１月30日（ブルームバーグ）：ゲーム機世界最大手の任天堂 は30日、ゲーム専用機事業を「経営の中核」として維持しつつも、健康関連の新規事業に挑戦するほか、ゲームの面白さを伝えるスマートフォン（スマホ）向けアプリも年内に提供開始することを明らかにした。しかし、市場では株価が大幅安となった。

任天堂の岩田聡社長が30日の経営方針説明会で話した。同社株価はこの日、自社株買い戻しの報を受けて買い先行で始まったが、最終的には売られ前日比4.3％安の１万2325円で終了した。

同社は17日、据え置き型ゲーム機「Ｗｉｉ（ウィー）Ｕ」の年末商戦での販売不振を理由に今期（2014年３月期）の利益目標を大幅に引き下げた。スマホ向けゲームの影響で業界の構造が変化、さらに競合他社も新ゲーム機を投入する状況の中、経営方針説明会で来期に向け立て直し策を公表するとしていた。

スマホ向けアプリの詳細は明らかにされなかったが、スマホやタブレット端末を含むスマートデバイス向けにゲームを提供して直接ビジネス展開するアプローチではないとした。また、健康関連の「ＱＯＬ（生活の質）事業」について年内に計画の詳細をまとめ、16年３月期に開始する計画。

岩田社長はＵなどゲーム専用機をプラットフォームとする事業形態は「今後も経営の中核」になるとした上で、インターネットやスマートデバイスが生活スタイルを大きく変えつつあるとの認識も示した。従来の方針を維持する部分と大胆に変える部分でメリハリを付けるとした。

同社の広報担当者、皆川恭広氏は、既存のゲームをスマホアプリに出すことは考えていないとしつつも、新しいものについては詳細は未定だとした。同様に、アプリにマリオなどキャラクターを使うことも否定していないが詳細は決まっていないと述べた。

想定の範囲内

みずほ投信投資顧問の青木隆シニアファンドマネジャーは「事業戦略は想定の範囲内だった」と述べた。その上で、「任天堂にはマリオなど強力なコンテンツがあり、潜在能力は高い」が、インパクトが大きいだけにスマホに提供することに慎重になり、「現時点で急な業績回復につながる道筋は見えない」と述べた。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「この事業方針をマーケットは評価しない」とした上で、「ゲーム事業で新機軸を打ち出せていない。スマホで出遅れたいま意固地になっている印象」とコメントした。

一方、ＱＯＬ事業について岩田社長は「生活の質を楽しく向上させる」のが任天堂の娯楽の「再定義」だとし、ゲーム機も含めたハード・ソフト一体のプラットフォームビジネスを構築するとした。病気になっていない人に健康をモニタリングし、適切な提案をすることで、健康意識の高まりとともに任天堂ユーザー数が拡大する仕組みを作りたいとした。

Ｕの不振

29日に発表された13年10−12月期の連結純利益は96億円となり、前年同期を77％下回った。また、故山内溥前社長の遺族が相続税対策で株を手放すことを想定し、最大1000万株（自己株を除く発行済株式の7.82％）の自社株買いを行う。

10−12月期決算では据え置き型ゲーム機Ｕの販売不振が顕著となった。10−12月の営業利益は同6.9％減の217億円。売上高は同12％減の3025億円。10−12月の実績はブルームバーグ・ニュースが任天堂の発表から算出した。発表資料によると13年４−12月期の連結純利益は102億円で前年同期比30％減となった。

従来は550億円の黒字予想だった今期の純損益の見通しは、17日の発表で250億円の赤字に下方修正。岩田社長がコミットメント（公約）としていた営業利益予想1000億円は、350億円の赤字に引き下げた。営業赤字は３年連続。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N05X876TTDST01.html