［ニューヨーク　３０日　ロイター］ - 米政府機関の閉鎖が現実味を帯びてきたが、大半の専門家は米国株を売らずに保有し続けた方が良いと考えている。議会が予算案で合意できなければ、政府機関は１日に閉鎖される恐れがある。

Ｓ＆Ｐ５００種総合株価指数は過去最高値をわずかに３％下回る高水準にあるため、今こそ相場調整に備えた利益確定のチャンスだと言う専門家もいる。しかしロイターが３０日に話を聞いた大半のファイナンシャルアドバイザーや機関投資家は、顧客に株式を保有し続けるよう勧めている。

キャッシュその他の安全資産に乗り換えるよう、顧客に警告を発しているのは少数派だ。

政府機関閉鎖をめぐる騒ぎは昨年と一昨年にも経験済みで、大半のファンドマネジャーにとっておなじみの茶番と化している。

グローバル・インカム・グループの共同ディレクター、エリック・スタイン氏は「市場は短期的にはある程度動くかもしれないが、ワシントンの馬鹿騒ぎには次第に免疫ができてきた」と言う。

株式投資を維持すべきだとする一番の論拠は、過去の政府機関閉鎖がポートフォリオに大きな影響を及ぼさなかったことだ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ（バンカメ）＜BAC.N＞は１９７６年以来起こった１７回の政府機関閉鎖（うち１４回は８７年より前のフォード、カーター、レーガン政権時）を検証。閉鎖の前の月に相場は０．１％上昇し、閉鎖期間中に０．８％下落、閉鎖が終わってからの１カ月間では約１．１％反発していた。

バンカメのストラテジストは、相場が大幅に下がれば買いの好機だと指摘。ただ「確率の低いイベント」として、相場が１０％調整するリスクはあるとしている。

複数のファンドマネジャーも、株を売るのではなく買っていると話す。ペン・ファイナンシャル・グループのマシュー・マコール社長は「過去に政府絡みで短期的に相場が下落した局面は、常に買い時となった。今回も、過去最高値より下がった水準で買う好機が訪れただけだと見ている」と述べた。

しかし、だれもが安心感を抱いているわけではない。ウェルズ・ファーゴ・プライベート・バンク＜WFC.N＞のデピュティ最高投資責任者、エリック・デービッドソン氏は、最後に株価が１０％の調整を経験してから２０カ月以上経っていることを警戒。顧客に対し、政府機関閉鎖の機会をとらえて今年大幅に上昇した米株を売り、米国債や新興国市場株など出遅れた資産に資金を移すよう推奨している。

＜防衛銘柄＞

米国株全体が下げた３０日、レイセオン＜RTN.N＞、ロッキード・マーチン＜LMT.N＞といった防衛銘柄は政府機関閉鎖の観測に単純に反応して相場全体をアンダーパフォームした。

しかしゴールドマン・サックスのストラテジストはノートで、政府契約が売上高の２０％超を占める企業はアンダーパフォームしていないと指摘。投資家が長期間の閉鎖の可能性をさほど懸念していない兆候だとしている。

コンラッド・シーゲル・インベストメント・アドバイザーズの投資コンサルタント、トレーシー・バーク氏は、１日かそこらで議会が合意にこぎ着けるなら、ポートフォリオへの影響は最低限にとどまると予想。閉鎖が１週間以上続くなら「市場は急落し『調整』の領域に突入するだろう」と言う。

より大きな問題は、ワシントンが連邦債務上限の引き上げに合意して借り入れを続けられるかどうかだ。アメリプライズ・ファイナンシャル・サービシズのファイナンシャルアドバイザー、ベッツィー・ビラード氏は「議会両院ともに相当な機能不全に陥っているため、債務上限の方が気になる」と述べた。

（Lauren Young記者）

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20131001-00000064-biz_reut-nb