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田中宇:シリア空爆騒動とイスラエル
http://www.asyura2.com/13/warb11/msg/651.html
投稿者 小泉犬 日時 2013 年 9 月 05 日 20:38:10: tZgj1vEYtfiSU
 

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2013年9月5日 http://tanakanews.com/mail/

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)
米英覇権を自滅させるシリア空爆騒動 http://tanakanews.com/130903syria.php
シリア空爆騒動:イラク侵攻の下手な繰り返し http://tanakanews.com/130830syria.php
サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変 http://tanakanews.com/130823egypt.php

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★シリア空爆騒動とイスラエル
━━━━━━━━━━━━━━━

 8月下旬からのシリア空爆騒動や、7月初旬からのエジプトのクーデターの
陰に隠れて目立たないが、イスラエルとパレスチナは、7月末から中東和平交
渉を進めている。8月26日には、イスラエル軍がパレスチナ人の動きを妨害
するため設けている東エルサレム郊外の検問所で、もめ事からイスラエル軍が
発砲して3人のパレスチナ人を殺し、パレスチナ自治政府が抗議の意味で和平
交渉をキャンセルしたと報じられた。しかし、和平交渉はキャンセルされるど
ころか逆に頻繁に開かれている。8月31日と9月3日に交渉が秘密裏に行わ
れたと、事後に報じられた。

http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/.premium-1.543616
Palestinian negotiators say they canceled meet with Israelis after deadly clashes

 和平交渉が大きく報じられないのは、開催の場所も日時も秘密にされ、しか
も仲裁者であるべき米国の代表が参加させてもらえないまま開かれているから
だ。交渉の進展を逐一報告されてしかるべき米国のケリー国務長官ですら、新
たな交渉が行われたことを知るのは事後で、しかもイスラエルでなくパレスチ
ナから開催を知らされている。

http://news.xinhuanet.com/english/world/2013-09/02/c_125294338.htm
Israeli, Palestinian negotiators meet secretly on Saturday: report

http://news.antiwar.com/2013/08/20/israels-livni-predicts-dramatic-decisions-as-peace-talks-continue/
Israel's Livni Predicts `Dramatic Decisions' as Peace Talks Continue

 今回の中東和平交渉は、最初から米国が仲裁し、米国が7月末にイスラエル
とパレスチナの代表をワシントンDCに呼んで交渉開始を宣言した。しかし交
渉が始まってみると、米国の代表であるマーチン・インディク特使は、これま
で数回開かれた交渉に一度も参加していない。インディクは現場のエルサレム
にずっと滞在しているが、イスラエルが彼の出席を拒んでいる。

http://www.jpost.com/Diplomacy-and-Politics/PA-official-says-US-team-not-taking-part-in-negotiations-as-promised-323895
PA official says US team not taking part in negotiations as promised

http://tanakanews.com/130729palestin.htm
中東和平交渉の再開

 米政府は「インディクは交渉に参加している」と発表しているが、たぶんウ
ソだ。インディクが参加しているなら、報じられているような、ケリーが交渉
を事後に知ることはありえない。米国の学者は、インディクが交渉に参加して
いないことを前提に「交渉妥結の直前まで世の中の余計な注目を集めずにすむ
ので、仲裁者は軽視された方が良い」と、米政府の肩を持つ説明をしている。

http://www.tidewaterreview.com/news/national-world-news/sns-rt-us-palestinians-israel-usa-20130901,0,2601857.story
U.S. says its envoy took part in Israeli-Palestinian meeting

http://www.huffingtonpost.com/steven-l-spiegel/kerry-middle-east-negotiations_b_3785362.html
Kerry and Indyk in Israeli-Palestinian Talks: Don't Take Us Seriously

 パレスチナ側は、イスラエルがインディクを交渉に出席させないことに抗議
している。だがイスラエル側は、インディクが出席すると、その過激な発言ゆ
えに、パレスチナ人が態度を硬化させて交渉が進まなくなると言い、出席を拒
否している。米政界に大きな影響力を持つイスラエルの強い主張であるため、
米政府も断れない。

http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/.premium-1.542808
Israelis, Palestinians at odds over U.S. envoy's role in peace talks

http://news.antiwar.com/2013/08/22/palestinians-israel-pushed-us-team-out-of-negotiations/
Palestinians: Israel Pushed US Team Out of Negotiations

 インディクは、民主党系のブルッキングス研究所の幹部で、クリントン政権
でイスラエル大使や中東担当の国務次官補をつとめた。英国生まれ、豪州育ち
のユダヤ人で、1982年にAIPAC(米イスラエル公共問題委員会)の研
究副部長になって以来、米政府の中枢に入り込んだ。AIPACは、逆らった
議員を次の選挙で確実に落選させる米国最強の政治圧力団体で、イスラエル右
派系だ。インディクは好戦派で、イラク侵攻前、イラクとイランの両方を封じ
込める「二重封じ込め策」を提唱したことで知られる。

http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Indyk
Martin Indyk From Wikipedia

 インディクは、従来のパレスチナ和平交渉に臨むイスラエルにとって、うっ
てつけの人物だった。イスラエルは1993年のオスロ合意で、本気でパレス
チナ国家の創設に賛成した。だがその後イスラエルでは、たとえ国家を創設し
てやっても、パレスチナやアラブ諸国がイスラエルへの非難をやめず、安定し
た和平体制にならず、イスラエルが譲歩した分だけ弱体化すると考える右派の
主張が席巻した。イスラエルは表向き和平に賛成しつつ、仲裁役の米国を通じ
てパレスチナ人に無理な注文を押しつけて拒否させ、相手のせいにして交渉を
頓挫させ続けた。アラファトは死ぬ(毒殺される?)までこの茶番劇の相手役
をやらされ、後任のアッバースも同様だ。好戦的な言葉でパレスチナ人をテロ
リスト扱いして怒らせるインディクは、従来の和平交渉に適役だった。

http://www.aljazeerah.info/Opinion%20Editorials/2013/August/5%20o/How%20Can%20Zionist%20Martin%20Indyk%20Be%20an%20Honest%20Broker%20in%20the%20Israeli-Palestinian%20Negotiations%20By%20Mazin%20Qumsiyeh.htm
How Can Zionist Martin Indyk Be an Honest Broker in the Israeli-Palestinian Negotiations

 しかし今回、ネタニヤフ政権のイスラエルは、和平交渉へのインディクの出
席を拒否している。「ネタニヤフも右派だから、従来どおりの茶番劇に変わり
ないはず」と思い込んでいる人は、インディクの欠席ぐらい無視するかもしれ
ない。しかし05年に脳卒中で倒(さ)れるまで、パレスチナをイスラエルか
ら一方的に隔離する独特な和平策を進めたシャロン元首相も、ネタニヤフと同
じリクード党首で、ゴリゴリの右派だった。ネタニヤフは今回、本気で和平交
渉を進めようとしている。だからインディクの出席を拒否し、米国側や自国内
の右派に妨害されぬよう、交渉の日時や場所も秘密にして、交渉を進めている。
パレスチナ側は、いやいやながらも、イスラエルのやり方に従っている。

http://tanakanews.com/130806mideast.php
中東和平再開とともに不穏になる世界

 イスラエルが和平交渉に真剣なのは、中東における米国の支配力が急速に減
退しているからだ。米国は、財政難や外交信用の低下を受け、中東の諸問題に
関する国連やG20などでの議論で、ロシアや中国の主張を容認する態度をし
だいに強めている。取り残されるイスラエルは、パレスチナ和平を進め、アラ
ブ諸国やイスラム世界と和解する道を模索し、米国の力が減退した後も国家存
続しようとしている。米国のシリア空爆騒動をめぐっても、ネタニヤフは閣僚
にコメントするなと厳命し、馬鹿げたオバマのやり方に関与したがらず「イス
ラエルが黒幕だ」と言われないようにしている。

http://www.politico.com/story/2013/08/israel-lobby-silent-on-syria-95964.html
Israel lobby silent on Syria

 ネタニヤフは最近、側近を中国に派遣し、中国政府との間で経済協力の拡大
や、定期航空便の増加を決めている。イスラエルは、目立たぬようそろそろと
米国から離れ、覇権多極化の流れに適応しようとしている。

http://www.haaretz.com/business/.premium-1.543655
Netanyahu's top economic adviser to seek joint projects in China

http://tanakanews.com/120215israel.php
多極化に呼応するイスラエルのガス外交

 イスラエルが米国主導の「過激な仲間たち」から足抜けしようとしているの
を見て、米国では、右派(親イスラエルのふりをした反イスラエル勢力)が意
地悪し、ニューヨークタイムス(NYT)がAIPACから圧力を受けて記事
の一部を削除した話が問題視されたりしている。NYTは「AIPACが米政
界のシリア空爆の議論に大きな影響を与えている」と書いた記事を掲載した後、
ウェブの記事のその部分を削除した。これを受けて「AIPACがNYTに
圧力をかけた」という見方が広がった。

http://www.politico.com/blogs/media/2013/09/ny-times-scraps-aipac-from-syria-story-171669.html
N.Y. Times scraps AIPAC from Syria story

 だが実のところ、AIPACはシリア空爆に関して沈黙している。NYTの
記事のネタ元(匿名の米政府高官)が誇張していたと考えるべきだ。これまで
AIPACが米政界でさんざん悪事を働いてきたのは事実だが、最近は微妙に
攻守が逆転している。

http://tanakanews.com/f1108israel.htm
足抜けを許されないイスラエル

 イスラエル政界ではまだ右派が強く、イスラエル政府が米国に圧力をかける
際も在米右派を経由せねばならない。右派の中には「イスラエルの存続には和
平が必要だ」と気づいている人もいるが、そうでない人もいる。親イスラエル
のふりをした反イスラエル勢力のように、現状に気づかないふりをしている人
も多い。だからネタニヤフは、今回の和平を進めるにあたり、米右派が推薦し
たインディクを仲裁役として受け入れざるを得なかったし、イスラエル政府内
の住宅省などに巣くった右派が、西岸の違法入植地を拡大すると発表し続ける
ことも看過せざるを得ない。しかし、以前は過激に好戦的だったAIPACが、
今はシリア空爆の議論で沈黙していることが示すように、状況は急速に転換
している。

http://news.antiwar.com/2013/08/25/israel-announces-more-settlement-expansion/
Israel Announces More Settlement Expansion

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/7f05fbe0-0280-11e3-a9e2-00144feab7de.html
Israel approves new housing for settlers days before peace talks

 パレスチナのアッバース議長は「今回の和平が締結されたら、それ以降、イ
スラエルに新たな要求をしない」と表明し、難民帰還権など積み残しの問題を
放棄する姿勢を表明した。西岸に残るユダヤ人入植地は、そのままパレスチナ
国家の一部になり、入植者はイスラエル国籍からパレスチナ国籍に転換させら
れる。「ユダヤ系パレスチナ人」になるのがいやな人は、入植地を棄ててイス
ラエルに戻るしかない。イスラエルが西岸入植者の武器をきちんと没収できれ
ば、入植地問題は解決しうる。パレスチナ国家は軍隊を持たず、国際軍(米軍
など)に治安を守ってもらう方針だという(米軍がパレスチナに駐屯するとは
考えられないが)。

http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/1.543125
Abbas: Peace deal will mean end of Palestinian demands of Israel

 ネタニヤフは、交渉が失敗した場合に交渉担当相のツィピィ・リブニのせい
にして、右派としての政治生命を保ちたいようで「交渉でリブニが勝手に譲歩
するので、ネタニヤフはリブニを信用しなくなっている」という話がマスコミ
に流されている。

http://www.theage.com.au/world/benjamin-netanyahu-is-reportedly-losing-trust-in-israels-chief-negotiator-tzipi-livni-20130828-2spe4.html
Benjamin Netanyahu is reportedly losing trust in Israel's chief negotiator Tzipi Livni

 時期的な重複と、いずれも米国の覇権衰退と絡んだ事件であることから考え
て、パレスチナ和平交渉の再開と、エジプトのモルシー政権転覆のクーデター、
シリア空爆騒動は、おそらく同根の事件だ。エジプトのクーデターについて
私は、ムスリム同胞団の政権の成立と存続を後押し・支持してきた米国の影響
力がかげり出したのを見て、同胞団を脅威と考えるサウジアラビアの王政が、
エジプト軍部をそそのかしてクーデターを挙行させ、米英のプロパガンダ機関
に影響力を持つイスラエルも、中東和平のことを考えてサウジに協力した、と
いう推論を最近配信した。

http://tanakanews.com/130823egypt.php
◆サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変

 米国は911以来の好戦策によって、冷戦終結までおおむね親米的・世俗的
だったイスラム世界に反米感情を植え付け、反米的なイスラム主義の政権が広
がっていくよう仕向けた。サウジ王政は対米従属なので、米国の戦略にいやい
やながら従ってきたが、中東で「アラブの春」が広がり、反米イスラム主義が
強まるほど、サウジ王政は敵視され、存続が危うくなる。

 存続が危うくなるのは、イスラエルも同様だ。米国の右派は、イスラエルと
関係が良いことや、イスラエルが米国の中東戦略を牛耳っているイメージを、
なかば意図的に世界に広め、中東の反米イスラム主義がイスラエル敵視するよ
う仕向けてきた。エジプトのムスリム同胞団は短期的に、イスラエルとパレス
チナを仲裁するなどイスラエルにとって悪い勢力でなかったが、長期的には、
エジプト、シリア、ヨルダン、パレスチナという、イスラエルを取り囲むすべ
ての国がムスリム同胞団の政権になる可能性があり、イスラエルは包囲され劣
勢になる。エジプトのクーデターは、サウジとイスラエルの両方の利益だった
とも考えられる。

 また、今年8月からイランに現実的なロハニ政権ができ、米国はいずれイラ
ン敵視をやめてイランの台頭を黙認しそうだ。イランの台頭は、サウジとイス
ラエルの両方にとって大きな脅威だ。米国はこの10数年、自作自演的なテロ
で世界支配を強化したり、他国に濡れ衣をかけて侵攻したり、国連を無視して
覇権を振り回すなど、国際信用を落とすことをさんざんやった。当然ながら、
世界を従わせる外交力が低下し、イランへの国際封じ込めも効かなくなり、イ
ランやロシアや中国の台頭を容認せざるを得なくなった。サウジやイスラエル
は、米国に頼ってイランを潰してもらうことができなくなり、逆に今後、ロシ
アや中国に仲裁してもらってイランとの敵対を解いていくしかない。

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/9a5c0bd4-13a4-11e3-9289-00144feabdc0.html
Israel fears being left alone to counter Iran nuclear programme

 これらの現状と、シリア空爆騒動は、どのような関係があるのか。「イスラ
エルが米国に圧力をかけてシリアを空爆させ、アサド政権を転覆しようとして
いる」と考えている人が多いが、間違いだ。イスラエルは、シリアでアサド政
権が倒れてアルカイダの政権になることを望んでいない。イスラエルにとって、
アルカイダよりアサドの方がはるかにましだ(イスラエルの高官らは、米国
との関係悪化を恐れ、それを言わないようにしている)。アサド政権は、アサ
ド家や取り巻きのアラウィ派の繁栄が目標で、イスラエルがそれを妨害しなけ
れば、シリアは、口でイスラエルを非難・敵視するだけで、実際にイスラエル
に戦争を仕掛けることがない。シリア政府軍は、1967年の戦争でイスラエ
ルに奪われたゴラン高原を取り戻しに来ない。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4381028,00.html
Israeli intelligence official: Assad preferable to rebels

 しかしシリア反政府勢力、つまりアルカイダは違う。イスラエルが交渉しよ
うにも相手となる指導者がいない。アルカイダは、米国の諜報機関が「敵」と
して養ってきた勢力だけに、アサドよりずっと好戦的で、米軍の空爆でアサド
政権が弱体化したら、混乱に乗じてアルカイダがゴラン高原を奪還しようとイ
スラエルに戦争を仕掛けるかもしれない。そうなるとイスラエルは反撃せざる
を得ず、非対称的で泥沼の戦争に巻き込まれる。イスラエルの高官たちは「米
国のシリア空爆は支持するが、アサド政権を潰すまでやるべきでない」と言っ
ている。

http://news.antiwar.com/2013/09/02/wary-of-post-assad-syria-israel-uneasy-with-inclusion-in-us-war-debate/
Wary of Post-Assad Syria, Israel `Uneasy' With Inclusion in US War Debate

 米国がシリアを空爆しない方が、イスラエルの国益になる。イスラエル系の
在米勢力は、シリア空爆を議論する米議会に圧力をかけていないと報じられて
いるが、もしかするとイスラエルは、従来のように好戦的な空爆支持派を支援
するのでなく、逆に、反戦派をこっそり支援しているかもしれない。リバタリ
アン(孤立主義的)で反戦系のランド・ポール上院議員は、しだいにイスラエ
ルと親しくなっているが、国際主義だったはずのイスラエルが孤立主義者を支
援するという驚きの逆転が、ひそかに起きているかもしれない。

http://spectator.org/blog/2010/04/22/rand-paul-and-israel
Rand Paul and Israel

http://www.huffingtonpost.com/2013/01/07/rand-paul-israel_n_2424275.html
Rand Paul Visits Jerusalem, Calls For Gradual Reduction Of U.S. Aid To Israel

 イスラエルは、シリア空爆の黒幕でない。それでは、サウジはどうか。サウ
ジはアサド政権を敵視し、シリア反政府に資金や武器を供給してきた。しかし
同時に考察すべきは、米国がオバマ政権初期の09年にアサド敵視をやめてシ
リアと国交回復しようと動いた時期、サウジ国王はアサドを自国に招き、会っ
ていることだ。サウジは、米国がアサドを許そうとした時期にアサドと親しく
し、米国がアサドを敵視した時期にアサドを敵視している。要するに、最近の
サウジのアサド敵視は、対米従属策だ(日本が中国や北朝鮮を敵視するのと同
じ構図)。

 米国は今回、アサド敵視を過剰に強めている。アサドの軍が化学兵器を使っ
たと考える根拠が薄いと考える国連や途上諸国、BRICSなどを無視し、ア
サドに化学兵器使用の濡れ衣をかけて空爆しようとしている。サウジが主導す
るアラブ連盟は、この過剰策についていけず、シリア空爆に反対する決議を行
った。サウジの影響が強いはずのエジプトの軍事政権は、アサド政権との国交
回復を宣言した。これらのことは、サウジ王政が、いくら対米従属のためでも、
もはやアサド米国の過激なアサド敵視策についていけなくなり、脱落してい
ることを示している。米国の覇権が低下しているのだから、脱落してかまわな
いという考えかもしれない。いずれサウジは、再びアサドに接近していくので
ないか。

http://www.nytimes.com/2013/08/28/world/middleeast/arab-league-rejects-attack-against-syria.html
Arab League Stance Muddies U.S. Case

http://agonist.org/egypt-shifts-support-toward-syrian-government/
Egypt shifts support toward Syrian government

 オバマは、ブッシュが無茶苦茶をやって崩れた米国の国際信用を取り戻すこ
とを目指してきた。しかし今回のシリア空爆騒動は、ブッシュの無茶苦茶と同
じ、もしくはそれ以下だ。オバマがすべてを把握しつつ、この無茶苦茶をやっ
ているとは思えない。オバマは、側近や諜報部門が流してくる微妙に間違った
情勢分析や戦略案にだまされ、引っかけられて、米国の信用をさらに失墜させ
る事態に陥っていると推測できる。

 シリア空爆は、米国、サウジ、イスラエルのいずれの国益にもならない。イ
ラン、ロシア、中国など、米国の覇権の外にいる国々を有利にするものであり
「隠れ多極主義」的な政策だ。オバマを引っかけた米中枢の勢力は、イラク侵
攻を引き起こしたネオコンなどとつながった勢力であろう。共和党の好戦派は、
地上軍侵攻を選択肢に入れ、シリアに本気で侵攻するなら空爆に賛成すると
言っている。要するに、彼らはシリア侵攻をイラクの二の舞の泥沼化にしたい。
オバマをブッシュにしたい。彼らのような動きが、隠れ多極主義である。

http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/sep/03/syria-obama-risks-pushed-prolonged-military-campaign
Syria strikes: Obama risks being pushed into a prolonged military campaign

 シリア空爆案は、米議会上院の外交委員会で可決され、上院本会議も可決さ
れそうだが、下院は反対派が多く、否決されそうだ。もともと米連邦議会の上
院は、米国のエリート層を代表する傾向があり、金融界や軍産複合体などの言
いなりだ。対照的に下院は草の根的で、リバタリアンなど米国の伝統的な考え
方が、金権主義に抑圧されつつも息づいている。本来の米国を取り戻すための
反乱が起きるとすれば、それは議会下院からだ。

http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324432404579053344262636248.html
Support Builds in Congress for U.S. Strike Against Syria

 この反乱に目をつけたのが、おなじみの茶目っ気ある多極化勢力であるプー
チンのロシアだ。ロシア議会はプーチン大統領と諮り、シリア空爆がいかに馬
鹿げており、空爆でなく内戦終結を目指す国際和平会議をやるべきだと、米議
会を説得するため、ロシアの議員団を米議会に派遣することを決めた。ロシア
は、米議会を自分たち(多極主義)の側に引っ張り込もうとしている。さすが
ロシア、大きな規模のことを茫漠と考えている。

http://thehill.com/blogs/global-affairs/middle-east-north-africa/319905-report-russia-may-send-lawmakers-to-lobby-congress-against-syria-strike
Russia may send lawmakers to lobby Congress on Syria

「ロシアの言うことなんか米国が信じるわけない」と思う人が多いかもしれな
い。しかし、意外なところからロシア人に味方しそうな勢力が出てきた。それ
は米軍だ。米軍の内部で、シリア空爆に反対する声が強まっている。米軍内は、
統合参謀本部長から兵卒までの多くの職位から、シリア空爆は無謀で無益だ
という考え方が出ている。米国の大統領府や上院が、馬鹿げたシリア空爆を挙
行するなら、米軍内で反乱や、何らかのクーデターが起きる可能性すらある。

http://rt.com/op-edge/us-military-sick-syria-war-352/
US military sick and tired of war, have no faith in government

http://news.antiwar.com/2013/09/03/air-force-chief-us-not-prepared-for-syria-attacks/
Air Force Chief: US Not Prepared for Syria Attacks

 クーデターが起きる前に、大きな言論のうねりが起こり、シリア空爆を阻止
するとともに、米国で覇権主義が崩れ、国家戦略が孤立主義の方に傾いていく
かもしれない。米政界は、何が起きるかわからない状態に入っている。対米従
属に固執している場合ではない。

 今日(9月5日)は、イスラエルで使われるユダヤ暦の5774年の元旦だ。
今年はイスラエルと世界にとって、大きな変化の年になりそうだ。

この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/130905israel.htm

●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

◆米英覇権を自滅させるシリア空爆騒動
http://tanakanews.com/130903syria.php
【2013年9月3日】米議会がシリア空爆案を可決すれば、米国は再び中東
の戦争にはまり込み、軍事力を浪費し、何十万人も無辜の市民を殺しつつ、軍
事面から信用を失墜していく。空爆案が否決されれば、米国は国際政治の面か
ら信用を失墜していく。オバマのシリア空爆策は、米国史上最大の外交の失敗
だと指摘されている。米国が、過剰に下手くそな国際戦略によって、自滅的に
覇権を失墜し、横から立て直し策を試みる英国を邪険にしたり、引っかけて失
敗させたりして、返す刀でロシアや中国の台頭を誘発するのは、ベトナム戦争、
イラク侵攻、アフガニスタン占領など、戦後の米国の多くの策に共通している。

◆シリア空爆騒動:イラク侵攻の下手な繰り返し
http://tanakanews.com/130830syria.php
【2013年8月30日】米当局は、イラク侵攻のころから諜報分析に歪曲を
入れたがる。イスラエルから報告を受けた米当局は「シリア軍の最上層部は化
学兵器の使用を知らなかったが、化学兵器を管理する担当部局が勝手に使用し
たに違いない」という推論をひねり出した。「アサド自身は化学兵器を使う気
がなかったが、部下の軍人が勝手に化学兵器を使った。それでも責任はアサド
にあり、シリアは空爆されねばならない」という理屈だ。米国では、諜報やプ
ロパガンダの機能が(意図的に?)下手くそに過激に運営され、国際信用が失
墜し、覇権が崩れている。

◆サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変
http://tanakanews.com/130823egypt.php
【2013年8月23日】イスラエルがパレスチナ問題を解決したいならサウ
ジアラビアと話をつけねばならない。イスラエルは、パレスチナ国家の創設を
認めるから、アラブ諸国がイスラエルとの関係を敵視から協調に転換するよう
誘導してくれとサウジに頼み、サウジは、その件を了解するから、代わりに米
欧のプロパガンダをいじってエジプトのクーデターを支持するように誘導して
くれとイスラエルに頼んだのでないか。  

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コメント
 
01. 2013年9月06日 10:27:48 : e9xeV93vFQ
米国、安保理でのシリア問題解決を断
コラム:対話なきシリア軍事介入、「オバマ外交」終止符か
2013年 09月 4日 15:57 JST
[3日 ロイター] - By Trita Parsi

対シリア軍事介入をめぐる米国の国民的議論は、奇妙な性質を持ち合わせている。議会の承認を求めたオバマ大統領の決断を分析するのに多くの時間と労力が割かれている。賢明な選択か否か、軍事攻撃の影響、国連安全保障理事会の決議なしに行動することの正当性、爆撃の道義性などだ。

しかし、根本的な問題がほとんど注目されていない。それは、他のすべての選択肢は検討し尽くしたのかという問題だ。

オバマ大統領は国民に対し、1)軍事介入、2)何もしない、という見せ掛けの二者択一を提示した。

2008年の大統領選でオバマ大統領は、対話重視の外交への回帰を掲げたが、対シリア軍事介入をめぐる動きは、外交交渉が選択肢として議論されない時代を迎えたというサインなのかもしれない。

今回の問題の重要ポイントが、シリア市民の大量殺りくをやめさせるといった人道的なものであるならば、今より早い段階で、内戦の終結を促すための努力がもっとなされるべきだった。

これが容易な仕事ではないことは明らかだ。シリアのアサド大統領も反体制派のどちらも信頼の置ける交渉相手ではない。

ただ、内戦とはそういうものであり、理想的な交渉相手を得ることはまれだ。とはいえ、内戦の多くが交渉の末に終結してきた。待てば待つほど死者は増え、傷も深まり、問題解決のハードルも高くなっていく。

コフィ・アナン前国連事務総長は昨年、ファイナンシャル・タイムズ紙に「分裂するシリア社会では、交渉による政権交代のみが過去の弾圧統治を終わらせ、将来の宗派間戦争も防ぐことができる」と指摘した。

国際的なリーダーシップと自らの価値観のためにシリアに介入することが米国の責務であるなら、2年以上前に軍事的にではなく外交の場で介入を始めるべきだった。

オバマ政権の外交努力はこれまで、持続的な解決策を探るというよりも、アサド政権を非難するためロシアの支持を得ることに注力されてきた。

筆者が5月に記したように、シリア情勢における米政府の外交意欲が早い段階で失われていたのは、アサド政権が力不足で間もなく崩壊するとみられていたためだ。その状況下での対話は、アサド大統領に命綱を与える結果に過ぎなかったかもしれない。

しかし、かなり前から、アサド大統領が弱すぎて負けることも、逆に強すぎて簡単に勝つこともないことは明らかになっている。つまり、情勢はこう着状態にあり、永続的な停戦に持ち込むための交渉の余地は大いにある。当事者すべてが対話を追い求めなかったことから約12万人の命が奪われ、こう着状態だけが残ったのだ。

米国とロシアの両政府は、アナン氏や現在の国連シリア特別代表のブラヒミ氏に対し、任務を成功させるための政治的な支援を行わなかった。アナン氏は、外交プロセスは「とりわけプーチン、オバマ両大統領を含めた安保理常任理事国からの勇気とリーダーシップが必要だ」と語っていた。

また、特使辞任後にアナン氏はインタビューで、「当事者や安保理、国際社会が望むように私も平和を望んでいる。ただ、必要な支援は何も得られなかった」と悔やんだ。

ブラヒミ氏は同じような状況下に置かれている。そこには、妥協しないアサド政権、分裂する反体制派、調停よりも責任追及を優先する安保理、自らが設定したレッドラインに気を取られ、外交交渉への関心が薄れた米大統領がいる。

予想通りだが、ジュネーブ会議を通した対話の再開は、さらに先延ばしにされている。スイスの外交官は先週、反体制派内の分裂が進み、対話を拒否するグループも出てきており、事態は悪化していると話した。

その結果、内戦は継続し残虐行為も後を絶たず、死者が増えるとともに難民問題も深刻化している。シリアの子どもたちが、失われた世代になるのは時間の問題だ。

一方、オバマ大統領は「米国はダマスカスで起きていることに目を背けることはできず、背けてはいけない。国としてどうあるべきかの問題だ」として、軍事介入の必要性を強調する。

それにも関わらず、オバマ大統領が提示した計画が、シリア情勢に影響を与えると考える人はほとんどいないのが現状だ。軍事介入で米国のレッドラインへの「信頼」は回復するかもしれない。しかし、米国のリーダーシップへの信頼は、暴力の終結と政治的解決を目的とした外交プロセスを経てこそ回復する。

*筆者のトリタ・パルシ氏は全米イラン系アメリカ人評議会会長。著書に「A Single Roll of the Dice: Obama's Diplomacy with Iran(原題)」など。


02. 2013年9月06日 10:28:18 : e9xeV93vFQ
米国、安保理でのシリア問題解決を断念=パワー国連大使
2013年 09月 6日 08:11 JST
[国連 5日 ロイター] - 米国のサマンサ・パワー国連大使は5日、国連安全保障理事会でシリア問題の解決策を模索していくことを断念したと表明した。とりわけロシアが安保理を人質に取り、シリア政権による化学兵器の使用を容認していると非難した。

パワー大使の発言は、安保理の承認がなくても、米国がシリアへの軍事攻撃に踏み切ることを明示している。

同大使は記者団に対し、英国がシリアへの武力行使容認を求め、英国が安保理に提示した決議案は事実上「死に体」だったとし、「英国が決議案を提示した会合に私は出席していた。その場でのやり取りやボディーランゲージ、会合のすべてが、とりわけロシア(の反対)によって議決案が可決される可能性はないことを示唆していた」と語った。

大使は、シリア問題の解決に関し、国連は設立の精神に沿って機能していないとし、「8月21日に発生した化学兵器の攻撃によって死亡したシリアの子供たちの平和と安全を守ることができなかった」と言明した。

さらに「ロシアは安保理を人質に取り、国際的な責任を回避している」と非難した。

ロシアはこれまでに3回にわたり、シリア制裁決議案に拒否権を行使している。


 


03. 2013年9月06日 10:40:09 : e9xeV93vFQ
2013年 9月 06日 08:15 JST
仏大統領、G20で欧州首脳にシリア政府糾弾同調を呼びかけ

By STACY MEICHTRY
 【サンクトペテルブルク(ロシア)】20カ国・地域(G20)首脳会合に出席中のオランド仏大統領は5日、シリアのアサド政権を糾弾する声明を支持するよう会合に出席した欧州首脳に呼びかけた。しかし溝は埋まらず、ロシアも抵抗姿勢を崩さなかった。

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Agence France-Presse/Getty Images
G20の会場でオバマ米大統領を歓迎するプーチン露大統領(5日、サンクトペテルブルク)

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Getty Images
オランド仏大統領(5日、サンクトペテルブルク)

 シリアへの軍事介入を計画するオバマ米大統領に同調する唯一の西側同盟国首脳であるオランド大統領は会合で「このG20に出席している欧州各国首脳が、化学兵器及びこれを使用する国家体制を糾弾することで同じ認識の上に立つことは大変重要なことだ」と述べた。

 これに対し、イタリアのレッタ首相は、米国の軍事介入の規模や範囲などへの懸念を挙げ、アサド体制への制裁軍事行動を支援するかどうかについてG20首脳間で意見が分かれていると話した。

 レッタ首相の発言はアサド体制支援の先頭に立つロシアのプーチン大統領との会談後になされた。同首相は、G20首脳の一部は、米国がシリア政府側によるもの だと主張する8月21日のダマスカスでの化学兵器使用に対する制裁軍事行動を行った場合、限定的なものにとどめられるかどうかに疑いを持っていると述べた。

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Agence France-Presse/Getty Images
握手するレッタ伊首相(左)とプーチン露大統領(5日、サンクトペテルブルク)

 レッタ首相は「(軍事行動を)終わりの分からない何かの始まりと理解する一部首脳がいる。2つの全く違ったシナリオが想定されており、これが(合意に向けた)進展を阻害し、困難を作り出している」と分析した。

 オバマ大統領は現在、軍事行動への米議会承認獲得に努力しているが、欧州諸国首脳も軍事行動に関して各国内で政治的懸念への対応を余儀なくされている。

 米仏両国が結論付けたようにアサド体制が化学兵器を使用した攻撃を行ったとの欧州各国の合意ができれば、米軍事行動へのフランス参加への支持を求めているオランド大統領は国民に対する説得力を高められる可能性がある。

 オランド大統領は逆に、欧州諸国の支援を得られなければ、欧州連合(EU)の中で孤立する恐れを抱えている。EUのファンロンパイ大統領は5日、米国の軍事行動に参加の用意があるのは「フランスだけだ」と指摘した。

 オランド大統領もプーチン大統領とは「現段階では(シリアの)化学兵器使用(疑惑)について対応が異なっている」と認めた。

 フランス政府関係者によると、両大統領は首脳会合の空き時間に約2分間言葉を交わし、その際、プーチン氏がオランド氏の肩を軽くたたいたという。

 一方、ドイツのベスターベレ外相はロシアのラブロフ外相と同日会談した。その際、ベスターベレ外相は、400人の子どもを含む1400人以上の死者を出した化学兵器攻撃がアサド体制によるものだとする米国の事実認定に疑義を提示し続けるロシア政府の姿勢に不満を表明した。

 同外相は「政治的解決を図るためどんな小さなチャンスも逃さないつもりだが、成功するかは大きな疑問だ。私は、シリアに関してロシアがその姿勢を完全に変えることは期待できないと思う」と述べた。
 


 


 


 
013/09/05 5:20 pm
米ロの板挟みに悩む安倍首相―G20ではシリア問題の対応に苦慮
 
Getty Images
クレムリンで会談し、握手する安倍首相とプーチン大統領(4月29日)
安倍晋三首相は昨年政権についた後、オバマ米大統領やプーチン・ロシア大統領と個人的な関係を構築するため、並々ならぬ努力を続けてきた。安倍首相は米国との同盟関係強化を最優先の政策課題に掲げるとともに、北方領土問題を巡るロシアとの紛争解決を目指している。

だが、米ロ関係が冷却化するなか、安倍首相は難しい立場に追い込まれている。

5-6日にロシアのサンクトペテルブルクで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する安倍首相にとって、シリア問題が焦点の1つとなる今回のG20は特に対応が難しい。

オバマ大統領はシリアのアサド政権が化学兵器を用いたと主張し、シリアへの軍事攻撃を目指しており、日本政府は米国の最も親密な同盟国としてオバマ大統領を支持する必要性を感じている。だが、それは日本とロシアの関係に複雑な問題を投げかける。ロシアはアサド政権を支援しており、米国と対立しているからだ。

今のところ、日ロ関係はうまくいっているようだ。プーチン大統領は安倍首相との会談にかねてから積極的な姿勢を見せている。今回、サンクトペテルブルグでの安倍首相とプーチン大統領の会談は安倍政権誕生後3度目で、日本側には北方領土問題の解決につながるのではないかとの期待感が高まっている。

日本政府はプーチン氏との2者会談について、シリア問題から距離を置き、日ロ問題に焦点を当てたい考えだ。ある日本政府高官は匿名を条件に、「シリア問題は会談の議題にはならない」と述べた。

一方、オバマ大統領は安倍首相に対して一定の距離をおいており、中国の習近平国家主席には多くの時間を割いているのとは対照的だ。一方、中国側も安倍首相と習近平国家主席との初の2者会談を求める日本政府の要請を拒否している。

今回のG20では、オバマ大統領は習近平国家主席と2者会談、及びシリア攻撃を支持しているフランスのオランド大統領との会談は早々に決めていたが、安倍首相と会談は、前日の夜、ギリギリのタイミングでやっと設定した。

これまで安倍首相がオバマ大統領と公式会談したのは就任後1度だけで、それも米政府が安倍首相の訪米を1カ月先延ばしするよう要請した後だ。それとは対照的に、オバマ大統領はその後、習近平国家主席をカリフォルニア州のリゾートに招き、2日間にわたって緊密な会談を行っている。

オバマ政権と安倍政権の間には、わずかではあるが緊張関係が広がっているようだ。一部の米政府高官によると、米政府は、安倍首相の中国や韓国に対するタカ派的な姿勢が東アジアの緊張を高めかねず、米国が望まざる紛争に巻き込まれる恐れがあると懸念している。

一方、日本側でも、中国や北朝鮮との紛争が起きた場合、米国が本気で日本を守ってくれるか懐疑的な見方が生まれ始めている。

安倍首相は2日、G20の場で2者会談ができないということを前提に、オバマ大統領と30分にわたり電話で会談をおこなった。日本政府当局者によると、オバマ大統領はその中で、日本を含む主要国がシリア問題で密接に協調行動をとることの重要性を強調した。

しかし、安倍首相は米国に対する支持表明を避け、米議会の審議を見守っていくとの考えを示した。

日本は憲法の規定により、国連の承認なしに行われる外国の軍事行動を支持するには高いハードルがあり、まして軍事行動に参加することは難しい。だが、外交専門家は、オバマ大統領が実際に武力行使に踏み切った場合、日本はいずれ強力に支持する姿勢を表明せざるを得なくなるとみている。欧米が1998年に国連の承認なしにコソボに軍事介入した際、日本は米国の立場を「理解する」と表明しただけだった。

青山学院大学国際政治経済学部の中山俊宏教授は日本は今回は「理解する」というより、もう一歩踏み込んだ対応になるだろうと話している。これは今回のシリアの件は大量破壊兵器や核不拡散の問題で、北朝鮮やイランにメッセージを送る意味合いもあるからだと話している。

記者: Yuka Hayashi

原文(英語):Abe’s Syria Conundrum: Friendly Putin Or Elusive Obama
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2013/09/04/abes-syria-conundrum-friendly-putin-or-elusive-obama/

 


 


 


 
2013年 9月 05日 11:33 JST
オバマ大統領「議会承認なくともシリア攻撃の権利保有」

By PETER NICHOLAS IN STOCKHOLM AND DAVID GAUTHIER-VILLARS IN PARIS
[image]
Agence France-Presse/Getty Images
記者会見するオバマ大統領(4日、ストックホルム)

 スウェーデン訪問中のオバマ米大統領は4日ストックホルムで、米議会が対シリア攻撃を承認しなくても、大統領は攻撃を命じる権利を有しているとした上で、議会に承認を求めることにしたのは、それが米国の対応を強固にすると判断したからだ、と述べた。ラインフェルト・スウェーデン首相と会談した後の共同記者会見で明らかにした。

 大統領は、議会が対シリア攻撃を承認しなかった場合でも攻撃に踏み切るのかとの質問に対し、「私は最高司令官として米国の安全保障のために行動する権利と責任を有している」と指摘。その上で「大統領と議会が結束すれば、我々の対応はより強固なものになるだろう」と述べた。

 大統領の発言は、民主・共和両党の主要議員が相次いで、シリアが将来化学兵器を使用するのを阻止するため、米国の軍事行動を支持すると表明したのを受けたもので、米国は対シリア攻撃に近づいている。しかし、多くの一般議員は依然、政府の説得になびいておらず、議会は対シリア攻撃を容認する決議案について否決する可能性があり、オバマ氏が一方的に攻撃に踏み切ることを強いられる恐れもある。

 オバマ大統領はまた、アサド・シリア政権が化学兵器を使用すれば、一線を越えたことになり、米国の行動を誘発すると警告したことで、自らを追い込んでしまったのではないかとの批判について、「一線を引いたのは私ではなく、世界である」と反論した。大統領は「危機にさらされているのは、私の信頼性ではなく、米国、米議会、さらには国際社会の信頼性だ。それは、国際規範重視の理念が口先だけのものになってしまうからだ」と指摘、化学兵器使用禁止をうたう国際法に言及した。

 オバマ大統領は、ロシアのサンクトペレルブルクで5日開幕する20カ国・地域(G20)首脳会議出席の途次、スウェーデンに立ち寄った。オバマ氏は当初、G20前にプーチン・ロシア大統領と会談する予定だった。だが、シリア問題をめぐる両国の対立が激化していることや、米国の機密情報を暴露しロシアに亡命した元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン氏の米国への引き渡しをロシアが拒否したことから、米ロ首脳会談は中止された。

 オバマ大統領は記者会見で、最近数カ月悪化している両国関係について冷ややかに論評し、プーチン大統領がアサド政権を支持していることにいら立ちを示した。しかし、「プーチン氏が立場を変えるとの期待を抱き続けているのかと問われれば、私は常に期待していると答える」と述べた。


04. 2013年9月07日 00:18:55 : yeOCuA2Ous
潘国連事務総長がシリア攻撃に反対!
http://topics.smt.docomo.ne.jp/article/yomiuri/world/20130905-567-OYT1T00392

アメリカとフランスは世界から孤立する。


05. 2013年9月07日 17:38:09 : MICzyijtoc
ブッシュ戦争前夜と違って米国民の事実認識力、反戦意識が断然増している。

ブッシュ戦争のときと変わらず今回も思考をせず盲目的に従米路線を走っている日本政府は愚かというべきである。

http://www.huffingtonpost.com/johnkerry/syria-red-line-vote-conscience_b_3879304.html


06. 2013年9月08日 08:32:34 : RXdZQVb4GY
e9xeV93vFQ 様:
貴重な情報をまとめて頂き有難うございました。 2011年Arab Springでは、Asad政権に21万人のが殺され、現在は600万人の避難民がひどい生活の中にいます。独裁者に共通する思考には、自分を守るSupporters以外の国民の命の重さなどはない。まして、少数派であるアサド家が他の民族を圧政で抑えてきた − この歴史はいずれ終止符を打たなければならないだろうと思っています。 John Kerryは、ベトナム戦争を経験し、自ら戦争反対派のりーダーとして闘ってきた政治家です。Obama大統領もイラク戦争には反対、共に安易で戦争に突入する政治家ではないだけに、この背景に何があるのか、あったのか知りたいところです。Obama憎しで、元は共和党法案であっても、Obamaから出てくるものは、全て廃案にもってゆく地に落ちた現超右翼共和党は、今回の件もすでに政治的に使おうと動いています。あまりにも陰謀説などが飛び散り、正確な情報を探しておりました。 週明けの火曜日には、国民へのObama大統領演説がありますが、今後どのような展開になってゆくのか、静観しております。 

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