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 世界の現実とかけ離れた日本の“平和主義” 古森 義久
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投稿者 機智 日時 2014 年 1 月 28 日 09:05:42: yU/IUd8cSA/vo
 


第1回 
世界の現実とかけ離れた日本の“平和主義”
国際問題評論家 古森 義久氏

それはベトナム戦争から始まった……。やや気取って書けば、こんなふうになる。私が国際社会での安全保障とか危機管理、あるいは日本という国の防衛などというテーマを考える際に、その指針となる基本について、「ああ、これが真実であり、現実なのだ」という啓示を最も激しく得たのは、ベトナム戦争での体験だったのだ。正確にはベトナム戦争の報道での経験や考察だった、ということになる。だからおおげさに表現すれば、ベトナム戦争で自分の世界観が変わったともいえるのだ。

ワシントンは国家安全保障を考える最適地

さて、今回から始まるこの連載コラムでは、安全保障を中心に報告や意見を書いていきたい。発信地は主として私がいま産経新聞特派員として在勤する米国の首都ワシントンである。国際的な安全保障がらみの情報はなんといっても唯一の超大国と評される米国の首都が世界でももっとも豊富だといえる。安全保障というのは、もちろん私たち人間にとっての日ごろの生活や活動の安全を守ることでもあるが、国際情勢を踏まえての安全保障といえば、単に個人の私生活や家庭生活、あるいは隣近所の安全ではなく、現代の世界で人間集団のもっとも重要な単位となっている国の安全や安定が中心となる。安全保障の考察では国家や社会の基盤となる国家安全保障がどうしても主題となるのだ。その安全保障には当然、危機の管理や想定、防衛の政策や実態というテーマも含まれてくる。人間集団の経済活動ひとつをとっても、その活動の安定した保持のための安全保障という概念は切り離せないのだ。
 国家の安全とか防衛という課題になると、日本での論議ではまず「平和」という言葉が最高至上の目標として掲げられる。「平和こそがもっとも貴重な目標」「とにかく平和こそ守らねば」というようなスローガンがどんな政策論よりも優先される。では「平和とは、なんなのか」。「平和はいかに守るべきか」。国家安全保障を考えるときには、まず取り組まねばならない命題である。この命題への私の真剣な取り組みの出発点がベトナム戦争にまでさかのぼるわけだ。

私の世界観を揺さぶったベトナム戦争報道

なんとまた古い話を、と思われるかもしれない。ベトナム戦争は確かに30年前に終わってしまった。私がいまこのコラムを書くワシントンでも、6月21日の現時点で奇しくもベトナムの首相が1975年の戦争終結以来、初めて米国を訪れた。この日、ベトナムのファン・バン・カイ首相はホワイトハウスにジョージ・ブッシュ大統領を訪問し、両国首脳の初めての公式会談を開いたのだった。長い年月の経過を実証する展開でもあった。

だがその一方、ワシントンの中心部では在米ベトナム人たちによるかなりの規模の抗議デモが催された。ベトナムの共産党独裁政権に対し、宗教の自由の弾圧や言論の自由の抑圧を非難するデモだった。また米国全土に居住する多数のベトナム戦争元帰還兵たちも、このベトナムと米国との首脳レベルでの和解に複雑で多様な反応をみせた。21日夕方のワシントンでのカイ首相歓迎の晩餐会では、会場にそんな元帰還兵の一人が入り、大声で同首相への抗議スローガンを叫び、警備員に外へと連れ出された。

ベトナム戦争は米国でも終結から30年を経てもなお、人々の心を激しく揺さぶる今日性を有するのだ。“古くて新しい戦争”なのだといえよう。

私はベトナムの現地に住み、この戦争の報道にあたった。厳密にいえば戦争の報道が3年、その後に続いた革命の報道が半年と、計3年半、毎日新聞記者としての取材活動だった。1972年4月から75年9月までだった。この期間の最大の出来事はいうまでもなく75年4月30日のベトナム戦争の終わりである。当時の南ベトナムの首都サイゴン(現ホーチミン市)を十重二十重に包囲した北ベトナムの人民軍の大部隊が首都に突入して、南ベトナム政府(ベトナム共和国政府)を完全に粉砕した日だった。

サイゴン陥落の日、北ベトナム軍の戦車隊が首都中心部の南ベトナム大統領官邸の鉄門をぶち破った。構内に突入した戦車や装甲車から降り立った将兵が疾風のように、官邸建物に駆け込み、4階にあたる屋上に登って、革命旗を高々と掲げた。この瞬間、30十年にもわたるベトナム戦争は終わったのである。そんな大統領官邸の構内に、まだ若く精気いっぱいだった私もその直後入って、歴史的光景を目撃したのだった。

この戦争の終結のシンボルとなった旧大統領官邸の屋上近くの正面に数日して巨大な横断幕が掲げられた。戦争に勝った北ベトナム側、つまり革命勢力側が勝利を祝い、このベトナム民族独立闘争の始祖ホー・チ・ミン主席の常に唱えた政治標語を掲げたのである。なぜ闘争をしたのかの目的の宣言だった。
「独立と自由よりも貴重なものはない」横断幕にはベトナム語でこう大書されていた。「ベトナム民族にとって独立と自由より大切なことはない。だから民族としての独立と自由が得られない場合はその獲得のために断固として戦う」という意味だった。私はこの宣言にショックを受け、とまどいを感じた。「なんだ『平和』ではないのか」といぶかった。これほど長い歳月、血みどろの闘争を続け、やっといまその闘争が終わったなれば、まず平和の貴重さや平和の崇高さ、喜びをうたってよいはずだろう、と感じたのだ。

肩透かしをくった日本の平和への思い入れ

私がそんな反応を示したのも、日本でのベトナム戦争の認識がほぼすべて「平和」という一語に集約されていたからだろう。ベトナムとか戦争というだけで、日本ではまず自動的に「平和」というキーワードが連想され、叫ばれていた。「戦争を止めて、すぐ平和を」というわけだ。「べ平連」という反戦組織の名称がその例証だった。ところがその戦争での実際の勝利者たちは、「平和」には見向きもしなかったのだ。自分たちに最重要なのは民族の独立と自由であり、その実現のためには平和を犠牲にして戦ったのだ、と宣言してみせたのである。単に戦争がないという意味での平和であって、そこに独立と自由がないならば、その平和はいとも簡単に踏みにじって、戦争や闘争を始める、という思考のわけだ。一方、それとは対照的に戦後の日本では、国にとっても、人間集団にとっても、いちばん貴重なのは平和であると、教えられてきた。その平和絶対優先に少しでも疑義を呈せば、「軍国主義者」というような糾弾を即座に受けた。「平和」は「平和」でも、独立や自由がない場合にはどうするのか、というような議論はタブーだった。だがホー・チ・ミン主席を最高指導者として仏、米国、そして南ベトナム政府と戦ったベトナム革命勢力は、明らかに平和よりも独立や自由が貴重だと考えるのだ。そしてその思考に沿って、平和を犠牲にして、闘争を続けたのだった。ところが戦後の日本では、「国家や民族、社会にとって平和より大切なものが存在する」という考え方は犯罪的とされてきた。私は、その日本的な平和至上主義とはまるで正反対の考えをとる人たちがいることを、このとき頭をガーンと殴られるような衝撃でまたあらためて知らされたのである。陥落したサイゴンでの忘れがたい体験だった。

安全保障や軍事を考えずして国際関係は読めない

なにも日本がベトナム革命勢力と同じ平和観や戦争観を持つべきだというのではない。この世界には日本とは全く異なる平和観を持つ人たちが存在する──ということなのである。この点は世界の現実として認めざるをえない。私にとってベトナム以降の長い国際報道の体験では、この現実をますます確実に認識させられる結果となった。米国でも英国でも仏でも、あるいは中国でもインドでも、ソ連や東欧諸国でも、とにかく平和でありさえすれば、あとの状況はなにも問わず、どんな場合でも戦わないとする日本的思考を国家の政策として採っている国はないのである。私の記者活動はベトナム以降の30年、そんな世界の現実をいやというほど知らされる経験の積み重ねとなってきた。結果、私は国際関係を考え、読む際には、安全保障や軍事というファクターを政治や経済と同等に、あるいはそれ以上に、重視するようになった。その点では私は日本の戦後の、いわゆる平和主義からは外れた異端の現実認識を既に長い歳月、有してきたといえる。日本の戦後の平和主義とは、平和を保つには軍事や安全保障というテーマはとにかく遠ざけるという意味で、「消極平和主義」「非武装平和主義」「無抵抗平和主義」などと言い換えることもできる。私は日本での戦後の思考が世界での現実とはあまりにかけ離れていることを、諸外国での実体験によって、こうして学んできたのだった。その学習プロセスの大きな契機が30年前のベトナム戦争終結時の体験だったのである。

引用先:http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/01/index.html  

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コメント
 
01. 機智 2014年1月28日 09:07:04 : yU/IUd8cSA/vo : BSF0Y9dULQ
※ 投稿規定3回読みました。手続き遅くなりました。ペンネームの登録希望中です。どうぞ宜しくお願い致します。

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