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習近平の支配から逃れられる者などいない(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/14/china5/msg/566.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 3 月 17 日 10:20:06: igsppGRN/E9PQ
 

習近平の支配から逃れられる者などいない
http://diamond.jp/articles/-/68498
2015年3月17日 加藤嘉一 [国際コラムニスト]  ダイヤモンド・オンライン


 3月3日〜15日、中国北京で“両会”(Two Sessions)と呼ばれる一年に一度の会議が開催された。全国人民代表大会と全国政治協商会議が同時に行われることから中国では“両会”と略称される。その構造や機能に関しては、昨年同時期に本連載で扱っているため、そちらをご参照されたい。(第25回コラム:議論は公開されても結局は“密室政治”全人代&政協会議から考える中国民主化の現状http://diamond.jp/articles/-/50593

 両会ではあらゆる政治関係者による、あらゆる分野の議論が行われる。一つ一つの内容を取り上げて検証を加えるのは物理的に不可能だ。本稿では、“中国民主化研究”という本連載の核心的テーマに焦点を定め、それにまつわる3つのストーリーを描写しつつ、最後に1つのインプリケーションを導き出したい。

■恒例の“両会”で反腐敗を集中討議 注目は人民解放軍内における取り締まり

 1つ目に、習近平総書記が就任以来大々的に展開している反腐敗闘争である。今年の両会では反腐敗に関して前代未聞の集中討議がなされた。

 国家指導者たちの発言をレビューしてみよう。

「反腐敗に対して高圧的な姿勢を貫き、腐敗分子に対してはゼロ容認で徹底的に調査・処分する。指導機関か群衆近辺かに限らず、すべて厳格に取り締まる」(李克強・国務院総理)

「今期の政協は令計画や蘇栄といった14人の全国政協委員の資格を剥奪した。委員への管理を強化し、クリーンな党の建設と反腐敗闘争を頑なに推進しなければならない」(兪正声・全国政治協商会議主席)

「ゼロ容認で司法機関における腐敗を取り締まる。クリーンな党を建設するための主体責任と監督責任を果たさなければならない。すでに問題のある裁判所幹部73名に対して問責を行った」(周強・最高人民法院院長)

 注目すべきは中国人民解放軍内における腐敗の取り締まりである(“軍内反腐”と呼ばれる)。習近平総書記は解放軍代表会議において初めて反腐敗問題を提起した。昨年、一昨年の両会では見られなかった現象である。

 加えて、劉少奇元主席の息子で、習氏とも幼なじみとされる劉源大将・全国人大代表が以下のように公言した。

「徐才厚(中央軍事委員会元副主席・政治局委員―筆者注)や谷俊山(解放軍総後勤部元副部長―筆者注)らを捕まえる決定は習近平主席の指示によって計画され、実行されたものだ。習主席の突破力と肝っ玉がなければ、彼らを捕まえることなどできなかった」

 関係者のあいだでは、軍内反腐においては、劉大将が習総書記と内密に意思疎通を図りつつ、相当程度動いたとされる。軍内反対勢力からはかなり圧力を受けていたとされるが、それに対して劉大将は「私も少しだけ役割を果たせたかもしれない。ただこれは職務の範囲内であり、本来履行すべき任務に過ぎない」と静かに語った。軍内反腐は、引き続き習近平&劉源のラインで強行されていくものと想定される。

 両会開催期間中も大物政治家の失脚は続いた。2週間という短い時間の中で3人の地方副省長級幹部が“落馬”した。河北省共産党委員会常務委員・事務局長の景春華、新疆ウイグル自治区人民代表会議常務委員会元副主任・元ウルムチ市共産党委員会書記の栗智、雲南省共産党委員会副書記の仇和の3人である。

「これは、習近平総書記の指導の下、2015年、反腐敗闘争が引き続き展開されるという近未来の真実を示している」(共産党幹部)

■重要な5つの報告書すべてに習総書記の“4つの全面”を明記

 2つ目に、習近平政権における指導思想にまつわる新たな兆候についてである。

 昨年12月13〜14日、江蘇省を視察した習総書記は初めて「全面的に小康社会(中国語で“いくらかゆとりがあること”を指す。中国共産党は2020年までに小康社会を建設することを施政目標に掲げている―筆者注)を建設すること;全面的に改革を深化させること;全面的に法に依る治国を推進すること;全面的に厳しく党を治めることを協調的に推進しなければならない」と問題提起した。年末年始にかけて、共産党内部で理論畑として働く関係者のあいだでは「これは習近平による執政にとっての指導思想・方針となるかもしれない」という“噂”が広まり、内輪で議論された。

 それから約3ヵ月が経った今、両会の骨格を成す全国人民代表大会、国務院、全国政治協商会議、最高人民法院、最高人民検察院の首長による5つの報告すべてに、習総書記の“4つの全面”が明記された。

 これには私も驚いた。

 序列2位の李克強首相あたりが、報告のなかで相棒である習近平総書記の問題提起を踏襲するくらいなら容易に想像がつくが、5つの報告書すべてに、同様の文言・表現でビルトインした事実に考えを及ぼせば、そこには何らかの政治的な思惑が働いていると解釈するしかない。

 今後、習近平談話や党・政府が作成する声明など、あらゆる場面で“4つの全面”が提起され、かつこれを推し進めることの重要性と切迫性が掲げられることであろう。

 共産党内で理論畑を歩んできた研究者は以下のように“4つの全面”を解説する。

「この4つは互いに関係しあっている。中国共産党が最重要視しているのはやはり経済であり、国民が豊かになることだ。さもないと党の正統性が疑われてしまう。よって、1つ目の小康社会の建設が目的となる。そしてそのために、改革を深化させ、法によって国を治めることが必要になってくる。改革と法治はそれぞれ三中全会と四中全会でアジェンダに挙げられた。最後の1つは実質的に反腐敗闘争を表している。党内を厳格に粛清することがすべての政策を進める上での前提条件だからだ。2015年は“4つの全面”にとっての元年と言えるだろう」

■政治改革には言及なし 政権初期にはあえて提起しない可能性も

 3つ目に、“政治改革”についてである。

 結論から言えば、昨年同様、今年の両会において、政治改革が“5つの報告”のなかで問題提起されたり、会議を通じて具体的に議論されることはなかった。

 時計の針をあまり遠くない過去に戻してみよう。

 実際の政策としてどこまで進んだかは別にして、胡錦濤・温家宝政権時代には、両会の舞台で政治改革が提起された。

 2008年の政府活動報告で、温家宝首相(当時)は以下のように主張している。

「政治体制改革が行われなければ、経済体制改革も現代化建設も成功することは不可能だ…民衆が持つ5つの権利を保障しなければならない、即ち、選挙権、知情権(知る権利―筆者注)、参与権(政治に参加する権利―筆者注)、表達権(表現する権利―筆者注)、監督権(権力を監視する権利―筆者注)である」

 また、温家宝首相(当時)にとって最後の政府活動報告となった2013年度版では以下のように主張している。

「我々はより大きな政治の勇気と智慧を以て改革開放を推進しなければならない…我が国の改革は肝心な時期に入っている、思想を解放し、全面的に経済体制改革を深化させ、引き続き積極的かつ穏当に政治体制改革を推進し、文化体制改革を深化させ、社会体制改革の推進を加速させ、生態文明制度建設を強化しなければならない。改革を不断に深化させていくのだ」

 本連載でも検証したが、胡錦濤・温家宝時代に“改革が全く進まなかった”という評価を下す政策関係者やウォッチャーは少なくない。それが習近平・李克強時代に対する過度の期待というリバウンド現象を生んでいる側面は否定できない。習近平総書記が政治改革に着手するかに関しても、その可能性と不安要素を含めて検証してきた。

 中国共産党の指導者が“政治体制改革”について触れるものの行動が伴わないことと、“政治体制改革”に触れはしないものの行動は起こっていること。どちらがベターかと言われれば間違いなく後者であろう。もちろん、往々にして予測や想定に基づいて運営される現実社会にとってベストな状況は、中国共産党指導部が“政治体制改革”への着手を明言した上で、実際に行動に移されることである。

 習総書記がまだ7年あるとされる任期内に何らかの政治改革に着手するか否かは定かではない。本連載でも取り上げてきたように、“改革派”の父を持つ習近平という政治家は改革の意思を保持しており、政治レベルにおける改革も視野に入れながら日頃の仕事に挑んでいると私は考えている。仮に、習総書記が本気で政治改革を行おうと機会を窺っているとして、党内における保守派からの逆襲を警戒して、あえて“政治体制改革”を胸の内に潜ませ、隠し球として持っている可能性もあるだろう。経済の首長である温家宝首相(当時)が繰り返し“政治体制改革”に言及したものの、結果的に改革が進まなかった前政権と同じ轍を踏まないように、教訓として生かしているのかもしれない。

 一方、胡錦濤・温家宝時代における政府活動報告で明確に言及されていた“政治体制改革”の6文字が、習近平・李克強時代になってピタリと消えてしまったというファクトはきっちりメモしておくべきである。

 もう1つ、私自身の経験上にあるファクトを取り上げたい。

 毎年両会の季節には、中国メディア・世論で評論を書くなどして、パブリックディスカッションに参加してきたが、今年、ある比較的リベラルな議論が期待できる場面で“政治改革”について問題提起する予定をデスクに話したところ、あえなく却下されてしまった。

 納得できなかった私は理由を問うた。

 先方は申し訳無さそうに回答してきた。

「いまの政権の指導者たちは“政治改革”という4文字が公に議論されることを嫌っている。いまの政権ができてからというものの、“政治改革”を扱えたことは一度もない。これからどうなるかは分からないが、少なくとも、両会という政治の季節で提起することはできない」

 上記2つのファクトを以て、「習近平は政治改革に興味がないし、着手するつもりもない」と断定するのは軽率だ。政権初期段階にある現在はあえて提起しない、議論させない、目的は適切な時期に大胆に進めるため、という可能性もあるからだ。イデオロギーや言論統制の強化といった“左傾化”を彷彿させる政策を、「保守派を黙らせ、然るべき時に政治改革を進めるために習近平が党内・社会全体に敷いているフェイクだ」(共産党関係者)という“フェイク論”に見立てる政策立案者・研究者は共産党内にも一定数存在する。

■3つの視点から導かれる“習近平”の三文字 今期政権において圧倒的なチカラを誇る

 最後に、1つのインプリケーションを導き出したい。

 1つ目の“反腐敗”、2つ目の“4つの全面”、3つ目の“政治改革”の共通項・最大公約数として抽出できるのは“習近平”の三文字であり、存在感である。最初の2つに関しては、習近平総書記の思惑や談話を直接体現するものである。

 3つ目は相関性が曖昧であるが、私自身は、政治的にはリベラルな立場を保持してきた李克強首相が政府活動報告で“政治体制改革”に言及しないのは、前任の温家宝首相に比べて保守的だからではなく、習近平総書記の現段階におけるスタンスとやり方を重んじている、というよりは、そこに従っているからだと解釈している。経済担当の首長としての意識を明確に持つ李首相の「管轄外の政治には安易に言及しない」というスタンスとも無関係ではないだろう。

 そもそも、両会というのは、全国人民代表大会と全国政治協商会議から成っており、会議の進行を引っ張るのはそれぞれの首長である張徳江委員長と兪正声主席だ。この2人が最も忙しくあるべき会議にほかならない。また、政府活動報告と最終日の記者会見という重責を担っているという意味で、国務院総理もまた忙しい。

 総書記・国家主席・軍事委員会主席である習近平は、特定のミッションを持たない両会期間中、他の政治会議に比べればリラックスできるはずだが、それにもかかわらず上記のように、両会で最も目立ち、影響力を発揮していた。

 やはり、今期政権においては、習近平という存在が圧倒的なチカラを誇っている。政治レベルを含めた改革が進むか否かは習近平という男の双肩にかかっている。そして、権力を持ちすぎている習近平に“全てがかかっている”という現状は諸刃の剣でもある。この男、或いはそれを取り巻く環境に何らかの不測の事態が起これば、“全てが崩れ去っていく”という政治リスクを内包しているからだ。

 この現状から目をそらしては、これから起こりうる中国事情・問題を客観的に理解することは難しいであろう。習近平総書記の一挙手一投足から益々目が離せない。

 両会開会期間中のある時、同会議の運営に関わった党幹部が私に以下のように語った。

「中華人民共和国のなかで、中国共産党の支配を逃れられる場所などない。と同時に、中国共産党のなかで、習近平の支配を逃れられる者などいない」

 

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