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不可解な決定会合の中断時間  久保田 博幸
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/816.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 26 日 20:47:05: igsppGRN/E9PQ
 

不可解な決定会合の中断時間
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20141126-00041015/
2014年11月26日 17時19分 久保田 博幸 | 金融アナリスト


日銀は25日の朝、10月31日に開かれた日銀の金融政策決定会合議事要旨が公表された。10月31日に日銀は「量的・質的緩和の拡大」、つまり異次元緩和の第二弾を決定した。事前に追加緩和観測はほとんど市場では流れておらず、サプライズな緩和となっていた。追加緩和決定は5対4というぎりぎりの多数決で決定していたこともあり、その決定に至る政策委員の議論も当然注目されたが、今回はその部分ではなく違う部分から興味深い事実がわかったのでそちらに注目してみたい。

10月31日の決定会合では、妙なことが起きていたことが議事要旨からわかったのである。それは以下の部分である。

「金融市場調節方針の変更等に関する議論を踏まえ、政府からの出席者から、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(12時31分中断、12時42分再開)」

金融政策の変更を決定しようとしているので、担当大臣に確認を取るのはあたりまえではないかと思われるかもしれないが、これは極めて異例の出来事なのである。過去の事例を見ても金融引き締めの際には、このような中断があったが、その後の金融緩和の際には、異次元緩和第一弾を決定した2013年4月の決定会合を含めて、中断の事例はなかった。政府にとっても10月31日の日銀による量的・質的緩和第二弾がサプライズであったことは確かである。

参考までに2000年8月のゼロ金利解除の際の議決延期請求権を行使した際だけでなく、2006年3月の量的緩和解除の際や(午後1時17分中断、午後1時46分再開)。同年7月のゼロ金利解除時(午後0時39分中断、午後1時00分再開)、2007年2月の利上げの際にもあった(午後1時01分中断、午後1時26分再開)。これらはすべて議長から議案が提示されたあとに中断が要請されていた。

ところが今回は金融引き締め方向ではなく、政府には都合の良い金融緩和であり、議決延期請求権など行使することは考えづらい。それではなぜ、担当大臣に確認を取る必要があったのか。

10月31日の政府からの出席者は、財務省からは宮下一郎財務副大臣、内閣府からは前川守政策統括官であった。財務副大臣は麻生大臣から日銀が動く可能性がありそうだとは、聞いていなかったのであろうか。それともそれまでの日銀の政策委員の議論から、かなりきわどい票決になりそうだとの連絡をしたのであろうか。もちろん全くのサプライズであり、自分のコメントを含めて大臣に確認を取った可能性もある。

このあたり憶測となってしまうが、麻生大臣も今回の日銀の追加緩和は知らされていなかった可能性もある。事前に政府が日銀の金融政策の変更を知ること自体、おかしいとのご指摘もあろうが、繰り返すが2013年4月の異次元緩和第一弾では、今回のような中断はなかったのである。

日銀が緩和のタイミングを計るために政府側との阿吽の呼吸を信じて異次元緩和第二弾を独自に決定したとなれば、その後の解散総選挙と消費増税の延期に至ることを考えると勝手に突っ走ってしまった可能性もありうる。公定歩合と解散は嘘をついても良いとされていたが、まさか日銀と政府もお互いに嘘というか本音を隠していたというのであろうか。

不可解な決定会合の中断時間は、真実が明るみに出ると何だそんなことかというものかもしれないが、もしかするとかなり奥の深いものであった可能性もある。ただし、中断時間はわずか10分程度であったことを考えると、担当大臣はある程度の動きを察していたのかもしれない。


 

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コメント
 
01. 2014年11月27日 06:27:29 : jXbiWWJBCA

ドラギ総裁の輪転機、来年始動でプラス効果期待−お札じゃない 

  11月25日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は来年、これまで回っていなかった輪転機のスイッチを入れる。
もっとも、刷るのは国債を購入するために必要な紙幣ではなく、政策委員会の議事録だ。
ECBは来年1月から議事録要旨を公表。政策委での議論について透明性を高める。それぞれの意見を表明した委員の氏名は公表されない見込みなものの、新しい試みには違いない。議事録全文は30年後に公開される。
アイルランド中銀はECB議事録要旨の公表開始に先立って、他の中銀が出す議事録についての研究をまとめた。携わった同中銀エコノミスト、ダニエル・ケダン、レベッカ・スチュアート両氏は先週の結果公表で、「経験に基づく研究によれば総じて、中銀による議事録公表は市場参加者と市民に有用な情報をもたらしている」と指摘している。
原題:Draghi’s Printing Press Poised to Run for ECB Minutes at Least(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:パリ Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: James Hertling jhertling@bloomberg.net Paul Gordon, Zoe Schneeweiss
更新日時: 2014/11/26 07:03 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFLG6X6KLVRQ01.html


 


もうウォール街はいらない、必要なのは投資家同士の出会い

  11月25日(ブルームバーグ):債券投資家は恐らくもう、ウォール街をそれほど必要としていない。必要なのは投資家同士が出会う方法だ。
今年これまでの通常取引日では、社債売買の約52%を投資家同士が行った。この比率は2011年の47%から上昇。米金融取引業規制機構(FINRA)のデータをエレクトロニフィーがまとめたこれらの数値推移は、資産運用者が銀行を介さずに互いの間で債券を売買するのが可能なことを示唆している。
相対取引の市場を牛耳ってきた債券ディーラーは厳格化する新規制の下で、市場の潤滑油的な役割を果たすのに使う自己資金を減らしている。ディーラーの役割は売り手と買い手をつき合わせる仲介のみになりつつある。
そこで、エレクトロニフィーやマーケットアクセス・ホールディングスといった企業が、投資家同士が直接取引できるシステムの構築に乗り出した。
エレクトロニフィーのアマー・クチナド最高経営責任者(CEO)は「顧客同士の間には当然、流動性がある。ディーラーが直ちに流動性を提供する能力はどんどん低下している」と指摘した。
当然のことながら、ウォール街が自社の資金をリスクにさらすことなく注文を取り次いでいるだけならば、高い手数料が正当化されるのかという声も出てくる。
債券取引で5%を超えるディーラー手数料は行き過ぎとされてきたが、FINRAは社債取引で実際の手数料上限は3%かそれ以下だとみていると、事情に詳しい関係者が5月に述べた。
原題:Forget Bond Dealers: Investor-to-Investor Trading Could Be Norm(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Lisa Abramowicz labramowicz@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: David Papadopoulos papadopoulos@bloomberg.net Caroline Salas Gage
更新日時: 2014/11/26 06:47 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NFLNVJ6JTSET01.html


02. 2014年11月27日 07:17:57 : jXbiWWJBCA

野口悠紀雄 緊急連載・アベノミクス最後の博打
【第2回】 2014年11月27日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
デフレ脱却によって経済成長率はむしろ低下した
政府は「インフレ目標」を取り下げるべきだ
 ここ数年の日本経済は、円安によって大きな影響を受けた。円安によって利益を受けた部門と、被害を受けた部門は、はっきりと分かれている。

 輸入物価の上昇によって消費者物価が上昇したため、家計の実質収入が減り、実質消費が減った。他方で、企業の利益は増大した。ただし、企業利益の動向は、産業別、規模別に大きな差がある。

物価上昇で
実質消費が減少している

 2013年に比べて最近の経済活動水準が落ち込んでいるのは、一時的要因(公共事業の増加と消費税増税前の駆け込み需要)の剥落によると前回述べた。ただし、消費支出については、それ以外の要因が働いている。

 このことは、過去の消費税増税時と今回を比べると、よく分かる。図表1は、実質消費の推移を示したものである。1989年の消費税導入時には、ごく一時的な影響しかなく、11月には増加に転じた。また、97年の増税時にも、数ヵ月でほぼ元の水準に戻った。

 しかし、今回は、9月になっても水準が下がったままだ。これは、89、97年当時にはなかった要因が働いていることを示している。


 考えられるのは、物価上昇による実質所得の減少だ。

 図表2は、総合と食料についての実質消費指数の推移である。いずれも3月に大きく増加して4月に減少、その後回復という点では同じだ。総合の回復が遅れているのは、総合には耐久消費財に対する駆け込み需要の影響が含まれているのに対して、食料には駆け込み需要がほとんどないからであろう。

 しかし、食料についても、14年4〜9月の平均値は99.1と13年平均102.4より3.2%ほど低くなっているのである。食料は生存に必須のものが多いため、本来、実質値はあまり変わらないはずだ。それにもかかわらず実質値が落ちているのは、次項で見るように実質収入が減少している結果だと考えられる。


円安による
実質賃金低下

 図表3には、2人以上の勤労者世帯について、収入と支出の対前年同月比を示す。

 実質実収入の伸び率と実質消費支出の伸び率は、密接に相関している。すなわち、2013年4月頃から実質実収入の伸び率が低下し、それに伴って実質消費支出の伸びも低下している(なお、14年4月以降は名目実収入の伸びもマイナスになり、実質実収入と実質消費の伸びの低下を加速させている)。

 実質実収入の対前年比がマイナスになったのは、13年10月からである。これは、消費税率引き上げ以前である。14年4月に消費税率が引き上げられてからはマイナス幅が拡大しており、絶対値は消費税引き上げ率(3%)より大きい。

 つまり、実質実収入の減少は、消費税率引き上げだけによって生じている現象ではない。これは、円安によって消費者物価が上昇していることにもよるのだ。


 前項で見た食料などの基礎的消費の実質消費減は、このような実質実収入の減少によって引き起こされていると考えられる。

 以上で述べたことは、つぎの2つの重要な含意を持つ。

 第1は、「デフレ脱却」というアベノミクスの基本目標が誤りであることだ。政府と日本銀行は、インフレ率が高まれば経済活動が活性化するとして、インフレ目標を2%に引き上げた。しかし、実際には、上で見たように、インフレ率の上昇に伴って実質消費の伸び率がマイナスになっているのである。つまり、デフレ脱却によって、実質経済成長率が低下しているのだ。

 今後さらに円安が進んで物価がさらに上昇すれば、政府・日銀の掲げる「2%インフレ率」という目標には近づくだろう。しかし、それは、家計の実質所得をさらに減らし、実質消費をさらに減らし、そして経済成長率をさらに押し下げるだろう。

 政府・日銀は、「物価上昇率を高めれば経済が活性化する」との認識が誤りであったことを認め、インフレ目標を取り下げるべきである。

 第2は、消費税率引き上げと円安の関係だ。現状で消費税率を引き上げるのが適切でないという判断は、それによって支出が減少することを懸念するからだ。しかし、上で述べたように、円安による物価上昇によっても支出が減少している。

 しかも、消費税率引き上げで増加した税収は財政支出となって国内に還元されるが、円安が引き起こす物価上昇による支出増は、海外に流出してしまう。その意味では、円安による影響のほうが問題だ。

 したがって、消費税増税による消費削減が望ましくないと考えるなら、円安による消費削減も望ましくないとすべきであり、円安を抑制すべきだ。

 なお、賃金伸び率は、他の統計では家計調査とは若干異なる値となる。この点については、後の回で論じることとしたい。

業種や規模で大きく違う
企業収益の動向

 円安は輸出企業の円表示の売上高を増加させる。他方で、原材料費のうち国内で調達するものや賃金は、円安によって増えることはない。したがって、利益が増大する。

 全産業(全規模)について、2013年度の企業の営業利益を12年度と比べると、図表4に示すように、21.5%の増加となった。

 したがって、企業部門全体としては、円安によって利益を受けたことになる。

 上で述べたことと合わせれば、「円安は、家計の負担を増加させる半面で、企業利益を増やした」ということができる。

 ただし、産業別、企業規模別に見ると、図表4に示すように、大きな格差がある。

 まず全産業を見ると、資本金1億円以上の増益率が27.9%であるのに対して、1億円未満は7.1%でしかない。

 製造業の場合は、規模による格差がさらに大きい。すなわち、資本金1億円以上の増益率が53.0%という非常に高い値であるのに対して、1億円未満は5.9%でしかない。これは、後で見るように、円安が輸出数量を伸ばしていないため生産が顕著に増加していないことの結果と考えられる。

 非製造業はどうか? まず、資本金1億円以上の企業の増益率は15.9%であって、製造業の場合よりかなり低い。これは、非製造業では輸出がないためだ。1億円未満は7.3%となっている。製造業ほどの格差はないが、大企業より低いのは事実だ。

 以上から見て、円安による利益は、製造業の大企業に集中しており、小企業はほとんど恩恵を受けていないことが分かる。


 業種別や規模別をもう少し詳しく見ると、図表5に示すように、きわめて大きな差異がある。なお、ここではあらゆる業種・規模を網羅的に示すのでなく、いくつかのケースを取り上げて示している。

 まず第1に注目されるのは、利益増加は資本金1億円以上の企業に多いことだ。とくに製造業に多い。非製造業では、建設業、不動産業の利益が増加している。資本金1億円未満で顕著に増加しているのは、宿泊業、飲食サービス業だけである。これは、円安によって外国人観光客が増えたためと考えられる。

 他方、利益が減少しているのは、製造業、非製造業を問わず、資本1億円未満の企業に多い。資本金1億円以上で利益が顕著に減少しているのは、食料品製造業だけである。

 注目すべきは、同じ業種であっても、規模によって利益動向が正反対になる場合もあることだ。

 例えば、生産用機械器具製造業、電気機械器具製造業、自動車・同附属品製造業の場合、資本金1億円以上では利益が大幅に増加しているが、資本金1億円未満では減少している。これは、円安にもかかわらずドル建て輸出価格が下がらないため輸出数量が増えず、したがって、下請けの仕事が増えていないからだろう。

 陸運業の場合にも、資本金1億円以上では利益が増加しているが、資本金1億円未満では、減少している。これは、燃料費の増加が利益に与える影響が、大企業と小企業で異なるためだろう。


 日経平均株価は、大企業の業績を反映する。したがって、平均株価を見ている限り、上記のような問題を認識しにくい。

 大企業の場合にも、利益の増加は、生産性の向上や、新技術・新商品の開発などを反映したものではない。単なる受動的な変化だ。そして、為替レートが変われば変わる「あなたまかせ」的なものだ。

 しかも、株式売買益のかなりは、外国人投資家に帰属する。東京証券所「投資部門別売買状況」によると、13年の日本株の売買高のうち、外国人投資家の比率は58.1%だ。したがって、利益の6割近くは外国に流出すると考えてよい。

 いま一つ注意すべきは、売上高はさほど増えていないことだ。利益が大幅に伸びた1億円以上の製造業の場合でも、12年から13年にかけての売上だけの増加率は、わずか3.3%に過ぎない。利益率が低いために、円安によって売上だけ増加して費用が増大しない場合、わずかの売上増でも、利益は大きく変化するのである。

貿易数量はまだ増えない

 貿易統計速報によると、10月の貿易収支は、28ヵ月連続で赤字となったが、前年同月比はマイナス35.5%となった。

 これまでマイナスが続いていた輸出数量指数の伸びは、9、10月にはプラスになった。10月は4.7%増だ。ただし、図表6に見るように、輸出数量は目覚ましく伸びているわけではない。ほぼ一定と考えてよいだろう。増加しているのは対アジアの輸出で、アメリカは景気がよいのに対米輸出数量は伸びていない。

 しかも、輸出数量指数の水準は、円高期であった2010年より低い。円安が貿易数量を増やすのでなく、かえって減らしているわけだ。


 こうなるのは、ドル建ての輸出価格がほとんど一定だからである(そのために、円建ての輸出額が増加し、利益が増大するのである)。このため、価格競争力が高まらず、輸出量は相手国の景気によって決まるのである。

 輸出が増えないのは、製造業の生産拠点が海外に移ったためだと言われることが多い。確かに、長期的に見て日本の製造業の海外生産比率は上昇した。しかし、この数年間で顕著に高まったわけではない。内閣府マンスリー・トピックス「海外現地生産の動向と輸出への影響」(2014年4月)は、「海外現地生産の状況が短期的に大きく変化したとはみられないことから、海外現地生産の動向がマクロ的には2013年後半以降に輸出を大きく下押ししたとは考えにくい」としている。

 なお、輸入数量は、円安にもかかわらずあまり減っていない。図表7に見るように、ほぼ一定と考えてよい。


http://diamond.jp/articles/-/62787


03. 2014年11月27日 07:19:45 : jXbiWWJBCA

高橋洋一の俗論を撃つ!
【第107回】 2014年11月27日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
「リカードの中立命題」が大好きな
黒田総裁らの増税論者は否定された
 先日、BS朝日の田原総一朗さんの番組「激論クロスファイア」に出ていたら、驚いたことがあった。

 討論相手の増田寛也さんが、「財政再建には増税が必要」と思い込んでいたことではない。もちろん、「財政再建のためには増税ではなく増収」が正しいことを、本コラムで取り上げているものの、依然としてこの種の間違いは著名人にもみられるので、この程度では驚かない。

 先日末のハロウィーン緩和についてである。あの緩和を、安倍総理の10%への再増税に対する“後押し”と、増田さんも田原さんも考えていたというのだ。

日銀の追加緩和は
判断ミスのカバーショット

 筆者は追加緩和の中身(規模)とタイミングについては、以下のように考えている。現時点の経済状況は、4月の8%への消費増税によって需給ギャップ(需要と供給の差)が十数兆円にまで拡大している(図1)。今回の追加緩和は、中期的にこの需給ギャップを埋めるような有効需要(消費、投資等)を創出するうえで、まずまずの規模である。


 一方、タイミングには問題がある。需給ギャップの拡大は4月の8%への消費増税によってもたらされたのだが、増税の悪影響について、日銀はその見積もりでミスをしている。例えば、昨年4月の日銀展望レポートでは、2014年度の成長率・インフレ率はともに1.4%という見通しだったが、今回は実質成長率0.5%、インフレ率1.2%と下方修正されている(図2)


 本コラムの読者であればご存じだろうが、筆者は1年前に4月の8%への消費増税の悪影響を予測し、金融緩和も予防的に早期に行うべきだと指摘していた。この観点からみれば、金融緩和は遅すぎたと言わざるをえない。また、日銀は、消費増税の影響を見誤ったので、その埋め合わせとして、遅ればせながら金融緩和を行ったわけで、それが、来年10月の10%への再増税の後押しになるはずない。

 増田さんや田原さんなど多くの人が、安倍総理が再増税を決断するという前提に立っていた。おそらく、財務省のレクが十分に効いているのだろう。だれも、財務省が間違ったことをいわないと思い込んでいるかのようだ。

 しかし、今回、増税派(財務省と財務省からレクを受けた応援団の人たち、それに賛同するエア御用人ら)は消費増税の影響を大きく間違った。これは、黒田日銀総裁も例外ではない。ある官邸の関係者は、「黒田さんは、金融政策の理解など、消費増税にかかわらない部分はいいのだが、消費増税になると財務省のDNAが出て、困る」といっていた。

財務官僚が大好きな
「リカードの中立命題」とは

 実は財務省官僚は、「リカードの中立命題」といわれる考え方を都合良く使うのだ。例えば、財務省が国債発行で景気刺激を求められる場合、国債発行は将来の増税につなり消費を減少させるはずで、景気刺激効果はなくなるから、景気刺激は意味がないという具合に使うのだ。

 このリカーディアンの前提には、人々は経済合理性によって行動することがある。実際には、人々は必ずしも合理的に行動するとは限らず、「リカードの中立命題」は理論的な話で、実際には妥当しないという考え方が有力だ。ノーベル賞経済学者であるクルーグマン・プリンストン大教授も、リカーディアンの考え方に疑問を持っている。実証研究でも否定的なものが多い。

 しかし、黒田日銀総裁は、財務官僚のように都合よく、リカーディアンの考え方を利用しているようだ。例えば、消費増税はいつかはやらなければならないと国民も分かっているので、増税のタイミングは消費には影響しないと考えている。

 増税派は、消費増税の影響は軽微と言い切ったが、その背景にはやはりリカーディアンの考え方がある。今回の消費増税は、前回、前々回と異なって緩和措置なしで行ったから、そのように判断せざるを得ない。

 かつては、財務省でさえ、リカーディアンの考え方には慎重だった。例えば、1989年の消費税創設では、同時に物品税を廃止したので、消費増税は物品税廃止と見合っており、消費増税の影響は中和されている。

 1997年も、先行所得税減税しており、レベニュー・ニュートラル(増減税同額)で消費増税の影響を緩和しようとしていた。ただ、その当時、レベニュー・ニュートラルなので、消費増税の影響はありえないと主張する者が大蔵省では支配的だった。筆者は、過去の減税を先食いしても忘れて、今の増税で消費に悪影響が出ると言った記憶があるが、そのようなことを言うなという雰囲気だった。時間差があっても、レベニュー・ニュートラルなら増税の影響はないというのは、リカーディアンの考え方だ。

 後日、こうした話は、「今日と明日の違いは、明日と明後日の違いより大きい」という行動経済学の双曲割引だと後で知ったが、実務では当たり前の話である。

 ちなみに、先行所得税減税していると。ある程度消費向上効果が持続し、消費増税になってもすぐには消費減退せずに、半年くらい遅れて消費減退になる。このように、1997年の消費行動を説明することもできる。

 たまたま、1997年秋にアジア危機があり、そのために景気が後退したというのが、財務省や経済学者の見解であるが、筆者はかねてより疑問を持っている。2012年4月19日付け本コラムに書いたように、アジア危機の震源地韓国より日本の経済パフォーマンスが悪いことが説明できない。消費増税が原因であろう。

 今回の消費増税では、財務省や黒田日銀総裁のほか主流派経済学者がそろって増税の影響を見誤ったのは、みんな、リカーディアンだったからだ。しかし、97年も含めて、今回もリカーディアンの考え方は成立しなかったことが明白になった。

追加緩和・反対論者の自己矛盾

 黒田日銀総裁は、消費増税についてはリカーディアンで問題があるが、金融政策ではまともだ。しかし、日銀には、金融政策で首をかしげるような人もいる。

 日銀は25日、10月31日の金融政策決定会合議事要旨を公表した。その日は、追加緩和を決めたが、賛成5人、反対4人という僅差だった。その反対論者である。

 その議事要旨には、「多くの委員は、原油価格の下落は長い目でみて日本経済にとってプラスであるものの、このところの大幅な下落は、消費税率引き上げの後の需要面での弱めの動きと合わせて、短期的には物価の下押し要因として働いていると指摘した」とある。一応日銀も消費増税の影響を認めている。

 ここで、追加緩和賛成の5人と反対の4人のスタンスの違いが出てくる。追加緩和賛成論者は、当然ながら追加金融緩和に傾くが、反対論者は、追加緩和の効果がないかわりに、副作用のリスクを強調する。

 反対論者がいう副作用とは、財政ファイナンスになること、大量の資産購入での市場機能の低下、金利低下による金融機関への悪影響である。

 財政ファイナンスというと、すぐ禁じ手であると条件反射する人がいるが、英語でいえば、マネーファイナンスとかマネタイゼーション(貨幣化)といわれるもので、禁じ手でも何でもない。バーナンキ・前FRB議長はしばしばデフレなら活用すればいいといっていたくらいだ。問題になるとすれば、それで悪性のインフレが起こる場合だ。しかし、日銀を含め先進国の中央銀行ではインフレ目標があるので、それを無視して、財政ファイナンスが行われることはない。つまり、インフレ目標は財政ファイナンスの懸念を十分に予防している。

 ところが、現状は物価の上昇が思わしくないというのだから、インフレ目標を一気に超えて、財政ファイナンスに伴う悪性インフレが起こるとはいいがたい。どうも、反対論者は、財政ファイナンス=禁じ手という発想で、副作用といっているようだ。自己の発言が矛盾しているのさえ気がつかないとは情けない。

 市場機能の低下や金融機関への影響は、日本経済にどのような影響があるのか、さっぱり理解できない。金利が低いから短資会社の手数料収入が減るとか、国債という資本市場のコメのようなものを日銀が買いすぎて金融機関が商売できないという一業界内の些細なことに注意をとられて、日本経済が見えないとしたら心配だ。日銀は、一業界のミクロ経済ではなく、もっと高い立場からマクロ経済を論ずるべきだ。

 副作用というが、量的緩和はリーマンショック以降、先進国で採用された手法であり、もはや医薬品でいえばジェネリック薬品のようなものだ。先例のある国では目立った副作用も報告されていない。反対論者のいう「副作用の正体見たり枯れ尾花」である。
http://diamond.jp/articles/-/62761


04. 2014年11月27日 07:20:36 : jXbiWWJBCA

シリーズ・日本のアジェンダ 消費増税先送りYES or NO
【第2回】 2014年11月27日 ダイヤモンド・オンライン編集部
いまがデフレ脱却のラストチャンス
消費再増税の1年半延期は正しい決断
――内閣官房参与(静岡県立大学教授)本田悦朗
消費再増税先延ばしに関する議論の2回目は、安倍首相の経済面でのブレーンを務める本田悦朗内閣官房参与。本田氏は1年余り前の消費増税に関するインタビューでも、増税に強い懸念を示していたが、GDP成長率を見る限りその懸念が現実のものになった形だ。当然ながら、本田氏は安倍首相の消費再増税の1年半の延期を高く評価する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原英次郎)

デフレからの脱却を
確認する前の再増税は危険


ほんだ・えつろう
1955年生。東京大学法学部を卒業後、(旧)大蔵省入省。在ソ連邦大使館、世界銀行審議役等を経て2000年より在ニューヨーク総領事館兼在米国大使館公使。ニューヨーク勤務時代に現地のエコノミスト等とデフレ脱却について議論。その後、外務省欧州局審議官、欧州復興開発銀行理事、財務省政策評価審議官等を経て、2012年より静岡県立大学教授。同年12月、第2次安倍内閣発足と同時に内閣官房参与。著書に『アベノミクスの真実』(幻冬舎)等。
 私は来年10月からの消費税の再増税は大変危険であると思っており、2017年4月からの引き上げに変更すべきだと考えていました。

 ただ、私自身は必要な財源を確保するために、消費税率の引き上げが必要であることは、十分理解していますので、デフレ脱却を確認した後に増税すべきで、脱却を確認する前に増税を行うことは、極めて大きなリスクを伴うと主張していたわけです。

 その理由は、現在アベノミクスによって、15年間続いたデフレから脱却しつつあるという、まさに現在進行形のプロセスにあるからです。すでにいろんな経済指標を見ていると、デフレではないけれども、脱却までには至っていないのではないか。脱却と言うためには、国民の予想インフレ率が、2%程度のプラス領域で安定してこないといけない。予想インフレ率が安定してくると――日本銀行が目指しているのはCPI(消費者物価数)コアで2%ですが――それも安定してくるはずです。

 私の意見では、安定したと言うには少なくとも10ヵ月、できれば1年間くらいの安定を確認するまでは、デフレ脱却宣言はできないと思います。そうでないと、またデフレに戻る可能性がある。それまでは、増税を控えるべきで実施してはいけない。

 もう一つは実質賃金の観点からです。アベノミクスはデフレから脱却してインフレに持っていこうという政策ですので、徐々にデフレ領域から抜け出すにつれて、需要は出てきている。去年1年間を見ても、消費、それからやや遅れて投資も盛り上がりつつある。

 今年1〜3月の駆け込み需要と4〜6月の反動減に加えて、4月の消費税増税というマイナスの所得効果で、日本経済の成長率が見えにくくなっているが、それでも需要の成長力が全くなくなったわけではなくて、私はアベノミクスによる需要拡大効果と4月の増税による需要抑制効果が、いませめぎ合っている状態だと思うんですね。

 ただ、物価をマイナスからプラスにもっていくというアベノミクスの性格上、増税をする前からインフレ率を考慮した「実質賃金」はマイナスでした。そこに4月1日に消費税率を5%から8%に3%引き上げたわけですが、その3%のほぼ7掛け、つまり2%くらいのインフレ率の押し上げ効果を持つんですね。ということは、反対に2%の実質賃金の押し下げ効果がある。実際、4月1日の増税以降、実質賃金が2%幅くらい押し下げられてしまった。この増税効果もあって、いまも実質賃金は前年比でマイナスです。

 実質賃金がマイナスのままでは、いま現在、実際に経済の好循環が起こっているのかどうか、見えにくくなっている。それが徐々にいろいろな指標に表れています。例えば消費の回復度合いも、7月〜9月期を見ても非常に悪い。設備投資は消費に比べると堅調でしたが、それでも何もしなければタイムラグを持って、企業マインドも落ちてきて、その結果として賃金の伸びも落ちてくるかもしれない。実際に有効求人倍率の改善も頭打ちになってきた。失業率も8月の3.5%から9月は3.6%へ少し上がってしまった。労働市場に関する指標――これは景気の遅行指標で、景気の動きに遅れて動くわけですが、そうした指標がやや悪くなっている。

 したがって、予想インフレ率の安定、実質賃金がマイナスという両面からして、来年10月からの消費税率の引き上げは時期尚早だと言ってきたわけです。

――1年半、消費税の増税を延期して、景気は回復するのでしょうか。

 では2017年4月はどういう姿になっているか。インフレ率も予想インフレ率も2%程度で安定している。理想的には17年の4月にはインフレ率が2%程度で安定しており、そこに8%から10%つまり2%の増税が行われると、これも単純に7掛けすると1.4%インフレ率を押し上げる効果がある。2%プラス1.4%で3.4%のインフレ率になっているはずなんですね。ということは、それまでに名目3.4%の賃上げが行われていれば、次の増税が行われても実質賃金はマイナスにならないということです。

 ただし、歴史的に見ても3.4%の名目賃金の上昇率を実現するのは、なかなか高いハードルです。それでも実質賃金が若干のマイナスであればアベノミクス効果で克服できる。需要が伸びてくれば供給も伸びるし、成長戦略も同時にやりますので、名目賃金の上昇率がそれより少し下――例えば、2.8%でも、2.9%でも、ショックは和らげることができるでしょう。この4月1日はそういう状態ではなかった、つまりインフレ予想が脆弱だったことと、増税の前から実質賃金がマイナスであったというダブルショックで、想定外の激しい落ち込みを記録してしまったということだと思います。

財政再建を重視するからこそ
来年増税してはいけない

――政府は財政再建のために、中期財政計画でプライマリーバランス(基礎的財政収支=公債発行を除いた税収・税外収入と、国債の償還や利子の支払いにあてる費用を除く歳出との収支のこと)を、15年度に10年度比で半減、20年度に黒字化という目標を掲げています。増税を延期すると財政再建が遠のくことになりませんか。

 財政再建については、財政再建を重視するからこそ、来年、増税してはいけない。インフレ率の不安定性、消費マインド・企業マインドの不安定性、それから実質賃金のマイナスという問題が解決していない中で増税しますと、まず間違いなく税収全体が落ちます。

 消費税は多分、増税すれば引き上げた税率分だけ増えるでしょうが、一方、ほかの税、例えば法人税や所得税が落ちるでしょうから、税収全体としては、マイナスになる危険性が高い。まさに、1997年――前々回の消費税率の引き上げの時には、消費税は増えましたが、他の税目がすべて落ちたので、またそういうことが起こらないとも限らない。したがって、マクロ経済が安定化してから増税するというのが「鉄則」です。そうすればまず間違いなく税収は伸びてきます。

 アベノミクスの考え方からして、まずデフレから脱却して、緩やかなインフレをつくり出して名目GDPを大きくする――当面、名目GDPの成長率の目標は年率3%ですが――名目GDPが増えてくると、その税収弾性値(GDPが1単位増えたとき税収がどれだけ増えるかの値)分だけ税収が増える。2012年〜2013年の間に弾性値がどれくらいになったかというと、友人の専門家の計算では3倍を超えている。つまり、名目GDPが1%伸びると税収は3%伸びる。

 景気の転換期というのは、弾性値が大きいんですよ。課税されていない赤字法人が黒字に転換してきますから。それで名目GDPの伸び率よりも税収の伸び率の方が高いという状況が当分続きます。まず名目GDPを大きくしてから税率を上げるということが、まさに確実に税収を増やし財政再建をする効率的な方法であると思います。

 来年2015年のプライマリーバランス半減目標ですけれども、まだ分かりませんが税収は上ぶれしているので、増税を延期しても達成する可能性は十分あると思います。ただ、正直申し上げて、政府の中期財政計画の前提となっている14年度の実質GDPの前提は1.2%ですから、実際はそれより低くなるでしょう。だから、厳しい状態にはなると思います。しかし、先日の黒田日銀の追加緩和もありましたし、補正予算も組む予定なので、15年度の半減目標を達成することは不可能ではないと思います。

 ただ、20年度のプライマリーバランスの黒字化という目標は、内閣府の試算によると、いま現在、増税しても達成できないという計算になっていす。ですから、本来できないものをできるような振りをするのではなくて、本来のシミュレーションを国民に示すべきです。きちんとした税収弾性値を置き、名目GDPを目いっぱい増やして、その上で消費税率を上げて必要な税収を確保する。その場合にプライマリーバランスがどうなってくるかというと、若干後ずれしても2023年や24年には黒字化することは十分に可能だと、専門家も言っています。

 プライマリーバランスは財政のサステナビリティ(持続可能性)を維持するために重要ですが、何よりもプライマリーバランスの赤字が毎年毎年小さくなっていくことが重要です。それが市場に安心感を与えることになりますから。プライマリーバランスの赤字が広がっているとダメなんですね。財政赤字が発散してしまうので。

 毎年毎年プライマリーバランスが縮小していけば、いずれは黒字化する。黒字化すれば、負債総額の対名目GDP比がどこかのレベルに収束するはずです。いまはこの比率が約200%と高いけれども、例えば120%くらいに収束すれば、財政はサステナブルで持続可能だということになります。債務総額をゼロにはできませんし、そうする必要もありません。どこかのレベルで収束すれば財政は安定するので、私はいま現在、日本の財政は危機ではないと思います。だから、やたらに危機をあおるような発言は避けるべきでしょう。

――そのような形で、財政再建に取り組めば、日本国に対する信認も維持されて、国債の暴落つまり長期金利の急上昇もあり得ないということですね。

 そういうことはありません。まして10月31日の黒田日銀の「ハロウィーン・バズーカ」と呼ばれている追加緩和、あれは絶妙のタイミングでやっていただいて、金融資産市場――株式市場、為替市場は直ちに反応しました。金融資産市場が反応すればそれだけでいいというものではありませんが、それが実体経済に跳ね返ってくるには、半年くらいタイムラグがあると思うので、その成果がこれから出てくると思います。

 ここで確認しておきたいことは、10月31日の追加緩和は前回4月1日の増税の効果を和らげる、相殺するためのものであって、次の増税をやりやすくするためのものではないということです。

日本国債の信認が
傷つくことはあり得ない

――しかし、増税を先送りした結果、今後、日本政府つまり国債に対する「信認」が揺らぎ、国債価格が下落し、長期金利が跳ね上がるというリスクが高まるという、根強い批判がありますが……。

 それは現実的なリスクとしては、無視できる程度だと思います。私はかつてこの問題に関与したことがあります。財務省のニューヨーク事務所長時代に――その時の財務官が黒田さんでしたが――格付け機関に抗議のレターを出したんですよ。要するに、自国通貨建て債務でデフォルトすることは論理的にはありえない、と。

 私はそのレターを持って、ニューヨークのムーディーズやS&Pに行き、「なぜ格付けを落とすんだ」と議論を吹っ掛けました。「円建てだから、いくらでも円を発行できる。もともと通貨の信認のない国ならいざ知らず、円は絶大な信認があるんだから、少々国債が増えたからといって何の問題もないでしょう」、と。そうしたら、格付け会社は全く反論できなかったですね。だれも経済大国の日本がデフォルトするとは思っていないけれども、彼らは「イベント主義」なので何か起こるとその都度格付けを見直さないと、顧客からクレームがつくらしいんですね。


「市場のプレイヤーはだれも日本がデフォルトするなんて思っていない」
 それから債券の信用度を取引するクレジット・デフォルト・スワップ市場でも、5年物の日本国債は50ベーシスポイント(0.5%)で取引されている。これは今後5年間で日本国債がデフォルトする確率は1万分の50ということを意味します。つまり、市場のプレイヤーはだれも日本がデフォルトするなんて思っていない。しかも10年物国債の流通利回りが0.4%台で金利は上がっていない。つまり日本国債は安全資産なんですね。増税の無期限延期なら話は違ってきますが、増税を1年半延期したからといって、日本の国債の信認に傷がつく確率は極めてゼロに近いと思います。全く心配ない。

――増税を先送りした結果、外国投資家がこの機会を捉えて、日本の財政再建は危いというシナリオで、日本国債を売ってくるという危惧を語る人が多いですね。

 それは政府関係者を含めて、予定通りの増税推進者の中に、そういうことを言って回っている人がいるからです。真面目に危ないと考えている人はいません。だけれども、外国人投資家の中にも「自分は危ないと思わないけれども、周りの投資家で危ないと思う人がいるかもしれない。そうすると先回りして売ってしまおうという投資家が、現れてくるかもしれないということを危惧しています」と言う方はおられる。その点では、だれか危機の種をまいた人がいるわけですよ。

――では外国人投資家は、日本国債は安全と考えているのか、リスクが高まっているとみているのか、どちらなのでしょうか。

 安倍首相が国連総会でニューヨークに行かれたときに、私もニューヨークでテレフォン・カンファレンスを含めて、アメリカの大手機関投資家35社ほどと議論をしましたが、真剣に日本のソブリンリスクを感じている投資家はゼロです。ただ、「日本の政府関係者を含めてリスクがあると言っている人がいるので、確かに売りから入るというリスクはあります。だけれど、みながデフォルトリスクを感じているわけではなくて、周りの投資家の行動を気にしているだけです」と、言っていました。

 ロンドンにもブリュッセルにも行って、合計70社ほど回りました。目的は、間違った認識を正そうということと、財政再建を考えるからこそ、急がば回れでまず経済基盤を固めることが大事だということを、理解してもらうためです。増税だけで対応しようとすると、例えば、消費税の税率が30%とか、とんでもないことになってしまい、日本経済は耐えられなくなってしまう。

 例えば、名目GDPが毎年4%ずつ増えれば、約20年でGDPの規模は2倍になる。そうすればたとえ同じ税率だとしても税収は増えます。名目GDPが増えないなかで、税率の引き上げだけでなんとかしようとしても、税収は増えないばかりか減ってしまう。まさにこの15年間がそうでした。だから、いま増税をしてはいけない、この論理はみな理解してくれました。

デフレ脱却の
ラストチャンス

――現在でも、自民・公明の政権与党は圧倒的多数を占めており、選挙をしなくても法律を変えて、増税を延期できます。となると、いま総選挙を実施する「大義」はあるのでしょうか。

 本来、消費増税を決めた3党合意(12年の民主党・自民党・公明党による合意)と安倍さんは関係ありません。3党合意は安倍さんが自民党の総裁そして首相になる前に、民主党政権の下で行われたものです。しかも民主党はマニフェストに増税のことを何も書かないで政権を取ったわけで、この3党合意は民主的な正当性を持っていない。その後、当時の野田首相と安倍さんの党首会談で、総選挙をやろうということになったわけですが、その時も消費税増税については争点になっていない。つまり、消費税増税については1回も国民に信を問うていないんです。ですから、次に増税するときには、少なくとも1回は国民に信を問うという理屈は十分成り立つと思います。

 国債暴落という、起こる確率が非常に低いテールリスクを心配するよりも、私は増税を実施して景気が悪化し、さらにデフレに戻ってしまうリスクの方がよほど高いと思います。そうなると本当は増税が原因なのに、アベノミクスの失敗と責められる。特に、アベノミクスの第一の矢、つまりデフレから脱却するための思い切った金融緩和は2度とできなくなります。その点で、いまはデフレ脱却のラストチャンスなのです。
http://diamond.jp/articles/-/62760


05. 2014年11月27日 08:01:01 : jXbiWWJBCA

経済の珍しい病には大胆な治療法が必要
日本やユーロ圏が患う「慢性的需要欠乏症候群」という病
2014年11月27日(Thu) Financial Times
(2014年11月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 主要な高所得国――米国、ユーロ圏、日本および英国――は「慢性的需要欠乏症候群」に苦しんでいる。より正確に言うならば、これらの国々は、民間部門がお金を使わないために超緩和的な金融政策か多額の財政赤字、あるいはその両方の刺激策がなければ国内総生産(GDP)を潜在GDPに近づけられないという状況にある。

 日本は1990年代前半から需要欠乏症候群を患っており、ほかの国々も遅くとも2008年にはこの病にかかっている。では、どのような対策を講じればよいのか。その答えを探るには、これがどんな病気なのかをまず把握しなければならない。

危機は金融システムの心停止、医師の仕事は患者を死なせないこと

 例えて言うなら、危機は金融システムの心停止であり、経済に破壊的な打撃を及ぼす恐れを秘めている。経済の医師の任務は患者を生存させること。すなわち、金融システムの崩壊を阻止し、需要を維持することである。

 目の前で心臓発作を起こしているのだから、患者のライフスタイルを気にしている場合ではない。とにかく死なないようにしなければならない。

 心臓発作と同様に、金融危機の影響は長期にわたる。それは金融セクター自体が打撃を被るためでもあり、人々が将来に対し不安を抱くからでもあるが、危機が発生するまでの過程で積み上がった債務がついに耐えきれないものになってしまうからでもある。

 そこで始まるのが「バランスシート不況」、つまり債務者が債務返済を最優先する時期だ。

 金融危機発生後の政策は、そのような民間部門のデレバレッジ(債務削減)による穴を埋めるか、デレバレッジを促進するものでなければならない。緩和的な金融・財政政策はその両方に寄与することができる。また、そうした政策が打たれなければ、危機に見舞われたユーロ圏諸国で見られたように、大変な景気不振が生じる公算が大きい。

過剰債務よりも厄介な問題

 デレバレッジを補強するものの1つに債務再編がある。多くのエコノミストは債務再編を問題解決に必須の要素と見なし、推奨してきた。少なくとも家計部門の債務再編については、米国はユーロ圏よりもはるかにうまくやってきた。

 しかし、債務者が負けを認めない限り、債務再編を進めることは極めて難しい。民間部門においてはその通りだし、公的部門ではなおさらだ。過剰な債務がなかなか解消されずにいるのはこのためでもある。

 だが実は、過剰債務よりもさらに厄介な可能性が存在する。筆者は拙著『The Shifts and the Shocks(変化とショック)』で、世界経済ではいくつもの変化が生じ、信用ブームが生じていない間に慢性的に弱い需要を作り出したとの見方を提示している。

 具体的には、新興国での貯蓄過剰、所得分布の変化、高所得国における高齢化、そして高所得国での投資性向の長期的な低下などがそうした変化にあたる。

 変化の背景にはいろいろな要素があるが、その中でとりわけ重要なのはグローバル化であり、技術革新であり、金融セクターの役割の増大だ。したがって、信用ブーム崩壊の後始末をするだけでは不十分だ。政策立案者は、需要が持続不可能な信用に依存している状況も併せて取り除かなければならない。

 それをやらなければ、不良債権を徹底的に処理しても、旺盛な需要は戻ってこないだろう。確かに、経済規模の小さな国なら、対外収支を通じて、欠けている需要を輸入することができるかもしれない。しかし、世界経済の大部分が病に苦しんでいる場合には、これに代わる解決策が必要だ。

3つの解決策

進む円高の謎、世界経済の3つの逆説
日本はずっと積極的な需要喚起政策を取り続けてきた〔AFPBB News〕

 解決策は大きく分けて3つある。慢性的な需要の弱さと折り合って暮らしていく、積極的な需要喚起政策を(日本がやってきたように)ずっと打ち続けていく、そして需要の構造的な弱さにメスを入れて直す、の3種類だ。

 超積極的な金融政策は、実質金利を0%を大きく下回る水準に引き下げることで対策に貢献する。財政政策を代わりに用いることもできるが、こちらには債務が恒久的に増え続けるリスクがある。

 これ以上に非正統的な政策としては、英金融サービス機構(FSA)の長官だったアデア・ターナー氏が推奨してきた、財政赤字のマネタリー・ファイナンス*1が挙げられる。

 この施策は、無責任であることが多い民間銀行に任せてきた貨幣創造を、国有化することを意味している。需要を拡大するために中央銀行の貨幣創造力を利用する、より直接的なやり方であり、資産価格の操作を通じて利用する間接的なやり方よりも恐らく高い効果が得られるだろう。このような財政赤字の直接的なマネタイゼーション(貨幣化)は、日本では特に理にかなったやり方であるように思われる。

*1=中央銀行が創ったお金で財政赤字を埋めること、日本では財政ファイナンスとも呼ばれる

 これに代わる対策は、構造的に弱い需要の源に対策を講じることだ。まず、お金を貯める人から使う人に所得を再分配するという政策が考えられよう。次に、支出を促すことが考えられる。これゆえに、日本の消費税率引き上げは大きな誤りだったと言える。日本は消費ではなく、貯蓄に課税すべきなのだ。

 この主張は、倹約は美徳だという先入観と対立するが、需要欠乏症候群に苦しめられている世界にあっては、倹約は美徳ではない。非生産的な貯蓄は抑制すべきなのだ。

 金融危機後の不振といつまでも弱い需要の向こう側には、構造的に弱い供給力があるのかもしれない。これについては労働や投資、技術革新を奨励することが解決策となる。しかし、供給の促進を意図した政策が同時に需要を弱めてしまうことがあってはならない。これは昔から推奨されている労働市場改革が抱える難点の1つにほかならない。

 この種の改革は、大部分の働き手の賃金が下がったり雇用と解雇がさらに容易になったりするという結果をもたらすため、少なくとも中期的には、消費を押し下げる可能性が高い。2000年代のドイツで見られた現象はまさにこれだった。

 改革は、需要を促進するものにすべきである。だからこそ、ユーロ圏は構造改革に頼りすぎるのではなく、バランスの取れた政策パッケージを導入しなければならないのだ。

危機の源泉は長期的かつ構造的な弱さ

 金融危機は大きな爪痕を残した。これに対するユーロ圏の対応は、例えば米国のそれに比べればお粗末だった。しかし、危機の源泉は長期的かつ構造的な弱さにある。危機からの脱出が次の危機に向かう過程の始まりにならないようにするために、政策当局はこうした問題点にも対策を講じなければならない。

 そうした対策は恐らく、非正統的なものになるだろう。しかし、今日の経済状況も非正統的なのだ。めったに見られない病にはめったに使わない治療法が必要だ。これからそれを探していかねばならない。

By Martin Wolf
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42298


06. 2014年11月27日 08:02:33 : jXbiWWJBCA

ドイツ経済:止まりかけたエンジン
2014年11月27日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2014年11月22日号)

ドイツ経済は、欧州を危機から引っ張り上げられないほど弱くなっているのだろうか?

 「世界には欧州の失われた10年を受け入れる余裕はない」とジェイコブ・ルー米財務長官は言う。最新の欧州の統計は、冴えない内容だった。第3四半期にユーロ圏は年率換算で0.6%しか成長しなかった。

 この停滞は一義的に、危機によって最も大きな打撃を受けた国々のせいではない。ギリシャ経済はどのユーロ圏諸国よりも速く成長しており、スペインとアイルランドは回復を遂げている。

疲弊した中核国、メルケル首相に批判の声


 むしろ、疲弊しているのは中核国だ。そして、欧州最大の経済国であるドイツ以上に疲弊している国はほとんどない。ドイツ経済は第2四半期に0.1%縮小した後、第3四半期に0.1%しか成長しなかった。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、次第に高まる外国からの批判にさらされている。ドイツは内需と投資を刺激するためにもっと多くの手を打つべきだというのが、繰り返される批判の言葉だ。

 ドイツがそうした対策を講じれば、フランスやイタリアなどが厳しい構造改革を進める中で、これらの国の助けになるだろう。

 輸入の増加はドイツの経常黒字を減らすことにもなる。ドイツの経常黒字は世界最大規模であり、欧州内外の不均衡の原因となっている。また、内需を刺激すれば物価が上昇し、ユーロ圏がデフレに陥るのを防げるかもしれない。ユーロ圏の物価は10月に前年同月比で0.4%上昇し、インフレ率は欧州中央銀行(ECB)が定めた2%の上限を大幅に下回っている。

 ドイツ国内にも、そうした要求に同調する向きがある。ジグマール・ガブリエル経済相の顧問を務めるマルセル・フランツシャー氏は、ドイツは自国のために投資を増加させるべきだと言う。同氏いわく、ドイツの最近の成功の大部分は、道路から教育、工場に至るまで、あらゆるものへの過少投資で買った「幻想」だった。

 ヴォルフガング・ショイブレ財務相はこれに対し、道路と橋のためにすでに割り当てられている50億ユーロに加え、2016年から3年かけて連邦政府による投資を追加で100億ユーロ増額すると誓った。だが、追加投資はGDP比0.1%程度で、実質的というよりは象徴的な対策だ。

 また、これで財政赤字が増えるわけでもない。なぜなら、ショイブレ氏の最優先事項は依然として、2015年から財政を均衡させる「ブラック・ゼロ」だからだ。

 ドイツ政府に助言する経済諮問委員会(通称5賢人委員会)のクリストフ・シュミット委員長は、「ブラック・ゼロは崇拝の対象にすべきではない」と述べている。公共投資を増やすべきなのは、ドイツの連邦政府ではなく地方の自治体だという。だが、同氏の考えでは、それより大きな問題は、民間投資が少なすぎることだ。

 ドイツ経済のような自由主義経済では、外国よりも国内の投資を増やすよう政府が企業に命じるわけにはいかない。シュミット氏に言わせると、企業が別の道を選んだのだとしたら、それはどんな理由にせよ、ドイツが投資にとって報われない場所だと考えたからに違いない。

「世界一影響力ある女性」はメルケル独首相、4年連続
メルケル政権の経済運営に批判が高まっている〔AFPBB News〕

 シュミット氏の率いる5賢人委員会は今月、メルケル政権を叱った。企業は、ドイツの人口高齢化と労働人口縮小に反する公的年金の寛大さについて心配している。

 中道左派のドイツ社会民主党(SPD)との連立政権は、母親向けの年金を引き上げており、一定期間以上働いていた場合には、国民が早ければ63歳で引退できるようにしている。

 起業家は、時給8.5ユーロという比較的高い水準で1月に発効する予定の新たな最低賃金についても懸念している。最低賃金が内需を押し上げるとの期待に反し、一部の労働者が単に仕事を失うことになるとシュミット氏は言う。さらに、賃金が上昇する人たちは、その時点で福祉の補充が減るため、支出に回す追加所得は大して残らない。

 シュミット氏の見るところ、さらなる間違いが、混乱したエネルギー政策だ。太陽光発電と風力発電に補助金を与え、原子力発電を段階的に廃止する政策は、単に企業のエネルギーコストを高める結果になっている。さらにもう1つの過ちが、新しい不動産の建設を妨げるだけに終わる可能性の高い、賃料上昇に上限を設ける法律だ。

外国のエコノミストとドイツ人エコノミストの考え方の違い

 刺激策の増加を求める外国のエコノミストと、問題は別のところにあると考えるドイツ人エコノミストの違いは、部分的には異なる哲学を反映している。アングロサクソン系のエコノミストは、欧州とドイツの問題を需要不足の観点から評価する。大半のドイツ人エコノミストはそうしない。

 「欧州はケインズ的な危機に見舞われているわけではないから、ケインズ派の対策はうまくいかない」。ミュンヘンにあるIfo経済研究所のハンス・ヴェルナー・ジン所長はこう言う。

 ドイツのエコノミストらは、国家の介入を嫌い、20世紀初頭の経済学者、ヴァルター・オイケンにさかのぼる「オルド自由主義」の伝統にしたがい、経済の状態、あるいは「オルド(秩序)」の方を懸念する。

 シュミット氏いわく、実際には、こうした意見の二分は誇張されている。ドイツが需要ショックに対応して大規模な刺激策を講じた2009年のように、それが適切な場面では「我々はケインズ主義を否定しない」と同氏は言う。

 需要サイドに懐疑的な向きは、最大の急務が危機に見舞われた国における構造改革であるときには「ケインズ主義は解決策にならない」と主張する。

これでは欧州が10年失うだけで済めば幸運?

 だが、ドイツの低インフレは、弱さの兆候であると同時に、周縁国にとっての苦痛の源泉でもある。

 改革の究極の狙いは、ユーロ圏南部諸国の低い生産性を反映させるように、ユーロ圏北部諸国に対する南部の相対的な物価を引き下げることだとジン氏は言う。同氏の考えでは、そのためにはドイツのインフレ率が10年間にわたって5%になるか、南部の同程度のデフレになるか、その両方の何らかの組み合わせが必要になるという。

 目標に向けた進展は遅い。労働組合と関係のあるハンス・ベックラー財団の経済シンクタンクは、ドイツの賃金上昇はユーロ圏平均より若干速いだけだと言う。ドイツの単位労働コストは2013年に2.3%、2014年上半期1.7%上昇した。これに対し、ユーロ圏のそれは、それぞれ1.2%、0.7%だった。

 カタツムリのように遅いこのペースでは、欧州は10年失うだけで済めば幸運かもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42300


「労働に見合った収入が得られない」
農業の問題を解決する糸口はどこに
クラウドファンディングで農業を活性化するためのヒント
2014年11月27日(Thu) 多田 朋孔
 農村の現場にいると、クラウドファンディングを活用した取り組みがいろいろ行われているのを目にします。

広がる農業プロジェクトのクラウドファンディング

 クラウドファンディングのことはご存じの方も多いかと思いますが、インターネット上で様々なプロジェクトに対して共感する方を募り、寄付金として資金を集める手法です。

 有名なところでは、先の東京都知事選で家入かずま氏が供託金をクラウドファンディングで集めたのが記憶に新しいです(目標金額500万円に対して744万7500円を集めて達成しています)。

 農村地域に関する取り組みの中で個人的に非常にインパクトがあると思うプロジェクトとしては、和歌山県の「いなか伝承社」が行っている「伝統技術を活かして、世界初となる昆虫発酵調味料を作りたい!!」(和歌山に残る「醤油の伝統技術」×未利用資源の「昆虫(イナゴ)」=世界初の「おいしい昆虫発酵調味料イナゴソース」)というものがあります。


クラウドファンディングに使われているイメージ(写真提供:筆者)
 著者である私自身も、右の写真のように、十日町市地域おこし実行委員会の「農業後継者育成のための住宅を新潟県魚沼産の棚田米で作りたい!」というプロジェクトでクラウドファンディングを活用しています。

 個人や地域の団体のみならず、自治体専門のクラウドファンディングのサイトも2014年9月には開設されています。その名も「ガバメントクラウドファンディングふるさとチョイス」です。このサイトはふるさと納税のポータルサイトを運営するトラストバンクが新たなサービスとして開設しました。

クラウドファンディングを効果的に活用するためのポイント

 このようにクラウドファンディングが地域活性化に活用されるケースが増えてきているのですが、実際に取り組んでみて効果的に活用するためのポイントがいくつか見えてきましたので、それについてまとめてみたいと思います。

(1)多くの人が共感するビジョンを明記する

(2)寄付金をいただいてお礼をするというよりも形を変えた商品販売としてとらえる

(3)お礼の品の発送作業は自分たちの商品販売のオペレーションに組み込む

(1)多くの人が共感するビジョンを明記する

 これは言うまでもないことではあるのですが、寄付をいただくには基本的に取り組みに共感してもらわないと無理だと思います。

 農村の取り組みで多いのは「自分たちの地域を応援してほしい」というものですが、私はそこを一歩進めて自分たちの地域の取り組みと言うだけでなく、その取り組みが将来の社会を良くしていくことにつながるという点にまで自分の視野を広げたり、時間軸を長く見据えることがとても重要だと思います。

 クラウドファンディングとは関係ありませんが、私が会社員を辞めて東京から十日町市へ移り住み、農業を通じた地域おこしの取り組みをするようになっているのは、「食料の問題、環境の問題等に真正面から立ち向かうつもりでやっている」という当団体の代表の言葉を聞いて、自分がうすうす思っていたことがここでの取り組みを通じてやれそうだと思ったからです。

 今や「消滅自治体」の衝撃から政府が「地方創生」を掲げる時代になっています。地域の取り組みが日本の将来を良くするためにつながるということは、多くの人にも理解をしてもらいやすい状況にあると思います。

(2)寄付金をいただいてお礼をするというよりも形を変えた商品販売としてとらえる

 クラウドファンディングという仕組みは寄付金を募るという名目になってはいるのですが、通常寄付金額に応じたお返しをする形になっていることがほとんどであり、見方を変えると形を変えた販路というふうに捉えることもできます。そのように考えると、農業経営にも新たな可能性を見出すことができます。

 地方で実際に農業に携わっていると、農業の担い手が少ない、または定着しない根本的な原因はズバリ、「労働に見合った収入が得られない」ということが大きく影響しています。

 基本的に農家には人件費の概念を持たない人が多く、公的機関等の提示する作物のモデル収支についても、「これだけの面積で標準的な収量が取れれば売り上げいくら」というのは表記されていますが、その作物を育てて出荷するまでにかかる作業時間については全く触れられていません。

 そして作業時間について集計をとっている農家はよほどしっかりとした農業法人以外聞いたことがありません。

 同じ田舎でも土建屋さんや大工さんなど他の業種では、料金は作業時間に応じた作業者の日当を積み上げて材料費等と合わせた金額になっていますが、農作物はそうではなく、市場の相場が価格決定に大きく影響しており、人件費を含めたコストに見合った販売価格になっていないことが多く、そのため「労働に見合った収入が取れない」という状況になっています。

 そういった中で、このクラウドファンディングの「寄付金に対するお礼」という形をとれば、市場価格との比較が度外視された形で、寄付金と引き換えに農産物を送り届けることができます。

 その際に人件費を含めたコストに見合ったお礼の内容を設定すれば(勿論クラウドファンディング運営会社に支払う手数料もコストに含めます)、通常だと不当に安く買いたたかれている農産物を正当な価格で購入してもらうことができるという可能性を持っています。

 ただし、クラウドファンディングはプロジェクト支援という形をとっているため、新たに行う取り組み、すなわち新規の投資に充てるための資金集めには向いていると思うのですが、日常業務の運転資金にする性質の資金調達をしようと思うと難しいかもしれません。

 それでも、自分が作っている農産物の一部でもクラウドファンディングを新たな販路として販売できれば大いにプラスになると思います。

 また、商品販売ととらえることで、寄付をしてくださる方々にとっては、他のプロジェクトに比べてお得感が出ます。

 寄付のお礼と捉えると、寄付金に対するお礼の品を金額換算した割合は低くてもよいと思ってしまいがちですが、商品として捉えると寄付金に対するお礼の品の金額換算した割合は高くなり、寄付をしてくださる方の動機づけにもなります。実際、目標達成しているプロジェクトはお礼の品も魅力的であることが多いです。

(3)お礼の品の発送作業は自分たちの商品販売のオペレーションに組み込む

 都会の大企業ではこういう発想は当たり前のことだと思いますが、クラウドファンディングに取り組む際には、既に自分たちが取り扱っている商品をお礼の品の軸にするのが効果的に活用するポイントになります。

 ある地域活性化のNPO法人の方から、「お礼の品を送るのに、お礼の品を用意して発送する手間が現状取れないのでなかなかクラウドファンディングに挑戦できない」という話を伺ったことがあります。

 クラウドファンディングでは新しいプロジェクトに対して支援をしていただくという性質上、お礼の品に関してもどうしても既存のものではなく、プロジェクトに関連した新たなものにしたくなりますのでこういう問題が出てくるのだと思います。

 クラウドファンディングの寄付のお礼を普段自分たちが販売しているものを中心にすると、販売のオペレーションの中に組み込んでお礼の品を送ることができるため、新たな手間はそんなに多くありません。

 ですが、クラウドファンディングのお礼に通常販売業務で取り扱っていないものが多いと、その準備や発送にかかる手間暇を人件費として換算すると、割に合わないということが発生する可能性があります。

 例えば、普段自家用野菜しか作っていない人がクラウドファンディングのお礼に「野菜を送ります」としたとします。

 すると、最初は自分で食べきれないほどの自家用野菜を作っているのでお礼も十分できると思っていたものの、実際にやってみるとお返しをする時になって送る野菜が足りなくなり、近所の農家さんからかき集めるのに苦労するという場合も出てきてしまいます。

 お礼が自分の商品でない場合は、その商品を仕入れる費用もかかってしまいます。ですので、お礼を自分たちの商品として、商品販売のオペレーションの中に組み込むことが大切だと思います。

 私たち十日町市地域おこし実行委員会が取り組んでいるプロジェクトでは、お礼の品はお米を軸にプラスアルファという形にしていますが、お米の直販を通常業務で行っていますので発送作業も効率よく行うことが可能です。

 以上、いろいろと書かれたポイントを踏まえて私たち十日町市地域おこし実行委員会のプロジェクトページを作成したつもりですので、クラウドファンディングで地域活性化をするということに関心をお持ちの方は、こちらもご覧いただくと参考になるかもしれません。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42278


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