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中央銀行の憂鬱
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投稿者 あっしら 日時 2014 年 3 月 03 日 05:56:57: Mo7ApAlflbQ6s
 


日経新聞連載記事:

[迫真]中央銀行の憂鬱

(1)「FRBは身勝手だ」

 22日午後、汗ばむ陽気のオーストラリア・シドニー。米連邦準備理事会(FRB)議長のジャネット・イエレン(67)は、ソフィテルホテルの「ウェントワース・ボールルーム」で円卓を前に語り出した。

 「量的緩和の縮小は米経済が改善しているから可能になっている」「透明性の高い政策運営に努める」。かんで含めるようなゆっくりとした口調。同日開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の会場は静まりかえった。

 100年に及ぶFRB史上、初の女性議長に就任したイエレン。国際会議でのデビューを無事に果たした安心感からか、総督公邸に隣接した公園でのG20会議の記念撮影では、リラックスした笑みを振りまいた。その舞台までには国内外で神経戦があった。

 約2週間前の2月上旬。「FRBは身勝手すぎる」。インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン(51)はG20関係者にぶちまけた。1月、FRBが始めた量的緩和縮小でアルゼンチンやトルコなど新興国の通貨が急落するなか、同月29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBは緩和縮小の継続を決定。声明で新興国市場の混乱に一言も触れなかったからだ。
□   □
 昨年9月に就任したラジャンは、もとは米シカゴ大教授。2008年の金融危機を予言した経済学者として知られ、国際通貨基金(IMF)に勤務した経験もある。イエレンとラジャンをよく知る元日銀理事は「異例の金融緩和の幕引きが必要なことは、誰よりもラジャンがわかっている」とみる。
 それでもラジャンの口からFRB批判が突いて出るのは、米国を中心とする先進国が危機克服のために世界にばらまいた緩和マネーの巻き戻しに、最前線で翻弄されているためだ。

 米国と新興国が対立する構図は何としても避ける――。市場の揺れが収まらないなか、G20会議に向けた米財務省高官の事前調整はこの一点に集中した。世界経済の成長率を2%以上底上げするという「共通目標」を掲げることで、FRB批判の矛先はひとまずかわした。だが、G20の記念撮影ではイエレンとラジャンが言葉を交わすことはなかった。
 2月11日、米ワシントン。「われわれは成長と雇用増という政策使命を果たしているだけです」。議会下院で議長就任後初の証言に立ったイエレンは、緩和縮小の米経済への悪影響を執拗に追及する野党共和党議員の質問を思わず遮った。

 数日前、FRB本部。イエレンは調査部門のスタッフと1月に始めたばかりの緩和縮小を停止した場合の影響を分析した。見つめたのは一枚のグラフ。10年物米国債利回りの曲線は年2.7%程度まで上昇し、前回、量的緩和からの「出口」を探った11年夏とほぼ同じ水準に近づいていた。
 緩和縮小を停止すれば一時的には長期金利の上昇が止まり、株価にはプラス。だが緩和縮小の停止はかえって米国や新興国経済の不安をあおり、市場の混乱を増幅しかねない。イエレンの決意は固まった。未踏の領域を歩む日米欧の金融政策運営。苦悩するのはイエレンだけではない。
□   □
 「われわれの目的はフォワード・ガイダンスの堅持ではない。持続可能な景気拡大だ」。2月12日、英中央銀行イングランド銀行総裁のマーク・カーニー(48)は、中銀が利上げまでの政策運営の指針を示すことで緩和効果を高める新手法、フォワード・ガイダンスの修正を認めざるを得なかった。景気回復が力強さを欠くにもかかわらず、超低金利解除の目安としてきた水準まで失業率が低下したためだ。

 「ファジー・ガイダンス(あいまいな指針)」。英メディアは、カナダ中銀総裁から昨年、鳴り物入りで英中銀総裁に就いたカーニーの政策修正を皮肉った。
 FRBの緩和縮小があぶり出した世界経済の不協和音。「協調を続けられれば、悪夢は終わる」。IMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルド(58)は経済学の大家、ジョン・メイナード・ケインズが1944年のブレトンウッズ会議で語った言葉を引用しながら、各国中銀の連携を促した。
 危機の「悪夢」の再来はもうないのか。まだ誰もが確証を持てないでいる。
(敬称略)

 グローバル化の進展で、一国の金融政策が他国の経済をも大きく左右する時代。各国の中央銀行総裁の姿を追う。

[日経新聞2月25日朝刊P.2]

(2) 「また白髪が増えたな」

 「カネを借りるのは自分の仕事、返すのは後の人の仕事。そんな『軟約束』を改革する」。中国人民銀行(中央銀行)総裁の周小川(66)が最近、こう話すのを部下は何度も耳にした。「軟約束」とは、ハンガリー出身の経済学者コルナイが唱えた「ソフトな予算制約」のこと。最後は政府が助けてくれると高をくくり、返す当てのない資金を野放図に借りる――。経済の非効率やリスクを膨らませる旧共産圏の持病だ。

 改革開放から30年余り。高速成長を実現した中国経済の勢いにも陰りが広がる。習近平指導部は安定成長に向け、今年を「改革元年」と名付けた。就任12年目に入った周は改革推進の先頭を走り、部下も「総裁の意気込みは本物だ」と話す。だが足元の金融が中国経済を揺らす。

 1月26日、周は北京から陝西省に向かう列車に揺られていた。貧困地域を視察する首相の李克強(58)に随行し、列車内での会議で李の左隣に座った。その周の姿を見た金融関係者は、思わずつぶやいた。「また白髪が増えたな」。翌27日、債務不履行(デフォルト)の恐れがささやかれていた高利回りの理財商品の“救済”が突然、決まった。「謎の投資家が現れた」という不透明な決着だった。

 「これぞ中国式。リスクを恐れる必要はないということよ」。四川省成都の女性、劉麗(仮名、38)は1月末、50万元(約850万円)の銀行預金を下ろし、しばらく控えていた理財商品を買い増した。預入期間3カ月で、年間利回り6.3%。同期間の定期預金の2倍超だ。「謎の救済劇」の舞台裏で、自己責任という市場ルールとかけ離れたモラルハザード(倫理の欠如)がはびこり始めている。

 周が正そうとしているのは、こうした無責任の連鎖だ。理財商品など「影の銀行」を通じて短期で集められたマネーは、不動産開発をはじめ長期の投資に流れ込む。それが住宅価格の高騰や、地方債務の膨張を招いている。危うくつながる資金の鎖がいったん途切れれば、不良債権が急増し、中国経済の安定が一気に損なわれかねない。

 習指導部は改革と成長の両立を掲げるが、改革の痛みを嫌う空気はなお色濃い。全国人民代表大会(国会)の前財政経済委員会副主任、賀鏗(71)は1月初旬、「金融政策に問題がある」と人民銀を公然と批判。中国の世論を映すインターネット上でも、改革派の代表格である周を「国賊」などと批判する声が絶えない。
(敬称略)

[日経新聞2月26日朝刊P.2]


(3) 「インフレでいいのか」

 「間違っている。ツケを払うのは結局、国民だ」。1月30日、インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン(51)は現地テレビのインタビューで政府に公然とかみついた。

 批判の的は、政府が同日決めた家計へのガス補助金の積み増し。現政権を率いる与党・国民会議派の次期領袖であるラフル・ガンジー(43)が首相のマンモハン・シン(81)を口説いて実現した政策で、5月までに行われる総選挙をにらんだ「人気取り」の色彩が濃い。
 景気減速と物価上昇の同時進行。昨年9月、インド経済の苦境を打開する「切り札」として中銀総裁に迎えられたラジャンは、インフレを「破滅的な疫病」と呼び、3回の利上げに踏み切った。1月21日には自ら立ち上げた諮問機関を通じ、ゆがんだ需要を生む補助金の見直しを政府に提言。「インフレでもいいのか」。物価抑制に向け、問題意識の共有を呼びかけた直後だっただけに、語調に怒りがにじんだ。
 「インドでは政府と中銀が異なる目標を持って反目してきた」。米シカゴ大学教授として長く金融を研究してきたラジャンの理想は、中銀が政府からの独立性を保ちつつ、両者が同じ政策目標を追うことだ。政治の「大衆迎合」に揺さぶられるラジャンの表情には苦悩の色が浮かぶ。実際、新興国では政治が中銀の政策決定を脅かす。

 インドと同様、物価上昇と通貨下落に直面するトルコ。1月28日朝、中銀総裁のエルデム・バシュチュ(47)は記者会見で通貨防衛に向けた緊急利上げを示唆した。だが大幅利上げを発表したのは29日午前0時。首相のレジェプ・タイップ・エルドアン(60)が発表の数時間前まで「私はこれまで、常に利上げに反対だった」と表明。中銀に圧力をかけた。
 汚職疑惑に揺れる現政権を率いるエルドアンにとって3月の地方選、夏場の大統領選に向けて景気浮揚は欠かせない。バシュチュは政府の制止を振り切った形だが、一方で現政権に非常に近い人物でもある。経済政策の司令塔である副首相、アリ・ババジャン(46)とは小中高、大学を通じて同窓だ。
 2月7日、トルコ長期債の格付け見通しを引き下げた米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、政府の中銀への介入姿勢をリスク要因の一つに挙げた。市場が監視を強めるなか、バシュチュが背負う課題は重い。
(敬称略)

[日経新聞2月27日朝刊P.]

(4)「利下げしてはどうか」

 独フランクフルト市の中心街にある欧州中央銀行(ECB)の本部ビル。昨年11月7日、36階の会議室で定例理事会が開かれていた。
 ユーロ圏のインフレ率が急速に縮小。デフレ懸念が忍び寄っていた。経済の成長も当初予想より弱い。景気分析の責任者、ECB専務理事のピーター・プラート(65)は切り出した。利下げしてはどうか――。

 ドイツ連邦銀行総裁、イェンス・ワイトマン(45)は反対だった。金融市場は落ち着いており、ドイツの景気は底堅い。効果の疑わしい小幅利下げに踏み込む必要はないのではないか。残り少ない手札を投入するには「時期尚早」のように見えた。
 だが理事会の流れは利下げに傾く。景気低迷に悩む南欧出身の中銀総裁らが次々と賛成。ECB総裁のマリオ・ドラギ(66)は、それを見届けるとプラートが作成した文書を持って記者会見場に向かった。市場の意表を突く0.25%の電撃利下げを発表するためだった。
 ECB理事会内で隠しきれなくなった対立。伏線はあった。7月もプラートが利下げを提案し、これに抵抗するワイトマンと激論になった。この時はECB専務理事(当時)のヨルグ・アスムセン(47)ら多くの北部出身者がワイトマンに同調。利下げ案は撤回されたという。

 欧州では輸出で稼ぐ北部と、債務危機の痛手から立ち直れていない南部の経済格差が残る。南欧物価をECBの政策目標に近い2%に高めるまで金融緩和を続ければ、ドイツなど北部のインフレ率は5%弱に達する、とドイツ銀行は試算する。中銀の独立性を重んじる北部は国債買い入れなど中銀の財政政策への接近にも慎重だ。
 2月14日、独北部ブレーメン州で16世紀から続く財界の定例会合が開かれた。ワイトマンは冗舌だった。「超低金利がずっと続いていいわけがない」。一方のドラギは「さまざまな緩和手段を議論している」と明かす。

 次の戦場は3月6日のECB理事会だ。利下げ提案を繰り返してきたプラートは今回も景気分析に余念がない。昨年11月の電撃利下げの時よりも景気の足取りはしっかりしてきたが、2016年になってもインフレ率は域内平均で目標の「2%未満」を大きく割り込むかもしれない。北に配慮して緩和を見送るのか、南欧経済の下支えやデフレ懸念に対応して追加緩和に踏み切るか。迷いは深い。(敬称略)

[日経新聞2月28日朝刊P.2]

(5)慎重な楽観

 20カ国・地域(G20)の財務相や中央銀行総裁らが勢ぞろいした大テーブルに、日銀総裁の黒田東彦(69)の笑い声が響いた。2月22日、オーストラリア・シドニーで開かれたG20会議の開会式。隣に座る財務相の麻生太郎(73)と談笑する姿には、大胆な金融緩和が順調に進んでいるという自信がにじんでいた。

 1月下旬、雪景色のスイス・ダボス会議。各国中銀総裁らと椅子を並べた黒田は景気見通しを語った。「コーシャスリー・オプティミスティック(慎重な楽観)」。当面のリスクは4月に迫る消費増税。影響を慎重に注視しつつ、2%の物価上昇へ「道筋は順調」と繰り返す。
 憂鬱のかけらさえみせない黒田だが、日銀内の打ち合わせでは「なぜこんなにも市場は頑固なのか」と不満を漏らす。市場との間に横たわる2つのギャップ。弱気な物価上昇率見通しと根強い追加緩和への期待だ。

 民間の2015年度の物価予測は約1%。2%との差は大きい。春以降、物価が失速し、日銀を「次の一手」に動かす――。インフレ期待の弱さは追加緩和観測の温床でもある。「容易でないだけでなく、適当でもない」。日銀内でも審議委員の木内登英(50)らが2年で2%の物価シナリオにノーを突きつける。
 物価が上昇してもなお道は険しい。「物価が2%に達しても金融緩和は急にやめない」。副総裁の岩田規久男(71)は2月6日、2%安定が見通せるまで金融緩和が長引く可能性をにじませた。1980年代後半のバブル期ですら物価上昇率は平均1.3%どまりだった。

 「景気回復をリスクにさらすつもりはない」。2月24日、英イングランド銀行総裁のマーク・カーニー(48)は、超低金利政策の解除を急がない姿勢を強調した。失業率は解除の目安としてきた7%に接近したが、実体経済は弱さを残す。米連邦準備理事会(FRB)はいち早く量的緩和の縮小に乗り出したが、日欧はまだ出口が見えない。
 「日本アンカー論」。87年秋のブラックマンデーの後、金融緩和の最終走者となった日銀は金融引き締めに転ずるタイミングを誤り、バブルを招いた。
 「妄言だった」。黒田は当時のアンカー論を一刀両断。日銀は迷わず動くべきだったと振り返る。歴史の教訓を生かせるか。手探りは続く。
(敬称略)

 矢沢俊樹、赤川省吾、大越匡洋、上杉素直、森本学、堀田隆文、花房良祐が担当しました。

[日経新聞3月1日朝刊P.2]

 

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コメント
 
01. 2014年3月03日 10:03:15 : nJF6kGWndY
>FRBは身勝手だ

悪質なレイプや人権侵害、階級差別が横行するバラマキ財政国家のインドに言われたくはないだろうな


02. 2014年3月03日 23:10:19 : D5gqEFhwoc
>FRBは身勝手だ

自分の国の金融システムと銀行を救うために行った金融緩和のカネが
新興国に流れ込みバブル状態を形成し、金融緩和の弊害が出てくると
新興国からカネを引き上げ経済状況を危機に陥らせる。
自分の国の安定を図るために他国を不安定化させることを身勝手と言っているんだろ?

レイプや人権侵害、階級差別があるからなぜ言う資格がないのか?
関連性が不明だな。
まぁ、レイプや人権侵害、階級差別に関してはさすがのインドといえど
アメリカには言われたくはないだろうw


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