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EXILEの野外ライブ会場付近で落雷死 大阪地裁は「自己責任」   落雷事故と損害賠償責任
http://www.asyura2.com/13/nihon31/msg/743.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 17 日 13:59:53: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


EXILEの野外ライブ会場付近で落雷死 大阪地裁は「自己責任」
BuzzFeed Japan 5月16日(月)19時5分配信

EXILEの野外ライブ会場付近で落雷死 大阪地裁は「自己責任」
岩永浩美さん(左)と岩永和子さん(右)。(2016年5月16日、判決後の記者会見)
野外イベントの運営者は、落雷事故にどこまで責任を負うべきか。EXILEのコンサート会場付近で雷に打たれて亡くなった岩永牧子さん(当時22)の遺族が、イベントを運営していたエイベックス・ライヴ・クリエイティヴとミューベンツ・ジャパンに対して、計約8200万円の損害賠償を求めていた裁判で、大阪地裁(長谷部幸弥裁判長)は5月16日、原告の請求を棄却した。【BuzzFeed / 渡辺一樹】

判決は、「野外における落雷に対する回避措置は、もっぱら各人が自己の責任で行うべきもの」と指摘。今回、運営側の注意義務違反はなかったなどとして、請求を認めなかった。

父親の岩永浩美さん(54)は、悔しさをかみしめるように険しい表情で会見し、「親としては、納得がいかない」と繰り返した。

野外で雷を避けることが「自己責任」とされた点については、「運営側からアナウンスがあれば、(冷静に)避難できたのではないか」と述べた。

牧子さんの遺影を抱いて判決に臨んだ母親の岩永和子さん(56)も、(牧子さんと同じように)「大勢の人が木の下にいたと聞いている」と強調した。

EXILEの野外ライブ会場付近で落雷死 大阪地裁は「自己責任」
落雷事故の現場に設置された献花台
落雷事故の経緯
落雷事故に至る経緯は、どのようなものだったのか。

大阪市・長居公園内にあるスタジアムで2012年8月18日午後、EXILEら人気アーティストが出演するコンサート「a-nation」が開かれていた。

岩永牧子さんはコンサートのために福岡県からやってきて、午後2時過ぎに長居公園内で落雷にあった。永井さんは病院に運ばれたが、翌日亡くなった。一緒にいた友人もこの落雷で亡くなった。

現場の様子は?
コンサート会場は長居公園の北西部にあるメインスタジアムで、約5万3000人の来場が見込まれていた。牧子さんは長居公園の南西部にある林の中で、雷に打たれた。

調査報道NPO「iAsia」によると、当日、長居公園をジョギングしていた男性(48)は次のように証言している。

“「当日はスタジアムの外でもエグザイル関係の様々なイベントが開かれていて、公園全体がエグザイル祭のような感じだった」

「人の列が何重にもなっていて、人をよけながら走る状態でした」

「いきなり曇り始めて、あとは強い雨。そして雷鳴が轟き始めたんです。それで、ジョギングを中止して自宅に急ぎ帰りました。帰りに見たトイレは人であふれ、そこに入れない人が周辺の木の下に雨宿りする状況でした」”

次ページは:裁判の争点は?

裁判の争点は?
裁判では、雷が予見できたかどうかや、コンサート会場付近の公園内という微妙な場所での落雷事故について、運営側がどういった責任を負うのかが争点となった。

原告側は裁判で、次のように主張した。

・大阪市内には前日から雷注意報が出ており、気象庁の発表などをもとに「落雷事故の発生は予想できた」

・公園入り口からコンサート会場までカラーコーンが置かれるなど「来場者の移動ルートが決められていた」

・「主催者には、来場者が長居公園に入った時点から、来場者の安全を確保する義務があった」

EXILEの野外ライブ会場付近で落雷死 大阪地裁は「自己責任」
献花台の岩永牧子さんの写真
地裁「落雷を具体的に予見できたわけではない」
地裁判決は次のように判断し、運営側の責任を否定した。

・落雷事故の発生を「具体的に予見できたとまでは認められない」

・落雷事故の現場は、コンサート会場から距離があった。

・会場への導線があったからといって直ちに落雷から保護すべき義務を負っていたとは認められない。

・牧子さんに対して、主催者側が避難誘導をすることが、「容易かつ高度に期待可能であったとは認められない」

EXILEの野外ライブ会場付近で落雷死 大阪地裁は「自己責任」
会見で掲げられた岩永牧子さんの遺影
原告代理人「教訓がふまえられていない判決」
原告側代理人の佐藤健宗弁護士は判決後に記者会見し、「とうてい承服しがたい判決」と述べた。

「あの瞬間、あの場所に雷が落ちることを予想するのは不可能だ。『具体的に』というハードルを設けてしまうと、極めてレアな場合にしか予見可能性が認められなくなる」

同じく原告側代理人の辰巳裕規弁護士は、サッカー大会の主催者に落雷事故発生の責任が認められた最高裁判決に言及し、「過去に積み重ねられた落雷事故の教訓がふまえられておらず、残念だ」と、判決を批判した。

原告側は「控訴するかどうかは、持ち帰って検討する」とした。

一方、運営側のエイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社は「判決が確定していないので、コメントは差し控えさせていただきます」。ミューベンツ・ジャパン(キョードー関西グループ)も、「判決が確定していないので、コメントは差し控えたい」と述べた。

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最終更新:5月16日(月)19時5分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160516-00010007-bfj-soci

落雷事故 懸賞金 最高100万円ちらし両面
http://pmc-kitakyushu.com/makiko/2016/01/10/%E8%90%BD%E9%9B%B7%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%80%80%E6%87%B8%E8%B3%9E%E9%87%91%E3%80%80%E6%9C%80%E9%AB%98%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%A1%E3%82%89%E3%81%97%E4%B8%A1%E9%9D%A2/%EF%BC%912%E6%9C%88%EF%BC%92%EF%BC%96%E6%97%A5-4/

 


落雷事故と損害賠償責任
――学校の課外活動中の事故を中心に――
長尾英彦
はじめに
1. 問 題 の 視 角
2. 判 決 の 内 容
3. 検 討
おわりに
はじめに
高校のサッカー部に所属する生徒が, 校外でのサッカー大会の試合中
に落雷事故に遭い, 一命をとりとめたものの重度の障害が残り, 引率教
諭の注意義務違反等を根拠に損害賠償請求を行なっていた, いわゆる
「土佐高校事件」 [以下単に 「本件」 と記す] において, 最高裁判所第2
小法廷は, 平成年3月日, 引率教諭の予見可能性や注意義務違反を
肯定した上で, 事案を原審に差し戻すこととする判決を下した (判例時
報号頁)
(1)

中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
論 説
この事件について, 1審 (高知地判平6判例集未搭載), 控訴
審 (大阪高判平判例時報号頁) は, 高校側の債務不履行
責任・不法行為責任を否定していた [後掲] が, 最高裁に至って, 一転,
原告の主張が認められたこととなる(2)

しかしながら, 後述するように, いわゆる学校事故においては, 社会
一般における事故とは異なった様々な複雑な要素を含んでおり, 特に本
件においては, 通常の校内等での練習とも異なる競技大会中での事故と
いう事情がある。 筆者は, これらの諸事情に鑑みた上で, 結論としては
最高裁判決に対して疑問ありとするものであるが, なお, 判断に迷う点
も少なくないので, 同種・同類のいくつかの事例とも比較検討のうえ,
追究してみたいと考える。
1. 問 題 の 視 角
わが国では古来より 「地震, 雷, 火事, 親父」 などと言われ, 雷 (落
雷) は非常に恐ろしいものとされてきた。 なるほど, 落雷は, 地震ほど
被害は (一般に) 広範囲には及ばないけれども, 人間がひとたび雷に打
たれる (落雷事故) と一瞬にして生命を奪われてしまう可能性が高いし,
死に至らないまでも重い障害が残ることが多い。 また, 人間が注意すれ
ばかなりの程度回避可能な 「火事」 (あるいは, 交通事故等もそうか)
のような事故とは異なり, 落雷という事象そのものは人力 (人知) では
防ぎようがない, いわゆる 「天災」 なのである。
しかし他方, 「落雷」 そのものは防げなくとも, 屋内に避難する等の
方法により人的被害を防ぐことは可能である。 雷は, 地震のようにいつ
いかなる時に起こるか予測できない, というものではなく, 通常, 何ら
かの前兆 (降雨, 黒雲, 雷鳴等) があるものと考えられているからであ
る。 ただ, このような前兆がわずかでも知覚されたら, 全ての屋外での
活動・行動を直ちに中止しなければならないのか, と言われると, これ
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
はまた別問題であろう [後掲:控訴審判旨など]。 他方, 学校での課外
活動に関していえば, 一般社会人の活動とは異なり, たとえば, 顧問・
引率等の立場にある教員がその場の具体的事情に即してどのような判断・
指示を行なうか (行いうるか), にかかってくる部分が大きい, 等の特
殊性があるように思われる。
2. 判 決 の 内 容
[事実関係]
X1 (原告・控訴人・上告人) は, 平成8 [] 年当時, 学校法人
Y1 (被告・被控訴人・被上告人) の設置する私立A高等学校に1年生
として在学し, 同校サッカー部に所属していた。
Y1は, 課外のクラブ活動の一環として, 平成8年8月, 大阪府T市
の運動広場 [以下 「本件グラウンド」 と記す] で開催される第回Dサッ
カー競技大会 [以下 「本件大会」 と記す] に同校サッカー部を参加させ,
その引率者兼監督をB教諭とした。
本件大会の主催者である財団法人Y2協会 (被告・被控訴人・被上告
人) は, 大阪府教育委員会の認可を受けて設立された, スポーツ振興等
を主目的とする団体であるが, その加盟団体でありいわゆる 「権利能力
なき社団」 であるC連盟に, D実行委員会を設置させて, 本件大会を開
催した (本件グラウンドは, その管理者であるT市からY2が貸与を受
けており, 本件大会のパンフレットには, 主催者として 「財団法人Y2
協会C連盟」 と印刷されていた)。
8月日の第1試合 (A高校が出場する試合の1つ前の試合) が開始
された午後2時頃には, 本件グラウンド上に雷雲が現れ, 小雨が降り始
め, 遠雷が聞こえていた。 同試合が終了した午後3時頃には上空に暗雲
が立ち込めて, ラインの識別が困難なほどの豪雨があった。 また, 3時
中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
分頃には, 大阪管区気象台から雷注意報が発令されたが, 大会関係者
はこのことを知らなかった。
A高校が出場する第2試合が始まった午後4時半頃には雨が止み, 上
空は明るくなりつつあったが, 遠くの空では雷鳴が聞こえ, 雲の間で放
電が起こるのが目撃されていた。 B教諭は, 稲光の4,5秒後に雷鳴が
あれば雷は近くなっているものの, それ以上間隔が空いていれば落雷の
可能性はほとんどないと認識していたため, 落雷の可能性があるとは考
えていなかった。
4時分頃, A高校側ゴールから見て左サイドにボールが上がり, 両
チームの選手がそこに集まり, X1のみが右サイドのスペースを駆け上
がって走り始めたところ, X1に突然落雷し, X1はその場に倒れた
(以下 「本件事故」 又は 「本件落雷事故」 という)。
X1は救急車で搬送され, 一命を取りとめたものの, 視力障害・両下
肢機能全廃・両上肢機能の著しい障害等の重度の機能障害が残り, A高
校も退学せざるをえなくなった。
X1とその両親X2X3, 兄X4らは, Y1に対して, X1を危険から
保護するため万全の配慮をする義務を怠ったなどとし, 債務不履行・不
法行為に基づく損害賠償を請求した。
[1審判決・控訴審判決]
1審判決は, B教諭において選手に落雷することを予見することが可
能であったとはいえず, また, そのことを予見すべき義務があったとま
ではいえない, として, B教諭の予見可能性と予見義務違反を否定した。
また, Y1が天候についての知識を教授する機会を設けず, 個々の試合
参加に際して天候に関する注意喚起を行なわず, 避雷法の知識も欠けて
いたB教諭に引率させた点についても, B教諭は長年サッカー競技の経
験があり, 野外スポーツの危険性について一般的な知識を有していたも
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
朝日新聞 平成8年 () 年8月日 朝刊面
のであるから, 安全配慮義務違反とはいえない, とした。
控訴審判決も, 基本的に1審判決の主旨を是認した上で, 以下のよう
に判示した。
「……雷注意報の発令や遠雷は, それ自体は具体的な落雷被害の発生
を当然に意味するものではなく, 社会通念上も, 雷注意報が発令された
り, 遠くで雷が聞こえたりしていることから直ちに一切の [屋外におけ
る=引用者注記] 社会的な活動を中止あるいは中断すべきことが当然に
要請されているとまではいえない……。」
参加生徒の1人がB教諭に 「こんな状態でもやるのですか」 と尋ね,
競技続行に不安を告げられたにもかかわらず, これを放置し, 「落雷事
故防止の措置をとろうとしなかった [が] ……この生徒が上記のように
尋ねたのは, 落雷事故を懸念したというよりも, 降雨の影響で足をとら
れ, 選手同士が接触・転倒する等の事故を懸念したためであると認めら
れるから」 [,] 同生徒の 「上記発言があったからといって」 B教諭にお
いて 「本件落雷事故を予見する義務を怠ったということはできない。」
「……むしろ, 雨がやみ, 空が明るくなり, 雷鳴が遠のくにつれ, 落
雷の危険性は減弱するとの認識が一般的なものであったと考えられ, 平
均的なスポーツ指導者においても, この認識を超えて上記知見を具有す
べきであったと認めることはできない。」
[落雷事故について注意を促す文献は種々あるものの] 「上記冊子に
おいて, 落雷事故として紹介されているのは, 毎年1件程度であり, し
かも落雷事故の発生状況・態様は, 各事例毎に千差万別ともいうべきも
のであって, 本件における具体的状況下に当てはめて, 落雷事故発生の
具体的危険性の認識可能性を判断するための資料とするには, 不十分で
ある。 ……本件の状況下において, 平均的なスポーツ指導者が落雷事故
発生の具体的危険性を認識することが可能であったと認めることはでき
ない。」
「……雷注意報は非常に発令回数が多く, それが発令されたからといっ
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
て本件グランドの具体的危険性が明確に覚知できるようなものではない
から, 本件落雷事故を直ちに回避できるという関係にはない。」
「……本件においては…… [B教諭] において本件フィールドの選手
に落雷することを予見することが可能であったとはいえないというべき
であるから, [B教諭] が [相手チームの監督] あるいは主審らとの間
において競技実施手順を確認し, 気象状況の悪化に伴う競技の中断・中
止のルールを協議していたとしても, 本件落雷事故を阻止し得ることに
はならなかったというべきである。」
「以上のとおりであって, 被控訴人学校法人及びその履行補助者兼民
法条の被用者である [B教諭] が安全配慮義務を尽くさなかったと
する控訴人らの種々の主張は, いずれも理由がないといわざるを得ない
から, 被控訴人学校法人に債務不履行責任あるいは不法行為責任がある
ということはできない。」
(なお, 本件グラウンドを管理するY3 [T市]) の国賠法2条上の
責任の有無については, 本件グラウンドがとりたてて落雷を招来するよ
うな構造ではなく, 避雷針や避雷舎を設置していなかったこと [のみ]
で設置の瑕疵があったとはいえない, などと判示して, これを否定した。)
[上告審判決]
ところがこれに対し, 最高裁第2小法廷は, B教諭において, 落雷事
故発生の危険が迫っていることを予見すべき注意義務の違反があったと
判示し, 更に審理を尽くさせるべきとして, 事案を原審に差し戻した。
上告審判決は以下のように述べた。
「……前記事実関係によれば, A高校の第2試合の開始直前ころには,
本件運動広場の南西方向の上空には黒く固まった雷雲が立ち込め, 雷鳴
が聞こえ, 雲の間で放電が起きるのが目撃されていたというのである。
中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
そうすると, 上記雷鳴が大きな音ではなかったとしても, 同校サッカー
部の引率者兼監督であった [B教諭] としては, 上記時点ころまでには
落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能で
あったというべきであり, また, 予見すべき注意義務を怠ったものとい
うべきである。 このことは, たとえ平均的なスポーツ指導者において,
落雷事故発生の危険性の認識が薄く, 雨がやみ, 空が明るくなり, 雷鳴
が遠のくにつれ, 落雷事故発生の危険性は減弱するとの認識が一般的な
ものであったとしても左右されるものではない。 なぜなら, 上記のよう
な認識は, 平成8年までに多く存在していた落雷事故を予防するための
注意に関する本件各記載等の内容と相いれないものであり, 当時の科学
的知見に反するものであって, その指導監督に従って行動する生徒を保
護すべきクラブ活動の担当教諭の注意義務を免れさせる事情とはならな
いからである。」
なお, 原審は, C連盟 (サッカー連盟) が本件大会の主催者であり,
Y2 (T市体育協会) は主催者ではない (事故について責任を負わない)
と判示していたが, 最高裁は, T市より本件グラウンドの貸与を受けて
いたのはY2であり, 本件大会のパンフレットには主催者として 「財団
法人Y2協会C連盟」 と記載されていた [前述] ことなどを理由に,
「被上告協会 [Y2] は本件大会の主催者であると推認するのが相当で
ある」 と判示した。
そして, 「[B教諭] が落雷事故発生の危険を具体的に予見していたと
すれば, どのような措置を執ることができたか, 同教諭がその措置を執っ
ていたとすれば, 本件落雷事故の発生を回避することができたか, 被上
告協会が本件大会の主催者であると推認するのが相当といえない特段の
事情があったかなどについて, 更に審理を尽くさせるため, 上記部分に
つき, 本件を原審に差し戻すこととする」 との結論を示した。
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
3. 検 討
(1) 前 例
本件の最大の論点は, 課外活動の責任者たるB教諭において落雷事故
発生の予見可能性があったか, また, 予見義務があったか, という点に
あると思われる。 後述するように, 学校の課外活動中の落雷事故につい
ては前例がいくつか存在するが, 教員の責任が肯定されたのは珍しい事
例ではないかと思われる (筆者の知る限り, 落雷事故に関して教員 [な
いし, 学校側] の損害賠償責任が認められた先例は無い)。
とりあえず, 前例を見てみることとする。
[事例@]
昭和() 年8月3日午後3時頃, 長野県西筑摩郡神坂村 [当時]
の富士見台高原でキャンプ中の同村の中学の生徒 (引率教員1名) が突
然の雷雨に見舞われ, 数班に分かれて天幕内に退避したところ, 天幕の
1つに落雷し, 生徒4名が感電即死, 引率教員を含む数名が火傷などを
負った。 寒冷前線の急速な南下で (東京では, 1時間に気温が9度下が
るなどした) 各地に時ならぬ雷雨・強風がもたらされたもので, 予測不
可能の災害と見られた。
[事例A]
昭和( ) 年8月1日午後1時すぎ, 北アルプス西穂高岳独標付
近を登山中の長野県松本深志高校の生徒の列 (引率教諭4名, 生徒名)
に落雷があり, 感電あるいはショックで崖下に墜落するなどして, 名
の死者, 数名の重軽傷者を出した。 この事件は, 学校の課外活動中の落
雷事故の前例としては最も著名なものである(3)
。 同月4日, 長野県警は,
「引率の教員に過失があったとは認められない」 という結論を出した。
中京法学巻1・2号 ( 年) ( ) 
引率教員は天候の悪化を予想し, 行程を早めるなど適切な指示を出して
おり, 遭難現場は険しい場所で, たとえ危険を感じたとしても直ちに避
難することは不可能, などの状況があった。
[事例B]
昭和() 年7月日午後3時頃, 愛知県瀬戸市すみれ台の市立
小学校グラウンドで, 同校野球部が練習中, ピッチャーマウンドと一塁
ベースの中間付近に落雷し, 生徒2名 (投手, 一塁手) が仰向けに倒れ
て意識不明となった。 2人は救急車で病院に運ばれ, 1人はまもなく意
識を回復した (他の1名がどうなったかは未確認)。
[事例C]
昭和( ) 年7月日午後2時すぎ, 愛知県春日井市の中学校グ
ラウンドで, 同校のサッカー部員が練習中, 落雷があり, 同部員他生徒
十数名が倒れた。 生徒は病院に運ばれたが, うち1名が翌日朝死亡し
た。 サッカー部は日に試合を控えており, 雨の途切れた間を利用して
練習中のところだった。
[事例D]
昭和
() 年7月日午後1時前, 福岡県豊前市求菩提山の頂上
付近の杉の大木に落雷があった。 同所では, キャンプに来ていた大分県
行橋市の中学校の生徒・教員らが, 雨が上がるのを待って休憩中であっ
たが, 落雷した杉の木の下で休んでいた教員・生徒名が火傷などの重
軽傷を負い, うち6名が入院した。 一行は, 生徒間や教員との親睦を深
める 「ふれあいキャンプ」 に来ていた。 出発時は晴天であり, 雷注意報
が発令されたのは一行が出発した後であったことが判り, 豊前署は 「学
校側に過失責任はない」 とした。
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
[事例E]
昭和() 年8月日午後2時分頃, 大阪府寝屋川市の市立小
学校グラウンドに落雷があり, 夏休み中の水泳指導を受けて下校しよう
としていた同校の生徒3人が倒れた。 うち1人が死亡し, 他の2人も火
傷などの重傷を負った。 水泳指導中に雷雨になったため, 指導教諭は生
徒を教室に引き上げさせて着替えをさせ, 「雷雨が止むまで待っていな
さい」 と指示していたが, 数名の生徒が帰宅しようとしてグラウンドに
出たところで被災した。
(2) 引率等教員の注意義務・安全配慮義務
学校教員は, その教育活動において児童・生徒の安全を保持する義務
を負う。 これは, 正規の授業時間内に止まらない。 クラブ活動のような
課外活動中であっても同様であろう(4)
。 その安全配慮義務・注意義務の内
容・程度は一概には示すことはできず, 活動の種類・内容, 実施される
場所・時間, 当該活動の趣旨, 参加する児童・生徒の学年・年齢等によっ
て変わってくるものであるが, 基本的に小・中・高校における活動であ
れば, 少なくとも最終的には顧問・監督・引率等の担当教員ないし学校
の指示に従って活動することになるのが通常であるように思われる。
しかし他方, クラブ活動中の事故を防止できなかったからといって,
あらゆる場合に担当教員が責任を負うわけではない。 事故発生について
およそ予測不可能な場合, すなわち, 防ぎようのない突発的な事故とし
か考えられないような場合においては責任を負わないとされる。 さもな
くば, 担当教員に対して, 「クラブ活動中の生徒に常時立ち会って監督
をすべし」 などというような, およそ非現実的で過重な負担を強制する
ことになりかねないからである(5)

こうした一般的な考え方は, 校内での活動においてのみならず, 今回
の事故のような校外における活動 (運動部の対外試合等が典型であろう
中京法学巻1・2号 ( 年) ( ) 
が) にもあてはまるように思われる。 ここにおいて, 校外での活動の場
合は (通常の環境と異なり, 何が起こるか判らないので) 上記の注意義
務の程度はより高まる, という考え方も見られる(6)
。 そうした見解はもち
ろん, それはそれとして理解できるが, ただ, 教員・生徒とも (普段か
ら事情をよく知っている自校内と異なり) 校外においてはその分不案内
であるわけであるから, 予期しなかった突発的な事態というものも当然
ありうると思われる。 それら全てについて適切に対処することを教員に
対して要求することが, 時として酷なことにならないか。 以上の点をま
ず提起しておきたい。
(3) 落雷事故発生の予見可能性・予見義務の有無
今回の事例に関する各評釈・解説類を見てみると, 事故発生直前まで
に降雨などがあり, 雷鳴も聞こえていた, 等の状況から, 引率教諭には
予見可能性・予見義務があった, と考える (最高裁判決を支持) ものが
多いようである(7)
。 これらの見解の主要な根拠の1つとされているのが,
事故発生当時までに出版・公表された書物において, 「落雷事故防止の
ためには, 少しでも雷鳴が聞こえるなどしたらすぐに屋内に避難しましょ
う」 などと注意を呼びかけるものが多数あった, という点である(8)

しかし, 異なった見方もある。 最高裁判決に対して疑義を唱えられる
平井一雄教授が調査されたところによると, これらの書物が, 運動部の
監督・引率等担当教員に推薦されたり, 学校に備えられてすぐに読める
状態になっているか, となると, そうではない, というのが現状らしい
のである(9)
。 とすれば, 上記のような書物の存在から, 端的にB教諭に予
見可能性・予見義務有りとはいえないのではないか, とも思われる()

さらに, 学校活動の現場において, あるいは社会一般において, 上記
のような考え方が実際的かどうか, も考えてみる必要がある。 なるほど,
確かに, 「少しでも雷鳴が聞こえたら, すぐに屋内に避難する」 という
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
方針に従っていれば, 落雷事故は防止できるであろう。 しかし, 控訴審
判決が指摘するように, 「社会通念上も, 雷注意報が発令されたり, 遠
くで雷が聞こえたりしていることから直ちに一切の社会的な活動を中止
あるいは中断すべきことが当然に要請されているとまではいえない」 と
思われる。 野球やサッカー等において, 多少の降雨があっても試合を続
行しているケースは, 現実には珍しくないのである。
学校事故 (本件のような, 校外での事故も含まれよう) の事例におい
ては, どうしても, 教員が児童・生徒の安全を守るべきだ, という観念
が前提として存在しているために, いったん事故が発生してしまうと,
直ちに担当教員ないし学校側が非難され責任を問われることになりがち
な傾向がある (この点, 一般社会における事故と少し事情が異なると思
われる)()
。 しかし, 担当教員にこうした過重な負担を課すことは, 本件
のような課外の活動の引率・監督等を引き受ける教員に萎縮的な効果を
もたらし, つまるところ, 児童・生徒の自主的な活動の可能性を狭めて
しまうことにならないか, と危惧されるのである()

上述の事例A, Dは, 登山中の事故である。 登山という課外活動は,
もちろんその程度や内容にもよるが, 道に迷うとか滑落等の危険を内在
的に含んでいるものといえ, 被雷というのもその1つかもしれない。 し
かし双方とも, 教員や学校側の責任は無いとされているのである。 これ
に対して, サッカーという競技に落雷事故の危険が内包されているとは
通常考えないであろう()
。 本件の場合, 雨がやみ, 空が明るくなり, 雷鳴
も遠のきつつあったという。 落雷事故発生の危険は減弱した, と考えた
ことが――それは, 確かに結果的には誤っていたことになろうが――果
たして, 「違法」 とまで評価できるのかどうか。 筆者の見るかぎり, い
ささか結果論的な雰囲気がなきにしもあらず, という印象を受けるもの
である()

中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
(4) 事故の回避可能性
仮に, B教諭が落雷事故発生の危険有りと認識していたとして, 本件
事故の回避可能性はあったのであろうか。
サッカーの試合を行なう場所である以上, 当然, ある程度の広さを有
した開けた場所であるはずである。 本件グラウンドには避雷舎もなかっ
たという。 そうすると, 試合を中断していたとしても, 避難するスペー
スもないことになる。 上述の事例Aでも, 遭難現場は稜線の険しい場所
で, たとえリーダーが危険を感じたとしても避難する場所もなかった,
という点がまさに指摘されている()

また, B教諭が, 審判らが試合を続行しているにもかかわらず強引に
自チームの選手を引き上げさせる, ということは, そもそも現実に可能
なのであろうか。 審判が未だ試合の中断・中止を宣告していないにもか
かわらず, 選手を引き上げさせれば, 当然 「試合放棄」 の負けである()

当時, 選手たちは皆, 負けになってもよいからプレーをやめたいと思っ
ていた, などという記録はないし, おそらく, そのようなことを考えて
いた選手はいないであろうと推測する (スポーツ選手である以上は当り
前であろう。 上述のとおり, 「こんな状態でもやるのですか」 と言った
生徒も, 落雷事故の危険を具体的に指摘したものとまではいえないであ
ろう()
。 控訴審判決が指摘するように, むしろ, プレーそのものへの支障
を心配した言葉であった, と考えるのが自然なのではないか)。
本件D大会の試合は, インターハイ等の公式試合ではなく, 対外練習
試合に近い性格のものであった, ということも, 「だから放棄してもよ
かったのだ」 という主張とは結びつかない。 上述の事例Cは, サッカー
中の事故という点で, 本件とは最も類似性が高い。 Cの場合は, 対外試
合などではなく校内での一般的な練習であったわけであるが, それでも,
市教育長の 「……豪雨の直後でパッと晴れており, [試合が数日後に迫
り, 練習を=引用者注記] 待ちかねていた子供たちをどこまで指導でき
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
たかは難しい状況だったと思う」 というコメントが付せられている()
。 本
件のような背景下で, B教諭に対して, 選手を引き上げさせなかったこ
とを 「過失」 として論難することは, 酷ではないのか, という印象を抱
くものである。
筆者は, B教諭よりも, むしろ, 試合を続行したC連盟 (及び, 現場
のC連盟側の責任者) の判断に問題はなかったのか, と考えるものであ
る。 この点に関連して次項で少々言及したい。
(5) その他の論点
C連盟のみならず 「Y2協会」 も主催者として事故について責任を負
うか, については, 筆者は門外漢であるが, 結論としては肯定してよい
のではないかと考える。
確かに, 大会運営事務を実質的に行なっていたのはY2協会の傘下に
あるC連盟であったであろう。 しかし, Y2協会が大会パンフレット中
に 「Y2協会C連盟」 という形で主催者として名のり, 組織的に見ても
Y2協会がC連盟 (ら) の活動を監督する地位にあったと見られること,
本件グラウンドをT市から借用したのも 「C連盟」 ではなく 「Y2協会」
であったこと等から考えても, Y2協会も責任を負ってしかるべきかと
思われる()

したがって, (もとより筆者は, 本件事故が予測可能性があったとい
えるかどうか, 疑問を持っているが) もしも事故の予測義務違反をいう
のであれば, B教諭, C連盟側の現場の責任者のみならずY2協会も責
任を負ってしかるべきということになるであろう (このことは, 別段,
C連盟がいわゆる 「権利能力なき社団」 であることとはさほど関係がな
いように思われる)。
特に, 基本的な権限が自チームの統率に限られるB教諭に対し, 大会
の主催者は (天候等の事情も含め) 全体的な状況を見たうえでのその場
中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
中日新聞 昭和年 () 7月日 朝刊面
その場の適切な判断が求められるはずである。 本件の場合でいえば, 主
催者が雷注意報が発令中であることを知らなかった, ということは, 批
判されるべき点があるであろう。 強いて, 本件事故の回避可能性をいう
のであれば, たとえば, 主催者側が, 雷鳴が完全に聞こえなくなるまで
試合を中断させる, 等の措置はとりえなかったのか, というような言い
方もできるのではないか。 筆者としては, B教諭の不作為を論難するよ
りも, まだそちらの方が現実味があるように思われるのである()

おわりに
以上のように, 筆者は, 本件事故の予見可能性があったといえるか,
となると, いささか疑問を感じるのであるし, もしも予見可能性が肯定
されたとしても, その場合はB教諭 (及びA高校側) のみならず, C連
盟, Y2協会の責任についても一層検討する必要があるのではないかと
思われる。
筆者が判決文を読むかぎり, B教諭は落雷事故及びその防止について
特別の知見は有しておらず, 事故当時も, 落雷事故発生防止については,
率直に言ってさしたる関心は払っていなかったのではないかと推測され
る。 そのこと自体は必ずしもほめられたものではないが, だからといっ
て, 当時の (少なくとも) 平均的なスポーツ指導者を基準として考えた
場合に, B教諭において過失 (違法) があるとまで断定できるか, とな
ると, 筆者は躊躇せざるをえない()
。 ただ, そのことは決して, Xの救済
について考えなくてよい, ということでないのは当然である。 本件のよ
うな学校教育活動中の事故, 教育の一環としての活動中の事故について
は 「無過失責任主義に基づく補償制度を完備することが望ましい」()
と考
えられる。
当初の予定としては, 国賠法1条上の 「過失」 概念の内容 (もしも公
立学校であれば, こちらの方が問題となろう) と本件で裁判所が認定し
中京法学巻1・2号 (年) ( ) 
た予見義務違反の内容との比較・分析を行なうつもりであったが, 時間
の関係上なしえなかった()
。 別稿の機会を待ちたい。
[註]
(1) 本件最高裁判決の評釈・解説として, 伊藤進・季刊教育法号頁,
同 『問答式 学校事故の法律実務  』 ノ2頁, 平井一雄・私法判例
リマークス号 (下) 頁, 奥野久雄・判例評論 号頁, 小賀野
晶一・判例地方自治 号頁, 吉田勝光・『スポーツ六法』 (信山社)

頁など参照。
(2) 本件1審判決の評釈として, 津田玄児・季刊教育法 号
頁, 橋本恭
宏・同号頁など参照。
(3) 事故の状況の詳細については, 週刊朝日・昭和(
) 年8月 日号

頁など参照。
(4) 「トランポリンけんか事件」 最高裁判決 (最判昭 2 判例時報
号頁) は, 「課外のクラブ活動であっても, それが学校の教育活動の一
環として行われるものである以上, その実施について, 顧問の教諭を始め
学校側に, 生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意
義務のあることを否定することはできない」 と述べる。
(5) しかしながら, 前註最高裁判決は続けて, 「何らかの事故の発生する危
険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は
格別, そうでない限り, 顧問の教諭としては, 個々の活動に常時立会い,
監視指導すべき義務までを負うものではないと解するのが相当である」 と
判示した。 この事件も, 生徒間でたまたま発生したけんかによる負傷をめ
ぐるもの (クラブとしての活動そのものの危険とは無関係) であり, 顧問
の教諭の責任を問うのは酷な事案と思われる。
(6) 前掲 (註1) 伊藤進 『学校事故の法律実務』 [ノ4頁] 参照。
(7) この点を最も強く主張されるのは, 前掲 (註1,2) 伊藤進教授, 津田
玄児弁護士であろう。
(8) 詳細は, 判例時報号頁 [頁] を参照。
(9) 平井一雄・前掲 (註1) 評釈 [頁] 参照。
() 平井一雄・同前 [頁] は, 学校が教諭に対し, 落雷事故防止について
専門的知識を教授する機会を特に設けておらず, 注意喚起もしていない,
ということも, 「高校教育の現場においては, 必ずしも特殊な状況である
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
とはいい得ないのではないか」 と指摘する。
この点, 橋本恭宏教授は一審判決を批判され, 「予見の対象を具体的な
ものに限定することはかえって危険で」 あるとし, 「予見の対象は抽象的
なもので満足しなければならない」 と述べられた上で, 本件のような場合
に教員に要求される注意義務は, 「事故を未然に防止するべき高度の注意
義務」 である, とされる。 前掲 (註2) 評釈 [−頁] 参照。 奥野久雄・
前掲 (註1) 評釈 [頁] が, 最高裁判決は 「平均的なスポーツ指導者の
それでは足らず……より一層高度なものを措定しているもの」 と把握され
るのも同趣旨か。
但, 橋本教授の検討対象の1つに 「木曽駒ヶ岳遭難事件」 最高裁判決
(最判平23判例時報号頁) が挙げられているが, もともと種々
の危険を内包していると考えられる登山と, サッカー競技とではかなり事
情が異なってくるのではないかと思われる。
() 拙稿 「学校事故と国賠法の解釈」 中京法学巻2・3合併号 (平3) 1頁
[6頁, 頁]。 鍋山健 「学校事故と不法行為責任」 『裁判実務大系不法
行為訴訟法 ()』 (青林書院, 昭 ) 
頁以下 [頁] は, 学校におけ
る課外の部活動中の事故が難解であることの理由として, 「課外の部活動
の法制が不明確なこと」 と 「萎縮しない部活動のあり方と被害者救済の狭
間に立って多種多様な具体的安全義務の価値基準を [判例が] 統一的に把
握しかねていること」 を指摘する。
() 阿部泰隆 『国家補償法』 (昭 , 有揖閣) 頁も同旨か。
() 平井一雄・前掲 (註1) 評釈 [頁] 参照。
() 但, 津田玄児・前掲 (註2) 評釈 [ 頁] は, 「空も一部明るくなって
いた」 という事実認定は, 証拠と合致していない旨を指摘している (紹介
に止める)。
() 伊藤進・前掲 (註1) 季刊教育法 号評釈 [頁] は, 「――生徒を屋
内に移していれば本件落雷事故に遭遇することがなかったことは明らか」
とする。 しかし, ここでいう 「屋内」 とは何を指しているのか, 不明である。
ところで, 平井一雄・前掲 (註1) 評釈 [頁] は, 事故発生時に 「A
高校側ゴールから見て左サイドにボールが上がり, 両チームの選手がそこ
に集まり, X1のみが右サイドのスペースを駆け上がって走り始めたとこ
ろ [被雷した]」 という認定事実から, 「『駆け上がって走り始めた』 とい
うのであるから, X1は他の者よりも高い所に位置していたと推測できる。
……1人高所に居ればその者に落雷の危険が生じうる……」 と述べ, 「X1
が自ら招いた危険という要素もあるのではないか」 と述べる。 しかし, サッ
カーを行なうグラウンドであるから, その中に高低があるはずはない。 こ
中京法学巻1・2号 (

年) ( ) 
こで 「駆け上がる」 と言っているのは, 「自チームのゴールの側から相手
ゴール側へ攻めていく」 という意味ではないのか。 とすれば, 平井教授は
何か勘違いをされているのではないであろうか。
() 事故発生当時, 雨はやんでいたというのであるから, 審判が試合を中断
させるはずはない。 たとえば, 野球では, 試合放棄は無条件で 「9対0の
負け」 とされる。
() 津田玄児・前掲 (註2) 評釈 [頁] は, B教諭が当該生徒の発言を顧
慮しなかった点について, 子どもの権利条約 (条1項, 自由に自己の意
見を表明する権利) との抵触を示唆している。 しかし, 当該発言が, 同条
約のいう 「意見」 といえるかどうかは検討の余地があろう。
() 中日新聞昭和() 年7月日朝刊面。
() 同旨, 小賀野晶一・前掲 (註1) 評釈。 小賀野教授は, 第三者に対する
「一種の表示責任」 とされる。
() 鍋山健・前掲 (註) 論文 [頁] は, 「(判例が) 部活動担当教諭の
個人過失のみに着目して管理過失を問題としないきらいがある」 と分析す
る。 本件は校内での活動ではないので文脈は異なるが, 筆者の問題意識と
共通するものがあるように思われる。
() 本件のように, B教諭の全面的な指揮監督下にない状況下での事故につ
いては, B教諭の予見義務違反だけでは直ちに過失を認定することができ
なかったのではないか。 同趣旨の推察について, 伊藤進・前掲 (註1) 季
刊教育法 号評釈 [
−
頁] 参照。 しかし, 伊藤進・同評釈 [
頁]
は, たとえ主催者が試合を続行しても, B教諭には 「生徒の身体生命の安
全のためには試合参加をボイコットしてでも落雷事故回避義務を尽くすべ
き法的責任があったと思われる」 と述べる (なお, 同評釈
頁下段に 「……
注意義務を怠ったと解すべきではないと思われる」 とあるのは, 「……解
すべきと思われる」 の誤りではないであろうか。 そう読まないと文脈が通
じない)。 同 『学校事故の法律実務 』 (前掲註1)
ノ5頁も, 「主催
者が競技大会を中止ないし中断しないというのであれば, 生徒の競技への
参加を拒否するぐらいの措置はとるべき」 と述べる (本件の場合は, B教
諭はそもそも落雷の危険性が念頭に無いのであるから, 無理な要求である
が)。
() 平井一雄・前掲 (註1) 評釈 [頁]。 事故当時, (旧) 日本体育・学校
健康センター法による補償制度は一応存在したものの, 給付額が低すぎて
救済にならない, との批判 (たとえば前掲 [註] 阿部泰隆 『国家補償法』
頁など参照) があった。 現在では, 同法は 「独立行政法人日本スポー
ツ振興センター法」 (平成 年月日号外・法律第号) に代わり, 災
 ( ) 落雷事故と損害賠償責任 (長尾)
害共済給付について同法条1項6号, 同施行令 (平成年8月8日号外・
政令第号) 3条1項, 同省令 (平成年月1日・文部科学省令第
号) 条以下など参照。 これらの法令については, 『現行日本法規教育・
文化 ()』 (第一法規, 加除式) ノ頁以下, ノ頁以下, ノ
頁以下, 抜翠であるが, 『スポーツ六法』 (信山社)  頁以下など
参照。
() 国家賠償法1条は, 本質的には 「不法行為に基づく損害賠償責任」 であ
るが, その 「過失」 の内容は 「抽象的過失」 すなわち 「当該公務員に職務
上要求される標準的な注意義務に違反すること」 と考えられている [過失
の客観化]。 例えば, 原田尚彦 『行政法要論 [全訂第六版]』 (学陽書房,
平) 
 頁など参照。 もしも, 本件のような場合に 「高度の注意義
務」 が課せられるとしたら, それとの比較はどうなるのか, いま一つわか
りにくいところである。
なお, 特に近年, 急速な積乱雲 (雷雲) の発達により, 雷鳴や稲光が覚
知される前に突然落雷する, 防止不可能の落雷事故の例が報告されている。
これは, 地球温暖化と関連があるとも報じられている。 週刊現代平成
() 年月8日号頁など参照。 このような状況下では, ますます,
事故の事前防止は難しくなってくるであろうことが懸念される。
中京法学 巻1・2号 (年) ( ) 
http://www.chukyo-u.ac.jp/educate/law/academic/hougaku/data/42/1=2/nagao.pdf  

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