その点、串田氏も木村教授もきちんと主張をされていたと思う。

マグニチュード８と９の食い違いは３０倍もあるのでこんなに違ったらだめだという成功基準をはっきりしろという主張は以下の点でおかしい。

１．木村教授の理論、つまり、地震空白域での微小地震の活発化が近い将来の大地震の予告だという理論自体の批判になっていない。巨大地震の空白域で巨大地震が起こることやその前兆に微小地震があることは非常に分かりやすいもので、理論としてはかなり大雑把であっても十分に正当性がある。理論そのものへの批判をしていないゲラー教授の主張はおかしい。

２．マグニチュード３と予告していたものが４であったというのであれば、理論として成立しないという主張は納得が行く。なぜなら、Ｍ３もＭ４もかなり日常的に起こっていて、Ｍ３レベルはほとんど生活に影響がないが、Ｍ４だと交通機関などは点検を行うことが多いからだ。しかし、Ｍ８とＭ９の違いは、実生活から見ると、どちらも巨大地震で地盤の点検から耐震化、堤防の準備と強化など事前にやれることは多い。また、どちらも日常ではほとんど経験することのない地震規模であり、数百年以上に一度の頻度でしか起こらない。よって、木村教授の予知はとても意味があったのであり、このことについて触れないゲラー教授はおかしい。

３．２と重なるが、実を言うと、１９７０年代かまたはその前か、地震学会で全国各地の大地震の可能性を検討して、こことこことここが危ないというような地図を出したことがある。そして、それには見事、阪神大震災の震源域が含まれていた。そして、その出し方が木村教授が言われている方法とほぼ同じ。つまり、地震空白域を選び出していたのだ。ゲラー教授に聞いてみたい。地震空白域に注目することは世界的な潮流ではないかと。

ゲラー教授は串田氏は毎週ファックスを送っているのだから、たとえあたったとしてもまぐれ当たりだと断言されている。

１．ゲラー教授には事実誤認がある。または曲解と言ってもいい。串田氏は毎週ファックスを送っているが、その大部分は特に問題がないとか、いついつまでに地震が起こることはないとかというもの。実を言うと、串田氏は琵琶湖周辺の地震についてはこの数年間起こる起こると言い続けていて、この部分でこのままではまぐれになってしまうのではと言われている。しかし、これも誤解だ。串田氏は予告をしているのだが、予告するためには現象が確定する前、つまり、現象が完全に収束する少し前に現象を解釈して、地震時期を決めなければいけない。そのため、このままであればもう少しで現象が収束するだろうと予測して、いついつこの程度の地震が起こると予告することになり、ところが、現象が収束しないという事態がずっとこの数年間続いているということなのだ。

２．だから、本来であれば、本当に直前情報として、前兆現象が完全に収束した段階で予報を出せば、きちんと当たるはずだと思うが、大きな地震の場合、直前に予報を出しても混乱を招くだけであるという面もあり、そうは考えていないのかも知れない。ゲラー教授が言うべきことは、本当はこのことであり、単にまぐれ当たりだということは、串田氏のやり方をゲラー教授があまり理解されていないからではないかとさえ思えてしまう。

それは、この番組で予告した地震について危機感を抱いているからでは？

１．近畿地方、特に若狭湾付近で起こるＭ７以上の地震

２．房総半島沖で起こるＭ９越えの地震による津波

そして、もう一つは、首都直下がまだまだ起こらないという木村教授の主張を広めたいというものもあったはず。

自分としては、首都直下が最も危ないと思う。そもそも木村教授の地震の目理論は首都直下のようなプレートが４つも複雑にかみ合っている地域では通用しないはず。

＞木村教授は、首都直下も南海トラフもあと数十年は来ないと言う

南海トラフ地震があと数十年は来ないというのはかなりの多数意見のはず。そもそも、昭和南海地震から７０年程度しか経過していない。

ただ、首都直下は違う。貞観地震のときは１０年も経過しないで相模・武蔵地震が起こった。これは神奈川と埼玉にまたがる地震であり、首都直下と言っていい。

また、木村教授の理論は地震の目を見るものであり、そのためにはプレート境界が地表面に出ている必要がある。ところが、関東地方はプレート境界がほぼ水平に近く、またプレートが４枚も重なっている。これでは地震の目理論はあまり役立たない。

地震の目は微小地震の発生を見るものであり、その微小地震は大きな地震が起こる前の前兆現象としてのものだ。つまり、大きなアスペリティ、つまり、プレート同士の大きなそして頑丈なかみ合いが動いて大きな地震に至るが、その前には小さな、あまり頑丈でないかみ合いが動くはずだという理論。このためにはプレート同士が互いにかみ合っている必要がある。かみ合いの形状はどちらかと言えば垂直に近いほうが観測に都合がいい。つまり、かみ合ってる両方のプレートでの微小な地震を捉えやすいからだ。両方のプレートが地表面近くにあれば、大きなずれが起こるであろう部分の周りの微小な割れを観察できやすい。簡単に言えば、横ずれ断層型地震の時に木村教授の地震の目理論は威力を発揮しやすい。

しかし、首都直下のような場所は、プレートが上下に重なっていて、プレート同士がかみ合っている形状はほとんど水平に近い。こういった場合は、微小な割れと言っても、北アメリカプレートとその下に沈み込んでいるフィリピン海プレートの間で起こる微小地震は、そもそも、フィリピン海プレートでのものは北アメリカプレートによってカバーされてしまい、あまり地表近くにある地震計では捉えることが出来ない。同様に、フィリピン海プレートとその下へ沈み込む太平洋プレートとの間で起こるかみ合いの破壊の小さなものは、北アメリカプレートが両者の上にあるため、ほとんど検知できない。

このことは、震度１として表示される地震のほとんどが深度１０キロとか２０キロ程度であることからもはっきりと分かる。つまり、深度が５０キロとか７０キロになると小さな地震が起こっても地表の揺れとしては震度１にもならないからだ。もちろん地震計は震度１よりも微小な揺れを検知できるが、どちらにろ深度２０キロより浅い地震の方が深度６０キロ程度の地震よりも敏感に検知できるのは同じこと。