当初１０月４日に発表予定だった９月の雇用統計は２２日に発表される。この週には欧米やアジアの主要経済指標発表も予定されており、投資家が指標を消化するなかで、株式や為替、債券市場の大きな値動きが見込まれる。

こうした状況は、アルゴリズム取引とも呼ばれる、コンピューターシステムが価格や出来高などに応じて自動的に売買注文を繰り返すハイフリークエンシー取引には有利になる。

ヘッジファンド、ペコラ・キャピタルのマネージングディレクター、アーロン・スミス氏は「市場が経済指標の消化を急ぎ、サプライズがあるかもしれない。市場のボラティリティは高まり、システマティックな戦略には良い状況となる」と指摘する。

ボストンに拠点を置く調査会社アイト・グループによると、ハイフリークエンシー取引は為替スポット市場で１０年前の３％から約４０％に拡大した。

ただ、ここ数年は減少しており、調査会社ＴＡＢＢグループによると、米株式市場では昨年、ハイフリークエンシー取引は全体の４９％と、２００９年ピークの６１％から縮小。欧州でも３８％から２８％に減少した。

コンピュータシステムを活用した取引がここ数年減少していることは、市場のボラティリティ低下によるとみられる。

＜緩和策縮小が遅れるとの見方で価格変動は限定的＞

政府機関の閉鎖が米経済に打撃となり、そのため米連邦準備理事会（ＦＲＢ）が２０１４年まで緩和策を継続するとの観測は、価格変動を抑えるとみられる。

為替相場のボラティリティはここ数日大幅に低下。ドル／円の１カ月物インプライド･ボラティリティは１８日、９カ月ぶり低水準を付けた。

ユーロ／ドルのインプライド・ボラティリティは１カ月ぶり水準に低下。向こう数週間は狭いレンジの取引になる可能性を示している。

１週間物のユーロ／ドルインプライド・ボラティリティは上昇したが、ここ最近のピークは下回っている。

シカゴ・オプション取引所の恐怖指数といわれるＶＩＸ指数は、１０月９日に４カ月ぶり高水準の２１．３４をつけ警戒ラインとされる２０を超えたが、１７日には１３．３８に低下した。

ヘッジファンド、ソロ・キャピタルの為替・投資マネジメント部門代表、マンカシュ・ジェイン氏は「取引はどっちみち低水準で、アルゴリズム取引はさほどみられない。１１月は様子見の時期で、アルゴリズム取引が急に増えるとは思わない」とみている。

（Emelia Sithole-Matarise, Anirban Nag記者；翻訳　伊藤恭子；編集　田中志保）

　
9月米雇用18万人増の予想、早期の緩和縮小観測にはつながらず
2013年 10月 21日 09:07 JST
［ロンドン　２０日　ロイター］ - 今週のグローバル経済は、２２日の９月米雇用統計や２４日の１０月ユーロ圏購買担当者景気指数（ＰＭＩ）などに注目が集まりそうだ。

９月米雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比１８万人増が見込まれている。通常ならば米連邦準備理事会（ＦＲＢ）による量的緩和の早期縮小観測が再燃するところだ。

デロイトのチーフ・グローバルエコノミスト、アイラ・カリシュ氏は、週間失業保険新規申請件数の減少は労働市場が良い状態にあることを示唆しているし、資本財生産の増加も心強い材料だとした上で、「事態が上向き、米経済のファンダメンタルズが徐々に改善しているという点についてわたしは慎重ながらも楽観的だ」と述べた。

それでも１０月の統計は政府機関閉鎖の影響で判断しにくい内容になるとみられるため、エコノミストはＦＲＢが１２月ないし来年１月までは緩和縮小に踏み切らないのではないかと考えている。

一方でドイツ銀行のグループ・チーフエコノミスト、デービッド・フォーカーツ・ランドー氏は、財政問題をめぐる政治対立の影響でＦＲＢの緩和縮小が遅れるとの予想が金融市場に広がっていることで、今後センチメント関連の指標は持ち直す可能性が大きいとの見方をしている。

ユーロ圏の方は、米国ほどは先行きに自信が持てない。１０月のユーロ圏ＰＭＩの総合は５２．５と９月の５２．２から小幅上昇しそうだが、民間向け銀行貸し出しは一段と縮小すると見込まれる。

実際、英経済政策研究センター（ＣＥＰＲ）は１９日、ユーロ圏が２０１１年第３・四半期に始まった景気後退局面から抜け出したと結論付けるのは時期尚早だと表明した。

ＩＮＧグループのチーフエコノミスト、マーク・クリフ氏によると、ユーロ圏において全域的な景気改善につながる明確なきっかけはなお見当たらない。

金融政策は緩和方針を維持し、財政面の足かせは弱まっているもののこれらが経済に前向きの勢いを提供しているわけではなく、ユーロの今後については残された課題も多い。

２４─２５日の欧州連合（ＥＵ）首脳会議では、こうした問題のいくつか、具体的には域内の銀行破綻処理のための基金の拠出方法などについて協議する。

もっとも肝心のドイツで９月の総選挙結果を受けた連立政権の枠組みがまだ固まっていない点からも、事態打開の見通しは立っていない。

こうした中でクリフ氏は「欧州と世界全体に不透明感が存在するので、企業は依然として手元に多くのキャッシュを抱えたままで、投資をためらっている。新規雇用も急いではいないので、結果としてどんなに頑張っても景気回復の活力はかなり乏しくなる」と指摘した。

欧米以外の地域をみると、英国では２５日に第３・四半期国内総生産（ＧＤＰ）成長率の速報値が発表される。ロイターがまとめたエコノミストの予想中央値は前期比０．８％で、第２・四半期の０．７％を上回る堅調な伸びが続くとみられている。

日本は、日銀の大規模金融緩和にもかかわらず消費者物価指数（ＣＰＩ）の前年比上昇率が２％の物価安定目標に向かうスピードが上がっていこないことが示されるだろう。

９月の全国ＣＰＩ（除く生鮮食品）前年比上昇率は０．７％と、８月の０．８％から鈍化すると見込まれている。

２４日に発表されるＨＳＢＣとマークイットの１０月中国ＰＭＩ速報値は、小幅上昇にとどまる見通し。

アライアンス・バーンスタイン（香港）のアジア・ソブリン債ストラテジスト、アンソニー・チャン氏は、第３・四半期に在庫積み増しの寄与などで成長率が押し上げられた中国経済はその後やや勢いが鈍った可能性が大きいとみている。

それでもチャン氏によると、中国に関しては区々たるＧＤＰ成長率の変化や中央銀行の姿勢などよりも、共産党指導部の主要政策を追いかける方がずっと重要であり、この面からすれば指導部が今年前半のように成長率目標達成のためにあわてて景気刺激策を打ち出すような素振りがないことは勇気づけられるという。

同氏は「中国は、なお非常に不安定で成長にばらつきがある世界経済において安定をもたらす要素であり続けるはずだ」としている。