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正社員の間で進む「働き方格差」とは(プレジデント) 
http://www.asyura2.com/14/hasan85/msg/230.html
投稿者 かさっこ地蔵 日時 2014 年 1 月 21 日 17:32:13: AtMSjtXKW4rJY
 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140121-00011743-president-bus_all
プレジデント 1月21日(火)16時15分配信


 2012年終わりから13年前半にかけて、いわゆるアベノミクスの高揚感のなかで、企業内の人材管理に関係する幾つかの議論が盛んに行われた。代表的なのが「解雇規制の緩和」といわゆる「限定正社員」。これを書いている直近になって、労働時間規制の緩和に関する議論が加わってきた。

 解雇規制緩和は「正社員」の雇用保障緩和の議論であり、限定正社員とは、勤務地や職種を限定した雇用契約を導入する動きである。労働時間規制に関しては、かなり以前に話題になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」(一定年収以上のホワイトカラー労働者について、労働基準法の労働時間規制を緩和すること)を、経済特区方式を用いて一部の業種や地域で実行しようとする案である。議論されている内容に共通するのは、すべてこれらがいわゆる「正社員」の働き方に関する改革である点である。

 あまり知られていないかもしれないが、労働法には、「正社員」という言葉の明確な定義はない。私も前に、ある政府審議会のなかで、「正社員」という言葉は、何を意味するのかを問われて、法律的な定義はなく、企業の人事管理のなかで使われる従業員の雇用区分だと答えた覚えがある。つまり、企業の人事管理上の用語なのである。または、統計調査上、就業形態の状況を把握するための「呼称」だと主張する研究者もいる。このなかで明確に規定されている唯一の法的条件は、雇用契約期間に関してだけであり、有期雇用が期間の定めある雇用、無期雇用が期間の限定のない雇用である。もちろん、多くの企業で、定年はやってくるわけだから、人事管理上は、定年までの長期有期雇用という解釈もできる。

 したがって、「正社員」をどう管理するかは、個別企業に任されているところが大きい。つまり、正社員の管理の仕方には多様性がありえるのである。例えば、多くの優良企業では、正社員に関しての雇用維持努力は、法律遵守だからやっているのではなく、(少なくともこれまでは)それが企業の合理的な行動だったから継続されてきたのである。また、多くの経営者がそうした行動が正しいと信じている。強い雇用保障に伴う「正社員」管理(賞与の支給、定期昇給、手厚い福利厚生など)なども、多くの企業で実現されており、またそれが規範化している。

 このような企業に働く正社員が通常の「正社員」イメージに近い。守られた存在としての正社員である。こうした従業員については、たとえ現在盛んに議論されている解雇規制の緩和が実現したとしても、大きな影響をもつとは思えない。正社員の強い雇用保障とそれに伴う人事管理のあり方は、その正しさが一種の規範として維持されているために、これを変えるには大きな努力が必要だからである。

■なぜ優良企業でもコア人材としての認識がもてないか

 逆に、多くの企業が、法律に規制されて、無理やり今までのやり方をとってきたというのであれば、法律を変えれば、一気に変化は起こるだろう。解雇規制緩和論者が求めている雇用の流動化も起こるだろう。だが、実態はそうではないのである。

 また、正社員の無定義とそれにともなう雇用管理の多様性には、対極もある。「周辺的正社員」と呼ばれる正社員の存在である。「周辺的正社員」にも明確な定義があるわけではないのだが、いろいろな議論を総合すると、一応、雇用期間の定めのない正社員ではあるのだが、昇給や賞与などがなく、処遇全般も非正規雇用とほぼ同じというグループ、ということらしい。

 誤解を恐れずにまとめるとすれば、法律的に規定された雇用保障以外の労働条件は、非正規社員とほぼ同じである正社員ということになる。「名ばかり正社員」と呼ばれることもある。

 こうした働き方をしている正社員にとって、雇用保障というのは、ある意味で恐ろしい労働条件なのである。多くの正社員が、安定という希望をともなう雇用契約を得られるのだから、かなり劣悪な労働条件でも受け入れてしまう。だが、極端に言えば、多少劣悪な環境でも、正社員になれるのであれば、という気持ちが起こってしまうのである。そのため、雇う企業が労働者を人として扱うつもりのない、いわゆる「ブラック企業」の場合、雇用保障はある意味では、劣悪な労働条件で人を使う一種の免罪符のようになってしまうのである。そして、肝心の雇用保障も、雇用主の意向で簡単に覆されることもある。さらに、雇用契約を打ち切るにあたっては、マスコミ報道などが正しいとすれば、「追い出し部屋」などと呼ばれる、問題のある方法がとられるのである。実際、周辺的正社員と呼ばれる人たちがどのぐらいの割合存在するのかについては、明確な定義のない対象なのでわからないが、一部には、25%前後という推定もある。ただ、いろいろな話を総合すると、増加傾向にあるようである。

 雇用における格差や分断というとき、現在は、その主な対象がいわゆる非正社員である。そして、その半面、正社員内部での、働き方の格差や分断に関する議論はあまり注目されない。また「正社員」という言葉を聞くと、企業のなかで1つの堅固なグループを形成しているような印象がある。でも、実際の正社員は前節の両極の間に存在するのだと考えられる。その意味で、正社員のなかでも区分が存在すると考えるのはそれほど無理なことではない。では、議論が主にいわゆる非正規労働力に集中するなかで、正社員はどの程度区分されているのだろうか。また、その状況に変化はあるのだろうか。

 私が関係した幾つかの研究によると、多くの企業で正規労働力に関する内部労働市場が幾つかに区分され、区分ごとに人材管理が行われている傾向が強くなりつつあることが明らかになっている。企業内の労働市場でも「分断」が進んでいる可能性があるのである。

 実態を見てみよう。図表1に示した結果は、首都大学東京の西村孝史准教授と私が、5年ほど前に行った調査の結果だが、正社員の雇用区分数を見ると、1区分のみが36.8%を占めるものの、他方で3区分以上に分けている企業も3割程度(16.8%+12.6%)存在する。正社員と非正社員の雇用区分の組み合わせでは、最も多いのは、「正社員1区分×非正社員2区分」だが、それでも13.7%と全体の2割にも満たない。逆に「正社員2区分×非正社員2区分」は10%を超える。

 さらに、図表2に見られるように正社員内部の区分の労働条件は、雇用期間の定めのない点では区分を通じて同一だが、その他の条件については、区分間で差が見られる。特に仕事の内容に違いがあり、さらに、賃金の決定基準や育成方法、配置転換の有無や異動の範囲の違いなども見られる。

 つまり、こうした結果からは1つの企業内で異なった仕事と異なったキャリアを担う正社員が存在することが確認できる。現在話題に上ることが多い、「限定正社員」という働き方(働かせ方)が、このころからすでに多くの企業で存在していたことが示唆される。

 また、独立行政法人労働政策研究研修機構の丁寧な聞き取り研究によると、一般職も含めた広義の限定正社員区分の導入は、業種でいうと金融・保険業に、職種でいうと事務業務、および現業業務に多く見られる。さらに、こうした動きは近年大きく進展し、進展の背景には、企業側に大きく2つの動機があるということがわかった。1つめは、正社員の要員不足に伴い、女性社員の活躍推進のための新たな限定つきキャリアパスの創設、2つめは、無限定正社員区分に属する正社員の異動範囲の限定により、人件費コストを抑え、適切な人件費を実現することである。

 さらに、日本経済研究センターにおいて、私どものグループが行った大企業11社を対象にした調査(回答従業員数、正社員11318名)によれば、一流企業のなかでも、正社員として会社に守られている程度に関する認識には違いがあることが明らかになっている。図表3のデータによれば、確かに、雇用および賃金についての安定はある程度守られているようだが、中長期的なキャリアの見通しや会社からのキャリアに関するアドバイス、さらに、何かあったときの会社からのサポートなどについては、50%前後の回答者が、そうした支援を会社から得られるという認識をもっていないようである。また、評価や処遇に関する不満や苦情を表明したり、経営に直接物申す機会については、そうしたことができる認識をもっている回答者はさらに少ない。

 この分布はある程度、会社ごとの違いも反映しているだろう。でも、これら11社の企業は、わが国の代表的な優良企業である。こうした企業でも、一定割合は、コア従業員として自らを認識していない可能性を示すのではないだろうか。日本企業では、これまでも雇用する従業員を、学歴や職種などによって呼び方の異なる複数の雇用区分にわけ、雇用区分ごとに、異なるキャリア管理や異なる処遇制度などを適用する仕組みが一般化していた。「限定正社員」という現象は、直近で議論されるようになるずっと前から、わが国の人事管理に存在していたのである。

 ここから推測できる可能性は、正社員といっても、もはや一枚岩ではないということだろう。多様な位置づけにある正社員がいるのである。法律に基づいて、雇用期間については、一定の保障が与えられているが、その他の面については、多様性のある人材群が現在「正社員」と呼ばれるグループなのである。そして企業によっては、一部または全部の正社員を“周辺的”に扱う企業もある。同じように期限の定めのない雇用契約を結ぶ「正社員」のなかでも、その他の雇用条件において違いのある異なった人材層が増えてきていると考えられる。優良企業でも、正社員の区分管理を増やし、違いを明確にしている可能性がある。

 正社員といっても、もう守られた存在ではないのである。

一橋大学大学院商学研究科教授 守島基博=文 平良 徹=図版作成


 

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