やはり、この連載記事の狙いは日本の地熱開発阻止にあった様子ですね。

日本の場合、高温岩体発電での井戸の深さは２０００ｍから４０００ｍ程度です。アメリカでのシェールガス開発での掘削深度はかなり深く、３０００ｍから５０００ｍ程度です。

更に、アメリカのシェールガス開発の規模はとても大きく、日本で言うと一つの市の面積全体のそこらじゅうにシェールガスの開発井戸が掘られるという状況ですが、日本での地熱開発はせいぜい一つの開発現場の大きさは小学校の校庭ぐらいの大きさです。

日本の地熱開発でも当然地震の誘発は有り得ますが、事前に地震誘発の危険性を考慮して開発をすることは十分に可能です。

＞便利さだけを追求する技術。そこに落とし穴はないのだろうか。

この文章自体がとても世論誘導を意図していますね。「便利さだけを追求する技術」とは何を指しているのだろうか。そもそも、車にしてもテレビにしても、携帯電話にしても、どんな技術もそれなりにいい面も悪い面もある。そして、そういった中で、いかに弊害がないように実用化するかということで苦心してきている。

どんな簡単な技術にだって、それを悪用することで、いろいろな危険性はある。こんなことは常識であり、「そこに落とし穴はないのだろうか」と言うこと自体が、この連載記事が地熱発電反対のキャンペーンであることの証拠だ。

反対から言えば、アメリカは日本の地熱開発をそれだけ恐れているということだ。

＞原発と同じように温泉・環境利権を圧殺し、他の地元民を金で釣って進むことになるだろう

また、おかしなコメントが付いています。地熱は温泉や環境となんら対立するものではありません。

地熱発電については、非常に大規模に温泉と競合するというデマが広められています。しかし、それは例えば、車を使えば事故が起こるというのと同じような論法なのです。車を使わなければ確かに交通事故は起きないでしょう。しかし、だからと言って車を使わない社会は現状ではとても考えられません。

どんな技術もいい面と悪い面があるのです。そして、地熱についてはそのよい面が悪い面を確実に上回っています。温泉枯渇については、地熱がどの程度の規模で分布をしているかを調べることがある程度できるようになっていて、また地下水の供給量も雨量などから推定ができ、どの程度の規模の地熱開発なら永続できるかが分かるのです。一般的に一つのプラントで３万キロワット程度です。これは、現行の普通の原発が１００万キロワットであることから、その３０分の１ていどです。しかし、敷地面積にしても小学校の校庭程度の広さで可能ですから、原発の広大な敷地に比べたら十分に合理的な規模なのです。

環境省の公的な見解は、地熱発電によって枯れた温泉はないということになっています。

しかし、日本温泉協会などは地熱発電に反対する態度をとっているようです。そして、このことについては非常に興味深いことがあるのです。

「地熱発電の隠された真実」という本が出版されています。書かれたのは温泉協会の方です。５００ページ近い大著なのですが、その中に、学者の方が書かれた記事がかなり載っているのです。ところがこれがほぼみんな？？？と思える記事ばかりなのです。
例えば、１２３ページには「地熱発電と地震」越生忠（元和光大教授）という論文が載っているのですが、その内容はまさしく上の記事、つまり、「シェールガス採掘現場で地震頻発」と同じで、「車を運転すれば事故が起こる」と言うことだけを述べているものなのです。つまり、環境的な要素、つまり、地震が起こりやすい土地があることや、どうやれば被害地震を起こさずに地下資源を利用できるかなどの考察は一切ないのです。また、当然、地震が起こっている地熱開発の例は一部であり、大部分の地熱開発では地震が起こっていないのですが、それも触れられていません。

そして、太陽光や風力は発電量の変動があり、また、電圧や周波数の変動があり、なかなか、一般の送電線へは給電できず、様々な設備が必要になり、相当に高価な電源なのです。もし、太陽光だけで給電することになれば今の電気代の３倍では足りないでしょう。でも、地熱は安定的な発電が可能で、発電量も、周波数も、電圧も変動しません。そして、かつ、日本は地熱大国であり、世界でも５本の指に入るぐらいの地熱資源国なのです。日本以外の地熱資源国はどこも現在盛んに地熱開発をやっています。日本だけが地熱開発が進んでいないのです。

地熱は温泉と共存できます。そして、地熱開発をやれば電気代は今の３割減程度にはごく普通にできるはずです。つまり、電気代を安くできるのが地熱発電なのです。ほかに電気代を安くできる発電方法はありません。

自分は、人口１万人程度の地域ごとに地熱発電所があり、そこに温泉施設が併設されていて、一日中そこへ住民が集うという未来を思い描いています。少子高齢化した未来の日本社会にとり、単に工業化とか、産業の高度化を追い求めるのは無理があり、それよりも知識集約型の企業と、地域ごとの住民の自治・自立化のようなものの共存が良いのではと感じているのです。

なるほど、たった数日で大地震を起こせるのか、すごいというかこじつけと言う
か、興味深い。

今や、日本の地熱開発企業がアフリカで地熱開発をする時代です。日本で地熱開発をしないのはあまりにおかしなことです。