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AIIBがイメージさせる「新世界秩序」 - 会田弘継
http://www.asyura2.com/14/china5/msg/800.html
投稿者 ピノキ 日時 2015 年 4 月 30 日 16:51:33: /cgEbzQ/iEx0c
 

http://blogos.com/article/111211/
新潮社フォーサイト2015年04月30日 10:41


日米欧を尻目に経済成長を続ける中国は、その勢いを駆って英米主導でつくられた国際システムをつくりかえようとしているのか――。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバー国が4月15日に確定し、57カ国に及んだ。先進7カ国(G7)のうち4カ国、先進国グループ経済協力開発機構(OECD)34カ国からは過半数21カ国が加わっている。 締め切り間際に参加国が一挙に増えた。バンドワゴン効果だ。創設メンバーでは日米の不在が際立つ。


 57カ国は、先発の日米主導のアジア開発銀行(ADB)の参加67カ国・地域に迫る数だ。AIIB参加国は今後も増えるだろうから、並び立ち、超えていくかもしれない。いったい何が起きているのか。中国の狙いは何か。


にわかに焦点となる「中央アジア」
年末発足を目指すAIIBの暫定事務局ホームページ【aiibank.org】をのぞくと、「エネルギー、電力、運輸、通信、農村基盤……アジアにおけるインフラ並びに生産セクターの開発」に焦点を当てると記されている。「しかし、AIIBのビジョンと使命は、こうした散文的叙述を越えたところにある」。それはひと足先に発足したシルクロード基金とあいまって「アジアとヨーロッパを中央アジア経由で結び付ける」という大事業をなしとげることだ、と4月17日付のシンガポール紙『ビジネス・タイムズ』社説は論じる。


「一帯一路」と呼ばれる陸海でアジア(中国)と欧州・アフリカを結ぶ大構想を支えるのが、AIIBの仕事だというわけだ。これまでもADB以外の新たな地域開発機関をアジアにつくろうというアイデアが浮かんでは消えてきた。たとえば、北東アジア開発銀行(NEADB)構想は日米の反対、中米露・北朝鮮の緊張関係の中で消えた。


 習近平は一時、中央アジア開発銀行構想を語ったが、すでにロシア主導で先行していたカザフスタンに本拠を持つユーラシア開発銀行への配慮からか、あまり言わなくなった、と社説は経緯に触れる。


 AIIBがシルクロード構想の一環なら、いずれロシアとの角逐が起きそうだ。一方、日米主導のADBも最近中央アジアへ力を入れ始めており、昨年はカザフスタン、今年はアゼルバイジャンで年次総会を開く。安倍晋三首相も今夏、中央アジア歴訪を計画している。中国のシルクロード構想にエネルギー事情があいまって、中央アジアがにわかに焦点の地域となって来た(これは、『中央公論』6月号の当欄筆者によるフランシス・フクヤマ氏とのインタビューの中核テーマでもある。ご笑覧いただきたい)。


パキスタンが「地政学的交差点」に
 4月15日のAIIB創設メンバー発表と踵を接するようにして、20日に習近平はパキスタンを初訪問、シルクロード構想の皮切りとなる「経済回廊」建設など大規模なインフラ整備事業51項目推進で合意した。


 パキスタンの軍事専門誌『ディフェンス・ジャーナル』4月30日号によれば、中国の支援は最終的に450億ドル(5兆3500億円)に及び、2030年までに中国新疆ウイグル南西のカシュガル市からパキスタン南西部の港湾都市グワダルを結ぶ3000キロの「経済回廊」が整備される。これにより、中国はインド洋に出るルートを確保し、パキスタンは中国〜南アジア〜中東〜中央アジアを繫ぐ「地政学的交差点」として重要な位置を占めることになると、同誌は言う。


 イラン核開発問題を巡り最終合意が達成され対イラン制裁が解除されれば、イラン〜パキスタン〜インドの天然ガス・パイプライン敷設への道も開かれ、一帯のエネルギー事情は大きく変わり、経済発展が促進される。中国を軸にした南アジアの経済統合は、西はイラン・アフガニスタンから東はミャンマーにまで及ぶという専門家の声を同誌は紹介している。


 これを裏付けるように、中国・パキスタンの合意直後、イランの駐北京大使は香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)』に対し、イランはすでにパキスタン国境まで天然ガス・パイプラインを建設済みで、パキスタン側は中国の支援を得て自国側のパイプラインを建設し、いずれは中国にまで延長されるとの見通しを示した。


 こうした大型プロジェクトにAIIBがかかわってくることになるのだろう。


中東から欧州まで視野に
他方、インドを挟んで反対側のミャンマーの代表的な経済誌『ミジマ・ビジネス・ウィークリー』も、中国のシルクロード構想のうち海上ルート(「一路」)からミャンマーも大きく利益を得るとの見通しを示している。AIIBがそこにかかわって、中国はミャンマー経由でインド洋へのアクセスを獲得し、さらに中央アジア、東南アジアで石油・天然ガス事業や輸送用インフラの整備が進むとみる。


 中国はシルクロード陸上ルート(「一帯」)から雲南省を通ってミャンマーを抜け、インド北部やバングラデシュ南東部の港湾都市チッタゴンに至るルートを検討しているが、その際に重要なのがミャンマー南西部の港湾都市チャウピーュだ。ここと雲南省・昆明を結ぶ鉄道計画が中国ミャンマー間で2011年に仮合意されたが、その後進展はないままだ。AIIB発足後が注目される。


 同誌によると、中国は最近、タイ南部のクラ地峡(マレー半島の最狭部)での運河建設にも関心を示しているという。インド洋から南シナ海へ抜ける近道輸送ルートになるからだ。これまで幾度となく論議されてきた運河計画だが、いま中国が関心を示しているなら、大いに進展が気になる。パキスタン、ミャンマー、クラ地峡のいずれもが、マラッカ海峡を通らずに中国にエネルギーを供給できるルートだ。航行距離も大幅に縮む。マラッカは米海軍がいつでも封鎖できる「危険」なルートだと、中国は見ている。


 AIIBと新シルクロード構想は一体となって、アジアどころか、中東から欧州までを視野に「大戦略」を推進していく。米欧や日本が中心となって運営してきた国際通貨基金(IMF)・世界銀行・アジア開発銀行といった制度を押しのけて、「新世界秩序」をつくろうとしている。一連の動きで、そうしたイメージができつつある。


米欧がつくった「老いたラクダ」
 中国にそうした行動を促し、世界経済の指導的地位を「皿の上に載せて」差し出しているのは米欧の方ではないか、と反省を迫るのは、ベテランの国際経済ジャーナリスト、ナヤン・チャンダのシンガポール紙『ストレーツ・タイムズ』への寄稿だ。


 2008年のリーマンショック後、中国の国際経済における影響力は高まった。それにもかかわらず、IMFや世銀は、中国に対しその影響力に相応しい割合の投票権を与えてこなかった。


「硬化症が目立ちだしたIMF・世銀は新しい経済の現実にそぐわなくなって、オバマ政権はそれを正したいと望んできたのに、小さな政府を標榜し、孤立主義傾向の共和党が支配する米議会は頑なに拒んできた。米国は、時代遅れで大幅な改革が必要だと知っている制度を守らなければならない立場に追い込まれてしまっている」


 だから、中国はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興国)による新開発銀行から始まり、シルクロード基金、AIIBと一連の新構想を打ち出すにいたったのだ、とチャンダは言う。


 米国がAIIB反対を唱えている間に、中国は米欧分断をみごとに果たした。英国を先頭に欧州主要国がAIIB創設に続々と参加した今度の事態は、米欧がつくった戦後経済システムという「老いたラクダ」が重荷に崩れた瞬間と見られる日が来るかもしれない、とチャンダは言う。「米国の愚かな党派政治と欧州の日和見政治が(世界を)指導する地位を皿に載せて渡したようなものだ」


 長く米国をベースに活躍するインド系のベテラン、チャンダのいらだちがのぞく寄稿だ。


 AIIB創設は、中国の国際経済における地位について、もう1つの大きなテーマの論議も活性化させた。人民元の国際化だ。英国が欧州の先頭を切ってAIIB参加を決めた背景には、ロンドンを人民元取り引きセンターにしたいという野心があるとも言う。


人民元の国際化
 17日付の香港紙『SCMP』は、昨年の中国の貿易の5分の1以上が人民元で決済され、2020年に50%を超えるだろうという金融機関の予測を紹介。インフラ整備資金調達のためAIIBが発行する債券も人民元建てになりそうだという。


 タイ紙『ネーション』は著名な金融専門家アンドリュー・シェンが「人民元国際化を迫る5つの主な背景」を分析する寄稿を掲載した。国際通貨取引で扱われる人民元はドル(取引の6割)、ユーロ(同2割)、英ポンド、日本円に比べずっと少なく、豪ドル、カナダ・ドルも下回る。世界第2の経済力で世界総生産の13%、世界総貿易の10%を占める国に相応しくないのが、第1の背景。原料を大量に輸入し、製品を大量輸出するのだから、自国通貨決済がリスク管理上も好ましい。さらに、人民元国際化が経済改革を促進することも期待できる――などを挙げている。


 ただ、ドルが基軸通貨としてポンドに取って代わるには70年を要し、その背景には米国の圧倒的軍事力があったことなどを考えれば、人民元国際化とその地位の向上には相当の時間がかかるというのが、シェンの見方だ。


中国の壮大な将来構想
AIIBや新シルクロード構想など中国の最近の動きのすべてを包括的に描き、「大戦略」を説明しているのが、北京大学国際戦略研究所の王緝思所長の論文「真ん中の中国」だ。米誌『アメリカン・インタレスト』に掲載された。


 古くから、「中心にある国」として、その名で呼ばれてきた「中国」が大発展を遂げて、いまやっと東のアジアと西の欧米を結ぶ「真のユーラシア国家」となれるようになった。東西を結び、南北の格差を縮める仲立ちの国、橋渡しの国(bridge nation)としての「中国」となり、また過去への架け橋であり、未来への先駆ともなって「人類史上まれな役割を担える」とも、王緝思は論じる。


 世界には「一洋一陸」の欧州、同じく「一洋一陸」の中国、そして「二洋一陸」の米国がある。この3つが鼎の三脚のようになっている。それぞれ地理的優位性と戦略的縦深性を備える。米国はいま、「アジア重視」と環太平洋連携協定(TPP)、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)を打ち出し、ユーラシア大陸の「政治、経済、資源……の支配をもくろむ」。中国は東を向けば、日米韓との貿易は全貿易の半分を優に超えるが、日米との緊張も高まっている。いまや戦略は「東を治めて、西に出る」(stabilize the East, march to the West)だ。ユーラシア中央部を抜けてインド洋、地中海、大西洋へと進むべきだ……。壮大な中国の将来構想が示されている。シルクロード構想やAIIBの背後にある中国エリートの思想を考えるうえで格好の論文だ。


 かつて日本のエリートらもこのようにして「大東亜共栄圏」などを論じたのだろう。ただ、王緝思が中国に「熟慮と慎み」を説き、過剰なナショナリズムと進歩への自己陶酔を戒めているところは、さすがと思わせる。


 さらに同誌は中国問題を特集している。シンガポールの論客で元外交官のビラハリ・コーシカンの論文「変貌する世界」も、日本の明治維新から始まった東アジアの近代化成功物語が中国に引き継がれ、いま近代化の震源である欧米を揺さぶっているという、大きな構図を描いて読ませる。


 日本の知識人も、世界に向かって大きな構図の論を提示する時がきている。


 

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