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北京からは先端技術や、製造ノウハウを合弁先の中国企業に提供してくれる日本を頼るほうが現実的との判断が働いている。
http://www.asyura2.com/13/hasan83/msg/768.html
投稿者 TORA 日時 2013 年 11 月 13 日 11:01:18: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu299.html
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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北京からは党内のあせりの声が漏れ伝わって来る。先端技術や、製造ノウハウを
合弁先の中国企業に提供してくれる日本を頼るほうが現実的との判断が働いている。

2013年11月13日 水曜日

中国は資金流出で景気は停滞して鉄道輸送量が落ちている。

◆破綻した中国の経済成長モデル 編集委員・田村秀男 11月10日
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/3218497/ 

■「日本取り込み」作戦の公算

 厳戒の北京で、9日から4日間の予定で中国共産党の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)が開催中だ。主要議題は「広範囲で大胆な経済改革」という。1970年代末以来、堅持してきた高度経済成長モデルのほころびがひどい。汚職腐敗、貧富の格差、不動産・金融バブル、さらに環境破壊と問題が噴出し、成長も行き詰まってきた。さて、どうする。

 3中総会前には、北京の天安門前でウイグル族とされる容疑者による車両突入・炎上事件や、山西省太原市の省共産党委員会庁舎前での連続爆発事件が起きた。農民などの暴動や各種抗議活動は1日当たり数百件起きている。

 これまで、一党支配体制の存続の鍵は経済成長にかかっていると党中央は判断してきた。党指令によって人民銀行がお札を刷り、資金を重点配分すれば投資を増やせる。人民元レートを安い水準に誘導すれば輸出も伸びるのだ。だが、この成長の方程式はここにきて狂いっ放しだ。

 2008年9月の「リーマン・ショック」を受け、輸出が打撃を受けると、当時の胡錦濤政権は国有商業銀行が融資を一挙に3倍に増やした。地方の党幹部は不動産開発の受け皿会社を相次いでつくり、農地を潰して高層ビル群を建設する。上海など大都市郊外はもちろん、住宅需要の少ない内陸部でも高層住宅建設ラッシュが起きた。中国は固定資産投資主導で、世界で最も早く、リーマン不況を乗り切ったが、その成功プロセスはがん細胞を増殖させた。汚職腐敗の横行である。

 党の利権官僚によって不正蓄財される資金は、香港経由などで海外にいったん移されたあと中国本土に還流して投資される。その売買益は再び海外に流されたあと、今度は「外資」を装い、還流するというふうに循環する。その多くは不動産や高利回りの「理財商品」に投資され、バブルを膨らませる。それが外に逃避すると、不動産や金融商品バブルが崩壊する。現在の中国経済が抱えている不安の多くは、党幹部の利権にまみれた汚いカネによって引き起こされているのだ。

 実際、中国経済の動向は、非合法の投機資金(「熱銭」)を追えばかなりわかる。

 不正資金総額を粗っぽい中国統計から正確に算出することは不可能だが、およその見当は付けられる。厳しい外国為替管理体制を敷く中国で、海外との間で合法的に出入りできる資金は(1)貿易収支の黒字または赤字分(2)中国からの対外投資に伴う利子・配当収入から外国企業の対中投資の利子・配当収入を差し引いた所得収支(3)外国からの対中直接投資-である。これら合法資金の純増加額合計から外貨準備増加額を差し引いた額を非合法な資本収支としてみなしたのが本グラフである。

 非合法資金はリーマン直後に年間2千億ドル規模で逃避したが、党指令による融資増で値上がりし始めた不動産に熱銭が還流し、不動産や金融のバブルを引き起こした。バブル崩壊不安が生じた11年後半から熱銭は引き上げ始め、資本逃避が続いたが、ことし4〜6月期には再び流入に転じた。それを裏付けるように、中国不動産市況は最近、値上がりしている。差し当たり、中国はバブル崩壊危機をしのいだように見える。

 実体景気のほうはどうか。中国はことし、実質7%台の経済成長を続けているのだが、李克強首相は党官僚の数字操作が可能なGDPデータを信用せず、運賃収入を元に集計する鉄道貨物輸送量などを重視している。その前年比はグラフにある通り、リーマン後マイナスに落ち込んだあと急回復したが、輸出不振のために12年前半から再びリーマン後と同じように低下した。固定資産投資増の効果で、ことし7〜9月にようやくプラスに転じた。

 モノの景気を含め、経済崩壊には歯止めがかかったようだが、本格回復にはほど遠い。3中総会での「経済改革」提起は不安の反映だろう。

 北京からは党内のあせりの声が漏れ伝わって来る。「経済改革はうまくいかないだろう」「日本からの投資をもっと引き寄せる方法はないか」と、日本の有力者に持ちかける党幹部もいる。先端技術や、製造ノウハウを合弁先の中国企業に提供してくれる日本を頼るほうが現実的との判断が働いている。

 党支配の経済モデルに執着する限り市場や社会は安定しない。党幹部はそれを承知だが、利権が優先する。そこで、日本を取り込む作戦に出る公算が大きいのだ。中国側に誘われるまま、対中投資を続ける企業は泥舟に乗る覚悟が必要だろう。


(私のコメント)

バブルの崩壊は先送りする事が可能であり、アメリカのQE3もそうだし中国の国内投資54兆円もバブル崩壊引き延ばし策だ。だから何度も中国はバブル崩壊説が流れては金融緩和や国内投資拡大で先送りされている。アメリカのリーマンショックも80兆円をウォール街にばら撒くことでバブル崩壊を先送りして景気回復の兆候すら見られる。

しかしいったん金融緩和を解除するとバブルは余計に大きく膨らんでいるから難しい。中国も熱銭が国外に逃げてはまた帰ってきてバブルを継続させていますが、すでに不動産の相場は成層圏にあるからマネーゲームになってしまっている。不良債権もそれで誤魔化せますが不動産相場が暴落すれば一気に不良債権が拡大する。

日本のバブル崩壊は、一気にやりすぎたから20年もかかりましたが、アメリカや中国のように金融緩和と国内投資の拡大で先送りはできたはずだ。しかし不動産も株も上がりすぎていて一気に金融を引き締めてしまった。大蔵省の総量規制のみならず日銀は金利を一気に引き上げてしまった。

アメリカや中国はその失敗を見ているから、金融緩和や国内景気刺激策でバブル崩壊の先送りをしている。しかし財源にも限りがあるからいつまでも出来るわけがない。今のうちに逃げておくのが勝ちでありキャッシュで持っているのが一番賢明だったという事態が来るかもしれない。

そうなれば、新興国に投資されていたアメリカの金融緩和資金は回収されて、中国のバブルも一気にはじけてしまう。アメリカの金融緩和解除の観測だけで新興国は経済不況に見舞われてしまってアメリカも金融緩和解除を見送りましたが、一月に8兆円もの金をいつまでばら撒き続けるのだろうか?

中国経済の実態は、政府が発表する数字は信用が出来ないから掴めませんが、電気の消費量や鉄道輸送量などの数字て推測するしかない。中国は経済発展を続けなければ失業者を吸収できず、経済格差が広がってテロが発生したりする。しかし日本との関係の悪化で中国への投資が減りアジアシフトが続いている。

欧米も、足元に火がついているから新興国への投資は慎重にならざるを得ず、新興国は返済のためのドルのかき集めに忙しい。アベノミクスで日本も金融緩和に踏み切り円安株高になりましたが、90年代にやっておくべき政策だった。円が1ドル75円から99円にまで値下がりして中国や韓国の輸出に打撃が来ているようだ。

新興国は、先進国からの投資と技術供与で経済発展してきましたが、リーマンショックで投資資金の逆流が始まった。金融立国は砂上の楼閣であり金融市場がクラッシュすればアメリカ経済も吹き飛ばすほどの破壊力があり危険だ。あくまでも製造業などの実物経済がしっかりしていないと経済を立て直すことはできない。

だからアメリカも、新興国に製造業などを移し資本も技術も移転させてきた。それが逆流を初めて新興国のブームは終わった。日本の円高も貿易収支の赤字が続いて円高基調に変化が生じている。小泉総理が原発の即時廃炉を主張していますが、アメリカのシェールガスの売り込みがそう言わせているのだろう。

ここでアメリカが金融緩和解除を決めれば、ドル高となり日本は安くなった円でアメリカの天然ガスを買う事になる。アメリカも日本型の経済となり素材や基幹部品を新興国に売るスタイルになり、新興国は単に部品を組み立てるだけの産業になり、今までのように向上を丸ごと移転させることは難しくなるだろう。

中国や韓国が自力で、素材の開発や基幹部品の製造は難しいだろう。部品をコピーするのは簡単だが素材が悪ければ不良部品になってしまう。韓国なども日本の技術者を引き抜いて技術の移転を図ってきましたが、アベノミクスの円安で日本の製造業も立ち直ってきて技術者のリストラも終わるだろう。だから中国は焦ってきた。

 

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コメント
 
01. 2013年11月13日 13:02:25 : BDDFeQHT6I
金融さえ付ければ製造業が設備投資をしてまた輸出が伸びる計算だったんだろうが、地方政府の利権に消えてしまった胡錦濤政権の思惑違いだったのだろう、一旦緩んだ財政規律を元に戻すのはほとんど不可能、結局資金供給を続けるしかないだろうからアメリカと同じになる。

02. 2013年11月13日 19:49:55 : 56Xrfj6w7Y
韓国に全く関係ない話題でも韓国を引き合いに出すところが
C級工作員TORAの自己スキルなのでしょうが、話の流れを無視して
なんでも中国韓国を出すと読む人は違和感を感じて離れていってしまいますよ。
知能の低さをさらけ出してますが、本当に元銀行員で大家業を営んでるのでしょうか?

03. 2013年11月14日 00:58:29 : niiL5nr8dQ
グローバル化で遅れる日本、6つの課題

意識向上に向け初等教育の改革を

2013年11月14日(木)  佐藤 登

 毎年、話題を集める世界企業のブランド価値ランキング。英インターブランドが9月末に発表した2013年度版の「ベスト・グローバル・ブランド」では、米アップルが初の首位に躍り出たほか、米グーグルが2位、韓国サムスン電子がアジア最高の8位となった。日本勢ではトヨタ自動車が10位、ホンダが20位、ソニーが46位という結果になった。

 アップルとグーグルはイノベーションを推し進めている典型的企業。その根底には、グローバル競争を意識した原理が作用している。日本企業も、様々な分野でイノベーションを起こしているが、アップルやグーグルと比べると今一歩の感がある。

 筆者が注目したのはサムスン。2002年は34位だったが、10年余りでトップ10入りを果たした。グローバル化とグローバル競争力を高めてきた実績が評価されブランド力が向上している。だが、サムスンでもアップルやグーグルに比較すると、革新性ではまだ見劣りしてしまう。

 「キャッチアップ型」のビジネスを成功させてきたサムスンが、半導体メモリーや液晶、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)、リチウムイオン電池など、数多くの分野で業界トップシェアを誇るのは周知の事実。サムスンにとってシェアを向上させていくという「命題」は今後も続くが、新たなイノベーションを実現するビジネスモデル創りが求められている。つまり、キャッチアップ型から「革新型」へのシフトだ。

 「産業」「芸術」「教育」そして「スポーツ」。社会は常に競争原理が働いている。スポーツに関しては、2020年の東京五輪を目標に中学生や高校生が「晴れ」の大舞台で活躍するための競争が始まっている。五輪という原動力が競争意識を育んでおり大いに期待したい。

大学教育はグローバル化に遅れ

 日本の中でグローバル化が進む分野は多い。代表例は自動車業界だ。環境規制を先取りした排ガス浄化システム、電動化技術、素材の先進性、現地生産、グローバル調達でのコスト競争力など枚挙に暇がない。10社以上の企業が凌ぎを削りながら利益を叩き出している。

 研究開発分野も、グローバル化が進む代表例だ。ノーベル賞などを受賞する先端研究は世界に誇れるものといえる。地道な基礎研究と情熱や執念が相まって成果を生み出している。韓国内では見られない光景だ。

 近年、グローバル化が進むのがスポーツ界。野球やサッカーを中心に世界で活躍するプレーヤーが本当に増えてきた。野球もサッカーも、日本は後発組。以前は世界で通用するプレーヤーは多くなかったが、今はまったく様相が異なった。

 音楽界でもグローバルな活動は数多く見られる。世界最高峰のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団では日本人の安永徹氏が1983年から2009年までコンサートマスターを務めたほか、そして2010年には樫本大進氏が31歳でコンサートマスターに就任した。クラシック音楽では後発といえる日本人が最高峰のオーケストラを率いている。NHK交響楽団もクラシック音楽の本場である欧州で公演を行い絶賛されているなどの例もある。

 ドメスティックな印象が強い金融・証券分野でも、実は人材の流動に関してはグローバル化が進む。製造業とは異なり、日本国内でも人材が動く。キャリアを蓄積して他の企業へ移籍し、条件やステータスを上げていくことが業界標準となっている。

 一方で、日本の中でグローバル化が遅れている部分も多い。筆者は大きく6つあると考えている。1つは大学教育。海外からの留学生は減少傾向にある。韓国人学生も2005年前後までは日本へ多く留学していたのだが、ここ数年間は減っている。その結果、留学生が流れているのは圧倒的に米国。それだけ魅力があるということだ。

 外国人教員の採用が遅々として進んでいないことが大きな理由だ。米国のハーバード大学をはじめとする有力大学では、外国人教員比率は30%を超えているが、日本では東京大学でさえ5.4%という低調ぶりだ。

 日本の大学も手をこまねいているわけではない。外国人教員比率を向上させる狙いもあり、現在6万人の大学教員のうち1万人に対して年俸制を導入するという。成果主義により競争意識を掻き立てるシステムだが、希望しない教員は従来通りの雇用形態を採るところが何とも日本らしい。いずれにせよ、外国人教員にとって魅力ある制度になることを期待したい。

海外留学が減少するワケ

 グローバル化が遅れている2つ目の部分は、若年層の海外志向の低さだ。なぜ低下しているのか。これまでは多くの企業が海外留学した日本人学生を積極的に採用していなかったからだ。ただしここ数年は、企業のグローバル化意識の向上と活動展開が急速に進み、採用枠も外国人枠を増やす企業が続出している。今後は、若者の海外志向は否が応でも増加するだろう。

 日本の企業では、入社後の処遇でも学部と大学院の差をあまりつけない。あるいは博士号やMBA(経営学修士)を取得しても、価値を認めた採用をするところは非常に少ない。それどころか博士号取得者は、専門に特化し過ぎていて扱い難いと敬遠されることの方が多い。学部を日本で終えて大学院は米国へ留学と考えても、その後の就活で有利にならないと判断してしまえば、自ずと海外留学も伸び悩む。

 米国の化学・薬品大手では、研究開発部門へ配属者は博士号取得者が大前提。それだけ差を付けているから、博士課程への進学も一般的である。欧米や韓国では、博士号取得者は、ある分野の専門性が極めて高いだけではなく、研究能力が担保されているという意味合いがある。

 実際、サムスンでは博士号取得者は最初から課長級ポストで配属される(5月16日の本コラム「新入社員がいきなり課長級のサムスン」参照)。優遇されないのは日本だけだ。この結果、日本では博士課程への進学もままならない、あるいは敬遠されることになる。

 3つ目の部分は、教育分野での競争力。OECD(経済協力開発機構)加盟国におけるGDPに対する教育支出を比較すると、日本は初等教育から高等教育まで最低レベルの状況が続いている。このような中で日本が教育での成果を上げているのは、各家庭が負担しているからにほかならない。

 もっともOECDの国際成人力調査では、日本は数的思考力と読解力の2項目で首位だ。OECDの平均を各年齢層で20点以上も上回っている。これは社会に出てからのスキルの向上や仕事を通じて学ぶ部分が功を奏しているためと分析されている。ただ、パソコンの使用頻度は、参加国中最低レベルであるため、この分野は改善が必要だ。

 4つ目の部分は、産業界における国際競争力の低下である。特に電機業界では、重電分野はグローバル競争力を高めているものの、家電分野の立ち遅れが目立っている。その結果が、国内家電大手が発表した数千億円規模の赤字だ。グローバル競争戦略に遅れをとったためである。

 ただし、近年はソニー・日立・東芝の中小型ディスプレー分野を統合しジャパンディスプレイを発足させたほか、事業の撤退や売却などによる構造改革、過剰人員のリストラなど、さまざまな対策により筋肉体質に変身しつつある。

稲庭「風」うどんはNG

 5つ目の部分は食文化の浸透度である。日本食は、低カロリー、健康的でおいしい、見栄えも美しい――と、三拍子揃っている。こうした食文化は他に類を見ない、世界一の食文化と評価されている所以である。全国47都道府県には、それぞれ独自の食材や料理があるなど、繊細で木目細かさも持つ。

 韓国食も世界的に高い評価を得ているものの、3年前頃の東洋経済日報の記事における評価では15位くらいで、当時のイ・ミョンバク大統領が日本食の最高評価に韓国食も近づけたいという目標を掲げていたくらいである。

 さてそんな質の高い日本食であるがゆえに問題も多い。米国や欧州、韓国などでの日本食店はたくさんある中で、日本人経営や日本人のシェフがいる店では日本の味を再現しているが、現地人が見様見真似で経営している店での食感はいただけない。

 それぐらいならまだ許せる範囲ではあるが、商標侵害もあり、これは由々しき問題である。台湾で「讃岐うどん」の商標を取られてしまい、日本の讃岐うどんの進出ができなかったなどの事例はあちこちで起きている。TPP問題もある中、グローバル市場で食材やブランド名が流通する今後の動きにおいて、本当に価値の高い食は商標でしっかり押さえておく必要があると言える。もっと競争意識をもって、侵害させない強い姿勢が求められる。

 今、ホテルのレストランや百貨店での食品偽装問題が芋づる式に摘発されている。筆者自身、本年3月に既にこのような問題を取り上げ、地元紙で指摘したことがあった。

 麻布十番の飲食店に出かけた時のことである。食材へのこだわりが強い店で料理も美味しい居酒屋チェーンである。日本酒の仕入れも全国から行っており、東北のお酒もトップに紹介されている。メニューを見ると名品「稲庭うどん」があった。

 同行した知人が「稲庭うどん」の名前は聞いたことはあるが食べたことがないと話したので、私が紹介するので一緒に食べようと注文。ところがコシや旨みがなく、こんな「稲庭うどん」に出会ったのは初めての経験だった。

 店員に「稲庭うどん」の出身地を聞いたら案の定、わからないとのこと。責任者の店長を呼んで尋ねたら、詳しいことはわからないため仕入れ元を確認するとのことで、その場で確認してもらったら仕入れ元までの特定はできなかったが秋田の物ではないとのことだった。「稲庭うどんを食べたいというお客様が初めて食した時、このうどんならば稲庭うどんはまずいものと印象付けられる。これはブランド侵害行為でしょう」と伝えた。

 「稲庭の後に『風』を付ければ出しても良いだろうが、このまま見過ごすわけにはいかない。私もこのメニューにだまされた。稲庭うどん産地の近くが実家なので私もこだわっている」との意見に、「このうどんの代金はいりません。今後どう対処すべきか検討します」との回答だったので、「また次回来て確認したい」と伝えた。

 5月に同じメンバーで再度訪問。メニューを確認したら「稲庭うどん」が消えている。店長を呼んで確認したら、私が指摘した翌日にすぐこの問題を採り上げ、どうするか対応を考えた末、本物でないものは扱わないことに決めて4月下旬にメニューから外したという。それまでの経過措置として、「稲庭うどん」を注文したお客様には秋田の物ではない「稲庭風」であることを告げた上で注文を採ったという。

 この店の対応にはいささか感動した。顧客の意見を迅速に最大限反映して行動に移すこと、その姿はどんなビジネスでも商売にでも共通するマインドそのものである。食材に限らず、このようにブランドを保護して偽物を排除していく文化がどの程度高いかどうか、それが国家の品格とも定義できるのではないだろうか。

 中国食材の安全・安心を問題にした日本であるが、食材の偽装は消費者からはもとより、他国からの批判の対象になることは避けられない。国の品格としても、偽装問題を払しょくし信頼回復につながる対応が急務である。

 最後の部分は観光魅力の発信度である。2012年の外国人訪問者数を国別に比較すると、日本は33位。一方で人口が日本の半分に満たない韓国は23位である。優れた観光名所や文化、食など魅力が豊富な日本が低迷しているのは、観光資源の魅力を十分に伝えられていない証しである。

 観光庁が2016年の目標としている2000万人の外国人訪問数に対しても、国家間競争力を意識して、積極的に働きかけ発信していく対応が望まれる。

技術経営から見る競争力

 ホンダとサムスンでの経験から競争意識を整理してみたい。個々の競争意識の事例は、これまでのコラムで触れたものもあるが、考え方や行動様式の視点で捕らえてみる。

 ホンダでの最初の業務、すなわち自動車の腐食問題を解決するプロジェクトの活動をしていた際に、時折、「前例がない」という意見を耳にした。前例はどこかで初めて作られるものであるから、「前例を創る」ことこそ価値を生むことであるはずなのに。それ以降は、前例のないことを実践する気概で業務に取り組んだ。

 新規事業は、まさに前例がないものを具現化することである。ホンダの場合、航空機事業や2足歩行ロボット、自動車の電動化、太陽電池事業などもその典型であった。

 もちろん、すべてが成功するわけではない。ホンダの子会社であるホンダソルテックは2006年12月に設立され、「CIGS系」と呼ぶ太陽電池事業を推進してきたが先日、2014年には事業撤退することが発表された。設立以来、商品競争力の維持・向上に努めてきたものの、シリコン価格の下落に伴うシリコン結晶系太陽電池パネルの値下げなども影響した。太陽電池業界の激しい競争環境の変化の中で、当初の事業計画達成の見込みが立たなくなり事業継続は困難と判断された。

 太陽電池は完全なる後発でスタートしたが、後発であればあるほど、既存ビジネスに対する優位性を保有しないと事業としては難しい。サムスン在籍時代の2011年には、ホンダソルテックの経営トップと数回にわたり意見交換したことがある。それは、サムスンもCIGS系太陽電池事業をてがけていたことでの交流であった。サムスンのCIGS系も、独自に差別化できる強い技術や競争力を保有しているかと言えば、必ずしもそうではなかった。

 意見交換の際も、お互いの事業環境が厳しいことを認識していたが、元凶は中国の太陽電池事業が異常とも思える低価格競争を仕かけてきたことだ。その影響で、米国やドイツの企業の経営破たんが相次いだ。挙句の果てには、低価格化を仕掛けた中国最大手のサンテックまで経営破たんに陥った。

 太陽電池事業の各社の苦悩は、価格競争の波に入っていくと事業が存続できなくなる典型的な事例である。サムスングループが2010年に策定した経営計画でのシナリオには無理もあった。

 太陽電池事業を2020年までの成長事業5分野の1つに掲げたところまでは良かった。だが、計画は4800億円の投資を断行し、2020年には8000億円の売り上げ規模にするという壮大なものだった。その実現性は厳しく、成長事業に育て上げられるかどうかも疑わしい。

 同じ様な問題は、サムスンが成長事業5分野に選定したLED(発光ダイオード)と車載用リチウムイオン電池事業でも抱えている。LEDには7000億円の投資計画、車載用リチウムイオン電池には4500億円の投資で2020年に8200億円の売上高目標が掲げられてきた。

 その後、LEDは価格破壊が生じ、計画がまったく成立しない状況に陥った。車載用リチウムイオン電池は本格的な普及はこれからであり、価格破壊のシナリオは当面ないだろうが、なぜこのような事業規模が算出されたのだろうか。

 これこそが、日本の企業と大きく違うところだ。緻密に算出されるものではない。2020年の車載用リチウムイオン電池の市場がどの程度の規模か。調査会社やコンサルティング会社が予測する市場規模の中で、売上規模が大きくなるように保守的な予測より楽観的な規模の大きな予測値を採用する。

 仮に予想が2.7兆円規模だとすると、そのどれだけのシェアを握るか、すなわちどれほどの競争意識をもって果敢に目標設定をするかという流れである。おおよそ30%のシェアを握ると算定し、単純計算で事業規模が8000億円を超えるという目標を描くのである。

 30%のシェアを握れば世界シェア首位となる可能性は高いが極めて難しい。10月17日の本コラム「車載用電池、日本勢の強さの秘密」でも述べたが、それは車載用リチウムイオン電池事業では日本勢が強みをもっているからである。

 2020年の成長事業5分野には、他にヘルスケア事業を組み込まれている。この5分野で4兆円の目標を設定したのだが、そのシナリオは既に崩れている。そういう状況の中でも、サムスンの経営計画では2020年の事業規模目標を約39兆円と発表している。成長5分野事業では4兆円の見込みが崩れている中で、どうしてこのような数値が出てくるのか。

 そのシナリオも緻密な経営計画からの算出というより、現在の事業規模の約2倍という単純明快な設定である。競争意識を働かせて策定し、そこに向かって突き進むという猪突猛進的な韓国文化そのものである。このスタイルは日本企業にはない。ただ、かなり無理があるのも事実である。

高い競争意識は教育現場から

 社会での競争と向き合っていくためには、社会に出てからの個人の意識改革では遅すぎる。高等教育ではもちろんだが、むしろ初等教育からの意識づけが重要だ。

 ここでの競争意識とは、初等教育から高等教育における成績だけのことではない。生徒や学生が個人の強みを発見・発掘して自己を形成していくことだ。社会に出る際に、どんな分野に自分の身を置くのか。どんな分野で競争していくのかという意識のことである。

 職種はさまざまだ。企業人、公務員や教員、農家、漁師、スポーツ選手、芸術家、さらには起業家もそうだ。どんな分野で仕事をしたいのか、そしてどうなりたいのかなど、教育を受ける段階から考えなければならない。

 つまり、自らが競争をしていくためには、どのフィールドで闘えばいいのかを考えさせる必要がある。どこにも魅力的な分野を見つけられなければ、起業して魅力的な分野を創り上げることも選択肢に入るだろう。

 そのためには、教育を行う側の改革も必要だ。特に、中学生以上には外的刺激は重要だ。そこにヒントを得て自らを磨いていくことで個人の能力が向上する。やがて社会で競争意識を持って活躍できる基礎を築くことになる。

 日本がたどってきたキャッチアップ型産業中心の時代とは異なる、改革や新たなモデルを生み出すイノベーションが各界に問われている中、画一性ではなく多様性に価値を置く人材創りが問われている。

このコラムについて
技術経営――日本の強み・韓国の強み

 エレクトロニクス業界でのサムスンやLG、自動車業界での現代自動車など、グローバル市場において日本企業以上に影響力のある韓国企業が多く登場している。もともと独自技術が弱いと言われてきた韓国企業だが、今やハイテク製品の一部の技術開発をリードしている。では、日本の製造業は、このまま韓国の後塵を拝してしまうのか。日本の技術に優位性があるといっても、海外に積極的に目を向けスピード感と決断力に長けた経営体質を構築した韓国企業の長所を真摯に学ばないと、多くの分野で太刀打ちできないといったことも現実として起こりうる。本コラムでは、ホンダとサムスンSDIという日韓の大手メーカーに在籍し、それぞれの開発をリードした経験を持つ筆者が、両国の技術開発の強みを分析し、日本の技術陣に求められる姿勢を明らかにする。


 

 
グーグルが抱える「唯一の」誤算

著名アナリストに聞くスマホ特許紛争の行方

2013年11月14日(木)  田中 深一郎

 ドイツのフロリアン・ミューラー氏は、知的財産関連の専門誌から「知財分野において最も影響力のある50人」に過去何度も選ばれるなど、世界的に著名な特許アナリストだ。米マイクロソフトなど有力企業に対してコンサルタント業務を手がけているほか、知財を巡る最新動向をつづったブログ「FOSS Patents」も業界関係者から注目を集めている。

 特許と言えば、最も話題になっているのがスマートフォンを巡る米アップルと韓国サムスン電子の訴訟合戦。端末販売で激しく覇権を争う両社の動向には常に耳目が集まるが、いまや特許紛争はスマホ業界に属するあらゆる大手企業にとって避けては通れない問題になっている。

 その中で、ミューラー氏は、米グーグルが2012年に125億ドル(約1兆2500億円)で買収した米携帯端末大手モトローラ・モビリティが、グーグルにとって「大きな見当違い」になったと指摘する。モトローラの保有していた特許が、グーグルのAndroid(アンドロイド)陣営を紛争から守るのに十分な効力を持たなかったことがその理由だ。

 一時期の勢いが減速したアップルや、新興国勢の追い上げにあうサムスンに対し、スマホのインターネット広告でも支配的な地位を築いているグーグル。順調そのものに見える同社の「誤算」の背景と、今後の特許合戦の行方について話を聞いてみた。

グーグルは“パニック”になった

グーグルのモトローラ買収は「過払いだった」と指摘していますが、その理由は。

ミューラー氏:グーグルのモトローラ買収が完了したのは2012年5月だが、合意自体は2011年8月になされていた。したがって、2012年5月の時点では、グーグルはもはやこの買収について後戻りできない段階に来ていた。もし、当局による独占禁止法の調査が済んだ後で合意を破棄しようものなら、同社にとって大きな信用問題になっただろう。

 2011年8月というと、経営破綻したカナダの通信機器大手ノーテル・ネットワークスの特許権を、アップルやマイクロソフト、ソニーなどで作る企業連合のロックスター・コンソーシアムが45億ドルで取得した直後だ。この際のオークションにはグーグルも参加したが、結果的には勝つことができなかった。グーグルはそれ以前にも米国のノベルというソフトウエア企業の特許買収にも失敗しており、この時点でグーグルは“パニック”の状態になったと思われる。

 しかし、モトローラ買収が完了する2012年5月までには、特許関係者の間では、モトローラの持つ「標準必須特許」(その特許を侵害することなしに規格に準拠した製品を製造できない特許)の効力について既に疑問視されるようになってきていた。2011年の終わりごろから、欧米での多くの特許訴訟における司法判断で、標準必須特許に関連して販売の差し止め命令が簡単には下りないということが明らかになってきたからだ。グーグルがもくろんだ、アップルやマイクロソフトに対する販売差し止めは望み薄になった。

なぜそのような誤算が生じたのでしょう。

ミューラー氏:繰り返しになるが、グーグルはノベルとノーテルの特許権取得に失敗し、あわてていた。そして、モトローラの持つ標準必須特許が競合企業にクロス・ライセンスや販売差し止めを迫るうえで大きな武器になると過大評価したのだ。さらに、標準必須特許以外の特許も、アップルやマイクロソフトに対して十分な競争力を持つものではなかった。

特許評価額、3分の1以下でも過大

 いわば、グーグルはモトローラの特許が「MAD(相互確証破壊)」(編集部注:東西冷戦時代の言葉。2つの核保有国のどちらか一方が核兵器を使えば、最終的に双方が破滅するという原則。この原則が、互いに核兵器の使用を思いとどまらせる抑止効果につながるともいわれる)のシナリオを作り出すための「核兵器」になると考えたが、結果的には役立たずな武器を手に入れてしまったということになる。

 特許の観点から言えば、グーグルのポートフォリオは現在の紛争を収めるのには結びつかない。おそらくグーグルの経営陣は、特許に関してあまりにも単純に考えすぎたのだろう。マイクロソフトやアップルの洗練された特許戦略を見ても、彼らの考えるほどに知財戦略が簡単ではないということが分かる。

 もちろん、買収額の125億ドルがすべて過払いだったというわけではない。ただ、グーグルはモトローラの特許権を55億ドルとして評価したが、毎年のように多くの特許が失効していることも踏まえると、たとえ15億ドルでもやや楽観的すぎる評価ではないかと考えている。

訴訟費用は問題ではない

スマホ訴訟全体の行方について考えを聞かせてください。新興国のプレーヤーなどの台頭でスマホ市場の競争が激化する中、アップルとサムスンがこれまでのように訴訟合戦を続ける姿勢を変化させるという見方もあります。

ミューラー氏:両社が和解に動いたりするという考え方には、私は賛同しない。世間の常識からすれば、何年も特許訴訟で争うより和解した方がコスト面ではメリットがあるということになるのだろうが、アップル・サムスン訴訟にその考えは当てはまらない。今や、訴訟をやめた場合に失うものが非常に多く、費用は問題ではなくなっている。

 一方、米国、ドイツ、日本など、知財保護の考え方が浸透した先進国では、アンドロイド搭載端末は知財面で強いプレッシャーにさらされている。アンドロイド端末のメーカーは、マイクロソフトやアップル、ノキア、ロックスター・コンソーシアムに対して特許使用料を支払わずに済ませることはほとんど不可能になっているからだ。端末メーカーがBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)のような新興国市場に注力しているのは、こうした事情が背景にあるとも言える。

このコラムについて
記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

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[12削除理由]:無関係な長文多数

04. 2013年11月14日 00:59:21 : niiL5nr8dQ
【第71回】 2013年11月14日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
“世界一のビジネス環境”は本当か?外国人・外資系企業のニーズを汲み取れていない「国家戦略特区」
 安倍晋三内閣が「成長戦略」の柱として、地域を限定して大胆な規制緩和や税制改革を行う「国家戦略特区」が注目を集めている。政府が、国際競争力強化に貢献できる地域を「特区」に選定し、大胆な規制緩和を行うものである。

 外国人医師、看護師の拡大や、英語が通じる病院を増やす「医療特区」や建物の容積率、用途規制を緩和し、都心で外国人が暮らしやすい高層マンションを建てやすくする「都市再生特区」、「解雇ルール」、「労働時間法制」、「有期雇用制度」の3点を見直し対象として、外資系企業やベンチャーが優秀な人材を確保しやすくなる「雇用特区」、そして「農業」「教育」「歴史的建築物活用」と6分野での特区を設ける方針となっている。

 その狙いは、外国人が働きやすいビジネス環境を整えて外国企業を誘致し、世界と戦える国際都市の形成、国際的イノベーション拠点を整備することだ。安倍首相は、国家戦略特区を日本が持つ可能性を最大限引き出すための「突破口」と位置づけ、首相主導で進める考えを示している。

外国人・外資系企業のニーズが
何も入っていない「国家戦略特区」

 ただ、気になることがある。それは、「外国人が働きやすいビジネス環境を整える」といいながら、国家戦略特区を構想している「産業競争力会議」の委員に、外国人がいないことだ。委員は、学者と日本企業の代表者が主である。彼らは外国人不在のまま議論を進め、なんとなく外国人が望むと思われることを羅列してみたという感じだ。

 もちろん、国家戦略特区では、医療、教育、住居といった、外国人が日本に滞在する際の「大きな障害」をなくすための規制緩和案が多数提示されている。しかし、明らかに外国人・外資系企業の現状と乖離した規制緩和の案も含まれているのだ。

 例えば、「雇用特区」では、「やむを得ない事情がないと企業は自由に解雇できないという『解雇ルール』を適用除外し、企業と働き手が約束した条件に沿って解雇することを認める」という規制緩和案がある。一見、終身雇用・年功序列を採用しない外資系企業にとって望ましい案のように思える。だが、現在でも外資系金融機関にとって、正社員の解雇は難しいことではない。例を挙げると、外資系企業で社員をいきなり会社の外に締め出す「ロックアウト解雇」が行われていることは周知の事実である。

 一方、雇用特区では、「日本の雇用ルールを説明する雇用労働相談センターの設置や、解雇に関する判例をまとめたガイドラインの作成」が行われることになっている。これは、外資系企業にとっては、日本型雇用慣行に縛られる「規制強化」でしかないのではないだろうか。

どんな企業に来てもらって
何を目指すのか不明確

 そもそもであるが、「国家戦略特区」にどんな外国人・外資系企業が来ることを想定しているのか曖昧である。特区に誘致したいのが、金融機関か、製造業なのか、IT企業か、あるいは工場か研究機関か、本社機能なのか、わからないのである。そして、それが日本経済の成長にどのように資するのかも、示されていないのだ。

 外国人・外資系企業といっても、大手金融機関、製造業、ベンチャー系のIT企業では、ニーズが全く異なるのではないだろうか。しかし、国家戦略特区が目指すものが不明確なために、さまざまな特区構想では、業種別の細かなニーズの違いが検討されていない。「世界一のビジネス環境」というスローガンだけは立派だが、外国人・外資系企業が要望すると思われるものを、ただ総花的に羅列するだけに終始しているのだ。典型的な日本の有識者会議だなという感じだ(第13回P.2を参照のこと)。

外国人・外資系企業にとっての
日本進出のメリット・デメリットを考えていない

 更にいえば、「国家戦略特区」には、外国人・外資系企業が日本に進出するメリット・デメリットが何も検討されていない。はっきり言えば、日本企業の代表を揃えただけの産業競争力会議では、自らの企業の成長だけが関心で、外資の誘致など、本気で考えていないのだろう。だから、日本企業の競争力強化という狭い考えに終始してしまう。以前論じたが、「日本企業の成長=日本経済の成長」ではないのである(第57回P.5を参照のこと)。日本経済全体を見通して、世界で戦えるリソースにどのようなものがあるのか、検討する必要がある。日本の長所は「ものづくり」だけではないのである。

 日本のメリット・デメリットを考える際の参考として、以前この連載で取り上げた英経済紙「The Economist」の「新興国企業と英国:新しい特別な関係」を再び紹介する。この記事では、インドのタタ財閥など、新興国企業が自国の「政治的リスク」を避けて、規制が少なく、企業買収が簡単で「オープンな英国市場」に投資し、英国の「ブランド力」と「高度なノウハウ・知識の蓄積」「高い技術力」「質の高い労働力」を獲得し、欧州、北米、中東、アフリカ、アジアをカバーする英国の「地理的条件の良さ」を活かして、輸出を拡大していることを論じている。

 ここで重要なのは、「政治的リスクの低さ」「知識・情報の集積」「ブランド」「高い技術力」「質の高い労働力」「地理的条件の良さ」という条件は、日本も持っているものだということだ。世界的に見れば日本の民主政治の基盤は抜群に安定し、政治的リスクは最も低い国の1つだ。地理的には中国・北米の巨大市場をカバーする優位性がある。高度な技術・知識・情報・人材の集積に対する高い評価はいうまでもない。SONY、トヨタ、日立など日本ブランドの評価も高い。本来、新興国にとって、日本は英国に劣らず魅力的であるはずだ(第43回を参照のこと)。そして、これは外国人・外資系企業が日本進出する際のメリットとなるものと考えられる。

 一方で、日本のデメリットは「参入規制の高さ」ということになるだろう。だから日本で国家戦略特区を構想し、規制緩和を進めることには合理性がある。しかし、規制緩和を進めてビジネス環境を整備して、外国人・外資系企業が参入してくるのを待つという「受け身」の姿勢だけではなくて、日本のメリットを生かして、より戦略的に狙いを定めて、優秀な人材や企業を日本に呼ぶことを考えるべきではないだろうか。

「外資系製造業特区」で
雇用問題、デフレを解決する

 本稿では、「外資系製造業特区」を提案したい。これは、この連載で何度か取り上げた外資系製造業の高品質部品製造・研究開発拠点を日本に誘致すべきだという主張に基づくものである(第43回、第57回を参照のこと)。

 産業競争力会議では、雇用をいかに創出し、「雇用の流動化」をどう作っていくかが重要な課題となっているという。その焦点は、いかに雇用規制を緩和して成熟産業から成長産業に人材を移していくかである。そして、サービス産業や1次産業が雇用創出の場となる可能性があるので、それらを育成していかなければならないと考えられている。

 しかし、本当にサービス産業などが雇用の受け皿になるのだろうか。「ものづくり大国」の日本は、製造業、建設業の発展によって高度経済成長を成し遂げた歴史がある。現在でも製造業に約1000万人、建設業に約500万人が従事しており、雇用問題の中心も製造業・建設業なのである。

 日本が「失われた20年」と呼ばれる長期経済停滞に陥ってから、ずっと縮小する製造業・建設業の雇用の受け皿はサービス産業だと言われてきた。だが、製造業・建設業の失業者を受け入れることが可能な新しいサービス産業は、この20年間日本に生まれることはなかったのである。今後も、新しいサービス産業が生まれるというのは、幻想に過ぎないのではないだろうか。

 逆にいえば、製造業・建設業の縮小で発生する失業問題は、新しいサービス産業がカバーすると考えるよりも、製造業の工場を増加させることで補わねばならないのではないだろうか。しかし、アベノミクスでも海外に移転した工場は戻ってきていない。そこで、本稿が提案するのが「外資系製造業特区」なのである。

 ここからは、以前の論考を「国家戦略特区」に当てはめてみるものになる(第57回を参照のこと)。狙いはズバリ、欧米の製造業である。現在、欧米の製造業は、自国の工場で研究開発と高品質製品の製造を行っている。そして、最終製品の組み立ては、部品を自国から中国、インドなどアジア諸国へ送って行っている。この研究拠点と高品質製品の製造拠点を、日本の「外資系製造業特区」に移転してもらうのだ。

 これは欧米の製造業にとって、明らかなメリットがある。まず、巨大市場・中国での拡販に際して、輸送費などコスト削減が可能になる。研究開発拠点を日本に置けば、よりアジア市場に近いところで、顧客ニーズを汲み取った開発が可能にもなる。また、「高い技術力」を誇る日本の中小企業を下請けに起用できる。更に、「技術を盗まれる」リスクが高い中国より、日本のほうが安全でもある。日本の「地理的条件の良さ」「高い技術力」「政治的リスクの低さ」が欧米の製造業にとってメリットとなるのだ。

 一方、日本側にもメリットがある。欧米企業の製造拠点が日本に進出すれば、国内の労働者の「雇用機会」が増えることになる。日本の製造業をリストラされた中高年が、その経験と技術を生かせる格好の受け皿となるのではないだろうか。また、日本企業の下請けだった中小企業が、欧米企業からの発注も受けられることになる。欧米企業からの受注が増えれば、中小企業は親会社の理不尽な安売り要請を断ることができる。そして、親会社は中小企業への発注金額を上げざるを得なくなる。中小企業の売上・利益拡大につながり、労働者の給与も上げられる。まさに「デフレ対策」となり得るのだ。

 コストの高い日本に欧米の製造業が工場を置くだろうかという疑問があるかもしれない。しかし、そもそも日本企業はグローバル時代の戦略として、研究開発と高品質製品の製造拠点は日本国内に維持するとしてきた。ならば、日本企業の戦略としてではなく、日本経済全体の戦略として、外資系企業に対して、研究開発と高品質製造の拠点を「特区」として提供すればいいのではないだろうか。「外資系製造業特区」こそ、もはや縮小を続けるだけと考えられてきた日本の製造業を劇的に拡大させる可能性があるのではないだろうか。

もっと積極的に外国人・外資系企業にアプローチすべし:
ロンドン&パートナーを参考にする

 しかし、「外資系製造業特区」を設置しても、ただ外資系企業が来るのを待っているだけでは不十分だ。特に、ドイツ、フランス、北欧などの製造業に、積極的に高品質部品製造・研究開発拠点の移転を働きかけていくべきだろう。

 英国の事例を参考にする。英国では、2011年4月1日、ロンドンのプロモーションを担う新組織「ロンドン・アンド・パートナーズ(London & Partners)」が設置された。これは、ロンドンの観光促進業務を担う「ビジット・ロンドン(Visit London)」、ロンドンへの投資誘致機関である「シンク・ロンドン(Think London)」、海外の学生向けにロンドン内の大学への留学情報を提供する「スタディ・ロンドン(Study London)」が合併・統合して設置された組織である。

 本稿で取り上げるのは、ロンドン・アンド・パートナーの、ロンドンへの投資誘致部門である。この部門は、ロンドンへの世界中からの企業の誘致を担当している。ただし、ただ外国企業からのアプローチを待っているのではない。世界中のどんな企業の、どの部門を誘致するか、戦略的に考えて行動しているのだ。

 それは、英国が金融、法律、会計、コンサルタントなどの高度サービスの中心であることを最大限に活用した企業誘致戦略である。具体的には、外資企業の工場ではなく、欧州のヘッドクォーター機能をロンドンに設置してもらう、という明確な戦略を持って企業にアプローチしている。

 また、ロンドン・アンド・パートナーは政府機関であるにもかかわらず、多様な国籍のスタッフを雇用している。例えば、日本人のスタッフもいて、日本企業の誘致を担当して、多くの実績を挙げている。ロンドン・アンド・パートナーの活動には、日本が参考にすべき点が多数あると考える。

 日本は、もっと知恵を絞って考え抜いて、日本を世界中の人々や企業にとって魅力的な舞台にしていくために、より積極的に、戦略的に行動すべきである。そのために「国家戦略特区」を活用できるなら、意義ある取り組みとなるのではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/print/44356

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