59.0
65
ベルギー
59.6
65
ハンガリー
58.9
63
フランス
59.1
60
オーストリア
58.4
60
OECD加盟諸国平均
63.9
64.4
OECD加盟諸国平均
62.8
63.1

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