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特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 後篇(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/14/genpatu41/msg/641.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 1 月 16 日 22:53:05: igsppGRN/E9PQ
 

特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【後篇】
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41767
2015年01月15日 現代ビジネス



吉田所長が生前に遺したとされる「謎の言葉」をめぐるミステリー(第3章)、知られざる放射能大量放出の謎(第4章)など、本書でしか読めないスクープ情報が満載されている。


福島第一原発事故発生から4年が経とうとしているが、事故原因の究明は遅々として進まず、いまだに多くの謎に包まれている。原子力発電所という巨大プラントの同時多発事故はきわめて専門性が高く、多くのメディアが事故の検証報道に及び腰だ。その中で、唯一、科学技術的な側面から事故を粘り強く検証してきたのが、NHKスペシャル『メルトダウン』取材班である。『メルトダウン』シリーズでは、これまで5本の番組が放映され、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞を受賞するなど、内外で高く評価されてきた。2015年1月16日、約3年半にわたる同取材班の調査報道をまとめた『福島第一原発事故 7つの謎』が講談社現代新書より刊行される。事故対応にあたった東電社員や原子力工学の研究者などのべ500人を取材し、極秘扱いの東電内部資料を駆使した独自取材はまさに圧巻だ。同書の刊行を記念して、「第1章 1号機の冷却機能喪失は、なぜ見逃されたのか?」の後篇を掲載する。


第1章 1号機の冷却機能喪失は、なぜ見逃されたのか?」の前編
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41681


■点灯した緑のランプ


すべての電源を失ってから、1時間半あまりが経った午後5時19分。1、2号機の中央制御室では、当直長が、ICが動いているかどうかを確認するため、2人の運転員を現場に向かわせた。ブタの鼻から蒸気が出ているという報告を受けても、中央制御室はICが動いているかどうか確信を持てていなかったからだ。


水位計の値が刻々と下がって、再び見えなくなってしまったことも大きかった。この後、中央制御室は、運転員を派遣し、ICが動いているかどうかを確かめる作業を何度も試みていく。


ICは、原子炉建屋の4階にA系・B系、2台が並んでいる。


「イソコンの現場確認を実施しろ。機器の損傷ないか、現場で目視確認。現場暗いので十分注意!」


「了解」


当直長の指示に2人の運転員が調査に向かう。ICの作動状況を確かめ、冷却水が入ったタンクの脇についている水位計を調べ、冷却水が十分に確保されているかを確認することにしたのだ。2人の運転員は、水位計の位置などを図面で入念に確かめたうえで、暗闇の廊下を、懐中電灯を頼りに原子炉建屋へと歩いていった。


原子炉建屋の入り口は二重扉になっている。原発に異常があったとき、放射性物質が建屋から漏れ出すのを防ぐためだ。



錯綜した情報で混乱を極めた免震棟 写真:東京電力


午後5時50分。その二重扉を開けようとしたところだった。持っていたガイガーカウンターの針が振り切れた。


2人は顔を見合わせた。「なぜ、この場所で?」


二重扉は放射線もかなり防ぐ。通常、扉の外でこうした線量が測定されることはない。しかも、2人は、このときはまだ防護服や防護マスクを装着していなかった。さらに線量計もなく、どの程度の放射線量なのか、正確な数値はわからなかった。2人は、確認作業を諦め、中央制御室に戻るしかなかった。



11 日夕方、一部の直流電源が復活し、ICの戻り配管隔離弁(MO-3A)、供給配管隔離弁(MO-2A)の表示ランプが点灯していることを中央制御室の運転員が発見した。点灯状況を確認したところ、弁が閉まっていることを意味する緑色表示だった 写真:NHKスペシャル『メルトダウンV 原子炉冷却≠フ死角』の再現ドラマより


午後6時18分。中央制御室の制御盤の前に運転員たちが次々と集まってきた。1号機のICの弁の状態を示すランプが、うっすらと点灯しているのに気がついたのだ。


午後4時40分台に続いて津波で海水をかぶったバッテリーの一部が何らかの原因で復活し、一部の計器やランプが再び見えたのだ。


ICのランプは緑に光っていた。緑は、弁が閉じていることを示していた。ICの配管の途中の弁が閉じているということは、蒸気は流れを止めていて、ICは動いていないことを意味した。


この時点で、中央制御室の運転員たちは、初めて、ICが止まっていた可能性があることに気がついたという。当直長や運転員は、バッテリーの電源が失われたとき、ICの弁が自動的に閉まる構造になっていたことに思い至ったのだ。取材に対して運転員の一人は「ICは、バッテリーがなくなると、電気信号が出て止まることは知っていた。そのときの雰囲気は、ICは止まったなという感覚だった」と話している。


吉田が証言していたように、1、2号機の運転員は、ICの仕組みに詳しく、フェールクローズの仕組みを知っていたのである。当直長は、ICを動かそうと、担当の運転員に制御盤のレバーで、弁を開くよう指示を出した。



福島第一原発1号機の中央制御室。事故当時は照明や操作盤の電光表示も全て消えた状態だった 写真:東京電力


「イソコン、起動しよう。2A弁、3A弁とも開!」


当直長の指示が担当者によって繰り返され、運転員がレバーを操作する。


「開にしました。イソコン起動確認」


「了解。時間18時18分!」


ランプは緑から赤に変わる。1号機の原子炉を冷却するICが、全電源喪失した午後3時37分から約2時間半経ってようやく起動した。


当直長は、免震棟へのホットラインで、ICの弁を開いたことを報告した。さらに、別の運転員に、外に出て1号機の原子炉建屋の「ブタの鼻」から蒸気が発生するか確認するよう命じた。中央制御室の非常扉から外に出ると、1号機の原子炉建屋越しに排気口は直接見えないが、蒸気が勢いよく出れば、見える位置にあった。


建屋の外に見回りにいった運転員が急いで帰ってくる。その報告は、最初は勢いよく出ていた蒸気が、ほどなく「もくもく」という感じになって見えなくなったというものだった。


当直長は、ICのタンクの冷却水が減り、蒸気の発生が少なくなったと考えた。タンクの中の冷却水がなくなると、空だきとなるため、ICの配管が破損し、高濃度の放射性物質が外にもれる恐れもあるのではないか。中央制御室は重大な決断に迫られる。


「イソコン運転続けますか?」


「いったん3A弁閉にしよう」


午後6時25分。当直長は、ICの弁を閉じるよう指示をした。制御盤のランプは赤から緑に変わった。ICは、わずか7分後、再び停止した。1号機で唯一動かすことができた冷却装置ICは、再び動きを止めた。


後の取材に対して、運転員の一人は、「蒸気が出ていないため、空だきになっているのではないかと疑った。ICが壊れると、原子炉の中の放射性物質が外に直接放出される。そうするともう誰も近寄れない。その時点では原子炉はまだ大丈夫だと思っていたので、間違った判断だとは思わない」と当時を振り返っている。


中央制御室と免震棟の断絶


このとき、中央制御室と免震棟は、大切な情報共有の機会を逸してしまう。午後6時25分に、再びICの弁を閉じたことが、免震棟の円卓には伝わっていなかったのだ。


吉田は、「こういう操作をしているという情報が円卓の中には入ってきていない」と証言している。


「1、2号中操(著者註、中央制御室のこと)と(中略)円卓の情報伝達が極めて悪かったんですね。(中略)どう動いているかという話が、その時点では、ほとんど入ってこなかったというのが実態なんです。私は、はっきり言って細かいところを聞いていないです」と打ち明けている。そのうえで「猛烈に反省している」と語り、「その時点でICは大丈夫なのかということを何回も私が確認すべきだった」と、現場の情報を自ら積極的に取りに行くべきだったと繰り返し述べている。



NHKメルトダウン取材班が最初に執筆した『メルトダウン 連鎖の真相』。事故を時系列に忠実にノンフィクションとして書き下ろしたもので、作家の立花隆氏が「圧倒的に情報量が多い。内容的にも最良」(2013年7月11日号)と絶賛した。写真や図版も多数収録されており、事故の全体像がわかると専門家からも高く評価されている


なぜ、中央制御室と免震棟の間で、ここまで情報共有が上手くいかなかったのか。28時間に及ぶ聴取の最終盤で、吉田は、自問自答の末に至った自らの推論を語っている。


「1Fの当直長だとか、発電の連中は、何とか自分でやろうという人が多いんですよ。それが反面、どんなになっているかという情報が伝わってこない。責任感が強過ぎるものだから、自分でやろうとし過ぎてしまっているのかなと、私はその後でずっと調査結果の話を聞きながら考えて、そんなのがあるのかなという気もします」


そのうえで「現場の情報も、結局、非常に限定された形でしか伝わってこないんで、どれぐらい大変なのか(中略)私は本店に対しても、こいつら、ぼけかと思っていたんですが、多分、当直長が、サイトの所長以下、何をやっているんだという気持ちになったと思うんです」と語っている。


福島第一原発の事故には、2つの現場があった。事故対応の指揮をとる免震棟と、事故対応の最前線で実際の操作にあたる中央制御室。中央制御室の運転員たちの大半は、地元福島の工業高校などを卒業し、原発の運転一筋に来た、たたき上げの職人集団である。一方、吉田をはじめとする免震棟の幹部たちの多くは、大学や大学院で原子力工学などを学び、入社後は本店と現場を行き来するキャリア組である。キャリア組の多くは、原発の運転経験がない。


原発の重大事故がひとたび起きたら、対応にあたる現場が2つに分断されてしまう。これは、原発に背負わされた宿命とも言える。双方が綿密に情報を共有しないと、事故進展を止めることはできない。中央制御室と免震棟。2つの現場が互いにどう情報を共有し補い合うのか。再発防止のために答えを出さなければならない重い問いである。


■謎の放射線上昇


午後9時台。免震棟が1号機のICの停止に気がつく最後のチャンスがやってくる。


午後9時50分すぎのことだった。原子炉水位の確認のため、運転員が原子炉建屋に入ろうと、二重扉の前に来たところ、線量計が10秒で0・8ミリシーベルトまで上昇し、入室を諦めたのだ。報告を受けて、吉田は、すぐに原子炉建屋の入室を禁止する。この時、吉田は、「何でこんなに線量が上がるのと、(中略)非常に高いというデータを聞いて、おかしいと」と証言している。しかし、同じ頃、免震棟には、疑心暗鬼になりかけた吉田を安心させるかのように、新たな情報が入ってくる。中央制御室から、1号機の原子炉水位計が復活したという報告だった。計測したところ原子炉水位は「TAF+200ミリ」だったというのだ。水位は、燃料の先端から20センチ上のところにあることを示していた。誰もが、燃料はまだ冷やされていると思った。1号機の水位は、午後9時30分に「TAF+450ミリ」、午後10時に「TAF+550ミリ」と報告された。1号機の水位計は、燃料の先端から55センチ上部まで水があることを示していたのである。


吉田は、この報告を聞いて「ほっとしました」と語っている。「水位が確保されているかどうかというのが、一番大きいポイントですから、炉心が溶ける、溶けない、水位がある値を縦よりも上にいってくれているということは、要するに安心材料なんです」と説明している。


しかし、現実は、まったく違っていた。午後9時台。実際の1号機の原子炉の中はどうなっていたのだろうか。その後の検証で、ICが止まり冷却機能を失った原子炉では、専門家たちの予想を超えた猛スピードで水が失われていたことがわかっている。


取材班が専門家と「サンプソン(SAMPSON)」と呼ばれる計算プログラムで解析した原子炉水位のシミュレーションでは、ICが止まってから1時間あまりが経った午後4時42分の時点で、すでに水位は燃料の先端まで減っていたと推定されている。そこから減少はさらに加速、午後8時52分には、燃料の底部に達すると推測されている。


午後9時台には、燃料は水につかっているどころか、すでにむき出しの状態になっていたと見られている。


誰も見ることのできない原子炉内部では、核が放つ膨大なエネルギーによって、急激なスピードで水が蒸発し、1号機は、メルトダウンへと突き進んでいた。原子炉建屋の線量上昇は、そのために起きていたのだ。


■水位計の罠


取材班が専門家と行った解析では、午後9時台には、燃料がむき出しになるほど、原子炉の中の水は減っていた。



原子炉水位計の構造 原発の水位計は、直接水位を測るのではなく、原子炉とつながっている金属製の容器(基準面器)を使って水位を計測する。容器の中には原子炉の水位を測るのに必要な一定量の水が常に入っているはずだった図:東京電力報告書


それなのに、なぜ水位計は誤った数値を示したのか。理由は水位計の構造にある。原発の水位計は、直接水位を測るのではなく、原子炉と直接つながっている金属製の容器を使って水位を計測する。容器の中には原子炉の水位を測るのに必要な一定量の水が常に入っている。この水が水位計の「基準」となる。実は、1号機では原子炉が空だきになった結果、容器が高温になり、「基準」となる水が蒸発してしまったのだ。このため、水位が正しく測れなくなっていたのである。さらに「基準」の水が減ると、原子炉の水は変化していないにもかかわらず、水位を示す表示は上昇していく。


1号機の原子炉水位計は誤っていた。しかし、吉田以下、免震棟の幹部は、この時点で、そのことに気がついていなかった。ICが動き続けていると考えていたからだ。ICが作動していれば、水位は一定程度維持される。水がなくなって原子炉が高温になって、水位計の「基準面器」内の水が蒸発している可能性に、とても考えがいたらなかったのである。


一方、中央制御室の運転員たちは、午後6時台の緑のランプの点灯や一連の操作を踏まえて、水位計の値を疑い始めていた。ICは機能していないと認識していたため、水を入れていない原子炉の水位計が上昇し続けたことを疑問視し始めたのである。


このころ、運転員がホワイトボードに書き記した記録には、 「水位計、あてにならない」という文字が残っている。しかし、このほかに、原子炉の状態を示す客観的なデータはなかった。水位計の値を頼りにするほかなかったのである。


「今にして思うと……」吉田は、自嘲気味にこう語っている。「この水位計をある程度信用していたのが間違いで」「そこを信用し過ぎていたというところについては、大反省です」。こうして最後のチャンスも失われてしまったのだ。



柏崎刈羽原子力発電所にある水位計。福島第一原発でもこれと同じタイプの水位計があった 写真:NHKスペシャル『メルトダウンT ~福島第一原発 あのとき何が~』


■格納容器圧力異常上昇


全電源喪失から8時間あまりたった午後11時50分。


バッテリーによる計器の復旧が進み、これまで確認できなかった1号機の格納容器の圧力が見えた時だった。数値を見た運転員が、驚いて声をあげた。


「ドライウェル圧力確認。600キロパスカル!」


600キロパスカル。6気圧。通常の格納容器圧力の6倍もの値だった。設計段階で想定している最高圧力の5・28気圧を上回る異常上昇だった。1号機の異常はすぐに免震棟に伝えられた。この時になって初めて、吉田は、ICが作動していないことに気がついた。格納容器圧力の異常上昇。それは高温高圧になった原子炉から大量の放射性物質を含んだ水蒸気が格納容器に抜け出ていることを意味する。すると原子炉は冷却されていない。すなわちICは動いていない。原子炉の中で核が放つ膨大なエネルギーが引き起こしている現実に、ようやく人間の考えが追いついた瞬間だった。この時のことを、吉田は、「設計気圧超えているじゃないかと、どうするんだと、ベントしかないだろうというのが、だから、指示としては、ここからなんです」と証言し、この段階に至って、初めて格納容器の圧力を外部に放出するベントを指示したことを明らかにしている。


取材班が専門家と行った原子炉のシミュレーションでは、午後11時46分には、燃料棒を覆うジルコニウムという金属が溶け始め、メルトダウンが始まり、翌12日午前1時6分には、燃料そのものも溶け始めたと推定されている。格納容器圧力の異常上昇が判明した時には、1号機の原子炉は、急激なスピードでメルトダウンに突き進んでいるところだった。


吉田らがベントの準備に着手したのは12日午前0時前後。ICが停止してからすでに8時間が経過していた。初動の遅れは致命的だった。



「サ ンプソン(SAMPSON)」を用いたシミュレーションによれば、3月12日午前1時6分にはウランペレットの溶融が始まった。一方、免震棟が懸念してい た2号機はこの時点では冷却ができていた CG:NHKスペシャル『メルトダウンT ~福島第一原発 あのとき何が~』


■終わりなき検証


事故から1年8ヵ月が経った2012年11月。東京電力内部の「原子力改革タスクフォース」が、1号機の事故対応についての技術面からの検証を行っていた。議論は、事故の初期段階で、1号機の原子炉を冷却するICについて、なぜ最優先で対応がとれなかったかにしていった。メンバーが口々に語ったのは、ICが動いていないことに気づく機会を逸していた問題だった。とりわけ焦点になったのは、1号機の「ブタの鼻」からもやもやとした蒸気が出ているという情報の取り扱いだった。メンバーの一人は、発電班の社員が、もやもやとした蒸気を見たが、ICが動いているかどうか、明確な情報伝達になっていなかったと指摘している。


このとき、福島第一原発では、ICが動いて「ブタの鼻」から蒸気が噴出しているところを実際に見た経験のある者は誰もいなかった。当然、見にいった社員も、もやもやという蒸気が、どのようなICの状態を意味しているか、詰め切れないまま、報告していたという指摘である。



東 京電力では事故報告書作成後も、当時のオペレーションに問題がなかったか、原子力改革タスクフォースで検証作業が行われた。原子力改革タスクフォースで は、東京電力の原子力部門の幹部が「自分たちには基本的な技術力が不足していた」と総括した 写真:NHKスペシャル『メルトダウンV 原子炉冷却≠フ死角』


メンバーの松本純一は、議論のなかで、もやもやとした蒸気に加えて、最初に気がつくチャンスだった11日午後4時40分台に1号機の水位が見えたことも踏まえて、次のように問題提起をしている。


「もやもやとした蒸気の話とか水位の話が出てくるが、なぜ、免震棟は情報をとりにいかなかったのか。あるいは、水位があることがわかったので、機能しているはずだと思ったのかもしれない。災害心理として、いい方向に考えてしまったかもしれない。ただ、できなかったのは、1号機から3号機が並行して動いていることもある」


議論では、複数のメンバーが、ICが動いていなければ、通常2時間で原子炉水位は燃料の先端部に達し、さらに2時間後には、燃料がむき出しになる可能性があると指摘している。事故当時、免震棟で対応にあたったメンバーの一人が、次のような発言をした。


「あと2時間で1号機の炉心が死んでしまうと認識していたら、すべてをおいて、消防車や消防用のディーゼルポンプなど、ありったけを投入してやっただろう。そうしなかったことが問われている。選択と集中をしなかったことが、厳しい目で見ると言われてしまう」


事故対応にあたっていた当事者の一人の口をついて出たこの言葉は、初動対応における、東京電力の率直な反省の弁と言えるのではないだろうか。


この議論をするなかでメンバーの一人が、驚いたように「もやもやとした蒸気というのは、動いているという意味ではないのか」と口にした。実は、事故から1年8ヵ月が経過した段階でも、東京電力のなかでは、もやもやとした蒸気が、ICが止まっていることを意味するという認識は共有されていなかったのである。



NHK科学文化部記者、番組プロデューサー、ディレクターら6人が執筆を分担した。「福島第一原発事故」が極めて深刻な状態だったことがどの章を読んでもよく理解できる


吉田が証言していたようにICの仕組みや挙動に対する知識は、十分でなかったのが実態である。しかし、40年間一度も動かしていなければ、実際に動かした時のICの蒸気の状態を知る人間がいなくなるのが当然ではないだろうか。ICの挙動を知る「技術の伝承」と言うべき機会が欠けていたのではないだろうか。これに対して、アメリカでは、数年に一度、ICを動かす検査が行われていた。


なぜ、福島第一原発では、ICを動かす訓練が行われていなかったのか。取材に対し、タスクフォースでこの問題について議論を重ねていた松本は、次のような見解を示している。


本来、ICから出る蒸気に放射性物質は含まれていないが、原発内部のどこかの配管に微細な穴があくと、微量の放射性物質が混じる恐れがある。このことが、外部に蒸気を出すことを慎重にさせた。さらにICを動かす時に出る轟音が、周辺住民を不安にさせるのではないか。こうした理由が重なって、ICを動かす訓練は行われてこなかった。


定期的にICを動かしてきたナイン・マイル・ポイント原発と40年間一度も動かしていなかった福島第一原発。


そこには、原発事故に向き合う日米の姿勢の違いが垣間見える。リスクに過度に慎重になる日本は、結果的に「技術の伝承」の機会を失ったのではないだろうか。


ICの機能停止を見過ごしていったことの深層に潜む問題は、今後、形を変えて日本の原発の弱点として現れてくるかもしれない。それを未然に防ぐためには、吉田調書のような記録を丁寧に読み解き、事故対応にあたった当事者や関係者の声に耳を傾け、教訓を導き出していくしかない。


NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
近堂靖洋 1963年北海道生まれ NHK科学文化部専任部長 福島第一原発など国内の原発事故のほか、オウム真理教事件や北朝鮮拉致事件などを取材。
藤川正浩 1969年神奈川県生まれ NHK科学環境番組部チーフプロデューサー 原発事故のほか、気候変動など環境問題や自然番組などを制作。
鈴木章雄 1977年東京都生まれ NHK大型企画開発センターディレクター メルトダウンシリーズを中心にNHKスペシャルやクローズアップ現代を制作。
花田英尋 1979年青森県生まれ NHK科学文化部記者 福島第一原発の事故や廃炉、全国の原発の再稼働に向けた動きや課題などを取材。
岡本賢一郎 1978年香川県生まれ NHK科学文化部記者 震災当日から原発事故を取材するほか、原子力政策やノーベル賞など科学技術全般を担当。
沓掛愼也 1978年長野県生まれ NHK科学文化部記者 原子力安全・保安院、原子力規制委員会の担当を経て、現在東京電力の取材を担当。



 

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コメント
 
01. 2015年1月16日 23:16:19 : 4QMaceiCOY

 愛が 当時から言ってるように 二号機は水が沢山残っていたため

 放射能の拡散は 1号機よりも 格段に大きかった

 水素爆発よりも 水蒸気爆発の方が 汚いのだ!!
 


02. 2015年1月17日 00:06:07 : MJEP39qT72
水がなくなったら破局して、地球全体にダメージを負わせるようなポンコツ機械を作るんじゃねーよ。つーか、ただの殺人機械だけどな。核兵器の核燃料製造の為に生まれたんだから。湯沸かし発電は後付けの誤魔化しの、核兵器の双子。

03. 2015年1月17日 05:13:46 : jtzjZUSaRA


  口を開けると 死ぬぞ

  口を開けなくても 死んでしまった

  死人に口無し、


04. 2015年1月17日 05:22:57 : jtzjZUSaRA

               水素爆発で うさん臭く 感じる事

                水素燃料 何処で作る 

                     原発か

        こんな事を穢多が国策で考えているのなら 環境に一番汚いエネルギー

             スチーブンソンの水蒸気爆発の方がましかも



05. 2015年1月17日 13:35:21 : 2voDZiyDXY
水素爆発ならかまわないという異常な思考

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