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中国全土が震撼した周永康立件もゴールではない!? 江沢民 vs.習近平の仁義なき権力闘争はまだまだ続く
http://www.asyura2.com/14/china4/msg/571.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 8 月 04 日 09:41:05: igsppGRN/E9PQ
 

        周永康氏 〔PHOTO〕gettyimages


中国全土が震撼した周永康立件もゴールではない!? 江沢民 vs.習近平の仁義なき権力闘争はまだまだ続く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40008
2014年08月04日(月) 近藤 大介 北京のランダム・ウォーカー


■「刑不上常委」という言葉が完全に覆された


〈 周永康の重大な紀律違反容疑に関して、中国共産党中央委員会は決定した。「中国共産党章程」と「中国共産党紀律検査機関案件検査工作条例」の関係規定に基づき、中国共産党中央紀律検査委員会は本件の審査を立件する。 〉


7月29日午後5時59分、このわずか漢字69文字のそっけない記事が、中国国営新華社通信から配信されると、中国全土が震撼し、世界のトップニュースとなった。


周永康---わずか2年前の11月まで、世界最大の政党・中国共産党8668万人の序列9位に君臨した中央政治局常務委員である。担当は法務と公安で、全国250万の警察組織を牛耳っていた。1989年の天安門事件で、趙紫陽総書記が失脚して以降、中国政界で最大級の大物の失脚である。


思えば、昨年8月にも、薄煕来裁判という「見世物」があった。それが習近平主席は、今年は、昨年よりさらに上の大幹部を、晒し者にしたのである。


今回のニュースにいちばん驚いたのは、中国のエリート層かもしれない。私はこれまで彼らに何度となく周永康問題について聞いてきたが、返ってくる答えは、いつも「刑不上常委」。つまり、「刑不上大夫」(刑は大幹部には及ばない)という中国の諺をもじって、「刑は常務委員には及ばない」というものだ。「なぜなら、たった7人とか9人しかいない最高幹部を切れば、自己の政権自体が危うくなるのだから」。


この言葉には一応の説得力があったが、今回の一件で完全に覆されてしまった。そのため中国のエリート層たちの間で、「昨年末に金正恩第一書記が張成沢・党行政部長を粛清した時の平壌のエリート層たちのような動揺」が拡がっているのである。


■薄煕来の次は、周永康を押さえる番


思えば、習近平はこれまで、執拗に周永康の立件にこだわってきた。


2012年3月に、薄煕来・重慶市党委書記が失脚した。この時、薄一波・元副首相の息子である大物政治家をどう裁くかについて、「中南海」は揺れに揺れた。同年秋に開かれる第18回共産党大会で胡錦濤体制から習近平体制に変わる過渡期だったこともあり、薄煕来問題がそのまま「政局」になっていったのである。


ある中国共産党関係者によれば、この時、最も強硬な主張をしたのが、「ポスト胡錦濤」を内定させていた習近平だったという。


「薄煕来は『刎頸の友』だった周永康に頼んで公安を動員し、習近平の電話を盗聴し、自宅を張り込んで、習近平後継を転覆させようとしていた。それで習近平は、党大会を2ヵ月後に控えた9月の前半に2週間にわたって、江沢民と胡錦濤に対して、『薄煕来・周永康問題を徹底追及できないのであれば、自分は総書記に就かない』と直談判に及んだ。結局、江沢民と胡錦濤が折れた」


習近平は昨年10月、薄煕来の無期懲役を確定させた。次はいよいよ、周永康を押さえる番だった。


その前座として習近平は、昨年11月の3中全会で、「国家安全委員会」の設立を決め、自らが委員会主席に就任した。これは、周永康が牛耳っていた公安組織を「仕切り直す」ためだった。具体的には、190万人と言われる公安(警察)、60万人と言われる武警(機動隊)、それに5万人と言われる国家安全部(秘密警察)を統轄する国家安全委員会を作ることで、この3つの暴力組織から周永康派を一掃しようとしたのだ。


ここまでやったうえで、ようやく今回、周永康の立件にまで持っていったというわけだ。周永康の立件に絡んで押収した額は、900億元(約1兆5,000億円)、中国の公安当局が参考にしたと言われる「周永康人脈図」には、「親族」8人、「石油系」11人、「法政系」4人、「四川系」15人、「その他」1人と、計39人の周永康に連なる「悪徳人脈」が記されている。彼らを中心にして、1000人近い周辺の人々が取り調べを受けたとも言われる。


だが考えてみれば、周永康をここまで太らせたのは、江沢民元主席に他ならない。


1942年に江蘇省無錫で生まれた周永康は、文化大革命が始まった1966年に、北京石油大学を卒業した。卒業後は、黒竜江省にある中国最大の大慶油田に、石油採掘の技術者として就職した。


一説には江沢民と遠戚関係にあるとも言われるが、不明である。同じ江蘇省南部の「同郷」の出であることは確かだ。ともかく江沢民主席の後ろ盾を得て、1996年に中国最大の国有石油会社の中国石油天然気総公司の党書記兼社長にしてもらった。1998年に、江沢民主席は、全国の国土資源を統轄する国土資源部を創設し、周永康を初代国土資源部長(大臣)兼党書記に抜擢。さらに2003年に、公安部長に抜擢した。


江沢民は、2002年秋の第16回共産党大会で総書記を、翌2003年春の全国人民代表大会(国会)で国家主席を、胡錦濤に委譲せざるをえなかった。そこで「置き土産」として、周永康を胡錦濤時代の公安部長(警察庁長官に相当)に就けた。


周永康部長はさらに、2007年秋の第17回共産党大会で、最高幹部の常務委員(序列9位)に就いた。抜擢したのは、言うまでもなく江沢民だった。そんな周永康は2012年11月の第18回共産党大会で、ようやく政界を引退した。


■習近平が「胡錦濤の10年」に否定的な理由


こうして考えると、習近平としては、周永康を倒すことは、けっしてゴールでないと思われる。薄煕来と周永康のバックにいるのは、この8月で88歳を迎える中国最強の元老・江沢民その人だからだ。


習近平は、自分の前任の「胡錦濤の10年」を、明らかに否定的に見ている。それは、2012年11月15日に開かれた「習近平総書記就任会見」で、胡錦濤時代にまったく言及しないという異例のスピーチを行ったことからも見てとれる。なぜ否定的に見ているかと言えば、胡錦濤は終始、黒幕の「ドン江沢民」に逆らえず、「自分の仕事」ができなかったからではなかろうか。


だから、習近平は、胡錦濤政権10年の反省として、江沢民色を徹底的に排除していくことにした。実際、習近平の党総書記としての「初仕事」は、自分をトップに抜擢してくれた江沢民元主席を、「中南海」から追い払うことだった。


そして、最高権力を握った習近平は、「目の上のタンコブ」の江沢民を北京から追い出したくらいでは気が済まず、2012年12月に、「8項規定」(腐敗撲滅運動)という名の「現代版文化大革命」ののろしを上げたのである。そのスローガンは、「トラ(大幹部)もハエ(小役人)も同時に叩く」。だが実際に叩いたのは、主に江沢民派の幹部たちだった。


「犠牲者第1号」となったのは、李春城・四川省党委副書記。「李春城は四川省に愛人を200人も囲っていた」「隠しマンションも100軒保有していた」などという報道を連日、官製メディアが行って失脚させたのだ。李春城は、周永康を通じて「四川省利権」を江沢民に献上していたキーパーソンだった。


続いて、中国における富の6割強を握る国有企業群を統轄する蒋潔敏・国有資産監督管理委員会主任が、昨年9月、就任わずか5ヵ月余りで失脚した。蒋主任は元中国石油社長で、やはり「国有企業利権」を江沢民に献上していたキーパーソンだった。


年が明けて今年に入ると、習近平主席は、人民解放軍の利権収奪に着手した。江沢民人脈である谷俊山・軍総後勤部副部長に続いて、6月には「ミスター人民解放軍」として君臨した徐才厚・前中央軍事委員会副主席まで党籍を剥奪し、失脚させたのだ。


このように昨年来、特に今年に入って連日、テレビニュースでは「今日摘発された腐敗幹部」が報道される。腐敗とは無縁の一般庶民は、報道を見るたびに拍手喝采である(習近平は、周永康立件に平仄を合わせて、庶民の関心が高い戸籍改革に着手したことも絶妙だったが、戸籍改革については次回以降のコラムで詳述したい)。



■「北戴河会議」でのガチンコ対決に注目


ともあれ、すでに5万人を超える政治家や官僚たちが、習近平の手によって摘発されているのだから、これはまさに「習近平革命」と呼ぶべきである。


今後は、まもなく開かれる「北戴河会議」がポイントだろう。北戴河会議とは、毎年8月上旬に、北京の東300kmにある河北省北戴河の浜辺の避暑地に、現役および歴代の常務委員たちが集まり、中国の政務全般を話し合う会議だ。今年は、現役の7人と、周永康を除く健在なOB10人の計17人が参加すると言われる。中でも注目は、江沢民元主席と、習近平主席との「ガチンコ対決」である。


そして北戴河会議を経て、中南海政局は10月の「4中全会」へと移る。中南海の権力闘争はつねに文字どおりの死闘であり、終わることがない。


 

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コメント
 
01. 2014年8月04日 12:14:49 : nJF6kGWndY

あほなことばかりしていると、 中国も、先の見通しは暗い

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140728/269343/?ST=top
生産年齢人口、北京では2050年までに6割減少も

地域別に見た中国の人口の現状と将来推計

2014年8月4日(月)  仁林 健

 須賀昭一氏の論文「日本と比べ際立って短い中国の人口ボーナス期」でも紹介された通り、2013年1月に中国国家統計局が行った「15〜59歳人口が2012年に初めて前年を下回った」との発表は大きく報道されたところであり、今後の中国の人口の動態が注目されている。

 一方、2012年に公表された2010年人口センサスを見ると出生率や年齢構成は地域によって大きく異なっており、今後の人口を地域別に見ると大きな差異があるものと考えられるが、データの制約からか地域別人口の将来推計は筆者が知る限り行われていない。本稿では、人口センサスを用いて、中国の全国及び地域別の人口の現状を分析し、一定の仮定のもとに見通しを推計することとする。

「人口ボーナス」から「人口オーナス」に

 まず、これまでの中国の年齢別人口の変遷(注1)を見ると、1950年の人口ピラミッドは、若年層が多い「三角形型」であった。その後、幼少年齢人口が生産年齢人口(注2)に移行する一方、政府の出産奨励政策に伴うベビーブームにより出生率が高まって幼少人口が増加し、より傾きの大きな「三角形型」となった。しかし2010年には、1979年から一人っ子政策が始められたことを反映して、生産年齢人口が多い、いわば「タマネギ型」の人口ピラミッドとなった。今後、この真ん中の膨らんだ部分が高齢化するのに伴って生産年齢人口が減少する、というのが基本的な姿である。

(注1)データは2010年は中国2010年人口センサス、それ以前は国連“World Population Prospects: The 2012 Revision”による。

(注2)日本では「生産年齢人口」は15歳以上65歳未満の人口を指すが、中国では一般に15歳以上60歳未満の人口(中国語で「労働年齢人口」)を指す。以下では断りのない限り15歳以上60歳未満の人口をもって生産年齢人口とする。

図1 2010年の中国人口ピラミッド

豊かな地域ほど生産年齢人口が多い

 2010年人口センサスで年齢別人口を見ると、地域によって年齢別人口は大きく異なる。幼少人口比率は全国平均16.6%に対し最も高い貴州で25.3%、最も低い北京と上海で8.6%、生産年齢人口比率は全国平均70.1%に対し最も高い北京で78.9%、最も低い貴州で61.9%となっている。

 一般に、所得が高い地域ほど幼少人口比率が低く生産年齢人口比率が高くなると考えられる。この点を確認するため一人当たりGDPとの関係を見ると、幼少年齢人口比率は負の相関(−0.81)を、生産年齢人口比率は正の相関(0.79)を持つことが確認できる。以下では、年齢階層別人口を左右する出生と移動の状況を見てみることにする。

出生率は全国レベルでは日本以上の低水準

 幼少人口を決定する大きな要因は出生である。2010年人口センサスで合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む子どもの数、以下単に「出生率」)を見ると、全国では1.18と同時期の日本(1.39)をも下回る低い水準となっている。地域別にみると、北京や上海で0.7強となっており、貴州や広西といった貧しい地域で1.7を上回る程度である。

 地域別の出生率と一人当たりGDPの相関係数を取ると−0.67となり、豊かな地域ほど出生率が低いため幼少人口が少ないという傾向が確認できる。

図2 出生率と一人当たりGDP(2010年)

 なお、中国の人口センサスの出生率は、実態と比べ過小となっているとの指摘が内外の専門家からなされている。具体的には、計画外出産のために出生を隠す、届出費用がかかる、企業や地方政府に過少申告するインセンティブがある、などの点が指摘されている(若林敬子『中国の人口問題と社会的現実』)。この点を踏まえ、2000年人口センサスデータをベースに補正すると(注3)、全国で1.35程度となる。

(注3)2000年人口センサスデータを用いてコーホート要因法(後述)で2010年の10歳人口を推計し、これと2010年人口センサスにおける10歳人口との比率を補正係数とした。

貧しい地域から豊かな地域への移動が加速

 地域別生産年齢人口に影響する重要な要因が地域間の移動である。人口センサスで地域間の移動人口(注4)の動きを見ると、1990年にわずか1100万人(人口比1%)だったのが、2000年に4242万人(同3%)、2010年には8588万人(同6%)と急増している。この地域間移動について、流入人口から流出人口を差し引いた「純流入人口」とそれを人口で割った「純流入率」を求め、純流入人口の多い順に並べたのが下の図である。

 この図は、広東のように2000万人もの人口が純流入した「勝ち組」と、安徽のように10%以上、1000万人近い人口が純流出した「負け組」とがはっきりしていることを示している。

図3 2010年の地域間純移動人口と純流入率(万人、%)

(注4)移動人口とは、「居住地と戸籍地の郷・鎮・街道が食い違い、戸籍地を離れて半年以上になる人口」と定義されている。戸籍地を離れた期間は問わないが、2010年センサスの場合70%以上が5年以内の移動。

 こうした地域間純流入率と一人当たりGDP(移動タイミングを考え2008年のもの)をプロットしたものが下の図である。この図から、両者の間には強い相関がある、すなわち貧しい地域から豊かな地域に向けた人口が地域間を移動した、ことが分かる。

図4 一人当たりGDP(2008年)と地域間純移動率

生産年齢人口は2050年までに3億人以上減少

 ここまで2010年の人口センサスに基づいた分析を行ってきたが、ここからはコーホート要因法を用いた将来人口推計の結果を見てみたい。

 人口の増減の要因は、(1)出生、(2)死亡、(3)移動、の3つしかない。コーホート要因法とは、「コーホート」(同じ期間に生まれた人々の集団のことを指す)ごとのこれらの要因の時間変化を軸に人口の変化をとらえる方法である。なお、中国の人口センサスは日本の国勢調査と異なり入手可能なデータに限りがあるため、サンプルデータを用いて全国データを案分するなどの加工を行っている(補論参照)。

 推計によると、中国の総人口は2022年の13億7906万人をピークに減少に転じ、2050年には11億5392万人となる。2010年(13億3281万人)と比べても2億人近い人口減少である。

 生産年齢人口を見ると、下の図で明らかな通り問題はより深刻である。既に中国の公式発表でも2012年・2013年の生産年齢人口の減少は確認されているが、将来推計では一層の減少がはっきりする。

 すなわち、生産年齢人口は今後数年間減少を続け、2020年頃に特殊要因(「大躍進」により出生人口が急減した世代(1959〜1962年生)の生産年齢人口からの退出)により微増したあとは年率1%以上のペースで減り続け、2050年には約6億人と2010年(9億3389万人)に比べ3億人以上減少する。

 さらに、生産年齢人口比率もほぼ右肩下がりで低下を続け、2050年には52%にまで下がる(2010年は70%)。その裏返しとして高齢人口は増加を続け、2050年には4億2770万人に達し(2010年は1億7759万人)、高齢人口比率も37%になる(2010年は13%)。なお、社人研の推計によれば、日本の同定義の高齢人口(60歳以上)比率が37%以上になるのは2027年である。

図5 生産年齢人口と生産年齢人口比率(見通し)

北京などでは生産年齢人口が6割減少

 次いで、地域別・年齢別人口の推計結果を見てみる(注5)。下の図から明らかな通り、北京では全国平均を上回るペースで生産年齢人口が減少し、2050年には2010年比で6割も減少する。図には記していないが、上海、遼寧、吉林など日本人になじみの深い沿岸部の地域でも6割前後の減少が見込まれている。これらの地域は、前述の通り出生率が低いため、他地域からの移動では相殺しきれないほど生産年齢人口が減少するのである。

図6 地域別の生産年齢人口(2010=100)の推移(見通し)

(注5)推計に当たっては、断りのない限り2010年人口センサスの地域間移動率が変わらないという仮定を置いている。

 一方、広東は出生率が高い地域ではない(31地域中21位)ものの、他地域からの移動が多いため、生産年齢人口は2025年までは増加し、2050年の減少率(2010年比)も約27%と全国(約37%)に比べ相対的に小幅にとどまる。ちなみに、地域間移動がない場合の人口(「封鎖人口」と呼ぶ)を計算すると、広東の2050年の減少率は約34%となる。

 生産年齢人口にほとんど変化がない地域の例が貴州である。これは、貴州では出生率が高い(補正すればほぼ2.0)ため、出生数が大きくは減らないためである。

 生産年齢人口比率についても似たようなことが言える。北京の生産年齢人口は2010年時点では80%近くと全国トップクラスであったが、2050年には40%を切る水準まで落ち込む。これに対し広東の比率の低下は全国よりやや大きい程度、貴州に至っては比率はほとんど変化しない。

図7 地域別の生産年齢人口比率の推移(見通し)

 生産年齢人口比率低下の裏返しとして、北京の高齢人口比率は何と56%にも達する。参考までに『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』における都道府県別数値と比較すると、2040年の高齢人口比率が最も高いのは秋田県の36.3%(東京都は25.4%)だが、同年の北京の高齢人口比率は37%前後となっており、日本のどの都道府県よりも高齢化が深刻な問題となる。同様のことは上海などについても言える。

 紙幅の都合上、他の地域については紹介しきれないが、大まかな傾向としては、生産年齢人口の減少・高齢化のペースが北京・上海を含む沿岸部では速く、内陸部では緩やか、という結果になっている。沿岸部を中心に事業を展開している多くの日本企業にとっても、労働力確保は大きな課題となるとみられる。

高齢人口の急増に直面する広東

 以上、生産年齢人口の将来推計を見てきたが、高齢者の数に着目すると違った課題が出てくる。前述の通り全国の高齢人口は2050年には4億2770万人に達し、2010年の1億7759万人と比べ2.4倍になる。これを地域別にみると、北京は902万人(2010年比3.7倍)、上海は1013万人(2010年比2.9倍)となり、増加率は大きいが絶対数は大きくない。一方で広東の高齢人口は4147万人となり、2010年(1015万人)に比べ3000万人以上増える計算になる。

 これは、広東に流入した生産年齢人口がそのまま同地域にとどまり、いずれ高齢人口になるためである。広東省は今後、高齢者向け施設の整備などの対応を迫られることとなる。

高齢者の活用、労働参加率の向上が不可欠

 これまで見てきた地域別人口数値は、あくまで2010年のデータを機械的に適用した場合の推計値であり、現実はここまで厳しくないかもしれない。例えば一人っ子政策の抜本的見直しによる出生率の改善や、地域間移動のさらなる促進による沿海部(特に北京や上海)での生産年齢人口の増加も考えられる(注6)。

(注6)例えば、移動率を2010年の3倍になると仮定して推計すると、北京の生産年齢人口の減少率は60%から50%弱まで下がる。

 しかし、総じてみれば、特に北京や上海など出生率が低い地域において生産年齢人口の減少や高齢化の進展といった趨勢を大きく変えるのは困難と思われる。

 とすれば、中国当局に第一に求められる対応は、高齢者を中心とした労働参加率向上による労働人口減少の緩和である。

 まず単純に生産年齢人口を15歳以上60歳未満の人口ではなく日本と同様の15歳以上65歳未満の人口と定義するだけで、当然のことながら生産年齢人口の減少幅は小さくなる。具体的には、2050年までの減少幅は、全国レベルで36%から28%に、北京や上海でも60%前後から45%前後まで抑えられる。

 また2010年の労働参加率を年齢別にみると男性では50歳後半以降、女性では50歳前半以降で急激に低くなっており、地域別にみると北京や上海で低くなっている。生産年齢人口が急減する中、これらの年齢層・地域における労働参加率の引き上げは必要不可欠と言える。この他にも、労働集約型産業から資本集約産業への転換、労働生産性の引き上げ、高齢者向け施設の整備なども欠かせないだろう。

 これらは、中国に先駆けて高齢化に直面している日本が行うべき対応とほぼ同じである。中国当局には、日本の経験も参考にして、いたずらに高成長を追い求めず、人口構造の変化に沿った安定成長を目指して欲しいところである。

補論:推計の基礎データ整備及び将来人口の推計方法

 中国の人口センサスは、「短表」と呼ばれる全数調査(以下「全数調査」)と「長表」と呼ばれるサンプル調査(調査対象10%)(以下「サンプル調査」)の2つで行われており、データもそれぞれが公表されている。調査項目も異なっており、項目数の多いサンプル調査でしか分からない項目も多い(例えば出生、就業など)。このため以下のような方法により基礎データの整備及び将来人口の推計を行った。

(1)2010年の地域別・性別・5歳階級別の人口
 全数調査では地域別・年齢階層(幼少・生産年齢・高齢)別のデータしかないため、サンプル調査の5歳階級別人口データの比率を用いて全数調査のデータを案分し、地域別・5歳階級別の人口とした。

(2)地域別・5歳階級別出生率及び出生性比
 地域別出生率はサンプル調査で得られるが、実態より低くなっているとの指摘が多いことを踏まえ、2000年の人口センサスデータをベースに補正を行った。具体的には、まずは2000年の出生率・5歳階級別女性数から出生数を計算し、10年間の死亡を加味して、2010年の10歳人口を推計した。これと2010年人口センサスにおける実際の10歳人口との差異を出生の補足漏れとみなし、両者が一致するよう補正係数を求め、これを一律に2010年の出生率に乗じて地域別出生率とした。

 また出生性比(女児100に対する男児の比率)については、サンプル調査の地域別出生性比をそのまま用いた。

(3)地域別・性別・5歳階級別の死亡率
 全数調査から得られる地域別の死亡人口と、上で求めた地域別・性別・5歳階級別の人口から、地域別・性別・5歳階級別の死亡率を求めた。

(4)地域別・性別・5歳階級別の純移動率
 サンプル調査における「現住地・5年前常住地別人口」を用いて、「現住地がX地域で5年前の常住地がX地域以外」の人口をX地域への流入人口、「現在地がX地域以外で5年前の常住地がX地域」の人口をX地域の流出人口とし、両者の差を純流出人口とした。これを全数調査における性別・5歳階級別移動人口の比率を用いて案分し、地域別・性別・5歳階級別の純移動率とした。なお、厳密には海外との純移動も考慮すべきであるが、2010年の実績が極めて小さいことから捨象した。

(5)年齢・性別の全国人口の将来推計
全国調査の年齢・性別人口、補正後の出生率、男女別出生比、死亡率を用いて、2011年の出生数(0歳人口)及び1歳以上の人口を求めた。これを繰り返して2050年までの年齢・性別人口を推計した。

(6)地域別・性別・5歳階級別人口の将来推計
 2010年の(1)〜(3)のデータを用いて、2015年の地域別・性別・5歳階級別人口を一旦求め、その合計が(5)の2015年推計結果と一致するように補正して2015年の推計結果とした。これを2050年まで繰り返した。

このコラムについて
若手官庁エコノミストが読む経済指標

内閣府の若手エコノミストがさまざまな経済指標を読み解き、日本経済や日本経済を取り巻く状況について分かりやすく分析する。多くの指標を精緻に読み解くことで、通り一遍の指標やデータだけでは見えてこない、経済の姿が見えてくる。


02. 仁王像 2014年8月04日 20:37:13 : jdZgmZ21Prm8E : aQ4SizwRXQ
>習近平は、党大会を2ヵ月後に控えた9月の前半に2週間にわたって、江沢民と胡錦濤に対して、『薄煕来・周永康問題を徹底追及できないのであれば、自分は総書記に就かない』と直談判に及んだ。結局、江沢民と胡錦濤が折れた」

 これが本当だとすれば、習は、ポストに就く前に相当の肚を括っていたことになる。早くも「民衆風景」が見えていた相当の肝魂の持ち主である。


>習近平は、自分の前任の「胡錦濤の10年」を、明らかに否定的に見ている。…胡錦濤は終始、黒幕の「ドン江沢民」に逆らえず、

 この下りは説得力がある。習は胡の操り人形にはならないだろう。

・Re: やはり出たか、宮家邦彦氏の「単なる権力闘争にあらず」という見解!
 http://www.asyura2.com/14/china4/msg/555.html
 投稿者 仁王像 日時 2014 年 8 月 01 日 20:10:39: jdZgmZ21Prm8E



03. taked4700 2014年8月09日 08:31:28 : 9XFNe/BiX575U : eS9pbm2CXQ
>習近平は、自分の前任の「胡錦濤の10年」を、明らかに否定的に見ている。…胡錦濤は終始、黒幕の「ドン江沢民」に逆らえず、

ということは、習近平氏は胡錦濤氏によってある意味支えられているということですね。胡錦濤氏は江沢民氏にいろいろな都合上逆らうことが出来なかったが、国の状況を見てこれはまずいと理解していて、自らがとうから完全引退することで習近平氏を政権に付けることに成功した。


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