【モスクワ＝常盤伸】ロシアの人道支援物資を搭載した車列が二十二日、ウクライナや国際赤十字の同意がないまま、ウクライナ東部に入った。
　ロシア外務省は二十二日の声明で「ウクライナは人道支援物資の搬送を意図的に妨害している」として車列を出発させる決断をしたと発表。ウクライナ政府は強く反発している。
　今回の人道支援車両について、欧米は、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派勢力を支援するため先兵として送り込む「トロイの木馬」ではないかと警戒しており、対ロシア批判をさらに強めるとみられる。二十六日のミンスクでの多国間会合を前に再び緊張が高まっている。インタファクス通信によると二十二日夕の段階で、親ロ派過激集団が同行しつつ約二百八十台がウクライナ東部ルガンスクに向かっている。
　両国の税関当局は二十一日、車列の一部について検査を終了。国際赤十字が車列の安全を確認した上で二十二日中にウクライナ領内に入るとの見通しが示されていたが、ロシアの決定は予定の手順を無視した格好だ。ウクライナのナリワイチェンコ保安局長官は「ロシアの直接の侵入で、非常に危険な挑発だ」と強い懸念を表明した。
　タス通信によれば、ロシア側のドニエツクの検問所でウクライナの国境警備・税関当局者が足止めされたまま、車両が動きだしたという。ウクライナ領内は親ロ派が掌握しており、実力での阻止は不可能だったようだ。車列には食料や水、薬品など計二千トンの物資が搭載されている。

トラック撤収　ロに要求　ウクライナ　米、追加制裁を警告

2014年8月23日 夕刊

　【ワシントン＝共同】ローズ米大統領副補佐官は二十二日、ロシアがウクライナの同意を得ずに同国領内に人道支援名目で侵入させた大量のトラックについて「ウクライナの主権を甚だしく侵害している」として撤収を求めた。応じなければ、国際社会で協調し対ロ追加制裁を科すと警告した。
　オバマ大統領が夏休みで滞在する東部マサチューセッツ州で記者会見した。ローズ氏は、ロシア領内からウクライナへの砲撃が続いているとして、地域を「混乱させている」と非難した。
　また、米国家安全保障会議（ＮＳＣ）は二十二日の声明で、ウクライナに同日、侵入したトラックは「民間車両のように塗装したロシア軍車両だ」と不信感を表明。赤十字国際委員会（ＩＣＲＣ）の担当者も同行しておらず、関係国間の事前合意に反しているとロシアを批判した。
　ローズ氏は、ウクライナの親ロシア派武装勢力に対する支援の一環として、トラックが不法に送り込まれたと指摘。ロシアがウクライナとの国境付近に大量の軍部隊の駐留を続けていることへの懸念も示した。
　ウクライナ政府によるとロシアのトラック百台以上が、税関や入国の手続きを経ずにウクライナ領に不法侵入した。

ロシア、対日報復制裁　議員ら２３人？入国制限

2014年8月23日 朝刊

　【モスクワ＝常盤伸】ロシア外務省は二十二日、ウクライナ情勢に関し日本政府が発動した対ロ追加制裁への報復として、特定の日本人のロシア入国を制限すると発表した。
　モルグロフ外務次官が原田親仁（ちかひと）大使を外務省に呼び、入国制限の対象となる日本人の名簿を渡した。ウクライナ情勢をめぐるロシアによる対日報復措置は初めて。
　対象者の人数や氏名は公表されていない。日ロ関係筋によれば、制裁対象は日本政府当局者や国会議員計二十三人という。
　日ロ関係は安倍晋三首相とプーチン大統領の個人的な信頼関係を軸に、各方面で改善基調にあったが、ウクライナ情勢の影響で両国関係が再び冷え込む恐れも出ている。今秋に予定されていたプーチン大統領の訪日はさらに困難な情勢となった。
　日本外務省はロシアによるクリミア併合後の四月にロシア人二十三人の入国を制限。七月に対象を拡大した。
　ウクライナ東部でのマレーシア機撃墜事件を受け今月五日には、クリミア併合や東部情勢の悪化に関与すると判断したロシア当局者とウクライナの親ロシア派関係者の計四十人について、日本国内の資産凍結などの追加制裁を発動。欧米諸国の制裁に比べて緩い内容だったが、反発するロシアが日ロ次官級協議の開催中止を一方的に発表したため、岸田文雄外相の訪ロの見通しも立たない状況だ。
　さらに今月十二日からロシアが北方領土で、日本側の中止要請を振り切る形で四年ぶりの大規模軍事演習を強行。日本政府の抗議を拒絶していた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014082302000112.html