[CML 025379] 被害者意識が増殖している/蓮池透(元「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」事務局長)
BARA harumi-s at mars.dti.ne.jp
2013年 7月 13日 (土) 13:11:11 JST
http://list.jca.apc.org/public/cml/2013-July/025292.html

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新聞記事
朝日新聞・WEB
2013.7.13
被害者意識が増殖している/蓮池透(元「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」事務局長)

　http://digital.asahi.com/articles/TKY201307120542.html?ref=pcviewer

首相や閣僚の胸元を見て、いつもおかしいな、と思うんです。
ブルーリボンのバッジ、つけていますよね。
だけど日本には、様々な問題の解決を求める多くの団体がある。
首相や閣僚であれば全てのバッジをつけるべきではないでしょうか。
なぜ、拉致問題の解決を目指すブルーリボンだけなのでしょう。

　２００２年９月１７日、小泉首相が訪朝し、北朝鮮が拉致を認めました。
その時、私たち家族だけではなく、日本社会全体が「俺たちは被害者だ」という感情を持ったと思います。
昔は社会的には小さな問題だったんです。
拉致なんて言葉もなく、私たちの訴えに耳を貸してくれる人はほとんどいなかった。
それがあの日を境に一変し、「被害者がかわいそう」から「北朝鮮を制裁しろ」まで一気でしたね。
ずっと加害者だと言われ続けてきた、その鬱屈から解き放たれ、あえて言うと、偏狭なナショナリズムができあがってしまったと思います。

　被害者意識というのはやっかいなものです。
私も、被害者なのだから何を言っても許されるというある種の全能感と権力性を有してしまった時期があります。
時のヒーローでしたからね。
国会議員に写真撮影を求められたり、後援会に呼ばれたりして、接触してくるのは右寄りの方たちばかりでしたから、改憲派の集会に引っ張り出され、訳もわからず「憲法９条が拉致問題解決の足かせになっている」という趣旨の発言をしたこともあります。
調子に乗っちゃったんです。

　被害者意識は自己増殖します。
本来、政治家はそれを抑えるべきなのに、むしろあおっています。
北朝鮮を「敵」だと名指しして国民の結束を高める。為政者にとっては、北朝鮮が「敵」でいてくれると都合がいいのかもしれません。
しかし対話や交渉はますます困難となり、拉致問題の解決は遠のくばかりです。

　拉致問題を解決するには、日本はまず過去の戦争責任に向き合わなければならないはずです。
しかし棚上げ、先送り、その場しのぎが日本政治の習い性となっている。
拉致も原発も経済政策も、みんなそうじゃないですか。

　私がこうして政権に批判的なコメントをすると「弟が帰ってこられたのは誰のおかげだ。感謝しろ」という批判がわっと寄せられます。
いったいどんな顔をして生きていけばいいのか、わからなくなる時があるんですよね。

弟はよりそうだと思います。
自分たちだけが帰国できたことへの、申し訳ない気持ちも常にある。
現実の被害者の思いは複層的です。
しかし、日本社会は被害者ファンタジーのようなものを共有していて、そこからはみ出すと排除の論理にさらされる。
被害者意識の高進が、狭量な社会を生んでいるのではないでしょうか。

　調子に乗っていた当時の自分を振り返ると、恥ずかしい。
だけど日本社会は今も、あの時の自分と同じように謙虚さを失い、調子に乗ったままなのではないかと思います。

　（聞き手・高橋純子）

　　　　＊

　はすいけとおる　５５年生まれ。７８年、弟・薫さんが北朝鮮に拉致され、「家族会」事務局長として活動の中心を担う。
著書に「奪還」「拉致」「私が愛した東京電力」など。
　

コメント
01. 2013年7月15日 09:11:50 : ZS1XpL1M02 　傾聴に値します。蓮池さんの発言に敬意を表したいと思います。 　拉致問題が表面化し、北朝鮮をなんてけしからん国だと怒りを覚えたのは事実ですが、彼の指摘通り、拉致問題を利用し、別の思惑で日本ある方向へを導いていこうとする為政者の偽善も間違いなくあるでしょう。一定の時間が経過したいま、それがはっきり見えています。 　二元論的な見方で本質的な問題解決は難しいと思います。蓮池さんの使った「複層的」という言葉がいまの日本には必要だと実感します。表層的で、情緒的で、右向け右…が好きな日本人の国民性を利用し、コントロールするのは簡単でしょう。北朝鮮の「金王朝」に匹敵する不気味なパワーをいまの日本の政治家、官僚、財界、メディア、検察・警察・裁判所…等々の権力機構に対して感じてしまいます。
02. 2013年7月15日 10:20:34 : nzEG1IEQiA 私は持っていますがいつもは主人がつけています。 （めぐみ）という映画の試写会で購入しました。 横田ご夫妻にもお目にかかりました。 写真もたくさん拝見いたしました。 もっと皆が付けてくれればとおもいます。
03. 2013年7月15日 10:47:38 : x4s8HgHXaU 自分をあるいは自分達を被害者と位置づけると、加害したという事実は都合よく忘れることができる。 これは大事な視点。 ヘタをすれば日本は世界の鼻つまみものになりはじめている。安倍を支持していればやがてそうなる。
04. 2013年7月15日 10:47:44 : OImNJqRbPQ 拉致事件は多数ある問題の一つでしか過ぎないことを認識すべきですね。 蓮池さんの言われる通り、国家の首相が一点のブルーリボンだけをつけて 世界を飛び回る姿は薄気味悪いですね。 北朝鮮もバッジ王国です。
05. 2013年7月15日 13:43:53 : w7dXnsEqJk 当事者でありながら、こうした客観的立場にたつことができた蓮池氏に敬意を表する。「拉致問題を解決するには、日本はまず過去の戦争責任に向き合わなければならないはず」との考えは、何よりも北朝鮮が考えていることであろう。ところが、日本政府は、「拉致問題を解決しない限り、何の交渉もせず制裁を課する」と言い続けている。事の因果関係を突き詰めて考えると、「拉致問題を解決するには、日本はまず過去の戦争責任に向き合わなければならないはず」となる。今の政治家達が、拉致問題を政治利用しているだけなのは明白である。日本政府、否、日本の官僚機構のものの考え方は、戦前戦後も一貫しているのだろう。これは、現今の原発事故処理を見ていると明確に見えてくる。隠蔽、無視、無責任という体質が全ての問題の解決を阻んでいる。これは、リーダーシップの問題でもあろう。
06. 2013年7月15日 16:55:59 : 7oSKGju5kA ここ重要。 ＞ しかし、日本社会は被害者ファンタジーのようなものを共有していて、そこからはみ出すと排除の論理にさらされる。 ＞ 被害者意識の高進が、狭量な社会を生んでいるのではないでしょうか。 敢えて拉致問題に留まらない普遍的な表現をなさっている。
07. 2013年7月16日 00:40:47 : FfzzRIbxkp ３１１以降の自民党をはじめとした右側の被害者意識というのはどこから来ているのでしょうか。 自然災害ならば、あそこまで被害者意識が暴力に変わるものでしょうか。 強引な原発再稼動の話も、自民党からすれば、原子力発電所も被害を受けたのだという認識なのでしょうか。 自然に対しての怒りとは思えないような暴走。 私は自民をはじめとした右側の演技は、被害者意識をあおるふりをして、自分たちの失態を隠しているように見えます。 蓮池さんの記事に子どもじみたコメントを書いて申し訳ないのですが、 自民党のやり方は、組織の自己防衛のやり方なんです。 自分が悪いことをしたのに、あいつのせいだ！

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