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「アベノリンピック」こそ日本の活路〔1〕/竹中平蔵(慶應義塾大学教授) (Voice) 
http://www.asyura2.com/13/hasan84/msg/862.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 1 月 10 日 18:00:00: igsppGRN/E9PQ
 

「アベノリンピック」こそ日本の活路〔1〕/竹中平蔵(慶應義塾大学教授)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140110-00000001-voice-pol
PHP Biz Online 衆知(Voice) 1月10日(金)12時24分配信


■経済効果は従来試算の7倍。2020年まで景気は拡大する■

2020年に開催が決まった東京オリンピック・パラリンピック。その経済効果について東京都は「7年で3兆円」と予測するが、最新の試算によれば、現実の効果はそれよりもさらに大きい。バブル崩壊後、経済停滞を続けてきた日本にとって、今回の開催決定は千載一遇のチャンス。果たして経済成長を実現させるために、政府や民間企業に求められる取り組みとは? 慶應義塾大学教授・竹中平蔵氏が景気拡大への戦略について解説する。


◆背水の陣で臨め◆

 2020年、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。誘致が決まった直後から、筆者は“アベノリンピック”という表現を用いてきた。アベノミクスという経済政策に、オリンピックという追い風が吹く。東京都の試算によれば、その生産波及効果は7年で3兆円となっている。しかし現実の効果は、それよりはるかに大きいだろう。オリンピックには、経済面で3つの効果が期待できる。3つの効果とは、

 (1) 通常のハードの経済効果
 (2) ソフト・パワー効果
 (3)「セーブ・フェイス(面子を保つ)」効果

だ。筆者らの試算(森記念財団・都市戦略研究所による)では、適切な政策運営さえ行なえば従来試算の7倍、うまくすればそれをはるかに凌ぐ効果があると考えられる。

 いうまでもなくオリンピックに期待するのは、スポーツを通した感動であり、経済効果はあくまで副次的なものだ。しかしいまの日本にとって、オリンピック・パラリンピックがもたらす効果を有効に活用することの意義はきわめて大きい。逆に、このチャンスを逃せば、本物の経済再生を実現する貴重な機会を失うことになる。重要なことは、オリンピックの経済効果は、決して待ちの姿勢で実現されるものではないという点だ。人材確保、資金調達、規制改革など課題は山積している。これを実現するという強い意志が、政府にも民間にも求められる。バブル崩壊後、経済停滞を続けてきた日本にとっては、いわば背水の陣で臨む覚悟が必要だ。

 以下では、ハードの経済効果、ソフト・パワー効果、セーブ・フェイス効果という3つの効果の各々について議論する。そのうえで、東京がいま大きく変わりつつあり、これまで容易にできなかったさまざまな改革の必要性とその効果を実感できる環境が生まれている。オリンピックが開催される2020年は、すでに多くの政策目標の最終年となっている。たとえば、財政健全化達成の目標年次だ。6月の成長戦略で示されたKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)の主要項目に関しても、ビジネス環境ランキングを15位から3位に引き上げる、対内直接投資を2倍にするなど、30項目が2020年を目標年次としている。オリンピックは、日本社会全体に強い求心力をもたらすことが期待される。こうした点をも踏まえ、アベノミクスをパワーアップするためにも、2020年オリンピックを視野に入れた包括的な政策プログラム「改革2020」の作成を提言したいと思う。

◆従来試算の約7倍の経済効果◆

 2020年のオリンピック・パラリンピックがもたらす経済効果の第一は、いわばハードの経済効果だ。公共工事の実施や旅客の増加といった、直接効果である。これに関しては、すでに東京都が試算を行なっている。産業連関表のオーソドックスな手法によるもので、結論として約3兆円の生産誘発効果が生まれ、うち4割が首都圏以外にも及ぶことが示されている。しかし、7年で3兆円というのはきわめて控えめな数値だ。付加価値の誘発効果は1.4兆円で、1年当たりに直すとGDPの0.04%程度にすぎないことになる。これは、施設整備費を都が行なう競技場などの改修などに限定していること、直接オリンピック目的で訪問する旅行客の消費のみに限定して試算していることによる。しかし現実には、後述のように2020年に向けてさまざまな効果が重なることによって、投資や消費は一層拡大すると考えられる。

 こうした問題意識に立って、筆者が所長を務める森記念財団・都市戦略研究所では、新しい試算を行なった。手法としては都と同様に産業連関表を用いたものではあるが、いくつかの点で前提が異なっている。たとえば施設整備費については都の試算に加え、「外環道(練馬―世田谷)事業費の1割が前倒しされる」、「地下鉄の一部延伸(豊洲―住吉)が行なわれる」、「成田・羽田アクセス鉄道の5割が実施される」などを織り込んでいる。また消費面では、ロンドンオリンピックの効果を参考に、従業者数が2020年までに21万人増加することの効果を見込んでいる。さらには、アジアヘッドクォーター特区と国家戦略特区が相俟って、2017〜2020年の4年間に年間50社、計200社の進出があると前提している。これらは、いずれも大胆な仮定ではあるが、後述のようにソフト・パワー効果、セーブ・フェイス効果を発揮すれば実現可能な前提と考えられる。

 試算によると、生産誘発効果は約20兆円と都の試算の7倍に達する(一部ソフト・パワー効果なども含む)。また付加価値誘発効果も約10兆円で、年当たりGDP成長率を0.3%押し上げることが明らかになっている。これに関連して注目されるのは、雇用誘発効果が7年で約100万人となっている点だ。こうした高い雇用効果が期待されることは、本来好ましいことだ。しかし現状の日本では、労働力とりわけ建設関係の労働力に大きな不足現象が見られる。せっかくの経済成長・雇用拡大のチャンスなのに、労働市場の改革と開放が進まないとその好機が失われるという懸念がある。後述するように、たんにオリンピックの経済効果を期待するという受け身の姿勢ではなく、このチャンスを活かすためにも国内の経済改革を進める、という覚悟が求められる。それがなければ、五輪効果もまさに絵に描いた餅に終わる。

◆最高のコンテンツを活かすソフト・パワー効果◆

 経済効果の第二は、東京と日本のソフト・パワーが高まることによって生じる効果だ。ソフト・パワーとは、まさに相手を惹きつける力にほかならない。考えてみれば、オリンピック・パラリンピックはいまの世界で最高の「コンテンツ」である。世界の人口の約7割が、テレビなどでオリンピックを目にするという。したがって主催国としてさまざまな企画を推し進めるなかで、開催前後の数年にわたって、日本と東京の世界に対する露出度を一気に高めることができる。前回のオリンピックを開催したロンドンは、見事にこうした力を発揮した。

 先に紹介した森記念財団・都市戦略研究所では、6年前から「世界の都市総合ランキング」を発表している。これは、70の指標を組み合わせ、経済・文化・生活など幅広い分野の総合力を指数化し、ランキングにしたものだ。それによると、毎年第1位ニューヨーク、2位ロンドン、3位パリ、4位東京が不動のトップ4として位置付けられてきた。しかし2012年、トップを走り続けてきたニューヨークが2位に転落。入れ替わって1位になったのは、オリンピックを開催したロンドンだ。詳細を見ると、このランキングを構成する70の指標のうち、とりわけ文化・交流の部門でロンドンの上昇が目立った。最大のポイントは、オリンピックの前後にロンドンで開かれた国際会議の数が大幅に増加したことだ。世界におけるロンドンの露出度が高まり、都市開発の新しい試みが知られるようになったことで、この際ロンドンで会議を開こう、というムードが各方面で高まったという。まさに、ロンドンのソフト・パワーが一気に高まったのだ。もちろんその背景として、誘致のためにロンドン市が力を尽くしたことも大きい。

 また国際会議が増加したことと並行して、ロンドンにおけるホテルの質と量が大幅に改善した。じつはいまの東京では、最高級の5つ星クラスのホテルの数が減少しているという。決してホテルがなくなっているわけではないのに、世界における5つ星の基準がどんどん高くなっているのだ。その結果、東京のホテルの質が相対的に劣化している。しかし今回、オリンピック・パラリンピックの東京誘致が決まったことによって、東京の老舗ホテルなどの大型改装・拡張が発表され始めている。ホテル建設は、結果的に大きな経済誘発効果をもつし、また雇用効果も生まれる。

 もう一点、ソフト・パワー効果として期待されるのが、クールジャパン戦略への貢献だろう。この点に関しては、すでに「クールジャパン推進会議」によってアクションプランが作られ、政府の成長戦略もこれを裏付けている。民主党政権時の政府の推計によると、近年における世界の文化産業の市場規模は約530兆円。これが20年には、900兆円超に拡大するという。しかし食を除く日本勢の売り上げは、現状では約2兆円にすぎない。日本に潜在力があることは、多くの関係者が認めるところだ。そこで経済産業省は、コンテンツ、ファッション、「食」などの文化産業を海外でも稼げる産業に育てたいと考えている。

 しかし統計によると、この関連分野で輸出が輸入を上回る「黒字」部門はゲームだけで、映画、音楽、書籍などは軒並み輸入超過となっている。決め手がないなかで、オリンピックという契機が大きな可能性をもたらすことは確かだ。しかし、これをどのように実現するのか……、従来のような安易な政府依存ではない方策が求められねばならない。

◆大きなセーブ・フェイス効果◆

 加えて筆者は、ハード・ソフトの効果を超えたより大きな効果として、第3のセーブ・フェイス効果を指摘したい。

 これまでも多くのエコノミストたちが、オリンピックの経済効果について議論してきた。そうしたなかでとりわけ注目されるのが、カリフォルニア大学のローズ教授らの研究だ。彼らは、1950年から2006年までのあいだにオリンピックを開催した国を統計的に調査し、その前後で貿易が3割も増加しているという興味深い事実を発見している。その背景にあるのは、オリンピック開催国という面子を保つために、多くのケースで貿易や為替に関する国内の古い規制が取っ払われたという点だ。要するに開催国として対外的な“面子を保つ(セーブ・フェイス)”必要に迫られ、結果的に国内改革が進み経済が活性化されたのである。この効果は、既得権益をもった人たちが奇妙な理屈をかざして、世界では当たり前の経済改革に反対してきた日本で、とりわけ期待したい効果といえる。

 わかりやすい例として、羽田空港の国際線拡大がある。もう10年以上も前から、筆者らは経済財政諮問会議の場で羽田の国際化を主張してきた。その結果、ようやく近年になって、まだ限定的ではあるものの羽田の国際化が進展してきた。しかしそれでも十分な成果が挙げられない要因として関係省庁が指摘するのが、「千葉県の反対(もしくは成田の反対)」である。たしかに成田空港を建設するに当たり、もはや羽田空港が限界であり新たな空港が必要であるとの認識が広く共有された。成田空港の建設自体、一部の大反対があり関係者がそうとうの苦労をしたことも事実だ。しかし、海外から日本を訪問する人びとからすれば、東京と千葉の関係はほとんど理解されないだろう。近年になって、都心に近い空港の重要性が世界的に見直されるなかで、羽田空港の活用拡大は当然の方向に映る。そうしたなかで、過去の経緯を引きずって羽田の国際化が進まないならば、日本全体の利益が大きく損なわれることになろう。過去の経緯はいろいろあるが、訪問客の利便を第一に考え対外的な面子を保つために、また日本の利益のためにも、オリンピックを1つの契機に「リセット」して新しい空港システムを整備する……こうした効果が期待される。


         ◇

「アベノリンピック」こそ日本の活路〔2〕/竹中平蔵(慶應義塾大学教授)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140110-00000002-voice-pol
PHP Biz Online 衆知(Voice) 1月10日(金)12時24分配信

◆オリンピックという「お白洲」◆

 これに関連し政策決定のメカニズムとして、オリンピックという一定の「お白洲」効果を期待したい。

 そもそも、政策は誰が決めるのか。政策決定論の永遠の課題だ。総理が決める、国会が決める、実質的に官僚が決める、世論が決める……。こうした指摘はすべて部分的に正しいが、決してすべてを包括的に言い表してはいない。この問題を考える重要なヒントが、政策決定に民間議員が多用されている、という事実に示されている。いま、総理が議長を務める「経済財政諮問会議」「産業競争力会議」などが政策に強い影響力を与えているが、それぞれ5名(日銀総裁を含む)、10名の民間議員が任命されている。また、各省の審議会を含めると、民間人の数はそうとうのレベルになるだろう。こうした民間議員の最大の役割は、「お白洲」効果を演出することにある。あくまで筆者の造語であるが、霞が関や永田町の関係者の私的な会話には、しばしば登場する。

 たとえば、規制緩和が期待されるある問題を、こうした会議で議論したとしよう。規制緩和を民間議員が求めた場合、関係官庁は存在する規制の有効性や正当性を主張する。これに対し民間議員は反論し、官庁が再反論……、これらを議事録を通して国民が見れば、規制緩和をせざるをえないという社会的プレッシャーが働く。そこで官庁は、やむをえず緩和の方向に進む。これが、お白洲効果のわかりやすい例だ。

 筆者が強調したいのは、こうしたお白洲効果がまさにオリンピック・パラリンピック開催によって高まるという点だ。もちろん、そのためにはいくつかの条件が要る。最大の条件は、お白洲で丁々発止の議論がなされたとして、それを裁定する政治家が明確なリーダーシップを発揮することだ。賛成意見と反対意見を、足して2で割るようなかたちでは改革は進まない。忘れてならないのは、たんにオリンピックが開かれるから経済がよくなる、という単純なものではない点だ。セーブ・フェイス効果のポイントは、これを契機に世界に目を配りながら前向きの国内改革を進めること。それによって、結果的に経済が活性化するという点にある。その意味で、政治のリーダーシップに裏づけられた改革努力が伴わなければ、アベノリンピック効果は生まれない。

 既述のように2013年6月に決定された成長戦略では、2020年までに実現すべきKPIが約30定められている。もしこれらがすべて達成され、結果的に経済財政の中期財政試算(8月8日公表)のように成長力が高まり、実質2%成長が達成されたとしよう。現状の潜在成長力が1%弱であることを考えると、アベノリンピック効果によって増加するGDPは、数十兆円の規模になる。これは、先に掲げた筆者らの試算(森記念財団・都市戦略研究所)を、さらに上回るものである。

◆東京の景色が変わる◆

 アベノミクスがもたらした1つの効果は、日本経済の「景色」を変えたことだ。日本の株価は過去1年で66%も上昇した(11月末時点)。主要国のなかで、群を抜いた上昇幅だ。3本の矢とされる各政策は、まだ一部を除いて本格的に効果が出るような状況にはないが、経済に対する政治的スタンスの変化が、市場における「期待」の変化となって表れている。そもそも景気という言葉は、鴨長明の『方丈記』に登場する言葉で、文字どおり「空気の景色」を意味する。この1年、日本経済の景色が変わるという予感が一気に広がった。

 もっとも、アベノミクスの今後には難問が待ち受ける。

 3本の矢、すなわち(1)デフレ克服のための金融緩和、(2)機動的な財政政策(短期:財政拡大、中期:財政再建)、(3)成長戦略、のうち、(1)の金融政策については実施中、(2)の前半の財政拡大についても実施中だ。しかし(2)後半の財政再建と、(3)の成長戦略はまだ仕掛け中、といわねばならない。2014年は、まず(1)金融政策の成果が本当に出るのか、問われる1年になる。そしていよいよ(2)の後半(財政再建)と(3)成長戦略について、政権の本気度を示さねばならない。その意味では、まさにアベノミクスは正念場を迎える。

 そうしたなかで、「期待」という漠然とした経済の景色を、より具体的でビジブル(可視化された)なものに転換する大きなチャンスを迎えている。それはいま、東京の街が目に見える変化を始めたことだ。そこにオリンピック誘致による新たな変化を付け加えることができれば、期待先行の経済基盤はより明確に強化され、同時にそれは政権の基盤を強化することにもなろう。

 東京の景色が変わりつつある、具体的な事例を2つ紹介しよう。財務省などが所在する政策の中心地虎ノ門から、新橋方面に向かう立派な道路が姿を現しつつある。いわゆるマッカーサー道路といわれたもので、第2次大戦直後から構想されていた幹線道路だ(現実にマッカーサーが計画したわけではない、といわれている)。この「新虎通り」は2014年度の完成をめざしており、沿道はファンシーな店舗が並ぶ「日本のシャンゼリーゼ通り」になると期待されている。その幹線道路の真ん中に、六本木ヒルズに匹敵する床面積をもつ巨大ビルが建設されている。(株)森ビルによる「虎ノ門ヒルズ」だ。道路はここの地下を走るというユニークな構造で、またビルの最上階には日本に初進出する高級ホテルが入る予定だ。よく見ればこの道路の南は築地のオリンピック選手村に繋がり、北は赤坂から国立競技場に向かう。要するに、オリンピック道路なのだ。虎ノ門ヒルズに隣接して、バスターミナルを建設するという計画もあると聞く。あらためて気が付くが、東京という都市にはこれまで、まとまったバスターミナルがなかった。都市が大きく変わるこの瞬間は、従来できなかったこと、できないとあきらめていたことをゼロベースで見直し、一気に景色を変える絶好のチャンスになる。オリンピックを契機にこうしたプロジェクトが前倒しになれば、経済と社会に大きな変化を生み出すだろう。

 東京の景色が変わるもう1つの身近な事例が、品川の開発だ。いまJRの東海道線は、南西から来て東京駅で折り返している。一方、高崎線や宇都宮線など北東から来る線は、上野駅で折り返すことになっている。そのために、北東方面用の車両基地と南西方面用の車両基地が、田端と品川に存在している。しかし東北本線・宇都宮線などを上野から東京まで延ばし、2014年度には東海道線と直通運転できるようになるという(東北縦貫線)。そうなれば、車庫は1箇所で済むことになる。そこで、都心に近く開発価値の高い品川車庫約15ヘクタールを開発しようというのだ。このニュースは、身近な話題としては「田町・品川の間に新駅ができる」というかたちで伝えられた。2020年に新駅ができるとすると、山手線としては1971年の西日暮里駅以来の出来事になる。じつに、49年ぶりの新駅だ。鉄道ファンならずとも、関心が高まる。

 品川という場所は、いろいろな意味で注目に値する。東海道新幹線のすべての列車が停車し、羽田にも近い。リニアモーターカーの発着駅も、品川である。ウオーターフロントにも近く、開発余地は大きい。考えてみれば、江戸時代の街の中心は両国や日本橋であり、それが丸の内方面へと南下してきた。また用途別に特色を強めながら、霞が関、六本木、新宿・渋谷へと広がった。その南下傾向がさらに進んで品川に至る、と考えることもできる。

 東京の街がこのように目に見えて変化しつつあるいまの状況は、経済機能を強化する大きなチャンスといえる。グローバル競争という言葉が頻繁に使われるが、その実態は都市間競争という側面を強くもっている。今日の産業が、都市立地型の知識集約産業を主体としているからだ。また、イノベーションを競う時代に、その拠点としての都市の重要性は高まっている。アートの時代という側面からも、多様な人材が交流する都市の機能が注目されるのだ。

 日本の都市行政を振り返っても、東京という大都市の機能をより重視しなければならないという方向性が見て取れる。第一次石油危機のころまでは、地方から3大都市圏への人口流入が続いた。これを食い止めるため、当時の国土政策は、地方への分散を進めることが基本となった。

 しかしその後は、地方からの人口はもっぱら東京圏のみに流入するようになった。大阪圏、名古屋圏の転出転入は、ほぼ均衡するようになったのだ。その後バブルの崩壊時に一時的に東京への人口流入は止まったが、その後再び地方人口の東京圏のみへの流入が続いている。これは、日本の産業構造が知識集約型・大都市型へと明確にシフトしたことを反映している。

 東京の存在感が高まるというトレンドのなかで、いま街の景色が目に見えて変化しだした。今後は、新たな国家戦略特区の枠組みなども活用することが可能になる。そうしたなかで、「羽田・東京・成田の高速鉄道が建設される」、「羽田の国際化が本格的に進む」、「都心交通の24時間化が実現する」、「新虎通りが日本のシャンゼリーゼ通りになる」、「東京の5つ星ホテルが画期的に増える」……こうしたワクワク感が生まれようとしている。

◆2020年までは長期の景気拡大◆

 オリンピック・パラリンピックの開催は、アベノミクスに対して本格的な追い風をもたらす。オリンピックの経済効果は、控えめに見ても従来の指摘の7倍はあることが明らかになった。しかしこうした効果は、この機会を利用して国内改革を進めるという、強い政治的意思があって初めて実現できるものだ。待ちの姿勢からは、何も生じない。建設需要の拡大などが生じて100万人の雇用効果が見込まれるが、それを可能にする労働市場の改革がなければ結果は生まれない。オリンピックのもつセーブ・フェイス効果を活用して、これまで滞ってきた規制改革が一気に進むことを期待したい。

 戦後最長の景気拡大は、小泉改革の時代の73カ月だった。今回の景気の谷は2012年11月であったと考えられる。したがって、小泉景気並みの長期拡大を続けることができれば、今後2020年のオリンピックまで景気拡大を続けることが可能、ということになる。そうなれば、安倍内閣が戦後最長の政権になる、という可能性も見えてくる。この際そうした強い意欲をもって、アベノリンピックという好機に挑んでもらいたい。オリンピック・パラリンピックの開催という求心力が働くこの時期に、2020年をめざした包括的な改革プログラム「改革2020」を作成し、整合的な改革を進めることができれば、アベノミクス第3の矢はさらに飛躍することになる。

(月刊誌『Voice』2014年2月号〈1月10日発売〉より)


■竹中平蔵(たけなか・へいぞう)慶應義塾大学教授
1951年、和歌山県生まれ。1973年、一橋大学経済学部卒。2001年、経済財政担当大臣に就任。以後、金融担当大臣、総務大臣などを歴任する。2013年、安倍政権で産業競争力会議有識者委員に就任。著書に、『竹中流「世界人」のススメ』(PHPビジネス新書)ほか多数。


 

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コメント
 
01. 2014年1月11日 00:54:32 : eVNDsfFNn6
高給ホテル? 何だそれ。

前にもコメントしたが、高級ホテルで人間がやることは屁をこいて寝るだけだよ。

オリンピック選手がそれぞれぞれ努力して競っていることは認めるが、しょせんそれは、パンとサーカスのサーカス。見せ物であることには変わりがない。

猫でも人間の金メダリストよりは早い。


02. 2014年1月11日 06:11:58 : efhj3iQRNI
こいつ頭病んでる。

03. 2014年1月11日 09:15:31 : NNHQF4oi2I
赤カブ 糞カブ
 
 竹中は ただ の出しゃばり  政策と 実行は反対の 下衆人間

04. 2014年1月11日 09:26:25 : ArLVW38Mhw
何の事は無い。借金まみれの老人国家が主催する巨大な公共お祭り事業である。無論開催地東京以外は蚊帳の外(トリクルダウンの一滴や二滴はあるやもしれぬ)。お客様を存分におもてなしした後の始末は、次世代へのツケとして大切に受け継がれよう。

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