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(けいざい深話)黒田日銀の半年:1 トラウマ、国債急落 異例の増税要請 (朝日新聞) 
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/660.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 9 月 26 日 15:21:01: igsppGRN/E9PQ
 

(けいざい深話)黒田日銀の半年:1 トラウマ、国債急落 異例の増税要請
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309240571.html
2013年9月25日 朝日新聞


 ◇けいざいSHINWA

 「私は間違ったことは何も言っていない。財政の規律は絶対に必要だ」

 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は、日銀幹部の一人にこう語気を強めた。

 黒田が首相官邸で、消費増税を強く促す発言をしたことに、日銀内で懸念する意見が出ていることへの反論だった。9月初め、日本橋本石町の日銀本店8階の総裁室での出来事だ。

 安倍政権は8月下旬、60人の有識者を官邸に集め、来春の消費税増税についての意見を聴く「集中点検会合」を開いた。

 司会役の甘利明経済再生相、麻生太郎副総理兼財務相と並び、黒田は意見を聴取する側だった。

 ところが、その席で黒田は、自分の意見を述べた。

 「消費税率の引き上げを先送りした場合、国債に対する信認の影響を見通すことは難しい。万が一そういうこと(信認を失う事態)が起こった場合の対応は限られる」

 消費増税を延期すれば、金融市場は「日本政府には財政再建の意思がない。日本は借金を返さなくなるかもしれない」とみて国債を売り始め、国債価格が暴落するおそれがある――という意味だ。明らかな警告であり、政府は予定通り消費増税を行うべきだという強い要請だった。

 官邸の非公開の場での黒田発言を伝え聞いた日銀幹部はざわついた。金融政策を独立して担当する日銀の総裁が、政府の担当分野である財政運営に口出しするのは極めて異例だからだ。

 日銀スタッフを慌てさせても、黒田は財政再建にこだわる。財務省出身という「出自」ばかりが理由ではない。黒田の脳裏にあるのは、半年前の就任直後に味わった「国債価格の急落」というトラウマだった。

 ■大手銀へ「圧力」

 今春、大手銀行首脳のもとへ、日本銀行幹部から一本の電話が入った。

 「抜け駆けはしないでほしい。長期的な観点から、国債を売らないでほしい」

 金融市場で、国債価格が急落していた。大手銀行が国債を売り始めると、市場に疑心暗鬼が広がった。売りが売りをよぶ展開となり、国債価格の急落(長期金利は急上昇)が止まらない。4月初めには0・5%前後だった長期金利は、5月23日には一時、1・0%に達した。

 「思った通り金利が下がらず正直あせった」

 日銀幹部はこう振り返る。

 日銀は、国債を売買する市場参加者を呼んで、意見を聴いた。「日銀が大規模緩和で、国債を一度に買う量が多すぎ、不安心理をあおっている」ときくと、1回当たりの購入量を減らし、購入回数を増やす対策をとった。金融機関向けの大規模な低利融資も実行した。それでも金利上昇は続いた。最後の手段が、大手行首脳への事実上の「圧力」だった。

 6月以降、長期金利はようやく落ち着き始めた。

 ただ、そもそも金融機関による国債投げ売りのきっかけになった「日銀による過去最大の金融緩和」はいまも変わっていない。

 金利が上昇するリスクはいまもくすぶり続けている。

 そんななかで、日銀が特におそれるのは、自分たちにコントロールできない「外部要因」で、国債価格が下落(金利は上昇)することだ。日本の財政への信認が失われて、国債が売られる――という事態は最大のリスクといっていい。黒田は日銀スタッフにこう語った。「いったん国債の信認がなくなれば、いまやっている日銀の買い入れは意味がなくなる。そうなれば2%の物価上昇目標の達成もデフレ脱却もできない」

 ■さらに踏み込む

 それだけに、黒田は8月下旬の集中点検会合で踏み込んだ。

 「消費増税で景気が腰折れするような状況になったら、日銀として、必要な施策を行っていく」

 追加緩和の可能性にまで触れ、消費増税の決断を促したのだ。

 ある日銀関係者は、消費増税の重要性についての認識は共有しながらも、先走る黒田をこう危惧する。「黒田総裁の発言は明らかに踏み込みすぎ。あそこまでいってしまえば、逆に政府に金融政策の手段まで口を挟ませる口実になりかねない」=敬称略(高田寛)

      ◇

 黒田総裁が3月20日に日銀総裁に就任して半年。大規模緩和を決めた日銀でいま何が起こっているのか。


 

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コメント
 
01. 2013年9月26日 16:05:36 : niiL5nr8dQ

2013年 9月 25日 09:30 JST
日銀短観、3年ぶりの水準へ改善か
記事

 【東京】複数のエコノミストによると、日本銀行が来週10月1日に発表する企業短期経済観測調査(短観)は、企業心理の3年ぶり高水準への改善を示す可能性が高く、安倍晋三首相が来年4月に計画している消費増税のさらなる後押しになるとみられている。

 短観では、業況判断だけでなく売上・収益計画や設備投資計画、雇用についての見通しも調査項目となっている。今回の短観は、安倍首相が来年4月に消費税率を現行の5%から8 …


 

 
日本株反発、早期の法人税引き下げ検討報道−日経平均上げ100円超す 

  9月26日(ブルームバーグ):日本株は反発。日経平均株価の上げ幅が100円を超えた。消費税増税に伴う経済対策として、法人税引き下げを早期に検討すると一部報道で伝わったことをきっかけに、国内政策への期待が高まっている。
午後2時23分時点の日経平均株価 は前日比102円19銭(0.7%)高の1万4722円72銭、TOPIX は同1.93ポイント(0.2%)高の1213.08。東証1部33業種では海運、ゴム製品、保険、パルプ・紙、金属製品などが値上がり率上位に並ぶ。
米国景気の先行き不透明感、配当権利落ちの影響から、安く始まったきょうの日経平均は午前9時半すぎに下げ幅を210円まで拡げた。しかし、法人税に絡む報道が市場に流れた午前の取引後半からは買い圧力が強まった。日本株は先物主導で急速に下げ渋り、日経平均は午前をプラス転換して終えていた。TOPIXは午後に入りプラスに転じた。
共同通信は、政府が、消費税増税に伴う経済対策で、焦点となっている法人税の実効税率引き下げについて「早急に検討を開始する」と明記する方向で調整に入ったことが分かった、と報じた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 河野敏 skawano1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net
更新日時: 2013/09/26 14:42 JST


 

円全面安、株反発で対ドル一時99円台-法人減税やGPIF報道

  9月26日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では円が全面安。対ドルでは一時、2日ぶりの1ドル=99円台に乗せた。米国の債務上限問題に対する懸念を背景に1週間ぶりの高値を付けた後、法人減税や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用関連の報道を受けて日本株が反発したのに伴い、円売りが優勢となった。
ドル・円相場は一時99円11銭までドル買い・円売りが進み、午後3時20分現在、98円93銭前後。日本株が午前の取引で下落幅を拡大した場面では、19日以来のドル安・円高水準となる98円27銭を付けていた。ユーロ・円相場は一時1ユーロ=133円94銭まで円が売られ、同時刻現在は133円75銭前後で推移している。ブルームバーグ・データによると、円は主要16通貨全てに対して前日終値比で下落している。
FXプライムの上田眞理人専務取締役は、「日本株がプラスに転じたので円売りになっている。円相場と株との逆相関が強くなっている」と説明。法人減税については「企業減税した場合、企業がそのままストックに回して給料を引き上げないと消費に回らないので懸念事項」と指摘していた。
消費税増税に伴う政府の経済対策で、焦点となっている法人税の実効税率引き下げに関して「早急に検討を開始する」と明記する方向で調整に入ったことを26日、政府関係者が明らかにしたと共同通信が報じた。
また、政府の「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」(座長・伊藤隆敏東大大学院教授)がこの日開かれ、中間論点の整理に向けた議論が行われた。伊藤座長は午後6時をめどに記者会見する。
この日の東京株式相場は反発し、TOPIX が前日比0.8%高の1220.49、日経平均株価 も同1.2%高の1万4799円12銭で終了した。午前の取引ではそれぞれ1.6%安、1.4%安まで下げる場面があった。
米債務上限問題
一方、米国の暫定予算案をめぐっては、上下両院は2010年成立の医療保険制度改革法に関連する文言について意見が対立。米上院は25日、暫定予算案の審議を進めて採決に持ち込むための動議を可決した。共和党のテッド・クルズ議員は法案通過阻止を狙い、21時間にわたり演説を行っていた。上院は賛成100、反対0で動議を可決した。
ルー米財務長官は議会に対し、債務上限の突破を回避するために講じている緊急措置が「10月17日までに尽きる」と伝えた。
ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.35ドル前半でのもみ合いが続いた。同時刻現在は1.3520ドル前後と前日終値(1.3526ドル)付近で推移している。
あおぞら銀行市場商品部の諸我晃次長は、「米債務問題は政治マターなので読みにくいが、超えるべきハードルは多い。当面はリスクオンにはなりにくいだろう」と述べていた。

米GDP確定値
この日の米国時間には、米国の4−6月期国内総生産(GDP)確定値が発表される。ブルームバーグがまとめたエコノミストの予想中央値は前期比年率2.6%増と、改定値の2.5%増から上方修正が見込まれている。
上田ハーロー外貨保証金事業部の黒川健氏は、「一部では、連邦政府債務上限についての引き上げ協議、歳出削減協議は基本的には大きな波乱はなく通過するという楽観的な見方もあることから、本日発表のGDP確定値で予想以上の上方修正となった場合は、思いのほかドル買いに振れる可能性がある」とみている。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net;東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/09/26 15:23 JST

米上院:暫定予算案を審議・採決に持ち込むための動議を可決 (06:58)
債券反落、法人減税やGPIF報道受けた株高・円安で−午後売り優勢 (15:51)
ゴールドマン、ドイツ銀から安定価値資産運用部門を買収−事業を拡大 (09:22)

 


 

REAL TIME ECONOMICS2013年 9月 26日 13:19 JST

米財政協議難航に慣れきった金融市場、土壇場での決着を想定 

By MIN ZENG
 米政府と議会は、来年度予算と政府債務上限引き上げをめぐってまたもや醜悪な攻防を続けているが、市場は今のところ大きな反応を示していない。

  GMP証券のエイドリアン・ミラー氏は、「(市場は)ワシントンでの財政問題をめぐる不安に疲れている」とみる。ピムコの上級市場ストラテジストであるトニー・クレッセンジ氏は、これまでの市場の反応について、投資家はワシントンの「哀れな政治ショー」に慣れてしまったようだと受け止める。

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Getty Images
ルー財務長官

 政府・議会の瀬戸際での攻防は、2011年と昨年末にも展開されたが、いずれの時もぎりぎりの段階で両者の合意が成立しており、多くの投資家は再び同じ展開になると予想している。しかしアナリストらは、高をくくっていると、政府・議会が合意出来なければ、市場に衝撃が走るだろうと警告する。

 クレッセンジ氏は「市場は、来年度予算も債務上限問題も土壇場で合意がまとまり、ドラマは終わると予想している」とした上で、「投資家は、ドラマがオオカミ少年ではなく、危険が現実のものとならないか用心する必要がある」と強調する。

  時間はどんどん過ぎていく。議会が9月30日までに来年度予算を成立させなければ、政府機関は閉鎖に追い込まれる。予算以上に大きな戦いは債務上限問題だ。議会が10月半ばごろまでに現在16兆7000億ドル(約1653兆円)の債務上限を引き上げる法案を可決しなければ、財務省はやり繰りがつかなくなり、支払いに優先順位を付けざるを得なくなる。

  財務省は、投資家に対する国債の利払いは続けることができそうだが、上限が引き上げられなければ、想定されていない出来事で米国がデフォルト(財布不履行)に陥る恐れが強まる。

 ルー財務長官は25日、議会指導者に書簡を送り、政府の債務借り入れ能力は10月17日には枯渇すると指摘。「政府が最終的に債務の全額返済ができなくなれば、破局が訪れる恐れがある」と警告した。

  これまでのところ、米国株などリスク資産は堅調な動きを維持している。だがトレーダーは、米国債が堅調に推移している一因として、財政協議が行き詰まることへのヘッジのため、投資家が安全資産を購入していることが背景にあると指摘する。

  ユナイテッド・ネーションズ・フェデラル・クレジット・ユニオンの最高投資責任者(CIO)であるクリストファー・サリバン氏は、「財政がらみの重要な日程が近づいているため、ある程度の国債買いが見込まれる」としながらも、「底流には抑制された慎重なムードがあるのは明白だ」と述べる。

 ピムコのクレッセンジ氏は、連邦準備制度理事会(FRB)が先週、資産買い入れプログラムの縮小を見送る決定を下した一因として、来年度予算と債務上限の2つの財政問題が膠着化していることを挙げる。FRBによるこの決定を受けて、金利上昇への懸念は和らぎ、指標となる10年物国債の利回りは低下し、株高を誘った。10年債の利回りは直近では2.643%と、6週間ぶりの低水準となっている。9月初めには一時3%を上回っていた。

 ナショナル・アライアンス・キャピタル・マーケッツ(ニューヨーク)の国際債券部門の責任者であるアンドルー・ブレナー氏は、財政ドラマが終われば、国債利回りは再び上昇に転じると予想する。同氏はまた、政府と議会の交渉がまとまれば、FRBは早ければ10月にも資産買い入れを縮小すると予想する。ブレナー氏は「財政問題が決着すれば、FRBは資産買い入れの縮小に踏み切り、国債価格は下落に転じるだろう」と話している。

 

FEDウォッチ2013年 9月 26日 09:08 JST
FRB、量的緩和解消時は機動的であるべき=NY連銀総裁
記事

 【ニューヨーク】米ニューヨーク地区連銀のダドリー総裁は25日、連邦準備制度理事会(FRB)にはこの数年間で導入した景気刺激策を解消する手段が備わっていると確信しているが、解消を始めると決めた時点で未踏の領域に足を踏み入れることになると政策当局は認識しなければならないと述べた。

 ダドリー総裁は当地で行った短い講演で、「こうした一連の非伝統的政策から脱却することは間違いなく可能だ。FRBにとって超過準 …


02. 2013年9月26日 16:11:31 : niiL5nr8dQ
焦点:アベノミクスが活性化する企業投資、資金は海外へ
2013年 09月 26日 14:33 JST
[香港/バンコク 26日 ロイター] - 安倍晋三首相が、日本の産業と経済の活力復活のために自ら青写真を描いた政策「アベノミクス」は、大手自動車2社が相次いで生産能力拡大のための大規模投資計画を打ち出したことで、早速その成果が示された。

ただしこれには1つの難点がある。マツダ(7261.T)とホンダ(7267.T)が発表した工場の新設や拡張は日本国内ではなく、2000マイル以上も離れたタイで実施されるのだ。

実のところ、安倍首相が昨年12月の就任以降に行ってきた刺激策をもってしても国内における民間セクター投資の退潮傾向にはほとんど歯止めが掛かっていない。逆に日本企業のアジア諸国における投資を驚くほど加速させている。

今年前半の日本国内の設備投資は前年同期比で4%減少。これに対して日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本企業のアジア投資は22%も増えた。

HSBC(香港)の日本担当エコノミスト、デバリエ・いづみ氏は「日本における製造業投資はなお縮小が続いている。各企業は海外に投資しているからだ」と指摘した。

日本政府による財政支出や円安の進行も、製造業が依然として国内の人口減少や高コスト、規制面の障壁などに見切りをつけて、急成長を続けてより経済が若々しいアジア諸国になびいているという事実を隠しようがない。

ゴールドマン・サックス・アジアの元副会長で現在はスターフォート・インベストメンツ(香港)を率いるケネス・S・カーティス氏は「日本企業の国内投資に対するインセンティブは圧倒的に小さい。長期的な人口動態には大きな問題があり、円の価値とともに自らの力が弱まることへの恐れが海外投資をますます促している」と述べた。

<資金は国内投資に向かわず>

東南アジア諸国に対する日本企業の直接投資は今年前半に約3倍増えて60億ドル程度になった。この地域への邦銀の融資額は過去最高に達し、日本企業による合併・買収(M&A)金額も今年、最高ペースとなっている。

日本政府はアジア諸国との関係強化などの理由で投資を積極的に促進し、こうした海外投資が円安の一因となって輸出企業の利益を押し上げてる面もある。

しかし企業の増益が日本経済に資するのは、それらの利益が投資拡大や賃金引上げに使われた場合に限られる。ソシエテ・ジェネラル証券東京支店の会田卓司チーフエコノミストは「デフレを脱却するためには、われわれにとっては企業の貯蓄率がマイナスになることが必要だ。企業は設備投資の実行を求められている」と強調する。

日銀の資金循環統計からみると、日本企業は昨年6月から今年6月までに約1440億ドルを貯め込み、手元流動性の総額は2兆24000億ドルになった。これはつまり企業が純利益を1円増やすごとに、その4分の3が銀行に預金される計算だ。さらにHSBCによると、企業の既存設備の償却は、設備更新を上回るペースで行われている。

<遅い決定>

日本企業の経営陣は保守的で大きな決定をするまでに何年もかかるというのは有名であり、マツダが1月に発表したタイで2億6200万ドルを投じて工場を拡張する計画も、安倍政権誕生前の昨年初めに採択した東南アジアで販売台数を約3倍に増やすことを狙った経営戦略の一環だった。

このため一部のエコノミストは、アベノミクスの効果を反映した形の投資が出てくるのは数年先になる可能性があると話す。また過去3カ月間は1ドル=95─100円のレンジで推移している円がまだ十分に弱くなっていない点に着目する向きもある。

ソシエテ・ジェネラルの会田氏は「日本企業が現在、活発に海外投資を行っているのは円がなお強過ぎるからだ。円はもっと安く、恐らくは110円ぐらいになる必要があり、来年それが実現するケースもあり得る」と述べた。

それでもかつての製造業大国だった英国や米国が教訓を得てきたように、製造業の海外シフトがいったん始まれば、通貨安にその流れを逆転させる十分な力はない。

<邦銀の融資やM&Aも活発化>

HSBCによれば製造業の賃金は、タイでは日本の10分の1にとどまる。だからこそホンダの国内生産比率は過去10年で半減して22%となったのに対して、東南アジアでは3倍以上も高くなって約11%に達し、その大部分をタイが占めている。ホンダは今年2月、同国で過去最大規模の6億3400万ドルを投資する方針を表明した。

ただ、コストはいくつかある要因のうちの1つにすぎない。ホンダのタイ部門のPitak Pruittisarikorn副社長は投資理由について「労働コストが低いからでなく、タイには熟練労働者の存在をはじめとする多くの面で潜在的な力が備わっているためだ」と説明した。

東南アジアはまた、日本には提供が不可能なプラス材料を持つ。それは中間層人口の拡大だ。日本では4人に1人が65歳以上高齢者で、総人口も昨年は28万4000人減って1億2750万人となった。

JETROハノイ事務所の西川壮太郎所長は「われわれは高齢化社会に直面している。もし日本だけに投資しているなら、今後生き残ることはできない」と言い切った。

日本から東南アジアに投資しているのは事業会社だけではない。国際決済銀行(BIS)によると、邦銀の東南アジア向け融資額は今年第1・四半期末までに約8%増加して1528億ドルになった。タイ向けが17%、フィリピン向けが27%それぞれ増えて全体を押し上げた。

邦銀にとってこれらの融資は取引先企業の進出に合わせるという面だけでなく、実質ゼロ金利の国内よりも利ざやが稼げる利点がある。

M&Aの主役も邦銀だ。今年これまでの日本企業による東南アジアでのM&A金額は既に過去最高の82億ドルに上っている。これを引っ張ったのは三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)が57億ドルを投じて行ったタイの大手商業銀行アユタヤ銀行BAY.BKの買収だった。

こうした投資は、インドネシアルピアの急落のような事態にはあまり効果がないが、もう少し経済規模の小さい国にとっては資金流出に伴う打撃を緩和する役割を果たしている。

例えばタイは第2・四半期に証券投資が45億ドルの資金流出となったが、JETROによると日本企業からの投資によって12億ドルが戻ってきたという。

(Wayne Arnold、Orathai Sriring記者)

 


 


 


 
米債務上限引き上げ27日にも下院採決、上院は暫定予算案で前進
2013年 09月 26日 14:39 JST
[ワシントン 25日 ロイター] - 共和党の下院指導部は所属議員に対し、債務上限引き上げ法案の採決を27日にも行う可能性があると通知した。

一方、ルー米財務長官は、10月17日に政府の手元資金はわずか300億ドル程度になるとして、債務上限を現在の16兆7000億ドルから引き上げるよう求めた。

10月の政府機関閉鎖回避に向けた暫定予算案をめぐり、上院では25日、予算案の審議を進めるための動議が全会一致で可決された。

上院は28日に暫定予算案の採決を行う予定。

共和党が制する下院では、医療保険改革(オバマケア)への予算打ち切りを盛り込んだ暫定予算案がすでに可決されており、これをめぐる両院での民主・共和両党の駆け引きが本格化する。

上院のリード民主党院内総務は25日夜の党の会合で、オバマケアの延期や予算打ち切りを予算案に盛り込むことは断固として受け入れない、との考えを改めて示した。

上院では暫定予算をめぐり保守運動ティーパーティ(茶会)系のクルーズ議員が前日から、オバマケア批判を中心に21時間19分にわたりロングラン演説を行っていた。

月末が近くなり政府機関閉鎖の可能性が高まるなか、下院民主党幹部は、閉鎖回避と債務上限をめぐり共和党指導部から接触されていないとし、協議が進まずに政府機関が閉鎖されることに懸念を示した。

下院共和党は26日早くから、次の動きについて党内で協議するとみられている。上院を通過した法案に下院がどのように対応するかは不明。共和党のベイナー下院議長のスポークスマンは「上院で法案が通過した時点で対応する。それよりも前にあれこれ推測しても意味がない」と語った。

25日に公表されたニューヨーク・タイムズ/CBSの世論調査では、政府あるいは共和党が自らの目的を達成に向けて予算案で合意できず、政府機関が閉鎖に追い込まれる事態について、10人中8人が容認できないと答えた。


03. 2013年9月26日 20:25:00 : niiL5nr8dQ
国内債中心ポートフォリオ見直しを−GPIFなどで政府会議

  9月26日(ブルームバーグ):政府は26日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )など公的・準公的資金の運用・リスク管理の高度化について協議する有識者会議(座長・伊藤隆敏東大大学院教授)を開き、中間論点整理をまとめた。記者団に配布した資料によると、国内債中心のポートフォリオ見直しが必要とし、新たな運用対象を追加すべきだとの意見も出た。
資料によると、見直しは収益性向上と金利リスク抑制の観点から必要とした。新たな運用対象例として、不動産投資信託(REIT)や不動産・インフラ、プライベートエクイティ(PE、未公開株)、商品などを挙げている。
伊藤氏は同日夕の会見で、国内債中心のポートフォリオ見直しがほぼコンセンサスと強調し、国内債比率を減らすとの含意は容易に想像がつくと指摘した。一方、ポートフォリオの具体的比率には踏み込まなかったと述べ、具体的な数字の議論は適切でないとし、運用専門家が考えることと語った。
また、伊藤氏は、新たな運用対象で多様化・分散推進との意見が多数だったことを明らかにした。ガバナンス改革では専門家の登用が最大の論点になると指摘。新運用対象は短期的には換金困難でもリスクを取り、長期リターンを目指すべきだとの考えを示した。一方、小規模ファンドの活用案は、最終報告に反映される可能性もあるとした。さらに、分散投資でリスク量不変でもリターン向上の可能性があると指摘した。
伊藤氏によると、最終報告書は11月めど。有識者会議は提言で、GPIFや国・地方の公務員共済など合計200兆円を超える基金での分散投資を促す方針だ。
国債・借入金・国庫短期証券を合わせた日本の債務残高は今年6月末に1000兆円を突破。国際通貨基金(IMF)は政府債務残高の対GDP 比で、日本が2009年から少なくとも18年までは世界最悪 の座を抜け出せず、今年末は245%とギリシャの179%や米国の108%を上回ると予測する。GPIFは運用資産120.5兆円の約6割を国内債券が占めており、金利急騰による評価損リスクの対応の必要性に迫られている。
厚生年金、国民年金の積立金を運用するGPIFは6月、運用資産の「基本ポートフォリオ」を06年度の同法人設立以降で初めて変更。国内債の比率を従来の67%から60%に引き下げる一方、国内株式は11%から12%に、外国債券は8%から11%に、外国株式は9%から12%に増やした。目標からの乖離(かいり)許容幅は据え置いた。
6月末の資産構成割合は国内債59.87%、国内株15.73%、外債10.03%、外国株12.90%だった。それでも、4−6月期の収益率は1.85%と3四半期ぶりの水準。国内株は10%に迫るプラスだったが、金利上昇で生じた国内債の損失が響いた。
GPIFの三谷隆博理事長は6月のインタビューで、市場環境が大きく変動しなければ、現在の第2期中期計画(10−14年度)期間中は現行の基本ポートフォリオを維持する考えを示した。
伊藤氏は米ハーバード大客員教授やIMF幹部、大蔵省(現・財務省)副財務官などを歴任。小泉純一郎首相の退任に伴い06年秋に発足した第1次安倍内閣では経済財政諮問会議の民間議員を務めたほか、08年3月には福田康夫内閣が日銀副総裁に起用する人事案を提示した。
ブルームバーグ・ニュースがアナリストやエコノミストを対象にGPIFのポートフォリオの在り方を調査した結果は次の通り。数字はパーセント。

国内 国外

債券/株式 債券/株式 現金 その他
三井住友アセットの浜崎氏 58/16 8/17 1 0
クレディ・アグリ証の尾形氏 50/20 10/10 5 5
三菱UFJ投信の石金氏 45/15 14/16 5 5
BNPパリバ証券の岡沢氏 na na na na
ベイビュー・アセットの高松氏 35/20 25/15 5 na
藤巻参議院議員 30/na 70 (合計) na na
メリルリンチ日本証の藤田氏 55/13 13/14 5 na
三井住友アセットの武藤氏 53/14 14/14 5 na
ジャパンマクロの大久保氏 60/12 8/9 5 0.5
AMPキャピタルのナエイミ氏 45/25 5/10 5 10
カブドットコム証券の山田氏 60/12 11/12 5 na
GPIFの基本ポートフォリオ 60/12 11/12 5 0
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 崎浜秀磨 ksakihama@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/09/26 19:11 JST


 


 


 


 
ロンドン外為:円下落,株高や日本法人税下げ観測でリスク志向 
  9月26日(ブルームバーグ):ロンドン時間26日午前の外国為替市場で円は下落。アジアの株式相場上昇のほか、日本政府が法人税引き下げを検討するとの観測で相対的に安全とされる円への需要が後退した。
ロンドン時間午前9時47分現在、円は対ドルで0.5%安の1ドル=98円93銭。対ユーロは0.3%安の1ユーロ=133円48銭。ドルは対ユーロで0.1%高の1ユーロ=1.3507ドル。
原題:Yen Weakens as Asian Stocks Rally on Tax Speculation; KiwiGains(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:シドニー Candice Zachariahs czachariahs2@bloomberg.net;東京 Mariko Ishikawa mishikawa9@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Rocky Swift rswift5@bloomberg.net
更新日時: 2013/09/26 18:20 JST

 


 

 


コラム:QE縮小を温存したバーナンキ議長の超美技=鈴木敏之氏
2013年 09月 26日 18:05 JST
鈴木敏之 三菱東京UFJ銀行 シニアマーケットエコノミスト(2013年9月26日)

米連邦公開市場委員会(FOMC)が18日に決めた量的緩和(QE)縮小見送りは、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の超美技だったと筆者は見ている。

今後、市場にストレスを与えるイベントは多く、見送りを決定させた経済情勢を勘案すると、QE縮小のないまま、バーナンキ議長は来年1月末の任期満了を迎える可能性がある。そうなれば、異例の金融政策の正常化を進めるかどうかの大きな判断を後継議長に委ねることになる。

それは重い課題を未解決のまま、丸投げするようにも見えるかもしれない。しかし、米国経済の状態に加えて、緩和積極論者が投票権を失う来年のFOMCのメンバー構成を考慮すれば、実は後継議長の置かれる難しい立場を見込んでの思いやりに満ちた決断といえそうである。

<米国経済にQEの支えはまだ必要>

そもそもQE縮小は、中央銀行のバランスシートを無限に膨らませるわけにはいかず、効能とともに弊害もあるためになされるものである。ただ、米国経済の置かれている状況は、この金融緩和による支えをいまだ必要としている。

雇用状態は、依然として厳しいままだ。非農業部門雇用者数の増加数は、直近6カ月平均で16万人。これでは、人口増加を吸収して継続的に失業率の低下を見込めない。すでに失業している人の吸収を勘案すれば、もっと大きな数字が必要である。公式統計の失業率は着実に低下し、7.3%になっているが、これは就職活動を諦めた人が増えた結果として労働参加率が下がっているためで、実態として雇用情勢の改善を示しているとはいえない。就職活動を諦めた人を潜在的な失業者とみなし、リーマンショック前の労働参加率が変わっていないとの前提で試算すると、今の失業率は11%台になる。

物価の安定面も、デフレサイドで不安がある。労働力について先述したとおり、米国経済は大きな供給力の余剰、スラック(余剰資源)を抱えたままである。賃金発の物価上昇圧力がかかってくるとは見込みにくい。物価上昇率の鈍化が目立ち始めたとき、FOMC声明は「低インフレ率は一時的」と主張したが、FOMCメンバーの中にもそれを受け入れない声がある。

また、常套句であるインフレ期待の安定も、インフレ連動債と通常債の利回りの差から計算するブレーク・イーブン・インフレ率を期間5年ものでみると1.89%で、2%のインフレ目標に届いていない。03年に「歓迎されない継続的物価上昇率の低下」を問題にして、デフレ警戒が発せられた頃と変わらない。

資産価格の状況に目を転じても、経済活動を押し上げる力を期待しにくくなっている。株価は、シラー式の株価収益率(ITバブルの破裂を警告したことで名高いイェール大学のシラー教授が考案したPERの算出方法)でみて、割高ではないが、割安とはいえなくなっている。債券利回りは5月22日からQE縮小を見越して上昇した。これは、モーゲージローン金利の上昇をもたらしている。過去、QEをやめると、金融ストレス指数が上昇する傾向がある。それは、金融状態が経済活動を抑制するということである。

<縮小開始すれば、後戻りできない>

さらにこの先、経済活動に悪い影響を与えそうなイベントが続く。第一は、米国の財政をめぐる審議の難航だ。

昨年末に財政の崖の問題があった。それは年初に妥協をみて、その後、共和党は穏健な対応を進めてきたが、ここへきて連邦債務の上限到達問題や予算編成で攻勢に出ようとしている。経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index)をみると、財政をめぐってもめたときに高まるところがあり、経済活動を制約することになる。

第二は、欧州情勢である。米国にとっても下方リスクだった欧州危機の状況は劇的に安定したが、最近になって心配が生じている。イタリアの政局である。ベルルスコーニ元首相の議員資格が剥奪される場合、レッタ連立政権が崩壊するリスクがある。政治空白が生じると、イタリア国債が売り込まれても、欧州中央銀行(ECB)による国債買い取りプログラム(OMT)が機能しない恐れがある。OMTは、政治が緊縮プログラムに動くことが条件であり、本来、政権がない状態では動きようがない。

最後に、次期FRB議長の承認が難航すると、それも経済に不透明感をもたらす。

これらを勘案すれば、仮にQE縮小を開始しても、「ある程度の緩和が要る」という判断を持つのは自然である。その方策として、最も着実なのはQE縮小を見送ることだったといえる。FOMCは金融政策で逐次投入はしないという原則にも従ったということだろう。

FRB議長は、退任に際し、次の議長が動ける自由度を確保するものとされる。実績による信認がないので、信認確保に行動が要る。今回の議長交代で厄介なことは、次の議長に決定的な追加緩和の手段がないことだ。QE縮小の見送りは、後継議長に緩和手段を残す意味合いがあろう。

フェデラル・ファンド(FF)金利は実態ゼロで、もう利下げによる緩和はできない。非通常型金融緩和は、資産購入による資金供給のQEと、期待の誘導のフォワードガイダンスである。いずれも、将来の金利の期待に働きかけて、金融緩和効果を出そうとするものである。バーナンキ議長のもとでは、この二つが併用されてきた。

フォワードガイダンスは、強めたり弱めたりの調節が難しい。時間軸で設定した場合、3年先までを4年先までに変えて、どれだけの金融緩和の追加効果があるか把握できない。万が一、金融ショックが起きた時の即効効果も期待できない。一方、QEには、財政規律を弛緩させるだけでなく、資産市場を不健全に歪ませるバブルの懸念もある。弊害やコストを無視できない政策である。金融緩和政策は手詰まりというのが現実だ。

QE縮小は、いったん始めてしまうと後戻りできない。今のFOMCのメンバーの中に、強硬な反対論者がいるので、追加緩和が必要になっても購入額の増加は通らない。今年のFOMC採決の投票メンバーには、デフレ警戒を重視するセントルイス連銀のブラード総裁と、シカゴ連銀のエバンス総裁、資産購入推進論者であるボストン連銀のローゼングレン総裁がいる。来年になると、QE推進の中心であるバーナンキ議長が退任する。また、緩和推進(ハト派)の急先鋒であるイエレン副議長が議長になると、FOMCの調整にあたるため、中立に近づくだろう。来年のFOMCは、今年ほど緩和推進的ではなくなる。

年内にQE縮小を始めてしまうと、その進め方は将来に影響を与えてしまう。自由度はなくなり、後継議長は追加緩和の手段のない状態で引き継ぐことになる。バーナンキ議長は記者会見で、資産購入による緩和が雇用の改善に効果があると言及した。QE維持で緩和手段を残したのである。

米中央銀行システムの大原則は、弾薬庫を空にしないことだ。半年かけて、QE縮小に動けるお膳立ては済ませておいて、緩和の手段も温存したという形での議長交代ということになるだろう。

*鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。

 

 


 

コラム:米QE維持の背後に潜む「政治的事情」=上野泰也氏
2013年 09月 25日 17:53 JST
上野泰也 みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト(2013年9月25日)

市場にとって大きなサプライズとなった米量的緩和(QE)縮小の見送り。18日のニューヨークダウ工業株30種平均やS&P500種は史上最高値を更新し、米10年債利回りは急低下した。

為替市場ではユーロ買いドル売りが加速し、ドル円相場は一時97.76円まで円高ドル安に動いた。だが、時間の経過とともに、パニック的な動きは終息してきた。

筆者も同日(日本時間19日)は午前2時半に起床して午前3時に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定内容を自宅と会社でフォローしたが、ポイントは主に以下の3点となる。

1)FOMCは今回、10月にヤマ場を迎える連邦政府債務上限引き上げ問題の決着点がまだ見えていないことを含む、財政緊縮による景気への悪影響や、大幅な住宅ローン金利の上昇が住宅市場にこのところ及ぼしている悪影響などを勘案しつつ、「石橋を叩いても、とりあえず渡るのをやめておく」かのような「安全策」を取ったということ。

2)しかし今回の決定は、FOMC声明文の記述内容からも明らかな通り、決してQE縮小の「白紙撤回」ではなく、「先送り」にすぎないということ。米国の金融政策の方向感は従来と同じである。したがって、決定内容が発表された後の各市場のオーバーシュート(特に米長期金利の過度の低下やドルの過度の下落)には要注意。ドル円の97円台ではドルの押し目買いを検討してもよいし、米10年債は2.7%未満での購入は見送りが望ましい。

3)経済指標(特に雇用統計)がFOMCも市場も納得するほどの強い内容になること、および連邦政府債務上限引き上げなど財政問題の解決が大前提になるが、次回10月またはその次の12月FOMCでQE縮小が決まる可能性が十分にあるということ。

5月下旬から入念に市場に織り込ませてきた「QE縮小の9月開始」というシナリオを、まるではしごを外すかのように見送った理由について、FOMC後の記者会見におけるバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の説明内容は、どうにも歯切れが悪かった。市場からは「対話の失敗」あるいは「市場の不安定化を自ら招来した」といった声も出ている。

だが、批判を覚悟でそうした決定を下したからには、口にはっきり出せないことも含めた、それ相応の「本当の理由」があるはずである。そして、20年を超える筆者の中央銀行ウォッチの経験を踏まえて言うと、中央銀行当局者の発言がクリアカットでない場合、政治関連の問題が裏にある場合が少なくない。

<視界不良の米財政問題が影響か>

今回のFOMCの票決は、最終的に賛成9・反対1となった。だが、そこに至るまでの議論の過程で、投票権を有しない参加者も含めた意見の分布はほぼ真っ二つになったのではないかと推測される。すなわち、QE縮小はこれまで市場に織り込ませてきた通り9月に淡々と開始すべきだという主張と、足元で雇用者数の伸びが減速しているうえに、議会における財政問題(暫定予算・連邦政府債務上限引き上げ)の決着点が示されていないのだから、縮小開始を1―2カ月先送りして様子を見るべきだという主張の2つである。

共和党が多数派である米下院は20日、政府機関の予算を10月1日から12月15日まで手当てする一方、医療保険制度改革法(通称「オバマケア」)への予算打ち切りを盛り込んだ法案を可決した。法案は民主党が過半数を握る上院に送られるが、リード民主党上院院内総務は「オバマケア」の資金凍結や実施延期を盛り込んだ法案を支持する考えはないと明言しており、それに関連する文言を削除した修正案を下院に送る見通しである。

ここで大きな問題になるのは、茶会党のような保守派の影響力を無視できない下院の共和党では、ベイナー議長ら指導部によるグリップの強さと今後の運営方針が明確ではないことである。一部の共和党幹部は、指導部が党内保守派の説得に手間取っており、明確な戦略がないようだと明かしているという。

財政問題の決着が、たとえば歳出削減の追加など、米景気に対する逆風の強まりにつながる場合、あるいは暫定予算が成立しないまま10月初旬の政府機関閉鎖という事態に陥る場合には、ポリシーミックスとして、FRBによるQE縮小が望ましくないことは言うまでもない。

こうした見方をある程度裏付けるのが、歯に衣着せぬ発言が多いセントルイス連銀のブラード総裁のコメントである。同総裁は20日、米メディアとのインタビューで、「(QE縮小)決定はボーダーライン上にあった」が、「FOMCは静観しようという判断に落ち着いた」とした。そのうえで、経済指標で一段と強い景気動向が示された場合、次回10月のFOMCで小規模な緩和縮小に踏み切ることもあり得るとも述べている。

また、FRB指導部を構成する主要メンバーの一人であるダドリー・ニューヨーク連銀総裁は23日の講演で、債務上限引き上げに関する協議など財政をめぐる問題が差し迫った最大の不透明要素だと指摘したうえで、年内にQE縮小を開始するというバーナンキ議長が6月に示した枠組みに変更はないと述べた。

バーナンキ議長はFOMC後の記者会見で、財政問題の行方が米景気動向にとって大きなリスクであるという認識に言及していた。「政府機関の閉鎖、あるいは債務上限の引き上げができないという事態になれば、金融市場や経済に非常に深刻な結果をもたらし得る。FRBは、経済が軌道に乗り続けているために、できることはなんでもするという方針だ。そうした事態が経済減速につながるのなら、考慮しなければならない。したがって、われわれが政策について考える際、着目するリスクの一つだ」という部分である。

<円安ドル高再開には「きっかけ」が必要>

もう一つ、FOMCの今回および今後の決定内容以上に市場が重視すべきは、バーナンキ議長の後継者候補リストから、ややタカ派的とみられているサマーズ元財務長官の名前が消えて、バーナンキ氏以上にハト派寄りと目されるイエレン副議長の議長昇格がほぼ確実になったという点である。イエレン副議長は10月1日にニューヨークで行う予定だった講演を延期した。オバマ大統領による次期FRB議長候補への指名が近いという観測を強める話である。

今回のFOMCでQE縮小への着手が見送られたことから、米金融政策の正常化に向けたスケジュール感は、これまでの想定よりも若干後ずれすることにならざるを得ない。さらに、「早すぎる金融引き締めのリスクは遅すぎる金融引き締めのリスクよりも大きい」とみているイエレン氏が次のFRB議長になる場合、QEの停止は最速でも14年7月、利上げの開始はおそらく15年半ばではなく、15年後半にずれ込むだろう。

ちなみに筆者は、米国経済の今後について、引き続き強気の見方を持っている。07年の住宅バブル崩壊に起因する大きな痛手を克服して「退院」したこの国の経済には、1)「人口増加社会」であること、2)産業・企業の新陳代謝がきわめて活発であること、3)「シェール革命」の恩恵という、3つの強力な武器がある。

ファンダメンタルズの強さに金融緩和の長期化見通しが加わっているわけで、米国株にとってこれ以上の好条件はないと言える。ニューヨークダウは1万6000ドルに到達するだろうというのが、筆者の従来からの予想である。一方、米長期金利やドルについては、「サマーズリスク」が消滅したこともあって、一段と上昇するためのきっかけが当面見出しにくくなった感が強い。

むろん、筆者の相場観の基本線は、これまでと同様、米10年債利回りには米国経済のファンダメンタルズに鑑みて3%台前半への上昇余地があり、ドル円には米住宅バブル崩壊以降の「リスクオフ」局面で累積した逃避的な円買いの巻き戻しから、今後1―2年以内に110−112円程度までの円安ドル高の進行余地があるというものである。だが、ドル金利の先高観が再び強まり、円安ドル高が一段と進行するためには、米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想比で大幅に上振れるというような経済指標面でのサプライズが必要だと考えられる。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

焦点:異次元緩和で日銀当預100兆円突破、今後に課題も
焦点:米緩和縮小見送りで投資戦略に陰り、成長見通しに疑問 
焦点:アベノミクスが活性化する企業投資、資金は海外へ


04. 2013年9月26日 21:55:46 : FfzzRIbxkp
松下金融大臣を殺したのは誰か。 答えが出てきたのかね。

05. 2013年9月27日 12:12:05 : ArLVW38Mhw
「米国経済の置かれている状況は、この金融緩和による支えをいまだ必要としている。」

金融緩和は経済を支えているのではなく無理矢理持ち上げているだけである。経済そのものは翼もないのに自力で飛ぶことはできない。地面を踏みしめて前進することしかできない。今、緩和というお節介焼きは、運動不足で丸々太った経済の重みに堪えかねている。かと言って、振り落として置き去りにもできぬ。つまり、経済は緩和に依存することによって自らの健全な歩行能力を奪わた状態にある。そして依存する時間が長いほど悪化する。しかし、人によっては、経済は緩和のお陰で順調に進んでいるし、順調に大きくなっており、何も問題は見当たらないという。


06. 2013年9月27日 12:17:59 : ArLVW38Mhw
5のコメント冒頭の引用は、3のコメント欄中に貼り付けされた記事から。

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