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コラム:当局容認のドル高、年内110円到達あるか=村田雅志氏
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0HB0GB20140916
2014年 09月 16日 17:02 JST ロイター
村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト
[東京 16日] - 筆者はかねてよりアベノミクスを受けた円安相場には一貫して懐疑的な姿勢を示し続けてきた。ドル円は9月末頃まで101―103円の極めて狭いレンジ内での推移が続くと予想。10―12月期に米利上げ期待を背景にドル買い優勢の展開になったとしても、上値はせいぜい106円程度という見方を示してきた。
しかし、結果をみれば一目瞭然で、筆者の予想は大外れ。ドル円は9月2日に105円、8日には106円、11日には107円と、それぞれの節目を上抜け。原稿執筆時点(16日)は、107円台前半で推移している。いずれ年初来高値を上回ると見込んでいた方々は、見事な予想を示していたことになる。
ただ、「負け惜しみ」とのお叱りを受けることは承知しているものの、ドル高論者の見方がファンダメンタルズの点で的確な予想を示していたとは考えていない。筆者が記憶する限り、ドル高の根拠は米金利の上昇だったが、米2年債利回りは0.54%台と、昨年夏場に記録した水準を小幅上回る程度。米10年債利回りは2.57%台と、年初に記録した3.00%台を大きく下回ったままである。
ドル高が進んだ根拠として、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ前倒し観測が強まったとの見方も一部にあるようだが、はっきりとは言い難い。フェデラルファンド(FF)金利先物動向から計算すると、来年3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までにFF金利が少なくとも25ベーシスポイント(bp)引き上げられる確率は、半年以上も50%をやや下回る水準のままだ。利上げ開始時期が、「早くて」来年4月との見方が大きく変わったわけではない。
米国景気が底堅く推移していることをドル高の理由に挙げる方もいるだろう。ただ、8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数は14.2万人増と市場予想を大きく下回った。9月からのドル高を説明するのに米景気の先行き期待を持ち出すのは説得力に欠ける気がする。そもそも景気の先行き期待は以前から続いていたことで、今月になって急に強まったというのは後付けの印象すら与える。
<日米欧通貨当局のドル高容認姿勢>
邪推の域を出ないかもしれないが、9月に入り為替市場でドル高基調が強まった大きな要因は、ファンダメンタルズの変化ではなく、日米欧の通貨当局者の間でドル高容認姿勢が共有され、市場が当局の意向を理解し始めたためではないかと思われる。日米欧の通貨当局がドル高容認姿勢を露骨に示すようになったという見方だ。
分かりやすい一例は、9月4日の黒田東彦日銀総裁の記者会見での質疑応答だ。ドル円が当時105円台と年初来水準まで円安が進んだことで、これ以上の円安は日本経済にとってデメリットではないかとの質問に対し、黒田総裁はドル高・円安になっていくとしても、日本経済にとって特にマイナスにはならないと明言した。また、日欧が金融緩和を当面続けていく一方で、米国はテーパリング(量的緩和縮小)を終了させ、いずれ短期金利も上がっていくほど景気が良いことを指摘、(ドルが)強くなっていくのは自然と述べている。
一方、欧州中央銀行(ECB)は4日の理事会で、市場予想に反し政策金利を10bp引き下げ、10月から資産担保証券(ABS)などの購入を開始することを決めた。この決定は、全会一致ではなく賛成多数で決められたこともあって、ECB執行部の緩和姿勢の強さが示された。
これを受けてユーロドルは1.31ドル台前半から1.29ドル台前半まで急落。興味深いのは、ユーロが大きく下落しても、ECB当局者はユーロ高をけん制する発言を続けていることだ。クーレECB専務理事は9日、ユーロ高は緩和的な金融政策の根拠になると発言。ノワイエ仏中銀総裁は11日、ECBがユーロの下落をすでに実現させているが、インフレ目標達成には一段と下落する必要があるとの認識を示している。
米国では、サンフランシスコ連銀が8日付の調査レポートで、FOMC委員の見通しに比べて、一般の人々は低金利状態が長く続くことを見込んでいると指摘。市場の利上げに対する準備が遅いとの認識を示唆した。
2%インフレ目標を掲げる日銀や、ディスインフレからの脱却を目指すECBが自国通貨安につながるドル高を容認するのは自然であるが、FRBがドル高容認姿勢を示すのは不自然との見方もあるかもしれない。しかし、緩やかなペースであればドル高は、米景気の先行きに慎重な姿勢を示すイエレンFRB議長にとって悪い話ではない。
FOMC内では、議事録などから類推できるように、長期にわたる金融緩和策に対して批判的な見方が強まっている状況だ。個人消費支出(PCE)コアデフレーターは、前年比プラス1.5%と年初の同プラス1.2%近辺から小幅ではあるが加速している。一方、米国株式市場では、利上げ懸念を背景に上値が重く推移。S&P総合500種は9月初めに2000を超えた後は1980台まで上値を切り下げている。
ドル高は、輸入物価の抑制を通じインフレ圧力を弱める効果が期待される。PCEコアデフレーターの加速も抑制されると考えられ、FOMCのタカ派グループを中心とした早期の利上げ要求を退ける一助となる。
ドル高は米雇用の拡大にも寄与するだろう。米雇用拡大のけん引役は非製造業にシフトしており、緩やかなペースであればドル高は非製造業の労働需要を強めると考えられる。また、ドル高期待が高まれば、米国への資本流入が強まり、米国株をサポートすることも期待される。
<ドル円上昇は年内で失速も>
筆者はドルが対円中心に予想以上に上昇したことを受けて、個人的な見通しを変更した。具体的には、ドル円は年内に110円程度まで上昇する可能性があるものの、年末に近づけば近づくほど伸び悩みの様相が強まると予想。来年前半は、上昇トレンドが弱まり、105―110円のレンジでの推移とした。
ただ、ドル円の予想レンジを切り上げた主因は、日米欧通貨当局がドル高容認姿勢を強めたことであり、日米ファンダメンタルズに関する見方は大きく変えていない。FRBは10月にテーパリングを終了させるものの、利上げ開始を可能な限り先送りすると思われる。おそらく利上げ開始は早くて来年6月だろう。米成長率は今年後半、来年前半ともに年率3%ちょうど程度であって、インフレ加速もドル高の影響もあって緩やかとみている。
一方、日本については、成長率が今年後半、来年前半ともに年率1%強程度で伸び悩むと予想。ただ、インフレはドル円上昇効果を主因に2%目標に向けて加速基調で推移すると見込んでいる。日本政府は法人減税の実施と補正予算の策定と引き換えに来年10月の消費税率再引き上げの実施を決定。日銀の追加緩和は来年後半まで先送りされると考えている。
*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。
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