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タイの危機:すべてが壊れてしまった国
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投稿者 機智 日時 2014 年 5 月 17 日 02:20:00: yU/IUd8cSA/vo
 

タイの危機:すべてが壊れてしまった国
2014.05.16(金) The Economist

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40698

長らく危機が続くタイは、崖っぷちに近づいている。政府と反政府勢力の両者が妥協しなければ、崩壊してしまう恐れが十二分にある。

現状を見ていると絶望感に襲われる。10年前のタイは輝かしい模範であり、東南アジアでも活気あふれる民主主義と盛況な経済の両立が可能なことを示す珍しい証拠だった。

 これを5月7日のタイと比べてみるといい。この日、首相のインラック・チナワット氏が2011年に親類を優遇するために国家安全保障会議事務局長を更迭した人事に関して、憲法裁判所が首相と閣僚9人を失職とする判決を下した後、タイは混乱状態に陥った。

 適切な法的手続きが見せかけで、インラック氏の縁故主義に対する嫌悪感があったにもかかわらず、この人事は首相の失職に値するほどの違法行為ではなかった。憲法裁の判決はむしろ、タイがどれほど地に落ち、どれほど深く分裂し、同国の制度機構がどれほど破綻しているかを示す尺度だ。

 タイの国民が崖っぷちから引き返さない限り、この国はカオスと無政府状態、あるいは完全な暴動に陥る恐れがある。

 裁判所はインラック氏を追放することで、扇動的なポピュリストのステープ・トゥアクスパン氏率いる反政府勢力が何カ月もバンコクで街頭デモを行っても実現できなかったことを成し遂げた。

 裁判所がインラック氏に不利な判決を下したのは今回が初めてではない。同氏はバンコクの道路封鎖を打開するために2月に選挙を行うことにしたが、野党・民主党が選挙をボイコットし、裁判所は選挙結果を無効とした。それ以降、インラック氏は暫定政府の首相として、弱々しく政権を運営してきた。

 タイ人の多くが受け取ったメッセージは、裁判所は、3年前に地滑り的な勝利で首相に就いたインラック氏と、特に同氏の兄で、2006年のクーデターによってやはり首相の座を追われ、自主亡命中のタクシン・チナワット氏による政治を粛清することに血道を上げる王党派の支配階級の味方だ、ということだった。

2つのビジョンの対立

 政府機構全体が、タイの2つのビジョンの対立に飲み込まれてしまった。タクシン氏の支持者にとっては、2001年の同氏の首相就任は、数十年続いた汚職まみれの連立政権や軍事政権による支配からの待望の解放を意味した。1997年に公布された民主的な新憲法の助けもあって、タクシン氏はタイの多数派――主に同氏の牙城である北部や北東部の人たち――に発言権を与えた。

 支持者から見れば、タクシン氏は医療・教育プログラムを提供して最も貧しい人たちの生活を一変させ、さらに官僚、軍、司法、そして病気療養中のプミポン・アドゥンヤデート国王の宮殿の廊下をうろつくタイの特権階級に立ち向かった人物だ。

 タクシン派にとっては、最近の街頭デモも憲法裁判所の行動主義も、選挙結果を受け入れられない支配階級の仕業だった。2001年、2005年、2006年、2007年、そして2011年には、タクシン氏に忠誠を誓う政党が公明正大に選挙を制したし、インラック氏のタイ貢献党も2月に勝つはずだった。

 こうした解釈には一理ある。だが、チナワット一族の反対勢力の言い分にも一理ある。反チナワット派は特に、タクシン派の歴代政権は農村部の支持者の利益(馬鹿げたコメ補助金制度は財政を破綻させる恐れがある)と億万長者であるタクシン氏本人の利益のために運営されてきたと批判している。

 亡命中で、選挙で選ばれていないタクシン氏がドバイからタイを牛耳っている構図には、どこか不気味なところがある。

 そして今、タイは膠着状態に入ろうとしている。選挙が実施されることにはなっている。インラック氏には、敵対する非民主的な王党派と選挙で戦う権利があったはずだ。しかし、選挙は何の解決にもならない。野党がボイコットするからだ。ステープ氏は品行方正な人たちから成る「国民会議」を提案したが、タクシン派はいみじくもそれを、彼らを締め出すための隠れ蓑と見るだろう。

 和解の糸口が見えない両者の不和は、タイの裁判所と陸軍、そしてさらに王室まで巻き込み、同国を危機的状況に追い込んだ。何年も鬱積する不満に耐えてきた投資家は、戦々恐々としている。今年に入って既に流血事件が起きている。タクシン派の支持者が街頭での衝突を起こす恐れがあることから、暴力が拡大する可能性が高まっている。

立ち止まって考えよ

 もしタイが大惨事を回避しようとするなら、両者はこの崖っぷちから引き返さなければならない。

 起点となるのは、タイの極めて中央集権的な統治制度を分権化することだ。現在、民主的に選出された知事がいるのは首都バンコクだけだが、76あるすべての県も同様に知事を置くべきだ。そうすれば、南部の不満を持つイスラム勢力を食い止める一助になるだけでなく、ステープ氏にも褒美を与えることになる。国政選挙の勝者がすべての権限を勝ち取る状況に終止符が打たれるからだ。

 この改革と引き換えに、民主党は選挙結果を受け入れることを約束しなければならない。そして、その見返りに、タイ貢献党はチナワット家の人をトップに据えずに党を運営しなければならない。

 今日のタイには善意が欠けている。だが、争いを続ければ、両者はタイに破滅をもたらす恐れがある。それに比べれば、妥協は小さな代償だ。
 

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