以前、原発には長距離・超高圧送電必要で、その非効率性、危険性を指摘したが、
今回は、もう一つ原発に不可欠で無駄の塊である揚水発電所を取り上げよう。

揚水発電は、簡単に言えば、山の上と下に貯水池を造り、電力が余る夜間に下から上の貯水池に
水をくみ上げ、需要の高い昼にその水を落として発電するもので、蓄電池のような役割を果たす。

原発は出力調整ができないので、夜間、とくに深夜は電力が大量に余って困ってしまう。
仕方がないので、揚水発電所に揚水させて無理やり電力を消費させるわけだ。

しかし効率は極めて悪い。原発の熱効率は約30％、山中にある揚水発電所への送電で約5％のロス、
揚水発電の効率は50％ぐらい、トータルの効率はたったの15％程度だ。
原発で発生させた熱エネルギーの大半を捨てていることになる。

火力や水力発電は出力調整ができるので揚水発電は不要であり、原発を稼動するからこそ、
効率の非常に悪い揚水発電所が必要になるのだ。

揚水発電所は原発に不可欠な「付属施設」であり、本来ならその建設費や保守費用も
原発の発電コストに加算されるべきものである。
これを考えても、他の発電方式に比べ、原発が最もコストが高いことは明らかである。

それでも総括（総カツアゲ）原価方式で、コストはすべて電力料金に上乗せできるから、
電力会社は涼しい顔である。揚水発電所の建設にいくらかかろうがおかまいなしだ。

こんな無駄の塊である揚水発電所が全国に何と40以上ある。

「日本の揚水発電所一覧」　(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8F%9A%E6%B0%B4%E7%99%BA%E9%9B%BB#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E3.81.AE.E6.8F.9A.E6.B0.B4.E7.99.BA.E9.9B.BB.E6.89.80.E4.B8.80.E8.A6.A7

揚水発電所を建設するには、山を切り開き谷を水没させなければならず、自然破壊も無視できない。
普通の水力発電の自然破壊を笑えたものではない。
原発の抱える環境問題は、放射能汚染や温排水だけではないのだ。

経産省の発表によると、揚水発電の利用率は現在たったの3％だという。
何千億円もかけて建設した発電所がほとんど遊んでいるのである。
全原発が停止しているのだから低迷するのは当然だ。

「揚水発電利用率わずか３％　経産省『再生エネ蓄電に活用を』」　（東京新聞　2014/11/1）
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014110101001649.html

(引用ここから）
標高が高い場所に水をくみ上げることで余った電気を実質的にためることができる「揚水発電所」の設備利用率は昨年度、全国で３％にとどまり、太陽光 発電などの再生可能エネルギーが余ったときに蓄電する受け皿としてはほとんど活用されていないことが、経済産業省の集計で１日、分かった。
　九州電力など電力５社は再生エネの供給が増え過ぎて需給バランスが崩れる恐れがあるなどとして、新規受け入れを中断している。経産省は揚水発電を最大限活用すれば、再生エネの受け入れ可能量が増えるとみており、５社に試算の提出を求める
（引用ここまで）

再生エネ蓄電に活用をと言っているが、無理・無駄がある。

そもそも太陽光発電は夜間に発電しないから、原発のように電力過剰にはならない。
また、これからは家庭やビル向けの蓄電設備が普及するだろう。
余った電力で水を温め給湯に使うこともできる。

何も、はるばる山奥の、しかも効率の悪い揚水発電所に電力を送って蓄電する必要は全くない。
送電ロスだけでも往復で2倍になるのだ。

原発を廃止すれば、その付属施設の揚水発電所は無用の長物になる。
揚水をしない普通の水力発電所として利用できるものは残し、残りは廃止・解体して自然環境の復元を
進めるべきだろう。

(関連リンク)

「電力を捨てる『発電所』　揚水式発電　〜〜「ベストミックス」というけれど〜〜 」　
（よくわかる原子力　原子力教育を考える会）
http://www.nuketext.org/mondaiten_yousui.html

「原発に超高圧送電は不可欠 -- 送電線から発生する電磁波（低周波磁界）の危険性」
（拙稿　2014/9/4）
http://www.asyura2.com/14/genpatu40/msg/199.html
　

コメント
01. 2014年11月03日 08:17:43 : FudoDKSbtA 原発や揚水発電所をつくって いったい日本という国は何十兆円の無駄をしてきたのだろうかね？ アメリカにも数十兆円の貢物をして、 ツケは国民が、低所得の国民が、支払わせれてきたわけだ。 それでも、自民党に投票するのだから 自業自得なのかな？
02. 茶色のうさぎ 2014年11月03日 10:47:40 : qtmOTsgWNIsK2 : XXpGZLxyog ほんとうに、あほらしい、構造だと思います。 日本は、アメリカの、２倍以上、３，４倍の電気料金をはらってるんだよね。！ その、差額、が原発産業や、原発の、交付金、など、となって流通していると思います。 役人の給料や御用学者までも・・・ 地方の自治体も交付金がないと生活できない状況でしょ、よって原発は永遠に必要だって。！ 佐藤栄佐久元知事の、原発は麻薬だー止められない、いずれは破滅しちゃう。！の発言が浮かびます。！ 原発のために、無理・無駄が多すぎると思います。 [スレ主【魑魅魍魎男】による初期非表示理由]：アラシかも(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)
03. 2014年11月03日 12:46:04 : gU8I7oAGHM 茶色いうさぎサイコー！ 知る大切さは最低 [スレ主【魑魅魍魎男】による初期非表示理由]：アラシかも(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)
04. 2014年11月03日 15:18:18 : iVh9NTeqT2 茶色いうさぎのダブルスタンダードサイコー！ わざわざ知る大切ささんを貶し正体をあらわした工作員さん最高！
05. 2014年11月03日 20:29:28 : L9RMHfJJFg 小出より利口な魑魅魍魎 小出もこれぐらいのことを言ったら批判されないのに。 初心者向けのアルファベットを繰り返すだけの小出。 [スレ主【魑魅魍魎男】による初期非表示理由]：アラシかも(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)
06. 2014年11月03日 23:09:54 : U67HKPYJ8I 02　03　05 お前らのコメントはつまらん。
07. 2014年11月04日 11:06:42 : d8ne9eM75c 　多摩散人です。 　外国には、揚水発電所ってのはないんでしょうかね。どうやって電気を安定供給しているんでしょうね。 [スレ主【魑魅魍魎男】による初期非表示理由]：アラシかも(アラシや工作員コメントはスレ主が処理可能)
08. 2014年11月04日 11:26:00 : VeKptMS0wc >>01 ＞ツケは国民が、低所得の国民が、支払わせれてきたわけだ。 今また日銀の量的緩和（お札を刷りまくる）で国民の貯金を目減りさせ、給料を 減らしている。年金資金まで株に投入しようとしている。最終的に儲けるのは 外資のファンドだといわれている。どこまで非道な政府なのだろう。これに怒ら ない国民もなんなのだろう。
09. 2014年11月04日 11:31:12 : 8UN0JCmZSA -------再生エネ蓄電に活用をと言っているが、無理・無駄がある。 あらたに作るなら無理・無駄はそのとおり。しかし、現にあるものを活用するのなら話は 違う。今再エネ買取の停止が問題となっている。そのとき将来の話（蓄電設備の普及）は 説得力に欠ける。
10. 2014年11月04日 15:58:20 : aiMZAOJQqY >>09 太陽光発電の余剰電力を揚水発電に使うほうがずっと説得力に欠ける。 余ったら、水を温めて給湯や暖房に使えばよい。 山奥まで送電して揚水するなど愚の骨頂だ。

11. 黒木正幸 2014年11月04日 18:45:15 : nc51PFRM9HY1M : Cm2qizA4D6 >>09、>>10、さんの議論に 09さんに一票、します。 10さん、冷静に。 現在、太陽光発電の主力となっている大規模太陽光発電設備は、発電コストが高過ぎて、固定価格買取制度を使って、全量を電力会社が買い上げる、で成り立っています。 10さん、の主張のように、発電側が「余ったら、水を温めて給湯や暖房に使えばよい」で自分で使っては売上にならないのです。 電力会社は、昼間に買い取った太陽光の電力の半分以上を、夕方から夜に利用者に消費してもらうことになり、発電から消費まで数時間〜10時間ほど蓄電する必要があるのです。 09さんは、原発用に作った施設でも、既にある施設は、有効活用した方が妥当だと、意見を述べたものだと思います。 10さん、の主張を採用して、大規模太陽光発電設備の場所で、人里離れた場所で、水を温めて給湯や暖房に使う需要が、その場所に有るとは思えません。
12. 2014年11月04日 19:37:42 : aiMZAOJQqY >>11 ああ、それは業者の話ね。 私は、個人用のソーラーの話をしている。 そもそも、昼間に太陽光で発電した余剰電力を夜に使うという考えがおかしい。 需要ピークも太陽光発電のピークも正午前後なのだから、全部使えばよい。 その分、昼間は火力、水力を抑えて、夜に出力を増やせばいいだけの話。 もちろん青天井で太陽光による電力を買い取れば、とうぜんダブついて困るから 規制は必要だろう。 揚水発電は効率が悪すぎて話にならない。 原発が止まると何千億もかけて建設した揚水発電所が不要になる。 それでは困るので、何とか再生エネルギーに使わせようとしているだけだ。 太陽光の発電コストが高過ぎるというのも大ウソ。 何十万年も使用済み燃料の管理が必要な原発に比べればはるかに安い。 これからは、発送電が分離され、一極集中方式の発電から、地域分散型の発電になる。 電力の地産地消だ。 蓄電のために山奥の揚水発電所を使うという考え方自体が完全に古く、分散供給と 相容れないものだ。 まあ、一極集中型にしがみつかないと今の電力会社は生き残れないから必死なのだろう。
13. 2014年11月04日 22:20:07 : dabnwDk7Ao ダム管理が、国交省、農水省、水資源機構、電力会社系と別々に行われているために、同じ河川にあるダムでも、縄張りちがいで、揚水発電ができないケースが相当あるように思う。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%80%E3%83%A0 切羽詰まれば、様々な工夫が生まれると思う。 ないと言うことは、切羽詰まってもいないし、要するに惰性でやっているだけと言うことを証明している。 現在ある揚水発電所の残り９７％をフル稼働した場合、再生エネルギー発電は、どの位まで受け入れ可能なのだろうか？ ３割を再生エネルギーでまかなっているドイツでは、そのために停電などの不都合なことは起きていない。 日本では、何故、できないのか？
14. 2014年11月05日 02:12:43 : aiMZAOJQqY >>13 >現在ある揚水発電所の残り９７％をフル稼働した場合 原発を再稼動しなければ揚水発電所は不要だから、無意味な仮定。 他の発電方式の電力を蓄電するには効率が悪すぎて、電力会社は大損するから、 使わない。 原発を使い、総カツアゲ方式でコストをすべて電力料金に上乗せできるからこそ、 揚水発電は成立する。 川があって上の貯水池に水が流れ込んでいれば、普通の水力発電所として使えるが、 一部の揚水発電所だけだろう。
15. 2014年11月05日 10:52:28 : gAwFceJCh2 >>12 ＞青天井で太陽光による電力を買い取れば、とうぜんダブついて困るから ＞規制は必要だろう。 今現在重大な問題になっているのはこの規制の問題でしょう。再エネ買取制度では電力会社に 買取を義務付けなくては駄目です。九電がいいだしたら、他のいくつかの電力会社も呼応して 言い出した。これは原発再稼働に対応した動きです。 しかも現状ドイツなどの足元にも及ばない再エネ比率なのにです。他電力との連係もやって いないし、現にある揚水発電の活用もしないで、太陽光発電を目指す発電業者に損失をあたえ ようとしているのです。

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