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シリアと北朝鮮はどこまで深い関係なのか 謎解きは「査察」のあとで?
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投稿者 SRI 日時 2013 年 10 月 18 日 02:05:28: rUXLhToetCnYE
 

JBpress>海外>中東・アフリカ [中東・アフリカ]
シリアと北朝鮮はどこまで深い関係なのか
謎解きは「査察」のあとで?
2013年10月18日(Fri) 松本 太
 この8月末、世界がシリアの化学兵器問題で忙殺されている頃、北朝鮮の寧辺の5メガワット黒鉛炉から白い水蒸気が立ち昇ったことが確認された。そして、9月半ばをすぎると、熱水が黒鉛炉から排出されていることも確認された。これは北朝鮮が、改めてプルトニウム生産に向けて、狼煙をあげたと見てもよい動きであろう(注1)。

 この寧辺の5メガワット黒鉛炉から昇る白い水蒸気の写真を見て、北朝鮮の金正恩第一書記ではなく、シリアのバッシャール・アサド大統領をすぐに想い浮かべた方は、すぐにでも立派なインテリジェンスアナリストになれる資格があるかもしれない。

 現在のシリア情勢は、インテリジェンスアナリストを鍛えるのに最高のホームグラウンドを提供してくれていると言っても過言ではない。なぜなら、そこには多くの解けない謎があるからだ。

 優れたインテリジェンスアナリストになれるか否かは、異なる場所での、異なる事態が、あたかも1つの物事として即座にイメージできるかにかかっている。謎を解くためには、おおよそ関係のないと思われる物事を、直感を働かせて、結びつけるという能力が必要なのだ。

 シリア情勢は、もはや我々日本人にとって遠い世界の出来事では決してない。なぜなら、シリアと北朝鮮は、大量破壊兵器という水脈の奥深くで、密接につながっているからだ。そして今、シリアの化学兵器施設への査察が始まろうとしているが、この査察の結果次第では、シリアと北朝鮮の化学兵器に関わる協力関係が白日の下にさらされる可能性すらあるからだ。

そっくりだったシリアの原子炉と北朝鮮の黒鉛炉

 現在、シリアの化学兵器問題に隠れているが、2007年以降の北朝鮮とシリアの核開発協力には重要な謎が残っている。

 2007年9月にイスラエルによる空爆で破壊された、シリアのアル・キバール原子炉は、北朝鮮の寧辺にあった黒鉛炉と、その設計やデザインがそっくりのものであったことは、すでによく知られている事実である(注2)。

 米国の情報当局による2008年4月のブリーフィングにおいて、6者協議にも参加したことがある、寧辺の核開発責任者の「チョン・チブ」という人物が、シリアの核開発責任者であるイブラヒーム・オスマンと一緒に写っている写真も公開されており、米国情報当局によれば、シリアと北朝鮮は、1997年以降、核開発に関する協力を深めてきていたとされる。

 さらには、そのシリアの原子炉開発計画の資金の出所がイランであったと、イランの革命防衛隊准将で、元イラン防衛副大臣であったアリ=レザ・アスガリ将軍が証言していることなども、その後、広く報道されている。

 ところが、破壊されたアル・キバール原子炉には、2007年時点では、いまだウラン燃料が装填されていなかったのではないかという疑問が残っているのだ。そして、その燃料の一部が、ダマスカス郊外のマルジュ・アッスルターンという、まさに化学兵器が今回使用された地域に存在する核関連施設に残っていたかもしれないのである。さらには、この核施設自体が、反体制派に一時占拠されていたおそれさえ否定できないのである(注3)。

 そして、シリアでは、この黒鉛炉の燃料となる十分なウランを独自に生産できないことから、北朝鮮がウラン燃料を供与したのではないかとの疑いも同時にかけられている。もっとも、シリアの内戦が続く状況下で、IAEAによる査察が行われる状況にはなく、この謎は当面解かれることはないのかもしれない。

 北朝鮮は、6者協議での合意に基づき2007年7月に寧辺での5メガワット黒鉛炉を一度封印したが、ひょっとするとシリアに建設しようとした黒鉛炉を活用しようとしたのかもしれない。そして、イスラエルによる空爆の結果、その可能性が潰えた現在、北朝鮮は改めて自らの黒鉛炉を稼働させて、プルトニウム生産を行おうとしているのだろうか。

北朝鮮から輸出されたガスマスク

 シリアと北朝鮮の関係は、核開発だけにとどまらない。化学兵器協力は、もう1つの大きな謎である。

 北朝鮮が、シリアに化学兵器に対応可能なガスマスクや、その他の武器を2013年4月にも輸出しようとし、トルコ政府によって差し押さえられていた事実が明らかにされた(8月27付「産経新聞」)。また、過去には、2009年にはギリシャで、また、韓国のプサン港でも北朝鮮がシリアに輸出しようとした防護服が差し押さえられている。

 さらに過去に遡れば、2004年には北朝鮮内で発生した爆発事故で、シリア人科学者が複数亡くなったこともかつて報道された。興味深いことに、これらのシリア人科学者が所属していたのは、ダマスカスにあるシリア科学研究調査センターという、シリアにおける化学兵器研究の最大の拠点であったという。

 このシリア科学研究調査センターは、国連の制裁対象ともなっている施設である。この事故の真実は依然として不明だが、シリアと北朝鮮の関係を示唆するものとも言えよう。

 弾道ミサイル協力に関しては、核開発や化学兵器開発と比べると、その謎は比較的少ない。北朝鮮からシリアへのスカッドミサイル輸出は、有名な協力関係である。ソ連との関係が悪化した1980年代後半、シリアは弾道ミサイルの新たな購入先として北朝鮮との取引を模索し始めた。そして、シリアは、湾岸戦争に参戦した見返りに、サウジアラビアから受け取った20億ドルの内、5億ドルを投じて、北朝鮮から150機のスカッドミサイルを購入したとも言われている。

 1990年3月には、北朝鮮の李鐘玉(リ・ジョンオク)副主席がシリアを訪れ、スカッドCミサイルの提供に関して、秘密の協定が結ばれ、翌年2月には、最初の30機のスカッドCミサイルがシリアの港のラタキアに輸出されたという。

 興味深いことに、当時、イスラエルはその動きをモサドのエージェントによって逐一察知しており、空爆の一歩手前までいったが、当時のイスラエル首相のイツハク・シャミールが、湾岸戦争直前の状況下、事態を悪化させかねないとして、攻撃を中止したという(注3)。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の武器移転に関するデータベースによれば、1991年から2009年までにシリアが北朝鮮に発注したスカッドCミサイルは160基、スカッドDミサイルは100基に上ると推定されている。

 このように見てくると、シリアと北朝鮮の大量破壊兵器に関わる協力が広範囲に及んでいることがよく分かるであろう。そして、近年、不拡散のための阻止活動が国際社会によって積極的に行われていることも事実である。

解任された金格植とは

 ちなみにこの8月末、実は北朝鮮では不可解な人事が行われている。

 8月30日付の韓国各紙は、北朝鮮で強硬派として知られる金格植・朝鮮人民軍総参謀長が最近解任され、後任に李永吉・軍作戦局長が充てられた模様だと報じた。金格植は5月に総参謀長に就任したばかりであった。そして、この10月10日になり、朝鮮中央放送は、初めて李永吉軍総参謀長の名を報じ、この解任が事実であったことが確認された。

 当初、韓国では、韓国軍としては、金格植が2010年の韓国海軍哨戒艦沈没や延坪島砲撃を主導したと見ており、同氏解任は韓国に対する融和姿勢を示すとの見方が出ているとの報道が行われた。はたして、この解釈は正しいのだろうか。

 一方、北朝鮮とシリア間の軍事協力の核心人物は、金格植・人民軍総参謀長その人であったことも以前より指摘されてきている。金格植は、1971年から約10年間にわたって、シリア駐在北朝鮮大使館の武官を務め、アラビア語も上手とされているのだ。

 今回の総参謀長解任の理由は不明であるが、まさにシリアの化学兵器問題が国際社会の焦点となる中で、シリアと関係の深い金格植が突如解任された事実は興味深い。これも、また現時点では大きな謎の1つである。

日本の経験が役立つ化学兵器査察

 今後、シリアの化学兵器施設への国連による査察の実施は、我々にとっての様々な謎を解き明かしてくれるきっかけになるに違いない。とりわけ、ベールに包まれている北朝鮮の化学兵器能力を推定する上で、シリアの化学兵器能力の把握は重要な手がかりを提供してくれるだろう。

 このような意味で、日本はシリアの化学兵器査察が円滑に実施されることに、しっかりとした協力を行っていく必要がある。遠いシリアで起きていることは、日本の安全保障に直結しているからである。すなわち、日本は、シリアへの化学兵器査察を、北朝鮮に対する大量破壊兵器拡散阻止努力の一環として、正面から捉えていく必要がある。

 日本は、1995年のオウム真理教によるサリン事件の結果、化学兵器の被害を受けた経験の遺産もあり、化学兵器への対応能力でも世界に冠たる能力を有している。シリアの化学兵器問題は、こうした日本の強みを、自らの国益のために活用すべき絶好の機会が訪れたと考えるべきなのであろう。

 日本にとって謎解きは、「査察」の前にも、もうすでに始まっているのだ。

(注1)北朝鮮の黒鉛炉の再稼働については、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所の北朝鮮問題研究グループ「38 North」に掲載された9月11日付記事“North Korea Restarting Its 5 MWe Reactor”及び10月2日付記事“More Evidence that North Korea Has Restarted Its 5 MWe Reactor”を参照

(注2)シリアと北朝鮮のアル・キバール原子炉に関する協力については、次の米国情報当局によるブリーフィングに詳しい。“Background Briefing with Senior U.S. Officials on Syria’s Covert Nuclear Reactor and North Korea’s Involvement”

(注3)シリアにおける核燃料の謎については、科学国際安全保障研究所(Institute for Science and International Security)のデイヴィッド・オルブライト博士の次の9月12日付記事を参照。“Syria’s Past, Secret Nuclear Program Poses Proliferation Risks” by David Albright and Robert Avagyan

(注4)北朝鮮によるシリアへのスカッドミサイルの提供については、次の興味深い記事を参照。“The Spies Inside Damascus” Foreign Policy by Ronen Bergman, September 13, 2013

(本稿は、筆者の個人的見解である)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38947  

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コメント
 
01. 2013年10月20日 07:56:21 : FwylumwRQo
インテリジェンス云々を喧伝するのヤカラに共通しているのはなぜかイスラエルがその視点から抜け落ちていることである。
北朝鮮ルートをおどろおどろしく類推しておきながら相変わらずイスラエルの核開発(既に核弾頭を保持している模様)には言及しないインテリジェンスの茶番が見て取れる。
核拡散を懸念するのは当然だが、それが片手落ちの懸念ならそんなものは批判にもなりえない。
様々な政治的諸問題とパワーバランスが入り組んだ中東地域で大量破壊兵器や核開発を論じるとき、疑惑がかけられている国々全てに目を向けない時点でお里が知れている。

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