【ニューヨーク＝杉本貴司】国連安全保障理事会は26日、緊急の会合を開き、シリアに化学兵器廃棄を義務付ける決議案で合意した。27日にも採択する見通し。違反があった場合は「国連憲章７章に基づく措置をとることを決める」とし、武力行使を含め制裁を実施する場合は安保理で改めて決めるとした。今後はシリアの化学兵器廃棄を進めると同時に、国際社会が内戦終結に影響力を発揮できるかが問われる。

　米国とロシアが26日午後に外相会談を開いて決議案で合意、その後に安保理が開いた会合で決議案が提案され、「おおむね理解が得られて一致した」（安保理外交筋）。決議案は化学兵器禁止機関（ＯＰＣＷ）が廃棄計画を決定した後、安保理で採択する見通し。

　２年半に及ぶシリア内戦への対応を巡り、安保理は米国とロシアの対立で機能不全に陥っていたが今回初めて一致した。

　国連憲章７章は拘束力のある制裁措置などを規定しており、経済制裁や外交断絶に加え武力介入も可能とする内容。ただ、シリアに決議違反があった場合は改めて決議が必要になる見通しで、武力介入の余地を残しつつもロシアの意向を反映したものとなった。

　米欧は当初「国連憲章７章の下で直ちに行動する」との文言にこだわった。これに対してシリア・アサド政権の後ろ盾であるロシアが反発して交渉は難航していた。ケリー米国務長官は今回の決議を「強制力と法的拘束力がある」と評価した。

　シリアでは2011年３月に首都ダマスカスで起きた小規模な反政府デモを発端に、アサド政権と反体制派の戦闘が激化。12年６月に国連高官が「内戦」と断定した。英シンクタンク国際戦略研究所（ＩＩＳＳ）は今月、シリア内戦でこれまでに最大10万人の死者が出て難民も180万人以上に達したとの調査を発表した。

　ただ、国連安保理ではアサド政権に近いロシアと米欧が対立。これまでにシリア関連でロシアが３度、拒否権を行使する異例の事態となり、安保理の機能不全が鮮明となっていた。

　地元紙などによると、チュニジアのジェドウ内相は１９日の制憲議会で「若者がシリアの前線に送られている。少女たちは『性のジハード』と称し、２０〜１００人の反体制派のメンバーと性的な関係を持ち、妊娠すると帰国する」と説明。対策として３月以降、約６千人の出国を禁止し、渡航を支援した組織の８６人を逮捕したことを明らかにした。

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