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2%インフレ −「年40万黒字」家計が3年で「年20万赤字」に転落(プレジデント)
http://www.asyura2.com/14/hasan86/msg/541.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 3 月 26 日 09:28:23: igsppGRN/E9PQ
 

2%インフレ −「年40万黒字」家計が3年で「年20万赤字」に転落
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140326-00012151-president-bus_all
プレジデント 3月26日(水)9時15分配信


 政権交代以降、経済の局面は大転換。いま、1年後、老後の生活はどのような影響を受けるのか。インフレに強い暮らし方を紹介する。

 いま黒字家計の人こそ、気を引き締めるべきだ。アベノミクス効果で物価が上昇し、消費税が10%まで引き上げられた後の家計が、赤字に転落する可能性が高いからである。

 表を見ていただきたい。年収700万円の夫婦(妻は専業主婦)、子供2人の標準的な家計簿である。毎月約2万4000円の赤字が出ているが、ボーナスで埋めて年間収支は黒字になっている。完璧とは言えないが、こんなものだろう。

 ところが3年後、物価は年2%ずつ上昇し、消費税が10%まで引き上げられ、厚生年金保険料が0.531%上がる(厚生年金保険料は17年まで毎年0.354%ずつ引き上げられる。3年で1.062%上昇するが労使折半)と、FPの村井英一氏のシミュレーションでは「生活レベルが同じでも家計は赤字に転落してしまいます」。

 「給料が上がらないことを前提にすると、赤字を減らすには視野を月単位から年単位へ広げるしかありません」とFPの畠中雅子氏はアドバイスする。

 「誰でも食費のような変動費を減らすことを考えるのですが、この家計では食費を減らすことは無理でしょう。そこで年単位で考えて出費の大きい固定費を削るのです」

 たとえば自動車保険を月払いで払っているなら年払いに変える。それだけで保険料が5%程度(保険会社により異なる)節約できる。

 さらに、家族全員が持つようになったスマートフォンや携帯電話。通信速度が速くなっているので、自宅に引いているインターネット回線を解約するという手も。固定費は一度減らせば、その効果がずっと持続するというメリットがある。

 そのうえで聖域にも手を付ける。教育費の見直しである。まずは「子供に対する情報開示が必要」と畠中氏は言う。

 「詳しい家計の状況まで教える必要はないけれど、あなたにかけられる教育費はここまでという説明をしておくべき。それ以上の学費がかかる学校を目指すのなら奨学金を取らせる。そして奨学金は自分で返済することと釘を刺しておく」

 ところが親心が過ぎるのか、「ぎりぎりまでお金のことは心配しなくていい、と言っておいて受験直前に奨学金の話をする親が多い。大学受験なら高校2年までには話し合って教育資金の上限を決めておくべきです」。

 13年度税制改正で「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が決まり、祖父母が孫やひ孫に教育資金を贈与する場合は、1人1500万円まで非課税(15年12月31日までの期間限定)になる仕組みができた。最大限利用したいところだが「教育資金として1500万円贈与できる祖父母はそういません。また無理に贈与して祖父母の生活が立ちゆかなくなっても困ります」(畠中氏)。

 アベノミクスによって起こるインフレと増税の時代には固定費を削り、聖域だった教育費にも手を付ける。その方法でしか、家計は守れない。

山本信幸=文


 

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コメント
 
01. 2014年3月26日 10:41:41 : LjJIujrhG2
>この家計では食費を減らすことは無理で

黒字家計世帯は赤字になるなら同額の消費水準を維持し続けるはずはないし
当然食費も減らす

いずれにせよ、CCPIが2%を安定的に超えるのはかなり先になるだろう

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140324/261641/?ST=top 
「物価上昇2%」は5年かかる 異次元緩和1年(上):岩田一政・日本経済研究センター理事長に聞く
2014年3月26日(水)  馬場 燃

日銀が黒田東彦総裁の体制で量的・質的金融緩和に乗り出してから間もなく1年。「異次元緩和」とも称される大胆な政策の功罪を日米の第一人者に聞く。日銀副総裁を務めた岩田一政・日本経済研究センター理事長は、日銀が目標とする「2年で2%の物価上昇」は困難だと主張する。(聞き手は馬場燃)
日銀の異次元緩和から1年を迎えます。資金供給量を増やしましたが、実際にどれほどお金が世の中に行き渡るようになったのですか。

岩田 一政(いわた・かずまさ)氏
日本経済研究センター理事長。1970年東京大学卒業、経済企画庁(現内閣府)へ。1991年東京大学教授。内閣府政策統括官を経て2003年から2008年まで日銀副総裁。経済財政諮問会議の民間議員などを歴任し2010年から現職。(写真:北山宏一、以下同)

岩田:大きな変化は「量的・質的金融緩和」に加え、安倍晋三首相が2%の物価目標を述べてから、資産価格が変動したことだ。特に為替レートと株価に変化をもたらした。量的・質的金融緩和は資産価格に影響を与えたと思うが、2%の物価目標を掲げたことで外国人投資家の間に「金融政策は先行きどれくらい拡大的になるのだろうか」と期待を生んだ。それが株価と為替レートを動かす結果となった。
 異次元緩和による「ポートフォリオリバランス効果」(長期国債などの資産買い入れにより民間金融機関のバランスシートの構成に影響を与え、国債からリスク性資産への投資を促す狙い)はもちろんあったが、その効能は外国人投資家を通じて、主に機能としたと見ている。国内の投資家と金融機関について言えば、どちらも外国人投資家よりも控えめだった。効果が全くないわけではなく、金融機関で言えば、貸し出しが緩やかだが回復傾向を持続しているものの、特段ジャンプしたわけではない。

 全体として貸し出しの中身を見ると、やはり不動産と住宅関係が中心に伸びているということなので、異次元の金融緩和は基本的に資産価格に影響を与えるものだった。個人消費も今のところ強いが、金融緩和による影響なのか、もしくは消費増税の駆け込みで強いのか区別が非常に難しい。
輸出低迷の背景にある「デフレ均衡」
この間、企業の動向はどう評価していますか。
岩田:実質為替レートが相当下がり、輸出は当然回復すると思った。その効果は昨年の夏頃には生じると想定したが、輸出は今もやや低迷している。私の解釈では、大まかにいえば1990年代後半から、円高・デフレのもとで経済構造自体が変わった。いわばデフレ均衡の経済となり、それに合わせて人々の行動パターンも変化した。

 この円高傾向の間、企業は海外生産比率を一生懸命高めた。今後も10年、20年の間、1ドル=120円がずっと続くという見通しがあれば、企業は国内生産に戻るかもしれない。ただ、現実には海外生産比率が上昇の道をたどっており、それに加えて半導体や電機といった一部の業種が国際競争力を失った。輸出しようにも、出すものがないと。産業の競争力が一度失われると、取り戻すことはなかなか難しい。
 家電や教養娯楽関係の耐久財については、製品輸入の比率が高まり続けている。これが足元の物価上昇にも寄与しているが、これは経済構造の変化による動きとも言える。輸出がこういう状況にあるため、設備投資の改善もそれほど力強いとは言えない現状だ。

日銀が国債を大量に購入することで長期金利を低位に抑えようとした効果はどう波及しましたか。
岩田:長期金利の水準を見ると、金融緩和直前のレベルと同じか、あるいは少し高めで、当初意図したイールドカーブを全般として押し下げることには必ずしもなっていない。金利についても名目ではなく、実質の変化が重要になり、それは期待インフレ率をどのようにはかるかという問題に関係する。
 私は物価連動債ではかった期待インフレ率に注目している。それには消費税の効果も織り込まれる。それで見ても、2017年、18年の期待インフレ率は現時点で大体1%程度にとどまる。この1%の意味は何か。日銀の物価目標は2%だが、異次元緩和から5年くらいしても2%で安定するとは物価連動債から見て取れない。
 ただし、効果が何もないかというと、異次元緩和の前よりは期待インフレ率が上がったので、期待を動かす効果はそれなりにあったと考えられる。長期金利で言えば、金利の水準そのものがあまり動かなかったとしても、実質金利の方は期待インフレ率が動いていれば、本来は設備投資にプラスに効いているはずだが、効果がやや見えにくい。
為替が変わらなければ物価は下落方向に
足元の物価の動向についてはどんな見解をお持ちですか。
岩田:1月の消費者物価(生鮮食品除く)は前年同月に比べ1.3%上昇し、日銀が当初望んでいたパスに乗っているので、これは意図した政策が実現したとの見方もできる。
 ただし、1.3%は円安や輸入物価の上昇で半分ほど支えられていると分析している。円安だと、一時的にコストプッシュで物価を高められる。ただ、2%に届くには、さらに20%くらい円安の方向に動かないと難しい。
 しかし、為替レートは日本だけの問題ではなく、ある意味で国際的な了解が伴う点もあるため、これから1ドル=120円へ動くかどうかは分からない。仮に為替レートがそのままであれば、あとはGDP(国内総生産)ギャップがどれだけ変化するかが物価の問題と連動する。
 アベノミクスによって、株価上昇に伴う個人消費の増加などで需給ギャップは少し改善の方向に動いた。だが、2014年度以降はそれほど大きな変化は見込めず、物価が需給ギャップの要因で動くことはあまり期待できない。むしろ、為替レートの水準があまり変わらなければ、輸入物価による押し上げ効果が薄れるため、全体として物価は下落方向に働く。現在、民間の市場予測平均は2014年度末に1%を若干割り込む水準を見込んでいる。
中央銀行の目標は人々の期待と等しくない
それでは2%の物価目標をいつごろ達成できると分析していますか。

岩田:私は昨年の春から、同じことを言い続けている。それは2%という物価目標の設定は正しい。しかし、それを2年でやるのは難しいということ。この認識は今も変わっていない。
 もう1つの論点は2%の中身。瞬間タッチでよいのか、またはきちんと錨のようにアンカーされたものなのか。私は物価が2%で安定して推移する状況をつくるには、少なくとも5年はかかると当初から思っている。GDPギャップがゼロのもとで、2%の期待インフレ率が生じなければいけない。賃金上昇率と失業率の間に関係するフィリップスカーブの動きを確認するのに時間がかかるうえ、人々の期待形成をどう考えるかの課題も大きい。
 中央銀行が2%と言えば、既に皆さんが2%を期待するはずだと主張する方もいるが、それは多分違う。合理的期待の本質は何かというと、民間の主体がマーケットで利用可能な最新の情報をすべて使い、ある種の経済モデルも動かしながら最善の予測をするところにある。そうだとすれば、中央銀行が物価目標を2%に引き上げても、そのことが直ちに人々の2%の期待とイコールにはならない。
 これには経済モデルの問題もある。政策当局、民間ともにモデルを持っており、「これをやるとどれくらい動く」という想定が一応できる。ただ、ある種のレジームシフトが起こると、真の構造というのは少しずつしか分からず、今のモデルが本当のことを知っているかどうかが怪しくなる。学習プロセスが必要になり、少しずつ確かめて調整するという時間が欠かせない。そういう適応の過程は現実の数字を確認しないとできないため、少なからず時間がかかると考えている。
「デフレからの脱却」が出発点
仮に2年で2%の目標に届かない場合、どんなことがおこり得ますか。
岩田:政治的なコミットメントと、日銀自体のコミットメントという2つの問題があると思う。政権主導の部分もあるので、それが実現されないときにどうするか。政策目標が達成されなかった場合には、きちんとした説明責任が伴うだろう。ただ、私自身は2年で2%の物価目標が本当の問題ではなく、本来はデフレからしっかり脱却することがそもそもの出発点だと強調したい。デフレのない正常な経済に戻すのが最終目標なので、2年で2%を達成できないと責任問題が生じるというような議論ではない。
物価動向などを踏まえ、マーケットでは追加緩和観測が台頭しています。
岩田:マーケットが期待するのは、やはり理由がある。なぜかといえば、2年で2%という目標に対し、現実的にはアンダーシュートしそうだと見ているからだ。今は明示的になっていないわけだが、分かってから手を打っても後出し政策は効きにくい。それならば前倒しということで、今年1月から外国人投資家を中心に追加緩和への期待が高まっている状況だ。
 日銀について言えば、今のところは想定通りに動いており、政策を変える理由がない。明らかにアンダーシュートしそうだという材料が十分あれば、追加緩和することもあり得るが、現時点では証拠が不十分なのだろう。
この先に考えられる追加緩和はどのような手法がありますか。
岩田:米国は要するに3回やった。しかし、効果を見ると、1回目がやはり一番大きかった。日銀に関しても、国債をさらに買うのは理論的にはある。だが、今でも新規発行分の7割を購入しているわけで、大幅に増やすことは考えられない。株式市場が大きいのでETFを増やす余地はあるが、マーケットが小さいJ-REITはこれ以上だと大きな影響を与えかねない。
 昨年4月に表明した金融政策の先行きを明示するフォワードガイダンスは2つに分かれる。1つは2年で2%、もう1つは2%を達成するまで政策を継続することだ。難しい問題だが、私は最初から後者で政策をやるべきだと思っている。2年というカレンダーで切るのではなく、達成するまで政策を続ける方が合理的である。
 日銀は今年4月に2016年度までの物価や成長率の数字も出す。今の量的緩和はテクニカルに見ると最大限に近いため、拡大する可能性はあるが、そんなに大幅な量になり得ない。むしろ、期間が大事になる。2年では終わらせず、2%を達成するまでしっかりやりますと。つまり、裏を返すとこうした異次元緩和を続けるならば、5年くらいの覚悟が必要になるわけだ。
法人税率は少なくとも25%に引き下げを
異次元緩和に伴う副作用は何か見当たりますか。
岩田:今の量的・質的金融緩和は、量に関する政策の方向性はあるが、金利については一切触れないことになっている。例えば、長期金利に影響を与えたい時に、量的緩和は基本的にタームプレミアム(期間に伴う上乗せ利回り)とリスクプレミアム(国債などへの上乗せ利回り)に働きかける。ただ、長期金利は2つの要素から構成される。期待された将来の政策金利、いわゆる短期金利のパスと、もう1つがプレミアムの部分である。
 ところが、実体経済である設備投資にどちらがより影響を与えるかというと、これは短期金利の期待されたパスであり、この変化の方が大きい。
 例えば、単に国債をたくさん買えば、国債のタームプレミアムは大きく動く。しかしながら、ほかの社債などの債券に対する影響は限定的である。広がりが限られてしまう。金融危機というような事態で、マーケットでのタームプレミアムやリスクプレミアムが歪んだ状態であれば、量的緩和は極めて有効であると大勢の共通認識になっている。だが、問題はそうした事態が落ち着いても、さらに量的緩和をやるべきなのか。そこには矛盾があり、先進国共通の課題とも言えるだろう。
 繰り返すが、実体経済に影響するのは短期金利の部分だ。経済により影響を与えたいのであれば、日銀として将来の金利パスについて、何らかの先行きを示す必要があると考えている。
最後に、今後の成長戦略に必要な視点を教えて下さい。
岩田:アベノミクスには3本の柱があるが、成長戦略がないと成功しない。ただ、今は3本目の成長戦略が弱い。1つは少なくとも法人税率を25%まで下げる。もう1つはオランダ並みに女性を活躍させ、ジェンダーギャップを縮めることが重要である。女性の管理職や国会議員の比率を4割くらいに変えなければいけない。
 これは言葉で言うのは簡単だが、実際には大きな社会変化が必要になる。例えば、霞が関の役所における男性の働き方を見ても、夜12時まで当たり前に勤務しているが、それでは社会が変わらない。男性も女性と同じように子育てを半分やるつもりでなければ、女性が男性と同じだけ働くのは無理な話に過ぎない。高齢者のケアも奥さんにみんな任せてしまってはいけない。
 ジェンダーギャップの問題はとても大変だが、それと比べれば法人税引き下げの方がよほど容易に見えてしまう(笑)。ただ、それさえもなかなか動かない。長期的には日本の自然利子率がマイナスになるリスクもある。足元は金融政策でデフレの基本的な始まりである為替レートの不均衡を正常な方向に戻したが、現在の成長戦略を2、3倍に加速させることが求められている。



ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。


 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140324/261660/?ST=top
“イタリア化”する日本、アベノミクスは失敗する

構造改革なき消費増税で景気拡大に終止符

2014年3月26日(水)  ビル エモット


今年1月にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムで基調講演を行う安倍晋三首相(写真:ロイター/アフロ)
 世界の国や地域は、お互いに学び合うことはできるのだろうか。もちろん、そうすべきだろう。なぜなら、国際的なデータや経験は、政策担当者たちにとって豊富な潜在的情報源になっているからだ。今、欧州と日本の間には、共有されるべき、大きく重要な教訓がいくつかある。それは、お互いにメリットをもたらすものだ。ただし、政治家たちがそれに関心を払うかどうかは、定かではない。

 政治家は、政治的に都合が良いときにだけお互いの歴史を利用し合うものだ。それゆえ、今年1月、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで、安倍晋三首相は1914年の欧州の悲劇的な歴史を引き合いに出した。東シナ海における中国の自己主張が引き起こす脅威について、世界に警鐘を鳴らすためだ。そして欧州の政策立案者たちは今、日本が近年に経験したデフレを例に挙げて、欧州でその歴史を繰り返さないようにすることの必要性を頻繁に話している。

政府は痛みを伴う教訓を学ぼうとしない

 しかし、問題なのは、歴史やほかの国からの教訓はしばしば、民主主義国の政府が無視したい政治的に厄介で痛みを伴う特徴を含んでいることだ。

 欧州の各国政府が日本から学ぶべき主な教訓は、デフレは、執拗に続く低成長率という形で、長期的な経済の脆弱性を生み出すということだ。それは、家計所得と政府借り入れという需要の主な牽引役が、いずれも弱い状態のままでいることが許される状況で起こり得る。

 1997年以降、日本は公的債務の上昇を抑制しようと財政再建策に舵を切った。それと同時に企業に対しては、正社員よりもパートタイムや非正規社員の雇用を促す労働市場改革を実施した。

 その結果、賃金は低下し、家計支出も横ばいか減少した。そして財政政策は基本的に緊縮的だったにもかかわらず、公的債務は増え続けた。もう1つの潜在的な需要の牽引役は事業投資だが、これも常に期待外れだった。企業は大きな新規投資をするよりも、現金を積み上げ債務を減らすことを優先した。

欧州の教訓無視する「アベノミクス」

 欧州は今、日本と同じ状況に陥るリスクを冒している。ドイツに導かれ、ユーロ加盟国は財政再建を目指している。大きな債務を抱える南欧諸国では、労働市場改革によって所得は低下。希望があるとすれば、いつの日か、事業投資の増加が欧州を窮地から救ってくれることだが、企業が投資を増やすべき明確な理由も見当たらない。

 欧州は今後数年間にわたり、デフレと期待外れの経済成長に耐えることになる。そして、最終的には、誰かがアベノミクスに似た政策を導入することで、欧州を救済する――。合理的に欧州経済の先行きを予測すれば、そうなる。

 だが、この予測にも問題がある。それは、アベノミクスそれ自体が、失敗しそうだからだ。なぜか?それは、安倍政権が、欧州の教訓を無視しているからにほかならない。

イタリアが示唆するアベノミクスの顛末

 欧州の教訓とは、構造改革や自由化改革を伴わなければ、雇用創出や所得拡大、新規の事業投資を促す本当のインセンティブは働かないということだ。経済構造を変えずに財政、金融政策を調整したところで、長期的な経済の方向性を転換することはできない。

 このことを理解するには、イタリアとスウェーデンを見比べてみるのが一番良いだろう。両国とも90年代初頭に大規模な金融危機に直面した。イタリアの場合、その危機は90年代中頃以降の大きな財政再建プログラムにつながった。99年に自国通貨リラを欧州統一通貨ユーロに切り替えることで、政策金利は大幅に下落した。それはいわば、“アベノミクス”型の景気拡大を促す大きな力となるはずのものだった。しかし、そのような拡大は全く起こらず、経済の低迷は続いた。

 対照的にスウェーデンでは、政府は大規模な自由化改革プログラムを導入することで危機に対応した。スウェーデンが95年に欧州連合(EU)に加入したことが、この改革を後押しした。つまり、EUの単一市場に参加したことで、貿易と投資に対する障壁が少なくなったのである。

日本にはスウェーデン流の自由化改革が必要

 それは、米国と日本、そしてアジア各国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の締結によって、今後10年に成し遂げようとしていることと重なる。今やスウェーデンの公的債務は低水準で、過去10年において最も高い経済成長を達成した国の1つとなった。

 日本が学ぶべき欧州の教訓は、今やもう明らかなはずだ。自由化改革を軸とした、アベノミクスの3本目の矢を放つことだ。それは、政治的には痛みを伴う。自由民主党を何十年も支持してきた利益団体と衝突し、打ち負かさなければならないからだ。しかも、すべての成果が表れるまで長い年月がかかるために、実行しにくい。

 今のところ、農家や製薬会社、医師会など様々な利益団体に対する姿勢やTPP参加交渉への対応の仕方を見る限り、安倍政権は日本がスウェーデンよりもイタリアのようになることを望んでいるように見える。

 日本は今、消費増税を間近に控えている。それによって、最近の家計支出の拡大は終わりそうだ。それは、あまり喜ばしい見通しではないが、第3の矢を放ち損なうことによって安倍首相が、自ら選択した結果だろう。

このコラムについて
ビル・エモットの「世界からの警鐘」

英エコノミスト・元編集長で知日派ジャーナリストのビル・エモット氏が、日本を取り巻く政治・経済問題を、「外」からの視点で分析。日本が直面している課題について、警鐘を鳴らす。

 


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