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消費税増税政策(その3):消費税増税後の日本の姿
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/780.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 10 月 02 日 05:04:30: Mo7ApAlflbQ6s
 


 来年4月に消費税を3%に増税するという愚かな政策が決定した。

 このような決断の背後には、消費税(付加価値税)税率をドイツ並みの20%近くまで上げる目論見が潜んでいる。
 付加価値税を導入していない米国を除くと、各国の税制に対する評価は、「法人税税率−付加価値税(消費税)税率」の値で決まるようになった。
 国際投資家やグローバル企業経営者は、グローバル企業から利益が出て行く法人税税率は引き下げ、グローバル企業に利益が入ってくる付加価値税税率は引き上げることを強く望んでいるからである。
 究極のかたちは、法人税をゼロにし、それに伴う税収減を付加価値税の増税で補うというものである。

 消費税増税とともに復興特別税まで先行して剥ぎ落とそうとしている安倍政権の動きは、まさにそのような流れに沿ったものと言える。


 増税の悪影響対策を言い訳として“放漫財政”に動くことで、日本経済の成長は阻害されない可能性もあるが、その代償は、膨大な赤字財政支出でありその結果としての政府累積債務の積み増しである。
 結局のところ、消費税増税が、公言されてきた唯一の目的である社会保障制度を維持するための財政健全化に寄与することはない。

 「国際金融のトリレンマ」ではないが、現状の日本は、デフレ脱却・名目及び実質での経済成長・財政基礎収支改善という三つの課題を政策で同時に達成することはできないという「日本経済のトリレンマ」を抱えている。
 達成できるのはせいぜい二つであり、消費税増税が政策に入り込むと、財政改善を犠牲にしない限り、どの課題も達成できないハメに陥る。三つすべてを達成したいのなら、「デフレ脱却・経済成長」→「財政基礎収支改善」と段階を踏み時間をかけて取り組むしかない。

 安倍政権はデフレ脱却と経済成長を優先しているのは明白だから、結局のところ、財政はさらに悪化することになる。
 消費税増税の本来の目的が財政健全化にあるわけではないからそれでもかまわないと言ってしまえば身も蓋もないが、あまりに国民を愚弄した政策である。

 銀行(金融)危機に陥ったユーロ圏とりわけ過剰債務で苦しむ南欧諸国は、政策を軌道修正する動きも出てきたが、付加価値税増税・緊縮財政・構造改革で経済と財政の再生を目指す政策を採った(採らされた)。しかし、経済成長は当然のこととして、財政改善さえ達成することができなかった。
 3年ほどかけて現代民主国家としてぎりぎりの国民生活レベルまで落ちて、今ようやく景気が“自律反転”に向かいつつある。
 結局のところ、トロイカが強いた政策は、見せしめ効果や主権放棄効果は別として、ドイツなど資金余裕(経常収支黒字)国の国民にそこまで頑張っているのなら支援もしかたがないと思わせる意味しかなかったのである。

 憤懣やるかたないなかでの奇妙な慰めになるが、緊縮財政ではなく、放漫財政をも厭わない破廉恥な政策態度が、安倍政権のせめての救いなのである。


 消費税増税後の日本をざっとイメージしてみる。

 来年(14年)前半は住宅や耐久消費財は駆け込み需要の反動で需要が落ち込み、9月の消費税中間納付を契機に経営(資金繰り)の悪化が表面化する中小企業が増加する。
 それでも、バブル崩壊に伴う銀行の不良債権処理は終わっているので、倒産件数や自主廃業が増えるだけで、97年秋のような金融危機につながることはないだろう。
 しかし、中小企業の資金繰り悪化から、年末の賞与は多くの企業で減額になる。経済全体がじりじりと悪化していくなか、所定外給与は減少し人員削減も進む。
 来期の企業決算は、消費税増税で移転を受け取る付加価値(利益)額が増えるグローバル企業を中心とした有力企業や公共投資で潤う建設業界は高い収益をあげるだろうが、消費財の内需中心企業の多くは最終利益をほとんどあげられない状況に陥る。

 来年度の中央政府税収は、消費税税収が15兆円近くまで増える一方で、復興特別税が剥ぎ落とされた法人税は5兆円を切る可能性が高い。そして、「法人税+消費税」の税収額は、膨大な額の財政出動があれば別だが、この20兆円ほどが以降のピークとなるだろう。
 消費税は“法人税の別種”でしかないから、消費税と法人税を合わせた税収は、名目GDPの5%未満に抑えるべきだとは思っている。しかし、それも、奮闘して稼いだ付加価値を税として徴収される事業者と稼いだ付加価値はそのままで他の事業者が苦労して稼いだ付加価値を貰い受けるという歪んだ構造がない場合の話である。

 消費税増税が及ぼす害悪をできるだけ抑制したいのなら、消費税増税に伴う「経済対策」とほぼ同額の5兆円と想定できるグローバル企業への消費税還付から、その部分に課される法人税額を差し引いた全額を、従業員の賃上げや派遣労働者への支払い増加さらには下請けに対する仕入れ単価アップに充当してもらうしかない。

 それでも、グローバル企業は、国内販売で得た付加価値に課されるはずの消費税負担を免れている。
 消費税増税を理由として3%ほど販売価格を引き上げているので、その金額は大きい。さらに、賃上げすれば法人税から一定部分を控除できるという特典もある。
 その範囲を消費税増税に伴う利益増加と考え、消費税還付金は追加法人税を除きすべて経済社会に還元していただきたい。

 もう一つは、財政出動の重点対象となっている公共投資をこなす建設業界の動きである。建設業界が膨らむ公共投資をできるだけ多くこなせるよう提示する賃金を引き上げながら能力のある人材を増やす動きをすれば、労働市場がタイトになり、経営的に余裕のある企業に限られるが、他の業界の賃上げをも誘発する可能性が高い。


 安倍首相が強く願っている賃上げが実現されるのは、グローバル企業や建設業界がそのような動きを見せたときに限るだろう。


 消費税増税後の日本についてもっとも危惧するのは、地方の疲弊と困窮がさらに進む事態である。
 消費税は、内需型の事業者が稼いだ付加価値(粗利益)を輸出比率が高い事業者に移転する仕組みを本領としているが、これはほぼ同じく、地方にあまたある事業者が稼いだ荒利が東京など大都市に本社を置くグローバル企業に移転されることを意味する。

 グローバル企業の拠点があるとしても地方は多くが工場で、もともと地代や人件費が安いことを進出の大きな理由としているから、そこでは賃金切り下げや非正規労働者への切替えが積極的に行われてきた。生産部門は、本社部門や研究開発部門ほど優遇されていない。

 地方都市の商店街の特徴となってしまった“シャッター商店街”も、大手小売業による郊外型店舗増加の煽りを受けただけではなく、最終利益の有無に関わりなく荒利の3%や5%が徴税される消費税の影響を指摘しなければならない。それまでは家族がなんとか生活していける程度の稼ぎが、消費税の導入で生活さえままならないレベルまで落ち込んだのである。安い賃金でも外で働いた方がまだましというレベルの稼ぎになれば、店を畳むしかない。個別の店の商売が下手だという理由なら、店舗に新たな借り手が現れ“シャッター商店街”にならないだろう。

 政府は、弱小企業や中小商店が消え去り、その穴を大手企業が埋め集約化することを望んでいるようにも見えるが、そのような日本に成長の活力は残らず、財政での支援を要する地域や人々の数を増やすだけである。

 再来年の10月に予定されている2%の消費税増税だが、再来年の4月にはその是非を判断することになる。
 安倍首相がその判断をする立場で生き残っているかどうかもあやしいが、強行突破で10%までの消費税増税に踏み切れば、グローバル企業も見切りをつける経済的に魅力のない日本になってしまうだろう。
 西欧諸国のように、中央地方を合わせた政府支出が対GDP比率で50%近くという社会主義的国家に変貌できていれば、最低限の救いがあると言えるかもしれない。

(フランスの政府支出の対GDP比は58%もあり、驚くことに中央政府の歳出の41%は、公務員人件費と元公務員の年金支給費用で占められている。ドイツでも48%ほどである。中央政府の歳出が100兆円に達してしまった日本だが、地方も合わせた一般政府支出の対GDP比率は37%ほどで、42%ほどの米国よりも低い。だから、GDPに対する国民の公的負担が低くて当たり前であり、どんな規制緩和策よりも政府による“規制”が少ないと言えるのである)

 グローバル企業は、消費税制度で大きな利益を得るが、消費税制度のせいで日本経済が苦境に陥ったら、日本市場に見切りをつけ経済成長が著しい国での投資を増やすだけである。
 それが投資収益の増加につながり日本のためにもなると強弁するかもしれないが、自己の利益のために日本から逃避することも厭わないのがグローバル企業である。その過程では、グローバル企業の従業員も減少し、下請けなど取引先も取引量を減らすことになる。

 民主党政権の醜悪を見せつけられたことが現在に至ったすべてかもしれないが、昨年末の総選挙と今年7月の参議院選挙の結果を考えると、諦めて行く末をただ見守るしかないとも思ってしまう。


※ 参考投稿

「安倍首相(財務省)が消費税増税を延期するワケ(その1)」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/757.html

「安倍首相(財務省)が消費税増税を延期するワケ(その2)5兆円規模の「経済対策」や2兆円規模の「法人減税」の有効性」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/770.html

「首相、消費税8%方針表明…閣議で正式決定へ:アホな決定がそのままなら日本経済は奈落に向かうことになる」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/455.html

「安倍首相の妄言:消費税増税でも「経済再生と税収増大は両立」だが、消費税増税で「経済再生と財政健全化の両立」はない。」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/465.html


 

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コメント
 
01. 2013年10月02日 08:13:02 : nJF6kGWndY

>「法人税+消費税」の税収額は、膨大な額の財政出動があれば別だが、この20兆円ほどが以降のピークとなるだろう。

別に膨大な額の追加の財政出動が無くても、緩和が続き、社会保障やインフラ更新公共投資の自然増だけで、名目税収自体は増える

ただし様々な分野での構造改革なしにドーマー条件を満たせるかと言えば、ダメだろう


02. 2013年10月02日 10:47:04 : 0CrccEudt2
企業は人件費下げる、家計は苦しくなり節約に励む、消費不況は税収減をもたらす。この大きな流れは止められない。
地方の不況は都会よりも進むので過疎化、シャッター商店化は加速する、自治体が破たんする、貧民は都市に移動する、都市も高齢化の直撃を受ける、20年後くらいか。何やら江戸時代に似てきたね。
中小企業が破たんし、本当に必要不可欠の産業企業だけが生き残る、これが経済本来の健全な姿、財政、税制をどのようにいじっても経済の自立的な流れを止めることは不可能でしょう。

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