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<日本の実力>衰退する日本経済 働き手が半分になる時代がやってくる(日本の論点)
http://www.asyura2.com/14/hasan88/msg/140.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 5 月 27 日 21:01:25: igsppGRN/E9PQ
 

<日本の実力>衰退する日本経済 働き手が半分になる時代がやってくる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140527-00000001-nronten-bus_all
日本の論点 5月27日(火)18時47分配信


◇中国に大きく引き離された名目GDP

 日本経済の地滑り的衰退が続いている。IMF(国際通貨基金)がこの4月に発表した『World Economic Database April 2014』によると、日本の2013年の名目GDPは4兆9000億ドル(内閣府の国民経済計算では478兆円)で、1位米国の 16兆7991ドル、2位中国の9兆1810ドルに大きく離され、ようやく3位に踏みとどまっている(4位のドイツとの差は前年より縮まった=別表)。GDPは国内で生産された商品(物やサービス)の合計額で、いうまでもなく一国の経済の総合力を表すもっとも基本的な指標である

 日本経済の凋落が喧伝されたのは2010年。42年間守り続けたGDP世界2位の座を中国に明け渡したときだった。この時点ですでに、日本が将来、中国を抜き返すことはないだろうという観測がなされていたが、実際、これほど中国に水を開けられるとは思ってもみなかったというのが多くのエコノミストの感想だった。日本が3位に転落したときの名目GDPは5兆4950億ドル。それが2013年には5兆ドルを切る水準まで減少、逆に中国は、都市部と農村部の経済格差など、いびつな経済構造を内在させながらも、5兆9030億ドルからいっきに9兆ドル台にまで経済規模を拡大させていたからである。

 いまから20年前の1995年、世界のGDPに占める日本のGDPの割合は17.7%。それが2013年には6.6%にまで低下し、アベノミクスによって株価こそ2008年のリーマンショック以前に戻したものの、「失われた20年」の経済停滞から脱却できないまま、その存在感を大きく低下させているのである。

 ◇一人当たりGDPも急降下

 IMFのデータで、さらに気がかりなのは、国民一人当たり名目GDPの大幅な下降である。一人当たりGDPは、国民の平均的な所得水準(豊かさ)を示す指標だ。2013年の日本の一人当たり名目GDPは3万8491ドル(376万円)で、前年の4万6530ドルから急減、ランキングも13位から24位へと大きく後退している。2013年の首位は、ルクセンブルグの11万ドルで、日本とは3倍近い格差だ。ちなみに、米国は9位、GDP2位の中国は84位(6747ドル)である。

 日本の一人当たりGDPは経済成長とともに上昇してきた。1970年代半ばには5000ドルに過ぎなかったのが1980年代前半に1万ドルを突破、後半には2万ドルになり、1990年代前半からは3万ドル台で推移、2010年から4万ドル台を維持していた。それが2013年になって3万ドル台に逆戻りしたのである。IMFの見通しでは、2014年も日本は4万ドルを回復するのは難しいという。日本は1988年に一人当たりGDPランキングで3位になってから、ずっと3〜5位を維持していたが、2003年以後、ベスト10に一度も入っていないのだ。

 一人当たりGDPの減少が問題なのは、その額が、労働生産性(GDP÷労働者数)と労働力率(労働者数÷人口)の積として表されるからである。つまり一人当たりGDPは、国民の生産性の高さを示す指標でもあるのだ。かつて日本が高度成長を果たした要因の一つとして、1970〜80年代にかけて生産年齢(15〜64歳)人口が子どもや老人より多い「人口ボーナス」状況にあったことが挙げられる。しかし高齢化が急ピッチで進んでいる日本では、団塊世代のリタイアによって生産年齢人口が減ると同時に、確実に労働力率も低下する。今後日本が一定の成長率を維持するには、いうまでもないことだが国民一人当たりの生産性を上げるしかないのである

 生産性の低下と連動するように、日本の国際競争力ランキングも低迷したままだ。スイスにある世界屈指のビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)は、この5月22日に『IMD世界競争力年鑑』2014年版を発表したが、同ランキングで日本の総合順位は前年の24位より少し上がって21位。昔日の面影はない。

 IMDでは世界競争力を「企業の力(競争力)を保つ環境を創出・維持する力」と定義している。具体的には「富を生み出す主体である民間の企業活動をバックアップする環境整備の度合い」ということになる。IMDは1989年から世界競争力ランキングを発表しているが、日本は同年から92年までは1位だった。しかし93年に米国に1位の座を明け渡して以後、98年には20位までランクを下げた。5年で1位から20位へと急降下したことになる。そのまま低位に甘んじているのが実情なのである。

 IMDランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4つの分野からなる。この中でとくに日本の総合順位を押し下げているのが政府の効率性だ。GDP比で200%超、金額にして1220兆円超の先進国最大の財政赤字を厳しく評価しているのだ。

 ◇アベノミクスは奏功するか

 では長期にわたる日本経済の低落に歯止めをかけることは可能なのだろうか。アベノミクスのシナリオは、企業活動を活発化させることで企業収益を上げ、賃金アップを実現し、それを個人消費の拡大につなげ、景気の好循環によってデフレを払拭し、景気の拡大をはかるというものである。最終目標として個人消費の拡大を目指す方向だ。

 大胆な金融政策と財政支出、そして成長戦略を“3本の矢”とするアベノミクスが始動して1年余り。これまでのところ第1の矢は一定の成果を収めている。黒田東彦日銀総裁銀と歩調を合わせた「異次元の金融緩和」が円安・株高の劇的な変化を誘導し、自動車メーカーなど輸出関連企業の収益を大幅に改善させているからだ。

 しかしこの円安誘導政策は、一方では、日本が海外との取引でどのくらい稼いだかを示す「経常収支」を大幅に悪化させる事態も招いた。財務省は2月に2013年の国際収支速報を発表した。これによると日本の経常収支の黒字は、比較可能な1985年以降で最小だった2012年の4兆8237億円を32%も下回る3兆3061億円まで縮小している。

 貿易赤字も過去最大の10兆円超に達した。その原因は、原子力発電所の再稼働が見通せず、火力発電用燃料の輸入量が増加したのが大きく響いたといわれるが、実際には原発事故後、足元を見られた上に円安の進行で燃料の輸入価格が高止まりしたことが大きな要因である。

 では輸出はどうか。円安で伸びが見込まれたはずの輸出量はそれほど増えていない。なぜならすでに1985年のプラザ合意以後、多くの企業が円高を回避するために海外に生産拠点を移してきたからである。たしかに自動車関連を中心に円安の恩恵を受けた企業は多いが、実態は円安が輸出量を押し上げて収益を拡大させたのではなく、おもに円に換算した海外売上高が増加したといったほうが適切だ。

 これまで日本は資源を輸入し製品を輸出することで稼いできた。したがって円安になれば海外で高品質の日本製品が安く買えることになり、輸出が増えた。しかし、生産拠点が海外に移れば、この経済・産業構造は成り立たず、円安になってももはや輸出で稼ぐことはできないのだ。

 アベノミクスの第2の矢、公共事業を柱とした財政出動も内需拡大につながっているとはいいがたい。たとえば、政府は2013年度予算と12年度補正予算に盛り込んだ緊急経済対策とあわせて総額8兆円の公共事業予算を組んだものの、公共工事の入札不調(不成立)という異常事態が全国各地で多発しているのである。東日本大震災の後、復興事業が喫緊の課題となり、耐震化工事やインフラの整備事業が急増した。そこにアベノミクスの国土強靱化政策にともなう公共事業の大盤振る舞いが加わったため、建設資材が高騰、さらに人手不足が決定的となり、ゼネコンはじめ地方の建設業者は、応札したくてもできない状況に追い込まれてしまったのである。

第3の矢である成長戦略はどうか。安倍首相は、復興特別法人税を1年前倒しで廃止するとともに、法人実効税率の引き下げ方針を打ち出す一方、“見返り”として経団連など経済3団体に対し、異例の賃上げ要請をおこなった。この結果、2014年春闘では、大企業だけでなく中小企業の半数近くが賃上げに踏み切った(日本商工会議所調べ)。

 だが、この4月には消費税率が引き上げられ、2015年10月には10%への引き上げが予定されている。今回の賃上げが個人消費拡大に結びつくかどうかは、目下のところ不確実というのが、おおむねエコノミストの一致した見方である。

 ◇メイド・イン・ジャパンが輝きを失った理由

 戦後、奇跡の復興を果たした日本は、勤勉さを武器に高度成長をなし遂げ、1968年にはGNP (国民総生産:日本人が海外で生産した財やサービスの総額)で西独を抜き去り、米国に次いで自由主義世界で第2位の経済大国になった。その後1970年代に2度の石油ショックに見舞われるも、日本企業は逞しい適応力を発揮、革新的な省エネ・省資源技術を開発してこれを克服した。1979年には、アメリカの社会学者でハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授が、その著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で、日本が高度成長を実現したのは終身雇用、年功序列、企業別組合を「三種の神器」とする日本的経営による、と賞賛した(邦訳は同年、TBSブリタニカから発売)。そして1980年代、「メイド・イン・ジャパン」の製品は世界に評価され、自動車、家電製品、半導体ほかの世界市場を席巻した。日本は黄金時代を迎えたのである。

しかし1990年代初頭、「バブル経済」の崩壊後に状況が変わり始める。バブル期に日本の金融機関は、事業の将来性よりも、資産である土地や株の値上がりを見込んで企業への融資を続けていた。資産バブルである。1990年、政府はこの過熱を抑えるために総量規制をおこなった。バブルは弾けるべくして弾ける。歯車が逆回転し始め、金融機関は膨大な額の不良債権を抱え、貸し渋り・貸し剥がしが始まる。市中経済の血脈が止まり、ものづくりを支えてきた中小企業を窮地に追い込んだ。その状況は2000年代に入っても改善することはなかった。

 一方、グローバル化の進展は、日本の輸出産業を、安価な労働力を武器にした中国・韓国製品との価格競争にさらすことになった。さらに、長期にわたる円高傾向は生産拠点の海外移転を徐々に加速させていった。

 また、小泉政権下でおこなわれた規制緩和は、労働市場に大きな転換を迫ることになった。その一つが製造業への派遣の解禁である。企業は人件費のコストを下げ、国際競争力を高めるために、競って非正規雇用を増やしていった。この結果、「いざなぎ超え」といわれた2002年2月から07年10月の景気回復期には、輸出は年率10%を超える割合で伸びていった。しかし、国内需要は横ばい、雇用者の平均給与は逆に下がっていった。報酬格差の出現である。

 日本は資源を輸入し製品を輸出する貿易立国によって経済成長を遂げたというイメージが強い。だが見逃してならないのは、GDPでもっとも大きな比重を占める民間消費(個人消費)が、これまでの経済成長のエンジンだったという事実である。2013年の日本のGDP478兆円の内訳を見ると、飲食費や光熱費、遊興費などを含めた民間消費は293兆円と、なんと61%を占める。公共事業などの公的支出は26%、設備投資や住宅建設などの民間投資は16%。バブル崩壊後もGDPの6割近くを個人消費が占め続けているのである。その点は、世界第1位であるアメリカのGDPの7割が個人消費であるのと同様だ。

 ではなぜ「失われた20年」のデフレ不況を招いたのか。それはバブル崩壊後の経済政策が、変わらず輸出産業振興に力点を置いてきたのと、財政出動による公共投資を内需拡大の起爆にするという政策に比重が置かれるあまり、国民所得を増やし個人消費を拡大させる施策がつねに後手に回った結果だといってよい。

 今年4月、IMFのオリビエ・ブランシャール経済顧問は、2014年の『世界経済見通し』の「総括」で、「日本では、回復が持続的になるためには、アベノミクスを通し国内の民需を強化しなければならない」と強調した。


 

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コメント
 
01. 2014年5月27日 21:52:38 : 3cdYZYbVIc

こいつ完全なド素人だな

働き手が半分になったら供給力が半分になるから大インフレになる

そこでそこから設備投資が増えて日本経済復活だ

[32削除理由]:アラシ

02. あっしら 2014年5月27日 23:15:32 : Mo7ApAlflbQ6s : BjXYeKwuSI

01.の3cdYZYbVIcさん、初めまして。

 突然働き手が半分になるのでなければ、労働力人口の減少そのものが問題というわけでありません。
 予測されている事態ですから、時間をかけて、省力化で生産性を高める設備投資や65歳以上就労者の増加策さらには15歳超国民の再配置(例えば、非現業公務員は50歳以上限定にするとか)を行うことで、労働力不足に伴う供給力減衰はカバーできます。
 ただ、介護などサービス分野の省力化はモノの生産のようにはいきませんし、今後の人口構成を考えると、モノの供給力アップは、労働力人口の減少ペースを超えるものでなければなりません。

 供給力がカバーできるなら、問題は、総人口の減少が引き起こす総需要の減少ということになります。供給力の衰退を防ぐことができたら、「働き手が半分になったら供給力が半分になるから大インフレになる 」というのも、総需要との関係ですから起きない可能性が高いでしょう。

 逆に、労働力の減少が供給力の衰退につながることで起きる“大インフレ”は、「そこでそこから設備投資が増えて日本経済復活だ」というシロモノではありません。
 “大インフレ”だからといって設備投資を増加させるわけではありません。実質価値で需要が増加する傾向にあるかどうかが設備投資の判断基準です。また、日本企業であっても、中国など近場でより成長している需要地があれば、どちらで生産するほうがトータルの利益が大きいかで設備投資を行う場所を選択します。
 と言う以前に、“大インフレ”になるまで供給力の強化が行われなかったことは、供給主体(企業)が、生産地及び需要地として日本に見切りをつけたことを意味します。
 そのような流れですから、「そこでそこから設備投資が増えて日本経済復活」というのは、幻想か空元気と言わざるを得ません。

 スレッドで書かれているように、日本経済の最大の問題は、一人当たりGDPが縮小傾向にあることです。一人当たりGDPの縮小については、就労者数の減少ということ以上に、設備投資の低迷がもたらす労働生産性の伸び悩みを問題視すべきです。

 “大インフレ”は、供給力の強化で抑制されるのではなく、財政支出の絞り込みで抑制される悲劇的な様相を呈すると考えたいいがいいと思っています。

 金融政策にとってはデフレへの対応の方が難しいのですが、経済政策としては、“経済的余力”を意味するデフレのほうが処方箋を書きやすいと言えます。

 “大インフレ”になることを期待するより、労働力の減少が続いて悪性のインフレにならないよう供給力の強化を図る方がずっと望ましい将来を迎えることができます。



03. 2014年5月27日 23:30:52 : 3cdYZYbVIc
停年から何十年も生きる人が殆どなので、需要が減るのは緩やかで、供給が減るのは早いんですね。

実際、ロシアは日本よりはるかに速いペースで人口が減っているのに、インフレ率プラス10%くらい

人口が減っているドイツもインフレ率2.5%

[32削除理由]:アラシ

04. 2014年5月27日 23:48:05 : 3cdYZYbVIc
今の日本のデフレの原因は人口減少とは何の関係も無いのですね。

消費金額は30才台、40才台でピークを打ち、50才台、60才台で極端に落ちます。

日本は大きく消費する世代の人口が減ってきたから需要が伸びず、低成長になったからデフレになったというだけですね。それは給料が減れば子供を作れなくなるから当然ですね。

だから人手不足になって30才台、40才台の給料が上がればすぐに景気も良くなるし、人口の減少も止まります。

[32削除理由]:アラシ

05. 2014年5月28日 00:39:33 : TGZjS8iB2r
>ではなぜ「失われた20年」のデフレ不況を招いたのか。それはバブル崩壊後の経済政策が、変わらず輸出産業振興に力点を置いてきたのと、財政出動による公共投資を内需拡大の起爆にするという政策に比重が置かれるあまり、国民所得を増やし個人消費を拡大させる施策がつねに後手に回った結果だといってよい。

あまりこういうことは言いたくないのだが、支離滅裂と言わざるをえない。
本当に誰が書いたのか気になるレベル。


>中国に大きく引き離された名目GDP

そろそろアメリカからも、人民元安介入を止めさせるべきだとの意見が多くなりそうだな。


06. 2014年5月28日 09:28:24 : nJF6kGWndY
>金融政策にとってはデフレへの対応の方が難しい

本来、デフレは、金融政策のみで対応すべきではない

再分配政策(社会保障など)をきちんと整備し、一方で、長期的なインフラ整備を進めておけば、短期的なバラマキは不要だった

ただしQEは、欧米の緩和拡大による投機的な円高や国債売りを潰すのに使うには有効だったと言える

ただし、もうそういうデフレを恐れる呑気な時代ではなくなりつつあるのが現実だな


http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140519/264925/?ST=print
「小峰隆夫の日本経済に明日はあるのか」
ついに表面化した潜在的労働力不足

改めて考える人口問題(2)

2014年5月28日(水)  小峰 隆夫

 前回、人口についてもう一度書いてみようと考えた一つの理由は、人口構造の変化は「確かな未来」における「確かな課題」であるにもかかわらず、それが解決に向かっているどころか、むしろ深刻化しているように見えることだ、と書いた。今回はこの「人口問題の深刻化」という点について述べてみたい。

 これも前回述べたことだが、私は、人口構造の変化を考える時のポイントは、生産年齢人口(または労働力人口)が減少し、それが全体の人口に占める比率が低下する「人口オーナス」だと考えている。人口オーナスの下では、多くの課題が表れるはずだが、それは現実の経済社会の各面において次第に色濃く表れてきている。

人口オーナスがもたらす5つの課題

 現在進行中の「人口オーナス下の経済・社会」では、次のような5つの課題がほぼ必然的に表れる。人口オーナスの度合いが強まりつつある中で、その5つの課題は、解決されないままどんどん深刻化しているというのが私の現状診断だ。順番に説明しよう。

 第1の課題は、働く人の数が減ることによって成長が制約されることだ。「人口オーナス」とは、働く人が絶対的にも、相対的にも減少することなのだから、これは自明のことだ。この点は、アベノミクス下の景気回復が続く中で労働力不足問題として顕在化しつつある。この点については後でもう一度述べる。

 第2の課題は、国内貯蓄が減少することによって投資が制約されることだ。人口オーナスになると、勤労世代が相対的に減り、高齢世代が増える。人生のライフサイクルと消費・貯蓄行動を考えると、勤労世代は「貯蓄をする人」であり、高齢世代は「貯蓄を取り崩す人」である。すると、人口オーナスが進めば必然的に経済全体の貯蓄率は低下する。貯蓄の減少は国内投資の制約要因となり、生産性の上昇を妨げることになるだろう。

 この国内貯蓄の減少は既に相当進行している。OECDのEconomic Outlookの巻末に掲載されているStatistical Appendixによると、日本の家計貯蓄率は、1998年には9.4%だったのだが、その後みるみる低下し、2014年にはなんと0.6%にまで低下すると見込まれている。ほとんど貯蓄率ゼロの世界だ。貯蓄率には多くの要因が作用するが、人口オーナスの進展による勤労世代の減少・高齢世代の増加がその最も大きな要因であることは間違いない。

 第3の課題は、年金・医療・介護などの社会保障制度が行き詰まることだ。日本の社会保障制度は、基本的には、現在働いている人々が、現在の高齢者に対する給付を負担するという「賦課方式」を取っている。何度も言っているように、人口オーナスというのは、人口に占める働く人の割合が低下することである。すると、人口オーナス状態では、社会保障を負担する人が減って、給付を受ける高齢者が相対的に増えていく。すると必然的に賦課方式の社会保障制度を維持することは難しくなるのは当然のことだ。

 これはもうずいぶん前から分かっていたことであり、その対応の方向も明確だ。払う人が少なくなって、受け取る人が増えるわけだから、対応策は、払う人の負担を増やすか、受け取る人の受益を削るしかない。しかし、依然として有効な対策がとられるには至っていない。まさに「確かな課題」であるにもかかわらず対応していない典型的な問題だ。

 第4の課題は、地域が疲弊することだ。地域で人口オーナスが進むと、地域の働き手が少なくなるため、地域の活力が衰えることになる。前回述べたように、人口オーナスの程度は、従属人口指数(非生産年齢人口/生産年齢人口、これが高いほどオーナス度が大きい)によって見ることができるのだが、都道府県別にこの従属人口指数の状況を見ると、概ね発展性の高い都市部(東京、神奈川など)で人口オーナスの度合いが低く、発展性が低い地方部(島根、秋田など)でその度合いは高い。

 こうした発展性の格差は、発展性の低い地方部から発展性の高い都市部への生産年齢人口の移動を引き起こす。すると、地方部の人口オーナスはますます加速してしまう。つまり、人口オーナス度合いの差が発展性の格差を生み出し、その格差が人口移動を引き起こすことによって人口オーナスの地域差をさらに大きくし、それが発展性の格差をさらに拡大させるという悪循環が生じているのである。

 こうした地域の疲弊現象は、最近、増田寛也氏を中心とする日本創成会議の「人口減少問題検討分科会」が、「提言 ストップ少子化・地方元気戦略」という報告の中で、地域の人口推計を明らかにして一躍話題になった。増田氏らのグループは、このシミュレーションを踏まえて、2040年には全市町村の29%に当たる523の市町村が「消滅可能性の高い」状態となるという衝撃的な推計を明らかにしている。私に言わせれば、これはまさしく人口オーナスがもたらす悪循環によるものであり、このまま行けば本当にそうなるだろうと思う。

 そして第5の課題は、民主主義が機能不全に陥ることだ。人口オーナスになると、有権者に占める勤労者の比率が低下し、高齢者の比率が高くなるので、高齢者寄りの政策が実行されやすくなる。いわゆる「シルバー民主主義」である。人口オーナスの下では社会保障経費が増大し、大きな財政負担となるのだが、シルバー民主主義は、その財政再建や社会保障制度改革を阻害することになる。

 このシルバー民主主義も、まさに現在進行中の大問題である。例えば、年金については、インフレ時には給付を引き上げるのだから、デフレで物価が下がったら給付を切り下げるのが当然なのだが、特例としてそれが行われてこなかった(2013年10月と14年4月で解消)。また、医療についても、70〜74歳の医療費は、後期高齢者医療制度の創設に伴い、2008年度から自己負担割合を2割に引き上げる予定だったが、制度発足直前に1割に凍結してしまった(2014年4月から新たに70歳になった人から2割負担に引き上げ)。いずれも政治が高齢者の票を失うのを恐れたからだ。全くシルバー民主主義そのものである。

大労働力不足時代へ

 こうした5つの課題の中で、以下では、最近特に問題が明瞭になってきた労働力問題に即してもう少し追加的に述べておこう。

 まず、人口オーナスそのものの進行について概観すると、日本の生産年齢人口のピークは1995年の8730万人で、その後は一貫して減少を続けており、2013年(10月1日現在)にはついに7900万人となった。この点は最近、「32年ぶりに生産年齢人口が8000万人割れ」と大々的に報道されたので(4月16日各紙)、印象に残っている人も多いだろう。生産年齢人口が全人口に占める比率も、同じ期間で69.5%から62.1%に低下している。

 少子化傾向が変わらなければ、こうした生産年齢人口の減少はこれからも続く。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2012年1月)によると、生産年齢人口は、2030年に6770万人(人口の58.1%)、2050年には5000万人(同51.5%)へと減少していく(出産・死亡中位)。

 この生産年齢人口を使って人口オーナスを説明すると、しばしば「なぜ15歳から64歳と区分するのか」「65歳以上でも働けるではないか」といった質問を受ける。確かに、(私みたいに)65歳以上でも働いている人は多いし、生産年齢人口でも働いていない人は多い(学生や専業主婦)。

 しかしもともと、生産年齢人口というのは、単に年齢で区分しただけの数字に過ぎない。「15歳から64歳」という区分を使うのは、それが国際的な定義だからで、全く便宜的なものだ。生産年齢人口が64歳までだからといって、定年をそれに合わせる必要はないし、その定義を使っている人が「働くのは64歳までとすべきだ」と考えているわけではない。

 このことは、仮に生産年齢人口ベースで人口オーナスが進展しても、労働力人口ベースでは人口オーナスはそれとは違った動きを示す可能性があることを意味している。つまり経済にとって問題なのは、生産年齢人口ではなく、労働力人口なのだから、生産年齢が減っても、女性や高齢者の労働力率を引き上げて、労働力人口の減少を抑制することによって、経済的影響を相当緩和できるということである。

 同じような議論をすると、生産年齢人口の定義を変えて、生産年齢人口を増やしても、それによって労働力人口が増えるわけではない。経済財政諮問会議の下に設けられた「選択する未来」委員会では、50年後を見据えた経済社会の在り方を検討しており、最近その中間整理を発表した。

 その中で、「これまでは15歳以上から65歳未満までを生産年齢人口と捉えてきたが、過去10年余りの期間で高齢者の身体能力は5歳程度若返っていることを踏まえれば、70歳まで働く人(新生産年齢人口)と捉え直し、仕事や社会活動に参加する機会を充実させていく」と提案している。

 しかし、もともと生産年齢人口と労働力人口は別物なので、新しい定義をしたからといって労働力が増えるわけではない。生産年齢人口の定義がどうであれ、働く意欲と能力を持っている人ができるだけ働けるような場を準備していくことが重要なのである。

 そこで、労働力人口の推移を見ると、1998年の6793万人をピークに減少し続けてきており、2013年は6577万人となっている。15年間で216万人も減ったことになる。

 私は、『人口負荷社会』(日経プレミアシリーズ)を書いた時、今後はどう転んでも労働力は不足するはずだと考えた。その部分を述べた章のタイトルを「大労働力不足時代へ」としたことからもそれが分かるだろう。しかし、現実には労働力不足は発生しなかった。逆に、若者の雇用情勢が悪化し、政府は雇用機会の確保に腐心する状態が続いた。これは、人口面から労働力の供給は減っていたものの、経済実態面から労働力の需要がもっと減ったからである。つまり、表面化はしなかったものの、潜在的な労働不足要因は常に底流として、次第にその勢いを増しながら流れ続けていたのである。

 その潜在的労働力不足は、ここにきてついに表面化してきたようだ。日本の景気は、アベノミクス登場の2012年11月頃から回復しつつあるのだが、その中で雇用情勢はかなり急速に改善しつつある。2012年10月には4.1%だった失業率は、2014年3月には3.6%に低下し、0.82倍だった有効求人倍率は1.07まで上昇してきた。

 こうした中で女性労働力や外国人労働力の活用策などが急遽議論され始めたが、泥縄的だとの印象を免れない。いずれも長期的な課題に対する構造的な政策としてもっと早くから準備しておくべきことであった。

 この労働力不足問題に象徴されるように、これから日本の経済社会では、人口構造の変化によって生み出される諸問題が次々に、いろいろな形態をとって噴出してくるだろう。それは、経済社会の底流として、人口オーナスという流れが、次第に勢いを増しながら確実に流れ続けているからなのだ。

(次回は6月11日に掲載する予定です)

このコラムについて
小峰隆夫の日本経済に明日はあるのか

進まない財政再建と社会保障改革、急速に進む少子高齢化、見えない成長戦略…。日本経済が抱える問題点は明かになっているにもかかわらず、政治には危機感は感じられない。日本経済を40年以上観察し続けてきたエコノミストである著者が、日本経済に本気で警鐘を鳴らす。


07. 2014年5月28日 10:19:31 : D5gqEFhwoc
経済成長や豊かさとはGDPのランキングを競うことではない。
中身を見ずに数字ばかり追い求めるからおかしな方法ばかりとるようになる。

しかし、nJF6kGWndY の記事のコピペがうざいと思うのは俺だけか。
リンクがあるならリンクだけにして欲しいのだが・・・


08. 2014年5月28日 10:22:17 : nJF6kGWndY
おまけ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N5FW766K50YX01.html
「高齢者の国か経済大国か」、外国人活用で岐路−労働人口減

  5月28日(ブルームバーグ):中国山東省出身の范(はん)修玉さん(29)は、週末に当たる11日も早朝から板金ダクトの接合に汗を流していた。外国人技能実習生として昨年12月に来日し、建築用ダクトの製作や施工を行う春田工業(埼玉県川越市)で、遅い日は夜の10時まで働いている。自ら志願して残業をこなし、月の休みも2日程度という。
仕事に集中するあまり、妻と6歳の息子から離れた単身赴任の生活を寂しいと思う暇もないが、范さんは「日本の賃金は中国で働いていた時の3、4倍。おまけに進んでいる日本の建築技術も学べる」と充実した日々に満足している。「日本は労働環境がいい。可能なら家族を連れて来て、ずっと日本で働きたい」。
政府・与党の間で、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた議論が活発化している。労働力人口の減少に伴い、建設や介護など一部の産業で人手不足が深刻化し、今後も事態の悪化が見込まれていることが主な背景だ。ブルームバーグ・ニュースが実施した14人のエコノミストに対する調査の中央値によると、現状の4倍に当たる年間20万人の外国人労働者受け入れが必要との見方が出ている。
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、「10万人程度では労働人口減少に対する効果が限定的だが、それでも政治的には難しい決断だ」と指摘。安倍政権は「2015、16年の一連の選挙への悪影響を気にするあまり、外国人労働者受け入れ問題では腰が引けている」との見方を示す。  
労働力人口の減少
総務省の労働力調査によると、日本の労働力人口は1998年の6800万人をピークに、足元では6500万人まで減少。内閣府の試算では、出生率や労働参加率が現状から改善しないと仮定した場合、2030年には5700万人、60年には3800万人程度まで減少すると予想され、31年から60年の間に潜在成長率を年0.9%ほど押し下げる要因になる見通し。
そうした中、政府は経済財政諮問会議で主要議題の一つとして、外国人労働者の活用について議論しており、6月にまとめる成長戦略に政府の方針が盛り込まれる見通しだ。一方、自民党は3月に外国人材活用に関する中間案をまとめ、農業や製造業、介護などの分野での活用は避けては通れない論点と指摘。政務調査会に外国人労働者特別委員会を設け、議論を続けている。
同会議の中で、元日本銀行副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長は、「出生率の引き上げに加え、移民の受け入れも異次元政策の一つとして取り組むべき」と主張し、50年までに移民の純流入者数を年20万人まで増やすことを提言。茂木敏充経済産業相は、外国人活用について「女性が活躍できる環境という点から、家事支援が極めて重要になる」と、外国人家政婦受け入れの必要性に言及している。
慶応義塾大学大学院商学研究科の斉藤潤特任教授は、「人口減少の問題はすでに深刻で、政府はすぐに対応策を打ち出さなければならない」と指摘。日本に提示されている選択は、「長期的には高齢者が住むだけの古い国になるか、外国人と共存する経済大国を目指すかだ」と話す。
ブルームバーグ・ニュースが実施したエコノミスト調査によると、労働力人口減少に対応するために年間で20万人の外国人労働者の受け入れが必要な一方、世論の反対を考慮に入れると現実的な受け入れ可能人数は10万人。13年時点で1.1%(約72万人)にとどまる労働力人口に占める外国人の比率については、今後10年間で5%まで上昇する必要がある、との見方が示された。
厚労省の労働経済動向調査で、労働力不足が最も深刻とされている建設業で、政府はすでに外国人労働者の実質的な受け入れ拡大を決定した。15年度から東京五輪が開催される20年度までの時限措置として、技能実習生の滞在期間をこれまでの3年から、最大で6年に延長。外国人建設労働者の数は、20年度までに累積で7万人程度増える可能性があるという。
受け入れに向けた試金石
移民政策研究所の坂中英徳所長は、「政府内で外国人労働者の受け入れがこれほど活発に議論されたことはこれまでなかった」と指摘。政府の建設労働者の受け入れ拡大は、「政府や国民にとって、大規模な移民受け入れに向けた試金石になり得る政策だ」との見方を示す。
人口動態の急激な変化から、外国人労働者の必要性は高まる一方、国民はまだ受け入れに対して慎重だ。読売新聞が4月に報じた世論調査では、人口減少に関して79%がマイナスの影響が大きいと答えた一方、外国人労働者をもっと受け入れるべきかとの問いには、過半数の54%が否定的な答えだった。
政府の受け入れ拡大の動きに反対する草の根レベルの市民活動も出ている。「移民・多文化共生政策に反対する日本国民の会」は、3月から20万人の移民受け入れに反対する著名運動を開始し、5月28日時点で約1万8500人の著名を集めている。同会は今後、国会議員への陳情なども計画しているという
同会はブルームバーグ・ニュースの取材に対して、こうした活動を展開する理由について、「移民政策で成功した国はなく、外国人を大規模に受け入れることで日本人にとって日本が住みづらい社会になる。移民の受け入れは不可逆的で、一度入れると追い出すことはできない」と電子メールで回答した。
生活者としての視点
一方、外国人労働者と長年共生してきた自治体が集まり01年に発足した外国人集住都市会議は、2月に法務省に対して意見書を提出。外国人労働者の受け入れの議論が加速していることは評価する一方、受け入れに際しては労働者としてだけでなく、生活者としての視点が必要との意見を表明した。
同会のメンバーである浜松市では、日系ブラジル人の増加に伴い外国人住民の割合が08年には一時4%を超えた。鈴木康友市長は、外国人の受け入れは「決してマイナスではない。今いる外国人は社会にかなり溶け込んでいる」と指摘。「今までは外国人を支援することが政策の中心だったが、これからは外国人の多様性を街の活性化に活かす」と述べている。
89年にブラジルから浜松市に移住し、日系ブラジル人の相談業務などを行っている石川エツオ氏(52)は、「日本はすごく住みやすく、多くの外国人に来て欲しい」とする一方、「旅行で来ている外国人に比べ、仕事で来ている外国人はレベルが低いと見られがち。外国人も日本人と同じように家族や国のために働いている」と訴える。
石川氏によると、一部企業では法律上義務付けられている労災保険や雇用保険、健康保険に外国人を加入させていないケースがあるほか、日系ブラジル人は日本人の保証人がいないと、家やマンションを借りることがまだ難しいという。石川氏は「社会の高齢化に伴い、日本は外国人の力が必要になってくる」とし、「外国人は日本社会に溶け込む努力、日本人も受け入れる努力が必要」と話す。
国際協力開発機構(OECD)によると、日本の人口に占める外国籍を持つ人の割合は1.6%と、調査対象28カ国の中でポーランドとスロバキアに次いで3番目に低い。米国の割合は6.8%、ドイツは8.5%、スイスは22%に達する。
必要なのは行動
JPモルガン証券株式調査部長のイェスパー・コール氏は、留学生のアルバイト許可や、建設労働者に対する特例ビザの発給など、外国人労働者の受け入れ拡大に向けて「政府は着実に足場を作ってきた」と評価。「もはや移民に賛成、反対の問題ではない。移民の賛否を議論する余裕はもはやなく、必要なのは行動に移すことだ」と主張する。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 岩本正明 miwamoto4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net淡路毅, 宮沢祐介
更新日時: 2014/05/28 08:04 JST



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