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アベノミクス逆風、円安破綻した回転すしネタ会社:円安コスト増を転嫁できないのだから消費税負担増分を転嫁できるはずもない
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/379.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 10 月 30 日 03:13:45: Mo7ApAlflbQ6s
 


アベノミクス逆風、円安破綻した回転すしネタ会社[日経新聞]
帝国データバンク・藤森徹
2014/10/29 7:00

 アベノミクスの余波で円安が急速に進行している。中堅、中小、ベンチャー企業にどのような影響が出ているのか。帝国データバンクの調べでは、輸出依存度の高い自動車や電機関連の製造業の倒産が大きく減少する一方、食品、ファッション、生活雑貨などを扱う輸入企業では経営破綻が増加する気配が見え始めた。懸念をより深刻にしているのが金融機関の過去のトラウマで、為替の大きな変動に対するおびえが企業への金融サービス提供を萎縮させている。


■翻弄された糸魚川市

 2013年6月27日、新潟県糸魚川市議会の定例議会は、約2億円の税金を投じた企業誘致計画の頓挫を受けて、後処理の議論に追われていた。これは地元企業であるクリエイトワンフーズ(新潟市)が能生地区で計画していたイカの加工場の建設断念によるもの。50人もの新規雇用が見込める計画で、「地元に大きな経済効果をもたらす」として市議会議員全員が賛成した鳴り物入りのプロジェクトだった。

 クリエイト社は2012年2月に工場用地の確保について市に協力を要請。市は同社と基本協定を結んだ後、7000平方メートル近い民有地を用地として購入し、道路の改良などの造成工事を進めていた。

 クリエイト社が計画断念を市に伝えてきたのは工事がほぼ終わった13年3月ごろ。地元の期待を打ち砕いた理由は何か。アベノミクスによる「円安」が大きく影響している――。市議会ではこう報告された。
 クリエイトワンフーズはイカの加工販売を手がけていた東食品(東京・江東)の実質的な新潟工場として設立されていた。この東食品はモンゴウイカの専門業者として知られており、年間取扱高約1800トンは業界首位の実績だ。最近までは回転すしチェーンで使用されるモンゴウイカの7割はこの東食品の加工品だったとの話もある。

 社長の宮路勝信(64)はもともとは新潟県の出身。地元の水産高校を卒業した後、築地の水産会社に入社した。その後独立して、1977年に東食品を設立し、直近ピークには年間売上高43億円の水産加工会社に育て上げた。業績拡大をけん引したのは、独自に開発したイカの加工技術だったという。回転すしのネタは一定時間空気にさらされるため、乾燥への対策が必要。そこで、品質を維持する為のph値を調整する加工を行うことで取引先からの評判を得ていた。
 糸魚川市に工場建設計画の話を持ちかけた12年ごろは、東日本大震災の影響が残っていたものの、受注状況は回復していた。モンゴウイカ全量を輸入に頼っていたが、当時の為替レートは1ドル80円を突破する超円高水準。実兄が工場長を務める新潟工場の拡張を意図して新会社を設立したのも無理はない。

 しかし、12年秋以降、アベノミクスへの期待の高まりを受けて円相場が急落し始める。13年には1ドル100円の大台になり、イカの輸入の採算が全く合わなくなってきた。さらに需給面でも逆風が吹き始める。世界的に漁獲量が減少する中、アジア、欧州など外国での消費が拡大し、日本への調達が難しい状況へと変わってきた。最大の取引先であった大手回転寿司チェーン店との取引が解消されるなどの事態も経営を悪化させた。

 糸魚川市の工場建設を断念するといったリストラを進めても、円安傾向が続く限り、輸入の採算は抜本的には改善しない。東食品は13年の決算では粗利益の段階で数億円の赤字を計上した。そして、とうとう今年5月には全従業員の解雇に追い込まれる。7月には本社不動産を売却し事業活動を停止。事実上の破綻状態となっている。


■円高と円安の双方に苦しむ

 為替の変動を巡っては、こんな経営破綻も起きている。
 婦人バッグ輸入卸のフカイ(東京・足立)は10月1日、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。取り扱いバッグの大半を中国にある6ヵ所の協力工場で生産していたが、円安による輸入コストの増加で採算が急激に悪化。さらに中国現地の人件費が年間2ケタも上昇し、ダブルパンチで赤字決算を余儀なくされていた。だが、関係者によると、経営破綻のもともとの端緒は円安ではなく「円高」だという。
 円安と円高――。謎かけのような事態を読み解くキーワードは「為替デリバティブ」(金融派生商品)だ。一定金額でドルを取引できる権利を売買することで為替変動のリスクを回避・軽減する仕組みなのだが、買いと売りの権利の比率に差をつければ一転してハイリスク・ハイリターンの金融商品にもなる。

 一般にドル建て決済で輸入を行う企業は、円安に為替レートが振れると採算が悪化するため、フカイも円安対策の為替デリバティブを買っていた。ところが2008年のリーマン・ショック後、為替は急激な円高に振れる。為替デリバティブでは、ある一定価格、例えば1ドルを110円で買う権利を得ていた場合、それより円安に振れると利益が出るが、円高が進み1ドル90円になったりすると、その差額分の損失を負担する仕組みとなっている。その結果、フカイでは約1億円もの損失が発生し、債務超過に陥った。立て直しもままならないところに、今度はアベノミクスによる円安で本業の採算が悪化してしまった。円高に泣き、円安にとどめを刺されたわけだ。

 帝国データバンクの調べによると2014年上半期(4月〜9月)の輸入関連企業の倒産は前年同期比7%増の260件となった。水産加工業者のほか、アパレル卸、樹脂製雑貨輸入企業などが多い。多くが円安に苦しんだとみられる。


■金融機関、デリバティブに二の足

 対策はないのか。輸入業者の場合、目下のような円安が急激に進行する局面では、やはり為替デリバティブが有効な手立ての一つになる。ただ、企業側は急激な為替変動に戸惑いを感じているようで、「また円高に戻るのでは」といった心理から為替デリバティブを敬遠するところも少なくないようだ。
 さらに、「銀行側も為替デリバティブ販売に消極的になっている」(メガバンク幹部)。こちらの背景にあるのは過去の呪縛だ。フカイが利用したような円安対策のデリバティブは、2004年から2007年の4年間で約6万件、主に輸入業者に販売された。そして2008年から始まった円高局面で数億円から数十億円の損失を抱えた中小企業が多数生じた経緯がある。これにより企業側から起こされた金融ADR(金融取引に関する裁判外の紛争解決制度)や裁判の多くは銀行側に不利な結果となった。
 為替変動の行方は金融のプロでも正確に見通すことはできない。経営判断の正誤も評価しにくい。情報を集め、正しく分析し、柔軟、迅速に動けるか。こうした高度なリスク感覚を経営者に求めているのが、アベノミクスの一つの側面でもある。=敬称略

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78938630X21C14A0000000/?n_cid=DSTPCS001


 

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コメント
 
01. 2014年10月30日 03:35:41 : YxpFguEt7k
堀茂樹氏
「BSニュース。自民党内で法人税率引き下げに向けた会議。消費税引き上げ分で賄うという「誤解」(⁈)を与えぬようにせよとの声。その為に外形標準課税の適用範囲を拡げるだって⁈

 耳を疑う。消費税で中小零細企業を疲弊させ、外形標準課税の拡大でいやが上にも中小零細を疲弊させる。何考えてるの?」
https://twitter.com/hori_shigeki/status/527485497262624770

ベラボー増税内閣。いよいよ特別会計の闇に光をあてなければならない時がきたな。


02. 2014年10月30日 06:18:41 : jXbiWWJBCA

米国株:下落、FOMCは資産購入プログラムの終了を決定

  10月29日(ブルームバーグ):米株式相場は下落。連邦公開市場委員会(FOMC)は予定通り資産購入プログラムの終了を決定し、米経済が安定した成長軌道にあることが示唆された。
ニューヨーク時間午後4時過ぎの暫定値では、S&P500種 株価指数は前日比0.1%安の1982.29。ダウ工業株30種平均は31.44ドル(0.2%)下げて16974.31ドル。
FOMCの声明では、低金利を「相当な期間」維持する方針を維持した。労働市場については「やや一層改善した」とした上で、「労働市場のさまざまな指標は労働力の活用不足の度合いが徐々に弱まりつつあることを示唆している」とし、前回声明での「労働力の活用がなお極端に低い状態にある」から文言を修正した。
LPLファイナンシャル(サンディエゴ)の市場ストラテジスト、アンソニー・バレリ氏は「声明は経済に対して若干強気で、単に労働市場の改善を認めたという意味でどちらかといえばタカ派寄りだ」と指摘。「声明発表前は、FOMCは市場の反応を抑えるためハト派寄りになると予想されていたが、実際は逆に楽観的なものだった。これを受けて債券利回りは若干上昇し、株は下げた」と分析した。
原題:U.S. Stocks Drop as Fed Ends Asset Purchases; FacebookTumbles(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Oliver Renick enick2@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Jeff Sutherland jsutherlan13@bloomberg.netMichael P. Regan, Jeremy Herron
更新日時: 2014/10/30 05:18 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NE82SY6VDKHV01.html

 

NY外為:ドルが4週ぶりの大幅高−米量的緩和の終了を決定

  10月29日(ブルームバーグ):29日のニューヨーク外国為替市場では、ドルが約4週ぶりの大幅上昇。米連邦公開市場委員会(FOMC)は定例会合後に声明を発表し、資産購入プログラムの終了を明らかにした。
みずほ銀行のストラテジスト、シレーン・ハラーリ氏(ニューヨーク在勤)は、「労働市場の見通しに関してFOMC声明は一段と明るい」と述べ、「ドルの反応は市場が声明内容に対してより中立的なものになると考えていたことを示唆する」と続けた。
ニューヨーク時間午後2時33分現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.6%上昇して1069.93。10月3日以来で最大の上げだった。
原題:Dollar Rises Most in 4 Weeks as Fed Ends Buying on LaborGains(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Andrea Wong awong268@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Dave Liedtka dliedtka@bloomberg.netKenneth Pringle, Greg Storey
更新日時: 2014/10/30 05:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NE7ZKA6VDKHU01.html

米短期金利先物、15年9月利上げ開始確率50%に
2014年 10月 30日 03:38 JST
[29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が29日発表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、資産購入の終了後も相当な期間(for a considerable time)、事実上のゼロ金利を維持する方針を再表明したことを受け、米短期金利先物が下落した。

CMEフェドウォッチによると、FRBが2015年9月に利上げを開始する確率は約50%に達した。

声明発表前は、2015年10月との見方が織り込まれていた。

 


米FOMCが量的緩和終了、労働市場の判断前進
2014年 10月 30日 04:52 JST
[ワシントン 29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は29日まで開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和第3弾(QE3)の終了を決定した。

労働市場をめぐる判断を強めるとともに、景気回復への自信を表明。最近の金融市場の振れや欧州経済の低迷、さえない物価見通しは概ね重視しない姿勢を示した。

FOMC声明では労働市場について「全般的に、種々の労働市場指標は労働資源の活用不足が徐々に解消している(gradually

diminishing)ことを表している」とし、これまで用いてきた「著しい(significant)」資源活用不足との表現が改められた。

FOMCの決定を受け、米国株は下げ幅を拡大。10年国債利回りは3週間ぶりの水準に上昇した。金利先物が織り込む2015年9月の利上げ確率は50%超となっている。

ウェルズ・ファーゴ・ファンズ・マネジメントの首席ポートフォリオ・ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「労働資源の著しい活用不足に関する文言が削除されたことはうれしい驚きだ」とした上で、労働市場における一定の改善が認められた格好だと述べた。

金利政策については、資産買い入れ終了後も「相当な期間(considerable time)」事実上のゼロ金利を維持する方針を確認、利上げの時期やペースは今後の経済指標の内容に左右されるとした。

今回の会合では、コチャラコタ米ミネアポリス連銀総裁が反対票を投じた。同総裁は、物価圧力が欠如している状況では、2%目標の達成に向けFRBは一層大胆な意思表明をすべきと主張した。

FRBはインフレについて、エネルギー価格の下落などが伸びを抑えているものの、全般的には今年以降、インフレが目標に到達しない可能性は後退したとの見方を繰り返した。

QE3は当初、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を合わせて毎月850億ドル買い入れるプログラムとして2012年9月に開始。今年以降、買い入れ額は徐々に縮小し、前回9月会合では150億ドルとなっていた。

今回FRBはQE3の終了を決定したものの、保有債券の償還金の再投資は継続するとしており、FRBが保有する4兆ドルを超えるバランスシートの規模は当面、維持される。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0II24020141029


 


FOMC:量的緩和を終了、超低金利は「相当な期間」維持へ
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  10月29日(ブルームバーグ):米連邦公開市場委員会(FOMC)は28、29両日開催した定例会合後に声明を発表し、資産購入プログラムの終了決定を明らかにした。労働市場についてはさらに改善したとの認識を示した。
声明は「労働市場の状況はやや一層改善した。雇用は着実に伸び、失業率は低下している」と指摘。「労働市場のさまざまな指標は労働力の活用不足が徐々に解消されつつあることを示唆している」とし、前回声明の「労働力の活用がなお極端に低い状態にある」という表現から上方修正した。
事実上のゼロ金利政策については「相当な期間」維持する方針をあらためて示した。
金融当局は足元のインフレについて、エネルギー価格の下落に恐らく抑制されるとしながらも、9月の声明にあった「インフレ率が2%を下回り続ける可能性は幾分か低下した」という文言を維持した。
連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は前任者のバーナンキ前議長が始めた資産購入を2年で終了させた。今後は世界的な景気減速やインフレ率低下からのリスクに直面しながら、2006年以来で初めてとなる利上げの時期を探ることになる。FOMCは2008年12月以降、事実上のゼロで据え置いているフェデラルファンド(FF)金利誘導目標の引き上げ時期を判断する上で、さまざまな情報を検討していく方針をあらためて示した。9月に公表された予測によれば、当局者の大半は来年中の利上げを予想している。
再投資は継続
08年11月に始まった量的緩和第3弾で過去最高の4兆4800億ドルに膨れ上がったFRBのバランスシート について、金融当局は償還元本を再投資する現行方針を維持した。
量的緩和第3弾は2012年9月に発表され、米国債と政府支援機関の住宅ローン担保証券の購入額は当初、月850億ドルだった。14年1月から購入額が毎回の会合で100ドルずつ縮小され始めた。
ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁はこの日の決定に反対票を投じた。声明文によると、同総裁は「低いインフレ見通しを踏まえ、FOMCは少なくとも1−2年先のインフレ見通しが2%に戻るまで現在のFF金利誘導目標のレンジを維持することを明言し、資産購入プログラムを現在の水準で続けるべきだ」と主張した。
原題:Fed Cites Improved Labor Market While Ending QE as Planned(2)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Jeff Kearns jkearns3@bloomberg.net;ワシントン Christopher Condon ccondon4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.net
更新日時: 2014/10/30 05:33 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NE7X1E6VDKI001.html



03. 2014年10月30日 06:31:45 : jXbiWWJBCA

高橋洋一の俗論を撃つ!
【第105回】 2014年10月30日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
「消費増税で財政再建できる」は大間違い
 最近、消費増税で景気が悪くなったことが広く認識されるようになった。そのため、来年10月の消費増税を先送りする考えが出てきている。

 消費増税の弊害をいち早く警告した筆者としては、ようやくという感じだ。

 しかし、まだ消費増税は財政再建のために仕方ないと考える人もいる。そうした人たちに、「増税で財政再建できる」は大間違いで、増税しなくても財政再建できることを示そう。

財政再建の目標とは何か

 まず、実際、小泉政権時代に増税なしで財政再建に成功しかかった実績がある。その時を振り返ると、2001年に「骨太の方針」で基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を掲げた。「プライマリーバランス(=以下PB)」という財政指標が使われ始めるようになったのは、これがきっかけだ。その後06年に11年度PB黒字化目標を掲げた。

 財政状況をたどってみると、03年度のPBは28兆円の赤字で名目GDP比マイナス5.6%だったが、08年度には6兆円の赤字、マイナス1.1%にまで下がった。あとひと息で黒字化できる予定(07年1月の中期試算では、10年度のプライマリー収支はプラス0.2%)だったが、08年9月のリーマンショックで景気が悪化し、黒字化にはならなかった。しかし、11年度目標をかなり上回るペースで再建が進んでいたのだから、7年ぐらいで黒字化できるというのはそれほど非現実的な話ではない。

 そもそもPBを黒字化するだけで財政を再建したと言えるのか、という疑問があるかもしれない。そうした疑問を持つ人は、国の借金(債務残高)は1000兆円を超えていることを言う。財政再建というなら、債務を減らす努力が必要なのではないかと心配する。

 こうした疑問に対しては、財政再建とは何を目標としているのかをはっきりさせておきたい。それは財政破綻を避けることだ。1000兆円という数字は確かに気分を落ち込ませるが、破綻回避という目標の達成に債務全額を返済する必要があるだろうか。私たちは、無借金国になることを目指しているわけではない。

 無借金とまではいかなくても、財政黒字を目標とすべきという人もいるだろう。実際、財務省の首脳はかつて財政収支を黒字にしなければいけないと発言したことがある。2014年度予算を財政黒字にするには税収がどれだけ必要かというと、国債の利払いも含めた全歳出が95兆8800億円だから、現在の税収等見込み(54兆6300億円)では41兆2500億円足りない。過去最高の税収額でも60兆円(90年度)だったから、それを考えると実現が難しそうだ。しかし、財政黒字に転換する必要もない。PBを均衡させれば財政破綻は避けられるからだ。

危険水準は国によって異なる

 その理由を順を追って説明していくが、まず議論の前提として財政破綻の意味をきちんと定義しておこう。結論を先に言うと、財政破綻とは、債務残高/GDPが発散する(比率が上昇し続けること)ことだ。

 国債暴落(長期金利の急上昇)を財政破綻とみなす人がいるが、それは違う。マーケットは変動するもので、暴落したものが再び値を戻すことはありうる。また、債務残高が1000兆円もの巨額に膨らむと、それ自体が財政破綻の証拠とみなす人がいるだろうが、それも違う。もちろん債務残高は重要なのだが、国民総生産(GDP)とセットで考える必要がある。

 当たり前のことだが、債務を返済するには稼ぎが必要だ。国の稼ぐ力を示しているのはGDPで、GDPが大きければ少々の債務は問題ない。10年に起きたギリシャ債務危機では、ギリシャの債務残高は3300億ユーロ(約43兆円)で、日本の経済力からすれば全く問題にならない債務額だが、ギリシャのGDPは1940億ユーロ(約25兆円)で神奈川県程度の規模だったので負担が重かった。だから債務が過大かどうかの判断はGDPとの割合で下す必要がある。つまり、債務残高/GDPの割合が重要になってくるのだ。

 ただ、注意してもらいたいのは、その大小では財政が破綻に向かっているかどうかは判断できないことだ。重要なのは、債務残高/GDPが増えているか、減っているかであり、変化の方向性なのだ。増加が続くとデフォルト(債務不履行)が予想されるようになり、危険な財政状況とみなされる。ここらあたりまでは、国内外の経済学者の間でも異論はないはずだ。

 債務残高/GDPは、日本は200%を超えて世界ワーストワンだが、毎年数%ずつでも減っていくならば破綻の可能性はない。しかし、200%という水準の高さは問題という人もいるが、今でも破綻していない。水準は問題ではなく、どういう方向に向かっているかが重要だ。過去のデータを見ても破綻するかしないかは国によって水準が違う。150%で大丈夫な国もあれば、120%でアウトになる国もある。英国はナポレオン戦争のとき250%だったが破綻しなかった。債務残高/GDPが増加していくのが危ないのであって、高い水準でも減っていけば問題ない。

 例の有名なラインハート=ロゴフの論文で、債務残高/GDPが90%を超えると破綻の可能性が高まるという説も水準に関するものだった。しかし、水準で判断するのは間違いだった。その部分はわかりやすかったので流布して、一部の国の財政政策にも影響を与えたようだ。結果としては、他の研究者から計算の誤りを指摘された。

 実際、いくつかの特定国を除いて計算すると、危険の水準が変わってくる。このことは、危険水準は国によって異なるということで、各国共通の一律な水準はいえない。

プライマリーバランス黒字化を目標にする意味

 そこで、どうすれば債務残高/GDPの増加を食い止め、減少させられるのかという問題になり、PBが出てくる。債務残高/GDPを減少させることが財政再建を考えるすべての出発点になるわけで、だったら、債務残高/GDPの動きを決める要因は何なのか。その要因を抑えれば財政破綻を避けられる――と考えが進むだろう。その結果、探り出した式がこれで、06年3月の経済財政諮問会議に提出した。

(債務残高÷GDP)の変化分=−(プライマリーバランス<PB>÷GDP)−(名目成長率−国債金利)×前年の債務残高/前年のGDP

 この式は誰でも導き出せるはずだが、不思議と経済学の教科書には載っていない。左辺の債務残高/GDPを減らせばいいのだが、左辺がどういう要素で成り立っているのかを示したのが右辺だ。右辺は左辺をいわば因数分解したような結果であり、誰が検証しても同じ結果になる。導き出すのもそれほど難しい数学を使っていない。微分の基本等、高校の数学の知識があれば理解できるレベルだ。

 しかし、この式を見れば財政再建するためには何が必要で、何が不要かがわかる。破綻を避けるために左辺の債務残高/GDP比を減少させようと思ったら、右辺をマイナスにすればいいことがわかるだろう。右辺第1項をマイナスにするにはPBを黒字にする必要がある。第2項は、成長率が金利よりも高くなければならない。ただ、成長率と金利の関係は、年によって成長率>金利になったり、成長率<金利になったりするが、長く均して見ると大体同じ数字になりプラスマイナスゼロになる。だから左辺をマイナスにするのはPBであり、PBを黒字にすればいいということになる。

 これまでの話から、PBがすぐに黒字化しなくても、年々赤字が減れば、左辺も減り続けるので財政破綻の心配はないということになる。黒字化するのが理想だが、すぐには実現できないのならば、その場合は赤字を減らすことが重要だ。

 ひとつ言っておきたいのは、PBは債務残高/GDPをコントロールするから重要なのだ。債務残高そのものをコントロールするのはPBではなく財政収支であり、財政黒字をずーっと続ければ債務残高はなくなる。そんなことは目標にしていない。国の債務がなくなれば国債市場も消えてしまう。財政収支ではなくPB収支を使う意味を確認しておきたい。

 債務残高/GDPの増加がどれくらい続くと破綻に近づくのかという疑問もわいてくるが、これは簡単な答えはない。ずっと増え続ければ危ないが、「ずっと」がどれくらいの期間を指すのか、5年続いたら危ないと思うのか、10年続いたら危ないと思うのか、それは、いずれ回復する話なのか、回復不可能な話なのかは認識の問題だ。

 そこで、PBを黒字にするにはどうすればいいのか。図1−1を見てもらいたい。赤線がPB/GDP比で先ほどの式の右辺第1項に当たる。黒線が1年前の名目成長率を表している。両者はほぼ相関している。1年前の名目成長率が翌年のPB/GDP比をほとんど決めているということがわかる。つまり、1年前の名目成長率が財政再建の成否を決めているのだ。

 こうした、1年前の成長率とPBの相関は、他の先進国でもみられる(図1−2、図1−3)。




 そして、改めて強調しておきたいのは、これまでの説明に増税の話など出てこないことだ。前出の式にも増税の項目などはない。だから、「増税で財政再建できる」という言葉はウソだとわかる。増税と財政再建には因果性がないのだ。むしろ増税が経済成長を阻害したら、財政再建の障害にすらなってしまう。安倍首相が言うように、増税して景気が悪くなって減収になったら元も子もないのだ。

増税スキップは本当に危ないか

 しばしば社会保障が大変だからという人があるが、PBはそれも含めてみている。年間1兆円程度増加すると脅す人もいるが、名目の経済規模が5兆円、年に1%増えるだけでそれはまかなえる。

 なお、ミクロ的な個別論をすれば、社会保障費の中でで伸びの高いのは医療であるが、それを国民が納得する伸びにするためには、地方分権で人口2000万人くらいの行政単位にして、医療(特に終末期医療)を工夫すべきだ。夕張市は財政破綻したが、医療費を劇的に減少させ、なおかつ地域住民の満足度も高い。これは是非参考にすべきだ。地方分権の他に、歳入庁を創設して、年10兆円とも推計されている徴収漏れをなくすことでも社会保障費の増大に対応できる。いずれにしても、こうしたミクロ議論も重要だが、マクロとしてPBをよくすることを心がければいい。

 また、名目成長率を高めるにはどうしたらいいのか。名目成長率は、実質成長率+インフレ率で、インフレ率はマネーの供給量で何とかコントロールできる。インフレ率はどれぐらいが適当かと言うと2%ぐらいだ。高すぎると社会コストが高くなるが、2%ぐらいが社会コストが最小限に収まる水準と見られている。インフレターゲットを採用している先進国が2%を目標しているのは、そういうことを知っているからだ。

 インフレ率が2%になると実質成長率も2%ぐらいになるということが経験則でわかっている。経済環境がいいとそれなりに実質成長率も伸びるのだ。両者合わせて名目成長率4%を達成できる。この水準ならば増税なし、少しの歳出カットでPB黒字化が可能だろう。名目成長率5%ならば、増税も歳出カットもなしに黒字化できるだろう。

 しかし、名目で4%成長を続けるのは、ずっと低迷してきた日本経済にとってはハードルが高く見える。

 確かに黒田日銀以前の日本経済は、10年間の名目成長率の平均はゼロだった。しかし、日本を除いたG7は4.3%だった。OECD加盟国の過去10年でも名目成長率は日本が一番ビリだ。しかし、実質成長率の平均は、日本は1.2%で、日本を除いたG7は2.1%と、その差は縮まる。日銀の大規模金融緩和で消費者物価指数が目標の2%に達すれば、名目4%成長のハードルはそれほど高くない。

 最後に、日銀の黒田東彦総裁は、9月4日の記者会見で、消費税率を10%に引き上げない場合のリスクについて、「市場から(財政再建の姿勢に)疑念を持たれると政府・日銀としても、対応のしようがないということにもなりかねない」「確率は低くても、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味では、リスクが大きい」と発言している。その後も、自民党の谷垣禎一幹事長もテレビ番組で税率10%引き上げについて、「(税率を)上げた時のリスクは、まだいろんな手で乗り越えられるが、上げない時のリスクは打つ手が難しい」と語った。引き上げを見送っても大丈夫なのかという疑問があるだろう。

 これらは、消費増税をやらないと財政破綻を想起し「国債が暴落する」という主張だろう。それは心配するほどのことではない。短期的に考えても、国債が価格低下しても、日銀が買いに回っているので、価格は大丈夫だろう。

 また、中期的に見ても、心配ない。というのは、4〜6月期のGDPを見ればわかるとおり、増税は経済成長率を大きく落ち込ませる。10%増税をスキップして、適切な金融政策を取れば名目経済成長が高まるだろう。そうすれば次の年のPBが改善し、債務残高/GDPは減るから財政への懸念は薄まる。増税スキップした方が財政再建のチャンスが大きくなり、逆に財政破綻の可能性は小さくなると見ている。


04. 2014年10月30日 06:32:54 : jXbiWWJBCA

田中秀征 政権ウォッチ
【第255回】 2014年10月30日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
支持率下落が止まらない安倍政権
「原点回帰」が唯一の打開策
 週明けからマスコミ各社の内閣支持率調査の発表が相次いでいる。

 それによると、多くの調査でかなりの落ち込みとなった。

 日経新聞では、支持率48%で前月比5ポイントの下落、不支持率は36%と5ポイント上昇だ。どちらかと言えば、この数字が皮膚感覚に合っているような気がする。読売新聞の調査では、支持率が何と前回調査から9ポイントも下がっている。

 ただ、朝日新聞の調査では支持率が49%だが、前月比3ポイントの上昇。ん?なぜか違和感を覚える。

 今回の主たる下落要因の1つは、2人の女性閣僚の辞任と言ってもよいが、朝日新聞は調査結果から「今回のダブル辞任劇が、安倍内閣の支持率に影響を与えなかったことが読み取れる」とコメントした。不適格な人を辞めさせてよかったということだろうか。とにかく朝日新聞の調査だけが、他とは違う傾向となった。

「早期解散で正面突破」は楽観論
増税、ガイドライン先送りでブレーキを

 さて、このところ安倍晋三政権をめぐる潮目は明らかに変わりつつある。頂きを過ぎて下り坂を進み始めたように見える。そのせいかマスコミも、野党勢力もかなり厳しい批判をぶつけるようになった。消費税再増税については、自民党内からも公然と先送り論が出てきている。さらに、TPP交渉で無理な合意でもすれば、党内の混乱は避けがたくなる。

 安倍政権の強気の政権運営を可能にするためには、いくつかの不可欠な前提条件があった。それらについての誤算が今後の展望を暗くしてしまっている。

 前提条件とは、(1)アベノミクスの好調、(2)拉致問題の劇的な進展、(3)閣僚・党役員人事の成功、加えて(4)TPP交渉での聖域死守などである。これらがすべて思わしい成果を上げていない。

 こんな悪環境のなかで(A)消費税再増税、(B)原発再稼働、(C)ガイドラインの改定などの重要課題をゴリ押しすれば、第一次の安倍政権の二の舞ともなりかねない。まるで、下り坂で、アクセルを三度もいっぱいに踏むようなもの。無謀この上もない。

 ちまたでは、正面突破のため年内の解散・総選挙をうわさする向きもある。野党の隊列が整わないから大丈夫と考えるなら、これも過度な楽観論と言わざるを得ない。

 安倍首相は、もしも早期解散に踏みきれば、間違いなく重要課題について大きな軌道修正を余儀なくされるだろう。その軌道修正を解散せずに断行すればそれで良いのだ。

 まずは、消費税再増税を先送りし、政治と行政のムダ使いの根絶に乗り出すこと。さらにガイドラインの年内決着を諦めて、先送りすること。そしてここでアベノミクスも立ち止まって検証し、必要な軌道修正をし、本来の「経済再生」の取り組みに専念して展望を明るくすることだ。要するに、下り坂に際しては適切にブレーキを踏みこんで政権の運営に当たる必要がある。そうすれば、いずれ平らな道に戻ることもできよう。

 第一次政権以来、安倍政治の原点は、「成長と改革」にあったと心得ている。原点回帰こそ現在の苦境の唯一の打開策だ。
http://diamond.jp/articles/-/61364


05. 2014年10月30日 08:47:39 : nJF6kGWndY

まあ、財務が不安定な企業は、円高・円安いずれにせよ、小さなショックでも破綻するものだ

そうして過剰な供給が減っていくと、よりデフレ脱却は速くなり

労働需要の抑制は、介護などの人員不足を緩和することになる



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