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安倍自民のみせかけ経済成長の副作用は処方箋なし 国民の新たな芽を摘む愚昧政治 (世相を斬る あいば達也) 
http://www.asyura2.com/13/senkyo143/msg/521.html
投稿者 笑坊 日時 2013 年 2 月 05 日 10:12:38: EaaOcpw/cGfrA
 

http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/407875790c5375c74cea67027193dea2
2013年02月05日 世相を斬る あいば達也

 ニュートラルなエコノミストとして名高いパリバ証券の河野龍太郎氏のコラムは良い所を突いているので、参考までに掲載しておく。個人的にはパナソニックやシャープ株が幻の上昇に活気づいて気分は上々(笑)。何とか天井を見る前に手仕舞いしたいものである。此処1週間以内にけりをつけようと思う。ゼネコン系はまだまだ行けそうな按配だが、利益を確定しておくのも選択だ。 個人的にはアベノミクスで歓んでいるが、国益上は最悪の経済政策と観察する。ただ、個別の利益追求と総論は別物である。正直、どの投資家も何処で逃げようか、と考えているのが偽らざる本音だと思う。この辺は、プログラム投機ファンドと異なる情緒感タップリな部分。怖くもあり愉しくもある。掲載コラムの最後に、筆者の適当な(注)をつけておいた。賢明な読者の皆様には余計なお節介かもしれない。

≪ コラム:日本経済「慢心の2年」への危険な兆候=河野龍太郎氏
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE91302520130204

  日銀の2%インフレ目標導入が、賛否両論を巻き起こしている。佐藤健裕・木内登英日銀審議委員は、「現状のインフレ率からすれば2%は物価安定と整合的ではなく、また目標を掲げても達成できないのなら、信任を失う」ことなどを理由に反対票を投じたが、筆者も同意見だ。

 ゼロ金利制約に直面し、長期金利も相当に低下していることを考えると、積極的な金融政策だけで需要を刺激しデフレから脱却することは難しい。長期金利の落ち着きを見る限り、市場関係者も2%のインフレの早期達成は難しいと判断しているのだろう。

  しかし是非はともかく、政策の組み合わせ次第では、デフレ脱却は不可能ではない。中央銀行のファイナンスによって追加財政を続け、名目成長率を引き上げれば、需給ギャップの改善によって、インフレ率を高めることは可能だ。筆者は、マネタイゼーション(注1)によってデフレから脱却するシナリオの蓋然性が最も高いと考えている。

 この政策の主役は財政政策を担う政府であるが、追加財政で名目成長率が上昇すると、長期金利も上昇を始めるため、それを回避すべく日銀が国債購入を進めることで、事実上の財政ファイナンスが行われる。誉められたデフレ脱却策とは言えない。しかし、必要な増税や歳出削減を選択できず、裁量的な財政・金融政策で名目成長率を高めて問題解決を図ろうとする一連の政策決定を見ると、すでにこのシナリオがスタートした可能性もある。

  マネタイゼーション・シナリオについて、詳しく論じよう。本コラムでも繰り返し述べてきたが、日本の潜在成長率は労働力や純資本ストックの減少によってすでに0.25%程度(0―0.5%)まで低下している。低成長が続いているため、日本経済は大きな負の需給ギャップを抱えていると考える人が少なくないが、実はもはや大きなスラック(余剰)は残っていない。実際、東日本大震災後、復興関連予算の執行が遅れているのは、建設業界で人手が不足しているためである。

 失業率は現在4.2%まで低下しているが、かつて2%台後半だった摩擦的失業率(雇用のミスマッチなどによって生じる過渡的な失業)は、雇用の流動化(注2)などの影響で3.5%程度まで上昇していると考えられる。つまり、現在の日本経済は、インフレ率上昇圧力をもたらす完全雇用状態からそれほど大きくは乖離していない。もちろん、各国同様、若年の高失業問題や正規・非正規雇用の格差問題などを抱えるが、これらは総需要不足が原因というより、ミスマッチなど構造問題が原因で、総需要が増えても容易に解決することはできない 。

  高齢化の影響で労働市場からの退出が続くため、0.25%の潜在成長率での成長が続く場合でも、就業者数は年率0.7%程度減少し、失業率は横ばいとなる。以下述べるように、追加財政によって潜在成長率を上回る高い成長が続けば、就業者数が増加しないケースでも失業率は低下し、数年後には完全雇用状況に到達する。

 まず、2013年度については、13兆円に及ぶ12年度補正予算や追加的な復興関連予算の設定、消費増税前の駆け込み需要、復興関連予算の積み増しなどによって、成長率は1.5%となり、需給ギャップは1ポイント強改善し、失業率も0.4ポイント低下し、3%台後半となる。さらに、14年4月の消費増税の駆け込みの反動や補正予算の効果剥落による悪影響を相殺すべく、13年度後半にも10兆円程度の追加財政が決定される可能性が高い。中心となるのは 国土強靭化計画に基づく公共投資である。その結果、14年度も0.5%の成長が達成され、需給ギャップは0.3ポイント改善、失業率は0.2ポイント低下する。

 もちろん、そうした政策は、最終的には公的債務を膨張させるだけで、政策効果が剥落すれば、低成長に舞い戻り、失業率も悪化する。しかし、 長期金利さえ落ち着いていれば、その段階では誰も直接的な負担を負うわけではないため、代議制民主主義の下においては、近視眼的な政策が継続される可能性がある。

 同様に、15年度についても、10月に予定される第二弾の消費増税や14年度の財政政策の効果剥落による景気への悪影響を吸収すべく、10兆円程度の追加財政が継続される可能性が高い。追加財政を止めれば、大きな痛みが現れるため、政策継続の誘惑から逃れることができない。その結果、15年度も1.1%の成長率が達成され、需給ギャップは0.9ポイント改善、失業率は完全雇用に近い3.5%を割り込んでくるだろう。

 追加財政によって名目成長率が上昇すれば、長期金利が上昇しても不思議ではない。実際、1980年代以降、政府の資本コスト(注3)は概ね名目成長率(注4)また、名目の方が意味を持つ例の一つとし て、税収への影響があります。税金は、名目GDPの一定割合を徴収するといったイメージなので、仮に実質成長率がプラスでも名目成長率がマイナスなら税収 も減るわけです。このように、名目成長率の方が有用である場合もある、ということには留意する必要があります。)を上回ってきた。長期金利が大きく上昇することになれば、今や公的債務残高は国内総生産(GDP)の2倍にまで膨れ上がっているため、利払い費は急激に膨らみ、財政は危機的状況に陥る。そうした事態を避けるため、追加財政に伴って発行される国債は、日銀の購入によって吸収される。事実上のマネタイゼーションが進められる。

<1―2年はユーフォリア(注5)が続く>

 問題は、どの段階まで長期金利の上昇を抑えることができるかである。 拡張的な財政・金融政策によって名目成長率を嵩上げする一方、長期金利が低位で安定している間は、株や不動産などリスク資産の価格上昇が続く。リスク資産の価格上昇に惹きつけられ、ミニ投資ブームが始まる可能性もある。それが永久に続くのなら問題はないが、いずれ調整過程が訪れる。

 長期金利上昇の引き金となるのは、やはりインフレ率の上昇だろう。たとえば、1%程度の均衡実質金利を前提に、2%のインフレ率やリスクプレミアム(注6)が織り込まれると、長期金利は3%台まで上昇しても不思議ではない。 現在は、インフレ率は上がらない、長期金利は上がらないと皆が信じているから、リスクプレミアムも極端に低く抑えられている。ソブリン危機(注7)が発生するまで、ギリシャやポルトガル、スペインの国債金利は低位で安定し、リスクプレミアムも極端に低かった。しかし、危機が始まると、リスクプレミアムは急激な上昇を始めた。日本でもインフレ率が眼前で上昇を始め、それを反映して長期金利が上昇し、いったん損失を被れば、投資家はリスクプレミアムを要求するようになるはずである。

 仮に需給ギャップ(失業率)とインフレ率がリニア(線形)な関係にあるのなら、今後、インフレ率はゆっくりと上昇していく。この場合、日銀はインフレ率が1%近くに達すると、アグレッシブな金融緩和の手仕舞いを始め、それに応じて長期金利も緩やかな上昇を始める。ゼロ金利政策を継続するにしても、早い段階で資産買入基金の拡大を停止しなければならないだろう。インフレ率が上昇を始めれば実質金利は低下し、放置すれば金融緩和度合いがさらに強まっていくためである。

 しかし、需給ギャップとインフレ率の関係は必ずしもリニアではない。根強いデフレが続いたため、需給ギャップが改善しても、ゼロインフレ状況がしばらく継続するかもしれない。それゆえ、アグレッシブな金融政策への政治的要請は続き、日銀の政策の手仕舞いも遅れる。失業率が3%台半ばを割り込み、臨界点を超えた途端に、インフレ率が一気に上昇を始め2%に近づいていく可能性がある。

<長期金利上昇による金融システムの動揺>

 物価安定の視点に立てば、日銀は2%を超えるインフレの加速を回避するため、継続的な利上げに乗り出す必要が出てくる。しかし、そのことは長期金利の急激な上昇をもたらし、金融システムの動揺をもたらす恐れがある。

  周知の通り、長引く資金需要の低迷から、金融機関は大量の国債を抱え込んだ。急激な長期金利の上昇は、利払い費の膨張によって、財政破綻確率を高めるが、国債価格の下落は金融機関の自己資本を毀損し、金融システムの動揺をもたらす。

 程度の差はあれ、欧州ソブリン問題と同様の現象が生じる。物価安定の視点から必要な利上げが、金融システム上の要請で、実施できなくなる。 2%のインフレ目標の上限が守られないということだが、金融システムの安定性を優先し、物価安定を多少犠牲にせざるを得ないということになるのだろう。 マネタイゼーション・シナリオの帰結をまとめよう。当初は、財政政策による「将来の所得の前借り」効果が強く現れ、潜在成長率を上回る高めの実質成長率、低いインフレ率、やや高めの名目成長率、低い長期金利、リスク資産価格の上昇が観測される。多くの人は潜在成長率が上昇しているのではないかと期待を膨らませ、バブル的様相が強まっていく。実態は、「将来の所得の前借り」によるユーフォリアに過ぎないのだが、リアルタイムではそのことに気が付かない。13―14年は「慢心」の年になるのではないか。

 しかしその後は、低い実質成長率、高いインフレ率、高めの名目成長率、高い長期金利、リスク資産価格の下落が訪れる。程度はともかくとして、資産バブル、財政破綻確率の上昇、金融システムの動揺など、マクロ経済・物価の不安定性は急激に増す。本来、マクロ安定化政策の主眼は、経済を安定化させることだが、デフレ問題をアグレッシブな財政・金融政策だけで解消しようとすれば、不安定性が増すのは当然とも言える。これが、筆者の考える 13―15年の基本シナリオである。

 では、マネタイゼーションよりましなデフレ脱却策はないのだろうか。積極的な金融政策で時間稼ぎをしている間に、財政健全化策を打ち出し、潜在成長率を高めるために規制緩和を進める、という成長戦略シナリオも理論上は考えられる。潜在成長率の引き上げに成功すれば、自然利子率も上昇するため、伝統的な金融政策の有効性も復活する。この政策の組み合わせならば、コストは小さく望ましい。

 しかし、成長戦略の果実を得るには、地道な努力と長い時間を要する。デフレ脱却に関し、「できるだけ早期の実現」を掲げる政府・日銀の共同声明は、結果的に、このシナリオを放棄することになるのではないだろうか。

 代議制民主主義の下では、人々は、直ちに政策の結果を求めようとするが、潜在成長率の向上に即効薬は存在しない。しかし、待つことを我慢できない我々は、結局、「将来の所得の前借り」である財政政策や「将来の需要の前倒し」である金融政策といった近視眼的な政策に頼ってしまう。こうした政治経済学的な視点から考えれば、マネタイゼーション・シナリオの蓋然性が高く、成長戦略シナリオの蓋然性は低いと言わざるを得ない。 なお、デフレ脱却策には、もう一つ、その是非は別として、アグレッシブな為替介入で円安誘導を図るシナリオがあるが、こちらについては次回以降のコラムで取り上げたい。≫(ロイター:コラム:パリバ証券・河野龍太郎)

■筆者による、いい加減な用語解説
注1: 貨幣を発行すること。資源や資産などを現金化すること。
注2: 転職者・転職率が増加する現象
注3: 資本コストは、自己資本と他人資本コストの二つに区別。自己資本は株主。一方、他人資本は社債の保有者や借入金の貸出者であり、社債の利回り、借入金利コスト。
注4: 実質成長率は、名目成長率から物価変動の影響を取り除いたもの。名目GDPが1.2倍になっても、物価が同じく1.2倍になれば実質的成長率はゼロ。果実としては実質成長率が伸びなければ意味はない。しかし、実質成長がゼロでも、現実に給料が上がれば、物価が同等に上がっていても、気分がイイと云うマジック。
注5: 景気循環の表現の1つ、「熱狂的陶酔感」。
注6: 株式投資などリスクのある投資に対して、投資家がそのリスク分に対して求める上乗せ利益のこと。
注7: デフォルトは債務不履行。倒産のようなもの。ソブリン危機は、国債などの債務不履行(デフォルト)のリスクが高まっていることを指す


 

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コメント
 
01. 2013年2月05日 11:13:26 : Fg0U0H9Iak
> 安倍自民のみせかけ経済成長の副作用は処方箋なし 国民の新たな芽を摘む愚昧政治

ノーベル経済学賞受賞者の米プリンストン大のクルーグマン教授は「安倍首相が目指す経済政策について「結果的に完全に正しい」と“評価”している[1,2]。

また、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は1月24日、
「円高を是正して景気を刺激し、本格的なデフレ対策を打つという意図は正しい」と述べ、大胆な金融緩和や財政出動を柱とする安倍政権の経済政策を評価した[3]。

「安倍自民のみせかけ経済成長の副作用は処方箋なし 国民の新たな芽を摘む愚昧政治」と主張するあいば達也氏は、クルーグマン教授やスティグリッツ米コロンビア大教授の主張の何処が間違っているのか、具体的に指摘すべきである。

「筆者による、いい加減な用語解説」しか出来ない素人には、恐らく、それは不可能だろう。

[1] クルーグマン氏:アベノミクス「結果的に完全に正しい」
http://mainichi.jp/select/news/20130115k0000m020016000c.html

[2] ノーベル賞学者が“アベノミクス”を高評価
http://www.youtube.com/watch?v=cAUD8tInHbU

{3] アベノミクス「一定の効果」 スティグリッツ教授
円高是正のデフレ対策を評価2013/1/26 0:27日本経済新聞 電子版
http://matomelog.ldblog.jp/archives/23264953.html
 ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は24日、
「円高を是正して景気を刺激し、本格的なデフレ対策を打つという意図は正しい」と述べ、大胆な金融緩和や財政出動を柱とする安倍政権の経済政策を評価した。

 世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で日本経済新聞の取材に答えた…
(抜粋)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2506V_V20C13A1EA2000/


02. 2013年2月05日 11:37:11 : Pml9KSmmgw
>積極的な金融政策で時間稼ぎをしている間に、財政健全化策を打ち出し、
>潜在成長率を高めるために規制緩和を進める、という成長戦略シナリオも
>理論上は考えられる。

この種の論調では、この辺が意味不明だと思う。
譬えが極端で恐縮だが、たとえば銃刀法を規制緩和してアメリカ並に日本国民が
銃で自己防衛するようになれば、ピストルやライフルを製造する企業は
成長産業になるかもしれないが、国民の不可分所得が伸びない限り
消費性向は一定なので、逆に別の生活分野のモノ・サービスは売れなくなるはず。
たとえばライフルを購入するならオーディオ装置は我慢しようという具合に
他の消費は減る。全体の成長に繋がる規制緩和というものが思い描けない。


03. 新自由主義クラブ 2013年2月05日 11:40:09 : 41xQYjMxutK66 : Od3zRGIrsM
ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏も、また、アベノミクスを評価している。

スティグリッツ氏はもともと日本に対して大胆な金融緩和や財政出動を柱とする経済政策を提言していて、経済学部生向けの入門的教科書『スティグリッツ入門経済学(第4版,日本語版)』(東洋経済新報社,2012)にもそのことが書かれている。

しかし、スティグリッツ氏は、アベノミクスのような、単にケインジアン的な経済政策だけを提言しているのではない。

「世界の国々において格差が広がっているではないか」など、もっといろいろ問題を提起している。
もっと先を見ているスティグリッツ氏は、クルーグマン氏よりもっとエライ!


■小笠原 誠治「アベノミクスを評価したスティグリッツ教授が言いたいこと(2013年1月26日)

「ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は24日、『円高を是正して景気を刺激し、本格的なデフレ対策を打つという意図は正しい』と述べ、大胆な金融緩和や財政出動を柱とする安倍政権の経済政策を評価した」と報じられています。(1/26 日経電子版)

果たして、スティグリッツ教授は、具体的にどんな発言をしたのでしょうか?

スティグリッツ教授は、世界経済の長期的問題に頭を悩ましているのです。

世界の国々において格差が広がっているではないか、と。そしてまた、地球温暖化の問題は、こうして我々が手を拱いている間にも、徐々に顕在化してきているではないか、と。さらにまた、先進国では製造業からサービス産業へと構造転換を図る必要が起きているのではないか、と。

こうした問題は、市場に任せていただけでは何ら解決されない。
つまり、政府の出番なのだ、と。
単純なケインジアン的な発想ではないのです。

日本では、なかなかこのような経済学者は現れないですよね。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20130126-00023225/


04. 2013年2月05日 12:01:32 : xEBOc6ttRg
【第262回】 2013年2月5日 加藤 出 [東短リサーチ取締役]
高橋蔵相のリフレ政策を再検証
賃金は物価上昇に追い付くか?
 春闘を前に、連合はデフレ脱却のためにも賃上げは必要と主張している。一方、経団連は雇用優先を理由に賃上げに否定的だ。円安で株高が起きているが、企業業績の実際の回復はこれからである。また多くの輸出企業はこれまで円高で苦しんできた。「これからインフレが始まるかもしれないので、先行して賃金を引き上げましょう」と言ってくれる“耆徳(きとく)”な経営者は現実にはいないだろう。

 円安は既にガソリン価格の上昇を招いている。食料価格も今後は上がっていく可能性がある。過去15年間の食料価格を見ると、英国は+56%、米国は+47%、ユーロ圏(17カ国)は+36%と大幅に上昇してきた。一方、日本の食料価格は同期間にほぼ横ばいの▲1%である。

 世界的に穀物、食肉の価格が上がってきたのに、日本では横ばいを維持できた大きな理由の一つは、円高だろう。今後も円安が続く場合は、食料価格の上昇が顕在化する。しかし、賃金が上昇しなければ、中低所得層の家庭の暮らしは厳しくなってしまう。賃金上昇は景気に遅行するので、株をあまり持っていない家庭の場合、「アベノミクス」の効果は、最初は「痛み」になる恐れがある。

 好景気が続けば、いずれは実質賃金が上向いていくはずだが、それはいつになるだろうか? 1932(昭和7)年開始の高橋是清蔵相による大規模なリフレ政策のときはどうだったのか見てみよう。

『長期経済統計・推計と分析8』(大川一司・篠原三代平・梅村又次)によると、製造業労働者の実質賃金指数は、31年106.6、32年102.2、33年101.5、34年101.7、35年100.8、36年99.0、37年97.4、38年93.2で、実質賃金はリフレ政策開始前が最も高く、開始後は減り続けた。インフレに名目賃金の上昇が追い付いていかなかったのだ。

 当時の「エコノミスト」誌(34年4月1日号)に「膨張経済の裏に潜むもの」という企画が載っていた。「インフレ景気の効果をエンジョイ」し得たのは一部の「産業家ならびに金融業者」であり、「ボロ会社のリストの中でも札付きの部類に記録されていた産業会社」も浮かび上がった。インフレは失業を緩和したが、景気回復継続に懐疑的な経営者が多く、低賃金の臨時工で間に合わせたがる傾向が続き、賃上げは遅れたという。

 今回のリフレ政策が同じような過ちを犯さないように注意して見ていく必要があるだろう。「カンフル剤」に頼り続けるのではなく、成長戦略によって賃金上昇とインフレの適度なスパイラルを形成していく必要がある。

 (東短リサーチ取締役 加藤 出)


 


【第62回】 2013年2月5日 相川俊英
地方がはまった“有利な起債”の落とし穴
ハコモノ維持管理費が自治体財政を直撃
自治体の個性が薄れて画一化・均質化
20年に渡る地方取材で実感すること

 自治の現場を取材して回る生活を20年以上、続けている。1人で全国津々浦々を訪ね歩き、これまで様々なものを見聞きしてきた。狭い日本ではあるが、地域によって暮らしぶりや文化、産業、風土、自然などに違いが見られ、つくづく日本は多様な社会だと実感している。

 しかし、その一方で、それぞれの地域の特色や個性が薄れ、画一化・均質化しつつあることも肌で感じる。日本全体の「金太郎飴化」が確実に進んでいるように思うのである。

 地域の没個性化は様々な面で進行しており、自治体が抱える課題も全国的に似通ったものとなっている。それは、少子高齢化や人口減少、地域活力の低迷といった日本社会全体が背負い込んでいるマクロの課題だけではない。地域内の揉め事といったごくごくローカルな問題においても、画一化・均質化が強まっている。地域課題が全国一律化しているのである。

 地方取材行脚を始めた頃、各自治体が抱える揉め事といえば、だいだい相場が決まっていた。公共施設(ハコモノ)建設をめぐる住民同士の争いだ。

 地域のどこにハコモノを造るかで、壮絶な綱引きとなるのが一般的だった。「どんなハコモノを造るべきか」といった議論は脇に置かれ、いきなりハコモノの取り合いとなっていたのである。

 だが、ハコモノ争奪戦もそう長くは続かなかった。もちろん、それは互譲の精神が発揮されるようになったからではない。行政側がそうしたハコモノ建設の総量を増やし、地域間のバランスに配慮するようになったからだ。

 こうして日本の各地域のそこかしこに様々な公共施設が整備されるようになった。ハコモノ建設の原資となったのは、もちろん税金だ。それも現ナマではなく、ほとんどが地方債(借金)だった。

 バブル経済の崩壊後、国(政府)は地方に公共投資を増やすよう促した。景気対策の一環である。公共事業の拡大を誘導するツールの1つとなったのが、地域総合整備事業債(地総債)である。

 1978年に創設された地総債は、自治体が単独で実施する公共施設の整備に充当する地方債だ。自治体の自主的・主体的なまちづくりを後押しし、地域の総合的な整備を促進させる目的でつくられた。

 地総債は、1984年度から新たに「一般分」と「特別分」という区分が設けられた。このうち特別分については、借金をする自治体が大喜びするような特典がつけられた。国が元利償還金の一部を、後年度に地方交付税で措置するというのである。つまり、自治体の借金返済の一部(事業費の6割以上)を国が肩代わりする仕組みだ。

 国にツケ回しできるとあって、地方は欣喜雀躍した。実際、国の補助事業よりも自治体の持ち出しは少なくて済み、「地総債は有利な起債だ」と全国の自治体が競って活用するようになった。

 その後、バブル経済が崩壊し、国は大規模な景気対策を打ち出した。地方にも大型の公共事業を推奨した。こうして地総債などを活用した「ハコモノ行政」が日本中を席捲していった。全国各地に文化会館や体育館、公民館や美術館などが造られるようになったのである。

他人の知恵袋に依存したハコモノの乱立
国は維持管理まで面倒をみてくれない

 当時、地方政治家や行政関係者がバイブルのように大事に持っていた小冊子があった。「首長さんと議員さんの知恵袋」というもので、地総債を活用する際のマニュアル本だった。そこには、地総債で造れるハコモノのメニューや事業名などがズラリと紹介されていた。

 地方の自主性・主体性を活かすために創設された地総債は、単に国にツケ回ししてハコモノを造る玉手箱となってしまったのである。当時、こちらもその「知恵袋」を手にして各地を取材して回ったが、マニュアル通りにハコモノが各地に造られていくのを目撃し、日本の地方自治の実態を突き付けられた感がした。独自の創意工夫とは無縁の世界が広がっていた。それはまた、安直に他人の「知恵袋」に依存した姿であった。

 そんな光景を見て歩きながら、ある不安が脹らんでいった。国や地方の借金が急増していくことへの懸念だけではなく、造った後のハコモノの維持管理の問題である。

 各自治体がまるで競うように活用した地総債だが、国はさすがにハコモノの維持管理まではみてくれない。造った自治体が自腹で負担していかねばならない。建設費を国にツケ回しできるからと、イケイケドンドンでハコモノを造ったものの、建設後にかかる維持管理費や修繕費などで苦しむことになりやしないか、と心配したのである。

 地総債はその後、「ハコモノ行政を助長し、地域の主体性と財政規律を損ねてしまった」といった批判が強まり、2001年に廃止となった。そもそも地総債のツケは国が払うのではなく、国民(将来の国民も含む)が負担するのである。つまり、国ではなく、我々の子孫にツケを回していたのである。

 地総債が廃止される直前の1999年、国は市町村合併の推進を打ち出した。いわゆる「平成の大合併」である。基礎自治体の行財政基盤の確立がその目的に掲げられ、適正な職員配置や公共施設の統廃合など行財政の効率化も謳われた。

 その一方で、国は合併を促すために合併特例債などの優遇策も用意した。合併に関連するハコモノ建設費の財源に充てる地方債で、元利償還金の7割を国が後年度に交付税で措置する、いわゆる「有利な起債」である。

有利な地方債に飛びついた自治体の今
ハコモノの統廃合が進まない岐阜県土岐市

 ところで、地方自治体が「有利な起債」と飛びついた地総債の廃止から10年以上が経過し、危惧していたことが現実のものとなりつつある。建設したハコモノの維持管理に苦しむ自治体の姿である。

「現在、(公共施設白書を)策定中です。各施設の利用状況も調査中で、今年度中にとりまとめます」

 こう語るのは、岐阜県土岐市の行政改革担当者だ。

 美濃焼で有名な岐阜県土岐市は、人口約6万2000人、市域の約7割が丘陵地である。産業観光に力を入れている土岐市は、市内に各種のハコモノをもつ。住民1人当たり床面積は約7.96平方メートルで、全国平均(3.50平方メートル)を大きく上回る。

 そうしたハコモノ(公園などを含む)の維持管理費(光熱費や補修費など)は、年間(11年度決算・以下同)約9億3000万円に上り、歳出総額(約187億8500万円)の4%にあたる。施設関連の人件費を含めると、維持管理費総額は約20億3000万円に達する。ちなみに、土岐市の普通建設事業費は約21億5000万円である。

 土岐市が多くのハコモノを持つに至ったのには、こんな事情があった。土岐市は1955年に8町村が合併して誕生した。平成の大合併ではなく、昭和の大合併で市となった。

 当時の人口は約5万人。土岐市は合併当初から旧8町村にあった公共施設を維持し続け、更新や新設する場合も旧8町村ごとに進めてきた。公民館(9館)や保育園(10園)、幼稚園(7園)、児童館(6館)、老人施設(8施設)といったハコモノが、いずれも地区ごとに配置されてきたのである。

 人口は1995年に6万5631人を記録した。その人口のピーク時前後に公民館の建て替えや文化会館(セラトビア土岐)の建設などが実施された。総債を活用したのである。対象事業は26にのぼった。しかしその後、人口は減少し、右肩下がりとなり、少子化も加速している。

「どこに造るか」を考える時代ではない
ハコモノのコストをどう抑えるかが焦点に

 施設の統廃合は、これまで12園あった保育園が10園になったケースのみ。老朽化による建て替えを機に2園を統合したのと、利用低迷で1園を廃園したものだ。市が長年、保育園や幼稚園を直営してきたこともあり、市内に民間事業者が少ないという事情もあった。

 だが、施設の維持管理などが市財政に大きな負担となるのは、必至である。ハコモノの再配置や民間との連携を模索しなければならないときが来ている。にもかかわらず、そうしたことへの危機感が住民の間に浸透していないようだ。もちろん、それはこの地域に限った話ではない。全国に共通する大きな地域課題である。

「ハコモノをどこに造るか」で揉めた時代はとうに過ぎ去った。そして、「ハコモノを造るか造らないか」で議論する時代でもなくなった。今は「新たなハコモノを造らずにどうやって行政サービスを維持するか」といった議論や、「維持管理コストを抑えるために何ができるか」を話し合うべき時代となったのである。


05. 2013年2月05日 12:04:44 : 5zyHzNaOrA
円安は経済回復するときの必ず通る道なのに
この馬鹿どもは何を反対してるの
経済回復したくないの
それとも円安政策をとらずに回復するマジックを見せてくれるの

06. 新自由主義クラブ 2013年2月05日 12:09:38 : 41xQYjMxutK66 : Od3zRGIrsM
円安はエネルギー国産化計画の絶好のチャンス到来!
脱原発派・自然エネルギー派は、もっと喋ろう。

07. 日高見連邦共和国 2013年2月05日 12:19:25 : ZtjAE5Qu8buIw : Ihir5pcR5A

>06 『新自由主義クラブ』=『米犬』

>円安はエネルギー国産化計画の絶好のチャンス到来!
脱原発派・自然エネルギー派は、もっと喋ろう。

“自然エネルギー”で脱原発は出来ない。
少なくとも、5〜10年のスピード感では。

貴君は“脱原発”の立ち位置に立つ者と認識するが、
“脱原発”を果たす為の“タイムスケール”をどう置いている?
100年くらい明ける余裕があるとの認識かい?

悪戯に“自然エネルギー”を強調する者に、本当の“脱原発主義者”は少ないと思う。
(少なくとも自然エネルギーの “限界”を良く知る阿修羅の識者ならね)
逆に“工作員臭”が満載だ。

反論を乞う。


08. 2013年2月05日 13:23:51 : xbnmAmZmGc
阿修羅も世耕率いる自民党工作員だらけになったね。
ネット選挙解禁、
一番得するのは自民党だろう。
二番が維新では、
もう日本沈没は決定的。
2ちゃんも、阿修羅も、ブログランキングなども、
すべて自民党工作員だらけだからね。
フリーター、ニート、定年退職者のいいアルバイトなのだろう。

09. 2013年2月05日 13:30:08 : cWIBtbognM
小泉詐欺の時も一時的に株が上がって景気をよく見せたけど
アベノミクズも結局同じ、湯田金が株を不正に操作して景気を良くしたと
錯覚をおこさせる作戦だから景気なんか良くなりません

10. 2013年2月05日 13:38:30 : M5nxTuchI6
河野氏のコラムでは言及がなかったが、
アベノミクスの経済政策は、
絆創膏と赤チン作戦。
それを後押しする権威主義。
投機筋は竹中と通じる、
幾つかの世界金融ファンド。
マジ、ソブリン危機でも招いたら、
元の黙阿弥より酷いことになるのでしょうね。

11. 新自由主義クラブ 2013年2月05日 14:21:23 : 41xQYjMxutK66 : Od3zRGIrsM
株価を景気の指標として見るのは良くない。
株価上昇率は、市中金利より少し大きい程度が正しい値で、そこからのずれは、すべてノイズである。

株価は企業の利益に影響されるが、利益とは労働者から搾取した不払い労働(=剰余価値)のことである。理想の企業経営は、利益を限りなく正の値のゼロ(+0)に近付けることである。

景気の真の指標は、一人当たりの国内総所得(=GDP)に占める、一人当たりの雇用者所得の上昇率である。

(本当は、雇用者所得に個人事業者の所得を加え、退職金所得(=被雇用者のリストラ効果)を差し引いたもの)


12. 日高見連邦共和国 2013年2月05日 14:35:37 : ZtjAE5Qu8buIw : Ihir5pcR5A

>11 『新自由主義クラブ』=『米犬』

ツマラない講釈垂れてないで、私の 07 のコメントに答えたら?

とても大事な指摘をしてると思うんだが、“逃げる”理由が貴君には有るのかい?


13. 2013年2月05日 15:09:43 : xEBOc6ttRg
#円安が続けば、また順位は下がるか


http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130205-OYT1T00607.htm?from=ylist
デフレなのに…生活費世界1位は東京、2位大阪

 【ロンドン支局】英経済誌エコノミストの調査部門EIUは4日、毎年実施している世界主要都市の生活費調査の最新版を発表した。


 それによると、前回調査では最も生活費が高い都市だったスイスのチューリヒは7位に下がり、2位だった東京が1位となった。2位には前回3位の大阪が入り、デフレが続いていた中でも日本の大都市での生活費が高い実態が目立った。

 3位は豪州のシドニー、4位はノルウェーのオスロ、5位は豪メルボルンだった。上位20位には、アジアと豪州の11都市、欧州の8都市が入ったが、北米の都市は入っていない。調査は、世界の約140都市で、食料や衣料、家賃など160以上の製品やサービスの価格を比較して行われた。

(2013年2月5日11時43分 読売新聞)

Japan has world's most expensive cities
Published: Monday, Feb 4, 2013, 17:32 IST | Updated: Tuesday, Feb 5, 2013, 1:34 IST
Place: Sydney | Agency: ANI


Japanese cities are some of the most expensive in the world to live in, with a new report ranking Tokyo and Osaka, as the two most costly cities.

The Economist Intelligence Unit worldwide cost of living index 2013 placed Norway's capital, Oslo fourth after Sydney, reports The Age.

The report said it is a familiar position for the Japanese capital, which has been the world's most expensive city for all bar a handful of the last 20 years.

Oslo was closely followed by Melbourne, Singapore, Zurich, Paris, Caracas and Geneva.

World's top 10 most expensive cities:

1. Japan, Tokyo

2. Japan, Osaka

3. Australia, Sydney

4. Norway, Oslo

5. Australia, Melbourne

6. Singapore, Singapore

7. Switzerland, Zurich

8. France, Paris

9. Venezuela, Caracas

10. Switzerland, Geneva


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