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日銀の金融政策決定会合(在野のアナリスト)
http://www.asyura2.com/14/hasan86/msg/803.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 4 月 08 日 23:39:44: igsppGRN/E9PQ
 

日銀の金融政策決定会合
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52568291.html
2014年04月08日 在野のアナリスト


WindowsXPが明日でサポート切れになります。やっと使えるWindowsとなり、爆発的に売れたOSが終了する、1つの時代の終焉ですが、今のMicrosoftのOSは悪評の多い8.1が最新なので、買い替えもすすみにくい。すでにAppleはハードに問題なければOSに関しては常に最新のものを提供する、という方針であり、このあたりの考え方は異なるようです。OSの種類ばかり増えて、サポートに割かれるMicrosoftと、常にOSを更新することでサポートの負担を減らすApple。明らかにAppleの方が、長期的視点にたった経営をしている、ということにはなるのでしょう。Microsoftは9型以下の画面サイズのタブレットにOSを無償提供する、と発表しており、シェアの低下による業績悪化を避けたい意向は分かりますが、換わって何を収益の柱にするか? が見えません。将来的には、よほどハードな使用でない限り、みんなタブレットを使うようになるのでしょうが、そのときのOSの選択肢がより広がっていくことになるのでしょう。

日銀が金融政策決定会合を開き、現状維持を決めました。しかし昨日の内閣府発表の景気ウォッチャー調査も、3月は駆け込み需要で好調、先行きは急落を示します。さらにニトリに続き、高島屋の経営陣も「増税の影響は長引く」と発言しており、4月第1週は売上げも昨年比で急減した、と発表しています。明らかに景気の先行きに、暗い影がただよっています。

しかし日銀は、追加緩和はうてない。それが今回はっきりしました。日銀は2%の物価目標達成を『確信』している、と述べた。つまり追加緩和する必要がない、ということになるので、この文言を会見なりで修正しない限り、追加緩和はできなくなったとの見立てになります。しかしこれは円高、株安を促すでしょう。安倍ノミクスは『実態』ではなく『期待』に働きかけますが、追加緩和の『期待』をもたせておくのが、最大の効果です。要はその効果を最大に生かすため、今回強い表現で期待を遠ざけましたが、そうなると市場は催促相場に移行します。4月はもう一度会合もありますが、sell in Mayのタイミングでは14000円を割れてくることになるのでしょう。

日本の経済政策、金融政策は誰が行っても近視眼的で、短期の成果ばかりを誇る傾向にありますが、黒田総裁にもその癖があります。それが『確信』という言葉に表れた。異次元緩和から1年経って、雇用情勢が逼迫しているので、賃金上昇、価格転嫁という循環的なインフレ傾向になりつつある、とします。しかしこの雇用は、復興需要、公共工事の増大、今後の五輪特需を控えたものであり、明らかに一時的要因といえます。一時雇用ではなく、安定的な収入が着実に増えていく見通しが立たない限り、デフレマインドの払拭など到底ムリであり、本来は1年で結果などでるはずもなく、確信できるわけがないのです。

短期的な動きを、長期的な傾向と捉えてしまう愚は、経済政策ではもっともやってはいけないことです。すでに日本はサービス業中心の、先進国型経済に移行しつつある中、円安などの輸出産業ばかりに焦点をあてた政策、公共工事などの建設業ばかりを潤す政策、もそうですが、いずれも一部を優遇するような策です。それで、消費税増税の悪影響で内需が停滞すれば、そのサービス業が苦境に陥り、日本経済全体が低迷してしまう恐れが出てきているのです。金融政策も、昨年の異次元緩和が巨額すぎて、追加緩和を打ちにくくなってしまった。こうした近視眼的政策から脱しない限り、真の日本経済の復権などありえない、ということになるのでしょうね。


 

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コメント
 
01. 2014年4月09日 16:56:50 : nJF6kGWndY
日銀総裁会見が市場に冷や水:識者はこうみる
2014年 04月 9日 15:56 JST
[東京 9日 ロイター] -東京株式市場で日経平均は4日続落した。昨日開かれた日銀総裁会見で追加緩和期待が後退し、失望感が広がったことから日経平均は300円以上下落。終値ベースでは3月20日以来、約3週間ぶりの安値水準となった。

日銀は7─8日の金融政策決定会合で異次元緩和の現状維持を決定。黒田東彦総裁は記者会見で、2%の物価目標達成を「確信している」と述べたにとどまらず、物価が日銀の想定を上振れれば引き締めに転じる可能性も示唆した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●追加緩和は10月か、年末に108.50円

<三菱UFJモルガンスタンレー証券 シニア・マーケットエコノミスト 六車治美氏>

日銀のスタンスの変化:

スタンスに変化はない。声明文でも日銀の先行き景気・物価見通しは変わっていない。一部のマーケットでそうした見通しやスタンスに変化があるのではないかと期待があった。われわれは日銀のスタンスは変わらないと見ていたので、想定通りだった。一部マーケットで変わると思っていた予想に反したということ。

緩和期待の時期:

われわれは従来から追加緩和があるとすれば10月と、市場コンセンサスの7月より遅い予測をしてきたが、その見方は今も変わっていない。日銀自身4─6月の落ち込みと7─9月の回復をならして、潜在成長率を上回るとみており、それは7─9月のデータを見てからでないと見極められないからだ。

ライブ中継の効果:

ライブ中継は有り難い。これまではヘッドラインで流される発言が、どういう文脈の中でなされたか分からずにマーケットが反応していた部分もある。ライブ中継されることで、そうした「ヘッドラインリスク」が軽減される。総裁の印象としては、ゆっくりと丁寧に話されていた。意外に英単語が少なかった。

ドル円レンジの動向:

8日の動きは、マーケットの一部でサプライズ緩和にベットしていたポジション調整によるもの。円高期待が高まったと見ていない。

FEDは来年半ばくらいには利上げするとみられているが、日銀はまだまだ緩和が続く。日米の金融政策の方向性の違いから2014年、15年と中期的な円安トレンドが続く。12月末で1ドル108.50円を予想している。

●追加緩和の確率、3カ月前比落ちている

<東短リサーチ チーフエコノミスト 加藤出氏>

日銀スタンスの変化:

特段変わっていないが、黒田総裁は少しずつ経済に自信を深めている。マーケットの反応も市場によってギャップがある。株式は失望したが、債券、短期金利市場ではあんな感じかという受け止めだった。

追加緩和は現時点で必要ないが、上下双方向のリスクに対応するとも言っており、これまでと同じことを言っている。期待が強くなっていたところが修正されただけで、前から追加緩和について、何か急いでいたわけではない。

追加緩和の時期:

私は追加緩和があるとすれば節目は7月だと思っており、それは8日の会見を受けても変わらない。判断を秋冬まで待つと、次の消費税増税の時期と近づいてしまい「何故もっと早くしなかったのか」という批判にさらされかねない。

総裁自身は需給ギャップはゼロに近づいており、失業率もほぼ構造失業率に近いと経済に自信を深めている。追加緩和の確率は、8日でガクッと落ちたわけではないが、3カ月前と比べて落ちていることが再確認された。

ライブ中継の効果:

よかったと思う。通信社のヘッドラインだけだとニュアンスが伝わらない。投資家は1時間超の会見をずっと見ているわけにもいかないのだが、情報利用で役に立つ。黒田総裁の自信満々の態度は、いつもそうなのだろうが、初めてみる人にとっては新鮮なのでは。あまりに自信があるので、タカ派に見えてしまうかもしれない。

ドル円相場の動向:

日銀の追加緩和に対する見方が一時期よりはがれても、くすぶり続ける面もある。日銀は出口にはまだ遠いし、米連邦準備理事会(FED)も来年どこかで利上げに転じてもそのペースは2004年6月からよりもゆっくりだと思う。

日米金利差拡大のペースが遅ければ、ドルが急速に110円に向かう展開にはならないだろう。この先ドルが100円を割ることもあるかもしれないが、FEDの想定する景気シナリオが崩れるほど米経済が悪化しない限り、一時的なものにとどまるだろう。

●市場の緩和期待、修正したい意図伝わる

<第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏>

日銀のスタンスの変化:

日銀の強気のスタンスは、4月以前と昨日では全く変わっていない。消費税の影響も大したことないと思ったはずだ。スタンスは変わっていないが、マーケットの追加緩和期待形成を変えたい、前のめりな緩和期待を修正したいとの意図は伝わってきた。

8日の総裁会見は1月22日に続くマーケットへのけん制だと受け止めている。今後は総裁発言だけではなく、消費税の影響が一巡する夏場に向けて、ハードデータに注目してもらいたいとの趣旨だったと思う。

緩和期待の時期:

これまでマーケットでは、7月に展望リポートの中間評価で追加緩和というのが大勢だった。8日に総裁がぶっきらぼうに追加緩和は必要ないと発言したことや、ハードデータ重視の姿勢をあらためて打ち出したことで、緩和期待は秋まで後退したのではないか。

追加緩和はないと言ってきたのはこれまで私1人くらいだったが、今は4人くらいになった。消費税の影響は大したことはなく、CPIも2%は無理でも1%台前半で底堅く、追加緩和は必要ないと思っている。

ライブ中継の効果:

料理のフルコースに例えると、これまでは皿が一気に出てきていたのが、前菜から一皿一皿出てくる感じ。どの皿に市場が反応するのか、非常に参考になった。

質問によって総裁の受け答えに得手不得手があることがわかった。総裁もマーケットの反応フィードバックを今後分析して次回以降の発言、情報発信に生かしてくるのではないか。

ドル円レンジの動向:

ドル円は引き続き、年末にかけて100─105円レンジ内の動きになるとみている。昨日から円高に振れたのは、日銀追加緩和期待効果のはく落とダウが上がり過ぎたことや、米経済に対する過度な期待の修正。消費税増税後の経済情勢や、ドルについては雇用統計が注目だが、現時点で為替が一段と円高や円安に向かうには材料が乏しい。

●スタンス従来通り、追加緩和予想せず

<三菱総研 チーフエコノミスト 武田洋子氏>

日銀スタンスの変化について:

全く従来通りで、変化は感じれらなかった。現在の経済状況に政策変更を予想するような要素は見当たらない。需給ギャップも徐々にマイナス幅が縮小しており、CPIは年間通して上昇していく方向にある。一時的に消費増税の反動があっても、日銀もそれは織り込み済みであり、その中でスタンスは変わっていないことがうかがえる。

緩和時期の予想:

今は追加緩和を予想していない。なぜなら、当面消費増税の反動減はあるものの、その後は年度後半にかけて緩やかに回復していくというのが、当社を含めてエコノミスト、そして日銀のほぼ共通した見通しとなっている。雇用市場の回復で賃金も緩やかな上昇を辿るために消費がこのままずるずると悪化していくことは考えにくい。物価も、円安効果は剥落するが、一方で需給ギャップ改善により上昇方向となっていくはずだ。

こうしたことから、日銀は追加緩和を必要としないと考えている。ただし、日銀が状況を見極める必要があると考えている点は、2つあるだろう。1つは、消費増税後の価格設定動向。増税直後の種々の調査では増税分以上に転嫁している動きもあるし、短観での企業の物価見通しも当方の予想以上に強かったが、今後どうなるのかもう少し時間をかけてみる必要がある。もう1つは海外リスクだ。円高が進行するような情勢になってくると、企業収益や消費マインドに影響することは否定できない。

●総裁会見で予想変更、追加緩和は早くて10―12月

<外為どっとコム総研 調査部 研究員 石川久美子氏>

前日の黒田東彦日銀総裁の会見を受けて、今年の終盤ぐらいまで追加緩和はなさそうだとの見方に変更した。

総裁は4―6月は消費増税の影響で景気が下押される可能性があるが、その後は堅調に戻っていくだろうと話した。このことを確認するには、7―9月期の指標まで見ていかなければならない。そこから対応を打つとなると、どうしても10―12月になってしまうだろう。当初は夏ぐらいに追加緩和が行われる可能性があるとみていたが、会見を受けて予想時期を後ずれさせ、現在は追加緩和は早くて10―12月と予想している。景気が目立って悪くなければ追加緩和は打たないだろう。

総裁会見が今回からライブ中継されたことはとても良かった。今までは会見場にいる人にしか黒田総裁の表情がわからなかったが、今回は質問を受けた黒田総裁の表情が見られた。慎重に答えている質問と気楽に答えている質問とが明らかにわかった。日銀総裁のスタンスをなんとなくでも感じ取ることができる。

ドル/円の今後3カ月の予想レンジは98―105円程度。日銀の追加緩和期待という材料がいったん後退しているので、日本サイドの要因で押し上げるのはなかなか難しくなっている。米国についても量的緩和の縮小ペースを速めるとか早期利上げへの期待が起こりにくい状況。今後3カ月というスパンでは年初来高値(105.45円)の突破は難しくなっているかもしれない。

マーケットの関心は下火になっているが、材料がないときにウクライナ情勢がさらに緊迫化すればリスク回避の動きが強まる可能性もある。100円を割れば、98円付近までの下落が考えられる。

●追加緩和は今秋、消費増税決断を側面支援

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

日銀の追加緩和は10月くらいに行われるという見方は変わらない。消費税の10%への引き上げを安倍首相に円滑に決断してもらうため、側面支援するとみている。

ドル/円は予想していたよりも下落したが、2つほど背景があると思う。1つは世界銀行が出した最新の経済見通しで中国の経済見通しが下方修正されたこと。豪ドル/円などクロス円が崩れてしまい、それにドル/円も巻き込まれた。

もう1つは、やはり黒田東彦日銀総裁の発言だ。日銀の金融政策の現状維持に大きな反応はなかったが、黒田総裁の会見が始まり、「いま追加緩和は必要ない」とする発言が伝わってから、ドル/円は売られた。おそらくみんな今回の会合で追加緩和はないと踏んでいたが、そこまではっきり言わなくてもいいんじゃないか、という気持ちになったと思う。

ただ、とりあえず総裁会見でドル/円を売った人たちも、ここからガンガン下攻めはしにくいだろう。米国で100億ドルのテーパリング(量的緩和縮小)を淡々と進められれば、その先の利上げの可能性が意識され、ドル高圧力は強まる。

7月になれば、米国でテーパリングが進展し、最初の利上げへのカウントダウンタイマーも1年を切ってくるイメージになる。7月末のドル/円は今より上方向を想定しており、103円から108円で着地するとみている。

●7月に追加緩和の可能性、2%の物価目標達成にリスク要因

<野村総研 金融ITイノベーション部長 井上哲也氏>

日銀のスタンスの変化:

日銀のトーンは従来から全く変わっていない。黒田総裁の態度は従来とほとんど変化はない。

ただ今回初めて映像でみた投資家にとっては、文字で見ていたよりも、強いトーンを感じたかもしれない。面と向かって話される効果や、消費増税の影響をほとんど気にしないという自信の表情などが、そうした印象をもたらした可能性があるかもしれない。

追加緩和の時期:

緩和時期は7月の可能性があると思う。日銀が追加緩和を判断する軸はたった一つで、2%の物価目標が達成できそうかどうかにあり、それは展望リポートと中間評価の時期に限られる。4月の展望リポート時はまだ見極めるには尚早だが、7月になると、色々なリスクが出てくる。商品市況・円安効果のはく落、消費増税の反動減が長引く可能性、中小企業まで賃上げが浸透しない可能性など、物価上昇を抑制する要因が目立ち始めると、政策委員の景気・物価見通しもばらついてきて、追加緩和となりかねない。

ライブ中継の効果:

ものすごく大きな変化があったわけではないが、総裁の表情などから伝わる情報量は増えた。

課題もある。一つは金融システムなど微妙な問題が生じた局面では、個別銀行の話題などに言及しにくく、総裁会見での発言はかなり制約されるだろう。二つ目は、英語での海外向けの発信ができないこと。記者クラブ主催であり、当面日本語での会見だけになるだろう。また英語に翻訳するとニュアンスがはっきりしてしまい、日本語での表現と異なる印象になりかねない。また翻訳者の趣味でニュアンスが変わってしまうリスクもある。

ドル円レンジの動向:

さほど影響はないのではないか。昨日はごく短期的なマーケット参加者が動いていただけかと見ている。

●スタンス全く変化なし、7月緩和が60%程度か

<JPモルガン証券 シニアエコノミスト 足立正道氏>

日銀スタンスの変化:

昨年末以来、全くスタンスは変わっていない。

追加緩和の時期の予想:

7月に60%程度の確率で追加緩和実施の可能性があるとみている。理由としては、日銀が思っていたほど景気が改善していない可能性や、6月に政府の成長戦略が新たに発表されることに歩調を合わせる可能性、来年の消費増税率10%への引き上げへのサポートといったことが考えらえる。

CPI動向は、追加緩和判断にさほど影響しないだろう。日銀はすでにCPIは1%台半ばの上昇率が半年程度は続くと見通しを示しており、おそらく今後1%を切る可能性は少ないと思われる。日銀にとって、円安効果による物価押し上げ圧力ははく落していくことは織り込み済み。一方で国内要因では、非製造業を中心とした労働需給のタイト化について黒田総裁も会見でも幾度も指摘しており、こちらは物価を押し上げる要因。こうした状況を踏まえれば、CPI1%台半ばを維持できるとみているのだろう。見通し通りの展開になれば、それをもってして追加緩和の要因とはならないはずだ。

ライブ中継の効果:

会見のライブ中継は、発信力の効果につながっていると評価している。総裁の意図が明確に伝わること、ライブはグローバルスタンダードとなっていること、などメリットは大きい。あえて言えば、メディアに頼らず、日銀自らのホームページでライブを実施すべきだ。

ドル円相場の動向:

日銀のスタンスが変わっていない以上、ドル/円相場への影響はほとんどないとみている。昨日円高に振れたのは、短期筋の思い込みが外れたポジション調整に過ぎない。黒田総裁が自らのシナリオに強気の発言を続けているのは、それにより市場や国民の心理に働きかける戦略だと理解すべきだ。市場が反応したのは、海外投資家の追加緩和への思い込みがあったからにすぎない。

最近の米国経済指標やウクライナ情勢への市場の反応を見れば、大きな流れとして、円安が進みにくいトレンドに変化はないだろう。

●円買戻し、緩和期待の後退とドル高シナリオの見直しが要因

<野村証券 金融市場調査部 チーフ為替ストラテジスト 池田雄之輔氏>

ドルは前日一時101.55円まで下落し3週間ぶり安値を付けた。

テクニカルには、節目で断続的に損失確定の売りが流入し、下げが加速したが、実質面では、黒田総裁の会見が「予想以上に強気」と判断され、追加緩和の期待が大きく後退したことがドル下落の原因だ。

ヘッジファンド勢は、4月30日ないし5月21日の早期緩和に大きな期待を残していたが、総裁会見をきっかけに、ドル/円の投げ売りに回った。

ごく短期のポジションを張るファンド勢は、6月までに日銀の追加緩和がないとなれば、当面ドル/円のロングをキャリーするインセンティブがない。加えて、米金利上昇のシナリオが弱っていることも、ドルロングのディスインセンティブだ。

当社は、日銀の追加緩和の時期については、引き続き7月とみている。

グローバルな投資家は目下、米景気回復や米金利上昇に伴う「ドル高シナリオ」の見直しを迫られており、これが、対円のみならず、ドルが全面安となっている背景だ。

投資家らは、昨年来「ドル高シナリオ」を基本的に堅持してきたが、これまでに何度も壁に突き当たっている。その度毎に、米国を襲った寒冷気象に原因を求め、気を取り直してきた。

しかし、先週発表の3月雇用統計が強いとも弱いとも判断しかねる結果となったことで、改めて、米景気回復の蓋然性・持続性に疑問を持ち始めている。今後は4―6月の米国景気が、本格的な回復軌道に乗るかどうかを見定めながらの相場展開になるだろう。

<ライブ会見の感想>

日銀総裁会見がライブになって、発言の文脈を市場が理解できるようなったことは、市場とのコミュニケーション向上に資するだろう。

今回の会見で印象的だったのは、総裁が、消費税引き上げ後の反動減は「予想以上ではない」としたことで、これについてはあえて強調しているとの印象を持った。

また、「需給ギャップはゼロに近い」と明言した際には、あまり言いたくないような雰囲気が伝わってきた。

そもそも、需給ギャップが現在ゼロで、今後、成長の持続が見込まれるのであれば、米国と同様に量的緩和の縮小(テーパリング)が政策の選択肢となるはずであり、強気を強調しすぎても新たな憶測を生むと考えられ、日銀のプレゼンテーション・スキルが試されそうだ。

●会見に失望、追加緩和の可能性しばらくなくなった

<BNPパリバ証券 株式・派生商品統括本部長 岡澤恭弥氏>

黒田東彦日銀総裁の会見には失望した。2%の物価目標の達成を信じていると言い切ったことから、追加緩和がくる可能性はしばらくなくなったか、もしくはなくなった。

黒田日銀がやり残していることは「ポートフォリオシフト」だ。景気の浮揚効果としてリスク資産にお金を移す流れというのも期待していたが、今回はそれに一切触れず、物価見通しにフォーカスして追加緩和はしないという。今後、日銀には株式相場的に期待できないことになった。

今回の会見からライブ映像が見られるようになった。事務方が用意した文章からほぼ逸脱せずに無難にこなしたという印象だ。株式市場の期待は、伝統的な日銀からかけ離れた総裁が硬直的な組織を変えていくというモデルだったが、事務方が用意したメモを読んでいる総裁になかなか刺激を受けられない。

3週間かけて米国、欧州、香港で60人くらいの投資家に会ってきた。8、9割くらいは日銀が動かなかったら日本株売りだと言っていた。成長戦略が打ち出されず、GPIF改革でもドラスティックなものがでてこないからだ。

*内容を追加して再送します。

日本で豪ドル建て資産の需要回復、対円での通貨高が下支え
2014年 04月 9日 15:46 JST
[シドニー 9日 ロイター] - 日本の投資家の間で、昨年まで落ち込んでいた豪ドル建て資産への投資意欲が回復している。

今週公表された財務省のデータによると、日本の投資家は2月、株式や債券など豪ドル建て資産を約11億豪ドル買い越した。2013年10月―2014年2月の買い越し額は合計65億豪ドルだったという。

米モルガン・スタンレーの調べによると、2013年9月までの11カ月間の売り越し額は342億豪ドルに上った。

モルガン・スタンレー(香港)のアナリスト、ジェフ・ケンドリック氏は「日本の投資家は、オーストラリア準備銀行(RBA、豪中央銀行)の利下げが終了局面を迎えたことを受け、豪ドル建て資産の買い戻しを始めた」と指摘する。RBAは昨年8月に利下げを実施して以降、政策金利を据え置いており、緩和的な金融政策を維持する姿勢を示した。

債券市場は一段の利下げがないとの見方に迅速な反応を示し、スワップ金利は向こう12カ月で17ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込んだ。

この結果、豪国債利回りは上昇し、2年債利回りは今月2.94%と9カ月ぶりの高水準となった。

一方、日本では、超緩和的な金融政策により2年物国債のイールドが0.1%を下回る水準に貼り付いており、トリプルAの格付けを付与されている豪国債の投資妙味は目立っている。

ノムラ(シドニー)のアナリスト、マーティン・ウェットン氏は、オーストラリアのファンダメンタルズが昨年より魅力的になっていることを受けて、日本人投資家が豪ドル建て資産に回帰していると指摘。「RBAによる利下げ局面が終了したことで、豪ドルは引き続き上昇する見通しであり、同国経済も回復を続ける」との見方を示した。

豪ドル/円相場は1豪ドル=96円52銭近辺で推移しており、2月以来8%前後上昇した水準。ボラティリティの低さもあって、投資妙味が出ている。

さらに、今月発表されたデータによると、豪ドル建てユーロ売出債の3月の発行額が900億円と、2年以上ぶりの規模に増加したことも安心感を生んだ。

他方でバークレイズ・キャピタルのアナリストらは、最近の豪ドル建て資産への需要増加について、1100億円程度とみられる償還を控えたロールオーバー(乗り換え)需要に過ぎないとの慎重な見方を示す。通貨高を受けて、豪国内投資家が豪ドル建て資産の売りに動く可能性もある。

バークレイズ銀行の為替ストラテジスト、門田真一郎氏は「最近の豪経済指標は改善しており、豪ドル建て資産への需要は一部でみられる。ただ、この傾向が続くかどうかは不透明だ」と述べた。


焦点:米株式、足元の下落でもなお多い強気シグナル
2014年 04月 9日 15:04 JST

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA3804H20140409?sp=true

4月8日、米株式市場では過去6週間にわたり株安が続いているが、全面的な株安が起きるとの心配は和らいでいる。ニューヨーク証券取引所で撮影(2014年 ロイター/Brendan McDermid)
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日経平均4日続落、日銀総裁の会見で失望感広がる
[8日 ロイター] -米株式市場で2013年に大幅上昇したネットフリックス(NFLX.O: 株価, 企業情報, レポート)やフフェイスブック(FB.O: 株価, 企業情報, レポート)といった銘柄に投資していた人々にとって、過去6週間はつらい時期で、株価が急落するのをただ見ているしかなかった。

しかし今のところ、彼らは資金をキャッシュなどの安全な避難先に戻す代わりに別の銘柄へと移動させており、全面的な株安が起きるとの心配は和らいでいる。

高値から20%下げたバイオテクノロジーなど悲惨なセクターはあるものの、S&P総合500種は3.2%の下落にすぎない。そして一段と調整色が深まる局面で点滅するような警戒信号も出現していない。

T・ロウ・プライス・グローバル・テクノロジー・ファンドPRGTX.Oのポートフォリオマネジャー、ジョシュ・スペンサー氏は「今の値下がりは押し目買いのチャンスを与えてくれている。もし適切な場所を選べば攻撃と防御が同時に行える。株価が調整された優良企業を買えばだ」と述べた。

スペンサー氏の自信には妥当性があるかもしれない。ロイターが10種類の株式に関する指標を調べた結果、このうち8種類は買いを後押しするか、少なくとも買いの妨げにはならないことが分かった。

まず最初に、新規株式公開(IPO)市場が見事なほど健全であるという点が挙げられる。株式の人気が低下している時期にそうなるのは珍しいが、ブリーフィング・ドット・コムによると今週だけでも15件実施される予定だ。

先週も、インターネット関連株が売られた中でも出前注文サイト運営のグラブハブ(GRUB.N: 株価, 企業情報, レポート)のIPOは大成功を収め、IPO価格の26ドルからこれまでに36%上昇している。

トムソン・ロイターのデータでは年初来のIPOによる資金調達額は141億ドルで、13年と12年のこの時期の調達額を合わせた154億ドルと比べても、それほど見劣りしない。

企業合併・買収(M&A)も活況を呈している。今年これまでのM&Aは総額3900億ドルと、同時期では07年以降で最も多い。

ワンダーリッチ・セキュリティーズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「市場環境のせいで案件が撤回されるという状況は目にされていない」と話す。

<ヘッジファンドは投資維持>

ヘッジファンドはしばしば、株価の乱高下をもたらす大きな要因になる。だがこれまでのところ、ロング/ショート株式ヘッジファンドはキャッシュに資金を移動させておらす、グロスの株式投資を維持している。

クレディ・スイスでプライムサービス向けリスクアドバイサリー責任者を務めるジョン・キンダーラー氏は「グロスの株式投資は大きく動いていない。大規模なポジション解消の兆しはない」と語った。ただ、クラウドコンピューティング関連のハイテク株からは資金が大幅に流出した点も指摘した。

米個人投資家協会(AAII)が先週発表した調査では、株式に強気の見方を示したのは全体の35.4%でその前の週から増加したが、過去平均の39%は依然下回っている。個人投資家のセンチメントは株価と逆相関関係にあるとみなされ、高水準であれば調整が迫っている兆しになる。しかし今回の場合は、おおむね株価には中立的に見える。

また投資家の不安心理の目安であるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(VIX指数)は落ち着いている。現在は15前後で、過去の中央値である20より低い。今年20を超えて引けたのは1回だけで、過去2年の水準を上回ったのも数えるほどしかない。

チャート分析の指標も、株価が上昇はしないかもしれないが少なくとも下げ余地が限られていることを示唆している。重要な存在となっているのはS&P総合500種の1840で、50日移動平均であることに加えて、2月初めの安値と先週の高値の間に存在する戻りのポイントが理由だ。もしS&P総合500種が1840を割り込めば、より大きな値下がりの前振れとなる。8日終値は1851.96だった。

<値がさ株の空売り規模は縮小>

取引所のデータによると、市場全体の空売り規模は今年初め以降増大しているものの、値がさ株への空売りは縮小している。

旅行情報サイト運営のトリップアドバイザー(TRIP.O: 株価, 企業情報, レポート)の株価は3月初めから21%下げているが、サンガーズ傘下のアステック・アナリティクスのデータでは空売り目的の借株数年初来で18%減少した。高値から21%値上がりしているバイオテクノロジーのアレクシオン・ファーマシューティカルズ(ALXN.O: 株価, 企業情報, レポート)の借株数もほぼ半減し、フェイスブックやネットフリックスの空売りはここ数週間で縮小している。

アステック・アナリティクスのマーケット・アナリスト、カール・ルームス氏は「空売り筋はこれらの銘柄から撤退し、ポジションを手じまっていることと、新規ポジションの構築を手控えていることがうかがえる。彼らは株価の値下がりでもうける機会があると予想していないように思われる」と述べた。

今後数週間に出てくる企業業績は、株価動向の鍵を握るだろう。第1・四半期の企業増益率予想は切り下がり続けているとはいえ、主に厳しく長かった寒波が影響している。トムソン・ロイターによると、第2・四半期の増益率予想は直近で8.3%と、年初時点の9.7%よりは低いが比較的底堅い。

ローゼンブラット・セキュリティーズのマネジングディレクター、ゴードン・チャーロップ氏は「業績が予想をある程度下回り、見通しが下方修正されるようなら、今の(売り局面)は続いていく恐れがある」とみている。

それでも、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミストチームは、米経済は今後3四半期は3─3.5%のペースで成長すると予想。自動車販売や住宅市場に関する最近のデータでも、米経済がこれから明るさを増していくとの見通しが示されている。

(David Gaffen、Rodrigo Campos記者)

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日経平均一時300円安、追加緩和期待が後退:識者はこうみる
2014年 04月 9日 14:02 JST
[東京 9日 ロイター] -9日の日経平均は前日比で一時300円を超える下落。先物市場で断続的な売りが観測されているほか、主力大型株の下げがきつく、「海外投資家を中心に投げが出ているのでは」(国内証券)との見方が出ている。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●300円安は日銀のせい、1万4000円割れも視野

<内藤証券 投資調査部長 田部井美彦氏>

きょうの300円安は、日銀総裁会見のせいだ。昨日の会見で、黒田東彦総裁は消費増税の判断が誤っていなかったというメッセージを発したことで、市場には大きな失望感が広がった。追加緩和どころではなく、むしろ金利が上がってしまうのではないかとの印象を抱いたほどだ。5月はおろか6月の追加緩和もなくなったように思う。

米企業決算も強い内容が出て来る雰囲気はなく、日本でも企業業績予想は慎重になっているなど、状況は良くない。目先では3月17日の安値1万4203円付近での攻防となるだろうが、1万4000円を割り込む可能性もある。ただその水準になれば、日銀への「催促相場」としての色も濃くなるだろう。

●会見生中継で先行きの緩和期待しぼむ

<マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>

売りのきっかけは前日の黒田日銀総裁の会見だ。今回の会見から生中継されたため、黒田総裁の表情や声のトーンなど、文字では伝わらない黒田総裁の強気な姿勢が投資家にダイレクトに伝わり、先行きの追加緩和期待がしぼんでしまったのだろう。先物市場だけではなく、主力株の下げもきつく、国内外の投資家が売っている印象だ。今週に入り、日本株は一方向に向かいやすい地合いとなっており、きょうも下げがきつくなっている。

ただ3月中旬につけた安値1万4200円水準を割り込んでいないことが唯一の望みだ。同水準を割り込まなければ、今回の下げは三角もち合いを形成する過程の1つと捉えられる。

●国内要因での下値は限定的

<みずほ総合研究所 シニアエコノミスト 武内浩二氏>

アベノミクスへの懐疑的な見方が広がる中で、株価は短期的な需給主導で下振れている。日銀金融緩和への期待値が後退しているのも事実だろう。ただ、海外勢の日本株保有残高からみて、まだ本腰を入れて売っているわけではない。日本株に対する期待が持続するかどうかは、今後の政策対応にかかっている。オバマ米大統領が来日する今月24日と25日に環太平洋連携協定(TPP)交渉が進展することや、30日の日銀金融政策決定会合で何らかのサプライズが出ることなどが株価反転のきっかけになり得る。

日経平均の下値は限定的で、1万4200円程度とみている。それを下回る場合は国内要因ではなく、米企業決算の失望やウクライナ情勢の深刻化などの外部の問題が要因だ。最悪の場合は1万3000円台半ばまでの調整もあり得る。


焦点:NISAに踊らぬ個人金融資産、団塊ジュニアの参入にも壁
2014年 04月 8日 16:18 JST
[東京 8日 ロイター] -日本の巨大な個人金融資産の流動化をめざす政府のかけ声にも関わらず、「貯蓄から投資へ」の動きが足踏みを続けている。

アベノミクスがもたらした株高も、鳴り物入りで始まったNISA(少額投資非課税制度)も、個人のタンス預金を市場に引き寄せるにはまだ力不足が否めない。金融市場が期待する団塊ジュニアの取り込みも難航しており、割高な投資信託手数料など「参入障壁」の存在が改めて問題視されている。

<アベノミクスも力不足>

アベノミクスを背景とした景気拡大で日経平均は昨年57%上昇し、列島改造ブーム以来の上昇率を記録した。しかし、この好機にも、個人投資家は9兆円を売り越し、15兆円買い越した外国人投資家とは対照的な動きをみせた。

第2次橋本内閣下の1996年11月、金融ビッグバンで「貯蓄から投資」のスローガンが打ち出されて以降、家計に占める現金・預金の割合が50%を下回った(金融投資の割合が上回った)のは、戦後最長の景気回復期となった2005年、2006年しかない。資金循環統計によると、それ以外は52─54%台を推移し、大きな変化は起きていない。

一方で、各証券会社などが催す投資セミナーは活況を呈し、リスク商品への投資意欲は醸成されつつある。大きな問題のひとつは、個人投資家のすそ野を広げる「舞台」の整備がなお立ち遅れているという点だ。

神戸市在住の男性会社員(24)は証券会社から取り寄せたNISAの資料を見て、その分厚さに嫌気がさした。資料の分量は130ページを超える。「頑張って読んだが、一般口座から開かなければならない手続きが面倒。仕事が忙しく、住民票の取得などにわざわざ時間を割きたくない」。

埼玉県の専業主婦(45)は「たくさんの金融商品があり、リスクもまちまちなので何をどのように買うか迷ってしまう」と嘆いた。日本株の上場銘柄数は3000銘柄を超え、国内で販売されている公募ファンドは5000本にも上る。

国税庁によると、今年1月に始まったNISA口座の開設数は2013年末で約475万件。政府が2020年の目標とする1500万件の約3分の1に到達し、口座数の増加は順調だが、「投資経験者による口座開設が主で、未経験者はまだ本格的に動いていないのが実情」(大手証券・広報担当)だ。

NISAには「自助努力に基づく資産形成を支援・促進」するだけではなく、「家計からの成長マネーの供給拡大を図る」という目的もある。しかし、非課税適用期間が10年間の時限措置、年間100万円の投資上限、課税口座との損益通算不可、金融商品の買い替え不可、口座開設にかかる手間や時間など改善点が多く、個人投資家にとって決して使い勝手の良いものとは言いづらい。

「株で金を儲けるのは良いことではない、という意識が日本にはまだあるのではないか。それがNISAなど商品設計に表れているのではないか」とあるベテラン証券マンは訝る。

<団塊世代への資金シフトに期待>

根雪のように蓄積した1645兆円もの個人金融資産をどのように溶かし、リスクマネーとして金融市場に導くか。近道はその過半を占める高齢者マネーを動かすことだが、人生の資金イベントをほぼこなしてきた高齢者には、リスクをとってまで資産を運用するモチベーションの拡大は期待できない。

市場関係者がにわかに注目し始めたのが、若い世代、特に団塊ジュニア世代の取り込みだ。30─40代が中心の同世代は、保有金融資産が高齢者の半分以下。しかし、65歳前後にいる団塊世代が70歳を超えてくると、ジュニア世代への資産移転が加速するとみられている。野村総合研究所の試算では団塊ジュニアの投資経験者の割合は、女性全体と同様の1割程度。この世代を動かすことは、マネーシフトの大きなポイントになる。

三井住友信託銀行・調査部調査役の青木美香氏は「他の世代にも大きなインパクトを与え、『貯蓄から投資』の流れを生み出す可能性がある」と団塊ジュニアの活性化効果を期待する。

2月中旬にNPO法人エイプロシスが開催した投資初心者向け無料セミナー。平日の昼間にも関わらず、40名の定員に対して60人以上が集まり、急きょ席を増やしての開催となった。参加した東京都港区の会社員、鈴木泰子(35)さんは最近、両親から投資信託を譲り受けた。「まだ知識不足なので、これから勉強して投資を覚えていきたい」と意欲的だ。

同セミナー参加者の9割以上が投資の未経験者。景気拡大でインフレになる可能性も視野に入れながら、金融資産の運用に傾く団塊ジュニアも少なくない。

<乏しい投資アドバイザー>

しかし、実際に投資に踏み出すとなると、数々の「参入障壁」が待ち受ける。まず、「この世代は住宅所得適齢期に低金利だったため、住宅ローンを背負っている世帯が多い。純貯蓄が低く、投資に回せる元手が少ない」(青木氏)。限られた元手を効率的に運用するには的確なアドバイザーが必要だが、海外に比べると、日本には初心者を導いてくれる人材がまだ乏しい。

英国では、個人への金融商品の販売ではIFAと呼ばれる独立金融アドバイザーが重要な役割を担う。IFAは特定の金融機関や資産運用会社から完全に独立しているため、投資家にとって最も適切な金融商品や運用方法の提案が可能だ。一方、日本では、金融商品の販売や投資勧誘は原則として、金融商品取引法に定める外務員などとして登録した銀行や証券会社などの従業員が行っている。

日本の場合、金融機関のアドバイザーには、顧客の利益を完全に優先できない事情もある、と国内大手証券の個人営業担当者は語る。「手数料の多さが人事評価につながる」だけに、手数料目当ての回転売買の推奨などを行い、投資家と利益相反が生じることも否定できないからだ。

<高すぎる投信の手数料>

投資初心者にとってエントリー商品となるのが投資信託。米モーニングスターが世界24カ国の投信市場の環境をまとめたレポートによると、日本の投信市場に対する評価は南アフリカ、香港、ニュージーランドに続き下から4番目。評価を落としているのは、24カ国中、下から2番目となっている「手数料・費用」の項目だ。日本の手数料は他国に比べて最も高い部類に入るという。

慶應義塾大学経済学部の吉野直行教授は、「個人投資家が利子・配当収入の最大化を目指す一方、販売会社は手数料収入を最大化することが目的となっており、ずれが生じている」と指摘、投信販売会社の収入が個人の運用成績に連動する体制作りを提案する。

販売会社の手数料のうち、人件費など一定の固定費以外は、投資家の利子・配当収入と連動させる。「極論すれば投資家が損をすれば販売会社も損をする仕組みを作ればよい。顧客との目的関数を一致させることが『貯蓄から投資』のカギを握る」と同教授は話している。

(杉山容俊 編集:伊賀大記、北松克朗)


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