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香港民主派デモ「雨傘の下の素顔」〈週刊朝日〉
http://www.asyura2.com/14/china5/msg/139.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 07 日 11:51:05: igsppGRN/E9PQ
 

香港民主派デモ「雨傘の下の素顔」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141107-00000010-sasahi-int
週刊朝日  2014年11月14日号


 香港の選挙制度をめぐる民主派デモの座り込み開始から1カ月が過ぎた。長期化するデモの中心となっている学生たちを旅行作家の下川裕治氏が取材した。

*  *  *
 彼と会ったのは10月1日。香港の金鐘(アドミラルティ)だった。民主派や学生が中心街を占拠して3日――。

 彼は20歳の学生で、路上でビラをつくっていた。声をかけると幼い顔に笑みをつくり、冷たい水のペットボトルをもってきてくれた。彼は小学生の頃、交通事故で父親を亡くしていた。帰国した僕に彼はメールを送ってきた。

「夜中、占拠に反対する男が数人来た。やくざのような言葉遣い。体格もいい。見たこともない人たち」「旺角(モンコック)で友達が反対派に押されてけがをした」

 しばらく続いたメールが、10月中旬、ふっつりと途絶えた。

 学生の多くは、1997年、香港が中国に返還された頃に生まれた。香港の民主化問題はそのときに始まった。返還時に発効した香港の憲法にあたる「香港基本法」では、「行政長官と立法会は全面普通選挙で選ぶ」と規定されているからだ。 

 当時から、香港の社会制度は50年間変わらないとする一国二制度がとられた。つまり50年後には、中国と香港はひとつの制度になる。それが香港の中国化なのか、中国の香港化なのか。選挙の方法は、その試金石だった。

 民主化問題の主導権を中国が握ったなかで導き出されたのは、中国流の民主化だった。2017年に行われる普通選挙の立候補者は、指名委員会が選別するという決定。これによって民主派の立候補は難しくなった。

 学生たちの両親は、中国との交渉の難しさを呑み込んで生きてきた。通貨危機やSARSで停滞する香港に中国資本が流れ込む。不動産が高騰し、繁華街の50平方メートルほどの部屋が1億円もする。それでも香港人は中国人に頭を下げてきた。香港にやってくる中国の富裕層の金離れは香港人のそれを凌いでいたからだ。しかし純粋な若者たちは、そんな状況に反発する。

 10月26日、僕は再び香港に向かった。金鐘で彼を捜したが、「もう来ないと思う。母親が公務員だから」と友人がいった。

 今回の路上占拠を日本の安保闘争や全共闘運動と重ね合わせてみる。戦後生まれの若者と返還後生まれの若者……。しかし雰囲気は違う。占拠した路上に自習室や図書コーナーができた。演劇の練習をする学生もいる。道端の植え込みに苗木を植えている学生もいた。路上がキャンパスになりつつある。

 警察が87発も放ったという催涙弾を雨傘でしのいだことから、学生たちは、この運動を「雨傘革命」と呼ぶ。しかし彼らは、雨傘が象徴にすぎないことも知っている。だからだろうか。こんな垂れ幕もみつけた。

「You may say I’m a Dreamer. But I’m not the only one」

 一時期は占拠された路上に数十万人が集まった香港。10月26日現在、反対派の署名も、30万人に達している。


 

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コメント
 
01. 2014年11月07日 13:13:15 : hZcCiEIzAw
貧者を喰らう中国、格差が生む“社会の崩壊”

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20141106-OYT8T50084.html?cx_text=04&from=ytop_os_txt2

中国社会に分け入って研究を続ける東京大准教授の阿古智子さんが、増補新版『貧者を喰らう国』(新潮選書)を刊行した。

 2009年の初版に新たに2章を加えた。近年の動向を踏まえ「格差が広がりすぎると社会が機能しなくなる」と警鐘を鳴らしている。

 小中学校で日本語を教えたり、農業灌漑かんがい事業に加わったりして、長期的に現地の人々と関係を築きながら調査・記録する民族誌的研究を行ってきた。「中国は、表面的に見るのと中に一歩入るのとではかなり差がある」と実感したという。

 見えてきたのは、単純な競争の結果ではない大きな格差だ。都市住民が有利になる戸籍や土地、大学入試の制度、さらに役人の汚職なども要因となり、所得格差は上層と下層が互いを意識できないほど。このため「異なる階層の人同士は、社会改善のためまったく協力しない」。市場経済化により家族や地域の互助機能も失われ、道徳やイデオロギーは形骸化。公徳心のない個人が増え、“社会の崩壊”とも言うべき状況が生まれていると指摘する。

 健全な市民社会には、社会全体に目配りして考えることのできる層、すなわち高等教育を受けた多数の中間層の存在が欠かせないという。独立した思考や批判精神を持ち、物事を論理的に考えられる人こそ国を発展させると強調。そして、こうした個人が、言論の自由のもとで開放的な討論を行える空間=「公共圏」の拡大が必要だと訴える。

 ところが社会運動を組織する基盤もない現状では、不満は暴動の形を取り、民主化には向かわない。「中国社会は今、矛盾を抱えながら何ら根本的な変化のない、均衡状態にある」

 もっとも、変化の兆しはネットに見られる。中国版ツイッター「微博ウェイボー」で1000万人単位のフォロワーを持つ個人が出始めるなど、自由度が少ない紙媒体よりも、ネットが不満をすくい取っている状況だと指摘する。こうした動きに対し、政府は特にこの1年、言論統制を強め、知識人も拘束されるなどしているという。一部では汚職への厳しい対応などガス抜きも図られ、体制維持のための弥縫(びほう)策が繰り返されている。

 「今のやり方ではソフトランディング(軟着陸)は無理」と阿古さん。組織を縦横に張り巡らす共産党政権が簡単に倒れることはないにせよ、経済問題、社会矛盾、権力闘争のいずれかを要因に、崩壊する危険はあると指摘し、そのためにもしっかりした市民社会が求められると訴える。

 この現状は日本の教訓になるという。「格差が拡大し過ぎれば、権力を持つ人々が自由に政治を動かし、民主主義が機能しない。日本も市民社会の層は薄い。広い問題意識で議論を進めることで、成熟した民主主義を目指すべきだ」


02. 2014年11月14日 07:41:12 : jXbiWWJBCA


「渡辺順子のワインの「美学」「経済学」」
香港のワインオークションで史上最高の落札額

ブルゴーニュ人気が続くも、銘柄により温度差も

2014年11月14日(金)  渡辺 順子


オークション会社大手のサザビーズは10月4日、香港でブルゴーニュワインを目玉にしたオークションを開催した
 世界中のワイン関係者の注目を集めたサザビーズのオークションが10月上旬、香港で開催されました。私もこのオークションに参加してきたので、今回はその様子や香港のワイン事情をレポートしたいと思います。

 今や香港は、世界のワインオークションの中心と言っていいでしょう。香港でのオークションの動きは、世界のワインの動きの最先端といっても過言ではありません。中国マネーを狙ったワインオークションが香港で盛んにおこなわれており、今回も落札額が史上最高となるロットが出るなど盛況でした。

 最近、中国では、習近平国家主席による腐敗防止の動きを受け、高級ワインへの需要は以前に比べて減っていると言われています。その影響からか、ワイン全体の動きも落ち着きがみえてきた最近の香港市場ですが、中国マネーを狙ったワインオークションは香港でいまだ盛んにおこなわれています。今、そんな中でも、ワイン人気を牽引しているのがフランス・ブルゴーニュ産のワインです。

高まる中国・香港のブルゴーニュ熱


10月初旬の香港は、学生の大規模なデモが繰り広げられていた
 中国・香港のワイン市場は、2000年代を通じて5大シャトーに代表されるボルドーが人気を牽引してきました。しかし、2011年末にボルドー人気が頂点を迎えた後は、市場はボルドーからブルゴーニュに変わってきました。

 ブルゴーニュ熱を誰もが実感したのが、2012年2月に香港で開催されたクリスティーズ主催のアンリ・ジャイエの蔵出しオークションです。アンリ・ジャイエは、“ブルゴーニュの神様”と呼ばれるワイン造りの名手で、2006年に亡くなった後、人気が急上昇しています。今では、「ロマネ・コンティ」を産するDRC(Domaine de la Romanee-Conti)社のワインと並ぶ人気となっていますが、一般のワイン好きに名前が通っているわけではないので、2012年当時は、オークションが成功するかどうかは疑問視する声もありました。ところが、落札予想価格をはるかに超える額で入札が入り、落札率は100%となりました。すべてのワインが落札されたわけで、これは非常に盛況だったことを意味します。

 2012年以降は、メディアの予測どおり中国・香港の市場は完全にボルドーからブルゴーニュに移りました。特に生産量が少ないDRCやアンリ・ジャイエに人気が集中しました。

落札額1億8400万円! 史上最高の落札額

 10月のサザビーズのオークションは、

 「Finest and Rarest Wines Including Henri Jayer Magnums From The Exceptional cellar of James H Clark & The Romanee Conti Superlot」(ジェームス・クラーク氏所有のアンリ・ジャイエのマグナムとロマネコンティのスーパーロット)

 と銘打っているように、最大の目玉となったのも、DRCとアンリ・ジャイエでした。


サザビーズのオークションのカタログ。アンリ・ジャイエのワインが表紙を飾った
 スーパーロットとは「ロマネ・コンティ」を114本セットにしたロットです。。ロマネ・コンティは、ご存じのようにフランス・ブルゴーニュのDRC社が生産する、世界で最も有名で高価なワインです。1992年産から2010年産の各6本の計114本をセットにしました。生産者オリジナルの木箱入りという、申し分ない状態のものです。

 この114本セットのロットは、1025万香港ドルでという超高額で落札されました。手数料22.5%を加算した総額は約1255万6250香港ドル(約1億8400万円)に達します。単独ロットの落札額としては過去最高で、1本当たり160万円になります。これはワイングラスで912杯分に当たり、1杯当たり19万3000円にもなります。


落札額が史上最高となったロマネ・コンティ114本のロット。1992〜2010年までの19ヴィンテージが各6本で構成される
 もう1つ注目だったのが、アンリ・ジャイエのマグナム・コレクションです。マグナムは通常容量の倍のボトルで、生産本数が少なく、長期保存にも耐えられ、熟成感が違うことから、コレクターに人気があります。

 アンリ・ジャイエは、先ほども少し触れましたが、“ブルゴーニュの神様”と呼ばれる伝説の造り手です。今回のサザビーズのオークションで、落札額2位となったアンリ・ジャイエの「ヴォーヌ・ロマネ クロ・パラントゥー 1990年」のマグナムボトル6本のロットは、約116万香港ドル(手数料込、約1660万円)で高額落札されました。

※「ヴォーヌ・ロマネ クロ・パラントゥー」とは、ロマネ・コンティの畑などもあるヴォーヌ・ロマネ村にあるクロ・パラントゥーという1級畑から産出されるワイン。クロ・パラントゥーは並の特級畑よりも高品質と評価されている。アンリ・ジャイエの場合は、エシェゾーという特級畑のワインも産出しているが、クロ・パラントゥーのほうが評価が高く、高値で取り引きされている。

 アンリ・ジャイエのワインを出品したのが、ジェームス・クラーク氏だったことも話題となった要因です。ジェームス・クラーク氏は米ネットスケープの創設者で、1990年代半ばのインターネット関連のIPOブームで約2000億円を稼ぎだしたと言われています。娘婿はYouTubeの創立者チャド・ハーリー。最近は、35歳のモデルと結婚するなどメディアをにぎわしています。

 クラーク氏は1990年代後半からワインの収集を始めています。高価なワインはオークション出品に当たり必ず来歴をたどりますので、極力、人の手を渡っていないワインが好まれます。アンリ・ジャイエの人気がそれほど高くない頃にクラーク氏は購入に至っていますので、直接ネゴシアンから購入が可能で、ワインは同じ倉庫で保管されており完璧な状態で熟成が進んでいました。偽造品が多く流通する中で、申し分のない来歴のワインだけあって注目が集まりました。

やはり健在だったジャイエ人気

 私は今回、あるIT企業の経営者から依頼を受けて、オークションに参加しました。狙っていたのは、アンリ・ジャイエのコレクションと、ペトリュスのインペリアル(6000mlの大型ボトル)、DRCのラタ―シュ 1990年か2005年のマグナムです。

 オークション当日、午前10時半の開始予定時刻を少し過ぎたころ、オークショニアがステージに上がりオークション進行にあたっての注意事項が読み上げられました。ロマネ・コンティのスーパーロットに関しては、インターネットでの入札は出来ないこと、また会場にいる参加者も特別なパドルを持っている人しか入札ができないことが告げられました。

 通常のパドルは、白地に黒字でパドルナンバーが記されていますが、特別なパドルは、バックが白でなく金色になっています。いかにも香港バイヤーが好きそうなデザインです。

 このパドルを持てる人は、スーパーロットの落札予想額、つまり1億7000万円以上の支払い能力が確認された人と言う事です。そのパドルを手にしている人は若い年代が多かったのが意外でした。

 いよいよオークションが開始されました。最初のロットは、アンリ・ジャイエの「エシェゾー 1988年」のマグナム6本セット。これもジェームス・クラーク氏のコレクションです。落札予想価格は34〜50万香港ドルで、24万香港ドルでスタートしたところ、あまり競り合う場面もなく、ほどなく32万香港ドルで落札。落札予想より低い額でした。

 最初の6本マグナムセットの価格があまり上がらなかったのは予想外の展開でした。アンリ・ジャイエのブームはもう去ったのか、入札ミスした人がいたのか……といろいろな考えが頭をよぎりました(実際、パドルを上げ忘れる人もいるのです)。

 次の、アンリ・ジャイエ「エシェゾー 1988年」のマグナム1本のロットも、6万香港ドルで落札。予想より上がりませんでした。私もパドルを上げて参加しましたが、この後に登場するクロ・パラントゥが本命だったため、途中で断念。クロパラントゥに照準を合わせることにしました。

 クロ・パラントゥも入札額が上がらないのでは、と思った私の判断は間違いでした。1988年のクロ・パラントゥのマグナムが読み上げられるや否や、会場にいた参加者達が一斉にパドルを上げます。みるみるうちに入札額が上がって行き、結局落札予想価格(8万〜12万香港ドル)より高い1本14万香港ドルで落札されたのです。その後も、アンリ・ジャイエのクロ・パラントゥは次々と高額で落札されました。

 やはり、アンリ・ジャイエの人気は健在でした。香港・中国でのジャイエ人気は、一過性のブームではなく、完全に定着したようです。ジャイエの中でも、評価の高いクロ・パラントゥは特に人気があります。香港・中国の購入者は、希少価値があるワインにはお金を惜しまず注ぎ込みます。


オークション会場の一角にはバーコーナーが設定されていた。参加者はここにあるワインを飲むことができる
 そして、ワイン関係者や各メディアが注目するなかロマネ・コンティ114本セットが始まります。ロットナンバーが読み上げられました。

 通常、オークションの進行は落札予想額を少し下回る額からスタートし、競り合いながら勢いを上げて行きます。700万香港ドルからスタートしゴールドのパドルを持った入札者が一気にパドルを上げ、競り合いが始まりました。最終的に電話で参加していたバイヤーが入札の意志を伝え、オークショニアがガベルを叩き、落札者が決まりました。

 1025万香港ドルで落札です。会場からは拍手が上がり、昨年末に付けた約5000万円という最高落札額の記録が塗り替えられました。22.5%の手数料が加算されますので、落札額は1255万6250香港ドル、日本円にして約1億8400万円です。

 投機目的として何十年後かの転売を見越しての競り合いだったようです。ロマネ・コンティは決して価格が下がらない商品と言われています。転売する際も、2014年のサザビーズのオークションで購入した事が明らかですから、来歴としては申し分ありません。それぞれのヴィンテージが木箱に入っていますので、バラして売る事も可能です。

欧米からわざわざ香港のオークションに参加

 今回、サザビーズのオークションでは、中国・香港のコレクターだけでなく、アメリカからの参加者も多くいました。実際、今回の落札金額上位13ロットのうち5つは米国の参加者が落札しています。


今回のサザビーズのオークションの落札金額上位13ロットの内訳
 今回のアンリ・ジャイエのマグナムボトルなどは、香港で開催したオークションでしか買えないワインだったので、欧米のワイン好きがこぞって参加したのです。ちなみに、オークションの参加方法には、現地に直接出向かなくても、電話での参加、事前に上限を決めておいて入札に参加(アブセンティビッドといいます)、インターネットでライブを見ながら参加、といった方法がありますので、実際に全員が会場に来ているわけではありません。

 今、各オークション会社が、香港でオークションを次々と開くのは、香港で高くワインが売れるために他なりません。また、香港ではワインに税金がかからないことも大きな要因です。

 高額ワインオークションの香港開催は、当面続きそうですが、高級ワインのすべてが香港で扱われるようになるわけではありません。今回のジェームス・クラーク氏のコレクションの残りのオークションは、11月15日にニューヨークで開催されます。こちらは、イタリアとフランス・ローヌ地方のコレクションが中心なので、香港では価格が上がらないという判断です。

 今回のオークションの総落札額は4570万香港ドル、日本円にして約6億7000万円(手数料なしで5億4000万円)が集まりました。これほどの額が、オークションが開催されていた、わずか4、5時間のうちに動いた事になります。

香港のワインの売れ筋には偏りも

 サザビーズの事前の予想では、オークションの落札総額は3500万〜5300万香港ドル(日本円で5億1000万円から7億7000万円)と見ていました。かろうじて予想内の金額が集まりましたが、当初の期待を大幅に超える結果ではありませんでした。2012年にクリスティーズが開催したアンリ・ジャイエのオークションでは、2000万香港ドルの総落札予想額に対して、それを遥かに超える6000万香港ドル(手数料含む)が集まりました。今回のオークションでは、かつての香港・中国で繰り広げられたようなバブル感覚での落札は見られませんでした。

 今回の落札率は96%と発表されました。高い数値ですが、その中では温度差があります。落札されたもののうち、半分以上は落札予想価格を超える額で落札されていますが、前述したアンリ・ジャイエやDRCなどの高額銘柄に集中しています。一方、オークションの後半に出品された中堅クラスの造り手のブルゴーニュの銘柄は、予想額を下回る金額で落札されるものが多く、落札不成立もいくつかありました。

 オークション終了後、オークション関係者が「香港では安いワインは売れない」と耳打ちしていた事が印象に残っています。香港ではまだまだ高級ワインに人気が集まっており、好みも偏りがあるようです。

 一方で、別の見方をする人たちもいます。「非常にレアな銘柄に対しては、競って高い金額を払うが、いつでも購入できるワインは価格を冷静に判断している」というのです。彼は、中国・香港のバイヤーが、ワインの価値や相場感がわかってきたという見方をしています

 香港が2008年2月にワインの関税をなくしたことで、世界のワイン業界の流れが香港を向くようになりました。2008年後半に起こったリーマンショックでアメリカの市場が危うくなったことも、香港シフトを加速させました。オークションハウスをはじめ、ワインショップやワインの卸・流通会社は、次々とアメリカから香港へと進出しました。拡大を続ける中国経済も後押しし、ますます香港の市場は拡大しました。


香港のワインショップの店内の様子。優良な作り手の優良なヴィンテージのワインが適切な価格で店頭に並んでいる
 数年で香港のワインショップの数は増大しました。世界的なワインの価格の検索サービス「wine-searcer.com」には、香港のショップが605店舗も登録されています。日本はまだ245店舗です。

 今回訪れた香港のワインショップは、ドメーヌ・ルフレーブ、ディディエ・ダグノーなどをはじめとする優良生産者の各ヴィンテージを取り揃え、非常に充実したラインナップになっていました。かつての香港のショップでは、ワインのブランド名だけを追って、ヴィンテージ(生産年)はあまり考慮されていませんでしたが、今は、優れたヴィンテージをきちんと取り揃え、適正価格で販売しています。ここ数年で香港の市場はかなり成熟しました。香港は元々イギリスとのパイプが太く、ワインの流通はもちろん、ワインの情報が的確に流れた事も大きな理由でしょう。

 最近では、世界のワイン業界で日本・東京が話題に上ることは少なくなりました。香港のワイン市場の隆盛をみると、東京の地位の低下を感じずにはいられません。

このコラムについて
渡辺順子のワインの「美学」「経済学」

ワインは、実に多彩な側面を持ったお酒です。光の当て方によって、さまざまな姿を見せてくれます。誰もが楽しめる“美味しいお酒”という面だけでなく、富や権力の象徴、文化的遺産、そして個人の“資産”として扱われる面もあります。この連載では、“ワインという不思議な飲み物”のいろいろな側面に光を当てていきます。知られざる「プレミアムワイン」の世界にご招待しましょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141112/273734/?ST=print


「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」
村人を殺す工場の排ガス、止まらず

抗議の声を阻む成長至上主義の壁

2014年11月14日(金)  北村 豊

 2014年11月6日の早朝、貴州省“遵義市”の管轄下にある“桐梓(とうし)県燎原鎮”の“油草村”で、同村“天馬組”の村民“趙水丘”が「がん」で死亡した。享年51歳だった。趙水丘は油草村で生まれ育ち、地方へ出稼ぎに行ったこともなく、長年にわたって農業に従事していた。これより先の10月18日には、油草村“紅籽(こうし)組”の“牟朝江”が65歳で死亡したが、死因は白血病であった。油草村で過去2カ月間に村内の化学工場が排出する有毒ガスによって死亡したのは7人で、牟朝江は6人目、趙水丘は7人目の犠牲者だった。

排出基準の達成実現のはずが…

 桐梓県は貴州省の省都“貴陽市”から北に約200kmに位置し、16の“鎮”と8の“郷”からなる。2012年末の戸籍人口は71万5319人であり、このうち農業人口が86.5%を占めている。桐梓県に属する燎原鎮は人口約1万8700人で、油草村を含む7つの“村”で構成されている。その油草村にあるのが問題の化学工場“桐梓煤化工(石炭化学工業)”である。桐梓煤化工は国有企業である“貴州赤天化集団”傘下の企業として2007年5月に設立された“貴州金赤化工有限責任公司”によって建設されたもので、その総投資額は約48億元(約845億円)。2007年7月28日に工場建設の起工式を行い、4年の歳月を経て工場が完成し、2012年1月10日に試運転に成功したのだった。

 桐梓煤化工の主要製品は、合成アンモニア(年産:30万トン)、メタノール(年産:30万トン)、尿素(年産:52万トン)であり、副産物として硫酸アンモニウム(年産:10万トン)、硫黄(年産:2万トン)が生産される。この工場はエンジニアリング会社“北京化福工程有限公司”が、地元の貴州省で産出される“煤(石炭)”を原料とし、「石炭・水スラリー気化技術」を採用して建設したものであった。この工場は貴州省の重点建設事業である「三大石炭化学工業基地」の一つで、環境保護に力点を置き、資源とエネルギーの高率利用、廃棄物と汚染物の環境保護的処理と排出基準達成の実現を確保したはずのものだった。なお、桐梓米化工の原料となる石炭の年間消費量は、“原煤(原炭)”150万トンとされる。

 ところが、桐梓煤化工の操業が始まると、毎日排出される大量の有毒ガスが油草村をむしばみ始め、工場の工員や工場周辺の村民が肺疾患やがんに侵されるようになったのである。桐梓煤化工の工員が語ったところによれば、2000人の工員がいる同工場では排出される有毒ガスによってすでに多数の工員が死亡しており、これら死亡した工員の遺体は人目につかぬよう密かに工場から運び出されているという。会社側は工員たちがこの事実を口外しないように、かん口令を敷いて外部への情報漏えいを防いでいるのだという。一方、工場周辺の村民は毒ガスを吸い込んだことによる中毒で、一時期には20日間に3人が死亡したこともあったが、彼らは全員が50〜60歳であった。

人も動物も植物も被害甚大

 11月6日に油草村の村民から2カ月間で7人目の死者が出たとの連絡を受けたメディアの記者が、油草村の村民たちから聴取した有毒ガスによる汚染状況をまとめると以下のようになる。

【1】桐梓煤化工が2012年に操業を開始して以来、排出される有毒ガスによる汚染が深刻なものとなり、多くの村民が肺病、白血病およびがんなどを患い、甚だしきに至っては死亡している。工場周辺の樹木は枯れて死に、多くの家畜が死んだ。

【2】天馬組は工場の風下に位置し、排出される有毒ガスを直接受けることになる。しかも天馬組は工場よりも幾分標高が高いことから、工場から排出された有毒ガスは天馬組へ向かって漂(ただよ)って来る。

【3】工場からの粉塵被害を受けている村民は、屋根から室内まで粉塵が積もるばかりか、粉塵によって庭は黄色くなり、収穫した作物も黄色くなり、樹木は枯れ死したという。このような場所に子供たちを暮らさせる訳には行かないので、ここには老夫婦2人だけが住んでいる。

【4】桐梓煤化工周辺には濃厚なアンモニアガス臭が漂い、人が近づけば昏倒するし、死ぬことも有り得る。アンモニアガスは毎日排出されているが、工場の外であっても、アンモニアガスを嗅いだと思ったら、すぐさま逃げないと昏倒する可能性が有るので、村民はアンモニアガスの臭いをかいだと思ったら、即座に走ってその場を離れる。数日前にも工場内で工員が数人倒れ、そのうちの何人かが死亡したと聞いた。

【5】“十一黄金周(10月1日から始まる国慶節連休)”の前に、桐梓煤化工の役員2人が工場の生産現場を視察したが、有毒ガスを吸い込んだものか、2人ともにその場に昏倒したという。

 メディアの記者が桐梓県の“環境保護局”へ電話を入れて、11月6日に油草村の趙水丘ががんで死亡したことに対する意見を尋ねると、係官は言下にそのような事実はないと否定すると同時にでたらめな情報に惑わされるなと述べて電話を切った。

違法収用がもたらす悲劇

 貴州省人民政府名で2006年12月31日付および2007年4月27日付で発行された土地収用に関する文書により、油草村の土地62.7ヘクタールは桐梓煤化工の工場建設用地として強制的に収容されることになった。これは事前に何も知らされていなかった油草村の村民にとって、正に晴天の霹靂であった。先祖代々受け継ぎ守って来た農地を桐梓煤化工の工場建設のために引き渡せというのである。

 『土地管理法』45条の規定では、(1)“基本農田(食糧生産に絶対必要な耕地)”および(2)基本農田以外の耕地で35ヘクタール以上については、土地収用に際して“国務院(内閣)”の承認を得ることが規定されている。さらに、『行政許可法』第47条には関係者の重大な利益に関わる事項では行政府が案件の決定を行う前に告知と聴聞(意見聴取)を行うことが義務付けられている。にもかかわらず、今回の土地収用は国務院の承認もなければ、事前の告知も聴聞もなく、全くの法律違反であった。

 油草村の村民は土地収用に異を唱えて抵抗を試みたが、2007年5月には桐梓県に“桐梓煤化工拆遷指揮部(取り壊し・立ち退き司令部)”が設立され、油草村での土地収容が本格化した。2007年11月には指揮部が暴力団に土地収用に反対する村民の襲撃を命じたし、2008年5月には桐梓県の党委員会書記、県長ほかの県トップ自らが数百人の暴力団を引き連れて油草村へ乗り込み、抵抗する農民の住宅の取り壊しを指揮した。絶大な公権力の前では非力な村民たちは何することもできず、強制的な土地収用に従うことを余儀なくされたのだった。

 こうした経緯を経て建設された桐梓煤化工の工場が2012年1月に試運転を終えて操業を始めると、次に油草村を襲ったのが工場から排出される有毒ガスだったのである。多数の村民が肺疾患や白血病、がんなどで早死にするとして桐梓県政府に窮状を訴えても、相手にされず、油草村の村民たちはただ耐えるしかない実情にある。桐梓煤化工は今や桐梓県の経済を支える柱石であり、排出される有毒ガスによって油草村の村民が早死にすることなどは些細な問題に過ぎないのである。

 「政府は自己の業績が全てで、庶民の生死は考慮の外であり、役人は自己の出世のためだけに任務を果たし、自己の懐を温めるために勤務する」とは、良く言ったものである。俗に「“寧可嗆死, 不願餓死, 寧可薫死, 不願窮死(食物を食べてむせても良いが、餓死はしたくない、裕福ならガス中毒で死んでも良いが、困窮で死にたくない)”」とも言う。これらの言葉は現在の中国の現状を言い表している。過去数十年にわたって、中国の地方政府の多くは経済発展を最大の目標として掲げ、その代償として環境資源を犠牲にして来た。この結果、生態環境は日に日に悪化し、現在の救いようのない劣悪な環境状況をもたらした。これは地方政府が経済成長という近視眼的な物の見方に捉われ、生態環境を破壊し、庶民の健康を破壊したことに他ならない。

庶民の生死は考慮の外

 中国政府“衛生部”の“陳竺”前部長は英国医学雑誌「The Lancet(外科手術で使う両刃のメス)」の2013年12月号に寄稿した文章の中で、中国では空気汚染により毎年50万人以上が早死にしていると述べた。また、英国放送協会(BBC)は2014年3月25日の放送で、“中国国務院発展研究中心”と“世界銀行”が共同で発表した報告書に基づき、空気汚染が引き起こす“過早死(早すぎる死)”と健康問題は、中国に毎年1000億元(約1兆7600億円)から3000億元(約5兆2800億円)の損失をもたらしていると報じた。

 2014年9月20日に北京市で開催された生態問題に関する会議の席上、環境問題の専門家は、「中国経済の発展は環境と国民の利益を犠牲として得られたGDP成長によるものであり、国土に蔓延する深刻な汚染は全ての中国国民から逃れる場所を奪い、全国で6分毎に1人ががんと診断されている」と述べた。中国政府“環境保護部”が発表したある研究報告によれば、2013年に調査を受けた中国の74都市中で、環境保護部が規定した「“環境空気質量標準(環境空気品質基準)”」に適合したのはわずか3都市に過ぎなかった。

 こうした現実を前にして、中国各地では汚染をまき散らす化学工場に対する抗議活動がますます活発化している。報道管制の厳しい中国ではこの種の抗議活動が報じられることはあまり多くないが、メディアが報じた大型抗議活動の例を挙げると以下の通り。

(1)湖北省“陽新県”の“軍墾農場九大隊”付近にある“天源化工廠”は長年にわたり有毒ガスと汚水を排出していた。地元の村民は長期にわたり県政府に改善を訴え続けたが効果はなかった。2013年11月26日、遂に堪忍袋の緒が切れた村民100人以上が天源化工廠に押しかけ、正門、食堂、事務所を破壊し、車両の進入を防ぐべく工場の出入り口に石を積み上げて封鎖した。しかし、翌27日には特殊警察部隊および警察部隊を動員した地元当局によって鎮圧された。

(2)2014年2月5日には、山東省“淄博(しはく)市”の“朱台鎮王営村”で化学工場の廃ガスに長年悩まされて来た100人以上の村民が、化学工場を襲撃し、工場施設を破壊した後に火を付けて燃やす事件が勃発した。王営村の周辺には化学工場が数十カ所存在し、村民は四六時中これらの工場から排出される廃ガスによる汚染を受け続けて来た。王営村ではがん患者が多発し、死者も日を追うごとに増加し、しかも死者はますます若年化していた。ひどい時には1カ月に20人以上の村民ががんで亡くなったこともあった。思いあぐねた村民たちは鎮政府や市政府に陳情を繰り返したが何の成果もなく、化学工場破壊という暴挙に打って出たのだった。メディアの記者がこの事件について朱台鎮政府に問い合わせると、担当者は「化学工場が汚染を垂れ流していることは承知しているが、全て合法的な企業なので取り締まれない」という奇妙な回答をしたという。

(3)2014年3月27日には、福建省“莆田市”の“仙游県楓亭鎮海濱村”で数千人の村民が建設途上の工場を焼き打ちする事件が発生した。焼き打ちを受けたのは“藍海化工”が70億元(約1230億円)を投資して建設しようとしていたジククロフェノール(DCP)およびエチレンプロピレンゴム(EPDM)の生産工場であった。2013年5月に海濱村の村民たちは2000ムー(1.32平方キロメートル)の海を埋め立てて重度の汚染をもたらす化学工場が建設されるという情報をつかみ、翌6月には村民連名で仙游県党委員会および県政府に反対の意見書を提出していた。しかし、地元政府は村民に何らの説明もないまま、化学工場の建設を推進したため、海濱村および近隣の“海安村”、“輝煌村”、さらに化学工場により影響を受ける周辺地域の村々から集まった数千人が建設中の工場を焼き打ちしたのだった。

決死の覚悟も壁は厚く

 上述の海濱村では村民が自発的に資金を集め、決死隊を募って建設反対の闘争を継続することを決めたという。万一にも闘争の中で死者が出たならば、その家族に70万元(約1230万円)が支払われる仕組みだが、決死隊志願者はすでに十数人に達したという。

 中国の環境汚染を改善するためには、地方政府による経済成長至上主義の転換が絶対条件である。しかし、環境改善を標榜しながらも持続的な経済成長なしには安定した経済運営がおぼつかない地方政府にとって、それは極めて困難なことと言えるのである。「“捨小就大(小を捨てて大に就く)”」という成語は、「さして重要でないものを捨てて、大事なものを取る」ことを意味するが、庶民の健康を無視して、大事な経済成長を優先するならば、そのツケは将来必ず大きな反動となって中国全体を苦しめることになるに違いない。

このコラムについて
世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141111/273667/?ST=print

「金曜動画ショー」
見てきまショー3 中国・大気汚染で、人々の暮らしの影響は?

現地の生活は「風まかせ」

2014年11月14日(金)  鶴野 充茂

 大気汚染の深刻さが繰り返し報じられる中国・北京。実際どうなのか、現地に行って直接見てきましょう、というこの企画。3回目の今回は、暮らしとPM2.5についてレポートします。

 ネット動画はアイデアの宝庫、それでは今週もいってみましょう。


毎日が「風まかせ」

 日中首脳会談も実現した北京では、中国政府の強力な規制もあって、APEC開催期間中にはなんとか青空が見られました。しかし、実際の解決に向けた取り組みはまだ始まったばかりの中国・大気汚染 PM2.5問題。

 健康被害の心配が大きく、解決までには少なくとも20-30年はかかると言われていることは、前回までに書いた通りです。

 そんな状況の中で、現地の生活や意識は一体どうなのでしょうか。

 「まさに風まかせですね」

 そう苦笑気味に話すのは、アサヒビール北京事務所に駐在する小林伸之さんです。

 大気汚染がひどくなると人々の行動も制限される。仕事にも影響が出る。

 風が吹くと、状況は一転、大気汚染物質であるPM2.5も吹き飛ばされて一帯の空気は一時的にきれいになる。そのタイミングを狙って積極的に出歩きたくなったりするなど人の行動も変化する、ということです。

 そのためチェックが欠かせないのが、その時々の大気汚染状況をチェックするスマホ・アプリだと言います。

 たとえば、iPhoneならこれやこれなど、最新の情報をチェックできるアプリが出ています。日本の都市の状況を参考にするなら、これなどが便利です。

 こうしたアプリを天気予報と同じように毎日、いや、一日に何度も確認しているのだと言います。

PM2.5 三種の神器「マスク・アプリ・空気清浄器」

 今回の北京取材を通じて、PM2.5に欠かせない「PM2.5 三種の神器」と呼べるものが浮かび上がってきました。

 1つは、「マスク」です。イメージ通りといったところでしょうか。

 日本でも様々なタイプのマスクが出ていますが、在北京日本大使館でも推奨しているというのが「N95」という規格のもの。

 これは0.3μmの粒子を95%以上捕集する試験をクリアしたマスクで、髪の毛の約1/40の小ささという物質PM2.5が口や鼻から体に入るのをブロックします。

 さらに厳しい規格のマスクも販売されていますが、「呼吸もたいへんで、行動が逆に制限されるレベル」(日本大使館・井上さん談)とのこと。


現地のマスク人口は少なく、店舗にも販売商品数が多くない
 注意が必要なのは、現地でマスクをしている人は日本の報道からイメージされるほど多くないこともあってか、ドラッグストアなどに置かれているマスクの種類がそれほど豊富ではないことです。

 したがって、出張や旅行などで現地に行こうとする人は、事前に購入して持っていく方が安心かもしれません。

 現地の人はというと、ネットショップで購入するのが一般的とのことです。

 「PM2.5 三種の神器」もう1つは、上で紹介した「スマホ・アプリ」です。

 現地のデータは1時間ごとに更新されていますので、それぞれ自分の関係する地域とデータが見やすいものを選んで使っているようです。

 そして3つめ。生活に欠かせないのが「空気清浄器」です。

 パナソニック、シャープ、ダイキンなど日本メーカーのものも現地でよく売れていて、現地駐在員の自宅には「各部屋に1台ある」という家庭も珍しくないと言います。

 出張や旅行で訪問する方々向けに、このあたりの情報を簡単な動画にまとめてみました。

動画はこちらからご覧ください

 周りにもし出張や旅行を予定している人がいたら、教えてあげてくださいね。

日本人学校の子どもたち向け対策


約500人が通う北京の日本人学校
 健康上の影響を受けやすいと言われている子どもたち向けの対策は、一体どうしているのでしょうか?

 今回、北京にある日本人学校の多田賢一校長にお話を聞くことができました。ここには現在、日本の小中学生の年齢にあたる児童生徒が約500人が通っています。

 「自己防衛しかないんです」

 多田校長によると、PM2.5に対する保護者の関心が高まったのは2012年頃からのことで、空気清浄器を各教室や廊下などに設置するほか、北京の米国大使館が公表しているモニタリングデータを参考に、数値が悪い日は屋外での活動を取りやめたりするなど、その日の活動を決めていると言います。

 PM2.5の影響は四日市ぜんそくと同じような状況だと聞いた校長は、より影響が大きいと言われる低学年児童への対策として、小1〜3の教室内の空気清浄器を2台に増やします。ところがどうもそれだけでは状況が改善しない。

 建物内の状況を細かく見ていくと、玄関内側の汚染濃度が高いことが分かったため、エア・カーテンを設置。

 「これで内側の濃度は外側の1/3程度にまで劇的に低下させられるようになりました」


玄関にエアーカーテンを設置して屋内の汚染濃度は大幅に改善した

汚染度が一目で分かるマークで注意喚起する
 数値の悪い時には、教員が学級内でできるストレッチやゲームを考えたり、図書室で本を読ませるなど工夫をしているそうです。目下の懸念は、屋外での活動を制限することによる体力低下、そして元気の有り余る子どもたちが遊び回る際、廊下でぶつかるなど学校内での事故だと言います。

 「自己防衛」による対策には、同時に手ごたえも感じている様子です。

 「教職員や保護者の意識が変化したことを感じます。特にマスクが」

 現地の人たちはマスクをあまりしていないので、以前は忘れる子どもたちも多かったと言いますが、学校の玄関脇にその日の汚染状況を表示(写真)し、教職員たちが「マスク、マスク」と声をかけ始めたことから、「最近はほぼ100%、当たり前の姿になりました」と校長は話します。

 一方で、中国の大気汚染が日本で繰り返し報じられると、日本人学校にも「大丈夫ですか?」という問い合わせが増えるのだと言います。

 「外の空気は確かに良いとは言えません。しかし、だからこそ室内については適切な学習環境を作る努力を続けています」

情報が人を動かす

 PM2.5自体が比較的新しい問題(詳しくは前回レポート参照)ということもあり、情報収集の動きも活発です。

 北京の日本大使館は、関心や不安の高まりを受けて、昨年10月に在留邦人向けに説明会を開催。参加者は150名で、約半分は子どものいる保護者、約半分が日系企業の安全管理などを担当している人たちだったと言います。

 企業の動きとしては、在宅勤務を積極導入する企業や、大量にマスクを購入してスタッフに配布しているところも見られます。

 勤務手当をどうするかという議論も多く、日系企業の中には「日本人にだけ手厚い」とメディアで批判を受けたところもあります。

 北京を拠点に展開するビジネススクール長江商学院でも、教授や外部の専門家などが講師となり、PM2.5について環境対策、規制問題、ビジネスなどの側面から勉強会を開催しています。


日系企業の管理職などが参加するPM2.5最新事情 勉強会
 取材で訪問した際には、「PM2.5で生まれる新たなビジネスチャンス」をテーマに議論されており、日系企業の現地管理職の人たちも参加していました。

 中身についても興味深かったので、詳細は追ってレポートします。

 人間は1日にざっと28,800回呼吸し、14,400リットル(体重50kg、平均0.5リットル/回で計算)もの空気を体内に取り入れているそうですが、大気汚染の深刻な北京などを中心に、今、人々の行動に大きな影響を与えているのは、北京の米国大使館が発表するモニタリングデータです。

 年間約1000万円の維持コストをかけて米国は大使館敷地内で計測されたデータを毎時公開。これが中国政府の背中を押すことにもつながり、現在では中国側も徐々に各地でモニタリングデータを測定して公開するようになりました。

 ただ、国全体で見れば、この問題への対策は本当にまだ始まったばかり。

 APEC開催期間中、北京に青空が広がったのも、経済活動を止めていたからです。規制が解除されれば、再び大気汚染は戻ってくることが予想されています。

 そして空気は、土壌、水とつながっています。食への影響もあるということですので、今後の動きにもウォッチしていきたいと思います。

 同時に、PM2.5の問題を受けて、健康・環境産業などは大きく成長しています。

 そこで次回は、「PM2.5とビジネスチャンス」について、レポート予定です。

 ネット動画はアイデアの宝庫。それではまた、金曜日にお会いしましょう。

P.S.日経BP社とアサヒビールが運営する新メディア「カンパネラ」でも動画紹介などを書いています。ぜひ読んでみてください。

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