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殺人ロボ 禁止せよ ノーベル平和賞受賞者が警鐘
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013042702000166.html
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11519496455.html
2013年4月27日 東京新聞 こちら特報部
殺人ロボットの開発製造を全面的に禁止せよ−。こんな声が国際社会で上がっている。ＳＦやアニメの世界ではない。二十年後には人が直接コントロールしない自律型の殺人ロボットが兵器として使用される危険も指摘される。文字通り「非人道的」な兵器を今から封じておく必要があるというのだ。 （出田阿生、小倉貞俊）
◇殺人ロボ禁止せよ
国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」（本部・ニューヨーク）などが主導する国際ＮＧＯ連合は四月、「ストップ・キラーロボット」（殺人ロボット反対）キャンペーンを本格化した。
今後二十〜三十年、ひょっとすると十年以内に殺人ロボットの製造が現実になるかもしれないという危機感からだ。二十三日ではロンドンで、対人地雷禁止・除去活動によって一九九七年にノーベル平和賞を受けた米国の平和運動家ジョディ・ウィリアムズ氏らが殺人ロボットの開発、製造禁止を訴えた。
人間の命令なしに、人を殺せる自律型のロボットといえば、米国の人気映画に登場するロボット、ターミネーターを思い浮かべる人もいるだろう。ウィリアムズ氏らは「今や各国で人工知能を持った完全自律型兵器の開発が進み、ターミネーターが現実になりつつある」と指摘する。
なぜ、こうしたロボットを規制すべきなのか。ウィリアムズ氏は道徳的・倫理的境界の一線を越える恐れがある。人間が制御しない武器が戦争で使われたら、矢面に立つのは民間人となるだろう」と警告する。
人間に操縦されない自律型ロボットが軍事活動に使われた場合には、より無慈悲な攻撃が行われる可能性が高くなるとの見方がある。感情のないロボットは確実に相手にダメージを与えることを優先するだろう。
ロボットが兵士となって敵に標的を定めた時、「銃を構えた戦闘員」と「降参している女性や子ども」を正確に区別できるのかなどの問題もある。独裁者が悪用して自国民の制圧などに殺人ロボットを使用したらどうなるか。殺人ロボットは核兵器や化学兵器に匹敵する危険があり、実用化前から対応しておく必要があるというわけだ。
ヒューマン・ライツ・ウオッチは昨秋、ハーバード大法科大学院の国際人権クリニックと共同でロボット兵器に関する報告書を発表。殺人ロボットの製造を全面禁止する国際条約、各国での国内法制定を主張した。
同団体のスティーブ・グース武器局長は「一つの国が配備をしたら、他国も追随してロボット兵器開発競争を招く恐れがる。まだ完全実用化されていない今こそ、歯止めを掛けるべきだ」と訴える。
日本では憲法によって兵器となり得る殺人ロボットの製造や使用はできない。防衛省・技術研究本部によると、地雷など人が近づくと危険な爆発物を破壊処理するロボットの研究開発はしているが「敵を発見して自動的に攻撃するロボットは保有ももちろんしていないし、研究開発もしていない」と説明する。
ロボット研究開発に携わる研究者たちも「学術の世界では、軍事研究には一切協力しないという立場だ」（日本ロボット学会）と強調する。
ロボットは漫画やアニメ、ＳＦ小説などに数多く描かれてきた。ＳＦ作家の眉村卓氏は「ターミネーターのようなロボットは、ＳＦの世界では目新しくはない。しかし、最近は現実がＳＦの世界に追いついてしまい、境目がよくわからなくなっている」と語る。
眉村氏は「恐ろしいのは、何が『正義』なのかが、人や国によって違うこと。たとえば敵国人、違う宗教の信者というだけで、相手を自動的に殺すロボットができたらどうするか。正義という言葉が最も恐ろしく感じる時代が来てしまう」と嘆いた。
◇無人兵器 進む実用化
完全な自律型のロボットとはいえないまでも、それに近い軍事用ロボットは一部で実用化、導入されている。
韓国では二〇一〇年、北朝鮮との軍事境界線の南北に設けた非武装地帯に歩哨（見張り）ロボット「ＳＧＲ−１」を配備。不審者の侵入を感知して、離れた場所にいる兵士の指示で侵入者に警告を与える。マシンガンと手榴弾を発射する装置を持ち、人間に対して攻撃する能力を持っている。兵士の指示なしでも、こうした攻撃が可能な段階に入っている、との情報もある。
一方、イスラエル。二〇一一年に導入した対空防衛システム「アイアンドーム」はパレスチナ自治区ガザとの境界線に配備した。撃ち込まれたロケット弾などの軌跡をカメラとレーダーで捉え、オペレーターに対処法を通知。迎撃するかどうかは最後は人間の判断で、その意味では「殺人ロボット」ではないが、同システムのイスラエル配備を支援する米国防総省によれば、迎撃成功率は８０％をを超えるという。
イスラエルには国境地帯に配備した無人偵察車両「ガーディウム」もある。最初に目標場所を指示してやれば、適切なルートを自分で判断して走行。敵を自動認識して、攻撃する機能を加える方向だという。
無人戦闘機は最も「殺人ロボット」に近く、攻撃力も高い。英国は二〇一〇年、無人戦闘機「タラニス」の試作機を公開。レーダーに映らないステルス機で、長距離飛行と標的への正確な爆撃ができる。現在は訓練を積んだオペレーターが遠隔操作しているが、英国軍は将来的には、オペレーターなしで、敵を自動的に捕捉させることも否定していない。
無人軍用機の開発と活用が進むのは米国だ。遠隔地からの無線操縦により対地爆撃ができる無人攻撃機ＭＱ−１プレデターの他、米海軍がテスト中のＸ−４７Ｂなど。無人機は兵士を危険に晒さずに敵地に侵入できるため、米国防省は今後も倍増させていく方針を明らかにしている。
「こうした無人兵器の開発はどんどんエスカレートしていくだろう」と指摘するのは、軍事ジャーナリストの神浦元彰氏だ。「兵士の犠牲を減らせるだけでなく、膨大な額になる遺族年金なども必要ないため、費用対効果が高い。さらに戦闘時の兵器としての性能そのものも高まる」と分析する。
例えば、無人戦闘機なら人間には耐えられない重力のかかる急旋回もできる。無人戦車なら一層の小型化も可能。無人潜水艦には人間のための空間はいらないし、より長く潜航できる。兵士の生命を危険に晒さない上、武器としての効果も上がるのであれば、軍事国家は無人機や、さらに進化した完全自律型の殺人ロボットの開発製造を望むことになる。
殺人ロボット禁止の訴えはこうした国々に通じるだろうか。
神浦氏は無人機や殺人ロボットについて「人間を滅ぼす恐れがある核兵器と同じだ」と指摘。その一方で、各国とも軍事的優位性を保ちたい以上、無人機や殺人ロボットの開発や使用を規制することは「現状ではまず無理だろう」と悲観的な見方を示した。
「規制をすべきだという声が広がらないのは、そもそも、殺人ロボットの存在が知られていないからだろう。まずはたくさんの人がその存在と恐ろしさに対し、共通認識を持つことが大切だ」
※デスクメモ 「ロボットは人間を幸せにするために生まれた」「ロボットは人を傷つけたり、殺したりしてはならない」。「鉄腕アトム」に登場する「ロボット法」。ロボットの兵器化にどう歯止めを掛けるかは昔からＳＦの世界では大きなテーマだった。それが現実になろうとしている。笑い話ではないのだ。（栗デスク）
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