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特別レポート 当事者能力ゼロ、もはや時間の問題 そのとき何が起きるのか東電破綻 メガバンクが貸した2.1兆円はパー… 
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投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 11 月 14 日 08:31:00: igsppGRN/E9PQ
 

特別レポート 当事者能力ゼロ、もはや時間の問題 そのとき何が起きるのか東電破綻 メガバンクが貸した2.1兆円はパー、4.4兆円社債も紙クズに
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37431
2013年11月14日(木)週刊現代 :現代ビジネス


東京電力は瀕死の巨象だ。延命装置を外せば、巨象は倒れる。それは原子力ムラの無責任体質に切り込む改革の始まりか、日本経済を奈落に落とす劇薬か。ゲームセットの笛が、まもなく吹かれる。

■覚悟を決める時が来た

止まらない汚染水漏れ、遅々として進まない除染、混乱続きの賠償問題……。かつて「財界の王」として君臨していた存在感は見る影もなく、東京電力が末期的な機能不全≠ノもがき苦しんでいる。

国が1兆円のカンフル剤≠注入して東電を実質国有化してから、もうすぐ1年3ヵ月が過ぎようとしている。しかし、事態がなんら好転せず、むしろ悪化するばかりなのは、汚染水問題への杜撰な対応の数々を見ても明らかである。

傷だらけの東電に、同情する向きはもういない。いますぐ破綻処理せよと、東電に最後通牒を突きつける声は日増しに大きくなっている。国会の場や大手メディアで東電破綻が公然と語られ始めたのが、「最終ステージ」に入ったことを物語る。東電問題に詳しい弁護士の久保利英明氏が言う。

「今は汚染水が騒がれていますが、今後もまだまだ問題がたくさん出てくるでしょう。それを東電だけで解決できるわけがありませんし、福島第一原発事故直後のあのちぐはぐな対応を見ていれば、この会社に責任能力がないのは明白です。

ですから私は、最初から東電を法的整理すべきだと主張してきました。今でも遅すぎるということはありません。即刻、法的整理に踏み切るべきです。国は覚悟を決めて、救済は国の責務だということを踏まえてやる。国が賠償を担わないで、東電だけで被災者を救済することはできません」

10月23日、東電は福島第一原発の排水溝の水から、超高濃度の放射性物質が検出されたと発表した。一部が海に流れ込んだ可能性があり、汚染水が「コントロール」されていない実態が再び明らかになった。

当事者能力を失い迷走を続ける東電の経営陣に、投資家たちも愛想を尽かし、我先にと東電株からの脱出を始めている。前述の放射性物質検出の件が報道で流れた際にも、マーケットに東電株への売り注文がなだれ込んだ。

「福島第一原発には地下水が流れ込んでおり、汚染水がこれからも大量に生産されてしまうことは明らかです。汚染水問題や除染、廃炉などに対する東電の対応は限界にきている。そうした対応への財政的負担も不透明化する中にあっては、東電を破綻処理したほうがいい。破綻処理によって生じる問題もありますが、一刻も早く国が判断するべきでしょう」(元財務官僚の小黒一正・法政大学准教授)

■「世紀の破綻劇」になる

東電破綻は避けられない。もちろんそれは、いまだ経験したことのない世紀の破綻劇だ。

2010年に破綻して日本全国が大騒ぎとなった当時の日本航空(JAL)と比べると、東電の売上高は約3倍の5兆9700億円。株主数も2倍近いのだから、前代未聞の大型破綻になるのは明らかである。

東電の場合、「関係者」の数も半端ではない。

次ページの図にあるように、86万人を超える個人投資家、3635社もの国内法人が東電株を保有。融資をしている金融機関には「大手」の名がズラリと並ぶ。中でもメガバンクとの関係は深く、3メガからの借入金合計は約2・1兆円('11年3月時点)にのぼる。

さらに、年間1兆円を超える「東電マネー(設備投資+製品調達)」に関わる取引先の数は4500社ほどといわれる。こんな巨大企業が破綻すれば、日本経済を揺るがす事態が各地で同時多発的に起こり、最悪の場合は日本経済を根っこから崩落させる巨大テロ≠ノなりかねないのだ。

「通常の破綻処理スキームを使った場合、株券は価値がなくなり、銀行の融資も大半がカットされるので、まずは金融市場がパニックに陥るでしょう。東電を破綻処理するとなれば、複雑で膨大なスキームを作る必要があり大変な時間がかかる。スキームを作っている間から、金融市場の混乱が出てくると懸念されます」(一橋大学大学院の山内弘隆教授)

実はこうした事態を見越して、金融機関はすでに対応に動き出している。

東電など電力会社が発行する社債は、その電力会社が破綻した際に、ほかの債権より優先して返済してもらえる特別な仕組みになっている。

「そこで昨年、メガバンク、大手生保などの金融機関が東電に『1兆円融資』を行う際は、実は社債(私募債)を引き受ける形を採用し、より確実にカネが返済されるようにしているのです。金融機関はいま、過去に行った巨額融資についても、この社債スキームに切り替えようと動いているし、今後の新規融資についても同じスキームを使うと言われています」(嘉悦大学の小野展克准教授)

しかし、金融機関がなりふり構わぬ防衛策を講じても、東電破綻の巨大インパクトからは逃げ切れない。

東電が破綻すると、一体何が起こるのか―間違いなく言えるのは、真っ先にやられるのが金融機関だということだ。

「なぜなら、法的整理というのは、債権債務関係をすべて整理するということ。まず東電の株の価値がゼロになり、その後に資産が残っていれば債権者におカネを戻す流れになる。おそらく東電破綻を決意した政府は、『資産はない』と言うでしょう。つまり、優先的に弁済される東電の社債も、破綻しておカネがないからという理由でカットされてしまう」(大手証券会社のクレジットアナリスト)

保有株、社債、融資すべてがカットされる。メガバンクが千億規模の損失を被る「金融ショック」の幕開けである。

■社債市場が大暴落する

同時に起きるのが、社債市場のパニックだ。

前述したとおり、東電の社債は「特別仕様」になっており、政府お墨付きで守られるものだとの安心感から投資家たちの人気を集めてきた。それを政府が紙クズにする判断をするとわかった途端に、電力債の投げ売り≠ェ始まる。

総理大臣が「東電を法的整理する」と宣言したその瞬間に、まず東電債の一斉売りが始まり、あっという間に値段がゼロ近くまで暴落する。さらにほかの電力債も連鎖的に売り浴びせられ、簡単に5分の1ほどの値段にまで急落するという。

「さらに電力各社の格付けが下げられ、社債での資金調達が難しくなる。怯えた銀行も電力各社への融資を手控え始める。全電力会社の危機≠ノ発展していくでしょう。日本の社債市場の約2割を占める電力債は『巨大銘柄』です。そこが揺らぐとなれば、銀行債、証券債、ほかの事業会社の債権も連想売りされ、多業種にわたる資金繰り難が発生する可能性も出てきます」(前出・アナリスト)

シュリンクする国内市場で過当競争に明け暮れる各社にとって、資金繰り難は「生死」を左右する一大事である。社債市場でいままで以上の高値≠ナ資金調達せざるをえなくなれば、そのツケは汗水流して働くわれわれの給料カットで払われることにもなる。

そこに追い打ちをかける事態が勃発する。日本市場は信用できないと見限った海外投資家たちが、一斉に脱出し始めるのだ。

それもそのはず。「3・11」以降に東電株に投資してきた人たちは、政府の「潰さない」という方針を信じてきたのに、これが完全に裏切られたことになる。社債権者たちも、電気事業法で決められた社債の安全性を日本政府自らが裏切ったことに、怒りが収まらない。

「潰さないことを前提に賠償支援などの対策をとってきた企業を突如潰すことにし、法律上保護されることが期待される社債権者にまで損失を押し付ける。そんなことをすれば日本という国、そして市場の信頼が完全に失われてしまいます」(BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏)

結果、政府に損害賠償訴訟を起こしたり、日本への投資をすべて引き上げる海外投資家が続出するのだ。

「想像もしたくないが、外国人投資家が売買の6割以上を占める株式市場では、どんなに業績のいい企業でも売りに晒されることになる。昨年12月から日本株を買い越してきた外国人投資家がこぞって去れば、日経平均がアベノミクス以前=8000円台まではいとも簡単に落ちていく」(大手シンクタンクのベテランエコノミスト)

■みんな海外に逃げ出す

それだけではない。日本企業の海外脱出も加速する。前出・山内氏が言う。

「東電が破綻して、燃料調達などにかかわる取引先の債権もカットされるとなれば、東電の燃料調達に支障が出る恐れがあります。また、破綻企業ということで取引先との交渉力を極端に失ってしまい、少なくとも燃料調達価格は引き上げざるを得なくなる」

となれば、コストアップした分は電気料金に上乗せされる。ただでさえ高い電気料金を支払っている日本企業が、これを嫌気して生産拠点を一気に海外移転させるのは自然の流れだ。

一方で、これまで東電におんぶに抱っこで生き残ってきた中小企業は東電と「共倒れ」という地獄の道を突き進むしかない。

ピーク時('93年)に年間1兆6000億円以上、直近でも毎年6000億円前後の設備投資を行う東電は、公共事業を発注してくれる国のような存在。それにかかわる企業は大手から中小、地元零細までが「インナーサークル」を形成し、過剰な競争はしないという暗黙のルール≠フ下で、数十億円、数百億円規模の売り上げが毎年懐に入るおいしい商売を謳歌してきた。東電が巨大マネー製造機と呼ばれる所以である。

しかし、破綻となれば東電も取引先の選別に手をつけざるを得ない。切られた会社は座して死を待つのみ。マネー製造機の「逆噴射」が、次々と企業を地獄の底へ突き落としていくのだ。

かくして、日本経済を取り巻く風景は一変する。

世界でも戦える巨大企業は海外へ逃げ去り、残された「弱小組」は、株安、高い電気料金などの苦しみの中で、コストカットという名のリストラ、給料カットを断行するしかない。それでも体力がなくなってきたところからバタバタと倒れ、失業者が街にあふれる。

アベノミクス景気は蜃気楼のように消え去って、消費者は再び財布の紐を固く締め、「悲願」だったインフレどころかデフレ経済に逆戻りする。そんな日本にベット(賭ける)する海外投資家はますますいなくなり、日経平均は泥沼にはまったように、8000円、7000円とズルズル下落し続ける―。

■もう後回しはできない

これが東電が破綻した場合の「最悪のシナリオ」である。ここまでの劇薬を飲まなければいけないのならば、東電を破綻させずに生き延びさせたほうがいいと思う人は多いだろう。

しかし、果たしてそうなのだろうか。経済産業省時代に東電の破綻処理を提言したことで知られる古賀茂明氏が言う。

「問題なのは、すでに実質破綻状態にある東電を、国の資金援助という『国家的粉飾』で債務超過を回避させ、しかもその税金負担を東電の経営にまったく責任のない国民や消費者に押し付けていることです」

本来であればまず東電の経営者を全員クビにして、株や銀行融資もカットすることで金融機関にも責任を取らせる。その上で、それでもカネが足りないのであれば、税金負担や料金値上げで消費者・国民に負担をお願いするのが筋だということ。古賀氏が続ける。

「しかし、財務省は東電が破綻して事故処理のコストを押し付けられるのを嫌う。経産省も東電破綻と同時に発送電分離など抜本的な電力改革が行われるのを回避したい。しかも、両省にとって銀行は最上級の天下り先だから、銀行に大損失を出させるわけにはいかない。

国が『前面に出る』などといって汚染水対策に470億円投じることを決めたのも、結局は国民に負担を押し付けただけです。破綻を回避する限り、原子力ムラと銀行の責任が国民につけまわされ続けることになるのです」

廃炉、賠償、汚染水処理、除染などの問題解決にかかる費用は数十兆円にのぼるといわれ、東電が支払えるわけがない。東電を延命させ続ければ、結果として今後何十年、何百年にもわたり、税金の逐次投入≠ニ電気料金の値上げが繰り返されることになるだけだ。

「東電を破綻処理して債権カットすれば、金融機関からの借入金約3兆5000億円の返済が不要になり、その分、賠償や除染のための追加税金投入を減らす効果がある。遅れている資産売却や余剰人員カットを加速させる起爆剤にもなります。一方で破綻処理をしなければ、銀行の貸し手責任と国を含めた株主責任が問われない。経産省の電力・原発行政の失敗がうやむやになり、利権も温存される。そして国民だけが負担を強いられる。そんな理不尽は許されません」(経済ジャーナリストの町田徹氏)

見てきたように、東電の破綻処理の過程では一時的なショックが起きることも想定される。しかし、このまま東電を存続させれば、国民は何百年と続く負担を背負わされることになる。どちらが日本人にとって、日本という国にとって「幸せな道」かは、自ずと答えが出てくるはずだ。

東電、銀行から国民すべてが東電破綻を受け入れたときには、破綻後のシナリオも変わってくるかもしれない。全国民一丸となって東電の処理問題に対してスクラムを組み、そこから「リスタート(再出発)」する意志を示した時、果たしてマーケットは日本株を売り浴びせるだろうか。「3・11」直後に日本株を投げ売った海外投資家たちが、キズナで結ばれ、自らの命も顧みずに他人を助けようと励んだ日本人の姿を見て日本売りをストップ、「強気の買い」に転じたことを忘れてはいけない。

東電を破綻させよう―そう叫ぶ国民の声が全国に広がった時にはじめて、本当の日本復活シナリオが幕を開けるのかもしれない。

「週刊現代」2013年11月9日号より


 

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コメント
 
01. 2013年11月14日 10:46:53 : nJF6kGWndY

>東電の破綻処理の過程では一時的なショックが起きることも想定される。しかし、このまま東電を存続させれば、国民は何百年と続く負担を背負わされることになる

あほらしい

どっちにしても、国民が負担するのは同じ

ただし破綻させると、国民全体で負担することになるから

リッチな東京圏の住人にとっては電気代が上がらなくて有難いか



02. 2013年11月14日 17:08:33 : TOYBO1vwmw
東京電力の法的整理論が再燃するわけ

森本 紀行 | HCアセットマネジメント株式会社・代表取締役社長
2013年11月14日 12時24分

東京電力の法的整理はあり得ない。このことは、明確な政府決定であって、それを前提として、原子力損害賠償支援機構が設立され、その支援のもとに東京電力が存立しているわけです。にもかかわらず、あり得ないはずの東京電力の法的整理を主張する人は、今に至るも、後を絶たない。これは、どういうことなのでしょうか。

「原子力損害の賠償に関する法律」の趣旨

私は、この問題について、2年半にわたって論じ尽してしまい、もはや、いうべきことなど残っていないのですが、改めて根本に遡り、再整理してみたいと思います。ここで根本というのは、「原子力損害の賠償に関する法律」の趣旨のことです。

何度論じても結論は絶対に変わらないのですが、この法律が存在する以上、東京電力に対して同法の適用は必ずなされなければならず、事実、適用がなされている限り、東京電力の法的整理は、論理的にあり得ないということです。

逆にいえば、東京電力を法的整理にしたければ、同法の適用を排除すればいい。しかし、それは、不可能でしょう。何しろ、東京電力は、法の趣旨に則り、適法に適用申請をし、政府は、それを適法に受理し、具体的な支援の枠組みを定めるものとして、「原子力損害賠償支援機構法」の法案を国会に提出し、それが成立したことを受けて、同機構の支援のもとで、現在の東京電力存立の仕組みができているのですから、この法律的に適正な手続きのものに確定した事実を覆すことなど、どうしたって、できっこないのです。

ならば、新たなる立法によって東京電力を法的整理にしろ、などという乱暴なことをいう人がいるかもしれませんが、現行法に矛盾する法律は作ることができず、現行法を改廃するならば、その変更は将来に向かってのみ有効であり、いまさら、東京電力に新しい法律を適用することはできません。

東京電力法的整理論の背景

しかし、理論的にあり得ない法的整理論が蒸し返されるについては、それなりの理由があると思えます。東京電力法的整理論には、二つの全く異なる系統のものがあるのでしょう。一つは、法理論的なもので、「原子力損害の賠償に関する法律」第十六条に定める政府支援を発動させる前提として、一旦は東京電力を法的に整理しておくべきであったというもの。二つは、単なる感情的な超法規論です。

感情論については、法律を無視するものである限り、特に論じる必要もないわけですが、経済的な権利関係を厳正な法律手続きのもとで処理しようとするとき、そこに、感情的なものを入れる余地など全くないことは、明確にしておかなくてはいけません。東京電力に対する社会的制裁として、法的整理を行うなどということは、断じてあり得ない。法的整理というのは、債権関係の法的整理のことであって、それ以上でも以下でもあり得ないからです。

他方で、第十六条に基づく政府支援の趣旨は、法的整理を回避する目的で東京電力を支援することではなく、逆に、法的整理を行ったうえでのみ政府支援が可能になるという法律的主張には、それなりに根拠のあるものでしょうから、ここは、丁寧に反論しておく必要があります。

日本航空との比較

実は、法的整理論というのは、伝統的な倒産法制の考え方を維持しようとしているのです。即ち、政府支援が行われることによって、その前後に、債権関係における断絶が生じなければ、そもそも、破綻と、その後の政府支援による再生との手続きが意味をなさないということです。

これは、その通りです。しかし、「原子力損害の賠償に関する法律」第十六条によって政府支援を受けなければならない東京電力の経営の状態というのは、倒産法制の伝統的概念によって説明されるものなのか。これが、究極の論点でしょう。

法的整理論の多くの人は、日本航空との類似で考えているのかもしれません。日本航空の場合は、法的整理が行われたからこそ、政府機関である産業再生支援機構が主導する経営再建が可能になったのであり、東京電力と原子力損害賠償支援機構との関係も、同様であるべきだというあたりが代表的見解なのではないでしょうか。

一般の破綻との本質的相違点

では、東京電力の場合と、日本航空のような一般の経営破綻とは、どこが根本的に異なるのでしょうか。

まず、電気の公共性については、経営破綻によって業務の継続が不可能になる事態を避けるために、再生を前提とした破綻処理の必要性があるのであって、東京電力を法的整理にしたところで、最初から事業継続を前提とした手続きが取られるでしょうから、電気安定供給自体は直ちに危機に瀕することはないでしょう。

ですから、日本航空と同様に、一旦は東京電力を破綻させること自体は、特殊な事業の公共性を考えても、不可能ではないと思われます。しかしながら、そうはいっても、東京電力の事案は、日本航空のような一般の破綻事例とは、かなり違います。本質的に違うといえるでしょう。

まずは、再生手続きのなかでは、一般に、日本航空の実例のように、事業の整理縮小が必要となる場合が多いのですが、電気事業の場合は、それはできません。もっとも、この点は、手続き上の制約条件であって、法的整理を不可能にするような本質的なことではありませんが。

本質的なことは、東京電力の負債のうち、圧倒的な比重を占めるのが、原子力損害賠償債務であることです。これは、債務額を正確に見積もることが不可能であって、全ての賠償が完了するまでは、その総額は確定し得ないのです。債務額が確定しないなか、しかも、最大規模の債務が確定しないなかで、どうしたら、債務の整理ができるのでしょうか。債務の整理は、再生の大前提であり、ここにこそ、法的整理の眼目はあるはずですが。

更に、重要な違いとして、原子力事故には、損害賠償の問題だけでなく、事故収束と廃炉に想像もつかないほどに巨額な経費を発生させるという特殊性があります。しかも、この費用は、見積もることもできないし、削減のしようもない。さて、こうした状況のなかで、仮に法的整理を行った場合には、合理的な仮定のもとで、即ち、十分に予見可能性のある将来見通しのもとで、その後の再生計画を策定できるとは、到底、考え得ないわけです。

こうした特殊性が、そもそも、法律的にという以前に、実際的に、法的整理を不可能にしているのです。「原子力損害の賠償に関する法律」の現実的な機能というのは、こうした困難な事態に対して、東京電力を存続させ、電気安定供給義務を継続履行せしめつつ、そこからあがる収益をもって、事故収束等にあたらせ、同時に原子力損害賠償の履行を完全ならしめる、そのための特殊な法律的な枠組みを定めることにあります。

安倍政権の新方針の影響

そうはいっても、実務的な意味では、論点は、二つに帰着します。第一に、原子力損害賠償債務の適正な見積もり、第二に、事故収束と廃炉に要する費用の適正な見積もり、この二つが可能になれば、法的整理も可能になるでしょうか。

確かに、この二点が解決すれば、とりあえず法律的な問題を脇におく限り、少なくとも実務的な面では、東京電力を法的に整理する条件は整うでしょう。しかし、実務的に可能ではあっても、現実に「原子力損害の賠償に関する法律」が存在している以上、法律的に可能になることはあり得ません。

安倍政権は、新方針を打ち出し、事故収束と廃炉について、政府が前面に出るとしています。そうならば、少なくとも問題の一つについては、解決の目途がつきますから、改めて、法的整理が近づくという思惑が浮上してくると予想されます。

政府が前面に出るということの具体的意味は不明ですが、政府の直接的な負担により、事故収束と廃炉を行うという方向にあることは間違いないでしょう。ただ、政府が前面に出るということは、前面にすぎないわけで、後方に東京電力が控えていなくてはならない。つまり、政府が前面に出て責任を負うことは、政府が全面的に責任を負うことにはならないはずです。

さて、ここが、現在、政府が頭を捻っているところでしょうが、もしも、東京電力の負担に上限を画することで、後方における東京電力の責任を有限化するならば、その時点で、東京電力の将来費用負担見積もりは合理的に可能となり、法的整理を可能にする実質的条件の一つは整う。

もしも、こうした事実の積み上げが進むならば、当然のこことして、東京電力法的整理論の再燃を促すでしょう。

安倍政権の決断

それでも、巨額な原子力損害賠償債務の無限性という問題は残ります。もしも、安倍政権が東京電力の負担する原子力損害賠償債務に上限を画する制度を導入する、即ち、上限を超えた無限責任部分を政府負担とする決断をするならば、東京電力の原子力損害賠償債務は確定債務となり、法的整理を可能にする実質的準備が更に整います。

ただし、これは、現在の支援の枠組みを根本的に変更することですから、東京電力に対する国民世論の動向が依然として厳しいなか、安倍政権にとっては、極めて困難な決断になります。もしも、安倍政権が決断するなら、もちろんのこと、私は、全面的に支持しますが。

事故当時、民主党政権は、東京電力の責任が主、政府責任は従という構図を作りました。それに対して、私の一貫した主張は、政府責任が主であり、東京電力の責任は従にとどめるべきだというものです。

今、安倍政権は、私の主張の方向へ政府支援の枠組みを変え始めています。まずは、事故収束における政府の主体的責任へ、そして、おそらくは、政府主導の廃炉、そして、さらに、原子力損害賠償における政府責任の明確化へまで進めば、私の主張は、事実上、完全に実現されるのです。私は、安倍総理大臣の決断に、大いに期待しています。

超法規的な東京電力制裁論

しかし、問題なのは、そのように政府が前面に出ていく条件として、即ち、支援の仕組みの抜本的改定を進めていく過程で、改めて、東京電力を法的に整理しようという動きが出てくる可能性です。もしかしますと、政府内部にも、国民感情に対する対策として、法的整理を支持する動きが生じるかもしれません。

原子力損害賠償、事故収束、廃炉、この全てについて、政府が前面に出て、東京電力の責任を有限化すれば、実務的には、東京電力の法的整理は可能になるでしょう。しかし、そのことは、法律的にも可能になることを意味しません。法律的には、法的整理は不可能です。

国民感情として、政府が前面に出るということは、東京電力の責任を政府が肩代わりすることとを意味するでしょうから、その代償を東京電力に求めるべきだという一種の制裁論が浮上してくることは、当然に予想されます。

もしも、ここで、東京電力法的整理論が浮上してくるならば、その背景は、感情的制裁論、あるいは、その国民感情を前提とした高度な政治論なのであって、法律を超えた超法規論になるでしょう。しかし、超法規論はあり得ない。法律の正義が政治に負けるような国は、亡ぶほかないのですから。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/morimotonoriyuki/20131114-00029784/


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