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日銀相場に賞味期限 経験則は50日、国内勢がカギ:海外ファンドが追加緩和公表前寄り付きに「日経平均買い権利」大量注文
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/508.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 11 月 06 日 17:49:21: Mo7ApAlflbQ6s
 


 追加緩和策の決定はサプライズではなかったが、黒田日銀総裁がその目的や趣旨を説明した内容には驚いたというかすごい脱力感を覚えた。
 詳細は別途書くつもりだが、黒田氏は、その説明内容だけで中央銀行総裁という職を辞する必要があると思っているくらいだ。

 追加緩和策は、極短期はともかく、短期・中期・長期で日本経済に影響(悪及び良の両方について)を与えることはないと考えているので、お好きにどうぞとのみ評価するにとどめる。
 極短期間は別として、追加緩和策が円レートや消費者物価指数の変動に貢献することはない。
 銀行の資産構成を変え日銀当座預金のボリュームを増大させることで、円レートを安くしたり消費者物価指数を上昇させたりできるのなら、政策当局の苦労は少ないと言える。

 マネタリズムは、マネーストック(マネーサプライ)を基準とした事象を説明するものであり、マネタリーベースの変動を基準にするものではない。
 マネタリーベースは、言わば“見せ金”であり、“信用創造”の拡大を通じて実際に経済社会を流れたことを示すマネーストックの量こそがポイントである。

 このまま日銀の緩和策が進んでいけば、3年後くらいには、マネタリーベースとGDPが同額になるという笑えない事態に突入する可能性さえある。

 株式市場の変動には興味はないが、面白い動きが記事になっているので紹介させていただく。

 転載する日経新聞の記事に、「真っ先に動いたのが、マクロ指標や金融政策を見て動くグローバルマクロ系のヘッジファンドだ。彼らの一角は緩和を予想していたのか、フライング気味に動いていたようだ。
 「何だこの大量買いは」。証券各社のトレーダーたちがいぶかったのは10月31日の寄り付き直後のことだった。海外ファンドとみられる投資家が、ある米系証券を通じて1万6250円の日経平均コールオプション(買う権利)に約6800枚の買い注文を業者間市場で出した。想定元本で1千億円に相当する大口買いだ。
 他の証券会社は一斉に売り向かったが、数時間後の日銀の追加緩和発表にひっくり返った。「やられた、すぐ先物を買え」。コール売りのリスクを減らすための証券会社の先物買いが、相場上昇に拍車をかけた。
 ファンドの買いに売り向かったのは国内勢だ。大手証券各社では個人や投資信託に加え、地銀や生損保が保有株を売って利益を確保しているという。この3日間、東証1部の売買代金が膨れ上がった背景だ」とある。

 この記事をもって陰謀論に結びつける気はない。
 なぜなら、GPIFのポートフォリオ変更案が30日の時点で報じられていたので、頭の良いヘッジファンド担当者なら、日銀がGPIFのポートフォリオ変更がスムーズに実現できるよう追加緩和策に踏み切ることやそれを使って黒田総裁が“経済はキタイだ!”のレクチャーをして市場参加者のアドレナリンを活性化することは読めたとは言えるからだ。

 だから、日銀ないし政府関係者の誰かが海外ファンドに“特別な配慮”をしたとは言わないでおこう。

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日銀相場に賞味期限 経験則は50日、国内勢がカギ
証券部 川崎健
2014/11/6 2:00

 日銀の追加金融緩和から3営業日目となる5日の東京株式市場では日経平均株価が小幅続伸した。冷静さを取り戻す市場参加者の話題に上がり始めたのが「日銀ラリー」の賞味期限だ。50日が目安となるが、経験則通りになるかどうかは意見が分かれる。謎を解くカギは投資家の売買動向だ。3日間の動きをみると相場の持続力は国内勢にかかっている。

 「顧客と少し落ち着いて議論ができる心理的な余裕が出てきました。追加緩和の賞味期限については弱気派から強気派まで意見が分かれています」。前日までに比べると相場の値動きも落ち着いてきた5日午前、米系証券の日本株営業マンは話した。
 何事も議論を進めるには客観的なデータの確認から始めるべきだ。バークレイズ証券の北野一チーフストラテジストは、過去3回の「日銀サプライズ」が日本株をどのくらいの期間、上昇させたのかを調べてみたところ、共通する1つの法則を見つけた。

 過去3回とは、第1が速水優総裁が金融調節の目標を金利から資金供給量に初めて変更した2001年3月19日。第2が白川方明総裁が「物価安定のめど」という表現でインフレ目標に言及した12年2月14日。第3が現任の黒田東彦総裁が大胆な金融緩和に踏み切った13年4月4日だ。

 日本株の相対的な強さを測るために、東証株価指数(TOPIX)を米S&P500種株価指数で割った日米相対株価をみると、過去3回の株価押し上げ効果の賞味期限は50営業日前後で一致した。公表日を起点とする日本株の上昇が終わるのは、具体的には1回目が55営業日後、2回目が53営業日後、3回目が45営業日後だった。
 「50日の法則」を当てはめると今回は15年1月中旬まで続くことになるが、北野氏は懐疑的だ。「過去3回は前例のない新機軸が含まれていたが、今回はない。効果はより短期間にとどまる」と読む。

相場のことは相場に聞けとの格言もある。この3日間の動きを探ると「強気の海外勢、弱気の国内勢」という構図が見えてくる。
 真っ先に動いたのが、マクロ指標や金融政策を見て動くグローバルマクロ系のヘッジファンドだ。彼らの一角は緩和を予想していたのか、フライング気味に動いていたようだ。
 「何だこの大量買いは」。証券各社のトレーダーたちがいぶかったのは10月31日の寄り付き直後のことだった。海外ファンドとみられる投資家が、ある米系証券を通じて1万6250円の日経平均コールオプション(買う権利)に約6800枚の買い注文を業者間市場で出した。想定元本で1千億円に相当する大口買いだ。
 他の証券会社は一斉に売り向かったが、数時間後の日銀の追加緩和発表にひっくり返った。「やられた、すぐ先物を買え」。コール売りのリスクを減らすための証券会社の先物買いが、相場上昇に拍車をかけた。
 ファンドの買いに売り向かったのは国内勢だ。大手証券各社では個人や投資信託に加え、地銀や生損保が保有株を売って利益を確保しているという。この3日間、東証1部の売買代金が膨れ上がった背景だ。
 「今大量に売っている国内勢、特に個人が買いに転じること」。大手証券幹部は上昇持続の条件をこうみる。国内勢が日本株の将来を信頼できるかどうかに尽きるわけだ。

http://www.nikkei.com/markets/column/scramble.aspx?g=DGXLZO7933623005112014EN1000

 

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01. 2014年11月06日 19:15:42 : jXbiWWJBCA

荒れ始めた日本株市場、日銀ETF買いめぐり思惑交錯
2014年 11月 6日 18:00 JST
[東京 6日 ロイター] - 日本株市場が不安定化してきた。日経平均.N225が大台を回復、強弱感が対立しやすい水準に達したこともあるが、日銀のETF(指数連動型上場投信)をめぐり、市場の思惑が交錯していることも一因だ。株価の下支え要因になる一方、隙を狙った売り仕掛けも出やすいという。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に次ぐ巨大な「機関投資家」になりつつある日銀の動向に、市場も大きな関心を寄せている。

<サプライズのETF買い>

市場に驚きが走った。5日の東京株式市場で、日銀が追加緩和決定後、初めてETFを購入したことが分かったからだ。規模は380億円と、前回10月17日の147億円の約2.5倍。日銀は年間3兆円に購入ペースを3倍に増やすことを決めており、規模の拡大自体は予想されていたものの、そのタイミングがサプライズとなった。

日銀のETF買いはもっぱら後場だとの見方が多い。その基準は前場の終値と市場では推測しているが、5日のTOPIX.TOPX終値は前日比0.31%のマイナス、日経平均.N225は前日比35円安と下げは小幅だった。一時はプラス圏に浮上していた。以前のような、TOPIXで前場1%以上の下落という規則性が最近は見られないとはいえ、「相場が底堅い印象だっただけに意外感があった」(国内証券)という。

当日の東証1部売買代金3兆5460億円と比べれば、380億円という規模はさほど大きくない。しかし、取引時間中にまとまって出てくる買いの額としては、マーケットに与えるインパクトは十分だ。年間3兆円購入するとすれば、年間営業日を250日として、1日当たり「必ず」120億円買う必要がある。さらに中央銀行が株式を購入するというアナウンスメント効果は小さくない。

「日銀の黒田東彦総裁が2%の物価目標達成に強い意志を示した。さらに昨日のETF買いは株価が下がれば買うということを強く印象付けた。その是非や規模の影響度合いはともかく、その強い意思と行動にマーケット参加者の多くは、日銀に逆らうのは得策ではないと感じ始めているようだ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資情報部長、藤戸則弘氏は指摘する。

<年内に第2位の「大株主」に>

日銀は2012年12月からリスク資産のETFとJ─REIT(不動産投資信託)の購入を開始した。当時は白川方明総裁だったが、黒田総裁が就任した後も継続され、昨年4月の量的・質的緩和を経て購入枠は徐々に拡大。これまで購入したETFは3兆4338億円となっている。

日銀のバランスシート上の株式保有額も膨らんでいる。ETFは今年3月末時点の時価ベースで約3兆8500億円、2002年9月に導入を決めた銀行等保有株式の買い取り分が2兆3000億円弱(時価)残っており、合計は6兆1500億円。年内にも日本生命の株式保有額7兆6900億円(9月末時点)を超え、GPIF(6月末で21兆9700億円)に次ぐ、第2位の「大株主」になる見通しだ。

GPIFも先月末、基本ポートフォリオ運用指針の見直しを決定。国内株の比率は12%から25%に大幅に引き上げられた。日経平均の予想株価収益率(PER)は16倍、TOPIXは17倍に上昇している。割高感も漂う水準だが、日銀とGPIF、2つの巨大な購入機関の誕生は、日本株のバリュエーション水準を引き上げる可能性がある。

一方、こうした買いの「隙」を突いた仕掛け的な売りも出てきそうだ。「日銀のETF買いは前場に株価がマイナスなのを確認してから出るようだ。プラスであれば買いが出てこないとの判断から、仕掛け的な売りが出やすい」(外資系証券トレーダー)という。6日午後の日本株の急落はオプションの利益確定売りとの見方が出ているが、前場の株価がプラスだっただけに、日銀の裏をかいた仕掛け的な売りが出たのではないかとの観測も聞かれた。

<欠かせない損失補てんの仕組み>

ただ、中央銀行が株式を購入するというのは世界を見渡しても異例な政策だ。どの企業の株を買うかという判断を中央銀行が下すというリスクは、個別株ではなくTOPIX連動型のETFを買うことで回避しているとしても、通貨の番人である中央銀行がき損の恐れのあるリスク資産を大量に買うことは、通貨の価値に関わる。

さらに、もし株価が大幅に下落し損失が生じた場合、だれが負担することになるのか。日本の場合、あいまいだ。旧日銀法では、附則として政府による日銀への損失補てん規定が存在していた。だが、98年の日銀法改正によって同規定は撤廃されている。

非伝統的な金融政策である量的緩和策を導入する際、英国では「資産購入ファシリティ」の収益・損益は財務省に帰属することにした。米国では2011年1月から会計方針を変更し、米連邦準備理事会(FRB)の損失をバランスシートに計上して「繰り延べる」ことを可能にしている。日本でも、法的根拠がなくても損失補てんできる可能性はあるが、いずれにせよ、そこには国民の税金が使われることになる。

ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は「金融政策の波及経路が昔より多岐にわたるようになっており、一概にリスク資産を購入すべきではないとは言えない。しかし、損失が生じた場合は、通貨の価値を守るためにも補てんが欠かせない。そこには国民の血税が使われることになるのだから、その方法については『出口』を迎える前に一日も早く決めるべきではないか」との見方を示している。

(伊賀大記 編集:山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IQ0QQ20141106

アングル:ドル一時115円突破、制御不可能な円安進行危ぶむ声も
2014年 11月 6日 18:32 JST
[東京 6日 ロイター] - ドル/円JPY=EBSは、日銀の追加金融緩和を受けて5日間で6円超の上昇となり、7年ぶりに115円半ばの水準を回復した。このペースが続けば、120円台も短期間で視界に入るが、市場の見方は分かれている。

118円程度でいったん収束するとの予想が多いものの、円安が制御不能となり「円安・株高」の循環がいずれ「円安・株安」に変化すると警戒する声も出ている。

<円安に急ブレーキ>

ドルは6日の東京市場で7年ぶり高値となる115.52円を付けたが、その後、一気に1.5円下落して114円近辺まで戻した。短期筋の利食い売りがきっかけとされるが、市場ではテクニカル面やファンドメンタルズ面などからも円安に一定の歯止めがかかるとの見方が多い。

UBS証券・ウェルス・マネジメント部の最高投資責任者、中窪文男氏は「120円は歴史的にみても大きな節目となる水準。そこを抜けるのはそう簡単ではない」と話す。110円を下値めどとしていったん調整が入るリスクがあるものの、1年後には115円程度で収まるとの見方だ。

10年米国債利回りは、6年にわたる米量的緩和策(QE)の終了後も節目の2.5%を下回ったままだ。原油価格の下落で世界的にディスインフレ圧力がかかっており、利上げは以前より難しくなっている。

他方、FPG証券・代表取締役の深谷幸司氏は、RSI(相対力指数)などテクニカル上では、すでに「過剰な円売りのシグナル」が灯っていると指摘。そのうえで年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)関連の買いも、実際のフローが出る局面では、投機筋が利益確定のドル売りに動く公算が大きいとみている。

<都合のいい円安で止まるか>

ただ、基調としての円安は続くとの見方も多い。「今回は、日銀の追加緩和で円売りマインドに火がついてしまった。日本の当局や市場参加者が、このあたりまでの円安で十分だと思っても、そうはならないだろう」(機関投資家)という。

FXプライムbyGMO、常務取締役・上田眞理人氏によると、ドル/円の需給構造は、本邦輸入勢のドル手当てが進んでいない一方、ドルを売る必要がある参加者は見当たらず、ドル高/円安トレンドを示唆しているという。「足元のドル高/円安相場は、まだ若く、参加者も限られているので、スピードに対する警戒感はない」と同氏は話す。

さらに「120円を超える円安局面で、口先介入などで下手にけん制すれば、為替市場のボラティリティを高めるだけでなく、株の急落リスクを招く可能性もある」(前出の機関投資家)と、制御不能な円安のリスクを指摘する声もある。

こうした声は、歴史的な経験則に基づいている。政府・日銀は、1997年11月─12月に130円台に向かってドル高が進んだ局面で、単独でドル売り/円買い介入を実施した。

しかし、ドル高/円安の勢いは止まらず、翌年6月には8年ぶり高値146.75円までドル高が進み、同月半ばには日米協調のドル売り介入が実施されるに至った。

「今月、海外ファンドなど投機筋の決算が終われば、目下のモメンタム相場はいったん幕引きになるかもしれない。ただ、過去の歴史をみても、都合の良いところで相場は止まらない」とマーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表、亀井幸一郎氏は警告している。

(為替チーム 編集:伊賀大記)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IQ0TG20141106


02. 2014年11月06日 19:33:52 : jXbiWWJBCA

コラム:実質相場指数が示唆するドル高の天井圏=竹中正治氏
2014年 11月 6日 19:21 JST
竹中正治 龍谷大学経済学部教授

[東京 6日] - 黒田日銀の追加緩和策「ハロウィン・サプライズ」と公的年金運用改革のダブル・インパクトでついに115円までドル急騰・円急落の展開となった。筆者も「110円越えはドル金利が実際に上がり始める来年か」と思っていたので意外な急展開だが、短期の相場変動というものはそもそも意外性を伴うものだ。

こうした状況になると「来年のドル円相場のドル天井圏は120円だろうか、いやもっと上がるか」との相場談義も増えてくる。為替相場に限らず、長期投資に欠かせないのが相場の割高・割安を判断する大局観だ。結論から言うと、目先はドルが上がる勢いだ。しかし、110円台にのせたドル円相場は、日米のインフレ率を勘案した実質相場指数で見ると、1985年のプラザ合意以前の80年代前半に見られた「スーパードル高」期のレンジに入り始めている。長期的にはドル売りが報われる可能性が高い。

<相対的購買力平価にまつわる勘違い>

為替相場は相対的購買力平価(以下「相対的PPP」)からの乖(かい)離と回帰を繰り返し、長期的には相対的PPPに収束する。これは筆者が一貫して説いてきた国際金融論の基礎的な知見だ。

今回のようにドル円相場の水準が変わると、大局的な水準観を求めてこの相対的PPPに関心を向ける方々が増えるようだ。ところが、勘違いをした見方をしている方が多いので、ここで注意しておこう。

筆者が以前チーフエコノミストとして勤務していた国際通貨研究所のウェブサイトでは、ドル円、ユーロドル、ユーロ円の3銘柄について、消費者物価指数、企業物価指数、輸出物価指数による相対的PPPと市場実勢相場(名目相場)のグラフを更新、開示している。

よくある勘違いは、図示された3種類の物価指数による相対的PPPを、チャート分析の「支持線」や「抵抗線」のごときイメージで受け止めることだ。例えば「企業物価指数で計算されたPPP水準1ドル=99.34円(2014年8月末時点)を抜けてから、それがドル相場の支持線(下限めど)となり、消費者物価指数で計算されたPPP水準129円台までドル相場の上昇余地が開けている」というような見方である。なぜそれが勘違いかというと、相対的PPPグラフの形状や水準は起点に依存しているからだ。その意味を説明しよう。

相対的PPPは次の算式で計算される。「相対的PPP=起点時点の名目相場×(自国の物価指数/外国の物価指数)」(物価指数は起点時点を100として表示)

国際通貨研究所の相対的PPPは起点を1973年(年間平均値)にして計算されており、ドル円についてはそうするのが比較的一般的である。しかし、73年を起点にすることに必然性があるわけではない。起点時点を変えると、相対的PPPグラフは形状も水準も変わってしまう。実際に1ドル=80円前後まで円高が進んだ95年を起点にすると、消費者物価指数、企業物価指数、輸出物価指数の3種類の上下の位置関係も逆転してしまう。

つまり、いつを起点に選ぶかで無数に異なる相対的PPPグラフが描ける。したがって、特定時点を起点にしたグラフが相場の上限や下限のめどになると考えるのは、全く根拠がない。1973年が比較的一般的に起点に選ばれるのは、その年が変動相場制に移行した年であり、かつ日本の経常収支の不均衡がそれほど大きくなかったという緩い理由しかないのだ。

では、どのように相対的PPPと名目相場の関係を見たら良いのか。その手法として筆者は相対的PPPをベースにした実質相場指数を計算し、その長期の平均値からの乖離を見ることで、特定の起点時点に依存せずにドル円相場の大局的な割高、割安を見抜くことができると説いてきた。

実質相場指数は次の式で計算される。「実質相場指数=名目相場/相対的PPP」

この計算式を見てわかる通り、実質相場指数とは名目相場がどれほど相対的PPPから乖離しているかを示すものだ。つまり、「名目相場が相対的PPPから乖離と回帰を繰り返す」ということは、「実質相場指数はその長期平均値からの乖離と回帰を繰り返す」ということを意味する。掲載図は1973年を起点にした企業物価(米国は生産者物価)で計算した相対的PPPに基づいた実質相場指数の推移である。73年以来の平均値から実質相場指数が乖離と回帰を繰り返していることが良くわかるだろう。

ひとつの目安として平均値からプラスマイナス10%の水準に水平の青色線を引き、この10%上限を上に超えるとドル割高(円割安)圏、10%下限を下に抜けるとドル割安(円割高)圏と筆者は判断している。ゴルフのフェアウェイとラフに例えると良いだろう。ボール(市場実勢相場)はフェアウェイからラフに飛び出すが、必ずフェアウェイに戻ってくる。110円台にのったドル円相場は実質相場指数で見るとドル高・円安のラフに深く突入している。

もっとも、長期的な平均値自体が時間の経過とともに少しずつ変化する。そこで1973年以降の過去の各時点での平均値を示したのが赤色の破線である(過去10年の長期平均が計算できる82年12月から表示)。過去の各時点ではこの赤色の水準を長期平均値として見ていたことになるが、その変化は穏やかであり、90年代後半以降は極めて安定している。長期平均値がドル円相場の大局的な割安・割高度を示す中心軸として利用できることがわかるだろう。

また、消費税率引き上げによる物価指数の変化は、円の対外的な購買力の変化には 関係がないので、消費税率の引き上げの影響分を抜いた物価指数で計算した相対的PPPを利用する方が適切であろう。掲載図では線が混雑するので省略してあるが、筆者の個人ウェブサイトやブログでは消費税率影響分を調整した実質相場指数も併記してある。

<超円安シナリオ実現の可能性は低い>

2国のインフレ率の格差だけで長期の相場変化は説明できるという相対的PPPに基づいたこうした見方は、シンプル過ぎると感じるためだろうか、腑に落ちない方も少なくないようだ。例えば「金利格差の要因はどう考えるのか。来年からドル金利が上昇して日米金利格差は拡大すると見込まれるのでドル買いが増え、ドル高になっているのではないか」と考えられている。期待インフレ格差に変化がなく、金利格差が拡大すれば実質金利格差が広がる。

実質金利格差の変化がドル円相場に対して短期、中期の変動要因になり得るのは事実だ(ただし局面によりかなり影響度が異なる)。ところが、より長期の時間軸では、日米間のように資金が自由に移動する環境では平均実質金利(名目金利−インフレ率)が同じ水準に収束する力が働いている。

長期的に実質金利格差がゼロに収束する場合、「実質金利格差=名目金利格差−インフレ率格差」なので、「名目金利格差=インフレ率格差」となる。これは実質金利が同じ場合は、相対的PPP原理と金利平価原理(為替相場の変化は2通貨の名目金利格差で決まるという原理)は同じ結果になるという国際金融論の命題として知られている。

「経常収支の黒字や赤字も為替相場に影響を与えるはずだ。今後日本では少子高齢化で経常収支赤字になり、趨(すう)勢的な円安傾向になるのではないか」。そう考える方も多い。確かに経常収支は国内の貯蓄と投資(固定資本形成)の差額に一致する。「国内貯蓄−国内投資<0」ならば、経常収支は赤字(マイナス)になる。今後、日本では少子高齢化が一層進み、家計貯蓄も趨勢的に減少すると想定すると、経常収支が赤字になる力が働く。

しかし、国際収支上の経常収支は為替相場の需給の一項目でしかなく、またその収支額は資金の移動を示す金融収支と一致する。金融収支が生み出す為替相場の需給次第で為替相場の変動は大きく変わってしまう。

例えば、1980年代前半の日本は経常収支黒字が拡大したが、同時にドル高が進んだ。逆に90年代前半は経常収支黒字でドル安が進んだ。経常収支と為替相場の関係を長期で見ると安定的な相関関係は見られない。したがって、経常収支動向はせいぜい中期の為替相場の変動要因の一項目に過ぎないと言える。

1ドル=120円を超え、130円、150円というような超円安になるリスクはないだろうか。次のような場合には、そうした超円安になる可能性もゼロではなかろう。ひとつは日本政府の財政赤字、政府債務の膨張の結果、日本国債への信認が崩壊し、円建ての金融資産全般から海外資産への資本逃避が起こる「円危機」のケースだ。

もうひとつは、日米のインフレ率が逆転する場合で、例えば米国のインフレ率が2%、日本のインフレ率が4%というようなことになれば、10年間で円相場の相対的PPPは約20%も円安にシフトする。いずれも現時点では可能性が非常に低いシナリオだと考えるのが自然だろう。

<長期投資ならば逆張りの発想を>

筆者自身は長年保有しているドル資産(S&P500連動の株式ファンドと長期国債)の為替リスクヘッジ操作にこの実質相場指数グラフを利用している。2007年前半に124円近辺まで上がったドル相場は、図が示す通りドル高のラフに入っており、筆者は現物ドル資産の為替相場リスクヘッジ目的で外国為替(FX)証拠金取引を使って分割してドル売り残高を積み上げ、ヘッジ率をほぼ100%にしてドル安円高に備えた。

リーマンショックを経た2009年以降、1ドル=90円を割り込み、名目相場はドル安・円高のラフに突っ込んだので、上記のドル売りヘッジ残高を分割して買い戻し、1ドル=70円台後半では完全にヘッジ率ゼロにした(現物のドル資産分だけドルロング持高)。

2013年のアベノミクスによる円高修正、円安相場で1ドル=100円を超え、実質相場指数グラフは再びドル割高のラフに入ってきた。そこでまた現物のドル資産を見合いにしたドル売りヘッジを分割して始め、現在は80%のヘッジ比率となっている(ネット・ドルロング20%)。

この手法の限界は、実質相場指数の長期平均値から名目相場がどの程度乖離したら再び回帰局面に転換するのか、その点はわからないことだ。

例えば1980年代前半の時期は73年以降で最もドル高円安への乖離が広がった局面だ。また、95年はドル安・円高への乖離が最も大きかった。いずれも相場の乖離を大きくしたその時代固有の条件が働いていたのだが、どれほど乖離するか事前に知る方法はない。下記グラフ作成時点の名目相場113円に相当する実質相場指数は113.55円だ。これは実質相場指数で見ると、変動相場制移行後で最もドル高が進んだ81年後半から85年前半までの平均値にほぼ等しい。

筆者自身は実質相場指数の平均値からの過去の乖離度を目安に、可能性としては名目相場で115円前後がドル相場の上限になると考え、その水準でヘッジ率が100%になることを想定してドル売りヘッジを積み上げてきた。さらにドル高が進めばどうするか。ヘッジ率を100%以上に上げて、ドルショート持高に転じるかもしれない。相場はしょせん行き過ぎるものだ。長期投資に徹するなら逆張りにこそ、リターン向上の大きなチャンスがある。

*竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職。経済学博士(京都大学)。最新著作「稼ぐ経済学 黄金の波に乗る知の技法」(光文社、2013年5月)
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0IQ0EN20141106


03. 2014年11月07日 04:13:33 : jXbiWWJBCA

岸博幸のクリエイティブ国富論
【第280回】 2014年11月7日 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
金融緩和が産官学のガバナンスまで緩める?
 10月31日に日銀が金融緩和第2弾を行ないました。投資家の多くが予想していなかった早いタイミングでのサプライズであり、また結果的にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の国内株投資割合の増大とセットとなったため、株高と円安が進み、消費税増税による消費の低迷に直面する日本経済と政権にとって、久々の明るいニュースとなりました。金融緩和一発で日本経済の雰囲気をガラッと変えたと言っても過言ではありません。

 その意味で、黒田総裁の今回の決断は高く評価すべきです。しかし心配なのは、この英断が金融のみならず、日本経済の再生に不可欠な産官学のガバナンスまで緩めてしまうのではないかということです。

改革はさらに後退、骨抜きへ
政府のガバナンスの緩み

 そもそも金融緩和は財政出動と同様に短期的な景気浮揚策であり、産業や企業の競争力を強化する訳ではないことを考えると、政府はそれらの政策で作り出した時間的猶予の間に正しい成長戦略、具体的には岩盤規制の改革などの構造改革を進めなければならないはずです。

 しかし、霞ヶ関の官僚は既にだいぶ前から緩みきっており、改革を進める気などほとんどないのですが、金融緩和によってそれが更にひどくなった感があります。私のところに日々入ってくる情報からそう感じられますし、6月の成長戦略で決定したはずの混合診療の解禁が骨抜きにされつつあるという報道がその証左です。

 そして、そうした緩みは国会答弁からも感じられます。安倍首相は今週の国会審議で、「株価上昇が大きな資産効果を呼び、消費に結びつき、経済の成長にプラスになる」と答弁していますが、本当にそうでしょうか。

 昨年のように半年で株価が倍になる位に急速に上昇するならともかく、今回のように株価が1割程度上がっただけでは、個人金融資産に占める金融投資の割合の低さも考えると、金融投資を行なっている一部の富裕層の懐は潤うにしても、金融投資に縁のない多くの中低所得者層にはあまり恩恵はないはずです。

 即ち、「株価上昇が大きな資産効果を呼び」とまで現段階で断言するのはちょっと無理があります。日経などのメディアの報道が金融緩和した途端に明るいトーンになったので、それに合わせて調子に乗ったのでしょうが、それでもそんな安直な答弁を官僚が用意し、それを総理も読んでしまうというのは、官の側のガバナンスの緩みに他ならないのではないでしょうか。

複数の社外取締役の選任にも反発
経済界のガバナンス嫌い

 そうした官のガバナンスの緩みは、民間の側にもしっかりと伝播しているように感じられます。

 官の側はもっと緊張感を持って岩盤規制の改革に取り組む必要があるのに、それが6月の成長戦略の策定以降ほとんど進んでいません。民間側は、そうした緩みを敏感に感じ取ってか、成長戦略の重要課題であるコーポレートガバナンスの強化に、強く抵抗しているのです。

 コーポレートガバナンスについては、先の通常国会で会社法が改正され、社外取締役を置かない上場企業はその理由を説明する義務を負うことになりました。その延長で金融庁と東証は、“企業統治指針”(コーポレートガバナンス・コード)の策定について有識者会議で検討を行っています。そこでは複数の社外取締役を選任すべきという意見に対して、経済界の側が強く反対しています。聞いた話では、金融庁や東証に直接圧力もかけているようです。

 その反対する理屈が、「会社法の改正で決着済み」と言っているのもひどい話と言わざるを得ません。会社法改正は“ハードロー”規定であり、東証規則のような“ソフトロー”の話とは基本的に無関係だからです。

 それにも拘らず、東大内では過去数年で頻発した不祥事の処分(現執行部の責任の明確化)などガバナンスの強化が行なわれておらず、逆に今のガバナンス欠如の責任があるはずの現執行部の人たちが、未だに総長選の有力候補として残っているのです。日本の最高学府でのガバナンスの欠如という憂慮すべき事態です。

東大総長選からも透けて見える
最高学府でのガバナンスの欠如

 このように産官のガバナンスは緩みっ放しなのですが、それに加えて学のガバナンスも緩んだままです。日本の最高学府の東大では総長選が本格化していますが、それを通じて透けて見えるのが最高学府におけるガバナンスの欠如だからです。

 そもそも東大はTLOの設立や産学連携本部の立ち上げ、そして大学発ベンチャー支援と、産学連携やベンチャー育成を他の大学に先んじて行なってきており、その実績も国内では圧倒的です。

 それなのに、産学連携を主目的に国が1000億円もの国費を、東大を含む4国立大学のために用意した「官民イノベーションプログラム」では、東大以外の3大学が既に国費によるベンチャーファンド設立に必要な事業者認定を取得したというのに、東大だけがまだの状態になっています。要は、東大内部が尋常な状態ではないことが客観的事実として鮮明になっているのです。

 それにも拘らず、東大内では過去数年で頻発した不祥事の処分(現執行部の責任の明確化)などガバナンスの強化が行なわれておらず、逆に現執行部で責任が重いという噂が絶えない人たちが、未だに総長選の有力候補として残っているのです。日本の最高学府でのガバナンスの欠如という憂慮すべき事態です。

金融は緩和、ガバナンスは引き締めを

 以上のように、日本では産官学のすべてにおいてガバナンスが緩んでしまっています。

 思い返すと、昨年4月に日銀が金融緩和を行なった後も、それで株高や円安が進んだことで多くの人が安心してしまったのか、産官学のあらゆる抵抗勢力が改革を骨抜きにしたため、昨年6月に策定された成長戦略は惨憺たる内容となり、それをきっかけに外国人投資家が日本から引き始めました。

 今回の金融緩和から数日の間のさまざまな動きを見ていると、また昨年と同じように多くの人が金融緩和で安心してしまい、様々な改革を骨抜き・先送りしようとしているように感じられます。

 しかし、それでは株価も昨年と同じことを繰り返すのではないでしょうか。金融緩和が産官学のガバナンスまで緩めてしまっては本末転倒なのです。今回こそは、金融は緩和してもガバナンスは引き締めとなってほしいものです。
http://diamond.jp/articles/-/61765


04. 2014年11月08日 15:59:39 : jXbiWWJBCA

日本株の日銀緩和効果は短命、50日後は元通り−バークレイズ 

  11月7日(ブルームバーグ):日本株をリーマン・ショック前の水準まで押し上げた日本銀行の追加金融緩和。バークレイズ証券の北野一マネージングディレクターは、株価への緩和効果は長続きしないだろうと予想する。
過去の日銀政策の株価への影響について、同氏は2001年から13年までの過去3回の「サプライズ」があったケース、01年から06年までの当座預金残高の目標値を引き上げたケースの2つに分類。政策発表日の日本と米国の相対株価を100とし、日米相対株価 (TOPIX÷S&P500種)のパフォーマンスをそれぞれのケースで比較した。
3回のサプライズケースで相対株価がピークに達したのは、量的緩和を開始した01年3月19日からは13営業日目、物価安定のめどを採用した12年2月14日からは18営業日目、質的・量的緩和を導入した13年4月4日からは34営業日だった。北野氏は、サプライズ効果が「今すぐ終わるというのはない」とした半面、相場を押し上げるのはせいぜい10日から30日程度で、「50日もたてば、緩和をしたときのレベルまで戻ってきてしまう。それほど長く続かない」とみている。
3回のサプライズケースは、金融調整の操作目標が金利から量に変更されたり、インフレ目標への言及、これまで試した政策の総動員など金融政策に新機軸を含んでいたが、「今回は量を増やしただけ。いわゆる『サムシング・ニュー』はない」と同氏。その点で、今回の比較対象とすべきは01−06年に当座預金残高の目標値を随時引き上げていたケースで、このケースでは「ほとんどインパクトはない」と言う。
急騰主役は歴史的「空売り」
北野氏は、今回の株価の反応が大きくなった要因として、10月30日時点で36.7%と、08年の統計開始以来で最高水準となっていた空売り比率を挙げる。さらに、投資家の間では昨年4月の日銀決定後に株価が大きく動いた記憶があり、「それを期待して前回と同じような行動を取りあえずとった」との見方を示した。
ただ、インフレ期待の高まりに働き掛けた質的・量的緩和策の実際の効果が限られたことを多くの投資家が知っており、今回は「前回のようなピュアな期待にはならない」とも話している。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 長谷川敏郎 thasegawa6@bloomberg.net;東京 Anna Kitanaka akitanaka@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net院去信太郎
更新日時: 2014/11/07 08:38 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NELZ5R6TTDS601.html


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