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安倍自民党の「取材・出演拒否」で腰砕けのTBS。対象番組への大学生の評価は意外な結果 水島宏明 
http://www.asyura2.com/13/hihyo14/msg/154.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 8 月 21 日 08:56:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20130821-00027313/
2013年8月21日 1時57分 水島宏明 | 法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター


いささか旧聞に属するが、大事なことだと思うので記しておきたい。

6月26日にTBSの深夜のニュース番組『NEWS23』が放送した中身をめぐって、自民党がTBSに対して「公正公平を欠く」として抗議し、取材や幹部の出演を拒否する、という”事件”があった。一般の人たちからみれば、そんなこともあったっけ?という程度でも、マスコミ界ではきわめて衝撃をもって受け止められた事件だった。

放送されたのは先の通常国会の最終日。国会の閉会とともに事実上の参議院選挙がスタートした日だった。

この日、予算委員会の集中審議に安倍首相が欠席したことを理由に、生活、みどりの風、社民の野党3党から首相への問責決議案が出され、民主党も乗って可決された。結果として、重要法案とされた生活保護法の改正案、生活困窮者自立支援法案、電気事業法改正案などが廃案になった。

その夜の『NEWS23』は、国会審議の駆け引きが優先され、結果として重要法案が成立しなかった、と一連の政治状況を批判的に報道した。ナレーションでは「ねじれによる政局がうごめく一日」と表現していた。
4分40秒のVTRには、安倍首相の記者会見が繰り返し使用され、「問責決議の可決はねじれの象徴」などとする首相の発言が3回にわたって登場。安倍首相の肉声は1分10秒ある。安倍首相が映っているシーンだけで2分程を占める。問責決議をめぐってどんなやりとりがあったかは詳しく説明せず、こうした「政界におけるドタバタ劇に落胆する声も多く聞かれた」として、発送電分離の電気事業システムを作る予定の電気事業法改正案が廃案になったことへの憤りを自然エネルギー財団の大林ミカ氏に語らせている。

「非常に許せないですね。やっぱり政争の道具にされていますよね。
問責決議案の前に法案の採決をしようという動きもあったわけですから、それを結局与党がそうしなかったのは、もしかしたらもともとシステム改革の法案を通す気がなかったということ。非常に残念ですね」。

その後で、やはり廃案になった生活保護法改正案や生活困窮者自立支援法案についても触れ、田村厚労相が「非常に残念」とコメントしていた。
この後、事実上の選挙戦がスタートしたとし、自民、民主、維新の党首たちに選挙への意気込みを語らせている。

これらの報道で、自民党が問題視してTBSに抗議したのは、問責決議にいたる説明で与党側の言い分が報道されておらず、大林ミカ氏のコメントだけを使って「廃案の責任が全て与党側にあるように誤解させる内容がある」というものだ。

ことの顛末としては、放送翌日の6月27日に自民党はTBSに「著しく公正を欠く」とする抗議文を出し、TBS側が「ご指摘を受けましたことは、私どもとして誠に遺憾」という本文わずか6行のそっけない回答を返す。さらに再度、自民党が抗議文を送る、というやりとりの後、けっきょく自民党はTBS側の対応を不服として参議院選挙の公示日である7月4日、自民党幹部への取材や幹部の出演をTBSには拒否する、と発表した。
(参考:自民党ホームページ「TBS「NEWS23」への抗議を巡る経過」https://www.jimin.jp/activity/news/121684.html )

結果として、翌7月5日にTBSの報道局長が自民党に文書を手渡し、「御党より指摘を受けたことを重く受け止めます」「今後一層様々な立場からの意見を、事実に即して、公平公正に報道して参る所存です」と伝えた。これを受けて、自民党は「事実上の謝罪をしてもらった」(BSフジでの安倍首相の発言)として取材・出演拒否を解いた。(なおTBSは政治部長名で「謝罪はしてない」とするコメントも出しているので、部外者から見ると分かりにくい。だが、報道局長が自民党に出した文書を読むと自民党側が「事実上の謝罪」だと受け止めるのは当然といえる内容だ。)

ここまでは、以前、報道された周知の事実だ。

本論はここからだ。

問題になった『NEWS23』を見ても「どこがどう偏っているのか」がテレビ記者を長年やってきた私自身もピンと来なかった。

ただし大林氏がコメントした問責決議に関する与党のかかわり方や与党側の意図については実際に関係者を取材したわけではないので、私にはその真偽を判断することはできない。つまり大林氏のコメントが客観的な事実に基づいているのかが分からないことを前提にしておく。

私が調査を試みたのは、問題の報道がはたして自民党を不利にするような報道だったのか、という点だ。当のニュースを見ると実際にどんな感想を持つのかを調べてみることにした。大学でテレビ報道に関する講義を受講している大学生136人に映像を見せて、与党と野党のどちらに有利な報道だと思ったのか感想を書いてもらった。

結果は、「与党に有利な報道だと感じた」が41%。「野党に有利な報道だと感じた」が38%。「どっちが有利とも言えない」が21%。

意外なことに一番多かったのが「与党に有利」だった。理由として学生たちが挙げたのは、「VTRの中で安倍首相はじめ自民党の映像が占める時間が長く、結果として自民のイメージが強い」という感想。それに「ねじれ国会で野党が出した問責決議が可決され、結果として重要法案が成立しなかった。ねじれをなくさないと大変だという印象を視聴者に抱かせた。自民党に有利に働いたニュース」という声も多数あった。

他方で、「安倍首相や自民党に厳しい印象があった」という声もあった。大林ミカ氏の名前を挙げるなど「与党に法案を通す気がなかったと報道したことは野党に有利」とした学生も少数だがいた。

いずれにせよ、数の上で「与党有利」がやや多く、次いで「野党有利」と、かなり拮抗している。それだけに、見る人間によって評価や受け取り方が分かれる報道であったことは間違いない。誰が見ても偏向した報道、というわけでなく、相当に微妙な報道であったといえる。

そういう微妙な報道だった点を考えると、細かい報道の中身までを政権党が問題視して、選挙公示日になって特定のテレビ局にだけ取材拒否、出演拒否をする、という行為が民主主義が進んだ国の政党と報道機関のあり方として、それでよいのかは問われるべきだろう。仮に放送された大林ミカ氏の言葉が自民党側が考えていた「事実」と違うとしても、それは問責決議可決に関して彼女が感じた「評価」や「解釈」の問題にすぎない。選挙になれば、これまでの政策の実績から国会運営にいたるまで厳しく吟味されるのが当然の与党が、わざわざ1社だけ名指して問題にするほどのことだったのだろうか。

むろんTBSの対応の是非も問われる。
自民党に対して「事実上の謝罪」をしたといえるような対応についてだ。
取材・出演拒否が自局の選挙報道に与える不利益を計算してあわてたような、あまりにその場しのぎで無様な反応ではないか。

TBSは「報道における公平公正をどう考えるべきか」を自民党と徹底的に議論しても良かった。あるいは「政権党ならば、番組内で反論してほしい。そのための時間は差し上げます」と強気に出ることもできたはず。しかし、残念ながらそうした度量はTBSにはなかった。ジャーナリズムの筋を通すというよりも損得勘定で腰砕けになった印象が否めない。自分たちに若干の落ち度があると感じたならば、番組で検証をやっても良かったと思うが、そうした思い切った対応もしなかった。要は中途半端なのだ。

学生たちに問題の『NEWS23』の映像を見せてから、この映像について自民党が「公正公平を欠く」として抗議し、TBSへの取材拒否・出演拒否の理由になった、と知らせると、ほとんどの学生が一様に驚いたという反応を示した。

「これぐらいでガタガタ言われたら、自由な報道なんかできない」
「自民党がTBSを謝罪させたのは怖い。これでは他のマスコミも自由に報道できない」

このようにアンケートに書いてきた学生もいた。真っ当な反応だと思う。

以前も書いたNHKの「安倍政権ヨイショ報道」など、このところ政権に配慮するような報道が目につく。各局ともTBSを他山の石として政権ににらまれないように気をつかっているようだ。
(参考 http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20130809-00027128/ )

アメとムチでメディアをコントロールする安倍政権には一筋縄では立ち向かうことはできない。だからといって、強大な権力に対して、ジャーナリズムの企業がとるべき態度は自分の会社がターゲットにならないようにヨイショすることではない。TBSの問題を、テレビ全体、あるいはマスコミ全体の問題として、共同歩調を取り、健全なジャーナリズム機能を守ることを最優先するべきだ。民放連とか新聞協会など、話し合う「場」はたくさんある。それなのにそうした動きが出てこなかったのはどうしたわけだろう。

TBSにしても「どこがどう公正でないのか?」「われわれが公正だとする根拠はこうだ」「政権党は個々の報道に対して大人の対応をしてほしい」などと自民党と論争しても良かったはずだ。それをしないままに報道局長が釈明に行ったことは、各党の党首らを一堂に集める参院選関係の報道番組を前にして想定外の出演拒否を宣言されて腰がひけた、と言われても反論できまい。

こういう問題は、1社だけの問題にせず、マスコミ全体の問題として、対抗していくべきではなかったか。政権党が個々の報道に口をはさむようになるとテレビ報道は政権ヨイショの「大本営発表」になるばかりだ。
本来、それを許してはいけないのだ。介入してきた場合、ジャーナリズムは毅然と闘わなければならない。メディア側が目先の競争で目を曇らされている中で、政治の側の牽制・介入の巧妙さが際立っているではないか。

つくづくTBSは悪しき前例を作ったものだと思う。


水島宏明
法政大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー 『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロン ドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレク ターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ 親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科 学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。


 

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