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日本人こそ知っておくべき熱帯林消失の現状 東南アジアの森林を守るために何が必要なのか
http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/802.html
投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 13 日 09:28:06: tW6yLih8JvEfw
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43703
日本人こそ知っておくべき熱帯林消失の現状
東南アジアの森林を守るために何が必要なのか
2015.5.13(水) 矢原 徹一
インドネシアの製紙会社APPが保有する熱帯林。6頭のアジアゾウが暮らしている(筆者撮影)
 東南アジアは、いま世界で最も急速に森林が失われている国である。年間で日本の四国1個分の熱帯林が消失していると推定されている。その結果、大気中に二酸化炭素が放出され、多くの野生生物の生息地が失われている。

 そしてこの急激な熱帯林消失に深く関与しているのが、実は私たち日本人だ。私たちが大量に消費しているコピー用紙、カップ麺、自動車のタイヤなどは、熱帯林の犠牲の上に生産されている。この事実を紹介しながら、地球環境を守るために私たちが取り組むべき課題について考えてみたい。

スマトラ島の森林率は20年で約半分に

 私はこの記事を、スマトラ島の上空を飛ぶ航空機内で書いている。眼下に広がるのは、広大な熱帯雨林・・・ではない。そんなものはもはや存在しない。眼下に広がるのは、広大なアブラヤシ農園とアカシアやユーカリなどの広大な植林地だ。熱帯雨林はごく限られた保護区や、アクセスが悪い一部の場所にしか残っていない。スマトラ島の森林率は、1985年の57%から2007年の30%へと大きく低下した。私が訪問したリアウ州では、この22年間で実に89%の森林が失われた。

 これらの数字を知ってはいたが、実際にスマトラ島に降り立って、地上を車で移動してみると、いかに森がないかを痛いほど実感できた。

 私が訪問したのは、インドネシアの製紙会社APPが保有する40ヘクタールの熱帯林だ。「植林面積の10%以上の熱帯林を保護する」という法令にもとづいて残された林である。プカンバルの市街地からこの保護林に移動する間の約30キロメートルの道路沿いには、見渡す限りのアブラヤシ農園や植林地が広がっており、熱帯林は一切なかった。

 40ヘクタールの保護林はすばらしい森だった。樹高40メートルに達する巨木が林立し、樹木の多様性はきわめて高い。高さ15メートルの竿の先に取り付けた鎌で枝を採集したところ、同じ種類にはほとんど出合わなかった。500平方メートルで約300種の樹木があるだろう。同様な調査を日本の常緑林で実施した場合、樹木の種数は50種程度だ。

 この保護林には6頭のアジアゾウが暮らしている。熱帯雨林を背景に、アジアゾウが水場でたたずむ光景を、私は初めて見た。APPの保護林は、自然番組制作やエコツーリズムなどに活用できる大きな可能性を持っている。ただし、40ヘクタールの保護林は、アジアゾウが永続的に暮らすには狭すぎる。現存する6頭では、近親交配による劣化が心配だが、一方で40ヘクタールではより多くの個体を維持することは難しい。現在の6頭ですら、より広い面積を利用しようとするために、保護区の外に出ないように管理されており、野生本来の状態で暮らしているとは言い難い。

 この保護林を訪問して、ミヒャエル・エンデのファンタジー小説『はてしない物語』(「ネバーエンディング・ストーリー」として映画化されている)を思い出した。子供たちが本を読まなくなったために、子供たちの想像力が作り出すファンタジーの国「ファンタージエン」に危機が訪れ、国土が次々に消失していくという物語だ。

 アジアゾウが暮らす熱帯林はファンタジーではなく現実に存在する世界だ。しかしそれは、私たち日本人にとっては映像や写真でだけ見ることができる世界であり、その意味でファンタージエンと言ってもよいだろう。

 そして、その熱帯林を危機に陥れているのが私たち日本人の暮らしであることを自覚していないという点で、私たちは『はてしない物語』に登場する想像力を失った子供たちにそっくりだ。

農園や植林地にするほうが手っ取り早く稼げる

 東南アジアの熱帯林が次々に消失している理由は単純だ。熱帯雨林を切って木材を利用したあとは、もういちど森が育つのを待つよりも、農園や植林地に変える方が、手っ取り早く稼げるのだ。

 天然林で木材に利用できる大木が育つには約50年かかるが、アブラヤシであれば苗を植えてから3〜4年で果実を収穫できる。また、アカシアやユーカリの木は成長が早く、苗を植えてから5〜7年で製紙用のパルプ材に利用できる。ゴムノキ(パラゴムノキ)は、苗の植え付けから5〜6年で天然ゴムを収穫できる大きさに成長する。そしてこれらの生産物には、大きな需要がある。

 アブラヤシの果実からは、良質の食用油がとれる。しかも、面積あたりの生産力はダイズの約7倍に達する。食用油の需要は大きく、日本ではカップ麺を生産している食品メーカーが大手のユーザーだ。このほか、さまざまな菓子類の生産や、外食産業用の食用油にも利用されている。

 紙の需要が大きいことは言うまでもない。私たちは多量のコピー用紙を利用し、多量の印刷物を出版している。そのほかにも、段ボール、ティッシュペーパー、紙おむつなど、紙は幅広く利用されている。これらの紙はすべて、樹木の繊維から生産されている。

 天然ゴムの需要は自動車の需要と連動しており、今も増え続けている。なぜなら、自動車のタイヤを作るには、人工ゴムと天然ゴムを半々に混合する必要があるのだ。その天然ゴムは、ゴムノキの幹に切れ込みを入れ、そこから浸み出してくる白い樹液を使って生産される。最近では、化石燃料の消費を減らすために人工ゴムを使わずに天然ゴムだけでタイヤを作る技術も開発された。この技術が普及すれば、天然ゴムへの需要はさらにふくらむ。

 このような需要に支えられて、アブラヤシ農園とアカシア・ユーカリ・ゴムノキ植林地は拡大の一途をたどっている。その結果、東南アジアにおける熱帯林が急速に消えているのだ。

どうすれば熱帯林の消失を食い止められるのか

 アブラヤシ農園や植林地では、バイオマス(炭素のストック)が減少するだけでなく、アジアゾウなど多くの野生動物が暮らせない。植物種の多様性もほぼ消失する。

 一方で、熱帯雨林を木材生産に利用する場合には、バイオマスを減らさずに、また野生動物の生息環境を維持しながら木材を生産できる。しかしこのような持続可能な林業を熱帯で営むには、低インパクト伐採(林地へのインパクトを少なくする伐採)を行うための高度な管理技術と、コストに見合うだけの大きな森林面積が必要とされる。

 こうした林業がマレーシアやインドネシアで行われてはいるが、その担い手は大きな資本力がある企業だ。これに対して、管理が容易で生産間隔も短いアブラヤシやゴムノキは、事業規模にかかわらず収益性が高い。このため、熱帯林が次々にアブラヤシ農園やゴムノキ植林地などに転換されているのだ。

 このような熱帯林消失は、温暖化防止の点でも生物多様性を守る点でも、もはや限界を超えている。熱帯林のこれ以上の消失を防ぎ、可能な場所ではそれを再生する努力が求められている。そのためには、熱帯林の犠牲のうえに生産されている紙・タイヤ・カップ麺などの大口ユーザーである日本人が、環境の持続可能性を考慮して賢明な選択をすることが重要だ。その賢明な選択とは何だろうか?

 「もったいない」という文化を持つ私たちは、紙・タイヤ・カップ麺などの消費を減らそうと考えがちだ。もちろんその努力は必要だが、これらの商品の消費を減らしても、問題はおそらく解決しない。仮に紙の需要が大きく減れば、企業側ではパルプ材生産よりも収益性の高いアブラヤシ農園へと土地利用を転換するだろう。

 問題の解決には、熱帯林を守る企業ほど有利になる市場メカニズムが必要だ。そのための有望な仕組みとして、さまざまな認証制度が発展してきた。たとえばFSC(Forest Stewardship Council)は国際的な森林認証の1つとして大きな影響力を持っている。プカンバルの保護林を所有するAPP社は2007年にFSCから関係を断絶されたために、いくつかの取引先を失い、大きな損失を出した。その後APP社は自然林伐採をやめる方針を含む持続可能性ビジョンを2012年に発表し、市場における信頼回復に努めている。

 日本の企業においても、サプライチェーンを通じた熱帯林への負荷を評価し、消費者や投資家にその情報を公開する努力が求められている。この記事が、その方向での努力を促す一助となれば幸いである。インターネットの普及による、市民・企業・投資家の知識と想像力の拡大こそが、熱帯林というファンタージエンを復活させる決め手になるかもしれない。  

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コメント
 
01. 2015年5月31日 21:18:39 : FfzzRIbxkp
あまりにも急激に熱帯林が失われているのを知りました。

私は都会に暮らしていますが、街路樹や公園の樹木たちに日々助けられています。
樹木たちが伐採されていく悲鳴は都会においても聞こえます。

樹木の祟りと言いますが、彼らは、悲しんでいるという方が近いと思います。

ある雨上がりの午後、私は文庫本を持ち公園を訪れました。
私を迎えてくれる木はすぐに見つかりました。
雨上がりの午後です。草にも葉にも滴が光っている。
やんちゃな木の下ならば、ずぶ濡れになるかもしれません。
幹に背を持たれ、木洩れ日を浴びる。
本を開くには及ばす、まったり。まったり。まったり。
背中から樹木のエネルギーを感じる・・わけでもない。
なのに離れられない。

それから間もなく、真っ白い霧に覆われてしまった。
森の中にいるような森林浴のような。 ミストシャワー。なんて気持ちがいいの!
輪郭がぼやけたドライアイスのような霧が、もたれている木から広がっていく。
ああなんて優しい木なのでしょう。

珍しいものを見るように人が集まり始めたので、木に御礼を言い離れました。

もしも街中で伐採された木の後を見つけたら、かつて共に過ごした姿を思いだし感謝の気持ちを伝えてください。
他の樹木たちが、共に過ごす場所を作り待っていてくれますよ。

♪ Ombra mai fù ♪  


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