★阿修羅♪ > 経世済民89 > 577.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
家賃は崩壊している?「平均的な家賃」のウソ 不動産業界のいびつな情報流通構造(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/hasan89/msg/577.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 8 月 05 日 06:33:20: igsppGRN/E9PQ
 

家賃は崩壊している?「平均的な家賃」のウソ 不動産業界のいびつな情報流通構造
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140805-00010002-bjournal-bus_all#!bvDwzs
Business Journal 8月5日(火)3時0分配信


 7月30日付当サイト記事『簡単に家賃を下げる人が続出?家賃崩壊の実態と背景 1万円台、あふれる空室、大家受難…』の記事を読んで「家賃が劇的に下がっているなんて聞いたことない」と思った人もきっと多いはず。では、こんな重大なトレンドが、なぜ世間一般に知られていないのか。そのナゾを解くカギは、不動産業界のいびつな情報流通構造にある。

 家賃の下落がマスメディアで報じられることはほとんどない。駅前の不動産屋に行っても、激安物件には、なかなかお目にかかれない。賃貸住宅の家賃は、ほかの消費財のように派手なセールが打たれることがないため、一般人が知る機会は極端に少ない。

 家賃に関する定期的な調査は、地価と同じく、下げているにもかかわらず「下げ止まりつつある」「下落地点が前回より減少」など、巧妙な表現を使ってマイナスイメージを最小限にとどめている。

 要するに、不動産に関する情報の出所は、ほとんどが供給側の利害関係者であるため、消費者本位の情報が流通されにくい構造が出来上がっているのだ。おおげさに言えば、まるで第二次世界大戦中の大本営発表のごとき情報操作がまかり通っているのである。賃貸サイトのお役立ちページに掲載されている地域別の家賃相場などはその典型で、多くの地域においては、およそ実情と掛け離れた数字しか出てこない。

 試しに、あなたが住んでいる地域の家賃相場を賃貸サイトで調べてみてほしい。その相場家賃と、同じ地域の新築の家賃とを比べてみると、相場家賃のほうが高いケースが目立つ。1日も早く満室にしたい新築物件のオーナーは、家賃を割安に設定する傾向があるとはいえ、いちばん高くてもおかしくない人気の新築よりも、さらに高い額を「相場」と呼ぶのは、利用者をミスリードするイカサマ行為といわれても仕方ないだろう。

●相場家賃が高くなるカラクリ

 家賃の相場データが高めに表示されるのには、いくつかの理由がある。

 第一に、「最多価格帯」ではなく「募集データの平均」を取ると、どうしても高いほうに引っ張られてしまうからだ。一世帯当たりの平均貯蓄額が1500万円との調査結果に接して、多くの人が違和感を抱くのにも似ていて、家賃も平均値を取ったとたんに実情を表しているとはいえなくなるわけだ。

 東日本レインズによる東京23区の平均家賃をみてみると、2014年1〜3月時点では、9万7000円(32.90平米)である。ピークだった08年7〜9月期の12万3000円からすれば、2割以上下落していることがわかり、この推移をみるだけでも、家賃崩壊現象がまさにこの数年に起きている現実が如実に見て取れる。

しかし、家賃の絶対額は依然として高く、「平均的な家賃」と呼ぶには違和感がある。

 それは、「表参道の1DK、18万円」と「南千住の2DK、5.3万円」も一緒くたにして計算しているからであって、東京23区に住んでいる人は、みんな9万円くらい払っているわけではない。

 参考になるのは、いま自分が住んでいる部屋と同じ条件の物件がいくらの家賃で募集されているかだけであって、それ以外の平均値などは、なんの意味も持たないのである。

 第二に、表面家賃と実質家賃の違いが挙げられる。

 家賃を一定期間(1〜3カ月)無料にする「フリーレント」と呼ばれるオプションを付ける物件が最近目立って増えてきたが、それは実質的には家賃の値引き行為にほかならない。それにもかかわらず、なぜかその値引きは統計データに一切反映されない。

 例えば、家賃12万円で募集している部屋に、2カ月のフリーレントが付いている場合、2年間の契約期間の総額でみると、通常より24万円安くなっている計算。1カ月当たりにならせば1万円安くなっているのだから、家賃11万円にしたのと同じことである。

 ならば、どうして最初から家賃を11万にしないのかというと、家賃を安くしてしまうと、すでに入居しているほかの部屋の人から「うちも安くして」と要求されかねないからだ。一定期間無料で、家賃は1円も値引いてないフリーレントであれば、そんな心配は一切ない。

 また、収益物件として転売するときに、家賃を安くしてしまうと、「利回り」と呼ばれるその物件の収益性を計る指標が低くなるが、フリーレントであれば収益性をより高く見せることができる。

 従って、大家はできるだけ家賃は下げずに、目に見えないところで実質的な値引きをしたがるのだが、表面に出てこないために、実質的な家賃は下がっているにもかかわらず、調査データなどでは、高いまま表示されがちなのである。

●実情を把握して不動産屋と交渉すべし

 しかし、そういった“大本営発表”の情報が、徐々に通用しなくなった。

 かつては駅前の不動産屋に行って、希望条件に合った物件を紹介してもらうしかなかったため、高い仲介手数料を取れる物件や自社の管理物件を優先して紹介されるなど、借り手は不動産屋のいわれるままだったが、いまは自ら主導権を握ることも難しくなくなってきた。

 スマートフォンで賃貸サイトを検索するだけで、いつどこにいても一瞬にしてめぼしい物件を検索することができるようになったからだ。その気になって調べれば、自分がいま住んでいるアパート・マンションの隣の部屋やほかの階の家賃すらわかってしまうわけだから、これは非常に画期的なことである。長年、プロの業者だけで独占されてきた市場の情報が一般にもオープンになっているわけだが、その情報を有利に活用できる人と、そうでない人とでは、大きな差が出てしまう。

 いまのところ、家賃崩壊が始まっていることに気づいて、値下げ交渉をしたり、安い部屋に引っ越したりした人だけが家賃デフレのメリットを享受できているわけで、「家賃が下がるはずはない」と思い込んでいる無知な人は、いくら世間相場が安くなっても1円の利益も得られない構造になっている。

「もう“無知税”なんて払いたくない」と思う人は、いますぐ理論武装すべきである。

日向咲嗣/フリーライター


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2014年8月06日 09:47:24 : nJF6kGWndY

適正価格の決定は、簡単ではない

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140801/269510/?ST=print 
3分間で自宅の「適正な値段」を知る方法 雑談の“普段着ネタ”から経済や金融の本質を学ぶ
2014年8月6日(水)  野口 真人


 読者の皆さんがご自宅を売却することになったとき、お住まいの自宅の適正な値段をどうやって調べますか。
 今はその予定がなくても転勤の辞令が突然出て、「その時」がいきなり来るかもしれません。引退後の第二の人生を田舎で送ろうと夢みている方は、その時が来たとき、自宅を売却することになるかもしれません。
 いずれにしても、自宅の値段、すなわち「価値」を評価する方法を知っておいて損はないでしょう。人生の三大イベントの一つにも挙げられる持ち家の購入や売却は、資産形成に大きく影響します。金額だけで考えれば一生で一番大きな決断といってもよいはずです。
 なるべく高く売りたいのは人情ですが、売買は買い手がいて成立する話ですから、希望の価格で売れるとは限りません。いや、希望価格で売れることは稀と言ったほうがよいでしょう。
 ハムレットではありませんが、自宅を売るか売らないか、それが問題です。自宅の適切な価値を知るにはどうしたら良いのか。いくらであれば売るべきなのか。それなら売らないという判断をどう下せばよいのか。不動産の知識がなくても3分間であなたの自宅の価値を知る方法を紹介します。
マンション価値は家賃の200倍
 分譲マンションを例にとります。一都三県の築浅マンション(築10年以内)であれば次の簡単な計算式で、ほぼ適正価値を出せます。

 東京都、しかも港区や渋谷区など都心部にある築浅マンション(築10年以内)であれば次の式を使ってください。

 例えば、あなたが都下にある築10年の分譲マンションに住んでいるとします。今、それを賃貸に出したら月25万円の家賃が見込めるとすると、あなたの部屋の適正価値は次のように計算できます。

 家賃さえ分かればマンションの価値が分かりますから簡単です。インターネットで検索すれば、ご自分のマンションがある地域の賃貸相場は簡単に入手できますから、時間もコストもかかりません。
 通常の不動産鑑定では、場所や道路付け、近隣環境、築年数、駅からの距離など様々の点を考慮して価格を導き出します。不動産の専門家でない限り、自力で鑑定などできませんから、不動産鑑定士などに頼む必要がありますのでコストがかかります。
 売るべきか売らざるべきか、売却可能価格と上記の計算で出した価値を比較すれば決められます。計算によるとマンションの価値は5000万円なのに、売りに出したら4000万円の価格しかつかないとしたら、我慢して売るのを待ちましょう。逆に6000万円の値が付いたのであれば迷わず売ればよいのです。
市場はしばしば間違いを起こす
 ここまで読まれた皆さんは当然、疑問を持たれたと思います。疑問は「なぜ家賃から計算するのか」「200倍とか240倍とか、どういう根拠でそうするのか」のどちらかでしょう。
 最初の疑問をもう少し丁寧に書くとこうなります。分譲マンションとして買った自宅の価値をなぜ家賃から算出するのか。買ったときの価格や現在の取引相場を勘案して判断するものではないか。
 マンションに限らず、「買った時の価格以下では売りたくない」と取得価格(原価)に固執する人がおられます。損をしたくないという気持ちは理解できますが、時価と原価は全く別物です。時価が下がってしまったときに、現時点での相場(時価)とかけ離れた、原価に近い価格を提示しても誰も振り向かないことは明らかです。
 不動産屋を覗くと、どうみても相場からかけ離れた高値が付けられている物件があります。多くの場合、売主が取得原価にこだわり、「これでは売れませんよ」と不動産業者から忠告されてもそれを無視しているケースです。
 「万が一にでも買い手が現れるかもしれない」などと淡い期待を抱くのかもしれませんが「万が一の確率でもそんな買い手は現れない」と考えたほうがよいです。言うまでもなく、買い手は血眼でお買い得物件を探しているからです。そのような「値付けミス物件」には目もくれません。
 「購入時の価格で売れるとは思っていない。近隣の相場に従うしかない」。こう考え、ほとんどの方は近所の不動産屋を訪ね、近隣相場を教えてもらうことでしょう。自分のマンションの部屋と同じ間取りの部屋が6000万円で取引されたのであれば、自分の部屋も6000万円で売りたいと思うはずです。
 それなのになぜ、賃貸の家賃からマンションの価値を計算するのでしょうか。実は「近隣の相場」が間違っていることがあるからです。
 先に計算した例を使って説明します。家賃から計算したマンションの価値は5000万円なのに、不動産屋から「先月、ほぼ同じ間取りが4000万円で売れたから、その前後でしょう」と言われたとしましょう。
 市場というものはいつも合理的に機能しているわけではありません。「市場が常に正しいとは限らない。それどころか、しばしば間違いを起こす」と思ってください。証券でも不動産でも同じです。
 リーマン・ショック後のように、一夜にして市場が麻痺してしまうこともありますし、バブルということもあります。市場で取引されている価格相応の価値が存在しない物件もあれば、本来の適正価値からかなり低い価格で取引される物件もあるのです。
 5000万円の価値のあるマンションなのに、何らかの理由で市場が混乱していたなら、3000万円でも売れないかもしれません。ここまで異常な事態ではなくても、5000万円の価値が4000万円前後で取引されていることはあるのです。もし4000万円でしか売れそうもないのであれば、市場が実態以上に弱気になっている、あるいは依頼した仲介会社が手抜きをしていると考え、安く売ってしまうことは避けたいものです
 逆に5000万円の価値のマンションに6000万円での買い手が現れた時には、市場は適正レベルを超えて加熱し始めたなと考え、すぐに6000万円で売りましょう。少し待てば6500万円まで上がるかもしれないと思って売り渋るのは愚の骨頂です。「明日になれば今日より高くなるかもしれない」と思うのは、まさにバブル崩壊を引き起こした「根拠なき熱狂」に踊らされていることになるのです。5000万円の価値しかないものに6000万円の値が付いたのならば「市場が間違っている」と判断しましょう。
なぜ家賃を基に価値を計算できるのか
 それでは、なぜ家賃を基に計算するのか、説明します。

 上記の式の基になっているのは「収益還元法」という手法です。収益から物の価値を計算するという意味です。物の価値をその資産が生み出す将来のキャッシュフローから導き出す方法です。別名「DCF(Discounted Cash Flow)法」と呼ばれます。これに対し、買った価格を基にするやり方を「原価法」、相場を基に決めるやり方を「取引事例比較法」と言います。
 マンションの価値を計算するためにはマンションのキャッシュフローを基にします。そのマンションがどのくらい稼いでくれるか、ということです。すなわち家賃です。
 先に「場所や道路付け、近隣環境、築年数、駅からの距離など様々の点」を考慮すると書きましたが、これらは家賃に反映されていると考えられます。同じ場所にあるマンションでも、そのグレードなどで価値が違ってきますし、高層マンションの場合は階が高くなるほど価格が高くなりますが、これらも家賃に反映されています。
 リーマン・ショックやバブル崩壊時など、市場がパニックに陥った時であっても、家賃は比較的安定して推移します。もちろん長期的にはミクロ・マクロ双方の経済状況の影響を受けて変動していきますが、市場価格のように乱高下はしません。
 家賃は何に影響されるかといえば、賃金があるでしょうし、大きく言えば国力とも関係があります。いずれにしても急変はしないものです。やや乱暴なことを言えば、市場取引には投機という雑音が入るので、どうしても乱高下する危険がつきまとうのです。住む家を借りる際に「大金を張って勝負しよう」という人はいないでしょう。
 では家賃を基にマンションの価値を計算するとして、なぜ200倍するだけでよいのでしょうか。それには収益還元法(DCF法)を説明する必要がありますので、もう少しお付き合いください。
 先の例をもう一度使います。家賃25万円のマンションであれば年間300万円のキャッシュフローがあります。価値を計算するには毎年のキャッシュフローを加算していきます。今後30年間貸すことができるとしたら9000万円の収益が期待されますが、この9000万円はそのままマンションの価値になりません。
 なぜなら「今日の100円は明日の100円より価値がある」からです。もし、このマンションをとりまく世界の金利が6%であったとしたら、今日の100円は1年後106円になりますが、逆に考えると1年後の100円は現時点で約94円(100÷1.06)の価値となります。
 したがって年間300万円のキャッシュフローは1年後に283万円(300万÷1.06)、2年後に267万円(300万÷1.06÷1.06)となります。このように割り引かれたキャッシュフローを求めていき、それらを足し合わせると現在の価値が計算できます。
 年間300万円の家賃が30年間続くとして、このマンションの価値を算出すると4129万円にまで割り引かれることになります。9000万円ではなく4129万円が価値というわけです。
100年貸してもマンションの価値はそれほど上がらない
 以上の計算からお分かりだと思いますが、30年間ではなく100年間貸すことが可能だとして計算しても、マンションの価値はそれほど上がりません。期間が3倍以上になったからマンションの価値も3倍以上になると考えてはいけません。なぜなら遠い将来のキャッシュフローは大きく割り引かれてしまうからです。
 100年後のキャッシュフローの現在価値は300万円÷(1.06の100乗)で計算できます。結果は8848円にしかならないのです。
 次の図をご覧ください。貸出期間とマンションの価値の関係を表したものです。
■貸出期間とマンションの価値の関係

 月額300万円のキャッシュフローは割り引かれて下がっていきます(グラフの左上から下がっている曲線)。このキャッシュフローを足していくとマンションの現在価値になりますので、次第に増えていきます(図の左下から立ち上がり、右上に向かう曲線)。ただし、貸出期間30年間で見積もったときの価値は4000万円を超えますが、100年にしても5000万円に届きません。
 100年どころか永久に家賃がもらえると想定してもマンションの価値は5000万円を超えることはありません。(300万円÷(1.06のn乗))という式でnを1から始めて足し合わせていき、nを無限大にしますと、5000万円(300万円÷0.06)に収束します。つまり次の式になります。

家賃は「永久年金型キャッシュフロー」
 ようやく冒頭で紹介した式に戻れました。ここで皆さんから二つ質問が出るでしょう。「マンションの価値を計算する際、永遠に家賃がもらえると仮定していいのか」「金利6%が重要な数字になるわけだが、それはどういう根拠に基づくのか」と。
 キャッシュフローには色々な種類があります。永久にキャッシュフローが見込めるものを「永久年金型キャッシュフロー」と呼び、次の式で計算します。

 割引率とはこれまで「金利」と呼んできた数字です。1年後の100円は現時点で約94円(100÷1.06)の価値となると言ったときの「6%」のことです。キャッシュフローが割り引かれていくので「割引率」と呼ぶわけです。
 マンションの家賃は「永久年金型キャッシュフロー」に分類されます。古くなったマンションであっても、修繕をしたり、内装をやり直したりすればキャッシュフローを生み続けると考えるからです。
 これに対し、キャッシュフローが一定期間しか続かないものを「年金型キャッシュフロー」と言います。永久年金のような簡単な式はなく、期間に応じて計算しなければなりません。年金型の例は債券の利子、リース料です。いずれも最初から期間が設定されているので、それにしたがって現在の価値を計算します。
キャッシュフローのリスク度合いをどう見るか
 いよいよ解説の大詰めです。6%という割引率(金利)はどこから来たのでしょうか。収益還元法(DCF法)において、割引率はキャッシュフローのリスクの度合いによって決められます。
 リスクが高い資産のキャッシュフローは高い割引率、リスクの低い資産のキャッシュフローは低い割引率が適用されます。国内において最もリスクの低い資産は国債と考えられているので、現時点では1%弱が割引率の下限となります。
 この下限をリスクフリーレート(リスクがないレート)、資産に応じて上乗せする金利をリスクプレミアムと言います。先の例でマンションの割引率を6%としていました。1%弱に4%強のリスクプレミアムを付けていたわけです。
 マンションの価値を導くための割引率は人気のエリアや築年数が浅いほど小さくなります。なぜならば、賃借人が確実に見つかり、賃料が安定しているからです。つまり資産が生み出すキャッシュフローのリスクが低いのです。
 下の表は、中古マンション専門の不動産投資ファンドから私が聴取した、2014年7月時点の地域別、築年数別の割引率です。この原稿でずっと使ってきた例は築10年、一都三県でしたので割引率は6%としました。
■マンションに関する地域別・築年数別の割引率
築年数(以内) 10年 20年
東京都心部 5.0% 5.5%
東京都(都心部以外) 5.5% 6.0%
一都三県 6.0% 6.5%
地方政令指定都市 6.5% 7.0%
 東京都、しかも港区や渋谷区など都心部にある築浅マンション(築10年以内)であれば割引率は5%です。

 これが冒頭で紹介したもう一つの式でした。
 中古マンション専門の不動産投資ファンドはどうやってこの数字を出しているのでしょうか。これはなかなか説明が難しいです。マンションに投資し、ビジネスをしていく中で、先に示した割引率を使えば商売としてまわると長年の経験からファンドは判断しているのです。
 割引率を出す一つの方法として、家賃(投資リターン)の変動性(ボラティリティ)から推定する方法があります。

 この式を書き直すと以下のようになります。

 つまり、割引率は賃料を物件の相場で割ったもの、不動産ファンドからすると、投資リターンになります。彼らは様々な地域やグレードの物件に対する、過去の投資リターンについて数字を持っていますから、そこから平均とばらつき(標準偏差)を出せます。このばらつきが変動性になります。ばらつきが大きければ割引率を高く見積もることになります。
六本木ヒルズや東京ミッドタウンはいくらで買うか
 ここまでマンション販売を例にとって、売値とDCF法による現在価値を比較して投資を判断するやり方を説明しました。これをNPV(Net Present Value)法といい、ファイナンスの世界における投資の意思決定手法の定番となっています。
 その根底には「キャッシュフローから導き出された価値が本当の価値であり、市場の価格は必ずしもあるべき価値を反映しない」という考え方があります。マンションを実際に売り買いするかどうかはさておき、ビジネスをしていく上で物の価値の決め方として、この考え方をぜひ覚えておいてください。
 説明したやり方はマンションに限らず、オフィスビルにも適用できます。次の表に示す公開データを使って六本木ヒルズや東京ミッドタウンの価値を同様に出してみましょう。
■六本木ヒルズと東京ミッドタウンに関する公開データ
名称 六本木ヒルズ 東京ミッドタウン
竣工年月 2003年4月 2007 年 3月
総事業費 4900億円 3700億円
敷地面積 12万u 10万u
総延床面積 76万u 57万u
階数 54階 54階
高さ 238m 248m
1F賃貸面積 4500u 3300u
(出所)公表資料に基づきニッセイ基礎研究所が2006年12月作成
 二つのオフィスビルの現在価値を知るのに、土地代や総工費などは必要ありません。あくまでもキャッシュフロー、この場合は坪当たりの賃料が必要です。これは公開されていないので実勢相場から推定して両社とも1坪辺り3万円、割引率は5%で計算してみましょう。結果は次のようになります。
■六本木ヒルズと東京ミッドタウンの現在価値
名称 六本木ヒルズ 東京ミッドタウン
家賃相場(3.3uあたり) 3万円 3万円
1フロア賃貸面積 4500u 3300u
階数 54階 54階
年間想定家賃収入 265億900万円 194億4000万円
割引率 5% 5%
現在価値 5301億8200万円 3888億円
 六本木ヒルズは5300億円、東京ミッドタウンは3900億円の現在価値と算出されました。それぞれの総事業費4900億円と3700億円に近い数字となっています。
 ビルの建設プロジェクトの投資判断は総事業費を超えるキャッシュフローを生めるかどうかで判断します。二つのビルとも総事業費を超える現在価値になるからこそ、建築されたのです。検討段階で総事業費を下回る現在価値しかないと判断されたなら、そこでプロジェクトはお蔵入りしていたはずです。
銀座のコーヒーはなぜ高いか
 突然ですが、銀座のコーヒーはなぜ高いのでしょうか。「銀座は土地が高いので当然家賃も高い。コーヒーを高い値段で出さないと採算が取れないから」でしょうか。
 この話は野口悠紀雄氏の『土地の経済学』に出てくるもので、キャッシュフローによって価値を考えることの応用問題と言えます。
 物の価値はキャッシュフローから決まります。つまり、銀座のコーヒーが高くても売れる、そのコーヒーにキャッシュを払うお客がいるからです。次のような流れになります。
• 銀座は魅力的な場所であり、人が集まり、お金をよく落とす
• したがって高いコーヒーでもよく売れる
• 高くても売れるのでコーヒー店の収益が増え、店のキャッシュフローも増える
• 家賃のキャッシュフローも増えるので、土地の価値も上がる
 したがって正解は「銀座ではコーヒーが高く売れるから土地が高い」ということになります。妙な感じがするかもしれませんが、「賃料は借主のキャッシュフローを生む力と相関がある」と考えれば納得いただけるのではないでしょうか。
◇      ◇      ◇
 いかがでしたでしょう。今回が新連載の一回目でした。このコラム「日常経済学」の趣旨は、雑談に使える“普段着のネタ”を紹介しつつ、経済や金融の本質を分かりやすくお伝えしようというものです。
 「必要な知識なのだろうが面白くはない」。エコノミクスやファイナンスと聞いて、こう感じる方がかなりおられるのではないかと思います。MBAのコースでファイナンスを教えていますが、社会人学生から同様の反応があります。
 しかし、経済学やファイナンス理論は要するに、物やサービスの価格と価値を吟味し、賢くお金を使うための考え方や手法に過ぎません。ですから日常の身近なところにも関係しています。身近な話題を気軽に読みながら、エコノミクスやファイナンスの基本を再確認いただければと思います。よろしくお願いします。



野口真人の日常経済学〜カジュアル・エコノミクスの勧め〜
「必要な知識だが面白くはない」。エコノミクスやファイナンスと聞いて、こう感じる方がかなりおられるのではないかと思います。MBAのコースでファイナンスを教えていますが似た反応があります。経済や金融というと堅い話のようですが要するに、ものやサービスの価格と価値を吟味し、賢く金を使うための考え方や手法です。ですから日常の身近なところにも関係しています。雑談に使える“普段着のネタ”を紹介し、経済や金融の本質を分かりやすく解説していきます。


02. 2014年8月06日 10:08:40 : 2YJPOFdg0M
洋の東西を問わず、「不動産業者」らには「ゴロツキヤクザ」が多い。ワシの家主そのものだ。そんな奴なので、市議会議員などやっている。もちろんジミントーだ。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。) ★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民89掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民89掲示板  
次へ