03. 2014年4月30日 01:26:09
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海外では、もっと大がかりだhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40531 JBpress>海外>欧州 [欧州] 国境に漂う現金の匂いを追う犬たち 昨年は800億円超の隠蔽が発覚、サッカー界の大物も懲役刑に?ドイツ脱税事情 2014年04月30日(Wed) 川口マーン 惠美 最近、麻薬ではなく、現金を嗅ぎ分ける警察犬が活躍しているらしい。スイスとオーストリアとドイツの国境がぶつかるところで、ドイツの税関の役人がこの犬を動員している。スイスやオーストリアから、多額の現ナマを車でドイツに持ち込もうとする人が、急増しているからだ(その理由は後述)。 銀行の秘密主義にメス、脱税目的の預金者は戦々恐々 EUでは、ここ数年脱税の取り締まりが厳しくなった。ドイツ人がスイスに預金している金額の推定は1750億ユーロ(21兆円)で、そのうち少なくとも1000億ユーロ(12兆円)が非課税、つまり脱税のお金だと言われている。これを取り締まり、税金を取り戻すべきだというのは、当然の話だ。 そして、もう一つのきっかけは2008年のリーマン・ショック。多くの銀行が危うい商売をしていて、しかも、EUの多くの国の経済が借金で崩壊しそうになっていることがはっきりと明るみに出た。そのせいで、世界中が不況になり、後始末が未だに終わっていないことは、すでに誰もが肝に銘じている。 脱税も、顧客の情報を一切明かさず、秘密口座を作って、脱税や資金洗浄の手伝いに励む銀行があるからできることだ。銀行に倫理観が欠けているなら、法律を作って、規律を正さなければいけない。悪い銀行をどうにかして取り締まろうということになったのである。 具体的には、スイスやルクセンブルクが売り物にしていた秘密主義を徐々に取り外すことだ。今までは、これらの国々にお金を預けていれば、預金者の情報は一切秘密に保たれ、母国の税務署を煙にまけたが、まずそこにメスを入れるため、EUの財務大臣が集まっては熾烈な交渉を続けていた。 その結果、14年3月、ルクセンブルクとオーストリアが、長い抵抗の末、ようやくEUの銀行改革案に合意した。これによって、将来は、ルクセンブルクもオーストリアも、他国の税務署から預金者についての問い合わせがあった場合、返答をしなければいけなくなる。脱税目的の預金者にとっては、抜き差しならない状況である。 しかも、今年の夏からは、欧州中央銀行が、ユーロ圏の6000の銀行を監督することもすでに決まっている。 もちろん、スイスはEUにも加わっていないし、ユーロも使っていない。しかし、だからと言って、今後も好きなことができるかというと、おそらく、もうそういうわけにはいかないだろう。ようやく28カ国が一丸となったEUは、これから、スイス以下、秘密主義を取っているヨーロッパの5カ国に、預金者の情報を必要に応じて開示するよう求めていく方針だ。 EUにもユーロ圏にも加わらず、預金者の情報を隠蔽してお金を稼いでいる、スイス以外の残りの4カ国とは、リヒテンシュタイン、アンドラ、モナコ、そしてサンマリノである。 ドイツの脱税者、つまり、大金をこれらの国に隠して脱税をしていた金持ちは、戦々恐々としている。ドイツには、「うっかり申告を忘れていました」と後から届けて、所得に見合う税金を後納すれば、脱税として罰せられることはないという、金持ちに都合の良い法律がある。 ときどき、スイスやらリヒテンシュタインの銀行などから預金者の名前のリストが盗まれ、それがドイツの税務署に売られるという事件がある。 すると、必ずその直後、自分の名前もそのリストに入っているかもしれないと危惧した預金者が、怒涛のごとく「うっかり忘れていました」と申告しようとするため、税理士が大忙しになる。これは、過去5年にわたって完璧に、もれなく申告しないといけない。あとで一つでも忘れていたものが出てくると罪となるので、皆、真剣だ。 預金者の名前の盗難は、昔は内部の者の犯行だったが、このごろはハッカーがやるのかもしれない。 それでも申告をごまかそうとする人たちは・・・ バイエルン会長が初公判で脱税を認める、約26億円を隠ぺい 脱税を認めた初公判を終えて裁判所を後にするバイエルン・ミュンヘンのウリ・ヘーネス元会長〔AFPBB News〕 また、最近、ドイツで衝撃的な脱税事件があった。往年のサッカー選手で、そのあと、ドイツ1の名門サッカーチーム「バイエルン・ミュンヘン」の会長を務めていた有名人、ウリ・ヘーネス氏が、拘置所に入ることになった超大型脱税事件だ。 2013年4月、まず、ヘーネス氏が「うっかり忘れ」の自己申告をしたことがニュースになった。しかし、調べてみたら、脱税は、うっかりでは済まないほどの額であることが判明し、検察が捜査に入った。 今年の3月、その公判が行われ、懲役3年半の有罪判決が出たのだが、脱税の規模は凄まじく、2003年から09年までで、罰金も含めて、2850万ユーロ(約39億9000万円)の滞納が明るみに出た。隠し口座の規模が自己申告分よりもずっと大きく、賭博での巨額な儲けも隠していたらしい。弁護団もこの判決をあっさり認め、控訴はなし。サッカーの王様的存在である人物の醜聞に、ドイツ中が大騒ぎになった。 何といっても、40億円近い脱税額が、皆を唖然とさせた。普通、1年の脱税額が10万ユーロ(約1400万円)を超えると、罰金ではすまず、たいてい刑務所行きとなる。 そんなわけで、ヘーネス氏の判決の後、彼がこれからどのような生活を送るかというような放送が、実際の刑務所の部屋を映し出しながらさんざん流れた。そして、それ以来、恐れおののいたドイツの脱税者の自己申告の波はやまない。 ところが、そこまできても申告はしたくなくて、どうにかごまかそうと思う人もまだいるらしい。そういう人は、現地で現金を引き出し、それを素知らぬ顔でドイツに持ち込もうとする。 税関の検査官の報告は興味深い。2013年以来、現ナマ奪還を図る人間が、突然増えた。彼らはプロであるから、鼻が利く。スイスとドイツの国境で、これは怪しいと思った自動車を停めて検査するわけだが、当たりのいい日は、3台に1台が高額の現金を隠しているという素晴らしい確率だ。 ドイツに現金として持ちこみが認められているのは1万ユーロ(約140万円)だが、1台の車に乗っている全員が、それぞれ9900ユーロを携えていることも稀ではないという。 ただ、1万ユーロを超えていなければ無罪放免と思うのは早い。なぜなら、税関はその人物を特定し、誰がどこから、いくらのお金をドイツに持って入ったかということを税務署に報告するからだ。つまり、以後、しっかり狙いを付けられるということになる。 一方、もっとたくさんの額の現金を持って入ろうと試みる人もいる。隠し場所にはいろいろな細工があるらしく、そこで前述のお札犬の登場となる。こうして2013年に見つかった現金の額は5億7300万ユーロ(802億円あまり)で史上最高だった。前年比で60倍以上だ。 中国指導部の親族、タックスヘイブンに隠し資産か 国際調査 1月、習近平国家主席や温家宝前首相ら中国指導部の親族が、海外のタックスヘイブンに隠し財産を保有しているとの報告書が発表された〔AFPBB News〕 いずれにしても、これからは、EUでは今までのように簡単に脱税ができなくなることは確かだ。それならばと、ケイマン諸島やヴァージン諸島などカリブ海方面へ目を向ける金持ちも多い。しかし、ケイマン諸島もヴァージン諸島も、イギリスの海外領土だ。 イギリスが金融で儲けているのは周知の事実であるが、とはいえEUの加盟国なので、これからはそうそうグレーゾーンで儲け続けるわけにはいかなくなるのではないか。イギリスが、いつもEUには片足しか突っ込みたがらないのには、いろいろな理由があったのだ。 もっとも、タックスヘイブンと言われているところは、イギリスの海外領土以外にも多々ある。これからの風潮として、世界中で徐々に銀行に対する管理が厳しくなっていくのか、あるいは、今まで通り、まだまだ預金者の秘密が守られるのか、それはわからない。 どっちにしても、脱税をしようなどとは、お金のある人しか思いつかないことなので、普通の庶民にとっては、ときどき大型脱税者が摘発されるのはいい気晴らしだ。できれば、銀行の規律はもっと厳しく、そして、預金者の素性はもっと明瞭にして、脱税はどんどん摘発してほしいものだ。 |