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西岡昌紀「ここが変だよホルミシス論争」(月刊ウィル・2012年11月号増刊)その6
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投稿者 西岡昌紀 日時 2014 年 3 月 24 日 17:21:05: of0poCGGoydL.
 

西岡昌紀「ここが変だよホルミシス論争」(月刊ウィル・2012年11月号増刊)その6

(転載自由:コピペによる拡散を歓迎します)

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(続きです)

 このような低線量放射線の危険性を指摘する研究、報告のなかで、「放射線ホルミシス」派の論者たちがなぜか、示し合わせたかのように言及しない、議論を避けている大きな問題があります。それは、イギリスのドーンレイ、セラフィールド、両核施設周辺で、子供の白血病および非ホジキン型悪性リンパ腫が増加しているとする、イギリス医学界からの複数の報告です。
 この問題を報告した論文の一つをここに紹介しますので、入手できる方はお読みいただきたいと思います。⇒M.J.Gardner et al, Results of case-control study of leukemia and lymphoma among young people near Sellafield nuclear plant in West Cumbria, British Medical Journal, Vol.300, pp423-429(1990)
 この論文は、イギリスのセラフィールド再処理工場周辺で認められた子供の白血病と非ホジキン悪性リンパ腫の発生率が、(妊娠前での)父親の再処理工場での就労および被曝量と相関していると報告したかなりショッキングな内容の論文です。
 論文の報告者たちは、こうした再処理工場労働者の子供に見られた白血病と非ホジキン悪性リンパ腫の有意の増加の原因を論じ、遺伝的原因の可能性に注目しながら、父親が微量の放射性物質を再処理工場から家庭に持ち込んだ可能性にも言及しています。
 この論文に対しては当然、批判もありますが、この論文が掲載されたBMJ(British Medical Journal) という雑誌は非常に権威のある医学雑誌です。もちろん、権威ある医学雑誌に載った論文は皆、正しい等というつもりはありません。
 また、この論文に対する批判も大いに拝聴したいと思っていますが、この論文をはじめとする複数の論文が、原因が何であるかはともかく、ドーンレイ、セラフィールド両核施設周辺で子供の白血病(および非ホジキンリンパ腫)の増加を報告しているのです。
 ですから私は、「放射線ホルミシス」派の論者たちがこれらの論文をどう考えているのか知りたいと思いましたが、「放射線ホルミシス」派のどの方の本を読んでも、まるで示し合わせたかのように(?)、このイギリスの核施設周辺の子供たちに関する研究に言及がないのです。
 さて、「放射線ホルミシス理論」が直面する第三の問題点は、仮に低線量放射線が人体にとって有益な作用を持つとして、定量的にどこまでが
良いのか、言い換えれば、どこからが危険なのか? という問題です。
 この問題について多くの論者は、百ミリシーベルトまでは安全だという見解を採っているようです。また、「放射線ホルミシス効果」の名付け親であるアメリカのトーマス・ラッキー教授は、百ミリシーベルトが最も体に良いとする立場を採っています。
 こうした主張の論拠として、「放射線ホルミシス」派の論者たちが挙げる最大の根拠は、広島、長崎の被爆者を対象に戦後、長期間にわたって行われた疫学研究であるように思われます。
 容易に理解されるように、放射線が長期にわたって人体に与える影響の研究において、広島、長崎の被爆者の健康に関する研究ほど大規模で長期間にわたるものは見当たりません。それは「放射線ホルミシス」派の論者たちにとっても変わりがなく、実際、彼らの著作には広島、長崎の被爆者に関する言及が多々、見られます。
 しかし戦後、長期間にわたって続けられてきた広島、長崎の被爆者に関する疫学研究には、国連の科学委員会(UNSCEAR)やICPR等から複数の問題点が指摘されています。それらを要約すると、(1)この疫学研究が開始されたのは一九五〇年からで、原爆が投下された一九四五年から一九五〇年までの間に死亡した被爆者についての被曝線量と医学的経過の分析が不足している(2)個々の被爆者が被曝した線量は爆心からの距離から推定される推定値
で、実測された線量ではない。特に、家のなかなど建物のなかで被曝した被爆者の場合、建物による遮蔽効果により、実際の被曝線量は、距離から算定された推定値よりも低い可能性が高い。(3)生存した被爆者たちは、被爆直後の厳しい生存条件に耐えて、原爆投下から五年間の時間を生き延びた人々なので、生物としてのヒトの母集団を正しく反映しているとはいえない。
 といった問題点です。また、調査対象を昭和二十五年(一九五〇年)十月一日に広島、長崎両市に在住していた住民だけに限定し、原爆投下後、両市外に移住した住民を調査から除外した(!)ことなども指摘、批判されています(西尾正道著『放射線健康障害の真実』旬報社・二〇一二年、三十三ページ参照)。
 これらの問題点のなかで、特に⑵は、こうした戦後の疫学研究において、被爆者たちが浴びた放射線の線量が実際よりも高く算定されていたことを意味します。つまり、爆心から同じ距離にいた被爆者であっても、戸外にいた被爆者と屋内にいた被爆者とでは受けた線量が非常に違うはずであり、爆心からの距離は同じであっても、戸外にいた人は百ミリシーベルトを被曝し、屋内にいた人は建物の遮蔽効果によって二十ミリシーベルトの被曝に留まった、といったようなことが大いに予想されます。
 にもかかわらず、戦後、広島、長崎で行われた疫学研究では、距離だけから被爆者が被曝した線量が推定され、建物の遮蔽効果で二十ミリシーベルトの放射線しか浴びなかった人も戸外にいた人と同様、百ミリシーベルトを浴びたことにされてしまった、という批判です。
 実際には、二十ミリシーベルトの被曝で済んだために健康でいられた被爆者も百ミリシーベルトの被曝を受けたとされたのですから、その被爆者は百ミリシーベルトの被曝を受けながら健康であった、とされてしまっていないか? ということです。
 広島、長崎の被爆者に関する疫学研究にはこうした欠点があるのです。ところが、私が読んだ「放射線ホルミシス」派の本には、こうした問題についての言及がありません。そして広島、長崎の被爆者に関する研究から、何ミリシーベルトまでは閾値なので大丈夫、といった論理が展開されているのです。
 私はこうした広島、長崎の被爆者に関する疫学研究が持つ問題点について、「放射線ホルミシス効果」を唱えるラッキー教授や服部禎夫氏、中村仁信氏、その他の論者たちが何と言っているか知りたいと思いました。
 そこで彼らの本を読んでみたのですが、ラッキー教授がその著作の一つ(T・D・Luckey:Radiation Hormesis[CRC Press、1991])のなかで、こうした広島、長崎の被爆者に関する疫学研究に五年間の空白があることを「深刻な欠落(serious omission)とは思われない」と述べ、三行で(!)片付けている以外に彼らの答えを見つけることはできませんでした。
 ラッキー教授をはじめとする「放射線ホルミシス」派の論者のなかには、広島、長崎の被爆者のなかで一定以下の線量を被曝した被爆者は、かえって長生きをしているとする意味の主張をしている論者が複数、見られます。しかしこれは、原爆の放射線を浴びた「放射線ホルミシス効果」の結果だったのでしょうか?
 この点について、広島大学原爆放射線医科学研究所(原医研)の大谷敬子研究員、大滝慈教授たちは、生存した被爆者の寿命について解析した結果を2011年に報告しています。それによると、男性の場合、被爆者健康手帳を早期に取得した被曝者ほど長生きする傾向にあるとされています。
 つまり大谷研究員らは、「放射線ホルミシス効果」ではなく、被爆者手帳による医療の無料化が被爆者の寿命延長の原因である、と結論づけているのです。
 被爆者手帳は、被爆者に極めて安い医療を提供してきました。その結果、被爆者は被曝によって懸念されて来た癌をはじめとする悪性腫瘍を発見するために、医療のみならず高血圧や糖尿病、脂質代謝異常症などの発見や治療、生活指導などを長期にわたって手厚く受けてきました。これが生存した被爆者の寿命に影響しないわけがないではありませんか。
 もし、被爆者の長寿化の原因が放射線の「放射線ホルミシス効果」だと主張するのであれば当然、生存した被爆者の長寿化の原因が医療の効果ではなかったことを先に証明しなければなりません。
 ところが、大谷敬子研究員らのこの研究は、被曝者手帳の取得が早かった被曝者ほどより長生きしているという疫学的事実を指摘することによって、医療が被爆者の健康に与えた効果を証明しているのです。つまり、大谷研究員らのこの研究は、ラッキー教授が述べる「原爆の健康への効用」なる仮説に反証を突きつけていることになります。
 では、ラッキー教授は何と言っているのでしょうか? 『放射能を怖がるな!』(T・D・ラッキー著、茂木弘道翻訳、日新報道・二〇一一年)に収められた、二〇〇八年にラッキー教授が書いた論文(訳・茂木弘道氏)を読んでみたところ、ラッキー教授は何と、こう書いているのです。
「日本の被曝生存者のうち軽い被曝線量であった人々の平均寿命が増加していることは、被曝者に対する医療行為の効果かも知れないし、放射線ホルミシス効果によることかもしれないし、あるいは両方の効果によるものかもしれない」(同書八十四〜八十五ページ)
 つまりラッキー教授は、生存した被爆者の長寿化の理由は「医療行為のせいかも知れない」と、自分で認めている(!)のです。これでは、自身の作業仮説(原爆の低線量放射線によって一部の被爆者の寿命が延びているとする仮説)が証明されていないことを自ら認めているのと同じではありませんか(!)。
 もう一度、言います。「原爆の健康への効用」が証明されていないことは、ラッキー教授自身がこうして認めているのです。私は、こんな自己矛盾を平気で書いている論文をアクセプトした医学雑誌があったことに驚いています。

(続く)

(西岡昌紀「ここが変だよホルミシス論争」(月刊ウィル・2012年11月号増刊228〜252ページ)242〜246ページ)
http://www.amazon.co.jp/WiLL-%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB-%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%BC%E3%83%AD%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%8B-2012%E5%B9%B4-11%E6%9C%88%E5%8F%B7/dp/B009ISQ6FI/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1356954666&sr=8-1

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コメント
 
01. 茶色のうさぎ 2014年3月25日 09:43:11 : qtmOTsgWNIsK2 : XFvaIKI2yo

スクリーニング効果みたいなもんかな?
少数検査と多数検査による不必要な物までの発見確率の応用かな?
いまの福島県は多人数への手厚い看護をしているから、とすれば福島はみんな健康で明るい長寿国になるね!
低線量の内部被曝の滞留と濃縮の影響と体外排出と半減期の証明実験中だね!
この際、玉川温泉に連続24時間入浴してガマンくらべの番組がみたいなーー!



[12削除理由]:アラシ

02. ホルミシス体験中 2014年4月05日 07:23:08 : .stw/ATTE8.rU : UbzbjP4kBg
では、人類が皆持つ、カリウム40の体内放射性物質はどう説明するの?
極低線量ですが。医学では殆ど何の病気に対しても証明などされないと言うことをラッキーさんは言っているのではありませんか。


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