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2013年6月 7日 神州の泉
安倍政権は第一次安倍政権時と同様に、「ホワイトカラー・エグゼンプション」なる典型的な新自由主義に基づく悪法を出してきた。ホワイトカラー・エグゼンプションとは、労働時間規制適用免除制度と言い、いわゆるホワイトカラー（主に事務に従事する人々を指す職種・労働層）に対する労働法上の規制を緩和・適用免除する法制度を指す。
エグゼンプション（exemption）とは免除・控除を意味するが、誰が免除されるのかと言えば、それは残業代を支払うべき企業側が残業代の支払いを免除されるという考え方である。
一定収入を約束されている事務労働者（ホワイトカラー）などを対象としているとはいえ、労基法に謳われる労働時間基準の枠から外し、企業が残業代を払わなくてもいいというとんでもないサラリーマン奴隷化制度である。
古い言葉だがこれは残業の滅私奉公であり、巷間言われるように過労死助長制度に他ならない。表面的には自主残業を標榜するのだろうが、断れば陰湿な肩たたきを受け、会社にいられない雰囲気が醸成されることは想像に難くない。
脅迫観念の下でサービス残業を実質的に強要される状況は、本当の意味でサラリーマンの健康を害し寿命を縮ませる。許容できるストレスを大幅に超える過酷な労働環境になることは目に見えている。
ほとんどの中堅サラリーマンは、現実として重い住宅ローンやお子さんの教育費負担等を抱えており、その多くは残業代でかろうじて賄われている。残業代の削減というか、企業裁量で残業代ゼロに追い込まれたら、彼らは精神的な負担と現実のローン支払いに呻吟するだろう。若い人たちは結婚資金などを貯めようと思ってもできないだろう。
昔、作家の森村誠一氏の「高層の死角」だったか忘れたが、たしか社畜（しゃちく）とか社奴（しゃど）という言葉が出ていて印象に残った記憶がある。文字通りこのホワイトカラー・エグゼンプションは社畜、社奴の大量囲い込みとなる。
安倍晋三首相が創った産業競争力会議の議事録をざっと見て、その思想性に仰天した。彼らのテーゼは完全に企業主体の考え方であり、それも露骨な表現こそないが、明らかに外資参入を奨励する考え方が主流になっている。
一見、成長を謳い文句にしているが、小泉政権時代の経済財政諮問会議の進化形である。国民側に立った考え方ではないことが鮮明に見てとれる。会議メンバーの茂木経産大臣は「②戦略分野でグローバルメジャーやグローバルニッチを意味するグローバルトップ企業を数多く輩出すること」と明確に提言している。
植草一秀氏が「植草一秀の『知られざる真実』」2013年6月 6日 (木)の記事『アベノミクスに欠落している｢分配｣の視点』で、安倍政権は「成長」の旗を掲げるが、もっと大事な旗が完全に欠落していて、それは「分配」という旗であると明確に指摘する。
植草氏の言うとおり、「成長」は企業側の視点であり、そこに国民への分配（ディストリビューション）政策が欠落していれば、その成長はコーポラティズムそのものである。重要な視点であるので詳しくは植草氏の該当記事をご覧いただきたい。
産業競争力会議で出てきた「グローバル・ニッチ」などという何やら胡散臭いカタカナ用語は、大企業の利害得失に焦点を当てていることは明白であり、この延長上にはグローバル資本（多国籍企業）の日本参入を展望するおどろおどろしい目論見が透けて見える。植草氏の指摘どおり、この会議では分配の政策が完全に抜け落ちている。
また、谷垣法務大臣はこの会議で、コーポレート・ガバナンスの強化を力説していて、これはいかにも日本企業の強靭化を意味するように思われる。しかし、コーポレート・ガバナンスが企業首脳部取締役会の枠組みを構築する企業統治を意味する以上、日本の大手企業の半分以上が外資株で占められていることを思えば、この統治概念が外国資本の考え方で占められることは明らかであり、それは国益に反し、労働成果が株主傾斜に移ることを意味する。
つまり、国民の可処分所得を減らしてその分を外国資本に移行させることが産業競争力会議の狙いであることがよく分かる。このような趨勢の中でホワイトカラー・エグゼンプションが構想されていることは、安倍内閣が外資や大企業の下僕になっていることを意味している。
小泉政権以降、日本社会は急速にアメリカ型社会に転換し、グローバル資本とそれに阿諛追従する国内大手企業に都合の良い規制緩和や制度替えが進行している。
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